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審決分類 |
審判 査定不服 発明同一 取り消して特許、登録 G03B 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G03B |
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管理番号 | 1360197 |
審判番号 | 不服2019-6100 |
総通号数 | 244 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-04-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-05-10 |
確定日 | 2020-03-17 |
事件の表示 | 特願2015-505304「光学システムおよび光学システムを有する装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 9月18日国際公開、WO2014/141718、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成26年3月14日(優先権主張 平成25年3月14日)を国際出願日とする出願であって、平成30年3月23日に特許請求の範囲についての補正がなされ、同年7月19日付けで拒絶理由が通知され、同年9月18日に特許請求の範囲についての補正がなされ、平成31年2月4日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされ、同年2月12日に査定の謄本が送達された。 これに対して、令和元年5月10日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1-8に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1-8」という。)は、特許請求の範囲の請求項1-8に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「 【請求項1】 光変調デバイスの側から入射する可視光帯域の光を投影側に出射する第1のレンズシステムと、 前記第1のレンズシステムに前記投影側から入射する不可視光帯域の光であって、前記可視光帯域に隣接する近接光を前記第1のレンズシステムの光路から分離して撮像デバイスの側に出力する光デバイスとを有し、 前記第1のレンズシステムは前記光デバイスを介して前記光変調デバイスと共役な位置近傍に前記近接光の中間像を結像し、さらに、 前記中間像を前記撮像デバイスに結像する第2のレンズシステムを有する光学システム。 【請求項2】 請求項1において、 前記光デバイスは、前記近接光を前記光路に対して垂直な方向に出力する第1の光学素子を含む、光学システム。 【請求項3】 請求項2において、 前記光デバイスは、前記第1の光学素子から出力された前記近接光を前記光路に対して平行な方向に出力する第2の光学素子を含む、光学システム。 【請求項4】 請求項1ないし3のいずれかにおいて、 前記近接光は近赤外光である、光学システム。 【請求項5】 請求項1ないし4のいずれかに記載の光学システムと、 前記光変調デバイスと、 前記撮像デバイスとを有する装置。 【請求項6】 請求項5において、さらに、 前記撮像デバイスにより得られた第2の画像データに基づいて、前記光変調デバイスに供給する第1の画像データを変更する制御ユニットを有する、装置。 【請求項7】 請求項6において、 前記制御ユニットは、前記第2の画像データに、前記第1の画像データに含まれない人型または顔型があると、前記第1の画像データの前記人型または顔型に対応する部分を暗転させた画像データを前記光変調デバイスに供給する第1のユニットを含む、装置。 【請求項8】 請求項6または7において、 前記制御ユニットは、前記第2の画像データに、前記第1の画像データに含まれない情報があると、前記情報を前記第1の画像データに追加した画像データを前記光変調デバイスに供給する第2のユニットを含む、装置。」 第3 原査定の理由の概要 1.理由3(拡大先願) 本願発明1、4-6、8は、本願の優先日前の特許出願であって、本願の出願後に特許掲載公報が発行された次の特許出願(以下、「先願」という。)の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「先願明細書等」という。)に記載された発明と同一であり、しかも、本願の発明者が上記先願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本願の出願時において、本願の出願人が上記先願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。 先願:特願2012-197403号(特許第5174273号公報) 2.理由2(進歩性) 本願発明1-6は、以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2-5に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであり、本願発明7-8は、以下の引用文献1、6に記載された発明及び引用文献2-5に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであり、本願発明8は、以下の引用文献1、6-7に記載された発明及び引用文献2-5に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:特開平9-80372号公報 引用文献2:特開2007-25424号公報(周知技術を示す文献) 引用文献3:特開2007-140013号公報(周知技術を示す文献) 引用文献4:特開2009-124018号公報(周知技術を示す文献) 引用文献5:特開2010-190776号公報(周知技術を示す文献) 引用文献6:特開2008-148089号公報 引用文献7:特開2003-99194号公報 第4 先願明細書等及び引用文献に記載された発明 1 先願明細書等 (1)先願明細書等には、次の記載がある。下線は、当審で付した。 「【0012】 図1に示すように、プロジェクタ100は、ランプ1とカラーホイール2とロッドインテグレータ3とコンデンサーレンズ4とTIR(Total Internal Reflection)プリズム5とDMD6と投射レンズ7と倍率補正光学系10と撮像素子11とを備えている。」 「【0016】 DMD6は、多数のマイクロミラーを平面に配列した光変調素子(ライトバルブ)の一種である。DMD6は、時分割されて照射される赤・緑・青の光を、外部からの画像信号に基づいて、空間的に光変調して投射光を生成する。DMD6による投射光は、TIRプリズム5の反射面に対して臨界角よりも小さい入射角で入射する。そのため、DMD6による投射光は、反射面を透過して投射レンズ7に入射する。投射光は、投射レンズ7により拡大投射されてスクリーン8上に結像する。 【0017】 ユーザは、赤外線等を発光する発光素子9を介して、スクリーン8上の任意の位置を指し示すことができる。スクリーン8で反射した光は、投射レンズ7を介してTIRプリズム5に入射する。 【0018】 TIRプリズム5に入射したスクリーン8からの光は、TIRプリズム5の反射面で反射するとともにTIRプリズム5の内部で反射して、TIRプリズム5から射出する。TIRプリズム5から射出した光は、倍率補正光学系10である複数のレンズを介して、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(ComplementaryMetal Oxide Semiconductor)等で構成される撮像素子11に導かれ、撮像素子11上で結像する。 【0019】 これにより、後述する画像処理部により、スクリーン8上の赤外線光の照射位置を検出して、DMD6を介して、ユーザが指し示していることを示すポインティング画像等をスクリーン8上に投影し、フィードバックする等の処理が行われる。」 「【0027】 このD面は、撮像素子11に導かれる撮像用の結像光(撮像光)の光軸(撮影像のセンターの光)に対して垂直に設置されている。また、図示では、倍率補正光学系10のTIRプリズム5側がテレセントリックとなる光学系となっている。つまり、撮像素子11側の補正レンズである倍率補正光学系10までは、テレセントリックを維持した形になっている。この場合、投射レンズ7のDMD6側は、通常の設計において、同様にテレセントリックである。そのため、撮像光を画面内全域に亘って効率良く撮像素子11上に導くことが可能となる。」 「【図7】 」 (2)上記記載によれば、先願明細書等には次の事項が記載されている。 ア プロジェクタ100は、ランプ1とカラーホイール2とロッドインテグレータ3とコンデンサーレンズ4とTIRプリズム5とDMD6と投射レンズ7と倍率補正光学系10と撮像素子11とを備えている。(【0012】) イ DMD6は、時分割されて照射される赤・緑・青の光を、外部からの画像信号に基づいて、空間的に光変調して投射光を生成し、投射レンズ7は、DMD6による投射光を拡大投射してスクリーン8上に結像するものである。(【0016】) ウ ユーザが、赤外線等を発光する発光素子9を介して、スクリーン8上の任意の位置を指し示すことで、スクリーン8で反射された赤外線等は、投射レンズ7に入射する。(【0017】) エ TIRプリズム5は、スクリーン8で反射された赤外線等を、TIRプリズム5の反射面で、投射レンズ7の光路とは異なる方向に、反射してTIRプリズム5から射出し、倍率補正光学系10である複数のレンズを介して撮像素子11に導く。(【0017】-【0018】、【図7】) オ 倍率補正光学系10は、TIRプリズム5から射出した赤外線等の光を撮像素子11に導き、撮像素子11上で結像させる。(【0017】-【0018】) カ TIRプリズム5から、撮像素子11側の補正レンズである倍率補正光学系10までは、テレセントリックな光学系であり、また、投射レンズ7のDMD6側も、テレセントリックな光学系である。(【0027】) (3)したがって、先願明細書等には次の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されている。 「ランプ1とカラーホイール2とロッドインテグレータ3とコンデンサーレンズ4とTIR(Total Internal Reflection)プリズム5とDMD6と投射レンズ7と倍率補正光学系10と撮像素子11とを備えるプロジェクタ100であって、 時分割されて照射される赤・緑・青の光を、外部からの画像信号に基づいて、空間的に光変調して投射光を生成するDMD6と、DMD6による投射光を拡大投射してスクリーン8上に結像する投射レンズ7であって、ユーザが、赤外線等を発光する発光素子9を介して、スクリーン8上の任意の位置を指し示すことで、スクリーン8で反射した赤外線等が入射する投射レンズ7と、 スクリーン8で反射した赤外線等を、TIRプリズム5の反射面で反射してTIRプリズム5から射出し、倍率補正光学系10である複数のレンズを介して撮像素子11に導き、撮像素子11上で結像させるTIRプリズム5と、 IRプリズム5から射出した赤外線等の光を撮像素子11に導き、撮像素子11上で結像させる倍率補正光学系10を有し、 TIRプリズム5から、撮像素子11側の補正レンズである倍率補正光学系10までは、テレセントリックな光学系であり、また、投射レンズ7のDMD6側も、テレセントリックな光学系である、プロジェクタ100。」 2.引用文献1 (1)引用文献1には、次の記載がある。下線は、当審で付した。 「【0011】 【発明の実施の形態】以下、図面を参照してこの発明の一実施形態を説明する。図1はその構成を示すもので、図示しないパソコンからの出力によって駆動される液晶プロジェクタ11を備えるもので、この液晶プロジェクタ11は光源12を内蔵する。この光源は、例えば焦点位置に光源ランプを設置した反射鏡を有するように構成され、平行な光線を出射する。この光源12からの平行光線は、液晶パネル13を通過した後投写のためのレンズ14を介してスクリーン15に投写される。液晶パネル13にはパソコンからの映像信号に基づく映像が再現され、この映像がスクリーン15に光学像として投写される。 【0012】液晶パネル13とレンズ14との間には、液晶パネル13を通過した光源から光通路に対して45°に設定したした、P偏光を通過しS偏光を反射する偏光ビームスッピリッタ16が設定され、これを通過した液晶パネル13の表示画像の光がスクリーン15に導かれる。そして、このスクリーン15に表示された光映像は撮像機能も兼ねるレンズ14を介して偏光ビームスッピリッタ16で反射され、集光レンズ17を介してCCD等によるイメージセンサ18に結像される。 【0013】スクリーン15に向けてレーザビームを出射するレーザポインタ19が設定されるもので、このレーザポインタ19からのレーザ光によってスクリーン15上にスポット光像が結像される。ここで、レーザポインタ19においては、赤外線の波長の目には見えない波長のレーザ光が出射されてスクリーン15上に結像されるもので、このスクリーン15上のスポット光像は、液晶パネル13を通過したパソコン映像とは異なり、聴衆において視認することはできない。そして、このレーザポインタ19によって投写されたスポット光像はイメージセンサ18によって撮像され、その映像信号は座標検出器20に入力される。」 「【0018】また、イメージセンサ18の座標と液晶パネル13からスクリーン15上に投写される映像の座標を一致させる手段としては、白ラスター信号や特定パターンの信号をスクリーン15に投写してその投写パターンから映像の4角を検出したり、スクリーン15の特定場所を検出する等のキャリブレーション、初期設定動作を使用前や使用中に手動もしくは自動的に行うこと、液晶パネル13の画素とイメージセンサ18を構成するCCDの画素の位置を光学的に合わせて初期設定動作なしで使用可能とすること、スクリーン15上の4角に十字等のマーカを液晶パネル13から投写し、ユーザにおいてレーザポインタ19でその4箇所を指示して座標の検出を行うこと等が考えられる。」 「【図1】 」 (2)上記記載によれば、引用文献1には次の事項が記載されている。 ア 液晶プロジェクタ11において、投射のためのレンズ14は、パソコンからの映像信号に基づく映像が再現される液晶パネル13を通過した光源12からの平行光線を、スクリーン15に投射する。(【0011】) イ スクリーン15上には、赤外線の波長の目には見えない波長のレーザ光のスポット光像が結像される。(【0013】) ウ 偏光ビームスッピリッタ16は、スクリーン15に表示された光映像を、撮像機能も兼ねるレンズ14を介して、レンズ14の光路とは異なるイメージセンサ18の方向に反射する。(【0012】、【図1】) エ 集光レンズ17は、反射された赤外線の波長の光映像を、イメージセンサ18に結像させる。(【0012】-【0013】) (3)したがって、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「液晶プロジェクタ11において、 パソコンからの映像信号に基づく映像が再現される液晶パネル13を通過した光源12からの平行光線を、スクリーン15に投射する、投射のためのレンズ14と、 スクリーン15に表示された赤外線の波長の目には見えない波長のレーザ光のスポット光像の光映像を、撮像機能も兼ねるレンズ14を介して、レンズ14の光路とは異なるイメージセンサ18の方向に反射する偏光ビームスッピリッタ16と、 反射された赤外線の波長の光映像を、イメージセンサ18に結像させる集光レンズ17を有する、 液晶プロジェクタ11。」 3.引用文献2 引用文献2には、次の記載がある。下線は、当審で付した。 「【0020】 次に、撮影光学系Bについて説明する。撮影光学系Bは、撮影レンズ6、リレーレンズ8、カメラ等の撮影装置9から構成される。物体1の像は、撮影レンズ6により中間像7として一旦結像され、中間像7の位置に焦点を持つ、リレーレンズ8により、撮影装置9へと導かれる。撮影装置9は、着脱可能となっており、必要な時に、ディジタルカメラ等を取り付けて撮影できるようになっている。」 4.引用文献3 引用文献3には、次の記載がある。下線は、当審で付した。 「【0045】 結像光学系31は、それぞれ同傾向の軸上色収差を有する第1レンズ31A、第2レンズ31Bからなる。そして、第1レンズ31Aにより中間像を形成し、第2レンズ31Bにより、その中間像をリレーして結像面8A、8Bに再結像するものである。 第1レンズ31A、第2レンズ31Bは、いずれも正パワーを有するレンズまたはレンズ群を採用することができるが、本実施形態では、非球面を有する両凸レンズを採用している。」 5.引用文献4 引用文献4には、次の記載がある。下線は、当審で付した。 「【0016】 前記結像光学系は、中間結像位置に前記結像光学系の視野を制御する視野絞り(例えば、図1の視野絞り4)を備える2回結像光学系であり、 中間像を形成する前記集光光学系(例えば、図1の集光レンズ2)は、物体、像側が両テレセントリックになっており、さらに、前記結像光学系は、前記中間像をリレーするリレー光学系(例えば、図1のリレーレンズ5)を備え、 前記リレー光学系は少なくとも中間像側がテレセントリックになっている。」 6.引用文献5 引用文献5には、次の記載がある。下線は、当審で付した。 「【0030】 可視光用レンズ46は、図4に示すように、リレーレンズ系47と、リレーレンズ系47を保持する鏡筒部材48とを有して構成される。可視光用レンズ46が対物レンズ36と可視光用カメラ37との間の光路上に挿入された状態で、対物レンズ36は、受光側凹面鏡31からの可視光を受けて、前述の対物レンズ36によって結像がなされる像面にウェハWの中間像(回折像)を結像させる。照明光が可視光である場合、蛍光による中間像を形成する必要がないため、リレーレンズ系47は、前述のウェハWの中間像(回折像)をリレーして可視光用撮像素子38の撮像面上に結像させる。なお、リレーレンズ系47は、必要に応じて、複数のレンズから構成されてもよく、単レンズであってもよい。」 第5 理由3(拡大先願)についての判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と先願発明とを対比する。 ア 先願発明の「DMD6」は「赤・緑・青の光を、外部からの画像信号に基づいて、空間的に光変調して投射光を生成」するから、本願発明1の「光変調デバイス」に相当する。 イ 先願発明の「DMD6による投射光」及び「スクリーン8上に結像」される「拡大投射」光は、それぞれ、本願発明1の「光変調デバイスの側から入射する可視光帯域の光」及び「投影側に出射」する光に相当する。 そうすると、先願発明の「DMD6による投射光を拡大投射してスクリーン8上に結像する投射レンズ7」は、本願発明1の「光変調デバイスの側から入射する可視光帯域の光を投影側に出射する第1のレンズシステム」に相当する。 ウ 先願発明の「赤外線等」は「スクリーン8で反射」して「投射レンズ7」に入射するものであって、可視光帯域に隣接する不可視光帯域の光であることは明らかだから、本願発明1の「第1のレンズシステムに前記投影側から入射する不可視光帯域の光であって、前記可視光帯域に隣接する近接光」に相当する。 エ 先願発明の「TIRプリズム5」は、「スクリーン8で反射した赤外線等を、TIRプリズム5の反射面で反射してTIRプリズム5から射出し、倍率補正光学系10である複数のレンズを介して撮像素子11に導き、撮像素子11上で結像させる」ものであるから、本願発明1の「近接光を前記第1のレンズシステムの光路から分離して撮像デバイスの側に出力する光デバイス」に相当する。 オ 先願発明の「倍率補正光学系10」は、「TIRプリズム5から射出した赤外線等の光を撮像素子11に導き、撮像素子11上で結像させる」ものであって、「TIRプリズム5から、撮像素子11側の補正レンズである倍率補正光学系10までは、テレセントリックな光学系」であるから、先願発明の「倍率補正光学系10」と本願発明1の「前記中間像を前記撮像デバイスに結像する第2のレンズシステム」とは、「近接光を撮像デバイスに結像する第2のレンズシステム」である点で共通する。 カ 先願発明の「プロジェクタ100」は、本願発明1の「光学システム」に相当する。 (2)一致点及び相違点 本願発明1と先願発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「光変調デバイスの側から入射する可視光帯域の光を投影側に出射する第1のレンズシステムと、 前記第1のレンズシステムに前記投影側から入射する不可視光帯域の光であって、前記可視光帯域に隣接する近接光を前記第1のレンズシステムの光路から分離して撮像デバイスの側に出力する光デバイスとを有し、 近接光を前記撮像デバイスに結像する第2のレンズシステムを有する光学システム。」 <相違点> 「第2のレンズシステム」により「前記撮像デバイスに結像」される「近接光」が、本願発明1では、「第1のレンズシステム」が「光デバイスを介して」「光変調デバイスと共役な位置近傍に前記近接光の中間像を結像し」、さらに、「前記中間像」が「前記撮像デバイスに結像」されるのに対し、先願発明では、テレセントリックな光学系を通過する近接光であって、中間像が結像されるかどうかは定かでない点。 (3)相違点についての判断 先願明細書等において、テレセントリックな光路中に、中間像を結像させるとの記載はなく、中間像を結像させる動機付けや示唆も存在しないから、先願発明は、本願発明1と同一とはいえない。 また、仮に、結像レンズ等を用いて中間像を形成し、リレーレンズ等の光学系により当該中間像を観察系に導く光学設計手法が周知であったとしても、本願発明1は、積極的に、「第1のレンズシステム」が「光デバイスを介して」「光変調デバイスと共役な位置近傍に前記近接光の中間像を結像」させるという構成を採用することにより、本願明細書の段落【0006】-【0007】に記載されたような「第1のレンズシステムを可視光用の光学系としていっそう最適化した構成としやすく、高性能の光学システムを提供できる。」、(簡易に)「最終像の結像倍率を調整できる。」といった作用効果を奏するものであるから、上記相違点は、課題解決のための具体化手段における微差ともいえない。 したがって、本願発明1は、先願発明と同一とはいえない。 2.本願発明4-6、8について 本願発明4-6、8は、本願発明1の構成を全て含むものである。そうすると、上記1.と同じ理由により、本願発明4-6、8は、先願発明と同一とはいえない。 第6 理由2(進歩性)についての判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「液晶パネル13」は、「パソコンからの映像信号に基づく映像が再現される」ものであるから、その通過光は可視光帯域の光と考えられ、本願発明1の「光変調デバイス」に相当する。したがって、引用発明の「パソコンからの映像信号に基づく映像が再現される液晶パネル13を通過した光源12からの平行光線を、スクリーン15に投射する、投射のためのレンズ14」は、本願発明1の「光変調デバイスの側から入射する可視光帯域の光を投影側に出射する第1のレンズシステム」に相当する。 イ 引用発明の「赤外線の波長の目には見えない波長のレーザ光のスポット光像の光映像」は、「撮像機能も兼ねるレンズ14」に入射するから、本願発明1の「第1のレンズシステムに投影側から入射する不可視光帯域の光であって、可視光帯域に隣接する近接光」に相当する。 ウ 引用発明の「偏光ビームスッピリッタ16」は、「赤外線の波長の目には見えない波長のレーザ光のスポット光像の光映像を、撮像機能も兼ねるレンズ14を介して、レンズ14の光路とは異なるイメージセンサ18の方向に反射する」から、本願発明1の「可視光帯域に隣接する近接光を前記第1のレンズシステムの光路から分離して撮像デバイスの側に出力する光デバイス」に相当する。 エ 引用発明の「反射された赤外線の波長の光映像を、イメージセンサ18に結像させる集光レンズ17」と、本願発明1の「中間像を前記撮像デバイスに結像する第2のレンズシステム」とは、ともに、「近接光を撮像デバイスに結像する第2のレンズシステム」である点で共通する。 オ 引用発明の「液晶プロジェクタ11」は、本願発明1の「光学システム」に相当する。 (2)一致点及び相違点 本願発明1と引用発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「光変調デバイスの側から入射する可視光帯域の光を投影側に出射する第1のレンズシステムと、 前記第1のレンズシステムに前記投影側から入射する不可視光帯域の光であって、前記可視光帯域に隣接する近接光を前記第1のレンズシステムの光路から分離して撮像デバイスの側に出力する光デバイスとを有し、 近接光を前記撮像デバイスに結像する第2のレンズシステムを有する光学システム。」 <相違点> 「第2のレンズシステム」により「前記撮像デバイスに結像」される「近接光」について、本願発明1では「第1のレンズシステム」が「光デバイスを介して」「光変調デバイスと共役な位置近傍に前記近接光の中間像を結像し」、さらに、「前記中間像」が「前記撮像デバイスに結像」されるのに対し、引用発明は、近接光の中間像が結像されるかどうかは明らかでない点。 (3)相違点についての判断 引用発明において、近接光は、集光レンズ17によってイメージセンサ18に結像されるものであるから、集光レンズ17の手前に近接光の中間像を結像させる必然性はなく、引用発明において、中間像を結像させる動機付けや示唆も存在しない。 そうすると、引用文献2-5に記載されたように、結像させた中間像をリレーレンズ等を介して撮像することが周知技術だったとしても、引用発明に当該周知技術を組み合わせることはできない。 したがって、本願発明1は、引用発明及び引用文献2-5に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。 2.本願発明2-6について 本願発明2-6は、本願発明1の構成を全て含むものである。そうすると、上記1.と同じ理由により、本願発明2-6は、引用発明及び引用文献2-5に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。 3.本願発明7-8について 本願発明7-8は、本願発明1の構成を全て含むものである。そうすると、上記1.と同じ理由により、本願発明7-8は、引用発明、引用文献6に記載された技術、及び引用文献2-5に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。 4.本願発明8について 本願発明8は、本願発明1の構成を全て含むものである。そうすると、上記1.と同じ理由により、本願発明8は、引用発明、引用文献6-7に記載された技術、及び引用文献2-5に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。 第7 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2020-03-05 |
出願番号 | 特願2015-505304(P2015-505304) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G03B)
P 1 8・ 161- WY (G03B) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 小林 謙仁、今井 彰 |
特許庁審判長 |
小林 紀史 |
特許庁審判官 |
濱野 隆 関根 裕 |
発明の名称 | 光学システムおよび光学システムを有する装置 |
代理人 | 今井 彰 |