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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N
管理番号 1360134
審判番号 不服2018-4260  
総通号数 244 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-03-29 
確定日 2020-02-26 
事件の表示 特願2016-517425「画像処理を用いた無線工業プロセスフィールド装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 4月 2日国際公開、WO2015/047596、平成28年12月22日国内公表、特表2016-540397〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)8月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2013年9月26日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成29年5月30日付けで拒絶理由が通知され、平成29年7月31日付けで手続補正がされ、平成29年12月26日付けで拒絶査定がされ、これを不服として平成30年3月29日に本件審判請求がされ、同時に誤訳訂正書により手続補正がされ、令和1年5月23日付けで当審により拒絶の理由が通知され、令和1年8月26日付けで手続補正がされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1-12に係る発明は、令和1年8月26日付けで手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-12に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項11に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。なお、本願発明の各構成の符号は当審において付与したものであり、以下、構成A?構成Fと称する。

[本願発明]
(A)無線フィールド装置における画像情報送信方法であって、
(B)前記無線フィールド装置は、制御装置と、無線通信回路と、内部電源と、画像取り込み装置と、メモリと、を含み、
(C)前記画像取り込み装置によって、前記無線フィールド装置の近くのフレア、ポンプジャック、ポンプ、又はタンクの画像を取り込む工程と、
(D)前記制御装置によって、前記メモリに記憶された参照画像情報を読み出し、前記画像取り込み装置によって取り込まれた画像の前記参照画像情報からの変化を検出し、変化が検出された領域の前記画像情報を圧縮する工程と、
(E)前記無線フィールド装置に対して、前記内部電源によって給電する工程と、
(F)前記変化の量がしきい値を超えたとき、前記無線通信回路を使用して、圧縮された前記画像情報を遠隔地に送信する工程と、
(A)を含む方法。

第3 引用文献、引用発明
1.引用文献1の記載事項
当審による拒絶理由通知で引用された特表2008-527493号公報(以下、「引用文献1」という)には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線は、当審により付与したものである。

「【0001】
発明の分野
本発明は、工業用プロセス制御又は監視システムに関する。より詳細には、本発明は、そのようなシステムで用いられるワイヤレスプロセスフィールド装置に関する。」

「【0009】
フィールド装置は一般的に、遠隔地点に取付けられる。本発明は、フィールド装置のワイヤレス特性に、及びフィールド装置のその他の態様に向けられた診断性能を備えることが望ましいという認識を含む。これにより、起こり得る故障の原因を検出することが可能になる。さらに、いくつかの構成では、診断性能を用いて、設置中のフィールド装置の取付及び構成を支援する。故障が検出されると、装置の診断性能を用いて、故障の考えられる原因又は根源を報告することができる。また、診断情報を用いて、故障を取り除くことができる。
【0010】
図1は、フィールド装置14及び16に接続された制御室即ち制御システム12を含むプロセス制御又は監視システム10の一例を示す簡略化された図である。フィールド装置14は、プロセス配管18に接続されて示され、フィールド装置16は貯蔵タンク20に接続されて示される。装置14及び16は、プロセス制御室12のプロセス制御回路13に関連して、アンテナ26からの情報を送信及び/又は受信するためのアンテナ22及び24をそれぞれ含む。装置14及び16は、ワイヤレス無線周波数(RF)通信リンク28及び32を用いて、制御室12内の回路13と通信する。フィールド装置14及び16は、さらなる線を布設する必要なく、装置にローカルな電力を供給するためのコンポーネントを含む。たとえば、装置14及び16は、以下により詳細に説明するように、ローカルな電力のための太陽電池及び/又はバッテリを含むことができる。」

「【0012】
図2は、図1に示されたフィールド装置14をより詳細に示す、簡略化されたブロック図である。フィールド装置14は、アクチュエータ又はトランスデューサ30、ワイヤレス入出力(通信)回路32、診断部34、電源回路36、バッテリ38及び太陽電池パネル40を含む。アクチュエータ/トランスデューサ30は、プロセス変数を感知するために用いられるセンサか、又はプロセスを制御するために用いられるアクチュエータ、たとえばバルブかにすることができる。ワイヤレス通信回路32は、アンテナ22に接続され、アンテナ26を介して、制御システム12の回路13(図2に図示せず)と通信する。電源回路36を用いて、フィールド装置14内部の回路に電力が供給される。電源回路36は、太陽電池40から受信した電力又はバッテリ38から受信した電力を用いて動作することができる。電源回路36は、遠隔電源への配線を必要としない、あらゆるタイプの電源から電力供給されることができる。電源回路36は、フィールド装置14に内蔵されることができるか、又は、いくつかの実施形態では、フィールド装置の外部に位置付けられ、かつフィールド装置に近接して配置されることができる。たとえば、太陽電池式ユニットを用いて、情報を伝送するためにも用いられる2線式接続を通じて、発信器またはその他のフィールド装置に電力供給することができる。そのような構成では、電源回路はさらに、遠隔地点へのワイヤレス通信を備えることができる。そのような構成は、2004年5月21日出願の米国特許出願番号第10/850,828号、WIRELESS POWER AND COMMUNICATION UNIT FOR PROCESS FIELD DEVICESに示されて述べられ、全体として参照することにより本明細書に組み入れられる。太陽電池40から十分な電力が受信されると、さらに電源回路36を用いて、バッテリ38を充電することができる。診断部と標記されたブロック34を用いて、以下により詳細に述べる本発明の診断機能が実施される。この診断機能は、ハードウェアコンポーネント、ソフトウェアコンポーネント、又はコンポーネントの組合せに実装することができ、簡略化のために、図2では単一のブロック34として示されている。
【0013】
図3は、プロセス装置14のより詳細なブロック図であり、プロセス変数センサ50を示す。図3に図示するように、プロセス変数センサは、装置14のハウジング内部か又はハウジングの外に配置されてもよい。測定回路52は、プロセス変数センサ50に接続されて、コントローラ58に測定信号を供給する前に、初期信号処理を行うために用いられる。図3には、任意のユーザ入力部54がオペレータボタンとして示される。同様に、任意の出力装置、たとえばLCDディスプレイ56が示される。
【0014】
一般的に、コントローラ58はマイクロプロセッサベースのコントローラであり、メモリ60及びクロック62に接続される。クロック62は、フィールド装置14内部のディジタル回路の動作速度を決定し、メモリ60を用いて情報を保存する。メモリ60は、常設メモリ及び揮発性メモリの両方を含むことができ、処理中に用いられるデータ、プログラミング命令、較正情報、又はプロセス装置14と共に用いるためのその他の情報、データ又は命令を保存するために用いることができる。図3の構成では、図2に図示された診断機能34を、たとえばコントローラ58内部で、必要に応じて任意のさらなる回路と併せて実施することができる。
【0015】
図4は、本発明の診断アルゴリズムのステップを示す、簡略化されたブロック図である。図4はブロック図100を図示し、スタートブロック102から開始する。ブロック104では、以下により詳細に説明するように、診断テスト又はアルゴリズムが開始される。ブロック106では、所望に応じて、診断結果に続く処理を行うことができる。ブロック108では、診断テストの結果に基づいて、出力又はその他のステップが行われる。所望であれば、ブロック110で、診断テストを繰り返すことができる。たとえば、周期的な又はその他の所望の間隔で、又はプロセス内で感知されたイベントの検出から開始されたときに、もしくはコマンドの受信時に、あるいは診断を開始するためのその他の要因で、診断テストを繰り返すことができる。任意には、診断処理はブロック112で停止する。図4に示されたステップは、たとえばメモリ60に保存されたプログラムに基づいて、コントローラ58により実施することができる。
【0016】
ブロック104により提供される診断テストは、装置14のワイヤレス通信能力、装置14の電源性能、たとえば電源回路36、太陽電池40及び/又はバッテリ38を含む、装置14のワイヤレス機能に関するあらゆる診断にすることができる。さらに、いくつかの構成では、診断は、装置14又はシステム10の任意の態様で実行することができる。
【0017】
1つの例では、図3に示す付加的なセンサ59を用いて、診断情報が提供される。たとえば、装置14に電圧センサが含まれて、太陽電池40からの電圧出力が感知されることができる。太陽電池40の開回路電圧が、長期間、たとえば24時間にわたり、閾値電圧を下回る場合、診断テスト104は、太陽電池パネル40が遮られているか又は壊れていることを示す出力を供給することができる。その他の例では、太陽電池パネル40の最大電力出力がセンサ59により測定され、利用可能な太陽エネルギについての決定を行うために用いられる。センサ59は、太陽電池パネル40に接続された温度センサを含むことができ、パネル40の温度を直接感知するために用いられる。感知された温度は、閾値と比較されて、過温度の発生を特定することができる。」

「【0023】
その他の態様では、光学的な現場診断を用いて、設備の状況が検証される。画像取込装置74、たとえばディジタルカメラ等を用いて、プロセス装置14、又は装置14のコンポーネントの画像を取込むことができる。この画像情報を用いて、太陽電池パネル40の状態、及び太陽電池パネル40の取付配置を検証する。たとえば、画像は、太陽電池パネル40が外れているか、壊れているか又は破損しているかを示すことができる。その上さらに、この情報を用いて、装置14がオペレータにより修理又は補修されていることの視覚的な検証、又は天候を示す視覚的な表示を提供することができる。
【0024】
本発明の診断機能の構成および性能は、内蔵型の電源を有するフィールド装置と共に用いるための多くの利点を提供する。これらの技術は、プロセス変数発信器及び内蔵型発電ユニットの状態及び機能を遠隔評価する手段を提供する。適切なユニット動作を必要とする設備及び現場の状況を検証することができる。続く動作のために、さらなる診断性能を追加することができる。情報は、ローカルに、たとえば設置技術者に提供されることができ、技術者は、設備及び現場の状況が適切なユニット動作を可能にし、よって装置を調整することができることを検証することが可能になる。さらに、画像情報が提供されて、診断に用いられることができる。たとえば、ワイヤレス通信リンクを通じて、装置の動作又は状態を診断するか又は検証している者に、画像を送信することができる。」

2.引用発明
引用文献1には、段落0001によれば、工業用プロセス制御又は監視システムで用いられるワイヤレスプロセスフィールド装置に関する発明が記載されている。

段落0009及び0010によれば、引用文献1に記載の発明の「ワイヤレスプロセスフィールド装置」は、「遠隔地点に取付けられ」、「プロセス配管18に接続され」或いは「貯蔵タンク20に接続され」ること、「装置14及び16は、ワイヤレス無線周波数(RF)通信リンク28及び32を用いて、制御室12内の回路13と通信する」こと、「フィールド装置14及び16は、さらなる線を布設する必要なく、装置にローカルな電力を供給するためのコンポーネントを含む」ことが記載されている。

段落0012によれば、引用文献1に記載の「フィールド装置14」は、「ワイヤレス入出力(通信)回路32、診断部34、電源回路36、バッテリ38及び太陽電池パネル40を含む」こと、「電源回路36を用いて、フィールド装置14内部の回路に電力が供給される」こと、「電源回路36は、太陽電池40から受信した電力又はバッテリ38から受信した電力を用いて動作する」こと、及び、「診断部と標記されたブロック34を用いて、診断機能が実施される」ことが記載されている。

段落0014、段落0015及び0016によれば、引用文献1に記載の「診断機能34」は、「コントローラ58内部でメモリ60に保存されたプログラムに基づいて実施する」こと、「装置14のワイヤレス通信能力、装置14の電源性能、たとえば電源回路36、太陽電池40及び/又はバッテリ38を含む、装置14のワイヤレス機能に関するあらゆる診断にすることできる」ことが記載されている。

段落0017によれば、引用文献1に記載の発明は、「装置14に電圧センサが含まれて、太陽電池40からの電圧出力が感知されることができ、太陽電池40の開回路電圧が、長期間、たとえば24時間にわたり、閾値電圧を下回る場合、診断テスト104は、太陽電池パネル40が遮られているか又は壊れていることを示す出力を供給する」ことが記載されている。

段落0023によれば、引用文献1に記載の発明は、「その他の態様では、光学的な現場診断を用いて、設備の状況が検証される」こと、「画像取込装置74、たとえばディジタルカメラ等を用いて、プロセス装置14、又は装置14のコンポーネントの画像を取込むことができる」こと、「この画像情報を用いて、太陽電池パネル40の状態、及び太陽電池パネル40の取付配置を検証する」こと、「たとえば、画像は、太陽電池パネル40が外れているか、壊れているか又は破損しているかを示すことができる」こと、「装置14がオペレータにより修理又は補修されていることの視覚的な検証、又は天候を示す視覚的な表示を提供することができる」ことが記載されている。

段落0024によれば、引用文献1に記載の発明は、「さらに、画像情報が提供されて、診断に用いられることができる」こと、「たとえば、ワイヤレス通信リンクを通じて、装置の動作又は状態を診断するか又は検証している者に、画像を送信することができる」ことが記載されている。

引用文献1に記載の発明のワイヤレスプロセスフィールド装置の「コントローラ58」でプログラムに基づいて実施する「診断機能」は、「ワイヤレスプロセスフィールド装置における診断方法」といえる。

よって、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、引用発明の各構成については、符号を用いて、構成a?構成hと称する。

(引用発明)
(a)工業用プロセス制御又は監視システムで用いられるワイヤレスプロセスフィールド装置において、
(b)ワイヤレスプロセスフィールド装置は、遠隔地点に取付けられ、プロセス配管18或いは貯蔵タンク20に接続され、フィールド装置14及び16は、ワイヤレス無線周波数(RF)通信リンク28及び32を用いて、制御室12内の回路13と通信し、さらなる線を布設する必要なく、装置にローカルな電力を供給するためのコンポーネントを含み、
(c)フィールド装置14は、ワイヤレス入出力(通信)回路32、診断部34、電源回路36、バッテリ38及び太陽電池パネル40を含み、電源回路36を用いて、フィールド装置14内部の回路に電力が供給され、電源回路36は、太陽電池40から受信した電力又はバッテリ38から受信した電力を用いて動作し、診断部と標記されたブロック34を用いて、診断機能が実施され、
(d)前記診断機能は、コントローラ58内部でメモリ60に保存されたプログラムに基づいて実施され、フィールド装置14のワイヤレス通信能力、装置14の電源性能、たとえば電源回路36、太陽電池40及び/又はバッテリ38を含む、装置14のワイヤレス機能に関するあらゆる診断にすることができ、
(e)フィールド装置14に電圧センサが含まれて、太陽電池40からの電圧出力が感知されることができ、太陽電池40の開回路電圧が、長期間、たとえば24時間にわたり、閾値電圧を下回る場合、診断テスト104は、太陽電池パネル40が遮られているか又は壊れていることを示す出力を供給し、
(f)その他の態様では、光学的な現場診断を用いて、設備の状況が検証され、画像取込装置74、たとえばディジタルカメラ等を用いて、プロセス装置14、又は装置14のコンポーネントの画像を取込むことができ、この画像情報を用いて、太陽電池パネル40の状態、及び太陽電池パネル40の取付配置を検証し、たとえば、画像は、太陽電池パネル40が外れているか、壊れているか又は破損しているかを示すことができ、フィールド装置14がオペレータにより修理又は補修されていることの視覚的な検証、又は天候を示す視覚的な表示を提供することができ、
(g)さらに、画像情報が提供されて、診断に用いられることができ、たとえば、ワイヤレス通信リンクを通じて、装置の動作又は状態を診断するか又は検証している者に、画像を送信することができる、
(h)ワイヤレスプロセスフィールド装置における診断方法。

3.引用文献2の記載事項
当審による拒絶理由通知で引用された特開2001-256475号公報(以下、「引用文献2」という)には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線は、当審により付与したものである。

「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、工場等のフレア・スタックおよび煙突から排出される黒煙の自動検知に用いて好適な黒煙検知システムに関する。
【0002】
【従来の技術】化学プラント工場、火力発電所、塵燃焼施設におけるフレア・スタックや煙突からは燃焼炎や煙が大気中に排出される。これらの排出煙の状態によって、被燃焼物等の燃焼状態を判断することができる。すなわち、フレア・スタック等から突発的に黒煙が排出されたときは、当該被燃焼物等が燃焼途中で不完全燃焼になったものと推測される。そこで、従来はフレアースタックや煙突からの排煙状況を監視員が常時モニタによる監視を行っていた。また、このような排出煙を検出するための方法として、排出煙と背景輝度との輝度差、あるいは煙と背景の色調や色相の差によって画像処理によって排出煙の検出を行う方法が知られている。」

4.引用文献3の記載事項
当審による拒絶理由通知で引用された特開昭61-136340号公報(以下、「引用文献3」という)には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線は、当審により付与したものである。

「産業上の利用分野
本発明は油井制御装置に関し、特に、無人環境下で作動する油井ポンプジャックの動力源としてエンジンを使用した油井制御装置に関する。
従来の技術
油井ポンプジャックの監視および制御に関しては、従来、電気モータを駆動動力源として使用するものがたとえば米国特許N4,102,894号明細書において提案されており、今日における一般的な技術として用いられている。しかし、電気モータは当然ながら電力線の無い地域では使用できず、このような地域ではエンジンが使用される。このときエンジンとしてガスエンジンを使用すると、油井における自噴の石油ガスを燃料とすることができるため、ランニングコストを安価にできる利点がある。
ところで、エンジンには冷却水温や潤滑油圧等電気モータには無い固有の監視項目および制御方法があり、これに関し従来技術は何ら応えるものではない。すなわち、従来においては、上記止ンジンの監視および制御はすべて人の熟練に頼っており、ポンパーと呼ばれる巡回監視人がポンプの設置現場に出向いてエンジンの運転状況を監視し、あるいは起動、停止等の制御を行なわざるを得ないという問題がある。」(第1頁左欄下から4行目-第2頁左欄1行目)

第4 本願発明と引用発明との対比
1.本願発明の構成Aについて
構成aの「ワイヤレスプロセスフィールド装置」は、構成Aの「無線フィールド装置」に相当する。
また、構成fの「ワイヤレスプロセスフィールド装置における診断方法」は、構成eによれば、「画像情報が提供されて、診断に用いられることができ、たとえば、ワイヤレス通信リンクを通じて、装置の動作又は状態を診断するか又は検証している者に、画像を送信することができる」ものであるから、該診断方法は、診断に用いるための画像情報を送信する画像情報送信方法であるともいえ、構成Aの「無線フィールド装置における画像情報送信方法」に相当するものである。
よって、本願発明と引用発明とは、構成Aの点で一致する。

2.本願発明の構成Bについて
構成aの「ワイヤレスプロセスフィールド装置」が含んでいる、構成dの「コントローラ58」、構成cの「ワイヤレス入出力(通信)回路32」、構成cの「電源回路36」、構成fの「画像取込装置74」、構成dの「メモリ60」は、それぞれ、構成Bの「制御装置」、「無線通信回路」、「内部電源」、「画像取り込み装置」、「メモリ」に相当する。
よって、本願発明と引用発明とは、構成Bの点で一致する。

3.本願発明の構成Cについて
構成fの「光学的な現場診断を用いて、設備の状況が検証され、画像取込装置74、たとえばディジタルカメラ等を用いて、プロセス装置14、又は装置14のコンポーネントの画像を取込む」ことは、構成Cの「前記画像取り込み装置によって、前記無線フィールド装置の近くのフレア、ポンプジャック、ポンプ、又はタンクの画像を取り込む工程」と、「前記画像取り込み装置によって、画像を取り込む工程」といえる点で共通するものである。
よって、本願発明と引用発明とは、「前記画像取り込み装置によって、画像を取り込む工程」を含む点では共通する。
しかしながら、本願発明は、「(C)前記画像取り込み装置によって、前記無線フィールド装置の近くのフレア、ポンプジャック、ポンプ、又はタンクの画像を取り込む工程」と、「前記画像情報を遠隔地に送信する工程」と、を含むのに対し、引用発明は、取り込み、送信する画像が、フィールド装置又は装置のコンポーネントの画像であって、「前記無線フィールド装置の近くのフレア、ポンプジャック、ポンプ、又はタンクの画像」ではない点で両者は相違する。

4.本願発明の構成D、構成Fについて
構成eの「ワイヤレス通信リンクを通じて、装置の動作又は状態を診断するか又は検証している者に、画像を送信すること」において、「ワイヤレス通信リンク」は、構成cの「フィールド装置14」の「ワイヤレス入出力(通信)回路32」を使用するものであり、「画像を送信すること」の「画像」は、構成fの「光学的な現場診断を用いて、設備の状況が検証され、画像取込装置74、たとえばディジタルカメラ等を用いて、プロセス装置14、又は装置14のコンポーネントの画像を取込」んだ「画像」である。
また、構成bによれば、「ワイヤレスプロセスフィールド装置は、遠隔地点に取付けられ」たものであるから、構成eの「装置の動作又は状態を診断するか又は検証している者に、画像を送信する」ことにおける画像の送信先は、遠隔地であるといえる。
よって、本願発明と引用発明とは、「前記無線通信回路を使用して、前記画像情報を遠隔地に送信する工程」を含むといえる点では共通するものである。
しかしながら、本願発明は、「(D)前記制御装置によって、前記メモリに記憶された参照画像情報を読み出し、前記画像取り込み装置によって取り込まれた画像の前記参照画像情報からの変化を検出し、変化が検出された領域の前記画像情報を圧縮する工程と、」「(F)前記変化の量がしきい値を超えたとき、前記無線通信回路を使用して、圧縮された前記画像情報を遠隔地に送信する工程」とを含むのに対し、引用発明は、ワイヤレス通信リンクを通じて、画像を遠隔地に送信すること以外は特定されていない点で両者は相違する。

5.本願発明の構成Eについて
構成cの「フィールド装置14は、・・・、電源回路36・・・を含み、電源回路36を用いて、フィールド装置14内部の回路に電力が供給され」ることは、構成Eの「前記無線フィールド装置に対して、前記内部電源によって給電する工程」に相当する。
よって、本願発明と引用発明とは、構成Eを含む点で一致する。

以上をまとめると、本願発明と引用発明の一致点、相違点は次のとおりである。

[一致点]
無線フィールド装置における画像情報送信方法であって、
前記無線フィールド装置は、制御装置と、無線通信回路と、内部電源と、画像取り込み装置と、メモリと、を含み、
前記画像取り込み装置によって、画像を取り込む工程と、
前記無線フィールド装置に対して、前記内部電源によって給電する工程と、
前記無線通信回路を使用して、前記画像情報を遠隔地に送信する工程と、
を含む方法。

[相違点]
相違点1
本願発明は、「(C)前記画像取り込み装置によって、前記無線フィールド装置の近くのフレア、ポンプジャック、ポンプ、又はタンクの画像を取り込む工程」と、「前記画像情報を遠隔地に送信する工程」と、を含むのに対し、引用発明は、取り込み、送信する画像が、フィールド装置又は装置のコンポーネントの画像であって、「前記無線フィールド装置の近くのフレア、ポンプジャック、ポンプ、又はタンクの画像」ではない点。

相違点2
本願発明は、「(D)前記制御装置によって、前記メモリに記憶された参照画像情報を読み出し、前記画像取り込み装置によって取り込まれた画像の前記参照画像情報からの変化を検出し、変化が検出された領域の前記画像情報を圧縮する工程と、」「(F)前記変化の量がしきい値を超えたとき、前記無線通信回路を使用して、圧縮された前記画像情報を遠隔地に送信する工程」とを含むのに対し、引用発明は、ワイヤレス通信リンクを通じて、画像を遠隔地に送信すること以外は特定されていない点。

第5 判断
1.相違点1について
引用発明は、構成f、構成gによれば、「画像取込装置74」は、「プロセス装置14、又は装置14のコンポーネントの画像を取込」み、「送信する」ものであり、該「画像情報」により、「装置の動作又は状態を診断するか又は検証」するものである。
一方、引用発明のようなフィールド装置が使用される工業プロセスシステムは、通常、フレア、ポンプジャック、ポンプ、又はタンク等のコンポーネントを備えており、このようなコンポーネントは、その動作や状態の視覚的な診断・検証が必要であることは従来から当業者に知られていることである(例えば、引用文献2の段落0002には、フレアスタックのモニタによる監視について、引用文献3の第1頁右下欄には、油井ポンプジャックの監視について記載されている。)。
したがって、引用発明において、フィールド装置自体のコンポーネントのみではなく、フィールド装置が使用される工業プロセスシステムが通常備え、その動作や状態の視覚的な診断・検証が必要な、フレア、ポンプジャック、ポンプ、又はタンク等のコンポーネントの画像をも画像取込装置によって取り込み、送信することは当業者が容易に想到し得ることである。

2.相違点2について
引用発明は、構成d、構成eによれば、「診断機能は、コントローラ58内部でメモリ60に保存されたプログラムに基づいて実施され」、「フィールド装置14に電圧センサが含まれて、太陽電池40からの電圧出力が感知されることができ、太陽電池40の開回路電圧が、長期間、たとえば24時間にわたり、閾値電圧を下回る場合、診断テスト104は、太陽電池パネル40が遮られているか又は壊れていることを示す出力を供給」するもの、すなわち、コントローラ58が、太陽電池40の電圧出力が閾値を越えて変化したことを検出したときにその結果の出力を供給する診断機能を有するものである。
さらに、画像による診断の際に、画像が正常な状態から閾値を超えて変化したときに画像を送信する技術は周知の技術である。
したがって、引用発明において、コントローラで実施する診断機能で、画像情報が提供されて診断に用いられるときに、画像が正常な状態から閾値を越えて変化したとき(本願発明でいう「前記制御装置によって、前記メモリに記憶された参照画像情報を読み出し、前記画像取り込み装置によって取り込まれた画像の前記参照画像情報からの変化を検出し」、「前記変化の量がしきい値を超えたとき」)に画像を送信する(本願発明でいう「前記無線通信回路を使用して」、「前記画像情報を遠隔地に送信する工程」)ようにすることは、当業者が容易に想到し得ることであり、また、画像情報を送信する際に圧縮すること(本願発明でいう「前記画像情報を圧縮する工程」、「圧縮された前記画像情報を遠隔地に送信する工程」)は、通信容量の節約のために普通に行われていることであり、当業者が必要に応じて適宜なし得ることである。

3.まとめ
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願の請求項11に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-09-20 
結審通知日 2019-09-24 
審決日 2019-10-17 
出願番号 特願2016-517425(P2016-517425)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐野 潤一  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 千葉 輝久
小池 正彦
発明の名称 画像処理を用いた無線工業プロセスフィールド装置  
代理人 特許業務法人 津国  

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