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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H05B
管理番号 1359988
審判番号 不服2017-16324  
総通号数 244 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-11-02 
確定日 2020-02-12 
事件の表示 特願2016- 15596「モーダル解析」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 7月14日出願公開、特開2016-129141〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、2011年5月3日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年5月3日、米国)を国際出願日とする特願2013-508575号の一部を平成28年1月29日に新たな特許出願としたものであって、平成29年1月26日付けで拒絶の理由が通知され、平成29年4月27日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成29年6月29日付けで拒絶査定がなされ、それに対して、平成29年11月2日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされ、これに対し、当審において、平成31年3月25日付けで拒絶の理由が通知され、令和1年7月26日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2 本願発明
この出願の請求項1?10に係る発明は、令和1年7月26日の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?10に記載されたのとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。

「【請求項1】
複数の放射素子を介して空洞内の対象物に1MHzから100GHzの周波数範囲内の周波数で電磁エネルギを加えるための装置であって、
ターゲットエネルギ分布を検索し、
検索したターゲットエネルギ分布に基づいて、フィールドに影響を及ぼすパラメータの値のどの複数の組を使用するかを決定することであって、各組が少なくともエネルギ印加区域に供給される2つの電磁波間の位相差の値を含み、前記複数の組のうちの2つは少なくとも位相差の値において互いに異なっており、
前記検索したターゲットエネルギ分布を得るように、前記決定した値の各組についてそれぞれのフィールドパターンを励起するために、供給源を調整する、
ように構成される少なくとも1個のプロセッサ
を含むことを特徴とする装置。」

3 拒絶の理由
平成31年3月25日付けで当審が通知した拒絶の理由は次のとおりのものである。
(1)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
(2)この出願の請求項1?10に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2008-66292号公報

4 引用例
当審の拒絶の理由に引用文献1として引用された特開2008-66292号公報(以下「引用例」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている(「・・・」は記載の省略を意味し、下線は当審にて付した。以下同様。)。

(1-a)「【0007】
本発明の目的は、対象物に所望の電磁波分布でマイクロ波を与えるとともに、十分な小型化が実現されたマイクロ波処理装置を提供することである。
・・・
【発明の効果】
【0048】
本発明によれば、互いに対向する第1および第2の放射部から放射されるマイクロ波の位相差を変化させることにより、第1の放射部と第2の放射部との間の電磁波分布を変化させることができる。したがって、対象物に所望の電磁波分布でマイクロ波を与えることが可能となる。その結果、対象物を均一に処理することができ、または対象物の所望の部分を集中的に処理することができる。」

(1-b)「【0051】
[1] 第1の実施の形態
(1-1) 電子レンジの構成および動作の概略
図1は、第1の実施の形態に係る電子レンジの構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施の形態に係る電子レンジ1は、マイクロ波発生装置100および筐体501を含む。筐体501内には、3個のアンテナA1,A2,A3が設けられる。
【0052】
本実施の形態において、筐体501内の3個のアンテナA1,A2,A3のうち2個のアンテナA1,A2は、水平方向において互いに対向するように配置される。
・・・
【0058】
例えば、位相可変器351a,351bの少なくとも一方を制御することにより、対向する2個のアンテナA1,A2から放射されるマイクロ波の位相差を変化させることができる。詳細は後述する。
【0059】
マイクロ波増幅部400,410,420は、電圧供給部200から与えられる直流電圧により動作し、位相可変器351a,351b,351cから与えられたマイクロ波をそれぞれ増幅する。電圧供給部200、マイクロ波発生部300およびマイクロ波増幅部400,410,420の構成および動作の詳細は後述する。
【0060】
反射電力検出装置600,610,620は、検波ダイオード、方向性結合器および終端器等を含み、マイクロ波増幅部400,410,420により増幅されたマイクロ波を筐体501内に設けられたアンテナA1,A2,A3に与える。これにより、筐体501内でアンテナA1,A2,A3からマイクロ波が放射される。
・・・
【0084】
次に、マイクロコンピュータ700は、マイクロ波発生部300により発生されるマイクロ波の周波数を電子レンジ1で用いられる2400MHz?2500MHzの全周波数帯域にかけてスイープ(掃引)するとともに、図1の反射電力検出装置600,610,620により検出される反射電力と周波数との関係を記憶する(ステップS13)。この周波数帯域はISM(Industrial Scientific and Medical)バンドと呼ばれている。」

(1-c)「【0129】
アンテナA1から放射されるマイクロ波とアンテナA2から放射されるマイクロ波との間で複数の位相差を設定し、設定した位相差ごとに複数回マイクロ波を放射した。なお、本実験では、位相差を0度?320度にかけて40度ごとに設定した。
【0130】
このように、本発明者は、筐体501内部の水平面内に配置された水の温度上昇値を測定することによりマイクロ波の電磁波分布を調査した。本実験によれば、水の温度上昇値が高い領域で電磁波のエネルギーが強いと判定でき、水の温度上昇値が低い領域で電磁波のエネルギーが弱いと判定できる。
・・・
【0135】
これにより、本発明者は、筐体501内の電磁波分布の不均一性が、上記の位相差に応じて変化することに着目し、対象物の本加熱時に、対向する2個のアンテナA1,A2から放射されるマイクロ波の位相差を変化させることにより、対象物を均一に加熱することが可能であること、および対象物の特定の部分を集中的に加熱することが可能であることを見い出した。
・・・
【0142】
位相差の変化は、必ずしも0度から360度にかけて行う必要はない。例えば、予め複数の位相差の値とその位相差の値に対応する電磁波分布との関係をマイクロコンピュータ700の内蔵メモリに記憶させる。
【0143】
この場合、マイクロコンピュータ700は、対象物の加熱状態に応じて複数の位相差の値を選択的に設定することができる。
・・・
【0182】
本実施の形態では、対象物の本加熱時にマイクロ波の位相差を変化させることにより対象物を均一に加熱する例を説明したが、マイクロコンピュータ700の内蔵メモリに予め位相差と電磁波分布との関係を記憶しておくことにより、その関係に基づいて位相差を変化させ、対象物の所望の部分を集中的に加熱してもよい。
【0183】
例えば、筐体501内で、対象物を載置する部分の略中央部で、電磁界が強くなるように設定する。この場合、小さい対象物でも、効率よく加熱することができる。」

(1-d)「【0187】
図12は、図1のアンテナA1,A2の他の配置例を示す図である。図12(a)の例では、アンテナA1が筐体501の一側面の上部で水平に配置され、アンテナA2が筐体501の他側面の略中央部で水平に配置されている。
【0188】
図12(b)の例では、アンテナA1が筐体501の一側面の上部で筐体501の下面略中央部に向かうように配置され、アンテナA2が筐体501の他側面の略中央部で水平に配置されている。
【0189】
図12(c)の例では、アンテナA1が筐体501の下面の略中央部で筐体501の他側面側へ傾くように配置され、アンテナA2が筐体501の他側面の略中央部で水平に配置されている。
【0190】
これらの場合においても、アンテナA1,A2からマイクロ波が放射されることにより、両方のマイクロ波間で相互干渉が発生する。その結果、両方のマイクロ波の位相差を変化させることにより、筐体501内の電磁波分布が変化する。」

よって、以上の記載事項(1-a)?(1-d)を総合すると、引用例には、次の発明が記載されていると認められる(以下、この発明を「引用発明」という。)。

「筐体501内に設けられた3個のアンテナA1、A2、A3から2400MHz?2500MHzの周波数でマイクロ波が放射される電子レンジ1であって、
アンテナA1から放射されるマイクロ波とアンテナA2から放射されるマイクロ波との間で設定された複数の位相差の値とその位相差の値に対応する電磁波分布との関係を内蔵メモリに記憶させておき、複数の位相差の値を選択的に設定し、
アンテナA1,A2から放射されるマイクロ波の位相差を変化させることにより、筐体501内の電磁波分布が変化し、所望の部分を集中的に加熱するようにマイクロ波の位相を調整するマイクロコンピュータ700を含む電子レンジ1。」

5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。

ア 引用発明において筐体501内に空洞が形成されることは明らかであるから、引用発明の「筐体501内」は、本願発明の「空洞内」に相当し、引用発明の「3個のアンテナA1、A2、A3」、「マイクロ波が放射される」点は、それぞれ、本願発明の「複数の放射素子」、「電磁エネルギを加える」点に相当する。
また、引用発明の「2400MHz?2500MHzの周波数」は、本願発明の「1MHzから100GHzの周波数範囲内の周波数」に含まれる。
よって、引用発明の「筐体501内に設けられた3個のアンテナA1、A2、A3から2400MHz?2500MHzの周波数でマイクロ波が放射される電子レンジ1」は、本願発明の「複数の放射素子を介して空洞内の対象物に1MHzから100GHzの周波数範囲内の周波数で電磁エネルギを加えるための装置」に相当する。

イ 引用発明の「電磁波分布」は、本願発明の「ターゲットエネルギ分布」に相当するから、引用発明の「位相差の値に対応する電磁波分布との関係を内蔵メモリに記憶させておき、複数の位相差の値を選択的に設定」する点は、本願発明の「ターゲットエネルギ分布に基づいて、フィールドに影響を及ぼすパラメータの値」を決定する点に相当する。
また、本願発明の上記「フィールドに影響を及ぼすパラメータの値」の「組」に関して、本願明細書の段落【0059】には、「上でさらに述べたように、用語「変調空間要素」または「MSE」は、MSにおける変数パラメータの1組の特定の値を指すことができる。したがって、MSは、可能な全てのMSEの集合とみなすこともできる。例えば、2つのMSEは、複数の放射素子に供給されるエネルギの相対振幅において互いに異なることができる。例えば、図5は、三次元MS100内のMSE101を示す。MSE101は、特定の周波数F(i)、特定の位相φ(i)、および特定の振幅A(i)を有する。これらのMSE変数の1つが変わるなら、その新たな組が別のMSEを定める。例えば、(3GHz、30°、12V)と(3GHz、60°、12V)とは2つの異なるMSEだが、位相成分だけが変化している。」と記載され、段落【0083】には、「制御可能なMSE変動要素には、伝達される電磁波の振幅、位相、および周波数、各放射素子の位置、向き、および構成、またはこれらのパラメータの何れかの組合せ、もしくはフィールドパターンに影響を及ぼす可能性がある他のパラメータのうちの1つまたは複数が含まれ得る。」との記載があるから、上記「組」は、電磁波の振幅、位相、各放射素子の位置などのフィールドパターンに影響を及ぼす可能性があるパラメータのセットと解される。
また、引用発明の「位相差」は、フィールドに影響を及ぼすパラメータの一つであるとともに、「アンテナA1から放射されるマイクロ波とアンテナA2から放射されるマイクロ波との間で設定された」ものであるから、「アンテナA1から放射されるマイクロ波」の位相(差)と「A2から放射されるマイクロ波」の位相(差)とで複数のパラメータを使用するものといえる。
さらに、当該「アンテナA1から放射されるマイクロ波」の位相(差)と「A2から放射されるマイクロ波」の位相(差)は、互いに異なっていることは明らかである
よって、引用発明の「アンテナA1から放射されるマイクロ波とアンテナA2から放射されるマイクロ波との間で設定された複数の位相差の値とその位相差の値に対応する電磁波分布との関係を内蔵メモリに記憶させておき、複数の位相差の値を選択的に設定」する点と、
本願発明の「ターゲットエネルギ分布を検索し、検索したターゲットエネルギ分布に基づいて、フィールドに影響を及ぼすパラメータの値のどの複数の組を使用するかを決定することであって、各組が少なくともエネルギ印加区域に供給される2つの電磁波間の位相差の値を含み、前記複数の組のうちの2つは少なくとも位相差の値において互いに異なって」いる点とは、
「ターゲットエネルギ分布に基づいて、フィールドに影響を及ぼすパラメータの値のどの複数のパラメータを使用するかを決定することであって、各パラメータが少なくともエネルギ印加区域に供給される2つの電磁波間の位相差の値を含み、前記複数のパラメータのうちの2つは少なくとも位相差の値において互いに異なって」いる点で共通する。

ウ 引用発明の「マイクロ波の位相差を変化させること」とは、「アンテナA1から放射されるマイクロ波」と「A2から放射されるマイクロ波」の各位相(差)を、設定した複数の位相差となるように変化させることである。
したがって、引用発明の「マイクロ波の位相差を変化させることにより、筐体501内の電磁波分布が変化し、所望の部分を集中的に加熱する」点は、本願発明の「ターゲットエネルギ分布を得るように、前記決定した値」「についてそれぞれのフィールドパターンを励起する」点に相当する。
また、引用発明の「マイクロコンピュータ700」は、本願発明の「プロセッサ」に相当する。
よって、引用発明の「アンテナA1,A2から放射されるマイクロ波の位相差を変化させることにより、筐体501内の電磁波分布が変化し、所望の部分を集中的に加熱するようにマイクロ波の位相を調整するマイクロコンピュータ700」と、
本願発明の「前記検索したターゲットエネルギ分布を得るように、前記決定した値の各組についてそれぞれのフィールドパターンを励起するために、供給源を調整する、ように構成される少なくとも1個のプロセッサ」とは、
「前記ターゲットエネルギ分布を得るように、前記決定した値の各パラメータについてそれぞれのフィールドパターンを励起するために、供給源を調整する、ように構成される少なくとも1個のプロセッサ」である点で共通する。

したがって、本願発明と引用発明とは、
「複数の放射素子を介して空洞内の対象物に1MHzから100GHzの周波数範囲内の周波数で電磁エネルギを加えるための装置であって、
ターゲットエネルギ分布に基づいて、フィールドに影響を及ぼすパラメータの値のどの複数のパラメータを使用するかを決定することであって、各パラメータが少なくともエネルギ印加区域に供給される2つの電磁波間の位相差の値を含み、前記複数のパラメータのうちの2つは少なくとも位相差の値において互いに異なっており、
前記ターゲットエネルギ分布を得るように、前記決定した値の各パラメータについてそれぞれのフィールドパターンを励起するために、供給源を調整する、
ように構成される少なくとも1個のプロセッサ
を含むことを特徴とする装置。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
本願発明は、「ターゲットエネルギ分布を検索し、検索したターゲット分布に基いて」パラメータ値を決定し、「検索したターゲットエネルギ分布」を得るように供給源を調整するのに対し、引用発明は、そのように特定されていない点。

[相違点2]
ターゲットエネルギ分布に基づいて決定され、供給源を調整する「パラメータ」に関して、本願発明では、位相差の値を含む「組」であるのに対し、引用発明では、「複数の位相差」である点。

6 判断
ア 上記相違点1について検討する。
本願発明の「ターゲットエネルギ分布を検索し、検索したターゲットエネルギ分布に基づいて、フィールドに影響を及ぼすパラメータの値のどの複数の組を使用するかを決定する」点に関して、請求人は、令和1年7月26日に提出された意見書において、補正の根拠として、本願明細書の段落【0169】の「MSE決定モジュール42Cは、どのMSEを使用するのかを例えばターゲットエネルギ分布に基づいて決定することができる。そのような場合、MSE決定モジュール42Cは、記憶空間34Cの中に記憶されたターゲットエネルギ分布データを取り出すことができる。・・・例えば、ターゲットエネルギ分布がエネルギ印加区域の中心において比較的大きい値を有し、エネルギ印加区域の周縁においてはるかに小さい値を有する場合、MSE決定モジュール42Cは、エネルギ印加区域の中心付近に最大強度を有するフィールドパターンに関連する1つまたは複数のMSEを選択し、区域の周縁に集中するフィールドパターンに関連するMSEをより少なく選択することができる。」を引用している。
上記の引用箇所には、「ターゲットエネルギ分布を検索する」との記載はないが、上記の記載内容を踏まえると、本願発明の上記「ターゲットエネルギ分布を検索」することとは、予め記憶されたターゲットエネルギ分布データを取り出すことと解され、そして、本願発明では取り出したターゲットエネルギ分布データに応じて変数パラメータであるMSEを決定するものである。
一方、引用発明においては、「位相差の値に対応する電磁波分布との関係を内蔵メモリに記憶させておき、複数の位相差の値を選択的に設定」するものであるから、本願発明と同様に予め記憶された電磁波分布(ターゲットエネルギ分布)に応じて位相差(パラメータ)を決定するものである。
そうすると、引用発明においても位相差を決定する際において実質的に電磁波分布を取り出しているともいえ、仮にそうでないとしても、電磁波分布を取り出して、取り出した電磁波分布に基づいて位相差を決定すること、すなわち、「ターゲットエネルギ分布を検索し、検索したターゲット分布に基いて」パラメータ値を決定し、「検索したターゲットエネルギ分布」を得るように供給源を調整するように構成することは、当業者が適宜なし得たことである。


イ 上記相違点2について検討する。
引用発明における「複数の位相差」とは、「マイクロ波の位相差を変化させる」ために、「アンテナA1から放射されるマイクロ波」と「A2から放射されるマイクロ波」のそれぞれに設定された、位相差の変化前の位相(差)と変化後の位相(差)とのことであると理解される。
そして、上記「複数の位相差」は、電磁波分布(ターゲットエネルギ分布)と対応しており、それぞれ電磁波分布(ターゲットエネルギ分布)に基いて決定されると解される。
また、本願発明でいう位相差の値を含む「組」とは、上記5イで検討したとおり、電磁波の振幅、位相、各放射素子の位置などのフィールドパターンに影響を及ぼす可能性があるパラメータのセットと解されるところ、複数の位相差の値のセットを排除するものではないから、引用発明の「複数の位相差」は、本願発明の位相差の値を含む「組」に含まれるともいえる。
そうすると、上記相違点2は実質的な相違点ではない。

仮に相違点であるとしても、マイクロ波を放射する際に、位相差のみならず、電磁波の振幅、位相、各放射素子の位置などの値を設定する必要があることは、マイクロ波発生装置の技術分野において技術常識である。
そして、上記技術常識を勘案すれば、引用発明において、電磁波分布(ターゲットエネルギ分布)に基いて、マイクロ波の位相差のみならず、放射に必要な振幅、放射素子の位置などの値をパラメータの「組」として設定し、上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

ウ 本願発明が奏する効果について
上記相違点1、2によって本願発明が奏する効果は、当業者が引用発明から予測し得る程度のものであって、格別のものではない。

7 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-09-13 
結審通知日 2019-09-17 
審決日 2019-09-30 
出願番号 特願2016-15596(P2016-15596)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮崎 賢司  
特許庁審判長 山崎 勝司
特許庁審判官 平城 俊雅
槙原 進
発明の名称 モーダル解析  
代理人 特許業務法人北青山インターナショナル  

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