ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード![]() |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61J |
---|---|
管理番号 | 1360154 |
審判番号 | 不服2018-17426 |
総通号数 | 244 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-04-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-12-27 |
確定日 | 2020-03-19 |
事件の表示 | 特願2017-134774「錠剤」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 9月28日出願公開,特開2017-170265,請求項の数(2)〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成25年7月16日(優先権主張 平成24年7月19日)を国際出願日とする特願2014-525818号の一部を平成29年7月10日に新たな特許出願としたものであって,その手続の概要は以下のとおりである。 平成30年 4月24日付け:拒絶理由通知 平成30年 8月27日 :意見書の提出 平成30年10月 1日付け:拒絶査定 平成30年12月27日 :審判請求書,同時に手続補正書の提出 第2 原査定の概要 原査定(平成30年10月1日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願請求項1及び2に係る発明は,以下の引用文献1及び2に記載された発明,並びに,引用文献3及び4に示される周知の技術に基いて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.”ブロチゾラムM錠0.25「EMEC」服用される方へ”,エルメッド エーザイ,2007年 3月 2.”エナラプリルM錠5「EMEC」を服用される方へ”,エーザイ,2009年 2月 3.特開2011-20325号公報 4.国際公開第2010/032717号 第3 審判請求時の補正について 審判請求時の補正は,特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。 審判請求時の補正が,特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものであるか,また,新規事項を追加するものではないかについて検討すると,割線を有する面を「第1の面のみ」に限定する補正は,特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものである。また,当初明細書の【0141】,【0144】,図32及び33には,第1の面のみに割線を有する点が記載されているから,割線を有する面を「第1の面のみ」とする点は,当初明細書等に記載された事項の範囲内のものであり,新規事項を追加するものではないといえる。 そして,以下「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように,補正後の請求項1及び2に係る発明は,独立特許要件を満たすものである。 第4 本願発明 本願請求項1及び2に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」及び「本願発明2」という。)は,平成30年12月27日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりの以下の発明である。 「【請求項1】 第1の面と,該第1の面と反対側の第2の面とを有する錠剤において, 前記第1の面のみに割線を有し, 前記第1の面における前記割線の一方側に第1の符号が印刷されており, 前記第1の面における前記割線の他方側に第2の符号が印刷されており, 前記第2の面における前記割線に対向する対応部位の前記一方側に前記第2の符号が印刷されており,さらに, 前記第2の面における前記対応部位の前記他方側に前記第1の符号が印刷されている, 錠剤。 【請求項2】 前記第1の符合及び前記第2の符合は,文字である,請求項1に記載の錠剤。」 第5 引用文献,引用発明等 1 引用文献1について (1)原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には,次の記載がある。 「 ![]() 」 「つまみやすい大きさの錠剤です。」 (2)上記記載から,引用文献1には,次の技術的事項が記載されているものと認められる。 ア 引用文献1に記載されているものは,錠剤である。 イ 前記錠剤は,表面と裏面とを有する。 ウ 前記表面と前記裏面とは,中央部に横線模様を有する。 エ 前記表面の前記中央部の横線模様の上側に文字列「EE」が表記されており,下側に文字列「13」が表記されている。 オ 前記裏面の前記中央部の横線模様の上側に文字列「13」が上下逆さまに表記されており,下側に文字列「EE」が上下逆さまに表記されている。 なお,ここで,上記(1)の図の表と裏とは横に並べて記載されてはいるものの,その対応関係は明記されていない。つまり,中央部の横線模様について,表と裏とで対応する位置にあるとの説明は見あたらないし,表の中央部の横線模様の上側が,必ずしも裏の中央部の横線模様の上側に対応する部分であるとも限らない。このため,裏の図が,表に示される錠剤を上下方向軸で反転させたものの図なのか,水平方向軸で反転させたものの図なのか,あるいはこれらのいずれでもないのかが明らかでない。 カ 中央部の横線模様は,ほぼ平行な三本の直線と,その両端部付近にて上下二本の線が中央の線に向かって曲がり,端部の一点に収束するデザインとなっている。 (3)以上から,上記引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「表面と裏面とを有する錠剤において, 前記表面及び前記裏面に中央部の横線模様を有し, 前記表面における前記中央部の横線模様の上側に文字列EEが表記されており, 前記表面における前記中央部の横線模様の下側に文字列13が表記されており, 前記裏面における前記中央部の横線模様の上側に文字列13が表記されており, 前記裏面における前記中央部の横線模様の下側に文字列EEが表記されており, 表面における前記中央部の横線模様と裏面における前記中央部の横線模様との位置関係及び表面及び裏面に表記された文字の位置関係は不明である,錠剤。」 2 引用文献2について 引用文献2にも,引用発明と類似の発明が記載されている(表記される符合が文字列「13」に代えて文字列「09」となっている点において相違するのみである。)。 3 周知の技術及び技術常識について (1)錠剤に表示される文字や図柄などの模様を,打錠による刻印又は印刷によって形成することは,周知の技術である(例えば,引用文献3の(【0036】,引用文献4の[0042],並びに米国特許第3125490号の第2欄第35行?第3欄第21行及び図1?11の記載参照。)。 (2)また,錠剤の中央部に割線を片面にだけ設けることは周知の技術である(例えば,特開2011-173932号公報の【0012】,特開平7-179333号公報の【0015】,国際公開2003/026560号の明細書第17ページ第17?27行,及び田中巳恵子,「錠剤をきれいに割ろう ?錠剤の割錠の豆知識?」じほう,調剤と情報 2012.7,Vol.18,No.7,2012年7月1日,99(1055)?105(1061)ページの表2参照。)。 第6 対比・判断 1 本願発明1について (1)本願発明における「割線」の意味 本願明細書の,「錠剤を分割するための溝状の割線」(【0008】),「分割するための溝状の割線11」(【0021】)という記載事項,図19,20,25,26,28,29の割線11についての図示事項からみて,本願発明の「割線」は,錠剤の表面の中央部を横切る仮想線状の部位(以下,「中央仮想線部位」という。)に沿って存在する,錠剤を分割するための溝状の構造であると認められる。 (2)本願発明の課題及び効果 本願発明の課題は,一方側の面にのみ割線を有する錠剤において,一方側の面には,割線に対して第1の領域に第1の符号が印刷されるとともに第2の領域に第2の符号が印刷され,他方側の面には,割線の対応する部位に対して前記第1の領域と対応する領域に第2の符号が印刷されるとともに前記第2の領域と対応する領域に第1の符号が印刷される錠剤を提供することにあり(【0005】,【0009】,【0016】及び【0017】),係る構成によれば,錠剤は,割線の位置において分割されたときにいずれの分割片においても第1の符号と第2の符号との両符号がそれぞれ印刷されている状態となるという効果を奏するものである(【0018】)。 (3)対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 ア 引用発明における「表面」と「裏面」とは,錠剤の相対する面であることから,本願発明1における「第1の面」と「該第1の面と反対側の第2の面」とに相当する。 イ 引用発明の「中央部の横線模様」と,本願発明1の「割線」とは,中央仮想線部位を示すものである限りにおいて共通する。 ウ 引用発明の中央部の横線模様の「上側」及び「下側」は,中央仮想線部位の一方側と他方側とであるから,本願発明1における割線の「一方側」及び「他方側」に相当する。 エ 引用発明における文字列EE及び文字列13は,それぞれアルファベット及びアラビア数字であり,これらは明らかに「符合」であるから,本願発明1における「第1の符合」及び「第2の符合」に相当する。 オ 引用発明における「表記」は,符合を表示しているという限りにおいて,本願発明1における「印刷」と共通する。 カ 引用発明における「裏面における上記中央部の横線模様」と,本願発明1における「前記割線に対向する対応部位」とは,錠剤の裏面における中央部仮想線部位である限りにおいて共通する。 したがって,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。 (一致点) 「第1の面と,該第1の面と反対側の第2の面とを有する錠剤において, 前記第1の面に中央仮想線部位を示すものを有し, 前記第1の面における中央仮想線部位を示すものの一方側に第1の符号が表示されており, 前記第1の面における前記中央部仮想線部位を示すものの他方側に第2の符号が表示されており, 前記第2の面における中央仮想線部位の一方側に前記第2の符合が表示されており,さらに, 前記第2の面における前記中央仮想線部位の他方側に前記第1の符合が表示されている, 錠剤。」 (相違点1) 中央部の仮想線部位を示すものが,本願発明1では,割線であるのに対し,引用発明では,割線かどうか明らかでない点。 (相違点2) 中央部の仮想線を示すものについて,本願発明1は,第1の面のみに有するのに対し,引用発明では,第1の面及び第2の面に有する点。 (相違点3) 符合の表示された態様について,本願発明1では,印刷されたものであるとともに,第2の面における第1及び第2の符合について,「前記第2の面における前記割線に対向する対応部位の前記一方側に前記第2の符号が印刷されており,さらに,前記第2の面における前記対応部位の前記他方側に前記第1の符号が印刷されている」,すなわち,第1の面において第1の符合が表示される一方側の第2の面には第2の符合が表示され,第1の面において第2の符合が表示される他方側の第2の面には第1の符合が表示される(以下,このような表示を,「たすき掛けの表示」という。)のに対し,引用発明では,そのようになっているのか明らかでない点。 (4)相違点についての判断 ア 相違点1について 割線を備えた一般的な丸形の錠剤について,その正面図を描写した場合,上記第5の1(2)カのとおりの横線模様と同様の図線となることが当業者であれば容易に想像されることを踏まえると,引用発明の表面及び裏面の中央部の横線模様は割線(溝状の構造)を示唆するものであるといえる。 そうすると,引用発明について上記示唆に従い,中央仮想線部位を示すものを割線とすること,すなわち,上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易に想到することができたものといえる。 イ 相違点2及び3について 本願発明1の課題及び効果は上記(2)のとおりのものであって,本願発明1の錠剤における割線(中央仮想線部位を示すもの)と印刷された符号とは互いに独立して存在するものではなく,その位置関係において密接な相関性を有することで,本願発明1の課題を解決し効果を奏するものとなることから,上記相違点2及び3は,別個のものとしてそれぞれ検討するのではなく,一体不可分のものとして検討するのが相当といえる。 ウ そこで,上記相違点2及び3を合わせて検討すると,上記第5の3(1)及び(2)のとおり,錠剤の中央仮想線部位を示すもの(割線)を片面にだけ設けること,錠剤に表示される文字や図柄などの模様を印刷によって形成すること,それ自体はいずれも周知の技術である。 しかし,第1の符合と第2の符合とをたすき掛けの表示とする点は,公知又は周知であるとするに足る証拠が見当たらず,まして,錠剤の中央仮想線部位を示すものを片面にだけ設け,かつ,第1の符合と第2の符合とをたすき掛けの表示で印刷する点,すなわち,上記相違点2及び3に係る本願発明の構成を合わせ持つ点については,公知又は周知であるとする何らの証拠も見当たらない。 そして,本願発明は,上記相違点2及び3に係る本願発明の構成を合わせ持つことによって,上記(2)のとおりの効果を奏するものである。 よって,引用発明について上記相違点2及び3に係る本願発明の構成を得ることは,当業者が容易になし得ることではない。 エ したがって,本願発明1は,引用発明及び上記周知の技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 2 本願発明2について 本願発明2は,本願発明1をさらに減縮したものであるから,本願発明1と同じ理由により,引用発明及び上記周知の技術事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 第7 むすび 以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2020-03-04 |
出願番号 | 特願2017-134774(P2017-134774) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(A61J)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 立花 啓 |
特許庁審判長 |
芦原 康裕 |
特許庁審判官 |
寺川 ゆりか 倉橋 紀夫 |
発明の名称 | 錠剤 |
代理人 | 特許業務法人藤本パートナーズ |