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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F02M |
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管理番号 | 1360012 |
審判番号 | 不服2018-10338 |
総通号数 | 244 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-04-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-07-30 |
確定日 | 2020-02-20 |
事件の表示 | 特願2016-552866「高圧燃料供給ポンプ」拒絶査定不服審判事件〔平成28年4月14日国際公開、WO2016/056333〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2013年(平成27年)9月4日(優先権主張平成26年10月9日)を国際出願日とする出願であって、その手続は以下のとおりである。 平成29年2月15日:手続補正書の提出 平成29年9月8日付け(発送日:同年9月19日):拒絶理由通知書 平成29年11月15日:意見書、手続補正書の提出 平成30年4月24日付け(発送日:同年5月8日):拒絶査定 平成30年7月30日:審判請求書、手続補正書の提出 令和元年6月24日付け(発送日:同年6月25日):拒絶理由通知書(以下、「当審拒絶理由」という。) 令和元年8月23日:意見書、手続補正書の提出 第2 本願発明 本願の請求項1ないし11に係る発明は、令和元年8月23日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「 低圧通路、電磁力によって駆動される電磁吸入弁、加圧室の燃料を加圧するプランジャ、前記プランジャの往復運動をガイドするシリンダ、前記加圧室の出口に設けられる吐出弁がポンプ本体に設けられ、前記電磁吸入弁を通して燃料を前記加圧室に吸入し、当該加圧室に吸入した燃料の一部を前記低圧通路側に戻す量を調整して、前記吐出弁から吐出される燃料の量を制御する形式の高圧燃料供給ポンプであって、 前記ポンプ本体に燃料を導入する入口となる吸入ジョイントを備えて、燃料の上流側の低圧配管に接続し、燃料吸入口から前記低圧配管側へ逆流する燃料を抑止する逆流抑止機構の全体が前記吸入ジョイント内の前記ポンプ本体の外部位置に配置され、 燃料の圧力脈動を低減する圧力脈動低減機構が、前記ポンプ本体と前記ポンプ本体に固定されるカバーとで構成される低圧燃料室に設けられ、前記低圧燃料室の外部に逆流抑止機構が配置される高圧燃料供給ポンプ。」 第3 当審拒絶理由の概要 当審拒絶理由の概要は次のとおりである。 (進歩性)本願の下記の請求項に係る発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 ・請求項1に係る発明について ・引用文献1 引 用 文 献 等 一 覧 1.特開2007-138762号公報 第4 引用文献の記載事項 1 引用文献 当審拒絶理由に引用された、本願の優先日前に頒布された引用文献(特開2007-138762号公報)には、「高圧燃料供給ポンプ」に関して、図面(特に、図3及び図4を参照。)とともに以下の事項が記載されている(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。以下同様。)。 ア 「【0001】 本発明は内燃機関の燃料噴射弁に高圧燃料を圧送する高圧燃料供給ポンプに関する。」 イ 「【0013】 燃料タンク20の燃料はフィードポンプ21によって汲み上げられ、吸入配管28を通してポンプ本体1の吸入ジョイント10aに送られる。その際ポンプ本体1への吸入燃料はプレッシャレギュレータ22にて一定の圧力に調圧される。 【0014】 吸入ジョイント10aを通過した燃料は圧力脈動低減機構9,吸入通路10dを介して容量可変機構を構成する電磁吸入弁30の吸入ポート30aに至る。脈動防止機構9については後で詳しく説明する。 【0015】 電磁吸入弁30は電磁コイル30bを備え、この電磁コイル30bが通電されている状態では電磁プランジャ30cが図1の右方に移動した状態で、ばね33が圧縮された状態が維持される。電磁プランジャ30cの先端に取り付けられた吸入弁体31が高圧ポンプの加圧室11につながる吸入口32を開いている。 【0016】 電磁コイル30bが通電されていない状態で、かつ吸入通路10d(吸入ポート30a)と加圧室11との間の流体差圧が無い時は、このばね33の付勢力により、吸入弁体31は閉弁方向に付勢され吸入口32は閉じられた状態となっている。 【0017】 具体的には以下のように動作する。 【0018】 後述するカムの回転により、プランジャ2が図1の下方に変位して吸入工程状態にある時は、加圧室11の容積は増加し加圧室11内の燃料圧力が低下する。この工程で加圧室11内の燃料圧力が吸入通路10d(吸入ポート30a)の圧力よりも低くなると、吸入弁体31には燃料の流体差圧による開弁力(吸入弁体31を図1の右方に変位させる力)が発生する。 【0019】 この流体差圧による開弁力により、吸入弁体31は、ばね33の付勢力に打ち勝って開弁し、吸入口32を開くように設定されている。 【0020】 この状態にて、エンジンコントロールユニット27(以下ECUと称す)からの制御信号が電磁吸入弁30に印加されると電磁吸入弁30の電磁コイル30bには電流が流れ、磁気付勢力により電磁プランジャ30cが図1の右方に移動し、ばね33が圧縮された状態が維持される。その結果、吸入弁体31が吸入口32を開いた状態が維持される。 【0021】 電磁吸入弁30に入力電圧の印加状態を維持したまま、プランジャ2が吸入工程を終了し、圧縮工程へと移行した場合、プランジャ2が圧縮工程(図1の上方へ移動する状態)に移ると、電磁コイル30bへの通電状態を維持したままなので磁気付勢力は維持されたままであり、依然として吸入弁体31は開弁したままである。 【0022】 加圧室11の容積は、プランジャ2の圧縮運動に伴い減少するが、この状態では、一度加圧室11に吸入された燃料が、再び開弁状態の吸入弁体31を通して吸入通路10d(吸入ポート30a)へと戻されるので、加圧室の圧力が上昇することは無い。この工程を戻し工程と称す。 【0023】 この状態で、ECU27からの制御信号を解除して、電磁コイル30bへの通電を断つと、電磁プランジャ30cに働いている磁気付勢力は一定の時間後(磁気的,機械的遅れ時間後)に消去される。吸入弁体31にはばね33による付勢力が働いているので、電磁プランジャ30cに作用する電磁力が消滅すると吸入弁体31はばね33による付勢力で吸入口32を閉じる。吸入口32が閉じるとこのときから加圧室11の燃料圧力はプランジャ2の上昇運動と共に上昇する。そして、燃料吐出口12の圧力以上になると、吐出弁機構8を介して加圧室11に残っている燃料の高圧吐出が行われ、コモンレール23へと供給される。この工程を吐出工程と称す。すなわち、プランジャ2の圧縮工程(下始点から上始点までの間の上昇工程)は、戻し工程と吐出工程からなる。 【0024】 そして、電磁吸入弁30の電磁コイルへ30cへの通電を解除するタイミングを制御することで、吐出される高圧燃料の量を制御することができる。電磁コイルへ30cへの通電を解除するタイミングを早くすれば、圧縮工程中の、戻し工程の割合が小さく、吐出工程の割合が大きい。すなわち、吸入通路10d(吸入ポート30a)に戻される燃料が少なく、高圧吐出される燃料は多くなる。一方、入力電圧を解除するタイミングを遅くすれば、圧縮工程中の、戻し工程の割合が大きく、吐出工程の割合が小さい。すなわち、吸入通路10dに戻される燃料が多く、高圧吐出される燃料は少なくなる。電磁コイルへ30cへの通電を解除するタイミングは、ECUからの指令によって制御される。 【0025】 以上のように構成することで、電磁コイルへ30cへの通電を解除するタイミングを制御することで、高圧吐出される燃料の量を内燃機関が必要とする量に制御することが出来る。 【0026】 加圧室11の出口には吐出弁機構8が設けられている。吐出弁機構8は吐出弁シート8a,吐出弁8b,吐出弁ばね8cを備え、加圧室11と燃料吐出口12に燃料差圧が無い状態では、吐出弁8bは吐出弁ばね8cによる付勢力で吐出弁シート8aに圧着され閉弁状態となっている。加圧室11の燃料圧力が、燃料吐出口12の燃料圧力よりも大きくなった時に始めて、吐出弁8bは吐出弁ばね8cに逆らって開弁し、加圧室11内の燃料は燃料吐出口12を経てコモンレール23へと高圧吐出される。 【0027】 かくして、燃料吸入口10aに導かれた燃料はポンプ本体1の加圧室11にてプランジャ2の往復動によって必要な量が高圧に加圧され、燃料吐出口12からコモンレール23に圧送される。」 ウ 「【0032】 以下に高圧燃料ポンプの構成,動作を図1乃至図5を用いてさらに詳しく説明する。 【0033】 ポンプ本体には中心に加圧室11が形成されており、さらに加圧室11に燃料を供給するための電磁吸入弁30と加圧室11から吐出通路に燃料を吐出するための吐出弁機構8が設けられている。また、プランジャ2の進退運動をガイドするシリンダ6が加圧室11に臨むようにして取り付けられている。 【0034】 シリンダ6は外周がシリンダホルダ7で保持され、シリンダホルダ7の外周に刻設された雄ねじを、ポンプ本体1に螺刻された雌ねじにねじ込むことによってポンプ本体1に固定される。シリンダ6は加圧室内で進退運動するプランジャ2をその進退運動方向に沿って摺動可能に保持する。 【0035】 プランジャ2の下端には、エンジンのカムシャフトに取り付けられたカム5の回転運動を上下運動に変換し、プランジャ2に伝達するタペット3が設けられている。プランジャ2はリテーナ15を介してばね4にてタペット3に圧着されている。これによりカム5の回転運動に伴い、プランジャ2を上下に進退(往復)運動させることができる。 【0036】 また、シリンダホルダ7の内周下端部に保持されたプランジャシール13がシリンダ6の図中下端部においてプランジャ2の外周に摺動可能に接触する状態で設置されており、これによりプランジャ2とシリンダ6との間のブローバイ隙間がシールされ、燃料が外部に漏れることを防止する。同時にエンジンルーム内の摺動部を潤滑する潤滑油(エンジンオイルも含む)がブローバイ隙間を介してポンプ本体1の内部に流入するのを防止する。 【0037】 図3に示すように、ダンパカバー14には、ポンプ内で発生した圧力脈動が燃料配管28へ波及するのを低減させる圧力脈動低減機構9が設置されている。 【0038】 圧力脈動低減機構9は圧力低減ダンパ9a,遮断機構9bからなる。遮断機構9bは吸入口10aを備えた吸入ジョイント16によりダンパカバー14に固定されている。そして、ダンパカバー14はポンプ本体1に固定され、吸入流路は10a,10b,10c,10dからなり、途中にはポンプ内で発生した圧力脈動の燃料配管28への波及を低減させる圧力脈動低減機構9が存在する。 【0039】 一度加圧室11に吸入された燃料が、容量制御状態のため再び開弁状態の吸入弁体31を通して吸入通路10d(吸入ポート30a)へと戻される場合、吸入通路10d(吸入ポート30a)へ戻された燃料により吸入通路10には圧力脈動が発生する。しかし、吸入通路10に設けたダンパ室としての吸入通路10c(カップ状のダンパカバー14とポンプ本体の外周囲に形成された環状のくぼみとの間に形成される)には、波板状の円盤型金属板2枚をその外周で張り合わせ、内部にアルゴンのような不活性ガスを注入した金属ダンパ9aが取り付けられており、圧力脈動はこの金属ダンパ9aが膨張・収縮することで吸収低減される。9cは金属ダンパ9aをダンパカバー14の内周部に固定するための取付金具である。 【0040】 また、吸入ジョイント16の内部には遮断機構9bが設けられている。遮断機構9bを構成する遮断弁シート9b1の外周が吸入ジョイント16の燃料流入側の内周に圧入により固定されている。遮断機構9bを構成する円盤状の遮断弁9b2の一面は遮断弁シート9b1に当接して通路を遮断する。遮断機構9bを構成する弦巻状の遮断弁ばね9b3の一端が遮断弁9b2の他面に当接している。遮断弁ばね9b3の他端は吸入ジョイント16の燃料流入側の内周にその外周が圧入により固定される遮断ばねストッパ9b4の内面に当接して支持されている。 【0041】 かくして、遮断弁9b2は燃料の流れを、吸入口10aから10b,10c,10dの方向のみに制限するよう遮断弁ばね3にて遮断弁シート9b1に押圧されている。そして、遮断弁9b2には小孔9b5が設けられている。 【0042】 戻し工程中、遮断弁9bは閉弁状態になるので、燃料は10aから吸入配管28へ小孔9b5を通して僅かに流れるのみであり、大部分は圧力脈動ダンパ9aの容積変化によって吸収される。ここで、小孔9b5は戻し工程中に吸入流路10b,10c,10d(吸入ポート30a)の燃料圧力が上昇してしまうのを抑える。」 エ 上記ウの段落【0037】の「図3に示すように、ダンパカバー14には、ポンプ内で発生した圧力脈動が燃料配管28へ波及するのを低減させる圧力脈動低減機構9が設置されている。」という記載、及び段落【0038】の「圧力脈動低減機構9は圧力低減ダンパ9a,遮断機構9bからなる。」という記載から、圧力低減ダンパ9aは圧力脈動低減機構9の一部をなすことが分かる。 オ 上記ウの段落【0040】の「吸入ジョイント16の内部には遮断機構9bが設けられている。」という記載から、吸入ジョイント16の内部には遮断機構9bが設けられていることが分かる。 また、段落【0040】及び図3を参照すると、遮断機構9bを構成する遮断弁シート9b1、遮断弁9b2、遮断弁ばね9b3の一端及び遮断弁ストッパ9b4の一端は吸入ジョイント16の内部に位置し、遮断弁ばね9b3の他端及び遮断弁ストッパ9b4の他端は吸入ジョイント16の外部に位置しているといえる。 また、段落【0039】の記載から、ダンパ室としての吸入通路10cが低圧燃料室を構成しているといえる。そして、段落【0040】及び図3を参照すると、遮断機構9bを構成する遮断弁シート9b1、遮断弁9b2、遮断弁ばね9b3の一端及び遮断弁ストッパ9b4の一端は吸入通路10cの外部に位置し、遮断弁ばね9b3の他端及び遮断弁ストッパ9b4の他端は吸入通路10cの内部に位置しているといえる。 カ 上記ウの段落【0038】の「吸入通路10に設けたダンパ室としての吸入通路10c(カップ状のダンパカバー14とポンプ本体の外周囲に形成された環状のくぼみとの間に形成される)には、波板状の円盤型金属板2枚をその外周で張り合わせ、内部にアルゴンのような不活性ガスを注入した金属ダンパ9aが取り付けられており」という記載から、ダンパ室としての吸入通路10cには圧力低減ダンパ9aが設けられることが分かる。 以上から、引用文献には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 〔引用発明〕 「 吸入通路10d、電磁力によって駆動される電磁吸入弁30、加圧室11の燃料を加圧するプランジャ2、前記プランジャ2の往復運動をガイドするシリンダ6、前記加圧室11の出口に設けられる吐出弁8bがポンプ本体1に設けられ、前記電磁吸入弁30を通して燃料を前記加圧室11に吸入し、当該加圧室11に吸入した燃料の一部を前記吸入通路10d側に戻す量を調整して、前記吐出弁8bから吐出される燃料の量を制御する形式の高圧燃料供給ポンプであって、 前記ポンプ本体1に燃料を導入する入口となる吸入ジョイント16を備えて、燃料の上流側の吸入通路10bに接続し、吸入口32から前記吸入通路10d側へ逆流する燃料を抑止する遮断機構9bの遮断弁シート9b1、遮断弁9b2、遮断弁ばね9b3の一端及び遮断弁ストッパ9b4の一端が吸入ジョイント16の内部に配置されるとともに遮断機構9bの全体が前記ポンプ本体1の外部に配置され、 燃料の圧力脈動を低減する圧力低減ダンパ9aが、前記ポンプ本体1と前記ポンプ本体1に固定されるダンパカバー14とで構成される吸入通路10cに設けられ、前記吸入通路10cの外部に遮断機構9bの遮断弁シート9b1、遮断弁9b2、遮断弁ばね9b3の一端及び遮断弁ストッパ9b4の一端が配置される高圧燃料供給ポンプ。」 第5 対比及び判断 1 引用発明との対比及び判断 本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「吸入通路10d」は、その機能及び構造からみて、前者の「低圧通路」に相当し、以下同様に、「電磁吸入弁30」は「電磁吸入弁」に、「加圧室11」は「加圧室」に、「プランジャ2」は「プランジャ」に、「シリンダ6」は「シリンダ」に、「吐出弁8b」は「吐出弁」に、「ポンプ本体1」は「ポンプ本体」に、「電磁吸入弁30」は「電磁吸入弁」に、「吸入通路10d」は「低圧通路」及び「低圧配管」に、「吐出弁8b」は「吐出弁」に、「吸入ジョイント16」は「吸入ジョイント」に、「吸入口32」は「燃料吸入口」に、「ダンパカバー14」は「カバー」に、「吸入通路10c」は「低圧燃料室」に、それぞれ相当する。 また、引用発明の「圧力脈動低減機構9」は、「圧力低減ダンパ9a」及び「遮断機構9b」からなるものであり、引用発明の「圧力低減ダンパ9a」は、その機能及び構造からみて、本願発明の「圧力脈動低減機構」に相当し、同様に、引用発明の「遮断機構9b」は、本願発明の「逆流抑止機構」に相当する。 また、引用発明の「遮断機構9bの遮断弁シート9b1、遮断弁9b2、遮断弁ばね9b3の一端及び遮断弁ストッパ9b4の一端が前記吸入ジョイント16内に配置されるとともに遮断機構9bの全体が前記ポンプ本体1の外部位置に配置され」と、本願発明の「逆流抑止機構の全体が前記吸入ジョイント内の前記ポンプ本体の外部位置に配置され」とは、「逆流抑止機構のある部分が前記吸入ジョイント内に配置されるとともに前記逆流抑止機構の全体が前記ポンプ本体の外部位置に配置され」という限りにおいて一致する。 また、引用発明の「前記吸入通路10cの外部に遮断機構9bの遮断弁シート9b1、遮断弁9b2、遮断弁ばね9b3の一端及び遮断弁ストッパ9b4の一端が配置される」と、本願発明の「前記低圧燃料室の外部に逆流抑止機構が配置される」とは、「前記低圧燃料室の外部に逆流抑止機構のある部分が配置される」という限りにおいて一致する。 そうすると、本願発明と引用発明とは、次の一致点、相違点がある。 〔一致点〕 「 低圧通路、電磁力によって駆動される電磁吸入弁、加圧室の燃料を加圧するプランジャ、前記プランジャの往復運動をガイドするシリンダ、前記加圧室の出口に設けられる吐出弁がポンプ本体に設けられ、前記電磁吸入弁を通して燃料を前記加圧室に吸入し、当該加圧室に吸入した燃料の一部を前記低圧通路側に戻す量を調整して、前記吐出弁から吐出される燃料の量を制御する形式の高圧燃料供給ポンプであって、 前記ポンプ本体に燃料を導入する入口となる吸入ジョイントを備えて、燃料の上流側の低圧配管に接続し、燃料吸入口から前記低圧配管側へ逆流する燃料を抑止する逆流抑止機構のある部分が前記吸入ジョイント内に配置されるとともに前記逆流抑止機構の全体が前記ポンプ本体の外部位置に配置され、 燃料の圧力脈動を低減する圧力脈動低減機構が、前記ポンプ本体と前記ポンプ本体に固定されるカバーとで構成される低圧燃料室に設けられ、前記低圧燃料室の外部に逆流抑止機構のある部分が配置される高圧燃料供給ポンプ。」 〔相違点〕 (1)相違点1 本願発明においては、「逆流抑止機構の全体が前記吸入ジョイント内」「に配置され」るのに対し、引用発明においては、かかる構成を備えていない点。 (2)相違点2 本願発明においては、「前記低圧燃料室の外部に逆流抑止機構が配置される」のに対し、引用発明においては、かかる構成を備えていない点。 上記相違点について検討する。 (1)相違点1について 引用文献の段落【0040】及び図3を参照すると、遮断機構9bを構成する遮断弁シート9b1、遮断弁9b2、遮断弁ばね9b3の一端及び遮断弁ストッパ9b4の一端は吸入ジョイント16の内部に位置し、遮断弁ばね9b3の他端及び遮断弁ストッパ9b4の他端は吸入ジョイント16の外部に位置しているから、吸入ジョイント16の内部には遮断機構9bの大部分が配置されているといえる。 また、引用文献の段落【0040】の「吸入ジョイント16の内部には遮断機構9bが設けられている。」という記載から、引用文献には、遮断機構9bを吸入ジョイント16の内部に配置するという技術思想が記載されているといえる。 してみると、引用発明において、上記記載に係る技術思想を踏まえて、「逆流抑止機構の全体が前記吸入ジョイント内」に「配置され」るものとすることは、当業者が容易に想到できたことである。 よって、引用発明において、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 (2)相違点2について 引用文献の段落【0039】の記載から、ダンパ室としての吸入通路10cが低圧燃料室を構成しているといえる。そして、段落【0040】及び図3を参照すると、遮断機構9bを構成する遮断弁シート9b1、遮断弁9b2、遮断弁ばね9b3の一端及び遮断弁ストッパ9b4の一端は吸入通路10cの外部に位置し、遮断弁ばね9b3の他端及び遮断弁ストッパ9b4の他端は吸入通路10cの内部に位置しているから、吸入通路10cの外部には遮断機構9bの大部分が配置されているといえる。 また、引用発明においては、ダンパ室である吸入通路10cの外部に遮断機構9bの一部(遮断弁ばね9b3の他端及び遮断弁ストッパ9b4の他端)が配置されているが、相違点1の検討で上記したように、引用文献には、遮断機構9bを吸入ジョイント16の内部に配置するという技術思想が記載されているから、逆流抑止機構の全体が前記吸入ジョイント内に配置されるものとすることにより、「前記低圧燃料室の外部に逆流抑止機構が配置される」ものとすることは、当業者が通常の努力で容易に想到し得たことである。 よって、引用発明において、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 また、本願発明は、全体としてみても、引用発明から予測し得ない格別な効果を奏するものではない。 したがって、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2019-12-12 |
結審通知日 | 2019-12-17 |
審決日 | 2020-01-06 |
出願番号 | 特願2016-552866(P2016-552866) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(F02M)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中川 康文、村山 禎恒 |
特許庁審判長 |
水野 治彦 |
特許庁審判官 |
齊藤 公志郎 金澤 俊郎 |
発明の名称 | 高圧燃料供給ポンプ |
代理人 | ポレール特許業務法人 |