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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 D06M 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 D06M |
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管理番号 | 1360224 |
審判番号 | 不服2019-8606 |
総通号数 | 244 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-04-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-06-27 |
確定日 | 2020-03-17 |
事件の表示 | 特願2017-501663「布地ケア及びホームケア処理組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 1月28日国際公開、WO2016/014742、平成29年 8月24日国内公表、特表2017-524076、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1.手続の経緯 この出願(以下、「本願」という。)は、平成27年7月23日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2014年7月23日、2014年11月25日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成31年2月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、令和1年6月27日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に、手続補正がなされ、特許法第162条の規定による審査(以下、「前置審査」という。)において、同年8月5日付けで拒絶理由(以下、「前置拒絶理由」という。)が通知され、同年11月6日に意見書が提出され、同年12月12日付けで、特許法第164条第3項の規定による報告(以下、「前置報告」という。)がなされたものである。 第2.前置審査における拒絶理由の概要 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 < 引 用 例 一 覧 > 3.特表2013-524037号公報 4.国際公開第2013/177141号 5.特表2006-515029号公報 6.国際公開第2008/041775号 第3.本願発明 本願発明は、令和1年6月27日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された、次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 布地柔軟化組成物であって、組成物重量全体に基づいて、 (a)0.05%?0.75%のポリマー材料であって、 メチルクロリド四級化ジメチルアミノエチルアンモニウムアクリレートである45?65モルパーセントのカチオン性ビニル付加モノマー、アクリルアミドである10?80モルパーセントの非イオン性ビニル付加モノマー(但し、カチオン性ビニル付加モノマー及び非イオン性ビニル付加モノマーの合計は100モルパーセントを超えない)、75ppm?1,800ppmの3つ以上のエチレン官能基を含む架橋剤、0ppm?10,000ppmの連鎖移動剤の重合に由来する第1ポリマーであって、 前記架橋剤が、ペンタエリスリチルトリアクリレート、ペンタエリスリチルテトラアクリレート、ペンタエリスリチルテトラメタクリレート、ペンタエリスリチルトリアクリレートエトキシレート、ジペンタエリスリチルペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリチルテトラビニルエーテル、ペンタエリスリチルテトラテラート、並びにこれらの混合物からなる群から選択され、 粘度勾配法2で3.7を超える粘度勾配を有する第1ポリマーを含んでなる前記ポリマー材料と、 (b)2%?25%の布地柔軟剤活性物質と、 (c)0.1%?8%のアミノ官能性オルガノシロキサンであるシリコーンポリマー、 とを含み、 前記布地柔軟化組成物が、布地ケア製品であり、30cps?500cpsのブルックフィールド粘度を有し、かつ、2?4のpHを有することを特徴とする、布地柔軟化組成物。」 なお、前置報告では、本願請求項1の記載は、非イオン性ビニル付加モノマーの最大成分量(80モルパーセント)とカチオン性ビニル付加モノマーの最小成分量(45モルパーセント)の和が100モルパーセントを超えており、技術的に正しくない記載を含んでいるから、本願特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない旨が報告されている。 しかしながら、上記したとおり、本願請求項1には、「メチルクロリド四級化ジメチルアミノエチルアンモニウムアクリレートである45?65モルパーセントのカチオン性ビニル付加モノマー、アクリルアミドである10?80モルパーセントの非イオン性ビニル付加モノマー(但し、カチオン性ビニル付加モノマー及び非イオン性ビニル付加モノマーの合計は100モルパーセントを超えない)」(下線は当審にて付与。)と明確に記載されており、上記合計が100モルパーセントを超えるものは、除かれていると解されるから、本願特許請求の範囲の記載は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどのものがあるとはいえず、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとはいえない。 第4.引用例3記載事項及び引用発明 1.引用例3記載事項 前置拒絶理由及び前置報告に引用した引用例3には、以下の事項が記載されている。 (1)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 (i)好ましくはシリコーン又は香料を含む布地ケア活性物質と、 (ii) a)水溶性エチレン性不飽和モノマー、又は少なくとも1つのカチオン性モノマーと少なくとも1つの非イオン性モノマーとを含むモノマーのブレンドであって、 前記カチオン性モノマーは、式(I): 【化1】 (式中、 R_(1)は、水素又はメチルから選択され、好ましくはR_(1)は水素であり、 R_(2)は、水素又はC_(1)?C_(4)アルキルから選択され、好ましくは、R_(2)は、水素又はメチルから選択され、 R_(3)は、C_(1)?C_(4)アルキレンから選択され、好ましくはエチレンであり、 R_(4)、R_(5)、及びR_(6)は、それぞれ独立して、水素又はC_(1)?C_(4)アルキルから選択され、好ましくは、メチルであり、 Xは、-O-又は-NH-から選択され、好ましくは、Xは-O-であり、 Yは、Cl、Br、I、ハイドロゲンサルフェート、又はメトサルフェートから選択され、好ましくは、YはClである) による化合物であり、 前記非イオン性モノマーは、式(II): 【化2】 (式中、 R_(7)は、水素又はメチルから選択され、好ましくはR_(7)は水素であり、 R_(8)は、水素又はC_(1)?C_(4)アルキルから選択され、好ましくは、R_(8)は水素であり、 R_(9)、及びR_(10)は、それぞれ独立して、水素又はC_(1)?C_(4)アルキルから選択され、好ましくは、 R_(9)及びR_(10)は、それぞれ独立して水素又はメチルから選択される) の化合物であり、 b)成分a)の重量に対して0.5ppm?500ppmの量の少なくとも1つの架橋剤、及び c)成分a)に対して1000ppm超、好ましくは1200ppm?10,000ppm、より好ましくは1,500ppm?3,000ppmの量の少なくとも1つの連鎖移動剤、 の重合により形成される少なくとも1つのポリマーと、 を含む布地ケア組成物。 【請求項2】 前記成分a)が、50?70重量%、好ましくは、55?65重量%のカチオン性モノマーと、30?50重量%、好ましくは35?45重量%の非イオン性モノマーとを含む、請求項1に記載の組成物。 【請求項3】 前記架橋剤が、少なくとも3以上のエチレン性不飽和部分、好ましくは少なくとも4以上のエチレン性不飽和部分、より好ましくはテトラアリルアンモニウムクロリドを含有する、請求項1又は2に記載の組成物。 【請求項4】 前記連鎖移動剤がギ酸である、請求項1?3のいずれか一項に記載の組成物。 【請求項5】 前記布地ケア組成物が、前記布地ケア組成物の0.01重量%?0.3重量%、好ましくは0.05重量%?0.25重量%、より好ましくは0.1重量%?0.20重量%のポリマーを含む、請求項1?4のいずれかに記載の組成物。 【請求項6】 pHが2?5である、請求項1?5のいずれか一項に記載の組成物。 【請求項7】 1%?49%の4級アンモニウムを含む布地柔軟仕上げ活性物質を含む、請求項1?6のいずれか一項に記載の組成物。 ・・・」 (2)「【技術分野】 【0001】 本発明は、コポリマーを含む布地ケア組成物に関する。」 (3)「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 しかし、粘度効果を付与するだけでなく、布地に対する活性物質の付着も増加させるポリマーを同定することが継続的に必要とされている。このような付着助剤の効果は、布地への付着を強化することにより香料及びシリコーン等の布地ケア活性物質の有効性をより高め、それにより製剤化コストを抑えることができる。実際、シリコーンは、布地に付与される「触感効果」を付与するために重要であり、一方、香料は、布地に「新鮮さ」効果を付与するために重要である。また、布地柔軟仕上げ剤等の多くの布地ケア組成物は、典型的に、低pH(例えば、pH 7未満)で製剤化されるので、これらポリマーを低pHで安定化することが必要とされている。」 (4)「【発明を実施するための形態】 【0010】 本発明の1つの態様は、成分a)の重量に対して1000ppm超の範囲の連鎖移動剤(CTA)値を有するポリマーを提供することを目的とする。本発明の別の態様は、成分a)の重量に対して5ppm超、あるいは45ppm超の架橋剤を有するポリマーを提供することを目的とする。理論に束縛されるものではないが、このような濃度のCTA及び/又は架橋剤を有すると、驚くべきことに、布地ケア製品における望ましくない曳糸性(stringiness)を最小限に抑えながら、布地ケア組成物において望ましいシリコーン及び/又は香料の付着を提供するポリマーが得られる。」 (5)「【0012】 ポリマーは、1つの実施形態では、布地ケア組成物の0.001重量%?10重量%含まれる。別の実施形態では、ポリマーは、布地ケア組成物の0.01重量%?0.3重量%、あるいは0.05重量%?0.25重量%、あるいは0.1重量%?0.20重量%、あるいはこれらの組み合わせのポリマーを含む。」 (6)「【0013】 本発明の1つの実施形態では、成分a)は、5?95重量%(重量%)の少なくとも1つのカチオン性モノマーと5?95重量%の少なくとも1つの非イオン性モノマーとを含む。重量百分率は、コポリマーの総重量に対するものである。 【0014】 本発明の更に別の実施形態では、成分a)は、50?70重量%、好ましくは55?65重量%の少なくとも1つのカチオン性モノマーと、30?50重量%、好ましくは35?45重量%の少なくとも1つの非イオン性モノマーとを含む。重量百分率は、コポリマーの総重量に対する。」 (7)「【0015】 カチオン性モノマー 好ましいカチオン性モノマーは、ジアリルジアルキルアンモニウムハロゲン化物又は式(I)に係る化合物である: 【化1】 (式中、 R_(1)は、水素又はメチルから選択され、好ましくはR_(1)は水素であり、 R_(2)は、水素又はC_(1)?C_(4)アルキルから選択され、好ましくは、R_(2)は、水素又はメチルから選択され、 R_(3)は、C_(1)?C_(4)アルキレンから選択され、好ましくはエチレンであり、 R_(4)、R_(5)、及びR_(6)は、それぞれ独立して、水素又はC_(1)?C_(4)アルキルから選択され、好ましくは、メチルであり、 Xは、-O-又は-NH-から選択され、好ましくは、Xは-O-であり、 Yは、Cl、Br、I、ハイドロゲンサルフェート、又はメトサルフェートから選択され、好ましくは、YはClである)。 【0016】 アルキル基は、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、及びイソプロピルである。 【0017】 1つの実施形態では、式(I)のカチオン性モノマーは、ジメチルアミノエチルアクリレートメチルクロリドである。」 (8)「【0018】 非イオン性モノマー 好ましい非イオン性モノマーは、式(II)の化合物である(式中、 【化2】 R_(7)は、水素又はメチルから選択され、好ましくはR_(7)は水素であり、 R_(8)は、水素又はC_(1)?C_(4)アルキルから選択され、好ましくは、R_(8)は水素であり、 R_(9)、及びR_(10)は、それぞれ独立して、水素又はC_(1)?C_(4)アルキルから選択され、好ましくは、 R_(9)及びR_(10)は、それぞれ独立して水素又はメチルから選択される)。 【0019】 1つの実施形態では、非イオン性モノマーはアクリルアミドである。」 (9)「【0020】 架橋剤 架橋剤b)は、少なくとも2つのエチレン性不飽和部分を含有する。1つの実施形態では、架橋剤b)は、少なくとも3以上のエチレン性不飽和部分、好ましくは少なくとも4以上のエチレン性不飽和部分を含有する。 【0021】 好適な架橋剤としては、ジビニルベンゼン、テトラアリルアンモニウムクロリド、アリルアクリレート及びメタクリレート、グリコール及びポリグリコールのジアクリレート及びジメタクリレート、ブタジエン、1,7-オクタジエン、アリル-アクリルアミド及びアリル-メタクリルアミド、ビスアクリルアミド酢酸、N,N’-メチレン-ビスアクリルアミド及びポリオールポリアリルエーテル、例えば、ポリアリルサッカロース及びペンタエリスリトールトリアリルエーテル、並びにこれらの混合物を挙げることができる。1つの実施形態では、架橋剤は、テトラアリルアンモニウムクロリド、アリル-アクリルアミド及びアリル-メタクリルアミド、ビスアクリルアミド酢酸、及びN,N’-メチレン-ビスアクリルアミド、及びこれらの混合物から選択される。好ましい架橋剤は、テトラアリルアンモニウムクロリドである。 【0022】 また、架橋剤の混合物を使用することも好適である。 【0023】 架橋剤は、(成分a)に基づいて)0.5ppm?500ppm、あるいは10ppm?400ppm、より好ましくは20ppm?200ppm、更により好ましくは40ppm?100ppm、更により好ましくは50ppm?80ppmの範囲で含まれる。1つの実施形態では、架橋剤は、(成分a)に基づいて)5ppm超である。」 (10)「【0024】 連鎖移動剤(CTA) 連鎖移動剤c)は、メルカプタン、リンゴ酸、乳酸、ギ酸、イソプロパノール、及び次亜リン酸塩、並びにこれらの混合物から選択される。1つの実施形態では、CTAは、ギ酸である。 【0025】 CTAは、(成分a)に基づいて)100ppm超の範囲で存在する。1つの実施形態では、CTAは、(成分a)に基づいて)100ppm?10,000ppm、あるいは500ppm?4,000ppm、あるいは1,000ppm?3,500ppm、あるいは1,500ppm?3,000ppm、あるいは1,500ppm?2,500ppm、あるいはこれらの組み合わせである。更に別の実施形態では、CTAは、(成分a)に基づいて)1000超である。また、連鎖移動剤の混合物を使用することも好適である。」 (11)「【0035】 表1は、様々な量の連鎖移動剤を含む布地ケア製品のイオン性回復(ionic regain)、シリコーンの付着、及び曳糸性を報告する。 【表1】 ^( 1) ジメチルアミノ-エチル-アクリレート,メチルクロリド ^( 2) ギ酸は、連鎖移動剤であり、成分a)に基づく百万分率(ppm)として表される。 ^( 3) テトラアリルアンモニウムクロリド、成分a)に基づく百万分率(ppm)として表される。 ^( 4) イオン性回復は、(x-y)/x ×100(式中、xは標準的な剪断力を適用した後に測定されるイオン性であり、yは標準的な剪断力を適用する前のイオン性である)として計算される。 ^( 5) 製品中3%におけるポリジメチルシロキサンの付着。以下の「方法」の部分を参照されたい。 ^( 6) 製品中0.2%のポリマーにおける。以下の「方法」の部分を参照されたい。」 (12)「【0055】 1つの実施形態では、シリコーンは、ポリジアルキルシリコーン、あるいはポリジメチルシリコーン(ポリジメチルシロキサン又は「PDMS」)、又はこれらの誘導体である。別の実施形態では、シリコーンは、アミノ官能性シリコーン、アルキルオキシル化シリコーン、エトキシル化シリコーン、プロポキシル化シリコーン、エトキシル化/プロポキシル化シリコーン、4級シリコーン、又はこれらの組み合わせから選択される。布地ケア組成物中のシリコーンの濃度としては、布地ケア組成物の約0.01重量%?約20重量%、あるいは約0.1重量%?約10重量%、あるいは約0.2重量%?約5重量%、あるいは約0.4重量%?約3重量%、あるいは約1重量%?約5重量%、あるいは約2重量%?約3重量%、あるいはこれらの組み合わせを挙げることができる。」 (13)「【0064】 1つの実施形態では、シリコーンは、オルガノシロキサンポリマーである。このようなシリコーンの非限定的な例としては、米国特許第6,815,069号、同第7,153,924号、同第7,321,019号、及び同第7,427,648号が挙げられる。」 2.引用発明 上記1.(1)?(13)に摘記した引用例3記載事項を踏まえると、引用例3には、以下の引用発明が記載されているといえる。 《引用発明》 (a)0.01?0.3重量%の化合物であって、 ジメチルアミノエチルアクリレートメチルクロリドである5?95重量%のカチオン性モノマー、アクリルアミドである5?95重量%の非イオン性モノマー、0.5ppm?500ppmの3つ以上のエチレン性不飽和部分を含有する架橋剤、1,200ppm?10,000ppmの連鎖移動剤の重合により形成されるポリマーであり、 前記架橋剤としては、少なくとも2つのエチレン性不飽和部分を含有する、ジビニルベンゼン、テトラアリルアンモニウムクロリド、アリルアクリレート及びメタクリレート、グリコール及びポリグリコールのジアクリレート及びジメタクリレート、ブタジエン、1,7-オクタジエン、アリル-アクリルアミド及びアリル-メタクリルアミド、ビスアクリルアミド酢酸、N,N’-メチレン-ビスアクリルアミド及びポリオールポリアリルエーテル、例えば、ポリアリルサッカロース及びペンタエリスリトールトリアリルエーテル、並びにこれらの混合物を挙げることができ、1つの実施形態では、架橋剤は、テトラアリルアンモニウムクロリド、アリル-アクリルアミド及びアリル-メタクリルアミド、ビスアクリルアミド酢酸、及びN,N’-メチレン-ビスアクリルアミド、及びこれらの混合物から選択され、好ましくは、テトラアリルアンモニウムクロリドである、化合物と、 (b)1?49%の4級アンモニウムを含む布地柔軟仕上げ活性物質と、 (c)0.1?10重量%のオルガノシロキサンポリマーであるシリコーンポリマー、 とを含み、 2?5のpHを有する、布地ケア組成物。 第5.対比・判断 1.対比 引用発明の「化合物」、「ジメチルアミノエチルアクリレートメチルクロリド」、「4級アンモニウムを含む布地柔軟仕上げ活性物質」、「オルガノシロキサンポリマーであるシリコーンポリマー」、「布地ケア組成物」は、各々、本願発明1の「ポリマー材料」、「メチルクロリド四級化ジメチルアミノエチルアンモニウムアクリレート」、「布地柔軟剤活性物質」、「アミノ官能性オルガノシロキサンであるシリコーンポリマー」、「布地柔軟化組成物」に相当する。 ゆえに、本願発明と引用発明との一致点、相違点は以下のとおりである。 《一致点》 布地柔軟化組成物であって、組成物重量全体に基づいて、 (a)0.05%?0.75%のポリマー材料であって、 メチルクロリド四級化ジメチルアミノエチルアンモニウムアクリレートであるカチオン性モノマー、アクリルアミドである非イオン性モノマー、75ppm?1,800ppmの架橋剤、0ppm?10,000ppmの連鎖移動剤の重合に由来する第1ポリマーである前記ポリマー材料と、 (b)2%?25%の布地柔軟剤活性物質と、 (c)0.1%?8%のアミノ官能性オルガノシロキサンであるシリコーンポリマー、 とを含み、 2?4のpHを有する、布地柔軟化組成物。 《相違点1》 「カチオン性モノマー」と「非イオン性モノマー」の配合割合が、本願発明では、「45?65モルパーセントのカチオン性ビニル付加モノマー」、「10?80モルパーセントの非イオン性ビニル付加モノマー(但し、カチオン性ビニル付加モノマー及び非イオン性ビニル付加モノマーの合計は100モルパーセントを超えない)」であるのに対し、引用発明では、「5?95重量%のカチオン性モノマー」、「5?95重量%の非イオン性モノマー」である点。 《相違点2》 「架橋剤」が、本願発明では「3つ以上のエチレン官能基を含む」、「ペンタエリスリチルトリアクリレート、ペンタエリスリチルテトラアクリレート、ペンタエリスリチルテトラメタクリレート、ペンタエリスリチルトリアクリレートエトキシレート、ジペンタエリスリチルペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリチルテトラビニルエーテル、ペンタエリスリチルテトラテラート、並びにこれらの混合物からなる群から選択され」るものであるのに対し、引用発明では「少なくとも2つのエチレン性不飽和部分を含有する」、「ジビニルベンゼン、テトラアリルアンモニウムクロリド、アリルアクリレート及びメタクリレート、グリコール及びポリグリコールのジアクリレート及びジメタクリレート、ブタジエン、1,7-オクタジエン、アリル-アクリルアミド及びアリル-メタクリルアミド、ビスアクリルアミド酢酸、N,N’-メチレン-ビスアクリルアミド及びポリオールポリアリルエーテル、例えば、ポリアリルサッカロース及びペンタエリスリトールトリアリルエーテル、並びにこれらの混合物を挙げることができ、1つの実施形態では、架橋剤は、テトラアリルアンモニウムクロリド、アリル-アクリルアミド及びアリル-メタクリルアミド、ビスアクリルアミド酢酸、及びN,N’-メチレン-ビスアクリルアミド、及びこれらの混合物から選択され、好ましくは、テトラアリルアンモニウムクロリドである」点。 《相違点3》 第1ポリマーについて、本願発明は、「粘度勾配法2で3.7を超える粘度勾配を有する」ことを発明特定事項としているのに対し、引用発明は、このような事項を特定事項とはしていない点。 《相違点4》 布地柔軟化組成物について、本願発明は、「30cps?500cpsのブルックフィールド粘度を有」することを発明特定事項としているのに対し、引用発明は、このような事項を特定事項とはしていない点。 2.相違点についての判断 事案に鑑み、上記相違点2から検討する。 引用発明における「架橋剤」は、上記のとおり「少なくとも2つのエチレン性不飽和部分を含有する」、「ジビニルベンゼン、テトラアリルアンモニウムクロリド・・・並びにこれらの混合物を挙げることができ、1つの実施形態では、架橋剤は、テトラアリルアンモニウムクロリド、アリル-アクリルアミド及びアリル-メタクリルアミド、ビスアクリルアミド酢酸、及びN,N’-メチレン-ビスアクリルアミド、及びこれらの混合物から選択され」るものであって、「好ましくは、テトラアリルアンモニウムクロリドである」とされているものである。 一方、引用例4(審決注:訳文として特表2015-532687号公報の記載を採用した。)には、布地処理組成物に含まれる、多座架橋剤及び少なくとも1種のエチレン性不飽和カチオン性モノマーを含む、ポリマー全体の正味荷電がカチオン性である、ポリマー材料(CLAIM 1、訳文の【請求項1】等を参照。)の前記多座架橋剤について、「好適な架橋剤としては、ジビニルベンゼン、テトラアリルアンモニウムクロリド、アリルアクリレート及びメタクリレート、グリコール及びポリグリコールのジアクリレート及びジメタクリレート、ブタジエン、1,7-オクタジエン、アリル-アクリルアミド及びアリル-メタクリルアミド、ビスアクリルアミド酢酸、N,N’-メチレン-ビスアクリルアミド及びポリオールポリアリルエーテル、例えば、ポリアリルサッカロース及びペンタエリスリトールトリアリルエーテル、並びにこれらの混合物が挙げられる。1つの態様では、架橋剤は、テトラアリルアンモニウムクロリド、アリル-アクリルアミド及びアリル-メタクリルアミド、ビスアクリルアミド酢酸、及びN,N’-メチレン-ビスアクリルアミド、及びこれらの混合物から選択される。1つの態様では、架橋剤は、テトラアリルアンモニウムクロリドである。」と記載されている(21頁1?13行、訳文の【0066】を参照。)。 また、引用例5には、液体布地柔軟仕上げ剤のような、香料を含有する液体消費者製品の中に完全に混合される、少なくとも1つのカチオン性モノマー及び1以上の非カチオン性モノマーから、好ましくは架橋モノマーからも、重合される、ポリマー粒子(段落【0054】及び【0056】を参照。)の前記架橋モノマーについて、「ジアクリレート、ジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルエーテル、エチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ポリアリルスクロース、トリビニルベンゼン、ジビニルトルエン、トリビニルトルエン、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、アリルメタクリレート、ジアリルマレアート、トリアリルマレアート、及び1,4-ブタンジオールジアクリレート、トリアリルマレアート1,2-エタンジオールジアクリレート、1,3-プロパンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ジビニルベンゼン、及びエチレングリコールジアシレートが挙げられる。」と記載されている(【0074】を参照。)。 さらに、引用例6には、加熱式乾燥機を用いる洗濯において、衣料に快適な風合い(柔軟感) を与えながら、乾燥機特有のシワを低減し、形態保持効果や防縮効果に優れる繊維製品処理剤組成物に含有され(3頁6?12行、4頁8?10行を参照。)、カチオン性基含有ビニル単量体と、これと共重合可能なノニオン性基含有ビニル単量体と、2個以上のビニル基を分子中に有する架橋性ビニル単量体との共重合体である、水不溶性ポリマー(12頁10?12行を参照。)の前記架橋性ビニル単量体について、「これらの架橋性ビニル単量体の中では、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ペン夕エリスリトールトリアリルエーテル、ペン夕エリスリトールテトラアリルエーテルが好ましい。」と記載されている(14頁4?7行を参照。)。 しかしながら、上記引用例4?6には、「1つの実施形態では、架橋剤は、テトラアリルアンモニウムクロリド、アリル-アクリルアミド及びアリル-メタクリルアミド、ビスアクリルアミド酢酸、及びN,N’-メチレン-ビスアクリルアミド、及びこれらの混合物から選択され」るものであって、「好ましくは、テトラアリルアンモニウムクロリドである」とされている引用発明の「架橋剤」を、あえて、上記《相違点2》に係る本願発明の発明特定事項である、「3つ以上のエチレン官能基を含む」、「ペンタエリスリチルトリアクリレート、ペンタエリスリチルテトラアクリレート、ペンタエリスリチルテトラメタクリレート、ペンタエリスリチルトリアクリレートエトキシレート、ジペンタエリスリチルペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリチルテトラビニルエーテル、ペンタエリスリチルテトラテラート、並びにこれらの混合物からなる群から選択され」るものに変更するべきことは、記載されていないし、これを示唆する記載もない。 ここで、たとえ、柔軟化組成物に含まれるカチオン性モノマー及び非イオン性モノマーの共重合体を合成する際に、架橋剤として、ペンタエリスリトールトリアクリレート及びペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートを用いることが周知の技術であったとしても、上記したように、「1つの実施形態では、架橋剤は、テトラアリルアンモニウムクロリド、アリル-アクリルアミド及びアリル-メタクリルアミド、ビスアクリルアミド酢酸、及びN,N’-メチレン-ビスアクリルアミド、及びこれらの混合物から選択され」るものであって、「好ましくは、テトラアリルアンモニウムクロリドである」とされている引用発明の「架橋剤」を、あえて、上記周知の「ペンタエリスリトールトリアクリレート及びペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート」に変更することまでも周知の技術であるとする証拠はないし、そのような変更をする動機があるとまではいえない。 したがって、引用発明における「架橋剤」を、上記《相違点2》に係る本願発明の発明特定事項である、「3つ以上のエチレン官能基を含む」、「ペンタエリスリチルトリアクリレート、ペンタエリスリチルテトラアクリレート、ペンタエリスリチルテトラメタクリレート、ペンタエリスリチルトリアクリレートエトキシレート、ジペンタエリスリチルペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリチルテトラビニルエーテル、ペンタエリスリチルテトラテラート、並びにこれらの混合物からなる群から選択され」るものに変更することは、引用例4?6の記載事項を参酌したとしても、当業者が容易になし得たこととはいえない。 3.小括 以上のとおりであるから、本願発明は、他の相違点について検討するまでもなく、引用発明及び引用例4?6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 ゆえに、本願発明は、特許法第29条第2項の規定に違反するものではなく、特許を受けることができないものであるとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定に違反するものではなから、前置拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2020-03-04 |
出願番号 | 特願2017-501663(P2017-501663) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(D06M)
P 1 8・ 537- WY (D06M) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 橋本 有佳、佐藤 玲奈、鶴 剛史、長谷川 大輔、斎藤 克也 |
特許庁審判長 |
久保 克彦 |
特許庁審判官 |
横溝 顕範 渡邊 豊英 |
発明の名称 | 布地ケア及びホームケア処理組成物 |
代理人 | 朝倉 悟 |
代理人 | 永井 浩之 |
代理人 | 中村 行孝 |
代理人 | 出口 智也 |
代理人 | 小島 一真 |
代理人 | 村田 卓久 |