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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B24B |
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管理番号 | 1360027 |
審判番号 | 不服2019-1714 |
総通号数 | 244 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-04-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-02-06 |
確定日 | 2020-02-20 |
事件の表示 | 特願2016-130893「拡径用ドリルビット」拒絶査定不服審判事件〔平成28年11月24日出願公開、特開2016-196082〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2014年(平成26年)1月29日(優先権主張2013年2月19日、日本国、2013年5月16日、日本国)を国際出願日とする特願2015-501308号の一部を、平成28年6月30日に新たな特許出願としたものであって、その後の手続の経緯は以下のとおりである。 平成29年 5月30日付け :拒絶理由通知 平成29年 7月20日 :意見書の提出 平成29年12月20日付け :拒絶理由通知 平成30年 1月30日 :意見書、手続補正書(以下、この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。)の提出 平成30年 6月19日付け :拒絶理由通知 平成30年 7月17日 :意見書の提出 平成30年12月12日付け :拒絶査定 平成31年 2月 6日 :審判請求書の提出 令和 1年 9月30日付け :拒絶理由通知 令和 1年11月19日 :意見書の提出 第2 本願発明 本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。 「コンクリートの躯体に穿孔したアンカー用の下穴に挿入して用いられ、前記下穴の一部を研削により拡径するための拡径用ドリルビットであって、 ダイヤモンドの切刃により前記下穴の一部を研削する複数の切刃部と、 前記複数の切刃部を、それぞれ平行移動するように径方向にスライド移動可能に保持する切刃保持部と、 前記切刃保持部を支持するシャンク部と、を備え、 前記複数の切刃部は、回転に伴う遠心力により、前記切刃保持部に対し径方向外側に拡開するようにスライド移動することを特徴とする拡径用ドリルビット。」 第3 拒絶の理由 令和1年9月30日付けで当審が通知した拒絶理由は、次のとおりのものである。 本願発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2、3に記載された周知技術に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:特開2001-164863号公報 引用文献2:米国特許出願公開第2011/0053469号明細書 引用文献3:米国特許第5899795号明細書 第4 引用文献の記載及び引用発明 1 引用文献1の記載 引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同じ。) (1)段落【0001】-【0003】 「【発明の属する技術分野】本発明は、固い岩盤やコンクリート打設部に設けられる掘削孔の一部に孔径拡大部を設けるために使用する、掘削孔の部分拡径装置に関する。 【発明が解決しようとする課題】従来、固い岩盤やコンクリート打設部へ差し筋やアンカーボルト等を取付けるには、先ず、ダイヤモンドビットを備えた穿孔機を用いて取付け個所に細長い竪孔の掘削を行ない、その後で、竪孔にアンカーボルト等を挿入すると共にモルタルを充填して固化させ、アンカーボルト等を竪孔に固定するるという作業を行なっている。ところが、上記のようにして岩盤やコンクリート打設部へ固定されているアンカーボルト等に強い引っ張り力が作用すると、掘削孔の孔壁面が滑らかなため固化しているモルタルとともに抜け出すという不具合の起こることが往々にしてあり、その解決策が望まれていた。 本発明者は、このようなモルタルの引き抜きを防止するためにはモルタルの抜け止めを掘削孔に設ければよいという知見に基づき、掘削孔の一部に孔径拡大部を設けて、この孔径拡大部を含めた掘削孔にモルタルを充填して固化させ、孔径拡大部に存在する固化モルタル部を抜け止めとすることに着目して、本発明を完成したものであって、その目的は掘削孔に孔径拡大部を簡単に設けることができる新規な掘削孔の部分拡径装置の提供を目的とするものである。また、本発明の他の目的は前述した通常の穿孔機にダイヤモンドビットと取り替えて使用できる利便性があり、しかも、構造が簡単で耐久性に富む掘削孔の部分拡径装置を提供することにある。」 (2)段落【0004】-【0005】 「【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明の特徴とする掘削孔の部分拡径装置は、下端部に回転中心軸線を共有する固定フランジが固設されている回転筒と、上記固定フランジと対向して配設されている支持フランジと、この支持フランジと上記固定フランジとの間に挟まれて回動可能に設けられている一対の半円盤状のビット体を備え、その一対のビット体は、それらの直線面部を接するようにして、上記回転中心軸線に対し固定フランジの対称位置に固定されて支持フランジを支持する一対のねじ軸にそれぞれ回動可能に取付けられている構成である。 この構成によれば、回転筒を穿孔機の回転軸に取付け、既に掘削されている岩盤等の掘削孔内に挿入して回転させると、一対のビット体は遠心力によって拡開するようになり、掘削孔とは直交した方向へ向かう削孔作業がビット体刃先部の厚さに相当した幅の範囲で行なわれる。この削孔作業はビット体が拡開し切った時点で終了し、掘削孔の一部(好ましくは掘削孔の下部)にはビット体が拡開し切った時の両刃先部間の距離に見合う孔径拡大部が設けられることになる。また、孔壁の抵抗に打ち勝つようにビット体の拡開作用を助長して削孔作業を支障なく行なうため、両ビット体間に引張りばねを掛け渡して、両ビット体が互いに拡開方向へ常時付勢されるように実施することも可能である。なお、引張りばねを設けた場合は、ビット体を引張りばねに抗して相互に引き寄せ、円盤状にしてから掘削孔内に挿入する。」 (3)段落【0006】-【0009】 「【発明の実施の形態】以下に、本発明の実施の形態を説明する。1は回転筒であり、その上半部側は通常の穿孔機(仮想線により一部が示されている)の回転軸と螺合できる雌ねじ1bが設けられている接続筒部1aに形成され、また、回転筒1の下端部に該回転筒1と回転中心軸線を共有する状態で固定フランジ2が固設されており、この固定フランジ2には、その回転中心軸線に対して対称位置に一対のねじ軸3,3が螺合により固定されている。 ねじ軸3,3には、それぞれの直線面部4aを接するようにして、一対の半円盤状のビット体4,4が回動可能に取付けられ、また、ビット体4,4に外接した状態で固定フランジ2と対応して支持フランジ5が挿着されており、この支持フランジ5はねじ軸3,3にそれぞれ保持ナット6,6を螺合することにより保持されている。そして、ビット体4,4の回動動作に支障を与えない程度に保持ナット5,5(当審注:「保持ナット6,6」の誤記)を締付けて、固定フランジ2と支持フランジ5との間にビット体4,4を緩く挟着する。 ビット体4,4の円弧面部4b,4bには、それぞれの一端部から相対向させた状態で、該円弧面部4bのほぼ3分1の部分にダイヤモンドのろう付けにより形成された刃先部7が設けられている。また、ビット体4,4の各直線面部4aには、該直線面部4aの長さ方向に沿って、刃先部7側に下る傾斜溝8がそれぞれ設けられており、この傾斜溝8,8内には、該傾斜溝8の深部側でビット体4,4にそれぞれ掛け止められている引張りばね9が収容されており、11はその掛け止め部(止めねじ等)である。 そして、引張りばね9の存在により、ビット体4,4はねじ軸3,3を支点として常時拡開する方向へ向かって付勢されており(図6を参照)、削孔時にビット体4に作用する遠心力と協同して、その孔壁の抵抗に対しビット体4の拡開動作を助長することができる。なお、固定フランジ2、支持フランジ5及び円盤状に形成したときのビット体4,4(図5を参照)の外径は同一であり、また、ビット体4の回動角度はその回動中心から直線面部4aに下した垂線の長さにより規制される。図中、2a,5aは刃先部7を逃げるために固定フランジ2と支持フランジ5にそれぞれ設けられている凹み、2bは冷却水の供給孔、12はワッシャである。」 (4)また、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。 上記(1)の「本発明は、・・・掘削孔の部分拡径装置に関する。・・・コンクリート打設部へ差し筋やアンカーボルト等を取付けるには、先ず、ダイヤモンドビットを備えた穿孔機を用いて取付け個所に細長い竪孔の掘削を行ない・・・」の記載から、「掘削孔」は、アンカーボルト等を取付けるためのものと認められる。 また、上記(3)の「・・・回転筒1の下端部に該回転筒1と回転中心軸線を共有する状態で固定フランジ2が固設されており、この固定フランジ2には、その回転中心軸線に対して対称位置に一対のねじ軸3,3が螺合により固定されている。 ねじ軸3,3には、それぞれの直線面部4aを接するようにして、一対の半円盤状のビット体4,4が回動可能に取付けられ、また、ビット体4,4に外接した状態で固定フランジ2と対応して支持フランジ5が挿着されており、この支持フランジ5はねじ軸3,3にそれぞれ保持ナット6,6を螺合することにより保持されている。そして、ビット体4,4の回動動作に支障を与えない程度に保持ナット5,5(当審注:「保持ナット6,6」の誤記)を締付けて、固定フランジ2と支持フランジ5との間にビット体4,4を緩く挟着する」の記載から、「固定フランジ2」、「ねじ軸3,3」、「支持フランジ5」が一体となって「一対のビット体4,4」をねじ軸3,3を支点として回動可能に保持していると認められる。 また、上記(2)の「・・・回転筒を穿孔機の回転軸に取付け、既に掘削されている岩盤等の掘削孔内に挿入して回転させると、一対のビット体は遠心力によって拡開するようになり、掘削孔とは直交した方向へ向かう削孔作業がビット体刃先部の厚さに相当した幅の範囲で行なわれる」の記載及び図5、6の図示内容から、「一対のビット体4,4」は、回転に伴う遠心力により、前記固定フランジ2、ねじ軸3,3及び支持フランジ5に対しねじ軸3,3を支点として径方向外側に拡開するように回動すると認められる。 2 引用発明 上記1の記載事項及び図面で図示された内容からみて、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「コンクリート打設部に設けられる、アンカーボルト等を取付けるための掘削孔の一部に、掘削孔とは直交した方向へ向かう削孔作業を行うことにより孔径拡大部を設けるために使用する掘削孔の部分拡径装置であって、 ダイヤモンドのろう付けにより形成された刃先部7が設けられている一対のビット体4,4と、 前記一対のビット体4,4をねじ軸3,3を支点として回動可能に保持する固定フランジ2、ねじ軸3,3及び支持フランジ5と、 前記固定フランジ2を支持する回転筒1と、を備え、 前記一対のビット体4,4は、回転に伴う遠心力により、前記固定フランジ2、ねじ軸3,3及び支持フランジ5に対しねじ軸3,3を支点として径方向外側に拡開するように回動する掘削孔の部分拡径装置。」 3 引用文献2の記載 引用文献2には、以下の事項が記載されている。 (1)段落[0027] 「FIGS. 3A and 3B illustrate a non-limiting embodiment of the tool 10 in a stationary-state configuration ( FIG. 3A ) and a dynamic-state configuration, e.g., during rotation ( FIG. 3B ). The stationary-state configuration is present when the tool 10 is not rotating, while the dynamic-state configuration is present during rotation of the tool 10 . In the stationary state, the shoe 24 and the abrasive pad 26 are freely slidably movable (e.g., float) within the opening 16 in the body 12 . Once the tool 10 is rotated, the cutting elements 22 are driven outwardly, or radially, from the body 12 in response to the centrifugal force ”F” in the direction indicated by arrow 29 . During rotation the cutting surface 28 is extended through the opening 16 and beyond the outer surface 18 of the body 12 . The shoulder 32 ( FIG. 1 ) prevents the cutting element 22 from exiting the opening 16 during rotation. Thus, each of the cutting elements 22 has at least two positions within the tool 10 . The first, stationary position is illustrated in FIG. 3A . In this position, the abrasive pad 26 is not extended to its abrading position. The second, dynamic position is illustrated in FIG. 3B . In the second position, the abrasive pad 36 is in its dynamic-state abrading position.」 (当審訳:図3A及び図3Bは、定常状態の構成(図3A)や動的状態の構成、例えば、回転中(図3B)での工具10の非限定的な実施形態を示している。定常状態の構成は、工具10が回転していない場合に存在し、動的状態の構成は、工具10の回転中に存在する。定常状態では、シュー24及び研磨パッド26は、本体12の開口16内で自由に摺動可能に移動可能(例えば浮動)である。工具10が回転させられると、切削要素22は、矢印29によって示される方向に遠心力「F」に応じてボディ12から、外方にまたは半径方向に駆動される。回転中、切削面28は、開口部16を通って本体12の外面18を越えて拡げられる。肩部32(図1)は、切削要素22が回転中に開口部16から出ることを防止する。このようにして、切削要素22の各々は、工具10内で少なくとも2つの位置を有している。第1に、定常位置が図3Aに示されている。この位置では、研磨パッド26は、研磨位置に拡げられていない。第2に、動的位置が図3Bに示されている。第2の位置において、研磨パッド36は、その動的状態研磨位置にある。) (2)段落[0028] 「FIG. 4 illustrates a technique for using the tool 10 to abrade the inner wall 130 of a pipe 132 . In one embodiment, the user may manually push the cutting element 22 into the opening 16 to reduce the total outside diameter of the tool 10 to a size smaller than the inside diameter of the pipe 132 . In the stationary-state configuration, the tool 10 may then be introduced into an opening 134 of the pipe 132 . Once the tool 10 is in position within the pipe 132 , the tool 10 may be rotated by any suitable technique, such as a pneumatic die grinder (not shown). When rotating, the cutting surface 28 is forced outwardly in the direction indicated by arrow 29 from the body 12 and may contact the inner wall 130 of the pipe 132 . The force of the cutting surface 28 against the inner wall 130 of the pipe 132 may abrade, e.g., grind away, material, such as oxidation, on the inner wall 130 . The feed pressure exerted by the cutting surface 28 against the inner wall 130 may be adjusted by adjusting, for example, the rotational speed of the tool 10 and/or the weight of the cutting element 22 . Generally, if the cutting element 22 has more mass, a higher feed pressure will result. The reference line 20 allows the operator to visually determine if the abrasive pad 24 is nearing the opening 134 of the pipe 132 . If the abrasive pad 24 is partially withdrawn from the pipe 132 during operation, the abrasive pad 24 may experience uneven wear resulting in uneven oxide removal and shortened pad life. Therefore, the reference line 20 can alert the user that the abrasive pad 24 is nearing the end of the pipe 132 .」 (当審訳:図4は、工具10を使用してパイプ132の内壁130を研磨するための技術を示す。一実施形態では、ユーザは、手動で切削要素22を開口16内に押圧し、パイプ132の内径よりも小さいサイズに工具10の全外径を減少させることができる。定常状態の構成において、工具10は、パイプ132の開口134に導入することができる。一旦工具10がパイプ132内に位置すると、工具10は、空気圧ダイグラインダー(図示せず)のような任意の適切な技術によって回転されてもよい。回転すると、切削面28は、本体12から矢印29の方向に外側に付勢され、パイプ132の内壁130と接触することができる。パイプ132の内壁130に対する切削面28の力は、内壁130上の酸化物のような材料を研磨、研削する。内壁130に対して切削面28によって及ぼされる供給圧力は、例えば、工具10の回転速度および/または切削要素22の重さを調整することにより調整される。一般に、切削要素22がより大きな質量を有する場合、より高い供給圧力が生じることになる。基準線20は、オペレータに、研磨パッド24がパイプ132の開口134に接近しているかを視覚的に決定させる。動作の間、研磨パッド24がパイプ132から部分的に引き出されると、研磨パッド24は不均一な酸化物除去および短縮化されたパッド寿命を引き起こす偏摩耗を経験することがある。したがって、基準線20は、研磨パッド24がパイプ132の端部に近づいていることをユーザに警告することができる。) (3)図10及び11には、本体12に開口16が複数設けられることが図示されている。 (4)前記(1)の記載及び図3A,3Bから、工具10の回転に伴う遠心力により、複数の切削要素22が開口16内で摺動し平行移動するようにスライド移動することが理解できる。 4 引用文献3の記載 引用文献3には、以下の事項が記載されている。 (1)明細書第7欄第35-47行 「In FIG. 2a and FIG. 2b, a cross-section across 2b-2b of FIG. 2a, the grinding tool 201 comprises a robust flange 203 having a plurality of radially extending keyways 205 adapted to slidingly receive the foot 207 of a grinding shoe 209. The foot 207 of grinding shoe 209 has an elongated recess 211 through which securing bolt 213 passes. Bolt 213, nut 215, and washer 217 are machined such as to allow a slight clearance 219 between the foot 207 and the head of bolt 213 such that the shoes 209 may slide outward in keyways 205 against the pressure of return springs 221 as centrifugal force overcomes the return spring force. Return springs 221 are secured to flange 203 and shoe 209 by fasteners 223 and 225.」 (当審訳:図2a及び図2aの2b-2bを横切る断面である図2bにおいて、研削工具201は、研削シュー209の脚部207を摺動可能に受けるように複数の半径方向に延在するキー溝205を有する丈夫なフランジ203を備えている。研削シュー209の脚部207は、固定ボルト213が通過する細長い凹部211を有する。ボルト213、ナット215及び座金217は、脚部207とボルト213の頭部の間にわずかな隙間219を可能にするように機械加工されることにより、シュー209は、遠心力が戻しばねの力に打ち勝ち、戻しばね221の圧力に抗してキー溝205内で外向きに摺動することができる。戻しばね221は、ファスナ223及び225によって、フランジ203及びシュー209に固定されている。) (2)明細書第7欄第66行-第8欄第11行 「In operation (see FIG. 2c), the rotation of the tool head generates an outward centrifugal force which acts against the force of return springs 221, extending the shoes 209 away from flange 203. The outside surfaces of the shoes contact the weld or protrusion to be removed, grinding it away. The greatest grinding pressure will be exerted against the most protruding portions of weld. Shoes which during rotation do not encounter weld bear against the pipe wall, but at the pressure generated have little effect unless the air pressure (and rotational speed) is increased inordinately. In a preferred embodiment, the lateral face (thrust face) 241 of the grinding shoes 209 is coated with abrasive so as to be able to perform a "plunge cut."」 (当審訳:動作中(図2c参照)、工具ヘッドの回転が、戻しばね221の力に抗して作用する遠心力を発生し、シュー209をフランジ203から離れるように拡げる。シューの外面は、除去すべき溶接部または突起に接触し、これを研削する。最も大きい研削圧は、溶接部の最も突出した部分に対して加えられるであろう。シューは回転中に管壁に対する溶接に遭遇しないが、発生した圧力で、空気圧(および回転速度)が過度に増大しない限りほとんど効果を有している。好ましい実施形態では、研削シュー209の側端面(スラスト面)241は、「プランジカット」を実行することができるように研磨材で被覆されている。) (3)前記(1)、(2)の記載及び図2a,2cから、工具ヘッドの回転に伴う遠心力により、複数のシュー209がキー溝205を摺動し平行移動するようにスライド移動することが理解できる。 5 上記3、4の記載から、引用文献2及び3には、次の周知技術が記載されていると認められる。 「回転に伴う遠心力により、径方向外側に拡開するように動く切削・研磨部を備えた装置において、複数の切削・研磨部を、それぞれ平行移動するように径方向にスライド移動可能に保持する保持部を備え、前記複数の切削・研磨部は、回転に伴う遠心力により、径方向外側に拡開するようにスライド移動する構成を有すること。」 第5 対比 1 本願発明と引用発明とを対比すると、以下のとおりとなる。 (1)引用発明の「コンクリート打設部」は本願発明の「コンクリートの躯体」に相当し、以下同様に「アンカーボルト等」は「アンカー」に、「掘削孔」は「(穿孔した)下穴」に、「掘削孔の部分拡径装置」は「拡径用ドリルビット」に、「ダイヤモンドのろう付けにより形成された刃先部7」は「ダイヤモンドの切刃」に、「(刃先部7が設けられている)一対のビット体4,4」は「複数の切刃部」に、「固定フランジ2、ねじ軸3,3及び支持フランジ5」はビット体を保持するものであるから「切刃保持部」に、「回転筒1」は「シャンク部」に、それぞれ相当する。 (2)引用発明においては、掘削孔の一部に孔径拡大部を設けるために、部分拡径装置を掘削孔に挿入して、掘削孔とは直交した方向へ向かう削孔作業が行われるものであり、掘削孔の一部を研削していることは明らかであるから、引用発明の「コンクリート打設部に設けられる、アンカーボルト等を取付けるための掘削孔の一部に、掘削孔とは直交した方向へ向かう削孔作業を行うことにより孔径拡大部を設けるために使用する掘削孔の部分拡径装置」は、本願発明の「コンクリートの躯体に穿孔したアンカー用の下穴に挿入して用いられ、前記下穴の一部を研削により拡径するための拡径用ドリルビット」に相当する。 (3)引用発明においては、一対のビット体4,4の刃先部7が、掘削孔の一部を研削していることから、引用発明の「ダイヤモンドのろう付けにより形成された刃先部7が設けられている一対のビット体4,4」は、本願発明の「ダイヤモンドの切刃により前記下穴の一部を研削する複数の切刃部」に相当する。 (4)引用発明の「前記一対のビット体4,4をねじ軸3,3を支点として回動可能に保持する固定フランジ2、ねじ軸3,3及び支持フランジ5」と本願発明の「前記複数の切刃部を、それぞれ平行移動するように径方向にスライド移動可能に保持する切刃保持部」とを対比すると、「前記複数の切刃部を径方向に移動可能に保持する切刃保持部」という点で一致する。 (5)引用発明の「前記一対のビット体4,4は、回転に伴う遠心力により、前記固定フランジ2、ねじ軸3,3及び支持フランジ5に対しねじ軸3,3を支点として径方向外側に拡開するように回動する」ことと本願発明の「前記複数の切刃部は、回転に伴う遠心力により、前記切刃保持部に対し径方向外側に拡開するようにスライド移動する」こととを対比すると、「前記複数の切刃部は、回転に伴う遠心力により、前記切刃保持部に対し径方向外側に拡開するように移動する」という点で一致する。 2 したがって、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 【一致点】 「コンクリートの躯体に穿孔したアンカー用の下穴に挿入して用いられ、前記下穴の一部を研削により拡径するための拡径用ドリルビットであって、 ダイヤモンドの切刃により前記下穴の一部を研削する複数の切刃部と、 前記複数の切刃部を径方向に移動可能に保持する切刃保持部と、 前記切刃保持部を支持するシャンク部と、を備え、 前記複数の切刃部は、回転に伴う遠心力により、前記切刃保持部に対し径方向外側に拡開するように移動する拡径用ドリルビット。」 【相違点】 本願発明は、「複数の切刃部を、それぞれ平行移動するように径方向にスライド移動可能に保持する切刃保持部」を備え、「前記複数の切刃部は、回転に伴う遠心力により」、「径方向外側に拡開するようにスライド移動する」のに対し、引用発明は、「一対のビット体4,4をねじ軸3,3を支点として回動可能に保持する固定フランジ2、ねじ軸3,3及び支持フランジ5」を備え、「前記一対のビット体4,4は、回転に伴う遠心力により」、「ねじ軸3,3を支点として径方向外側に拡開するように回動する」点。 第6 判断 上記相違点について、検討する。 1 相違点について 回転に伴う遠心力により、径方向外側に拡開するように動く切削・研磨部を備えた装置において、複数の切削・研磨部を、それぞれ平行移動するように径方向にスライド移動可能に保持する保持部を備え、前記複数の切削・研磨部は、回転に伴う遠心力により、径方向外側に拡開するようにスライド移動する構成を有するものは、上記第4の5において述べたとおり本願優先日前から引用文献2、3に記載されたように周知の技術である。 引用発明と引用文献2、3に記載された周知技術とは、研削又は研磨装置により穴の内面を削るものである点において技術分野が関連している。また、引用発明の「一対のビット体4,4」と引用文献2に記載された「切削要素22」及び引用文献3に記載された「研削シュー209」とは、回転に伴う遠心力により、径方向外側に拡開するように動き、穴の内面を削る切削・研磨部材という点で、機能・作用が共通している。 よって、引用発明において、「一対のビット体4,4」を、回転に伴う遠心力により、径方向外側に拡開する構成として、「ビット体4」をねじ軸3,3を支点として回動させる構成に代えて、前記周知技術に基づいて、「ビット体4」を平行移動するように径方向にスライド移動させる構成を採用して、前記相違点に係る構成とすることは、当業者にとって容易に想到し得たことである。 2 そして、相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献2、3に記載された周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎない。 3 したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2、3に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 なお、請求人は、令和1年11月19日付け意見書において、引用文献1のビット体4,4の直線面部4a,4aは、削孔開始から削孔終了までの間離間状態を維持され、両ビット体4,4は、相互の位置規制が解除されてしまうため、ねじ軸3を中心に回動するビット体4には、遠心力に打ち勝つ切削抵抗(の分力)が強く作用し、引用文献1の図6の状態とはならず、図5の規制状態を維持することとなるから、引用文献1のビット体4,4は、遠心力だけでは、掘削孔を削孔することは不可能となる旨を主張している。 しかし、遠心力の大きさは、ビット体4の質量、回転速度等により適宜調節可能であることは技術常識であり(例えば、引用文献2の段落[0028](上記第4の3(2))を参照。)、ばねを用いなくても遠心力のみにより掘削孔を削孔するようビット体4の特性を適宜調節することができることは当業者であれば明らかである。 また、本願発明の切刃部が「遠心力により移動して研削する」のに対し、引用発明のビット体は「引張りばねにより移動して研削する」点で、両者は明らかに相違しており、このため、引用発明に周知技術である引用文献2、3を適用できたとしても、本願発明に到達するものではない旨も主張している。 しかし、令和1年9月30日付け拒絶理由通知書でも述べたとおり、引用文献1の請求項1に係る発明に「引張りばね」の構成は含まれていない。また、上記第4の1(2)で示した明細書の段落【0005】には、「また、孔壁の抵抗に打ち勝つようにビット体の拡開作用を助長して削孔作業を支障なく行なうため、両ビット体間に引張りばねを掛け渡して、両ビット体が互いに拡開方向へ常時付勢されるように実施することも可能である。なお、引張りばねを設けた場合は、ビット体を引張りばねに抗して相互に引き寄せ、円盤状にしてから掘削孔内に挿入する。」と記載されていることから、「引張りばね」を設ける構成は付加的な構成として示されているといえる。 よって、引用文献1に記載された発明において「引張りばね」は必須の構成ではなく、ビット体4が遠心力のみにより移動して研削する発明も含まれることから、上記請求人の主張は採用されない。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明及び引用文献2、3に記載された周知技術に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2019-12-10 |
結審通知日 | 2019-12-17 |
審決日 | 2020-01-06 |
出願番号 | 特願2016-130893(P2016-130893) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(B24B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 黒石 孝志、岩瀬 昌治 |
特許庁審判長 |
見目 省二 |
特許庁審判官 |
青木 良憲 大山 健 |
発明の名称 | 拡径用ドリルビット |
代理人 | 特許業務法人真菱国際特許事務所 |