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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B |
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管理番号 | 1360045 |
審判番号 | 不服2019-4697 |
総通号数 | 244 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-04-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-04-08 |
確定日 | 2020-03-13 |
事件の表示 | 特願2014-112968「反射防止フィルム、偏光板、および画像表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年12月17日出願公開、特開2015-227934、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 事案の概要 1 手続等の経緯 特願2014-112968号(以下「本件出願」という。)は、平成26年5月30日の出願であって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。 平成29年11月 6日付け:拒絶理由通知書 平成30年 1月16日付け:意見書 平成30年 1月16日付け:手続補正書 平成30年 5月21日付け:拒絶理由通知書 平成30年 7月24日付け:意見書 平成30年 7月24日付け:手続補正書 平成30年12月25日付け:補正の却下の決定(平成30年7月24日付け手続補正の却下) 平成30年12月25日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) 平成31年 4月 8日付け:審判請求書 平成31年 4月 8日付け:手続補正書 令和 元年 5月17日付け:手続補正書(審判請求書の補正) 第2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、概略、本件出願の請求項1?請求項7に係る発明は、本件出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、本件出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用文献1:特開2013-210583号公報 引用文献2:国際公開第2012/096400号 引用文献3:特開2007-316213号公報 引用文献4:特開2014-74779号公報 引用文献5:特開2014-59368号公報 (当合議体注:主引用例は引用文献5であり、引用文献1?引用文献4は、副引用例又は周知技術を示す文献である。) 第3 本願発明 本願の請求項1?請求項6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明6」という。)は、平成31年4月8日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?請求項6に記載された事項により特定されるとおりの、以下の発明である。 「【請求項1】 透明基材と、前記透明基材上に設けられたハードコート層と、前記ハードコート層上に設けられ、かつ前記ハードコート層よりも屈折率が低い低屈折率層(但し、中空状でない反応性シリカ微粒子を含む低屈折率層を除く)と、前記ハードコート層と前記低屈折率層との間に設けられ、かつ前記ハードコート層よりも屈折率が高い高屈折率層とを備える反射防止フィルムであって、 前記低屈折率層が、平均一次粒径が65nm以上85nm以下の中空シリカ微粒子と、バインダ樹脂と、少なくとも前記低屈折率層の表面に存在する表面改質剤とを含み、 前記表面改質剤が、架橋性ケイ素含有化合物と架橋性フッ素含有化合物とを含み、 前記架橋性ケイ素含有化合物および/または前記架橋性フッ素含有化合物が前記バインダ樹脂と架橋しており、 前記高屈折率層が非架橋性フッ素含有化合物を含み、 前記低屈折率層側から測定した前記反射防止フィルムの反射Y値が0.3%未満であり、 前記低屈折率層の表面に対し、スチールウールを用いて荷重を加えながら10往復擦る耐スチールウール試験を行った場合、前記低屈折率層の前記表面に傷が確認されない最大荷重が200g/cm^(2)以上である、反射防止フィルム。 【請求項2】 前記低屈折率層の屈折率が1.20以上1.32以下である、請求項1に記載の反射防止フィルム。 【請求項3】 前記バインダ樹脂がフッ素樹脂を含む、請求項1に記載の反射防止フィルム。 【請求項4】 請求項1に記載の反射防止フィルムと、 前記反射防止フィルムの前記透明基材における前記ハードコート層が形成されている面とは反対側の面に形成された偏光素子とを備えることを特徴とする、偏光板。 【請求項5】 画像表示装置であって、 表示素子と、 前記表示素子よりも観察者側に位置する請求項1に記載の反射防止フィルムとを備え、 前記反射防止フィルムは、前記低屈折率層の前記表面が前記画像表示装置の観察者側の表面となるように配置される、画像表示装置。 【請求項6】 画像表示装置であって、 表示素子と、 前記表示素子よりも観察者側に位置する請求項4に記載の偏光板とを備え、 前記偏光板は、前記低屈折率層の前記表面が前記画像表示装置の観察者側の表面となるように配置される、画像表示装置。」 第4 引用文献の記載事項及び引用発明 1 引用文献5及び引用発明 (1) 引用文献5の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用文献5として引用された、特開2014-59368号公報(以下「引用文献5」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は、当合議体が付したものであり、引用発明の認定に活用した箇所を示す。 ア 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 光透過性基材の上に、低屈折率層を有する光学積層体であって、前記低屈折率層は、中空状シリカ微粒子を含有し、前記中空状シリカ微粒子は、平均粒子径が前記低屈折率層の厚みに対して50%以上、100%未満であり、かつ、前記低屈折率層の一方の界面側に整列した状態、前記低屈折率層の両方の界面側に整列した状態、及び、前記低屈折率層の両方の界面に接することなく整列した状態からなる群より選択される少なくとも1の状態で前記低屈折率層に含有されている ことを特徴とする光学積層体。 【請求項2】 低屈折率層は、中空状シリカ微粒子の平均粒子径よりも小さな平均粒子径を有する第2の中空状シリカ微粒子を更に含有する請求項1記載の光学積層体。 【請求項3】 中空状シリカ微粒子は、低屈折率層の一方の界面側に整列した状態で含有されており、第2の中空状シリカ微粒子は、前記中空状シリカ微粒子が整列した側の界面と反対側の界面に整列した状態で含有されている請求項2記載の光学積層体。 【請求項4】 低屈折率層の光透過性基材側とは反対側の表面から、中空状シリカ微粒子又は第2の中空状シリカ微粒子が突出している請求項2又は3記載の光学積層体。 【請求項5】 中空状シリカ微粒子は、平均粒子径が75nmであり、シェルの厚みが5?12nmである請求項1、2、3又は4記載の光学積層体。 【請求項6】 低屈折率層の屈折率が1.350未満である請求項1、2、3、4又は5記載の光学積層体。 【請求項7】 偏光素子を備えてなる偏光板であって、前記偏光板は、偏光素子表面に請求項1、2、3、4、5又は6記載の光学積層体を備えることを特徴とする偏光板。 【請求項8】 請求項1、2、3、4、5若しくは6記載の光学積層体、又は、請求項7記載の偏光板を備えることを特徴とする画像表示装置。」 イ 「【0001】 本発明は、光学積層体、偏光板及び画像表示装置に関する。 【背景技術】 【0002】 陰極線管表示装置(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、タッチパネル、電子ペーパー、タブレットPC等の画像表示装置における画像表示面は、外部光源から照射された光線による反射を少なくし、その視認性を高めることが要求される。これに対して、光透過性基材に、反射防止層を形成した光学積層体を利用するにより、画像表示装置の画像表示面の反射を低減させ、視認性を向上させることが一般的に行われている。 【0003】 反射防止層を有する光学積層体としては、従来、光透過性基材よりも屈折率の低い低屈折率層を最表面に設けた構造が知られている。このような低屈折率層には、光学積層体の反射防止性能を高めるために低屈折率であること、透明性等の優れた光学的特性を有すること、最表面に設けられることから傷付き防止等のために高い硬度を有することに加えて、耐溶剤性に優れること等が求められる。このような低屈折率層が最表面に形成された光学積層体としては、例えば、特許文献1等に、中空状シリカ微粒子、フッ素原子含有ポリマー及び防汚剤を含有する低屈折率層を有する光学積層体が開示されている。 【0004】 ところが、近年、画像表示装置に要求される表示品質は非常に高いものとなってきており、合わせて光学積層体に要求される光学的特性等も非常に高いものとなってきている。しかしながら、従来の防汚性能が付与された低屈折率層を備えた従来の光学積層体では、近年の画像表示装置の高い表示品質に対する要求に充分に応えることができないものであった。 ・・・(中略)・・・ 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 本発明は、上記現状に鑑み、低屈折率性能に優れるとともに、耐擦傷性及び耐溶剤性にも優れた低屈折率層を備えた光学積層体、該光学積層体を用いてなる偏光板及び画像表示装置を提供することを目的とするものである。 【課題を解決するための手段】 【0007】 本発明は、光透過性基材の上に、低屈折率層を有する光学積層体であって、上記低屈折率層は、中空状シリカ微粒子を含有し、上記中空状シリカ微粒子は、平均粒子径が上記低屈折率層の厚みに対して50%以上、100%未満であり、かつ、上記低屈折率層の一方の界面側に整列した状態、上記低屈折率層の両方の界面側に整列した状態、及び、上記低屈折率層の両方の界面に接することなく整列した状態からなる群より選択される少なくとも1の状態で上記低屈折率層に含有されていることを特徴とする光学積層体である。 【0008】 本発明の光学積層体において、上記低屈折率層は、中空状シリカ微粒子の平均粒子径よりも小さな平均粒子径を有する第2の中空状シリカ微粒子を更に含有することが好ましい。また、上記中空状シリカ微粒子は、低屈折率層の一方の界面側に整列した状態で含有されており、第2の中空状シリカ微粒子は、上記中空状シリカ微粒子が整列した側の界面と反対側の界面に整列した状態で含有されていることが好ましい。また、上記低屈折率層の光透過性基材側とは反対側の表面から、中空状シリカ微粒子又は第2の中空状シリカ微粒子が突出していることが好ましい。また、本発明の光学積層体において、上記中空状シリカ微粒子は、平均粒子径が75nmであり、シェルの厚みが5?12nmであることが好ましい。また、上記低屈折率層の屈折率が1.350未満であることが好ましい。 【0009】 本発明はまた、偏光素子を備えてなる偏光板であって、上記偏光板は、偏光素子表面に上述の光学積層体を備えることを特徴とする偏光板でもある。本発明はまた、上述の光学積層体、又は、上述の偏光板を備えることを特徴とする画像表示装置でもある。以下に、本発明を詳細に説明する。」 ウ 「【0017】 図1?4は、本発明の光学積層体における低屈折率層の断面を模式的に示す断面図である。 図1に示した低屈折率層10は、図示しない光透過性基材側の界面側に中空状シリカ微粒子11が整列した状態で含有されており、低屈折率層10の光透過性基材側とは反対側の界面側に第2の中空状シリカ微粒子12が整列した状態で含有されている。また、図2に示した低屈折率層20は、図示しない光透過性基材側とは反対側の界面側に中空状シリカ微粒子21が整列した状態で含有されており、低屈折率層の光透過性基材側の界面側に第2の中空状シリカ微粒子22が整列した状態で含有されている。なお、図1、2に示した第2の中空状シリカ微粒子12、22については後述する。また、図3に示した低屈折率層30は、該低屈折率層30の両方の界面側に整列した状態で中空状シリカ微粒子31が含有されており、図4に示した低屈折率層40は、該低屈折率層40の両方の界面に接することなく整列した状態で中空状シリカ微粒子41が含有されている。 ここで、図1?3では、低屈折率層の光透過性基材側とは反対側の界面側に整列した状態で含有されている中空状シリカ微粒子又は第2の中空状シリカ微粒子は、図示したように低屈折率層の表面からその一部が突出した状態であってもよいが、低屈折率層の光透過性基材側と反対側の界面に接した状態で含有されていてもよい。 【0018】 上記中空状シリカ微粒子が低屈折率層中で上述したような特定の状態で含有されていることで、本発明の光学積層体は、充分な低屈折率性能とともに、優れた耐擦傷性及び耐薬品性を有するものとなる。 上記中空状シリカ微粒子が上記低屈折率層の一方の界面側、例えば、図1に示したように、光透過性基材側に整列した状態で含有されていると、本発明の光学積層体の耐擦傷性をより優れたものとすることができる。これは、上記低屈折率層の光透過性基材側の界面に、硬化反応性に優れる後述するバインダー樹脂が多く存在するためであると考えられる。 また、上記中空状シリカ微粒子が、例えば、図2に示したように、上記低屈折率層の光透過性基材側とは反対側の界面側に整列した状態で含有されていると、本発明の光学積層体の耐溶剤性をより優れたものとすることができる。これは、溶剤による低屈折率層へのダメージは、通常、低屈折率層のバインダー樹脂と中空状シリカ微粒子との界面部分で生じるが、上記中空状シリカ微粒子は、上述した平均粒子径を有するものであるため、バインダー樹脂との界面が従来の低屈折率層と比較して大きく、このため、耐溶剤性がより優れたものとなると考えられる。また、上記中空状シリカ微粒子が、例えば、図3に示したように、上記低屈折率層の両方の界面側に整列した状態で含有されていると、本発明の光学積層体の低屈折率性能をより優れたものとすることができる。これは、中空状シリカ微粒子の中空部分の割合が多くなり、その結果、低屈折率層の屈折率を充分に低くできるためであると考えられる。更に、上記中空状シリカ微粒子が、例えば、図4に示したように、上記低屈折率層の両方の界面に接することなく整列した状態で含有されていると、本発明の光学積層体の耐擦傷性及び耐溶剤性の向上を図ることができる。これは、低屈折率層の表面から中空状シリカ微粒子が突出しておらずバインダー樹脂が多く存在するので耐擦傷性及び耐溶剤性が良好になり、また、低屈折率層の光透過性基材側の界面部分にもバインダー樹脂が多く存在するので、例えば、低屈折率層と光透過性基材との間に後述するハードコート層を設けた場合、該ハードコート層と低屈折率層との密着性が良好となり、これによっても耐擦傷性が良好になると考えられる。 なお、本明細書において、「低屈折率層の光透過性基材側の界面側に整列した状態」、及び、「低屈折率層の光透過性基材側とは反対側の界面側に整列した状態」とは、電子顕微鏡による上記低屈折率層の断面観察において、観察される上記中空状シリカ微粒子のうち、60%以上が上記低屈折率層の界面に接している及び/又は突出している状態をいう。後述する第2の中空状シリカ微粒子の場合も同様である。また、「低屈折率層の両方の界面に接することなく整列した状態」とは、電子顕微鏡による上記低屈折率層の断面観察において、観察される上記中空状シリカ微粒子のうち、上記低屈折率層の界面に接している及び/又は突出している中空状シリカ微粒子が40%未満である状態をいう。」 エ 「【0025】 上記低屈折率層は、更に防汚剤を含有することが好ましい。上記低屈折率層が防汚剤を更に含有することで、本発明の光学積層体は、防汚性能を有することとなり、特に低屈折率層中の中空状シリカ微粒子が光透過性基材側の界面側に整列した状態で含有されている場合、上記低屈折率層の光透過性基材側とは反対側の界面側における防汚剤の含有割合が大きくなるため、本発明の光学積層体の防汚性能は特に優れたものとなる。 なお、上記低屈折率層において、中空状シリカ微粒子が光透過性基材側とは反対側の界面側に整列した状態で含有されている場合、上記防汚剤は、上述した中空状シリカ微粒子と同様に、低屈折率層の光透過性基材側とは反対側の界面側にある程度偏在することとなり、この場合も上記防汚剤による防汚性能のある程度の向上を図ることができる。このように防汚剤が光透過性基材側とは反対側の界面側にある程度偏在する理由は明確ではないが、例えば、上記低屈折率層は、後述するように、低屈折率層用組成物を用いて塗膜を形成し、該塗膜中で中空状シリカ微粒子を光透過性基材側とは反対側の界面側に移動させることで形成されるが、この中空状シリカ微粒子の移動が影響しているものと推測される。 【0026】 上記防汚剤としては、反応性官能基と、フッ素原子及び/又はケイ素原子とを含有する化合物であることが好ましい。このような防汚剤を含有することで、形成する低屈折率層の防汚性能をより向上させることができる。 【0027】 上記反応性官能基とフッ素原子とを含有する化合物としては、例えば、反応性フッ素化合物、特にエチレン性不飽和結合を有するフッ素含有モノマーを広く用いることができ、より具体的には、例えば、フルオロオレフィン類(例えば、フルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロブタジエン、パーフルオロ-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール等)が挙げられる。また、例えば、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロデシル)エチル(メタ)アクリレート、α-トリフルオロ(メタ)アクリル酸メチル等の分子中にフッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物;分子中にフッ素原子を少なくとも3個持つ炭素数1?14の、フルオロアルキル基、フルオロシクロアルキル基又はフルオロアルキレン基と、少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステル化合物等も挙げられる。更にまた、主鎖にフッ素化アルキレン基を有するフッ素ポリマー、オリゴマーや、主鎖及び側鎖にフッ素化アルキレン基、フッ素化アルキル基を有するフッ素化ポリマー、オリゴマー等も挙げられる。これらの中でも、特に、主鎖及び側鎖にフッ素化アルキレン基、フッ素化アルキル基を有するフッ素化ポリマーは、低屈折率層からのブリードアウトの問題が生じにくいことから特に好適に用いられる。 【0028】 また、上記反応性官能基とケイ素原子とを含有する化合物としては、例えば、反応性シリコーン化合物が挙げられる。具体的には、例えば、(ポリ)ジメチルシロキサン、(ポリ)ジエチルシロキサン、(ポリ)ジフェニルシロキサン、(ポリ)メチルフェニルシロキサン、アルキル変性(ポリ)ジメチルシロキサン、アゾ基含有(ポリ)ジメチルシロキサン、ジメチルシリコーン、フェニルメチルシリコーン、アルキル・アラルキル変性シリコーン、フルオロシリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、脂肪酸エステル変性シリコーン、メチル水素シリコーン、シラノール基含有シリコーン、アルコキシ基含有シリコーン、フェノール基含有シリコーン、(メタ)アクリル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、カルボン酸変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン等が挙げられる。なかでも、ジメチルシロキサン構造を有するものは、低屈折率層からのブリードアウトの問題が生じ難いことから好ましい。」 オ 「【0070】 本発明の光学積層体は、上記光透過性基材上に、上述した低屈折率層を有するものであるが、必要に応じて任意の層として、上述したハードコート層又は防眩層の他に、他のハードコート層、防汚染層、高屈折率層、中屈折率層等を備えてなるものであってよい。上記防汚染層、高屈折率層、中屈折率層は、一般に使用される防汚染剤、高屈折率剤、中屈折率剤、低屈折率剤や樹脂等を添加した組成物を調製し、それぞれの層を公知の方法により形成するとよい。」 カ 図1 キ 図2 ク 図3 ケ 図4 (2) 引用発明 引用文献5の記載事項アに基づけば、引用文献5には、請求項1を引用する請求項5をさらに引用する請求項6の光学積層体として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「 光透過性基材の上に、低屈折率層を有する光学積層体であって、前記低屈折率層は、中空状シリカ微粒子を含有し、前記中空状シリカ微粒子は、平均粒子径が前記低屈折率層の厚みに対して50%以上、100%未満であり、かつ、前記低屈折率層の一方の界面側に整列した状態、前記低屈折率層の両方の界面側に整列した状態、及び、前記低屈折率層の両方の界面に接することなく整列した状態からなる群より選択される少なくとも1の状態で前記低屈折率層に含有され、 中空状シリカ微粒子は、平均粒子径が75nmであり、シェルの厚みが5?12nmであり、 低屈折率層の屈折率が1.350未満である、 光学積層体。」 2 引用文献1 原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された、特開2013-210583号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。 ア 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 透明基材の少なくとも一方の面に、ハードコート層と、低屈折率層形成用塗液から形成された低屈折率層とが順次積層された反射防止フィルムにおいて、前記低屈折率層に、フッ素含有化合物およびケイ素含有化合物を含む表面調整剤が含まれ、かつ、X線光電子分光装置で測定される、前記低屈折率層表面のフッ素量(F1s)とケイ素量(Si2p)との比(Si2p/F1s)が、4.0?30.0であることを特徴とする、反射防止フィルム。」 イ 「【0003】 一般に反射防止機能は、透明基材もしくはハードコート層上にそれらより屈折率の低い反射防止層を形成することで得られる。さらに、反射防止性能を向上させるために、透明基材もしくはハードコート層上に金属酸化物等の透明材料からなる高屈折率層と反射防止層との繰り返し構造による多層構造を形成する場合もある。この多層構造からなる反射防止層は、化学蒸着(CVD)法や、物理蒸着(PVD)法といったドライコーティング法により形成することができる(特許文献1)。」 ウ 「【0050】 次に、低屈折率層13について説明する。低屈折率層13は、低屈折率層形成用塗液から形成され、該低屈折率層13には、フッ素含有化合物およびケイ素含有化合物を含む表面調整剤が含まれている。 【0051】 前記表面調整剤は、その作用に応じて、レベリング剤、消泡剤、界面張力調整剤、表面張力調整剤とも呼ばれるが、いずれも形成される塗膜の表面張力を低下させる作用を有する。この表面調整剤の添加によって、形成される塗膜において、ハジキ、ムラといった塗膜欠陥の発生を防止することができる。 【0052】 前記フッ素含有化合物としては、例えば、パーフルオロアルキル基またはパーフルオロアルキレンエーテル基を有する化合物等が挙げられる。 【0053】 前記パーフルオロアルキル基またはパーフルオロアルキレンエーテル基を有する化合物において、パーフルオロアルキル基は、式:-C_(n)F_(2n+1)(nは1以上の整数)で表される構造であり、パーフルオロアルキレンエーテル基は、式:-C_(n)F_(2n)O-(nは1以上の整数)で表される構造(以下の式(I))であり、疎水・疎油基として機能する。剛直で曲がりにくく、表面に整然と配列する特徴を有するので、少量で表面を覆う表面調整剤として機能することができる。このとき、親油基と組み合わせることで、さらに表面調整剤としての効果を向上させることが可能となる。なお、パーフルオロアルケニル基は、分子内にC=C結合を有しているので、嵩高く、表面に配列する際にパーフルオロアルキル基に比べて密度が低下する。そのため、パーフルオロアルキル基が有するリコート性阻害を抑えることができる。 【0054】 【化1】 なお、前記式(I)中、Xは以下の(a)?(e)のいずれかであり、式(I)中の全てのXが同一のものであってもよいし、複数のものがランダム状またはブロック状になっていてもよい。 【化2】 【0055】 前記ケイ素含有化合物としては、例えば、シリコーン骨格を有する化合物等が挙げられる。 【0056】 前記シリコーン骨格を有する化合物としては、シリコーン骨格と有機変性部とを分子内に含むシリコーン系化合物を好適に用いることができる。シリコーン骨格を有する化合物は、式(II)で表される構造を有しており、式(II)中の繰り返し数n(1以上の数)や有機変性部の種類を変化させることで、表面張力を任意にコントロールすることができる。 【化3】 【0057】 前記式(II)中のnや有機変性部の種類を変化させる一例として、例えば式(III)で表される構造(x、yは繰り返し数を表す1以上の数、mは1以上の整数)が挙げられ、側鎖を付与することによりシリコーン骨格を変性させることができる。なお、式(III)中のR^(1)としては、例えば、CH_(3)、CH_(2)-CH_(3)、(CH_(2))_(9)CH_(3)等が挙げられる。また、R^(2)としては、例えば、ポリエーテル基、ポリエステル基、アラルキル基等が挙げられる。さらに、式(IV)で表される構造(mは1以上の整数)を有する化合物も用いることが可能であり、シリコーン鎖は数個のSi-O結合からなり、R^(3)に相当する平均1個のポリエーテル鎖等を有する。このように、式(III)で表される化合物および式(IV)で表される化合物いずれにおいても、表面張力のコントロールや相溶性の調整を任意に行うことができる。 【化4】 」 3 引用文献2 原査定の拒絶の理由に引用文献2として引用された、国際公開第2012/096400号(以下「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。 ア 「[0032]本発明の反射防止フィルムにおいて、上記低屈折率層は、上記防汚剤としてフッ素系化合物からなる防汚剤とフッ素-シリコーン系化合物からなる防汚剤とを含有する。このように2種類の防汚剤を使用することで、例えば、上記フッ素系化合物からなる防汚剤を含有することで、本発明の反射防止フィルムは、指紋付着防止性能及び指紋拭取り性能が優れたものとなる。 また、上記フッ素-シリコーン系化合物からなる防汚剤を含有することで、本発明の反射防止フィルムは、マジックはじき性能及びマジック拭取り性能、滑り性及び耐擦傷性が優れたものとなり、更に、低屈折率層に欠点が発生することを抑制できるとともに、本発明の防眩性フィルムを用いたときの表示画像の画質も優れたものとなる。 [0033]上記フッ素系化合物としては、反応性フッ素化合物、特にエチレン性不飽和結合を有するフッ素含有モノマーであることが好ましい。具体的には、例えば、フルオロオレフィン類(例えば、フルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロブタジエン、パーフルオロ-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール等)が挙げられる。 また、例えば、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロデシル)エチル(メタ)アクリレート、α-トリフルオロ(メタ)アクリル酸メチル等の分子中にフッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物;分子中にフッ素原子を少なくとも3個持つ炭素数1?14のフルオロアルキル基、フルオロシクロアルキル基又はフルオロアルキレン基と、少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステル化合物等も挙げられる。 更にまた、主鎖にフッ素化アルキレン基を有するフッ素ポリマー、オリゴマーや、主鎖及び側鎖にフッ素化アルキレン基、フッ素化アルキル基を有するフッ素化ポリマー、オリゴマー等も挙げられる。これらの中でも、特に、主鎖及び側鎖にフッ素化アルキレン基、フッ素化アルキル基を有するフッ素化ポリマーは、低屈折率層からのブリードアウトの問題が生じにくいことから特に好適に用いられる。 [0034]上記フッ素系化合物の含有量としては特に限定されないが、上記中空シリカ微粒子と(メタ)アクリル樹脂との合計100質量部に対して、1.0?10.0質量部であることが好ましい。1.0質量部未満であると、本発明の反射防止フィルムの指紋拭き取り性が不充分となることがあり、10.0質量部を超えると、上記低屈折率層の滑り性及び硬度が低下し、本発明の反射防止フィルムの耐擦傷性が不充分となることがあり、また、マジックはじき性能にも劣ることがある。上記フッ素系化合物の含有量のより好ましい下限は2.0質量部、より好ましい上限は8.0質量部である。 [0035]上記フッ素-シリコーン系化合物の含有量としては特に限定されないが、上記中空シリカ微粒子と(メタ)アクリル樹脂との合計100質量部に対して、0.5?15.0質量部であることが好ましい。0.5質量部未満であると、上記低屈折率層の滑り性及び強度が不充分となり、本発明の反射防止フィルムの耐擦傷性が低下し、マジックはじき性能及びマジック拭き取り性能が低下することがある。一方、上記フッ素-シリコーン系化合物の含有量が15.0質量部を超えると、上記低屈折率層の指紋拭取り性能が不充分となることがあり、また、白化を引き起こす可能性がある。更に、上記低屈折率層を形成する際に用いられる後述する低屈折率層用塗工液の塗工性が悪くなることがある。上記フッ素-シリコーン系化合物の含有量のより好ましい下限は1.0質量部、より好ましい上限は10.0質量部である。 [0036]また、上記低屈折率層は、本発明の効果を阻害しない範囲内で、上記フッ素系化合物、フッ素-シリコーン系化合物以外のその他の防汚剤を含有していてもよい。 上記その他の防汚剤としては、例えば、シリコーン系化合物が挙げられる。 上記シリコーン系化合物としては、例えば、(ポリ)ジメチルシロキサン、(ポリ)ジエチルシロキサン、(ポリ)ジフェニルシロキサン、(ポリ)メチルフェニルシロキサン、アルキル変性(ポリ)ジメチルシロキサン、アゾ基含有(ポリ)ジメチルシロキサン、ジメチルシリコーン、フェニルメチルシリコーン、アルキル・アラルキル変性シリコーン、フルオロシリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、脂肪酸エステル変性シリコーン、メチル水素シリコーン、シラノール基含有シリコーン、アルコキシ基含有シリコーン、フェノール基含有シリコーン、メタクリル変性シリコーン、アクリル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、カルボン酸変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン等が挙げられる。なかでも、ジメチルシロキサン構造を有するものは、低屈折率層からのブリードアウトの問題が生じにくいことから特に好適に用いられる。」 イ 「[0068]本発明の反射防止フィルムは、上記光透過性基材上に、必要に応じて任意の層として、上述した防眩層の他に、他のハードコート層、帯電防止層、防汚染層、高屈折率層、中屈折率層等を備えてなるものであってよい。上記防汚染層、高屈折率層、中屈折率層は、一般に使用される防汚染剤、高屈折率剤、中屈折率剤、低屈折率剤や樹脂等を添加した組成物を調製し、それぞれの層を公知の方法により形成するとよい。」 4 引用文献3 原査定の拒絶の理由に引用文献3として引用された、特開2007-316213号公報(以下「引用文献3」という。)には、以下の事項が記載されている。 「【0089】 低屈折率層の直下に高屈折率層を設けても良い。高屈折率層としては、例えば、チタン、ジルコニウム、亜鉛、アンチモン、インジウム、スズ、セリウム、タンタル、イットリウム、ハフニウム、アルミニウム、マグネシウムなどの金属を含む酸化物又は複合酸化物などの公知の無機微粒子を、バインダーに分散させたものが用いられる。バインダーは、低屈折率層のバインダーとして上記(1)?(8)に列挙したものを用いることができる。その中でも好ましいのは(5)に記載の有機ポリマーのうち側鎖や末端に重合性官能基を有するもの、(6)に記載の重合性モノマー、(7)に記載の硬化性樹脂である。これらバインダーの種類と量は、目的の屈折率、強度、耐光性、黄変性などによって通常用いられるものを選択できる。高屈折率層としての屈折率は1.55?1.68が反射防止性能上好ましく、特に1.57?1.65が好ましい。高屈折率層の厚さは、50nm?300nm、特に120nm?180nmが好ましい。厚さの制御により反射率の制御と、反射防止膜の色の制御も可能になる。」 5 引用文献4 原査定の拒絶の理由に引用文献4として引用された、特開2014-74779号公報(以下「引用文献4」という。)には、以下の事項が記載されている。 ア 「【0029】 上記低屈折率層は、更に防汚剤を含有することが好ましい。上記低屈折率層が防汚剤を更に含有することで、本発明の光学積層体は、防汚性能を有することとなる。上記防汚剤としては、反応性官能基と、フッ素原子及び/又はケイ素原子とを含有する化合物であることが好ましい。このような防汚剤を含有することで、形成する低屈折率層の防汚性能をより向上させることができる。 【0030】 上記反応性官能基とフッ素原子とを含有する化合物としては、例えば、反応性フッ素化合物、特にエチレン性不飽和結合を有するフッ素含有モノマーを広く用いることができ、より具体的には、例えば、フルオロオレフィン類(例えば、フルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロブタジエン、パーフルオロ-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール等)が挙げられる。また、例えば、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロデシル)エチル(メタ)アクリレート、α-トリフルオロ(メタ)アクリル酸メチル等の分子中にフッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物;分子中にフッ素原子を少なくとも3個持つ炭素数1?14の、フルオロアルキル基、フルオロシクロアルキル基又はフルオロアルキレン基と、少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステル化合物等も挙げられる。更にまた、主鎖にフッ素化アルキレン基を有するフッ素ポリマー、オリゴマーや、主鎖及び側鎖にフッ素化アルキレン基、フッ素化アルキル基を有するフッ素化ポリマー、オリゴマー等も挙げられる。これらの中でも、特に、主鎖及び側鎖にフッ素化アルキレン基、フッ素化アルキル基を有するフッ素化ポリマーは、低屈折率層からのブリードアウトの問題が生じにくいことから特に好適に用いられる。 【0031】 また、上記反応性官能基とケイ素原子とを含有する化合物としては、例えば、反応性シリコーン化合物が挙げられる。具体的には、例えば、(ポリ)ジメチルシロキサン、(ポリ)ジエチルシロキサン、(ポリ)ジフェニルシロキサン、(ポリ)メチルフェニルシロキサン、アルキル変性(ポリ)ジメチルシロキサン、アゾ基含有(ポリ)ジメチルシロキサン、ジメチルシリコーン、フェニルメチルシリコーン、アルキル・アラルキル変性シリコーン、フルオロシリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、脂肪酸エステル変性シリコーン、メチル水素シリコーン、シラノール基含有シリコーン、アルコキシ基含有シリコーン、フェノール基含有シリコーン、(メタ)アクリル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、カルボン酸変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン等が挙げられる。なかでも、ジメチルシロキサン構造を有するものは、低屈折率層からのブリードアウトの問題が生じ難いことから好ましい。 【0032】 また、上記反応性官能基と、フッ素原子及びケイ素原子とを含有する化合物としては、例えば、上記反応性フッ素化合物に上記反応性シリコーン化合物を反応させたシリコーン含有フッ化ビニリデン共重合体等が挙げられる。」 イ 「【0067】 本発明の光学積層体は、上記光透過性基材上に、上述した低屈折率層を有するものであるが、必要に応じて任意の層として、上述したハードコート層又は防眩層の他に、他のハードコート層、防汚染層、高屈折率層、中屈折率層等を備えてなるものであってよい。上記防汚染層、高屈折率層、中屈折率層は、一般に使用される防汚染剤、高屈折率剤、中屈折率剤、低屈折率剤や樹脂等を添加した組成物を調製し、それぞれの層を公知の方法により形成するとよい。」 6 引用文献6 補正の却下の決定の理由に引用文献6として引用された、特開2009-211061号公報(以下「引用文献6」という。)には、以下の事項が記載されている。 ア 「【0028】 (高屈折率層) 高屈折率層は、前述の透明フィルムの凹凸が形成された層の屈折率よりも高い屈折率を有する層である。本発明においては、高屈折率層の屈折率は1.60?1.70であることが好ましい。高屈折率層の屈折率がこの範囲にあると、高屈折率層上に後述する低屈折率層を積層した場合に、外光の反射を抑制し、映り込みを防止することができる。 屈折率の調整は、例えば、前記高屈折率層を金属酸化物微粒子を含む材料を用いて形成する事で行う。 金属酸化物微粒子としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化タングステン等が挙げられる。これらの金属酸化物微粒子は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。 屈折率は、例えば、公知の分光エリプソメータを用いて測定して求めることができる。」 イ 「【0046】 界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤やシリコーン系界面活性剤が挙げられる。フッ素系の界面活性剤としては、スリーエム社製のフロラードFC-431等のパーフルオロアルキルスルホン酸アミド基含有ノニオン、大日本インキ社製のメガファックF-171、F-172、F-173、F-176PF、F-470、F-471等のパーフルオロアルキル基含有オリゴマー等が挙げられる。シリコーン系界面活性剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール等のオリゴマー等の各種の置換基で側鎖や主鎖の末端が変性されたポリジメチルシロキサン等が挙げられる。 高屈折率層形成用組成物中に含まれる界面活性剤の含有量は、高屈折率層形成用組成物の固形分に対して0.1?2.5重量%が好ましく、より好ましくは0.5?2.0重量%である。」 第5 対比・判断 1 本願発明1について (1) 対比 本願発明1と引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。 ア 透明基材 引用発明の「光透過性基材」は、技術的にみて本願発明1の「透明基材」に相当する。 イ 低屈折率層 引用発明の「低屈折率層」は、「屈折率が1.350未満である」ものである。 これに対して、本願発明1の「低屈折率層」に関して、本件出願の明細書の【0074】には、「低屈折率層14の屈折率は、1.20以上1.50以下であってもよい。低屈折率層14の屈折率の上限は、1.49以下であってもよく、1.32以下であってもよい。」と記載されている。 そうしてみると、引用発明の「低屈折率層」は、本願発明1の「低屈折率層」に相当する。 ウ 中空シリカ微粒子 引用発明の「中空状シリカ微粒子」は、その文言が意味するとおり、中空状のシリカ微粒子であるから、本願発明1の「中空シリカ微粒子」に相当する。 エ 低屈折率層、中空シリカ微粒子 引用発明の「低屈折率層」は、「中空状シリカ微粒子を含有し、前記中空状シリカ微粒子は、平均粒子径が前記低屈折率層の厚みに対して50%以上、100%未満であり、かつ、前記低屈折率層の一方の界面側に整列した状態、前記低屈折率層の両方の界面側に整列した状態、及び、前記低屈折率層の両方の界面に接することなく整列した状態からなる群より選択される少なくとも1の状態で前記低屈折率層に含有され、中空状シリカ微粒子は、平均粒子径が75nmであり、シェルの厚みが5?12nmであ」るものである。 ここで、引用発明の「中空状シリカ微粒子」は、その文言が意味するとおり、中空状であって、引用発明の「低屈折率層」は、中空状でない反応性シリカ微粒子を含むものではない(このことは、引用文献5の図3、図4からも確認できる。)。 また、引用発明の「中空状シリカ微粒子」の「平均粒子径」は、「低屈折率層の厚みに対して50%以上、100%未満」であることから、引用発明の「中空状シリカ微粒子」の「平均粒子径」が平均一次粒径を示すことは明らかである(このことは、引用文献5の図3、図4からも確認できる。)。 そうしてみると、引用発明の「低屈折率層」は、本願発明の「低屈折率層」の「但し、中空状でない反応性シリカ微粒子を含むものではない」こと及び「平均一次粒径が65nm以上85nm以下の中空シリカ微粒子」を「含」むという要件を満たすものである。 オ 反射防止フィルム 引用発明は、「光透過性基材の上に、低屈折率層を有する光学積層体であって、」「低屈折率層の屈折率が1.350未満である、光学積層体」である。 ここで、引用発明の「低屈折率層の屈折率が1.350未満である」ことから、引用発明の「低屈折率層」が反射防止性能を高める光学特性を有することは明らかである(このことは、引用文献5の【0003】の記載からも確認できる。)。 そうしてみると、引用発明の「光透過性基材の上に、低屈折率層を有する光学積層体」は、本願発明1の「透明基材と、低屈折率層」「とを備える反射防止フィルム」という要件を満たすものである。 (2) 一致点及び相違点 ア 本願発明1と引用発明は、次の構成で一致する。 (一致点) 「 透明基材と、低屈折率層(但し、中空状でない反応性シリカ微粒子を含む低屈折率層を除く)とを備える反射防止フィルムであって、 前記低屈折率層が、平均一次粒径が65nm以上85nm以下の中空シリカ微粒子を含む、 反射防止フィルム。」 イ 本願発明1と引用発明は、次の点で相違するか、又は一応相違する。 (相違点1) 「反射防止フィルム」が、本願発明1は、「前記透明基材上に設けられたハードコート層」を具備し、また、「低屈折率層」が、本願発明1は、「前記ハードコート層上に設けられ、かつ前記ハードコート層よりも屈折率が低い」のに対して、引用発明は、「光透過性基材の上に、低屈折率層を有する」と特定されるものにとどまる点。 (相違点2) 「反射防止フィルム」が、本願発明1は、「前記ハードコート層と前記低屈折率層との間に設けられ、かつ前記ハードコート層よりも屈折率が高い高屈折率層」を備え、「前記高屈折率層が非架橋性フッ素含有化合物を含」むのに対して、引用発明は、「光透過性基材の上に、低屈折率層を有する」と特定されるものにとどまる点。 (相違点3) 「低屈折率層」が、本願発明1は、「バインダ樹脂と、少なくとも前記低屈折率層の表面に存在する表面改質剤とを含み、前記表面改質剤が、架橋性ケイ素含有化合物と架橋性フッ素含有化合物とを含み、前記架橋性ケイ素含有化合物および/または前記架橋性フッ素含有化合物が前記バインダ樹脂と架橋して」いるのに対して、引用発明は、これらの構成を具備すると特定されていない点。 (相違点4) 「反射防止フィルム」が、本願発明1は、「前記低屈折率層側から測定した前記反射防止フィルムの反射Y値が0.3%未満であ」るのに対して、引用発明は、反射Y値が明らかでない点。 (相違点5) 「反射防止フィルム」が、本願発明1は、「前記低屈折率層の表面に対し、スチールウールを用いて荷重を加えながら10往復擦る耐スチールウール試験を行った場合、前記低屈折率層の前記表面に傷が確認されない最大荷重が200g/cm^(2)以上である」のに対して、引用発明は、耐スチールウール試験を行った場合の試験結果が明らかでない点。 (3) 相違点についての判断 事案に鑑みて、相違点2及び相違点3について検討する。 ア 引用文献5の【0070】には、「光学積層体」に「高屈折率層」を備えてもよいこと、また、【0025】?【0029】には、「低屈折率層」に「防汚剤」として「反応性フッ素化合物」や「反応性シリコーン化合物」を含有することが好ましいことが、それぞれ記載されている。 ここで、引用文献5の【0027】には、「反応性フッ素化合物」として「含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステル化合物」が挙げられ、【0028】には、「反応性シリコーン化合物」として各種変性シリコーンが挙げられていて、引用文献5には、低屈折率層が架橋性ケイ素含有化合物や架橋性フッ素含有化合物とを含むことが示唆されている。 しかしながら、上記記載は、「反応性フッ素化合物」や「反応性シリコーン化合物」として架橋性の化合物でもよいことが示唆されているにすぎず、低屈折率層が架橋性ケイ素含有化合物と架橋性フッ素含有化合物とを含むことは記載されていない。さらに、引用文献5には、高屈折率層については具体的な記載はない。 そうしてみると、引用文献5には、高屈折率層が非架橋性フッ素含有化合物を含み、且つ、低屈折率層が架橋性ケイ素含有化合物と架橋性フッ素含有化合物とを含むことは、記載も示唆もされていない。 イ 引用文献1の【0003】には、反射防止機能を高めるために「高屈折率層」を形成すること、また、【請求項1】、【0050】?【0055】には、「低屈折率層」に「ケイ素含有化合物」及び「フッ素含有化合物」が含まれることが、それぞれ記載されている。 しかしながら、引用文献1には、高屈折率層が非架橋性フッ素含有化合物を含み、且つ、低屈折率層が架橋性ケイ素含有化合物と架橋性フッ素含有化合物とを含むことは、記載も示唆もされていない。 ウ 引用文献2の[0068]には、反射防止フィルムに「高屈折率層」を備えてもよいこと、また、[0032]?[0036]には、「低屈折率層」に防汚剤として「フッ素系化合物」や「シリコーン系化合物」を含有することが、それぞれ記載されている。 ここで、引用文献2の[0033]には、「反応性フッ素化合物」として「含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステル化合物」が挙げられ、[0036]には、「反応性シリコーン化合物」として各種変性シリコーンが挙げられていて、引用文献2には、低屈折率層が架橋性ケイ素含有化合物や架橋性フッ素含有化合物とを含むことが示唆されている。 しかしながら、上記記載は、「反応性フッ素化合物」や「反応性シリコーン化合物」として架橋性の化合物でもよいことが示唆されているにすぎず、低屈折率層が架橋性ケイ素含有化合物と架橋性フッ素含有化合物とを含むことは記載されていない。さらに、引用文献2には、高屈折率層については具体的な記載はない。 そうしてみると、引用文献2には、高屈折率層が非架橋性フッ素含有化合物を含み、且つ、低屈折率層が架橋性ケイ素含有化合物と架橋性フッ素含有化合物とを含むことは、記載も示唆もされていない。 エ 引用文献3の【0089】には、「低屈折率層の直下に高屈折率層を設けても良い」ことが記載されている。 しかしながら、引用文献3には、高屈折率層が非架橋性フッ素含有化合物を含み、且つ、低屈折率層が架橋性ケイ素含有化合物と架橋性フッ素含有化合物とを含むことは、記載も示唆もされていない。 オ 引用文献4の【0067】には、光学積層体に「高屈折率層」を備えてもよいこと、また、【0029】?【0032】には、「低屈折率層」に防汚剤として「反応性フッ素化合物」や「反応性シリコーン化合物」を含有することが好ましいことが、それぞれ記載されている。 ここで、引用文献4の【0030】には、「反応性フッ素化合物」として「含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステル化合物」が挙げられ、【0031】には、「反応性シリコーン化合物」として各種変性シリコーンが挙げられていて、引用文献4には、低屈折率層が架橋性ケイ素含有化合物や架橋性フッ素含有化合物とを含むことが示唆されている。 しかしながら、上記記載は、「反応性フッ素化合物」や「反応性シリコーン化合物」として架橋性の化合物でもよいことが示唆されているにすぎず、低屈折率層が架橋性ケイ素含有化合物と架橋性フッ素含有化合物とを含むことは記載されていない。さらに、引用文献4には、高屈折率層については具体的な記載はない。 そうしてみると、引用文献4には、高屈折率層が非架橋性フッ素含有化合物を含み、且つ、低屈折率層が架橋性ケイ素含有化合物と架橋性フッ素含有化合物とを含むことは、記載も示唆もされていない。 カ 引用文献6の【0046】には、「高屈折率層」に「フッ素系界面活性剤」として「スリーエム社製のフロラードFC-431等のパーフルオロアルキルスルホン酸アミド基含有ノニオン」を含有することが記載されていて、「高屈折率層」が非架橋性フッ素化合物を含有することが示唆されている。 しかしながら、引用文献6には、高屈折率層が非架橋性フッ素含有化合物を含み、且つ、低屈折率層が架橋性ケイ素含有化合物と架橋性フッ素含有化合物とを含むことは、記載も示唆もされていない。 キ 上記カより、引用文献6には、高屈折率層が非架橋性フッ素含有化合物を含むことが示唆されている。また、上記ア、ウ、オより、引用文献5、2、4には、低屈折率層が架橋性ケイ素含有化合物や架橋性フッ素含有化合物とを含むことが示唆されている。 しかしながら、引用文献6には、低屈折率層が架橋性ケイ素含有化合物と架橋性フッ素含有化合物とを含むことは記載されていない。また、引用文献5、2、4には、架橋性ケイ素含有化合物や架橋性フッ素含有化合物の示唆にとどまり、架橋性ケイ素含有化合物と架橋性フッ素含有化合物とを含むことまでは読み取れず、高屈折率層については具体的な記載はない。 そうしてみると、引用発明において、前記相違点2及び相違点3に係る本願発明1の構成を全て採用することについては、引用文献5はもちろん、引用文献1?4及び6においても、記載も示唆もされていないといえる。 ク ここで、本願発明1は、本件出願の明細書の【0013】に記載された「低反射率化を実現でき、かつ良好な耐スチールウール性および防汚性を得る」という効果を奏するものである。そして、本願発明1は、前記相違点2及び相違点3に係る本願発明1の構成を全て採用することによって、本願発明1の効果のうち、特に防汚性に関して、より良好な効果が得られるものと理解される(本件出願の明細書の【0114】、【0115】)。 これに対して、既に述べたとおり、引用文献1?引用文献6のいずれにも、前記相違点2及び相違点3に係る本願発明1の構成を全て採用することについて、記載も示唆もなく、また、これら全ての構成を採用すると、より良好な防汚性が得られるといった知見についても、記載も示唆もない。 そうしてみると、本願発明1の効果は、引用発明や、引用文献1?引用文献6に記載された事項から予測し得る範囲を超えたものと認められる。 ケ 以上のとおりであるから、相違点1、相違点4及び相違点5について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献1?引用文献6に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 2 本願発明2?本願発明6について 本願発明2?本願発明6は、本願発明1の「反射防止フィルム」と同じ構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献1?引用文献6の記載事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 第6 原査定について 上記「第5」で述べたとおりであるから、原査定の理由を維持することはできない。 第7 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本件出願を拒絶すべき理由もない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2020-02-28 |
出願番号 | 特願2014-112968(P2014-112968) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G02B)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 後藤 慎平、廣田 健介、小西 隆、菅原 奈津子 |
特許庁審判長 |
樋口 信宏 |
特許庁審判官 |
早川 貴之 井口 猶二 |
発明の名称 | 反射防止フィルム、偏光板、および画像表示装置 |
代理人 | 中村 行孝 |
代理人 | 鈴木 啓靖 |
代理人 | 浅野 真理 |
代理人 | 永井 浩之 |
代理人 | 朝倉 悟 |