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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1360070 |
審判番号 | 不服2018-14361 |
総通号数 | 244 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-04-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-10-30 |
確定日 | 2020-02-17 |
事件の表示 | 特願2014-100198「シート状樹脂組成物及び半導体装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年12月 7日出願公開、特開2015-220237〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成26年5月14日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。 平成30年 5月15日付け:拒絶理由通知書 平成30年 7月 2日 :意見書,手続補正書の提出 平成30年 8月 2日付け:拒絶査定 平成30年10月30日 :審判請求書,手続補正書の提出 平成31年 1月17日 :上申書の提出 第2 平成30年10月30日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成30年10月30日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により,特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおり補正された。(下線部は,補正箇所である。) 「【請求項1】 被着体と該被着体と電気的に接続された半導体素子との間の空間を充填するためのシート状樹脂組成物であって, 無機充填剤を含み,該無機充填剤の平均粒径が30nm以上300nm以下であり, 平行透過率が10%以上であり, 熱硬化前の前記シート状樹脂組成物の100?200℃における最低溶融粘度は,100Pa・s以上20000Pa・s以下であるシート状樹脂組成物。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の,平成30年7月2日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「[請求項1] 被着体と該被着体と電気的に接続された半導体素子との間の空間を充填するためのシート状樹脂組成物であって, 無機充填剤を含み,該無機充填剤の平均粒径が30nm以上300nm以下であり, 平行透過率が10%以上であるシート状樹脂組成物。」 2 補正の適否 本件補正は,本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「シート状樹脂組成物」について,上記のとおり限定を付加するものであって,補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで,本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について,以下,検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は,上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献の記載事項 ア 引用文献1 (ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である,国際公開第2008/84811号(平成20年7月17日出願公開。以下「引用文献1」という。)には,図面とともに,次の記載がある。(下線は,当審で付した。以下同じ。) 「[0001] 本発明は,回路部材接続用接着剤及びこれを用いた半導体装置に関する。より詳しくは,フェイスダウンボンディング方式で半導体素子を回路基板へ加熱,加圧によって接続するための回路部材接続用接着剤,これに導電粒子が分散された回路部材接続用接着剤(回路部材接続用異方導電接着剤)及びこれらを用いた半導体装置に関する。 [0002] 一般に,半導体チップ(以下,単に「チップ」と呼ぶ場合がある。)をフェイスダウンボンディング方式により直接回路基板に実装する方式として,半導体チップの電極部分にはんだバンプを形成し回路基板にはんだ接続する方式や,半導体チップに設けた突起電極に導電性接着剤を塗布し回路基板電極に電気的接続を行う方法が知られている。 [0003] これらの方式では,各種環境下に曝した場合,接続するチップと基板の熱膨張係数差に基づくストレスが接続界面で発生するため接続信頼性が低下するという問題がある。このため,接続界面のストレスを緩和する目的で,一般にチップと基板の間隙をエポキシ樹脂等のアンダーフィル材で充填する方式が検討されている。 [0004] アンダーフィル材の充填方式としてはチップと基板を接続した後に低粘度の液状樹脂を注入する方式と,基板上にアンダーフィル材を置いた後にチップを搭載する方式がある。一方,あらかじめアンダーフィル材を基板に設置した後にチップを搭載する方法としては液状樹脂を塗布する方法とフィルム状樹脂を貼付ける方法がある。」 「[0009] しかしながら,従来提案されてきたウェハ先置き型のアンダーフィル方法は下記のような問題があり,市場において一般化されていない。例えば,特許文献1の方法は,ウェハにフィルム状接着剤を貼付けた後にダイシングで個片化して接着フィルム付のチップを得る方法である。 [0010] 本方法によれば,ウェハ/接着剤/セパレータの積層体を作製し,これを切断後セパレータをはく離して接着剤付きのチップを得る方法であるが,積層体を切断する際に接着剤とセパレータとが剥離する結果,個片化された半導体チップが飛散,流出してしまうという問題点がある。 [0011] 次に,特許文献2の方法は,粘着材層と接着剤層を有するウェハ加工用テープに関する方法であり,ウェハをウェハ加工用テープに貼付けた後ダイシング,ピックアップを行った後に個片化されたチップを基板にフリップチップ接続する方法を供給している。 [0012] しかしながら,一般にフリップチップ実装ではチップ回路面のバンプと呼ばれる端子と相対する基板側の端子を接続するため,チップ側の位置合わせマーク(アライメントマーク)と基板側の位置合わせマークをフリップチップボンダーで位置合わせし,貼付けるのに対し,チップの回路面に接着剤を貼付けた場合には接着剤が回路面の位置合わせマークを覆うため,位置合わせが出来ないという問題が発生するが,特許文献2ではこの問題に対する解決策は提供していない。 [0013] 一方,樹脂の透明性を得る技術として,特許第3408301号明細書には絶縁性接着剤及び接着剤中に分散された導電粒子及び透明ガラス粒子を含んでなる異方導電膜が記載されている。しかし,ガラス粒子は非晶質であるため線膨張係数が大きく,フリップチップ実装後の特性として必要な,低線膨張係数化を達成することが困難である。 [0014] そこで発明の目的は,未硬化状態において,ウェハへの密着性に優れるとともにウェハに付されたアライメントマークの認識性が高く,硬化後は,チップと基板の接着性及び接続信頼性に優れた回路部材接続用接着剤及びこれらを用いた半導体装置を提供することにある。」 「[0037] 図1に示す第1実施形態に係る回路部材接続用接着剤1は,フィルム状接着剤であり,熱可塑性樹脂,架橋性樹脂及び硬化剤を含有する樹脂組成物とこの樹脂組成物中に分散された複合酸化物粒子とからなる接着剤10により構成される。」 「[0041] 図5は,第1実施形態に係る回路部材接続用接着剤により,半導体チップ及び基板が電気的に接続され且つ接着された電子部品を示す断面図である。図5に示す電子部品では,半導体部品20及び接続端子22を備える半導体チップ3と,絶縁基板30及び配線パターン32を備える基板4とが,接続端子22と配線パターン32が対向するように配置されており,接着剤10からなる第1実施形態に係る回路部材接続用接着剤1により,半導体チップ3と基板4が接着されるとともに,接続端子22と配線パターン32との接触が図られ,これらが電気的に接続されている。」 「[0054] 回路部材接続用接着剤は,半導体チップの突出した接続端子を有する面に貼付けた状態で,回路部材接続用接着剤を透過してチップの回路面に形成された位置合わせマークを識別できる事が好ましい。位置合わせマークは通常のフリップチップボンダーに搭載されたチップ認識用の装置で識別することができる。 [0055] この認識装置は通常ハロゲンランプを有するハロゲン光源,ライトガイド,照射装置,及びCCDカメラから構成される。CCDカメラで取り込んだ画像は画像処理装置によってあらかじめ登録された位置合わせ用の画像パターンとの整合性が判断され,位置合わせ作業が行われる。 [0056] 本発明で言うところの位置合わせマークを識別することが可能であることとは,フリップチップボンダーのチップ認識用装置を用いて取り込まれた位置合わせマークの画像と,登録されている位置合わせマークの画像との整合性が良好であり,位置合わせ作業が行われることを指す。 [0057] 例えば,アスリートFA株式会社製,商品名フリップチップボンダーCB-1050を使用し,回路部材接続用接着剤が突出した接続端子を有する面に貼付いた積層体の,接続端子面とは反対の面で,フリップチップボンダーの吸着ノズルに積層体を吸引した後,装置内の認識装置で接着剤層を透過して半導体チップ表面に形成された認識マークを撮影し,あらかじめ画像処理装置に取り込んだ半導体チップの認識マークとの整合性がとれて位置合わせが行えた場合を識別できる回路部材接続用接着剤とし,位置合わせできなかった場合を識別できない回路部材接続用接着剤として選択することができる。 [0058] 回路部材接続用接着剤は,未硬化時の平行透過率が15?100%であることが好ましく,18?100%であることがより好ましく,25?100%であることがさらに好ましい。平行透過率が15%未満であると,フリップチップボンダーでの認識マーク識別が行えなくなって,位置合わせ作業ができなくなる傾向がある。 [0059] 平行透過率は,日本電色株式会社製の濁度計,商品名NDH2000を用い,積分球式光電光度法で測定することができる。例えば,膜厚50μmの帝人デュポンフィルム株式会社製のPETフィルム(ピューレックス,全光線透過率90.45,ヘイズ4.47)を基準物質として校正した後,PET基材に25μm厚で回路接続用接着剤を塗工し,これを測定する。測定結果からは濁度,全光線透過率,拡散透過率及び平行透過率を求めることができる。 [0060] 可視光透過率は,株式会社日立製作所製,商品名U-3310形分光光度計で測定することができる。例えば,膜厚50μmの帝人デュポンフィルム株式会社製のPETフィルム(ピューレックス,555nm,透過率86.03%)を基準物質としてベースライン補正測定を行った後,PET基材に25μm厚で回路接続用接着剤を塗工し,400nm?800nmの可視光領域の透過率を測定することができる。フリップチップボンダーで使用されるハロゲン光源とライトガイドの波長相対強度において550nm?600nmが最も強いことから,本発明においては555nmの透過率をもって透過率の比較を行うことができる。」 「[0068] 回路部材接続用接着剤は,接着樹脂組成物と複合酸化物粒子を含むものであり,接着樹脂組成物は平行透過率15%以上のものが好ましく,30%以上のものがより好ましく,40%以上のものがさらに好ましい。平行透過率が40%以上であれば,複合酸化物粒子を高充填した場合であっても所定の透過率を満足することができるため好ましい。接着樹脂組成物の平行透過率が15%未満であると,複合酸化物粒子を添加しない状態であってもフリップチップボンダーでの認識マーク識別が行えなくなって,位置合わせ作業が出来なくなる傾向がある。 [0069] 本発明に用いられる複合酸化物粒子は,屈折率が1.5?1.7のものが好ましく,1.53?1.65のものがより好ましい。複合酸化物粒子の屈折率が1.5未満であると,接着樹脂組成物に配合した際に樹脂組成物との屈折差が大きくなるため回路部材接続用接着剤の内部を光が透過する際に散乱してしまい,位置合わせが行えなくなる傾向がある。一方,屈折率が1.7を超える場合も,同様に樹脂との屈折率差が大きくなるため,散乱が発生して位置合わせ出来なくなる傾向がある。屈折率はアッベ屈折計を用い,ナトリウムD線(589nm)を光源として測定することができる。 [0070] 本発明に用いられる複合酸化物粒子は,平均粒径が15μm以下で,かつ最大粒径が40μm以下のものが好ましく,平均粒径が5μm以下がより好ましく,平均粒径が3μm以下がさらに好ましい。複合酸化物粒子は,平均粒径が3μm以下で,かつ最大粒径が20μm以下の粒子,さらには平均粒径が3μm以下で,かつ最大粒径が5μm以下の粒子が特に好ましい。平均粒径が15μmを超えると,チップのバンプ(接続端子)と及び回路基板(配線パターンの形成された基板)の電極間に複合酸化物粒子がかみこみ,特に低圧で実装する場合やバンプの材質がニッケル等の硬質である場合には埋め込まれなくなるため,電気的接続の妨げとなって好ましくない。また最大粒径が40μmを超える場合はチップと基板のギャップよりも大きくなる可能性が発生し,実装時の加圧でチップの回路又は基板の回路を傷つける原因となる傾向がある。」 「[0072] また,本発明に用いる複合酸化物粒子は,接着樹脂組成物との屈折率差が±0.06以内が好ましく,より好ましくは±0.02以内,さらに好ましくは±0.01以内である。屈折率差が±0.06を超えると,接着樹脂組成物に添加することによって透過率が減少し,半導体チップの突出した接続端子を有する面に貼付けた状態で回路部材接続用接着剤を透過してチップの回路面に形成された位置合わせマークを識別することが出来なくなる場合がある。」 「[0077] 回路部材接続用接着剤において,樹脂組成物100重量部に対する複合酸化物粒子の含有量は25?200重量部が好ましい。含有量は,より好ましくは25?150重量部,さらに好ましくは50?150重量部,特に好ましくは75?125重量部である。複合酸化物粒子の配合量が25重量部未満であると,回路部材接続用接着剤の線膨張係数の増大と,弾性率の低下を招く場合があり,そのような場合は圧着後の半導体チップと基板の接続信頼性が低下する。一方,複合酸化物粒子の配合量が200重量部を超えると,回路部材接続用接着剤の溶融粘度が増加するため,半導体の突出電極と基板の回路が十分に接することが困難になる場合がある。」 「[0102] 以下,実施例によって本発明を更に詳細に説明するが,本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。 [0103] (実施例1) 架橋性樹脂としてエポキシ樹脂NC7000(日本化薬株式会社製,商品名)15重量部,この架橋性樹脂と反応する硬化剤としてフェノールアラルキル樹脂XLC-LL(三井化学株式会社製,商品名)15重量部,分子量100万以下,Tg40℃以下,かつ架橋性樹脂と反応可能な官能基を側鎖に少なくとも1カ所含む共重合性樹脂としてエポキシ基含有アクリルゴムHTR-860P-3(ナガセケムテックス株式会社製,商品名,重量平均分子量30万)20重量部,マイクロカプセル型硬化剤としてHX-3941HP(旭化成株式会社製,商品名)50重量部及びシランカップリング剤SH6040(東レ・ダウコーニングシリコーン製,商品名)を用い,表1記載の組成でトルエンと酢酸エチルの混合溶媒中に溶解し,接着樹脂組成物のワニスを得た。 [0104] このワニスの一部をセパレータフィルム(PETフィルム)上にロールコータを用いて塗布した後,70℃のオーブンで10分間乾燥させて,セパレータ上に厚み25μmの接着剤樹脂組成物の膜を得た。この膜をアッベ屈折計(ナトリウムD線)の試料台に設置し,セパレータを剥がしマッチングオイルを1滴垂らして屈折率1.74のテストピースを乗せて屈折率を測定した。この結果,接着剤樹脂組成物の屈折率は1.59(25℃)であった。 [0105] 一方,ワニスを計量した後,粉砕し,大粒径を除去するための5μmの分級処理を行った平均粒径1μmのコージェライト粒子(2MgO・2Al_(2)O_(3)・5SiO_(2) ,比重2.4,線膨張係数1.5×10^(-6)/℃,屈折率1.54)を表1記載の組成で混ぜ,撹拌して分散した後,セパレータフィルム(PETフィルム)上にロールコータを用いて塗布した後,70℃のオーブンで10分間乾燥させて,セパレータ上に厚み25μm透過性確認用フィルムを得た。得られた透過性確認用フィルムは図11に示すとおり,透過して裏側の画像が認識できた。 [0106] また,上記とは別に,ワニスを計量した後,粉砕し,大粒径を除去するための5μmの分級処理を行った平均粒径1μmのコージェライト粒子(2MgO・2Al_(2)O_(3)・5SiO_(2) ,比重2.4,線膨張係数1.5×10^(-6)/℃,屈折率1.54)を表1記載の組成で混ぜ,撹拌して分散した後,セパレータフィルム(PETフィルム)上にロールコータを用いて塗布した後,70℃のオーブンで10分間乾燥させて,セパレータ上に厚み20μmの回路部材接続用接着剤の絶縁性接着剤層を得た。」 「 」 「[0109] (実施例6) 実施例1と同様に表1記載の組成で,実施例1と同様の工程を経てコージェライト粒子入り接着樹脂組成物のワニスを調整し,セパレータフィルム上に厚み45μmの回路部材接続用接着剤を得た。 [0110] 次に,金ワイヤーバンプ(レベリング済み,バンプ高さ30μm,184バンプ)付きチップ(10mm角,厚み280μm)を,バンプ面を上に向けて仮圧着装置のステージ上に置き,セパレータごと12mm角に切断した回路部材接続用接着剤を,接着側をバンプ面に向けてチップに被せ,さらに,シリコーン製熱伝導性カバーフィルムを載せて80℃1MPaでチップに貼付けた。 [0111] 貼付後,チップ外形よりはみ出した部分の樹脂を切断し,接着剤からセパレータをはがして接着剤付きチップを得た。この接着剤付きチップはフリップチップボンダーの認識カメラでチップ回路面のアライメントマークを認識することが出来た。 [0112] また,Ni/AuめっきCu回路プリント基板と位置合わせを行い,次いで180℃,0.98N/バンプ,20秒の加熱,加圧を行い,半導体装置を得た。得られた半導体装置の176バンプ連結デージーチェーンでの接続抵抗は8.6Ωであり,良好な接続状態であることを確認した。 [0113] また,半導体装置を30℃,相対湿度60%の槽内に192時間放置した後,IRリフロー処理(265℃最大)を3回行ったが,チップのはく離や導通不良の発生はなかった。 [0114] さらに,IRリフロー後の半導体装置を温度サイクル試験機(-55℃30分,室温5分,125℃30分)内に放置し,槽内での接続抵抗測定を行い,600サイクル経過後の導通不良が発生しないことを確認した。」 「[0149] 回路部材接続用接着剤の特性として,平行透過率,硬化後の線膨張係数,フリップチップボンダーでのアライメントマーク認識の可不可,反応率,さらに圧着後の接続抵抗値及び信頼性試験後の接続抵抗値を各実施例及び各比較例ごとに表5及び表6に示す。 [0150] 表5に示されるように,実施例の,屈折率が1.5?1.7の複合酸化物粒子としてコージェライト,ホウ酸アルミニウムを適用した回路部材接続用接着剤は,平行透過率が15%以上あり,濁度が85%以下であるためフリップチップボンダーの認識システムを用いて接着剤を透過してチップ回路面の認識マークを識別することが可能であり,熱膨張係数の小さな複合酸化物粒子を充填したことにより硬化後の線膨張係数が低減されており,接続信頼性試験において導通不良が発生しない熱圧着時の加熱条件で80%以上の反応率に達しているため,安定した低接続抵抗を示すことが確認でき,フリップチップ接続用の接着剤として優れていることが明らかである。」 「図1 」 「図5 」 (イ)上記記載から,引用文献1には,次の技術的事項が記載されているものと認められる。 a 引用文献1に記載された技術は,フェイスダウンボンディング方式で半導体素子を回路基板へ加熱,加圧によって接続するための回路部材接続用接着剤に関するものであること。([0001]) b 半導体チップをフェイスダウンボンディング方式により直接回路基板に実装する方式において,接続界面のストレスを緩和する目的で,半導体チップと基板の間隙をエポキシ樹脂等のアンダーフィル材で充填する方式が検討されており,アンダーフィル材で充填する方式として,あらかじめ,フィルム状樹脂を基板に貼付けた後にチップを搭載する方法が提案されてきたこと。 しかしながら,フリップチップ実装ではチップ回路面のバンプと呼ばれる端子と相対する基板側の端子を接続するため,チップ側の位置合わせマーク(アライメントマーク)と基板側の位置合わせマークをフリップチップボンダーで位置合わせし,貼付けるのに対し,チップの回路面に接着剤を貼付けた場合には,接着剤が回路面の位置合わせマークを覆うため,位置合わせが出来ないという問題が発生し,一方,樹脂の透明性を得る技術として,絶縁性接着剤及び接着剤中に分散された導電粒子及び透明ガラス粒子を含んでなる異方導電膜を用いた場合には,ガラス粒子は非晶質であるため線膨張係数が大きく,フリップチップ実装後の特性として必要な,低線膨張係数化を達成することが困難であること。([0002]?[0004],[0009]?[0013]) c 引用文献1に記載された発明は,上記bに記載された課題を解決することを目的としたものであって,未硬化状態において,ウェハへの密着性に優れるとともにウェハに付されたアライメントマークの認識性が高く,硬化後は,チップと基板の接着性及び接続信頼性に優れた回路部材接続用接着剤を提供することを目的としたものであること。([0014]) d 図1に示す,引用文献1に記載された発明の第1実施形態に係る回路部材接続用接着剤1は,フィルム状接着剤であり,熱可塑性樹脂,架橋性樹脂及び硬化剤を含有する樹脂組成物とこの樹脂組成物中に分散された複合酸化物粒子とからなる接着剤10により構成され,図5は,前記第1実施形態に係る回路部材接続用接着剤により,半導体チップ及び基板が電気的に接続され且つ接着された電子部品を示す断面図であって,同図から,半導体部品20及び接続端子22を備える半導体チップ3と,絶縁基板30及び配線パターン32を備える基板4とが,接続端子22と配線パターン32が対向するように配置されており,接着剤10からなる回路部材接続用接着剤1であるフィルム状接着剤により,半導体チップ3と基板4が接着されるとともに,接続端子22と配線パターン32との接触が図られ,これらが電気的に接続されていることを読み取ることができること。([0037],[0041],図5) e 回路部材接続用接着剤は,半導体チップの突出した接続端子を有する面に貼付けた状態で,回路部材接続用接着剤を透過してチップの回路面に形成された位置合わせマークを識別できる事が好ましく,回路部材接続用接着剤の平行透過率が15%未満であると,フリップチップボンダーでの認識マーク識別が行えなくなって,位置合わせ作業ができなくなる傾向があることから,未硬化時の平行透過率が15?100%であることが好ましいこと。([0054],[0058]) f 引用文献1に記載された発明の回路部材接続用接着剤は,接着樹脂組成物と複合酸化物粒子を含むものであり,前記複合酸化物粒子は,屈折率が1.5未満であると,接着樹脂組成物に配合した際に樹脂組成物との屈折差が大きくなるため回路部材接続用接着剤の内部を光が透過する際に散乱してしまい,位置合わせが行えなくなる傾向があり,他方,屈折率が1.7を超える場合も,同様に樹脂との屈折率差が大きくなるため,散乱が発生して位置合わせ出来なくなる傾向があることから,屈折率が1.5?1.7のものが好ましく,さらに,前記複合酸化物粒子は,平均粒径が15μmを超えると,チップのバンプ(接続端子)と及び回路基板(配線パターンの形成された基板)の電極間に複合酸化物粒子がかみこみ,特に低圧で実装する場合やバンプの材質がニッケル等の硬質である場合には埋め込まれなくなるため,電気的接続の妨げとなって好ましくなく,また最大粒径が40μmを超える場合はチップと基板のギャップよりも大きくなる可能性が発生し,実装時の加圧でチップの回路又は基板の回路を傷つける原因となる傾向があることから,平均粒径が3μm以下で,かつ最大粒径が5μm以下の粒子が特に好ましいこと。([0068]?[0070]) g 回路部材接続用接着剤において,樹脂組成物100重量部に対する複合酸化物粒子の含有量は,複合酸化物粒子の配合量が25重量部未満であると,回路部材接続用接着剤の線膨張係数の増大と,弾性率の低下を招く場合があり,そのような場合は圧着後の半導体チップと基板の接続信頼性が低下し,他方,複合酸化物粒子の配合量が200重量部を超えると,回路部材接続用接着剤の溶融粘度が増加するため,半導体の突出電極と基板の回路が十分に接することが困難になる場合があることから,25?200重量部が好ましく,より好ましくは25?150重量部,さらに好ましくは50?150重量部,特に好ましくは75?125重量部であること。([0077]) h 架橋性樹脂としてエポキシ樹脂NC7000(日本化薬株式会社製,商品名)15重量部,この架橋性樹脂と反応する硬化剤としてフェノールアラルキル樹脂XLC-LL(三井化学株式会社製,商品名)15重量部,分子量100万以下,Tg40℃以下,かつ架橋性樹脂と反応可能な官能基を側鎖に少なくとも1カ所含む共重合性樹脂としてエポキシ基含有アクリルゴムHTR-860P-3(ナガセケムテックス株式会社製,商品名,重量平均分子量30万)20重量部,マイクロカプセル型硬化剤としてHX-3941HP(旭化成株式会社製,商品名)50重量部及びシランカップリング剤SH6040(東レ・ダウコーニングシリコーン製,商品名)を用い,トルエンと酢酸エチルの混合溶媒中に溶解して得た接着樹脂組成物のワニスと, 粉砕し,大粒径を除去するための5μmの分級処理を行った平均粒径1μmのコージェライト粒子(2MgO・2Al_(2)O_(3)・5SiO_(2),比重2.4,線膨張係数1.5×10^(-6)/℃,屈折率1.54)の50重量部とを混ぜ, 撹拌して分散した後,セパレータフィルム(PETフィルム)上にロールコータを用いて塗布した後,70℃のオーブンで10分間乾燥させて得た,実施例6のセパレータ上の厚み45μmの回路部材接続用接着剤は, 平行透過率が29%であって,チップアライメントマークの認識が可能であったこと。([0103]?[0106],[0109],[表1],[0149],[表5]) i 金ワイヤーバンプ(レベリング済み,バンプ高さ30μm,184バンプ)付きチップ(10mm角,厚み280μm)を,バンプ面を上に向けて仮圧着装置のステージ上に置き,セパレータごと12mm角に切断した前記実施例6の回路部材接続用接着剤を,接着側をバンプ面に向けてチップに被せ,さらに,シリコーン製熱伝導性カバーフィルムを載せて80℃1MPaでチップに貼付け,その後,チップ外形よりはみ出した部分の樹脂を切断し,接着剤からセパレータをはがして得た接着剤付きチップと,Ni/AuめっきCu回路プリント基板との位置合わせを行い,次いで180℃,0.98N/バンプ,20秒の加熱,加圧を行うことで得られた半導体装置の176バンプ連結デージーチェーンでの接続抵抗は8.6Ωであり,良好な接続状態であることが確認され,また,半導体装置を30℃,相対湿度60%の槽内に192時間放置した後,IRリフロー処理(265℃最大)を3回行った場合に,チップのはく離や導通不良の発生はなく,さらに,IRリフロー後の半導体装置を温度サイクル試験機(-55℃30分,室温5分,125℃30分)内に放置し,槽内での接続抵抗測定を行っても,600サイクル経過後の導通不良が発生しないことを確認したこと。([0110]?[0114]) (ウ)上記(ア),(イ)から,引用文献1には,引用文献1に記載された発明の「実施例6」として,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「金ワイヤーバンプ(レベリング済み,バンプ高さ30μm,184バンプ)付きチップ(10mm角,厚み280μm)のバンプ面に貼付けて,Ni/AuめっきCu回路プリント基板との位置合わせを行い,次いで180℃,0.98N/バンプ,20秒の加熱,加圧を行うことで半導体装置を得る回路部材接続用接着剤であって, 架橋性樹脂としてエポキシ樹脂NC7000(日本化薬株式会社製,商品名)15重量部,この架橋性樹脂と反応する硬化剤としてフェノールアラルキル樹脂XLC-LL(三井化学株式会社製,商品名)15重量部,分子量100万以下,Tg40℃以下,かつ架橋性樹脂と反応可能な官能基を側鎖に少なくとも1カ所含む共重合性樹脂としてエポキシ基含有アクリルゴムHTR-860P-3(ナガセケムテックス株式会社製,商品名,重量平均分子量30万)20重量部,マイクロカプセル型硬化剤としてHX-3941HP(旭化成株式会社製,商品名)50重量部及びシランカップリング剤SH6040(東レ・ダウコーニングシリコーン製,商品名)を用い,トルエンと酢酸エチルの混合溶媒中に溶解して得た接着樹脂組成物のワニスと, 粉砕し,大粒径を除去するための5μmの分級処理を行った平均粒径1μmのコージェライト粒子(2MgO・2Al_(2)O_(3)・5SiO_(2),比重2.4,線膨張係数1.5×10^(-6)/℃,屈折率1.54)の50重量部とを混ぜ, 撹拌して分散した後,セパレータフィルム(PETフィルム)上にロールコータを用いて塗布した後,70℃のオーブンで10分間乾燥させて得た,セパレータ上の厚み45μmであって,平行透過率が29%である 回路部材接続用接着剤。」 イ 引用文献3 (ア)同じく原査定に引用され,本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2014-3274号公報(平成26年1月9日出願公開。以下「引用文献3」という。)には,次の記載がある。 「【技術分野】 【0001】 本発明は,半導体装置の製造方法及びアンダーフィル材に関する。」 「【0011】 本願発明者らは鋭意検討したところ,下記構成を採用することにより前記目的を達成できることを見出して,本発明を完成させるに至った。 【0012】 すなわち,本発明は,被着体と,該被着体と電気的に接続された半導体素子と,該被着体と該半導体素子との間の空間を充填するアンダーフィル材とを備える半導体装置の製造方法であって, 半導体素子の回路面に貼り合わされた全光線透過率が50%以上のアンダーフィル材の露出面に対して斜光を照射し,上記半導体素子と上記被着体との相対位置を互いの接続予定位置に整合させる位置整合工程と, 上記被着体と上記半導体素子の間の空間を上記アンダーフィル材で充填しつつ上記接続部材を介して上記半導体素子と上記被着体とを電気的に接続する接続工程と を含む。」 「【0018】 当該製造方法において,上記無機充填剤の平均粒径は0.005?10μmであることが好ましい。上記無機充填剤の平均粒径が0.005μmを下回ると,粒子の凝集が発生しやすくなり,アンダーフィル材の形成が困難となる場合がある。一方,10μmを超えると,アンダーフィル材と被着体との接合部への無機粒子の噛み込みが発生しやすくなるため,半導体装置の信頼性が低下するおそれがある。」 「【0026】 本発明は,被着体と,該被着体と電気的に接続された半導体素子と,該被着体と該半導体素子との間の空間を充填するアンダーフィル材とを備える半導体装置の製造方法であって,半導体素子の回路面に貼り合わされた全光線透過率が50%以上のアンダーフィル材の露出面に対して斜光を照射し,上記半導体素子と上記被着体との相対位置を互いの接続予定位置に整合させる位置整合工程と,上記被着体と上記半導体素子の間の空間を上記アンダーフィル材で充填しつつ上記接続部材を介して上記半導体素子と上記被着体とを電気的に接続する接続工程とを含む。」 「【0073】 無機充填剤の平均粒径は特に限定されないものの,0.005?10μmの範囲内であることが好ましく,0.01?5μmの範囲内であることがより好ましく,さらに好ましくは0.03?2.0μmである。上記無機充填剤の平均粒径が0.005μmを下回ると,粒子の凝集が発生しやすくなり,アンダーフィル材の形成が困難となる場合がある。一方,上記平均粒径が10μmを超えると,アンダーフィル材と被着体との接合部への無 機粒子の噛み込みが発生しやすくなるため,半導体装置の接続信頼性が低下するおそれがある。なお,本発明においては,平均粒径が相互に異なる無機充填剤同士を組み合わせて使用してもよい。また,平均粒径は,光度式の粒度分布計(HORIBA製,装置名;LA-910)により求めた値である。」 「【0076】 本実施形態において,熱硬化前の上記アンダーフィル材の上記熱圧着温度での溶融粘度は20000Pa・s以下であることが好ましく,100Pa・s以上10000Pa・s以下であることがより好ましい。熱圧着温度での溶融粘度を上記範囲とすることにより,接続部材4(図2A参照)のアンダーフィル材2への進入を容易にすることができる。また,半導体素子5の電気的接続の際のボイドの発生,及び半導体素子5と被着体16との間の空間からのアンダーフィル材2のはみ出しを防止することができる(図2H参照)。」 「【0114】 一般的に,実装工程における加熱条件としては100?300℃であり,加圧条件としては0.5?500Nである。また,実装工程での熱圧着処理を多段階で行ってもよい。例えば,150℃,100Nで10秒間処理した後,300℃,100?200Nで10秒間処理するという手順を採用することができる。多段階で熱圧着処理を行うことにより,接続部材とパッド間の樹脂を効率よく除去し,より良好な金属間接合を得ることが出来る。」 「【0131】 <第4実施形態> 本実施形態では,第1実施形態とは異なる形態のアンダーフィル材について説明する。第1実施形態のアンダーフィル材では全光線透過率が50%以上であるのに対し,本実施形態のアンダーフィル材では当該構成に代えて,表面処理された平均粒径が0.1μm以下の無機充填剤,熱硬化性樹脂,熱可塑性樹脂及び硬化促進触媒を必須構成としている。このような成分を採用することにより,半導体素子と被着体との間での正確な位置合わせに必要な全光線透過率を確保することができる。また,本実施形態のアンダーフィル材では,第1実施形態で説明した斜光を用いなくても良好なアライメントマークの視認性を確保することができる。以下では,主に第1実施形態と異なる点について説明する。それ以外の構成及び製造方法については第1実施形態における説明を好適に参照することができる。 【0132】 本実施形態の無機充填剤の平均粒径は0.1μm以下である限り特に限定されないものの,0.001?0.1μmの範囲内であることが好ましく,0.005?0.1μmの範囲内であることがより好ましく,さらに好ましくは0.01?0.1μmである。上記無機充填剤の平均粒径が上記下限を下回ると,粒子の凝集が発生しやすくなり,アンダーフィル材の形成が困難となる場合がある。一方,上記平均粒径が上記上限を超えると,アンダーフィル材と被着体との接合部への無機粒子の噛み込みが発生しやすくなるため,半導体装置の接続信頼性が低下するおそれがある。また,無機充填剤の存在の影響を無視し得なくなり,アンダーフィル材の透明性が低下するおそれがある。なお,本発明においては,平均粒径が相互に異なる無機充填剤同士を組み合わせて使用してもよい。また,平均粒径は,光度式の粒度分布計(HORIBA製,装置名;LA-910)により求めた値である。」 「【0135】 以下に,この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し,この実施例に記載されている材料や配合量等は,特に限定的な記載がない限りは,この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。また,部とあるのは,重量部を意味する。 【0136】 (封止シートの作製) 以下の成分を表1に示す割合でメチルエチルケトンに溶解して,固形分濃度が23.6?60.6重量%となる接着剤組成物の溶液を調製した。 【0137】 エラストマー1:アクリル酸エチル-メチルメタクリレートを主成分とするアクリル酸エステル系ポリマー(商品名「パラクロンW-197CM」,根上工業株式会社製) エラストマー2:アクリル酸ブチルーアクリロニトリルを主成分とするアクリル酸エステル系ポリマー(商品名「SG-P3」,長瀬ケムテックス株式会社製) エポキシ樹脂1:商品名「エピコート828」,JER株式会社製 エポキシ樹脂2:商品名「エピコート1004」,JER株式会社製 フェノール樹脂:商品名「ミレックスXLC-4L」三井化学株式会社製 フィラー1:球状シリカ(商品名「SO-25R」,株式会社アドマテックス製,平均粒径0.5μm(500nm),表面処理:なし) フィラー2:球状シリカ(商品名「YC100C-MLC」,株式会社アドマテックス製,平均粒径0.1μm(100nm),表面処理:シランカップリング剤) フィラー3:球状シリカ(商品名「YA050C-MJC」,株式会社アドマテックス製,平均粒径0.05μm(50nm),表面処理:シランカップリング剤) フィラー4:球状シリカ(商品名「SC1050-MB」,株式会社アドマテックス製,平均粒径0.3μm(300nm),表面処理:シランカップリング剤) フィラー5:球状シリカ(商品名「YA050C」,株式会社アドマテックス製,平均粒径0.05μm(50nm),表面処理:なし) 有機酸:o-アニス酸(商品名「オルトアニス酸」,東京化成株式会社製) 硬化剤:イミダゾール触媒(商品名「2PHZ-PW」,四国化成株式会社製)」 「【表1】 」 (イ)上記記載から,引用文献3には,次の技術的事項が記載されていると認められる。 a 引用文献3に記載された技術は,半導体装置のアンダーフィル材に関するものであること。(【0001】) b 半導体素子の回路面に貼り合わされた全光線透過率が50%以上のアンダーフィル材の露出面に対して斜光を照射し,上記半導体素子と上記被着体との相対位置を互いの接続予定位置に整合させる位置整合工程と,上記被着体と上記半導体素子の間の空間を上記アンダーフィル材で充填しつつ上記接続部材を介して上記半導体素子と上記被着体とを電気的に接続する接続工程とを含む,被着体と,該被着体と電気的に接続された半導体素子と,該被着体と該半導体素子との間の空間を充填するアンダーフィル材とを備える半導体装置の製造方法において,無機充填剤の平均粒径が0.005μmを下回ると,粒子の凝集が発生しやすくなり,アンダーフィル材の形成が困難となる場合があり,他方,10μmを超えると,アンダーフィル材と被着体との接合部への無機粒子の噛み込みが発生しやすくなるため,半導体装置の信頼性が低下するおそれがあることから,無機充填剤の平均粒径は0.005?10μmであることが好ましく,さらに好ましくは0.03?2.0μmであること。(【0012】,【0018】,【0073】) c 接続部材4のアンダーフィル材2への進入を容易にするとともに,半導体素子5の電気的接続の際のボイドの発生,及び半導体素子5と被着体16との間の空間からのアンダーフィル材2のはみ出しを防止するために,熱硬化前のアンダーフィル材の熱圧着温度での溶融粘度は20000Pa・s以下であることが好ましく,100Pa・s以上10000Pa・s以下であることがより好ましいこと。」(【0076】) d 表面処理された平均粒径が0.1μm以下の無機充填剤,熱硬化性樹脂,熱可塑性樹脂及び硬化促進触媒を必須構成とする第4実施形態のアンダーフィル材は,半導体素子と被着体との間での正確な位置合わせに必要な全光線透過率を確保することができることから,斜光を用いなくても良好なアライメントマークの視認性を確保することができること。 そして,当該実施形態の無機充填剤の平均粒径は0.1μm以下である限り特に限定されないものの,さらに好ましくは0.01?0.1μmであり,上記無機充填剤の平均粒径が上記下限を下回ると,粒子の凝集が発生しやすくなり,アンダーフィル材の形成が困難となる場合があり,他方,上記平均粒径が上記上限を超えると,アンダーフィル材と被着体との接合部への無機粒子の噛み込みが発生しやすくなるため,半導体装置の接続信頼性が低下するおそれがあり,さらに,無機充填剤の存在の影響を無視し得なくなり,アンダーフィル材の透明性が低下するおそれがあること。(【0131】,【0132】) (3)引用発明との対比 ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。 (ア)引用文献1の[0002]の「半導体チップ(以下,単に「チップ」と呼ぶ場合がある。)」との記載から,引用発明の「チップ」は「半導体チップ」すなわち「半導体素子」といえる。そして,引用発明の「Ni/AuめっきCu回路プリント基板」と「金ワイヤーバンプ付きチップ」は,「金ワイヤーバンプ」によって電気的に接続されるから,引用発明の「Ni/AuめっきCu回路プリント基板」,及び「金ワイヤーバンプ付きチップ」は,それぞれ本件補正発明の「被着体」,及び「該被着体と電気的に接続された半導体素子」に相当する。 さらに,引用発明の「回路部材接続用接着剤」は,接着樹脂組成物のワニスと,コージェライト粒子とを混ぜたものをセパレータ上に厚み45μmで塗布した後に乾燥させて得たものであるから,「シート状樹脂組成物」ということができ,引用発明の当該「厚み45μm」の回路部材接続用接着剤は,「レベリング済み,バンプ高さ30μm」のチップのバンプ面に貼付けられた後に,基板と位置合わせをして,180℃,0.98N/バンプの加熱,加圧が行われるのであるから,基板とチップとの間の空間を充填するといえる。そうすると,引用発明の「回路部材接続用接着剤」は,本件補正発明の「被着体と該被着体と電気的に接続された半導体素子との間の空間を充填するためのシート状樹脂組成物」に相当する。 (イ)引用発明の「回路部材接続用接着剤」に含まれる「コージェライト粒子(2MgO・2Al_(2)O_(3)・5SiO_(2))」は無機物より構成されているから,本件補正発明の「無機充填剤」に相当する。 (ウ)引用発明の「回路部材接続用接着剤」の「平行透過率が29%」は,本件補正発明の「平行透過率が10%以上」との条件を満たす。 イ 以上のことから,本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は,次のとおりである。 <一致点> 「被着体と該被着体と電気的に接続された半導体素子との間の空間を充填するためのシート状樹脂組成物であって, 無機充填剤を含み, 平行透過率が10%以上である, シート状樹脂組成物。」 <相違点> ・相違点1 本件補正発明は,無機充填剤の平均粒径が「30nm以上300nm以下」であるのに対し,引用発明は,無機充填剤の平均粒径が「1μm」である点。 ・相違点2 本件補正発明は,熱硬化前の「100?200℃」における最低溶融粘度が,「100Pa・s以上20000Pa・s以下」であるのに対して,引用発明では,そのような特定はなされていない点。 (4)判断 以下,相違点について検討する。 ア 相違点1について (ア)引用文献1には,上記2(2)ア(イ)fのとおり,複合酸化物粒子は,平均粒径が15μmを超えると,チップのバンプ(接続端子)と及び回路基板(配線パターンの形成された基板)の電極間に複合酸化物粒子がかみこみ,特に低圧で実装する場合やバンプの材質がニッケル等の硬質である場合には埋め込まれなくなるため,電気的接続の妨げとなって好ましくなく,また最大粒径が40μmを超える場合はチップと基板のギャップよりも大きくなる可能性が発生し,実装時の加圧でチップの回路又は基板の回路を傷つける原因となる傾向があることから,平均粒径が3μm以下で,かつ最大粒径が5μm以下の粒子が特に好ましいとする技術的事項が記載されている。 そうすると,引用発明において,コージェライト粒子が,「大粒径を除去するための5μmの分級処理を行った平均粒径1μm」であるのは,前記技術的事項に基づくものであって,チップのバンプ(接続端子)と及び回路基板(配線パターンの形成された基板)の電極間に複合酸化物粒子がかみこみ,特に低圧で実装する場合やバンプの材質がニッケル等の硬質である場合には埋め込まれなくなり,電気的接続の妨げとなることを避けるために,前記「平均粒径が3μm以下」の範囲から,適宜選択された値にすぎず,当該「1μm」という値に臨界的な意義は存在しないと理解できる。 一方,引用文献3には,上記2(2)イ(イ)aのとおり,半導体装置のアンダーフィル材に関する技術が記載されており,引用文献3に記載された技術と,引用発明とは,いずれも,半導体装置のアンダーフィル材に関する技術である点で共通する。 そして,引用文献3の上記2(2)イ(イ)bには,無機充填剤の平均粒径が0.005μmを下回ると,粒子の凝集が発生しやすくなり,アンダーフィル材の形成が困難となる場合があり,他方,10μmを超えると,アンダーフィル材と被着体との接合部への無機粒子の噛み込みが発生しやすくなるため,半導体装置の信頼性が低下するおそれがあることから,無機充填剤の平均粒径は0.03?2.0μmであることが好ましいことが,また,上記2(2)イ(イ)dには,表面処理された無機充填剤を使用する場合には,アンダーフィル材の無機充填剤の平均粒径は,0.01?0.1μmが好ましく,表面処理された無機充填剤の平均粒径が上記下限を下回ると,粒子の凝集が発生しやすくなり,アンダーフィル材の形成が困難となる場合があり,他方,上記平均粒径が上記上限を超えると,アンダーフィル材と被着体との接合部への無機粒子の噛み込みが発生しやすくなるため,半導体装置の接続信頼性が低下するおそれがあることが記載されている。 そして,引用文献3には,10μmを超えると,アンダーフィル材と被着体との接合部への無機粒子の噛み込みが発生しやすくなるため,半導体装置の信頼性が低下するおそれがあるとされているのに対して,無機充填剤の平均粒径は0.03?2.0μmであることが「好ましい」とされており,「好ましい」とされる場合に,平均粒径の上限が下がっていることに照らして,アンダーフィル材と被着体との接合部への無機粒子の噛み込みを抑制するためには,平均粒径が,より小さいことが望ましいことが理解される。 また,引用文献3から,当業者は,粒子の凝集が発生せず,他方,アンダーフィル材と被着体との接合部への無機粒子の噛み込みも発生しない無機充填剤の平均粒径は,0.03?2.0μmの範囲から選択することができ,また,無機充填剤が,表面処理されたものである場合には,0.01?0.1μmの範囲から選択することができることを理解する。 してみれば,アンダーフィル材と被着体との接合部への無機粒子の噛み込みを抑制するためには,平均粒径が,より小さいことが望ましいことを理解でき,さらに,粒子の凝集が発生せず,他方,アンダーフィル材と被着体との接合部への無機粒子の噛み込みも発生しない無機充填剤の平均粒径は,0.03?2.0μmの範囲から選択することができ,また,無機充填剤が,表面処理されたものである場合には,0.01?0.1μmの範囲から選択することができることが記載された引用文献3に接した当業者であれば,チップのバンプ(接続端子)と及び回路基板(配線パターンの形成された基板)の電極間に複合酸化物粒子がかみこみ,特に低圧で実装する場合やバンプの材質がニッケル等の硬質である場合には埋め込まれなくなり,電気的接続の妨げとなることを避けるために,コージェライト粒子の平均粒径を,「平均粒径が3μm以下」の範囲から,「1μm」という値を選択した引用発明において,コージェライト粒子の平均粒径を,前記「平均粒径が3μm以下」の範囲から他の値を選択すること,すなわち,引用文献3において示されている「0.03?2.0μm」に含まれる中から,より小さい値である「0.03?0.3μm」の範囲,あるいは,無機充填剤が表面処理されたものである場合に,「0.01?0.1μm」の範囲から選択した値とすることは,適宜なし得たことである。 (イ)審判請求人は,審判請求書において,以下の主張をする。 「このように,引用文献1には明示されていませんが,当業者は,比較例6ではシリカフィラーの粒径(直径)が小さいことに起因して不具合が生じていることを理解しますので,比較例においてシリカフィラーの粒径に起因する問題は発生していないとされる審査官殿のご認定は誤りであると言わざるを得ません。そして,引用発明に接した当業者は,少なくとも当該シリカフィラーの粒径(17nm;段落0133)は回避しようとします。引用文献3のシリカフィラーの平均粒径は0.05μm(50nm)であり,引用文献1の比較例6のシリカフィラーの粒径とは異なりますが,数値のオーダーとしては同程度ですので,やはり引用発明にとっては採用に消極的となる粒径範囲であるといえます。 一方で,引用発明においてどの程度までの粒径であれば許容可能であるのかについて,引用文献1に何ら指針は示されていません。そうである以上,当業者は,引用文献1の実施例で用いられている複合酸化物粒子の平均粒径(1μm;段落0105)程度であれば不具合は生じないであろうとの推測のもと,複合酸化物粒子の平均粒径を決定していくほかはありません。仮に,そうした推測が成り立つとはいえないとしても,このことが引用発明において引用文献3に記載の無機充填剤の平均粒径を採用する積極的理由とはなりません。 結局,引用発明の複合酸化物粒子の平均粒径の下限値について,実施例の値を下回る範囲を採用する動機付けはありませんので,相違点1にかかる構成が容易に想到し得たものであるとはいえません。」 しかしながら,引用文献3の上記2(2)イ(イ)bには,無機充填剤の平均粒径が0.005μmを下回ると,粒子の凝集が発生しやすくなり,アンダーフィル材の形成が困難となる場合があることから,無機充填剤の平均粒径の下限が,好ましくは0.03μmであることが,また,上記2(2)イ(イ)dには,表面処理された無機充填剤の平均粒径の下限が,好ましくは0.01μmであることが記載されているから,引用発明において,コージェライト粒子の平均粒径を選択する場合に,当該指針を参酌しつつ,上記(ア)で検討したように,アンダーフィル材と被着体との接合部への無機粒子の噛み込みを抑制するために,より小さい平均粒径を選択することは当業者が容易になし得たことである。 したがって,審判請求人の前記主張は採用することができない。 イ 相違点2について 引用文献1には,上記2(2)ア(イ)gのとおり,回路部材接続用接着剤の溶融粘度が増加すると,半導体の突出電極と基板の回路が十分に接することが困難になる場合があることが記載されており,引用文献1には,引用発明に係る「回路部材接続用接着剤」の,180℃,0.98N/バンプ,20秒の加熱,加圧を行う際の,硬化前の回路部材接続用接着剤の溶融粘度を適切なものとする動機が示唆されている。 一方,引用文献3の上記2(2)イ(イ)cには,接続部材4のアンダーフィル材2への進入を容易にするとともに,半導体素子5の電気的接続の際のボイドの発生,及び半導体素子5と被着体16との間の空間からのアンダーフィル材2のはみ出しを防止するために,熱硬化前の上記アンダーフィル材の熱圧着温度での溶融粘度は20000Pa・s以下であることが好ましく,100Pa・s以上10000Pa・s以下であることがより好ましいことが記載されている。 そして,上記アで検討したとおり,引用文献3に記載された技術と,引用発明とは,いずれも,半導体装置のアンダーフィル材に関する技術である点で共通する。 してみれば,熱圧着温度が「180℃」である引用発明において,金ワイヤーバンプの回路部材接続用接着剤への進入を容易にするとともに,チップの電気的接続の際のボイドの発生,及びチップとNi/AuめっきCu回路プリント基板との間の空間からの回路部材接続用接着剤のはみ出しを防止するために,前記熱圧着温度である「180℃」の近傍の100?200℃における回路部材接続用接着剤の最低溶融粘度を,100Pa・s以上20000Pa・s以下の範囲に含まれるものとすることは当業者が適宜なし得たことである。 ウ 効果について そして,これらの相違点を総合的に勘案しても,本件補正発明の奏する作用効果は,引用発明及び引用文献3に記載された技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。 エ まとめ したがって,本件補正発明は,引用発明及び引用文献3に記載された技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 本件補正についてのむすび よって,本件補正は,特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので,同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成30年10月30日にされた手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,平成30年7月2日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,その請求項1に記載された事項により特定される,前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は,この出願の請求項1ないし6に係る発明は,本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2ないし5に記載された事項に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。 1.国際公開第2008/084811号 2.特開2012-174861号公報 3.特開2014-3274号公報 4.特開2009-260220号公報 5.特開昭63-293403号公報 3 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及び3,ならびにその記載事項は,前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は,前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から,「熱硬化前の前記シート状樹脂組成物の100?200℃における最低溶融粘度は,100Pa・s以上20000Pa・s以下である」とする限定事項を削除したものである。 そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が,前記第2の[理由]2(3),(4)に記載したとおり,引用発明及び引用文献3に記載された技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,引用発明及び引用文献3に記載された技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり,本願発明は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2019-12-13 |
結審通知日 | 2019-12-17 |
審決日 | 2020-01-06 |
出願番号 | 特願2014-100198(P2014-100198) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小池 英敏 |
特許庁審判長 |
加藤 浩一 |
特許庁審判官 |
小田 浩 西出 隆二 |
発明の名称 | シート状樹脂組成物及び半導体装置の製造方法 |
代理人 | 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所 |