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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1360215
審判番号 不服2019-4123  
総通号数 244 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-03-29 
確定日 2020-02-25 
事件の表示 特願2016-516811「弓状のパネル壁及び湾曲した遷移壁を有する飲料缶端部」拒絶査定不服審判事件〔平成26年12月4日国際公開、WO2014/194058、平成28年7月11日国内公表、特表2016-520026〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)5月29日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年5月31日、米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年5月19日 :手続補正書の提出
平成29年8月25日 :手続補正書の提出
平成30年6月5日付け :拒絶理由通知
平成30年9月11日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年11月26日付け:拒絶査定
平成31年3月29日 :審判請求書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1ないし33に係る発明は、平成30年9月11日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし33に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「飲料缶端部(10)であって、
中心パネル(12)と、
前記中心パネルから外向きに延びる弓状のパネル壁(14)と、
前記弓状のパネル壁(14)に同化した、上向きに開いた環状のビード部(18)と、
前記環状のビード部の外端から延びて、前記缶端部を飲料缶本体上に配向したときに定められる垂直軸から11度未満の角度A2で傾斜する下部遷移壁(20)と、
前記下部遷移壁の上端から外向きに延びる湾曲した上部遷移壁(22)であって、前記下部遷移壁が前記上部遷移壁に滑らかに移行する、湾曲した上部遷移壁(22)と、
実質的に平坦な中間壁(24)と、
前記中間壁よりも大きく傾斜し、前記軸から少なくとも13度の角度A4で傾斜する実質的に平坦な上壁(28)と、
前記中間壁と前記上壁(28)との間に形成された接合点(26)と、
前記上壁(28)の上端から延びて、0.050インチ(1.27mm)?0.060インチ(1.524mm)の半径R4を有するシーミングパネル(30)と、
前記シーミングパネルの外端から外向きに延びるカール部(32)と、
を備えることを特徴とする飲料缶端部。」

第3 原査定における拒絶の理由
原査定の本願発明に対する拒絶の理由は、本願発明は、本願の出願日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1及び引用文献3乃至5に記載された発明に基いて、もしくは引用文献2及び引用文献3乃至5に記載された発明に基いて、その出願日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

1.特許第4388726号公報
2.特開2002-178072号公報
3.特表2003-520135号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2006-69603号公報(周知技術を示す文献)
5.国際公開第2012/039433号(周知技術を示す文献)

第4 引用文献
引用文献2には、図面とともに、次の事項が記載されている。なお、下線は理解の便宜のために当審で付した。
1 「【発明の属する技術分野】本発明は、缶容器の端板部として缶胴の開口端部に二重巻締めで固着される缶蓋に関し、特に、缶内圧が高い正内圧缶(陽圧缶)で使用される巻締め前の缶蓋の構造に関する。」(段落0001)
2 「本発明は、上記のような問題の解消を課題とするものであり、具体的には、強化環状溝が形成された板厚の薄い缶蓋について、缶蓋の強度を維持しつつ、缶蓋素材の直径(カッティングダイヤ)を小さくすることで使用材料を削減することができ、しかも、缶蓋の巻締め時に巻締め不良や巻締めシワが発生しないようにすることを課題とするものである。」(段落0008)
3「上記のような構成によれば、チャックウォール部の上方壁部分の傾斜角度を急にする(垂直に近づける)ことで、缶蓋の巻締め時に、チャックスリップが起きたり、チャックウォール部が折り曲げられたり、缶本体のネック部を大きく縮径させたりするのを回避できて、巻締め不良や巻締めシワが発生するのを防止することができ、一方、チャックウォール部の下方壁部分の傾斜角度を緩くする(水平方向に近づける)ことで、缶蓋素材の直径(カッティングダイヤ)を小さくすることができて、使用材料を削減することができる。」(段落0010)
4 「本実施形態の缶蓋は、炭酸飲料やビール等を内容物とする正内圧缶(陽圧缶)に使用されるものであって、例えば、アルミニウム合金(5182-H39)の金属板の両面に20μm厚のポリブチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートの混合樹脂によるフィルムを熱融着させた板厚が0.305mmの製缶用金属板を材料として、該金属板を円板状のブランクに裁断してプレス成形したものである。」(段落0012)
5 「そのように金属板の円板状ブランクを缶蓋素材としてプレス成形された本実施形態の缶蓋では、図1に示すように、略円板状のパネル部2の外周に、下方(缶内側)に窪むように強化環状溝3が形成され、強化環状溝3の外縁からチャックウォール部4が外方に傾斜して立ち上がり、チャックウォール部4の上端がフランジカール部5の内縁曲壁部分5aに連なっていて、外縁部が曲壁部分5bとして下方内側にカールされているフランジカール部5は、図示していないが、その裏面側に有機高分子製のシール剤が塗布されてから、図3(B)に示すように、缶本体のフランジ部と二重巻締めされることとなる。」(段落0013)
6 「ところで、上記のような本実施形態の缶蓋1において、フランジカール部5と強化環状溝3の間にあるチャックウォール部4は、フランジカール部5の内縁曲壁部分5aから延長される上方壁部分4aと、強化環状溝3の外縁に連なる下方壁部分4bとで構成されており、上方壁部分4aと下方壁部分4bを分ける屈曲部4cが、図3(B)に示すような缶蓋の巻締め時に、巻締め部分よりも下方で且つ巻締め部分の近傍であるような高さに位置していると共に、この屈曲部4cよりも下方の下方壁部分4bが、上方壁部分4aよりも少なくとも5度以上傾斜角度が緩くなるように形成されている。」(段落0018)
7 「なお、本実施形態の缶蓋1では、強化環状溝3の内側となるパネル部2の外周部分に、パネル部2の剛性強度を補強するための環状ビード2aが上方(又は下方)に突出して形成されており、また、内側壁3aと底壁3bと外側壁3cを備えた強化環状溝3は、その底壁3bが幅方向で平坦部を有するようなフラット状に形成されていて、平坦な底壁3bは、内側壁3aおよび外側壁3cとアールのある角部を介して接続されている。」(段落0019)
8 「そのような本実施形態の缶蓋1の各部分の詳細な構造については、図2に示すように、強化環状溝3の外側壁3cは、垂線に対して所定の傾斜角度θ1をなすように、下から上に向かって外方に傾斜しており、この傾斜角度θ1は2°以上で10°以下となるようにしている。即ち、この傾斜角度θ1が2°未満であれば、缶蓋を複数枚積み重ねた際の耐圧強度とシャッフル性(積み重ねた缶蓋同士がブロッキングしない横ズレ量)を低下させる虞があり、一方、傾斜角度θ1が10°を越えるとバックリング耐圧強度を低下させる虞がある。」(段落0020)
9 「強化環状溝3の外縁(外側壁3cの上端)から湾曲部3dを介して外方に傾斜して立ち上がるチャックウォール部4の下方壁部分4bは、垂線に対する傾斜角度θ2が30°以上で45°以下となるようにしている。即ち、この傾斜角度θ2が30°未満であれば、強化環状溝3の位置がチャックウォール部4の上方壁部分4aの延長線Lに近づいてパネル部2の径が大きくなることで、カッティングダイア(缶蓋素材の直径)の縮小化の効果があまり期待できなくなり、一方、傾斜角度θ2が45°を超えると、後で述べる缶蓋成形の第1成形工程で予備成形する際に、チャックウォール部4の屈曲部4cを形成するための缶蓋素材の絞り比が大きくなって、下方壁部分4bに成形シワを発生させ易くなる。」(段落0021)
10 「チャックウォール部4の上方壁部分4aについては、屈曲部4cを境として下方壁部分4bよりも急傾斜となるようにしており、その垂線に対する傾斜角度θ3を、下方壁部分4bの傾斜角度θ2よりも5°以上小さくなるようにしている。即ち、この上方壁部分4aの傾斜角度θ3と下方壁部分4bの傾斜角度θ2の差が5°未満であれば、上方壁部分4aと下方壁部分4bの傾斜差が殆ど無くなって、実質的に一つの傾斜壁として形成されることになり、図6(A),(B)に示したような従来の缶蓋の形状に近くなってしまうからである。」(段落0023)
11 「強化環状溝3の外側壁3cの傾斜角度θ1と、チャックウォール部4の下方壁部分4bの傾斜角度θ2および上方壁部分4aの傾斜角度θ3の関係については、θ1<θ2、且つ、θ2>θ3を満足するように形成し、また、θ3をθ2よりも少なくとも5°以上小さくする必要があって、それにより、チャックウォール部4の下方壁部分4bが上方壁部分4aの延長線Lよりも缶蓋中央側に位置させることで、カッティングダイヤ(缶蓋素材の径)の縮小化を図ることができる。しかしながら、θ2とθ3の差を極端に大きくし過ぎると、強化環状溝3の位置が缶蓋中央側に寄り過ぎることで耐圧強度が低下するため、θ2とθ3の差は30°よりも小さくすることが好ましい。」(段落0024)
12 「上記のような具体的な構造を備えた本実施形態の缶蓋1は、2工程のプレス成形により製造されており、先ず、その第1成形工程において、図4に示すように、固定部材であるダイコアリング21と可動部材であるノックアウトリング22により金属板を挟持した状態で、可動部材のパンチカッター23により金属板を円板状のブランクに剪断して打ち抜くと共に、可動部材のパンチコア24を固定部材のダイコア25に向けて下動させてプレスすることで、外縁が充分カールされる前で内縁曲壁部分が形成されたフランジカール部と、チャックウォール部の上方壁部分,下方壁部分,及び屈曲部と、環状ビード部が形成されたパネル部とを備えた中間製品に予備成形する。」(段落0031)
13 「次いで、その第2成形工程において、第1成形工程で予備成形した中間製品について、図5に示すように、可動部材である第1ダイコアリング26に載置して、可動部材のパンチコアリング27と第1ダイコアリング26によりフランジカール部の内縁曲壁部分とチャックウォール部の下方壁部分を挟み込んだ状態から、それら全体と可動部材のパンチコア28を、固定部材であるダイカール29と第2ダイコアリング30とダイコア31までそれぞれ下動させてプレスすることで、更にフランジカール部の外縁曲壁部分と環状強化溝とを成形して缶蓋の成形が完了する。」(段落0032)
14 「上記のように第1成形工程と第2成形工程を経て製造される本実施形態の缶蓋1について、アルミニウム合金(5182-H39)の金属板の両面に20μm厚のポリブチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートの混合樹脂によるフィルムを熱融着させた板厚が0.305mmの金属板を材料として、各部分が以下のような数値となる具体的な実施例と比較例(208径の現行品、即ち、従来の208径のアルミニウム合金製の缶蓋)とについて検討した。」(段落0033)
15 「【実施例】ブランクの直径(カッティングダイヤ)が79.2mmである缶蓋素材から成形する缶蓋について、巻締め前の缶蓋の直径(カール外径)D1が68.3mm、フランジカール部上端から強化環状溝の溝底までの深さ(カウンターシンク深さ)H1が6.6mm、環状溝の底壁と内外側壁とを接続する角部の内側曲率半径r1,r2が何れも0.35mm、環状溝の底壁の平坦部の幅が0.45mm、フランジカール部の内縁曲壁部分の内側曲率半径r3が1.78mm、湾曲部3dの内側曲率半径r4が0.5mm、強化環状溝の溝底からパネル部までの高さ(パネルハイト)H3が2.00mm、チャックウォール部の屈曲部の直径(内径)D3が59.5mm、環状溝の外側壁の傾斜角度θ1が6°50′、チャックウォール部の下方壁部分の傾斜角度θ2が36°10′、チャックウォール部の上方壁部分の傾斜角度θ3が19°06′となる缶蓋を製造して、この缶蓋と缶本体とを二重巻締め部分の幅(縦幅)Wが2.67mmとなるように巻締めた。」(段落0034)

したがって、引用文献2には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「炭酸飲料やビール等を内容物とする正内圧缶(陽圧缶)に使用される缶蓋1であって、略円板状のパネル部2の外周に、下方(缶内側)に窪むように内側壁3aと底壁3bと外側壁3cを備えた強化環状溝3が形成され、底壁3bが幅方向で平坦部を有するようなフラット状に形成されていて、内側壁3aおよび外側壁3cとアールのある角部を介して接続されており、外側壁3cは、垂線に対して傾斜角度θ1をなすように、下から上に向かって外方に傾斜しており、この傾斜角度θ1は2°以上で10°以下であって、その具体的な実施例は6°50′であり、外側壁3cの上端から湾曲部3dを介して外方に傾斜して立ち上がるチャックウォール部4の下方壁部分4bは、垂線に対する傾斜角度θ2が30°以上で45°以下となるようにしており、チャックウォール部4の上方壁部分4aについては、屈曲部4cを境として下方壁部分4bよりも急傾斜となるようにしており、その垂線に対する傾斜角度θ3を、下方壁部分4bの傾斜角度θ2よりも5°以上小さく、θ2とθ3の差は30°よりも小さくすることが好ましく、θ3の具体的な実施例は19°06′であり、チャックウォール部4の上端がフランジカール部5の内縁曲壁部分5aに連なっていて、外縁部が曲壁部分5bとして下方内側にカールされているフランジカール部5であって、具体的な実施例としてフランジカール部の内縁曲壁部分の内側曲率半径r3が1.78mmである、炭酸飲料やビール等を内容物とする正内圧缶(陽圧缶)に使用される缶蓋1。」

第5 対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「炭酸飲料やビール等を内容物とする正内圧缶(陽圧缶)に使用される缶蓋1」は、その構成及び機能からみて、本願発明の「飲料缶端部」に相当し、以下同様に「略円板状のパネル部2」は「中心パネル」に相当する。
次に、引用発明の「略円板状のパネル部2の外周に、下方(缶内側)に窪むように内側壁3aと底壁3bと外側壁3cを備えた強化環状溝3が形成され、底壁3bが幅方向で平坦部を有するようなフラット状に形成されていて、内側壁3aおよび外側壁3cとアールのある角部を介して接続されており」という態様は、前記第4の12及び13によれば「プレス成型により製造されている」ものであるから、図4及び図5もあわせて参照すれば、「パネル部2の外周」から「内側壁3a」までの部分にアールが存在することは自明であり、このアールが存在する「パネル部2の外周」から「内側壁3a」までの部分及び「底壁3bが幅方向で平坦部を有するようなフラット状に形成されていて、内側壁3aおよび外側壁3cとアールのある角部を介して接続されて」いる部分は、それぞれ、本願発明の「前記中心パネルから外向きに延びる弓状のパネル壁(14)」及び「前記弓状のパネル壁(14)に同化した、上向きに開いた環状のビード部(18)」に相当するから、引用発明の「外側壁3cは、垂線に対して傾斜角度θ1をなすように、下から上に向かって外方に傾斜しており、この傾斜角度θ1は2°以上で10°以下であって、その具体的な実施例は6°50′であり」という態様は、本願発明の「前記環状のビード部の外端から延びて、前記缶端部を飲料缶本体上に配向したときに定められる垂直軸から11度未満の角度A2で傾斜する下部遷移壁(20)」に相当する。
そして、引用発明の「湾曲部3d」は、「外側壁3cの上端」に連なるものであるから、引用発明の「湾曲部3d」が、本願発明の「前記下部遷移壁の上端から外向きに延びる湾曲した上部遷移壁(22)であって、前記下部遷移壁が前記上部遷移壁に滑らかに移行する、湾曲した上部遷移壁(22)」に相当し、引用発明の「外方に傾斜して立ち上がるチャックウォール部4の下方壁部分4bは、垂線に対する傾斜角度θ2が30°以上で45°以下となるようにしており」という態様は、垂線に対する傾斜角度が設定され得る壁であることから、本願発明の「実質的に平坦な中間壁(24)」に相当する。
また、引用発明の「屈曲部4c」は、本願発明の「前記中間壁と前記上壁(28)との間に形成された接合点(26)」に相当し、引用発明の「チャックウォール部4の上方壁部分4aについては、屈曲部4cを境として下方壁部分4bよりも急傾斜となるようにしており、その垂線に対する傾斜角度θ3を、下方壁部分4bの傾斜角度θ2よりも5°以上小さく、θ2とθ3の差は30°よりも小さくすることが好ましく、θ3の具体的な実施例は19°06′であり」という態様は、本願発明の「前記中間壁よりも大きく傾斜し、前記軸から少なくとも13度の角度A4で傾斜する実質的に平坦な上壁(28)」に相当する。
さらに、引用発明の「フランジカール部5の内縁曲壁部分5a」及び「曲壁部分5b」は、それぞれ、本願発明の「シーミングパネル(30)」及び「前記シーミングパネルの外端から外向きに延びるカール部(32)」に相当するから、引用発明の「フランジカール部の内縁曲壁部分の内側曲率半径r3」は、本願発明の「半径R4」に相当する。

したがって、本願発明と引用発明とは「飲料缶端部であって、中心パネルと、前記中心パネルから外向きに延びる弓状のパネル壁と、前記弓状のパネル壁に同化した、上向きに開いた環状のビード部と、前記環状のビード部の外端から延びて、前記缶端部を飲料缶本体上に配向したときに定められる垂直軸から11度未満の角度A2で傾斜する下部遷移壁と、前記下部遷移壁の上端から外向きに延びる湾曲した上部遷移壁であって、前記下部遷移壁が前記上部遷移壁に滑らかに移行する、湾曲した上部遷移壁と、実質的に平坦な中間壁と、前記中間壁よりも大きく傾斜し、前記軸から少なくとも13度の角度A4で傾斜する実質的に平坦な上壁と、前記中間壁と前記上壁との間に形成された接合点と、前記上壁の上端から延びて、半径R4を有するシーミングパネルと、前記シーミングパネルの外端から外向きに延びるカール部と、を備える飲料缶端部。」の点で一致し、「半径R4」について、本願発明は「0.050インチ(1.27mm)?0.060インチ(1.524mm)の半径R4」であるのに対して、引用発明は「フランジカール部の内縁曲壁部分の内側曲率半径r3が1.78mm」である点で相違する(以下「相違点」という。)。

第6 判断
1 相違点について
前記第4の14によれば、引用発明の「フランジカール部の内縁曲壁部分の内側曲率半径r3が1.78mm」という構成は、具体的な実施例に過ぎず、引用発明の「フランジカール部の内縁曲壁部分の内側曲率半径r3」を「1.78mm」以外にすることを妨げる特段の事情もない。
また、引用発明が解決しようとする課題は、引用文献2の段落0008に記載された「強化環状溝が形成された板厚の薄い缶蓋について、缶蓋の強度を維持しつつ、缶蓋素材の直径(カッティングダイヤ)を小さくすることで使用材料を削減することができ、しかも、缶蓋の巻締め時に巻締め不良や巻締めシワが発生しないようにすること」であるところ、上記第4の3によれば、この課題を解決する手段は「チャックウォール部の上方壁部分の傾斜角度」及び「チャックウォール部の下方壁部分の傾斜角度」の設定にある。
したがって、引用発明においては、「チャックウォール部の上方壁部分の傾斜角度」及び「チャックウォール部の下方壁部分の傾斜角度」以外の諸元、例えば「フランジカール部の内縁曲壁部分の内側曲率半径r3」は、引用発明を具体化する際、缶及び缶蓋の寸法や材質や予定される缶内容物等の諸元との兼ね合いで適宜に設定され得る設計事項である。
そして、引用発明の「フランジカール部の内縁曲壁部分の内側曲率半径r3」に対応した部位の数値設定としては、原査定において引用した引用文献3(段落0015、図1に記載された曲率半径r_(7)。)、引用文献4(段落0018、段落0023、図3に記載された曲率半径r3。)及び引用文献5(段落0017、図1に記載された曲率半径R5。)、当審で新たに引用する特表2004-514561号公報(段落0022、図1に記載された曲率半径r_(7))に例示されるように、0.050インチ(1.27mm)?0.060インチ(1.524mm)を含む数値範囲が周知であり(以下、単に「周知技術」という。)、この数値範囲が特異なものとはいえないから、前記引用発明を具体化する際に、当該周知技術を考慮し、前記相違点に係る本願発明のように構成することは、当業者が設計上適宜になし得たことである。

2 本願発明の奏する効果について
本願明細書の段落0008の記載から把握される本願発明の奏する「端部及び対応する方法は、軽量であり、現行の従来のチャックと共に使用でき、信頼性及び一致性のある継ぎ目をもたらすと考えられる端部を提供する。」という作用効果は、引用文献2の段落0041に記載された引用発明の奏する作用効果である「缶蓋の板厚を薄くしても落下強度やバックリング耐圧強度を充分に確保することができ、また、巻締めシワや巻締め不良を発生させることなく缶蓋を缶本体に巻締めることができると共に、缶蓋を製造する際に、缶蓋素材の径(カッティングダイヤ)を小さくすることができて、缶蓋に使用する材料の削減を図ることができる。」と軌を一にするものであり、当業者が予測可能な範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

3 本件審判請求人の主張について
本件審判請求人は、令和元年5月15日に提出された審判請求書の手続補正書(方式)において、以下のように主張している。
「現代的な軽量飲料缶端部と缶本体のフランジとの間に継ぎ目を形成する工程は、非常に複雑である。端部の構造には多数のパラメータがあり、一つのパラメータを少し変更するだけで、飲料缶内の高い内圧によって継ぎ合わせに不具合が生じる(段落番号0006)。言い換えると、飲料缶端部における、継ぎ目に使用するいかなる部分の位置及び寸法も、缶端部を圧力下で適切に機能させるのに極めて重要である。
継ぎ合わせ工程中、端部の周辺の金属は、周囲で変形し、直径を減少させながら、小さい皺を形成するが、これらの皺は、その後シーミングツールで延ばされる。缶端部の周辺の金属と飲料缶本体の金属を一緒にロールする工程は、皺を生成し、この皺は、シーミング工程中に強制的に延ばされるか押し出されなければならない。シーミング工程後に残った缶端部の金属または缶フランジの皺は、密封継ぎ目に干渉し得る。したがって、シーミング及び缶端部設計の経験者には、文献上では単純に見えるかもしれない缶端部の形状の変更は、シーミング工程中の複雑な、時には有害な影響をもたらし得るものであると理解される。
シーミングのための、飲料缶端部の設計における複雑且つ予測不可能な性質は、シーミング工程で変形中の金属がどのように流れるかに関係しており、これは、本願の段落番号0007に記載するように、工業的な継ぎ目の問題に反映される。飲料缶端部が高度に設計され民間の飲料会社に試験されて、洗練された適格性基準と品質管理とを有するにも関わらず、工業的な缶は、飲料缶への二重継ぎ合わせにおける継ぎ目寸法の不一致という問題を有する。
本願発明の発明者は、本願発明によって寸法の不一致の問題を解決できることを見いだした。本発明者らは、「シーミングパネルの構成と、上側パネル壁の構成と、シーマー内における端部上壁の十分な改善との関係が、継ぎ目の寸法の不一致を軽減すると考える。
従って、端部・・・は、軽量であり、現行の従来のチャック(またはその他の従来のシーミング技術)と共に使用でき、信頼性及び一致性のある継ぎ目をもたらすと考えられる端部を提供する。」(段落番号0008)」
しかし、本願明細書には、特許請求の範囲に記載された各数値範囲について、その数値範囲内外で何がどの程度変化するのか等、主張される複数の要素の数値範囲を特定した結果として得られる相乗効果について、具体的な記載、特に数値範囲上下限境界における効果の顕著性に関する記載、が全くなく、特許請求の範囲で特定する数値範囲について、その臨界的意義を認めるだけの根拠が見出せないため、本件審判請求人の主張は、本願明細書の記載に基く主張とは認められず、採用できない。

また、本件審判請求人は、審判請求書において、以下のように主張している。
「拒絶査定では、引用文献1及び2で特定された解決課題(例えば継ぎ合わせ安定性及び継ぎ合わせ不具合)を解決するにあたって、引用文献1及び2に記載の発明において、シーミングパネルの半径を缶全体の寸法や端部自体の寸法に応じて選択することは、当業者が適宜なし得たことであると判断されている。しかしながら、引用文献3乃至5のいずれにも、シーミングパネルの半径が、継ぎ合わせ安定性や継ぎ合わせ不具合に貢献することが記載も示唆もされていない。
むしろ、引用文献3は、減少した継ぎ目を有する傾斜チャック壁を有する改良缶蓋を記載する。引用文献3は、缶蓋の段部が、缶蓋と缶本体との間に形成される二重継ぎ目の一致性と完全性を向上し、アーチ状のチャック壁が、単純な切頭円錐のチャック壁と比べて缶蓋の強度を向上すると説明する。これらの構成は、金属の使用と缶の不具合を減じるとされている。引用文献3が、改良した缶蓋が、シーミングパネルの半径の任意の形状ではなく段部及びアーチ状のチャック壁に由来すると記載しているのは明らかである。換言すると、引用文献3は、シーミングパネルの半径にかかわらず、継ぎ目の完全性及び蓋の強度が改善すると記載しているのである。
引用文献4には、頂部での亀裂を防止するために、増大したバックリング強度を有する缶トップが記載されている。缶トップは、3つの曲率半径によって画定された湾曲壁を含む。各曲率半径は、壁におけるバックリング強度の減少と亀裂を防止するように選択される。引用文献4には、継ぎ目安定性を増大させ継ぎ目の不具合を減少させるために、シーミングパネルの半径を選択すること、その他の形状についての記載がない。
引用文献5には、圧力抵抗を改善し、缶蓋の中央パネルにおけるバルジ不良とバックリングの発生を防止する缶蓋が記載されている。引用文献5は、カウンターシンク部及びその外側のチャック壁部の形状及び寸法を変更することなくパネル部の外径を小さくすることを目的とする。引用文献5には、中央パネルの座屈を減少させるためのシーミングパネルの半径の重要性を記載していないだけでなく、継ぎ目安定性を増大させ継ぎ目の不具合を減少させるために、シーミングパネルの半径または缶蓋のためのその他の形状を選択することについての記載がない。
したがって、当業者は、引用文献1及び2に記載の発明を、引用文献3乃至5の教示を参照して変更することにより、継ぎ目の安定性を増大させるためまたは継ぎ目の不具合を減少させるために、シーミングパネルの半径を選んだりすることは到底考えられない。
また、拒絶査定での指摘に反し、缶フランジの形状を検討することなくシーミングパネルの構成を選択することによって、引用文献1及び2で特定された継ぎ目の安定性及び継ぎ目の不具合を解決することはできないし、むしろこれらの問題を悪化させるものである。」
しかし、前記第6の1で説示したとおり、引用発明が解決しようとする課題に対応した課題解決手段は「チャックウォール部の上方壁部分の傾斜角度」及び「チャックウォール部の下方壁部分の傾斜角度」の設定であって、「フランジカール部の内縁曲壁部分の内側曲率半径r3」ではないから、課題の解決という点からみても、引用発明において、「フランジカール部の内縁曲壁部分の内側曲率半径r3」の数値を変更できないとする理由はない。
また、本願発明の「シーミングパネル」の「半径R4」については、本願明細書段落0029に「シーミングパネル30の形状はフランジ90の形状に一致し、すなわち高度に湾曲するフランジ90の上部とシーミングパネル30との間に有意な間隙は存在しない。さらに、シーミングパネルの半径R4は、フランジの半径R3とフランジの金属厚tとの総和である。」 と記載されているが、本願発明は、「シーミングパネル」の「半径R4」と「フランジの半径R3とフランジの金属厚t」との関係を特定していないから、本願発明の「シーミングパネル」の「半径R4」の値が特異なものとは認められない。
そのため、本件審判請求人の主張は、採用できない。

4 小括
よって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-09-27 
結審通知日 2019-09-30 
審決日 2019-10-15 
出願番号 特願2016-516811(P2016-516811)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小川 悟史谷川 啓亮  
特許庁審判長 久保 克彦
特許庁審判官 石井 孝明
横溝 顕範
発明の名称 弓状のパネル壁及び湾曲した遷移壁を有する飲料缶端部  
代理人 須田 洋之  
代理人 鈴木 博子  
代理人 倉澤 伊知郎  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 松下 満  
代理人 山本 泰史  
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