• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F21V
管理番号 1360106
審判番号 不服2019-6634  
総通号数 244 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-05-22 
確定日 2020-03-10 
事件の表示 特願2015- 37260号「照明用レンズ、発光装置及び照明器具」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 9月 5日出願公開、特開2016-162497号、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年2月26日の出願であって、平成30年9月19日付けで拒絶理由通知がされ、平成30年11月28日に意見書が提出され、平成31年3月27日付けで拒絶査定がされ、これに対し、令和1年5月22日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成31年3月27日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1?5、7、8に係る発明は、以下の引用文献1、2に記載された発明及び周知技術に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明できたものであり、また、本願請求項9、10に係る発明は、以下の引用文献1?3に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2009-245910号公報
2.米国特許出願公開第2011/0149581号明細書(周知技術を示す文献)
3.特開2012-221769号公報(周知技術を示す文献)

なお、本願請求項6に係る発明については、拒絶査定の対象とされていない。

第3 本願発明
本願請求項1?5、7?10に係る発明(以下それぞれ「本願発明1」等」という。)は、令和1年5月22日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?5、7?10に記載された事項により特定される以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
第1表面に近づくに従って径が大きくなる外周面を有し、前記外周面に周囲が囲まれた中空部が形成され、前記中空部が前記第1表面で開口する第1レンズと、
中空ではない円柱形状の調整部を有し、前記調整部が前記外周面の中心軸に沿って前記中空部を移動可能な第2レンズと、
を備えた照明用レンズ。
【請求項2】
前記調整部は、前記第1表面の反対側を向く第2表面が前記中空部に配置される請求項1に記載の照明用レンズ。
【請求項3】
前記第2表面は、凸形状又は凹形状である請求項2に記載の照明用レンズ。
【請求項4】
前記第1表面は平坦であり、
前記調整部は、前記第1表面に直交する方向に沿って前記中空部を移動する
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の照明用レンズ。
【請求項5】
前記中空部の少なくとも一部は円柱形状であり、
前記調整部の中心軸は、前記中空部の円柱形状である部分の中心軸と同一直線上に配置された
請求項1から請求項4の何れか一項に記載の照明用レンズ。
【請求項7】
前記第1レンズは、円盤形状の鍔部と円錐台形状の集光部とを備え、
前記中空部は、前記鍔部と前記集光部とを貫通する
請求項1から請求項6の何れか一項に記載の照明用レンズ。
【請求項8】
請求項1から請求項7の何れか一項に記載の前記照明用レンズと、
前記第1表面の反対側を向く前記調整部の第2表面及び前記中空部を形成する前記第1レンズの内周面に光を照射する光源部と、
前記照明用レンズを保持するホルダー部と、
を備えた発光装置。
【請求項9】
前記ホルダー部は、
前記第1レンズを保持する円筒形状の第1ホルダーと、
前記第2レンズを保持し、前記第1ホルダーの中心軸に沿って移動可能な円筒形状の第2ホルダーと、
を備えた請求項8に記載の発光装置。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載の前記発光装置と、
前記発光装置が取り付けられ、前記発光装置から発生する熱を放熱するための放熱部を有する本体部と、
を備えた照明器具。」

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には次の記載がある(下線は当審で付加。以下同様。)。
(1a)「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、遠距離到達照明器具を、LEDを使用して実現しようとするものである。そのためには、LEDチップ2から周辺に拡散する光を、一方の端面が発光方向に指向性を持つ略円錐状に成形されたレンズ5(以下レンズ)で効率よく集光し、レンズ3の出光側端面に近接し、内部が空洞になっている円筒で、レンズ5で集光され外部に拡散しようとする光を封じ込めて対象物に導光し、かつレンズで補足し切れなかった光は、リフレクタ3で補足し、所定の方向に反射、屈折させるなど、光を効率よく、遠くにある対象物の所望の位置、範囲に収束させるための光学的手段の開発が必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、レンズ5(以下レンズ)の頂点に近接させてLEDチップ2を配置し、円錐の頂角を変えることで、照射対象の距離及び照明スポットの大きさを任意に設定できるようにした。
【0007】
また、レンズ5を取り囲むようにリフレクタ3を配し、レンズ5で補足出来なかった光を補足し、所定の方向に反射屈折させながら出光することで、出光効率を向上させる。
【0008】
また、レンズ3の出光側の端面に近接し、内部が空洞になっている円筒で、レンズ5で集光され外部に拡散しようとする光を封じ込めて対象物に導光する。
【0009】
また、レンズ5の出光側の端面に、内部が空洞の円筒(以下円筒)と円筒の外径と概略等しい開口径とリフレクタ3の外形に概略等しい外形を有する透光板4或いはフレネルレンズ4を、リフレクタ3を塞ぐように組み付けることで、LEDチップ2とレンズ5の位置関係を確定出来るようにした。
【0010】
また、透光板4或いはフレネルレンズ4およびリフレクタ3に位置決め用の突起或いは凹み(図2)を設けて、両者をかん合させることで、LEDチップ2とレンズ5の位置関係を補助手段なしで確定することが出来るようにした。」
(合議体注;段落【0005】、【0007】に「補足」との記載があるが、「捕捉」の誤記であることは明らかである。次の(1b)も同様。また、段落【0008】に「レンズ3」との記載があるが、「レンズ5」の誤記であることも明らかである。)

(1b)「【0013】
図1に、本発明の実施例を示す。アルミ基板等の放熱性が良好な基板1に絶縁皮膜を介してLEDチップ2が実装される。LEDチップ2に近接させて、一方の端面が発光方向に指向性を持つ略円錐状に成形されたレンズ5が配置し、LEDチップ2とレンズ5との距離、あるいは略円錐の頂角を変えることで、照射対象の距離及び照明スポットの大きさに応じて任意に設定できるようになっている。また、レンズで補足出来なかった光は、レンズを取り囲むように配置したリフレクタ3で補足し、所定の方向に反射屈折させながら出光することで、出光効率が著しく向上する。
LEDチップ2とレンズの位置関係を確定させるには、レンズ5の出光側に、円筒と円筒の外径と概略等しい開口径とリフレクタ3の外形に概略等しい外形を有する透光板4或いはフレネルレンズ4を、リフレクタ3を塞ぐように組み付ける。その際、図2に示すように、透光板4或いはフレネルレンズ4およびリフレクタ3に位置決め用の突起或いは凹み(拡大図)を設けて両者をかん合させることで、LEDチップ2とレンズ5との位置関係を補助手段なしで確定させることが出来る。」

(1c)【図1】は次のとおりである。


(1d)【図2】は次のとおりである。


(2)認定事項
上記記載事項(1c)、(1d)より、「リフレクタ3」は、その上面に近づくに従って径が大きくなる外周面を有していること、外周面に周囲が囲まれた中空部が形成されていること、及び、中空部が上面で開口していることが看取できる。

(3)引用発明
上記(1)、(2)より、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。
「基板1に絶縁皮膜を介してLEDチップ2が実装され、
LEDチップ2に近接させて、一方の端面が発光方向に指向性を持つ略円錐状に成形されたレンズ5が配置され、
LEDチップ2とレンズ5との距離、あるいは略円錐の頂角を変えることで、照射対象の距離及び照明スポットの大きさに応じて任意に設定できるようになっており、
レンズ5で捕捉出来なかった光は、レンズ5を取り囲むように配置したリフレクタ3で捕捉し、所定の方向に反射屈折させながら出光することで、出光効率が著しく向上させ、
リフレクタ3は、上面に近づくに従って径が大きくなる外周面を有し、外周面に周囲が囲まれた中空部が形成され、中空部が上面で開口しており、
LEDチップ2とレンズ5の位置関係を確定させるため、レンズ5の出光側の端面に近接し、内部が空洞になっている円筒で、レンズ5で集光され外部に拡散しようとする光を封じ込めて対象物に導光する円筒と、円筒の外径と概略等しい開口径と、リフレクタ3の外形に概略等しい外形を有する透光板4或いはフレネルレンズ4を、リフレクタ3を塞ぐように組み付け、
透光板4或いはフレネルレンズ4およびリフレクタ3に位置決め用の突起或いは凹みを設けて両者をかん合させることで、LEDチップ2とレンズ5との位置関係を補助手段なしで確定させる照明器具に用いるレンズ5及びリフレクタ3。」

2 引用文献2について
(1)記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には次の記載がある。
(2a)「【0024】Certain embodiments of the present invention relate to secondary lenses for LED-based lamps, and in particular to secondary lenses with an integrated lamp cover. The lamp cover can be formed as an outward radial extension of the front face of a total internal reflection (TIR) lens,and a pattern of microlenses on the front surface of the cover can be provided to distribute the light for an esthetically pleasing effect.
【0025】FIG. 1 is a side cross sectional view of a lens 100 according to an embodiment of the present invention. Lens 100 has a TIR body portion 102 with a generally cylindrical open channel 104 extending therethrough from a front surface 106 to a rear surface108. A light source (not explicitly shown) can be placed at a light source position 110 near opening 104 at the rear end (defined by rear surface 108). A specific example of an LED-based light source suitable for use as a light source with lens 100 is described below.」

(2b)「【0050】Lens 100 can be integrated into an LED-based lamp having a desired form factor. An example is shown in FIGS. 7A and 7B, which are, respectively, a simplified cutaway side view and a frontperspective view of a lamp 700 incorporating lens 100 according to an embodiment of the present invention. In this example, lamp 700 is an LED-based replacement for a standard PAR-38 lamp and has approximately the same size and overall shape as a conventional incandescent PAR-38 bulb.」

(2c)FIG.1は次のとおりである。


(2d)FIG.7Aは次のとおりである。



(2)周知技術
上記(1)より、引用文献2には次の周知技術が記載されているものと認める(なお、当審で翻訳した文により表記する。)。
「LED型ランプに組み込まれるレンズであって、
レンズは、前面から後面まで延在する全体として円筒形の開放チャネルと内部全反射の本体部分を有すること。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 後者の「照明器具に用いるレンズ5及びリフレクタ3」と、前者の「照明用レンズ」とは、「照明用光学部材」である点で共通するといえる。

イ 後者の「上面に近づくに従って径が大きくなる外周面を有し、外周面に周囲が囲まれた中空部が形成され、中空部が上面で開口して」いる「レンズ5を取り囲むように配置したリフレクタ3」と、前者の「第1表面に近づくに従って径が大きくなる外周面を有し、前記外周面に周囲が囲まれた中空部が形成され、前記中空部が前記第1表面で開口する第1レンズ」とは、「第1表面に近づくに従って径が大きくなる外周面を有し、前記外周面に周囲が囲まれた中空部が形成され、前記中空部が前記第1表面で開口する第1光学素子」である点で共通するといえる。

ウ 後者の「レンズ5」と、「レンズ5の出光側の端面に近接し、内部が空洞になっている円筒で、レンズ5で集光され外部に拡散しようとする光を封じ込めて対象物に導光する円筒」を有する「透光板4或いはフレネルレンズ4」とを合わせたものと、前者の「中空ではない円柱形状の調整部を有し、前記調整部が前記外周面の中心軸に沿って前記中空部を移動可能な第2レンズ」とは、「円柱形状の部分を有する第2レンズ」である点で共通するといえる。

エ 以上より、本願発明1と引用発明との一致点、相違点は次のとおりと認める。
〔一致点〕
「第1表面に近づくに従って径が大きくなる外周面を有し、前記外周面に周囲が囲まれた中空部が形成され、前記中空部が前記第1表面で開口する第1光学素子と、
円柱形状の部分を有する第2レンズと、
を備えた照明用光学部材。」

〔相違点1〕
「第1光学素子」及び「照明用光学部材」について、本願発明1が「第1レンズ」及び「照明用レンズ」であるのに対し、引用発明は「リフレクタ3」及び「照明器具に用いるレンズ5及びリフレクタ3」である点。

〔相違点2〕
「円柱形状の部分」について、本願発明1が「中空ではない円柱形状の調整部」であり、「前記調整部が前記外周面の中心軸に沿って前記中空部を移動可能な」ものであるのに対し、引用発明は「内部が空洞になっている」「レンズ5で集光され外部に拡散しようとする光を封じ込めて対象物に導光」する「円筒」であり、「リフレクタ3」の「中空部」に対し移動可能であることの特定がない点。

(2)判断
事案に鑑み、相違点2について検討する。
引用発明は、「LEDチップ2とレンズ5との距離」「を変えることで、」「照射対象の距離及び照明スポットの大きさに応じて任意に設定できるようになって」いるという事項を有するものであるから、当該事項から、「LEDチップ2」に対し「レンズ5」を移動可能とすることは、当業者であれば容易に想到し得たということができる。
しかしながら、引用発明は「LEDチップ2とレンズ5の位置関係を確定させるため、レンズ5の出光側の端面に近接し、内部が空洞になっている円筒で、レンズ5で集光され外部に拡散しようとする光を封じ込めて対象物に導光する円筒と、円筒の外径と概略等しい開口径と、リフレクタ3の外形に概略等しい外形を有する透光板4或いはフレネルレンズ4を、リフレクタ3を塞ぐように組み付け、透光板4或いはフレネルレンズ4およびリフレクタ3に位置決め用の突起或いは凹みを設けて両者をかん合させる」ものであるから、「レンズ5」と「円筒」を有する「透光板4或いはフレネルレンズ4」とを合わせたもの(第2レンズ)と、「リフレクタ3」(第1光学素子)との相対的な位置関係は固定されたものであり、それらを合わせたもの全体が「LEDチップ2」に対し、移動可能なものになる。
そうすると、「円筒」は「リフレクタ3」の中空部に相当するものに対し移動可能なものとはならず、少なくともこの点において、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項を有するものには至らないし、移動可能に変更する動機付けがあるともいえない。

また、引用文献2に記載された周知技術を検討しても、上記「第4 2(2)」から明らかなように、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項(特に「前記調整部が前記外周面の中心軸に沿って前記中空部を移動可能な」ことに係る事項)を開示ないし示唆するものではなく、引用発明に引用文献2に記載された技術的事項を適用したとしても、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項を有するものには至らない。

したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明及び引用文献2に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2 本願発明2?5、7?10について
本願発明2?5、7?10は、本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えたものであるので、本願発明1と同様の理由により、本願発明2?5、7、8は、引用発明及び引用文献2に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、本願発明9、10は、引用発明及び引用文献2、3に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-02-26 
出願番号 特願2015-37260(P2015-37260)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F21V)
最終処分 成立  
前審関与審査官 竹中 辰利  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 岡▲さき▼ 潤
一ノ瀬 覚
発明の名称 照明用レンズ、発光装置及び照明器具  
代理人 高田 守  
代理人 高橋 英樹  
代理人 高橋 英樹  
代理人 小澤 次郎  
代理人 小澤 次郎  
代理人 高田 守  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ