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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1360312
審判番号 不服2019-2645  
総通号数 244 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-02-27 
確定日 2020-03-05 
事件の表示 特願2017- 53575「発光装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年10月 4日出願公開、特開2018-155968〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続等の経緯
特願2017-53575号(以下「本件出願」という。)は、平成29年3月17日の出願であって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。

平成30年 8月16日付け:拒絶理由通知書
平成30年10月19日付け:意見書
平成30年10月19日付け:手続補正書
平成30年11月21日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
平成31年 2月27日付け:審判請求書
平成31年 2月27日付け:手続補正書


第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成31年2月27日付け手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
(1) 本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成30年10月19日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
「 蛍光体を実質的に含まない第1層と、蛍光体を含有する第2層とが積層された透光性シートを前記第1層が支持体に接触するよう配置された前記支持体を準備する工程と、
ブレードによる切削によって前記支持体上において空隙により前記第1層が離間されて形成された蛍光体非含有部と前記第2層が離間されて形成された蛍光体含有部とが積層された複数の透光性部材を前記透光性シートから形成する工程と、
前記透光性部材を、発光素子上に搭載する工程と、
前記発光素子の側面および前記透光性部材の側面を光反射性の被覆部材で被覆する工程と、を含む発光装置の製造方法。」

(2) 本件補正後の特許請求の範囲
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。なお、下線は当合議体が付したものであり、補正箇所を示す。
「 蛍光体を実質的に含まない第1層と、蛍光体を含有する第2層とが積層された透光性シートを前記第1層が支持体に接触するよう配置された前記支持体を準備する工程と、
ブレードによる切削によって前記支持体上において空隙により前記第1層が離間されて形成された蛍光体非含有部と前記第2層が離間されて形成された蛍光体含有部とが積層された複数の透光性部材を前記透光性シートから形成する工程と、
前記透光性部材を、発光素子上に搭載する工程と、
前記発光素子の側面および前記透光性部材の側面を光反射性の被覆部材で被覆する工程
と、を含み、
前記複数の透光性部材を形成する工程は、
前記ブレードにより前記透光性シートを切削して前記空隙を空けて前記透光性シートを前記支持体上に支持された状態で小片に切断する工程と、
前記空隙内に前記ブレードを移動させることで、前記透光性シートを小片に切断した後に残った切削屑を排出する工程と、を有する発光装置の製造方法。」

(3) 補正の適否
本件補正のうち、請求項1についてしたものは、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である、「複数の透光性部材を」「形成する工程」について、本件出願の願書に最初に添付した明細書の【0011】、【0018】、【0022】及び【0035】の記載に基づいて、「前記ブレードにより前記透光性シートを切削して前記空隙を空けて前記透光性シートを前記支持体上に支持された状態で小片に切断する工程と、前記空隙内に前記ブレードを移動させることで、前記透光性シートを小片に切断した後に残った切削屑を排出する工程」「を有する」ことを限定する補正である。
また、本件補正前の請求項1に係る発明と、本件補正後の請求項1に係る発明の、産業上の利用分野及び発明が解決しようとする課題は同一である(【0001】及び【0004】)。
以上勘案すると、請求項1についてした本件補正は、特許法17条の2第3項の規定に適合するとともに、同条第5項2号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とする補正である。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正後発明」という。)が、同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

2 本件補正後発明
本件補正後発明は、前記1(2)に記載したとおりのものである。

3 引用文献の記載及び引用発明
(1) 引用文献の記載
原査定の拒絶の理由において引用された、国際公開第2015/060289号(以下「引用文献」という。)は、本件出願前に、日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明が記載されているところ、そこには、以下の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す。

ア 「 技術分野
[0001] 本発明は、蛍光体組成物、蛍光体シート、蛍光体シート積層体ならびにそれらを用いたLEDチップ、LEDパッケージおよびその製造方法に関する。」

イ 「 発明が解決しようとする課題
[0008] しかしながら、上記の方法ではLEDチップ上にドライエッチングなどでエッチングしたり、屈折率の異なる薄層を多数回積層したりといったプロセス数が増えるため、コストが増加するという課題があった。また、LEDパッケージの輝度が向上しないという課題もあった。
[0009] 特に、LEDパッケージの輝度が向上しない点については、以下の2つの理由によることが、本発明者らにより見出された。(1)バインダー材料中に複数のナノ粒子を分散した変換層を利用する場合には、ナノ粒子が凝集してしまう。(2)LEDチップの発光面と蛍光体シートの間に空気などのボイドやクラックなどが発生し、LEDチップと蛍光体シートの密着性が低下することで、LEDチップからの光取出し効率が低下する。
[0010] 本発明は、上記課題に着目し、LEDパッケージの製造プロセスを削減でき、かつLEDパッケージの輝度を向上させることを目的とする。」

ウ 「発明を実施するための形態
[0015] <蛍光体組成物>
本発明の一つの特徴である蛍光体組成物は、蛍光体と、マトリックス樹脂と、金属化合物粒子を含有する蛍光体組成物であって、前記金属化合物粒子の屈折率が1.7以上であり、かつ、平均粒子径が1?50nmであり、前記金属化合物粒子と前記マトリックス樹脂の平均屈折率N1が、前記蛍光体の屈折率N2と以下の関係を満たし、前記金属化合物粒子がグラフト化されていることを特徴とする。
0.20≧|N1-N2|。」

エ 「[0101] <蛍光体シート積層体>
本発明において蛍光体シート積層体とは、基材と、蛍光体組成物を前記基材上に塗布することによって形成された蛍光体シートを含有する積層体をいう。
[0102] (基材)
基材としては、特に制限無く公知の金属、フィルム、ガラス、セラミック、紙等を使用することができる。具体的には、アルミニウム(アルミニウム合金も含む)、亜鉛、銅、鉄などの金属板や箔、セルロースアセテート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、アラミド、シリコーン、ポリオレフィン、熱可塑性フッ素樹脂で、テトラフルオロエチレンとエチレンの共重合体(ETFE)などのプラスチックのフィルム、α-ポリオレフィン樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂およびこれらとエチレンの共重合樹脂からなるプラスチックのフィルム、前記プラスチックがラミネートされた紙、または前記プラスチックによりコーティングされた紙、前記金属がラミネートまたは蒸着された紙、前記金属がラミネートまたは蒸着されたプラスチックフィルムなどが挙げられる。また、基材が金属板の場合、表面にクロム系やニッケル系などのメッキ処理やセラミック処理されていてもよい。
[0103] これらの中でも、蛍光体シートの作製のし易さや蛍光体シートの個片化のし易さからガラスや樹脂フィルムが好ましく用いられる。特に、蛍光体シートをLEDチップに貼りつける際の密着性から、基材は柔軟なフィルム状であることが好ましい。また、フィルム状の基材を取り扱う際に破断などの恐れがないように強度が高いフィルムが好ましい。それらの要求特性や経済性の面で樹脂フィルムが好ましく、これらの中でも、経済性、取り扱い性の面でPET、ポリフェニレンサルファイド、ポリプロピレンからなる群より選ばれるプラスチックフィルムが好ましい。また、蛍光体シートを乾燥させる場合や蛍光体シートをLEDチップに貼り付ける際に200℃以上の高温を必要とする場合は、耐熱性の面でポリイミドフィルムが好ましい。シートの剥離のし易さから、基材は、あらかじめ表面が離型処理されていてもよい。
[0104] 基材の厚さは特に制限はないが、下限としては25μm以上が好ましく、38μm以上がより好ましい。また、上限としては5000μm以下が好ましく、3000μm以下がより好ましい。
[0105] (蛍光体シート)
本発明において蛍光体シートとは、内部に蛍光体を含むシートのことをいう。本発明の一つの特徴である蛍光体シートは、蛍光体と、マトリックス樹脂と、金属化合物粒子を含有する蛍光体シートであって、前記金属化合物粒子の屈折率が1.7以上であり、かつ、平均粒子径が1?50nmであり、前記金属化合物粒子がグラフト化されており、前記金属化合物粒子と前記マトリックス樹脂の平均屈折率N1が、前記蛍光体の屈折率N2と以下の関係(i)を満たし、シートの粘弾性挙動が以下の関係(ii)、(iii)および(iv)を満たすことを特徴とする。
<屈折率の関係> (i)0.20≧|N1-N2|
<粘弾性挙動>
(ii)温度25℃において貯蔵弾性率G’が1.0×10 4 Pa≦ G’≦1.0×10 6 Paであり、かつtanδ<1
(iii)温度100℃において貯蔵弾性率G’が1.0×10 2 Pa≦ G’<1.0×10 4 Paであり、かつtanδ≧1
(iv)温度200℃において貯蔵弾性率G’が1.0×10 4 Pa≦ G’≦1.0×10 6 Paであり、かつtanδ<1。」

オ 「[0138] 図9に蛍光体シート付きLEDチップの好適な例を示す。(a)は、LEDチップの上面に蛍光体シートを貼り付けて設置したものである。(b)はLEDチップ1の上面だけでなく側面にも蛍光体シート2を貼り付けて設置したものである。側面からの発光に対しても波長変換できるため好ましい。(c)はフリップチップタイプのLEDを用いて、発光面である上面と側面を蛍光体シート2によって被覆したものである。(d)は高屈折率ナノ粒子の濃度の大きい側の面をLEDチップの発光面に貼り付けたものである。
[0139] 図10A?図10BにLEDパッケージの好適な例を示す。(a)は、LEDチップ1を設置したリフレクター5付きの実装基板7に蛍光体組成物4を注入し、その後、透明封止材6によって封止したものである。(b)はリフレクター5付きの実装基板7に設置されたLEDチップ1上に蛍光体シート2を貼り付け、その後、透明封止材6によって封止したものである。(c)はLEDチップ1の上面だけでなく側面にも蛍光体シート2を貼り付けたものであり、側面からの発光に対しても波長変換できるため好ましい。さらに透明封止材6によるレンズも取り付けたものである。
[0140] (d)は、リフレクター5を用いず、透明封止材6のレンズ成型体により封止されていること以外は(b)と同様である。(e)はリフレクター5を用いないこと以外は(c)と同様である。」

カ 「[0149] 次に、本発明の蛍光体シート積層体を用いたLEDパッケージの製造方法を説明する。本発明の蛍光体シート積層体を用いたLEDパッケージの代表的な製造方法は、後述するように、(1)蛍光体シートを個片に切断してから、個別のLEDチップに貼り付ける方法、(2)ダイシング前のLEDチップを作り付けたウェハに一括貼り付けを経て、ウェハのダイシングと蛍光体シートの切断を一括して行う方法があるが、これらに限定されない。特に好ましくは(A)前記蛍光体シートの一の区画を、一のLEDチップの発光面に対向させる位置合わせ工程、および(B)加熱圧着ツールにより加熱しながら加圧して前記シートの前記一の区画と前記一のLEDチップの発光面を接着させる接着工程を少なくとも含むLEDパッケージの製造方法である。さらに、前記(A)の工程が、前記蛍光体シートの一の区画の上面および下面のうち無機粒子の濃度の大きい側の面を前記一のLEDチップの発光面に対向させる位置合わせ工程であるLEDパッケージの製造方法であることが好ましい。
[0150] 本発明の蛍光体シート積層体は、直接LEDチップに貼付けせずに、透明樹脂などの接着剤を用いて貼付けを行なうことも可能であるが、マトリックス樹脂として熱融着樹脂を用いた蛍光体シートを用いることが、容易に接着剤なしでLEDチップに貼り付けることができるため好ましい。
[0151] 蛍光体シートは、LEDチップに貼り付ける際、所望の温度で加熱しながら加圧することで圧着して貼り付ける。加熱温度は、60℃以上250℃以下が望ましく、より望ましくは60℃以上160℃以下である。60℃以上にすることで、室温と貼り付け温度での弾性率差を大きくするための樹脂設計が容易となる。また、250℃以下にすることで、基材および蛍光体シートの熱膨張、熱収縮を小さくすることができるので、貼り付けの精度を高めることができる。特に、蛍光体シートに予め孔開け加工を施して、LEDチップ上の所定部分と位置合わせを行う場合などには貼り付けの位置精度は重要である。貼り付けの精度を高めるためには160℃以下で貼り付けることがより好適である。
[0152] 蛍光体シートをLEDチップ表面に貼り付ける方法としては、所望の温度で圧着できる装置であれば既存の任意の装置が利用でき、マウンターやフリップチップボンダーなどの加熱圧着ツールが利用できる。また、ウェハレベルのLEDチップに一括して貼り付ける際には、真空ラミネーターや100?200mm角程度の加熱部分を有する加熱圧着ツールなどを用いて貼り付けることができる。いずれの場合も、所望の温度で蛍光体シートをLEDチップに圧着して熱融着させてから、室温まで放冷し、基材を剥離する。本発明のような温度と弾性率の関係を持たせることで、熱融着後に室温まで放冷却した後の蛍光体シートはLEDチップに強固に密着しつつ、基材から容易に剥離することが可能となる。
[0153] 蛍光体シートを切断加工する方法について説明する。蛍光体シートは、LEDチップへの貼り付け前に予め個片に切断し、個別のLEDチップに貼り付ける方法と、ウェハレベルのLEDチップに蛍光体シートを貼り付けてからウェハのダイシングと同時に一括して蛍光体シートを切断する方法がある。貼りつけ前に予め切断する場合には、均一に形成された蛍光体シートを、レーザーによる加工、あるいは刃物による切削によって所定の形状に加工し、分割する。レーザーによる加工は、高エネルギーが付与されるので樹脂の焼け焦げや蛍光体の劣化を回避することが非常に難しく、刃物による切削が望ましい。刃物での切削方法としては、単純な刃物を押し込んで切る方法と、回転刃によって切る方法があり、いずれも好適に使用できる。回転刃によって切断する装置としては、ダイサーと呼ばれる半導体基板(ウェハ)を個別のチップに切断(ダイシング)するのに用いる装置が好適に利用できる。ダイサーを用いれば、回転刃の厚みや条件設定により、分割ラインの幅を精密に制御できるため、単純な刃物の押し込みにより切断するよりも高い加工精度が得られる。
[0154] 基材と積層された状態の蛍光体シートを切断する場合には、基材ごと個片化しても良いし、あるいは蛍光体シートは個片化しつつ、基材は切断しなくても構わない。あるいは基材は貫通しない切り込みラインが入る所謂ハーフカットでも良い。そのように個片化した蛍光体シートを、個別のLEDチップの発光面上に熱融着させる。蛍光体シートを基材ごと個片化する場合の、個片化・LEDチップ貼り付け・ダイシングの工程の一例を、図13に示す。図13の工程には、蛍光体シートを個片に切断する工程、および該個片に切断された蛍光体シートを所望の温度で圧着してLEDチップに貼り付ける工程が含まれる。図13の(a)は、基材20と積層された状態の蛍光体シート2を仮固定シート21に固定したところである。図13に示した工程では、蛍光体シート2と基材20はいずれも個片化するので、取り扱いが容易なように仮固定シート21に固定しておく。次に(b)に示すように蛍光体シート2と基材20を切断して個片化する。続いて、(c)に示すように実装基板7に実装されたLEDチップ1の上に、個片化された蛍光体シート2と基材20を位置合わせし、(d)に示すように加熱圧着ツール22を用いて所望の温度で圧着する。このとき、蛍光体シート2とLEDチップ1の間に空気を噛み込まないように、圧着工程は真空下あるいは減圧下で行うことが好ましい。圧着後に室温まで放冷し、(e)に示すように基材20を剥離する。ここで基材20がガラス等の場合、基材を剥離せず、(f)に示すようにそのまま使用しても良い。」

キ 図9


ク 図10

ケ 図13



(2) 引用発明
前記(1)カ及びケからみて、引用文献の[0154]、図13に記載された工程は、引用文献の[0149]における「LEDパッケージの製造方法」であるといえる。
また、引用文献の[0153]において、「蛍光体シートを切断加工する方法」として、「刃物による切削が望ましい。」、「刃物での切削方法としては、単純な刃物を押し込んで切る方法と、回転刃によって切る方法があり、いずれも好適に使用できる。」と記載されていることから、引用文献の[0154]、図13に記載された「蛍光体シート2と基材20を切断して個片化する工程」において、回転刃によって蛍光体シート2と基材20を切断して個片化することが開示されているといえる。
そうしてみると、引用文献には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「 基材20と積層された状態の蛍光体シート2を仮固定シート21に固定し、
次に回転刃によって前記蛍光体シート2と前記基材20を切断して個片化し、
続いて、実装基板7に実装されたLEDチップ1の上に、個片化された前記蛍光体シート2と前記基材20を位置合わせし、加熱圧着ツール22を用いて所望の温度で圧着し、前記蛍光体シート2と前記LEDチップ1の間に空気を噛み込まないように、圧着工程は真空下あるいは減圧下で行い、圧着後に室温まで放冷し、
前記基材20がガラス等の場合、前記基材20を剥離せず、そのまま使用する、
LEDパッケージの製造方法。」

4 対比及び判断
(1) 対比
本件補正後発明と引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。

ア 蛍光体を含まない第1層
引用発明は、「基材20」を有する。また、引用発明は、「基材20と積層された状態の蛍光体シート2を仮固定シート21に固定し」という構成を具備する。
引用発明の「基材20」の材質及び機能からみて、引用発明の「基材20」が実質的に蛍光体を含まないことは明らかである。また、引用発明の「基材20」及び「蛍光体シート2」の積層関係からみて、引用発明の「基材20」は、「かさなりをなすものの一つ。」(広辞苑6版)といえるから、序数詞を付して「第1層」ということができる(当合議体注:図13からも確認できる事項である。)。
そうしてみると、引用発明の「基材20」は、本件補正後発明の「蛍光体を実質的に含まない第1層」に相当する。

イ 蛍光体を含有する第2層
引用発明は、「蛍光体シート2」を有する。また、引用発明は、「基材20と積層された状態の蛍光体シート2を仮固定シート21に固定し」という構成を具備する。
ここで、引用発明の「蛍光体シート2」は、その文言から理解されるとおり、蛍光体を含有するものである。また、前記アで述べたのと同様に、引用発明の「蛍光体シート2」は、「第2層」ということができる。
そうしてみると、引用発明の「蛍光体シート2」は、本件補正後発明の「蛍光体を含有する第2層」に相当する。

ウ 透光性シート
引用発明は、「基材20と積層された状態の蛍光体シート2を仮固定シート21に固定し、」「実装基板7に実装されたLEDチップ1の上に、個片化された前記蛍光体シート2と前記基材20を位置合わせし、加熱圧着ツール22を用いて所望の温度で圧着し、」「前記基材20がガラス等の場合、前記基材20を剥離せず、そのまま使用する」という構成を具備する。
上記の構成からみて、引用発明の「基材20」及び「蛍光体シート2」が積層された物が、透光性を有する、シート形状のものであることは明らかである(当合議体注:図13(f)からも確認できる事項である。)。
そうしてみると、引用発明の「基材20」及び「蛍光体シート2」が積層された物は、本件補正後発明の「透光性シート」に相当する。また、前記ア及びイの対比結果を踏まえると、本件補正後発明の「透光性シート」における、「蛍光体を実質的に含まない第1層と、蛍光体を含有する第2層とが積層された」という構成を具備するものである。

エ 支持体を準備する工程
引用発明は、「基材20と積層された状態の蛍光体シート2を仮固定シート21に固定」する工程を具備する。
引用発明の「仮固定シート21」の機能からみて、引用発明の「仮固定シート21」は、本件補正後発明の「支持体」に相当する。また、引用発明の「基材20と積層された状態の蛍光体シート2を仮固定シート21に固定」する工程は、「仮固定シート21」を準備するものであることは明らかである。さらに、前記アないしウの対比結果を踏まえると、引用発明の「基材20と積層された状態の蛍光体シート2を仮固定シート21に固定」する工程は、本件補正後発明の「蛍光体を実質的に含まない第1層と、蛍光体を含有する第2層とが積層された透光性シート」が「配置された」「前記支持体を準備する工程」に相当する。

オ 複数の透光性部材を透光性シートから形成する工程
引用発明は、「回転刃によって前記蛍光体シート2と前記基材20を切断して個片化」する工程を具備する。
引用発明の「回転刃」は、その文言からみて、本件補正後発明の「ブレード」に相当する。また、引用発明の「回転刃」が切削する機能を有していることは、技術的にみて明らかである。加えて、引用発明の「前記蛍光体シート2と前記基材20を切断して個片化」する工程は、「仮固定シート21」上で行われるものであることは明らかである(当合議体注:図13(a)及び(b)からも確認できる事項である。)。さらに、引用発明は、「回転刃によって前記蛍光体シート2と前記基材20を切断して個片化」するものであるから、回転刃による切断によって、「個片化し」た「蛍光体シート2」及び「基材20」の間に空隙が生じること、並びに、「個片化し」た「蛍光体シート2」及び「基材20」は回転刃による切断によって離間されて形成されることは、明らかである。
そうしてみると、引用発明の「個片化し」た「蛍光体シート2」及び「基材20」は、本件補正後発明の「透光性部材」に相当する。また、引用発明の「回転刃によって前記蛍光体シート2と前記基材20を切断して個片化」する工程は、本件補正後発明の「ブレードによる切削によって前記支持体上において空隙により前記第1層が離間されて形成された蛍光体非含有部と前記第2層が離間されて形成された蛍光体含有部とが積層された複数の透光性部材を前記透光性シートから形成する工程」に相当する。

カ 前記透光部材を、発光素子上に搭載する工程
引用発明は、「実装基板7に実装されたLEDチップ1の上に、個片化された前記蛍光体シート2と前記基材20を位置合わせし、加熱圧着ツール22を用いて所望の温度で圧着し、前記蛍光体シート2と前記LEDチップ1の間に空気を噛み込まないように、圧着工程は真空下あるいは減圧下で行い、圧着後に室温まで放冷し、前記基材20がガラス等の場合、前記基材20を剥離せず、そのまま使用する」工程を具備する。上記の工程からみて、引用発明は、[個片化し」た「蛍光体シート2」及び「基材20」を、「LEDチップ1」に搭載する工程を具備する。
そうしてみると、引用発明の上記工程は、本件補正後発明の「前記透光性部材を、発光素子上に搭載する工程」に相当する。

キ 透光性シートを支持体上に支持された状態で小片に切断する工程
引用発明は、「回転刃によって前記蛍光体シート2と前記基材20を切断して個片化」する工程を具備する。
前記オで述べたのと同様に、引用発明の「回転刃」が切削する機能を有すること、引用発明は、回転刃による切断によって「個片化し」た「蛍光体シート2」及び「基材20」の間に空隙が生じること、及び引用発明の「前記蛍光体シート2と前記基材20を切断して個片化」する工程は、「仮固定シート21」上で行われるものであることは、明らかである。加えて、上記の工程からみて、引用発明の「蛍光体シート2」及び「基材20」は小片に切断されるものであることは、明らかである。
そうしてみると、引用発明の「回転刃によって前記蛍光体シート2と前記基材20を切断して個片化」する工程は、本件補正後発明の「前記透光性シートを切削して前記空隙を空けて前記透光性シートを前記支持体上に支持された状態で小片に切断する工程」に相当する。

(2) 一致点及び相違点
ア 一致点
本件補正後発明と引用発明は、次の構成で一致する。
「 蛍光体を実質的に含まない第1層と、蛍光体を含有する第2層とが積層された透光性シートが配置された前記支持体を準備する工程と、
ブレードによる切削によって前記支持体上において空隙により前記第1層が離間されて形成された蛍光体非含有部と前記第2層が離間されて形成された蛍光体含有部とが積層された複数の透光性部材を前記透光性シートから形成する工程と、
前記透光性部材を、発光素子上に搭載する工程と、を含み、
前記複数の透光性部材を形成する工程は、
前記ブレードにより前記透光性シートを切削して前記空隙を空けて前記透光性シートを前記支持体上に支持された状態で小片に切断する工程と、を有する発光装置の製造方法。」

イ 相違点
本件補正後発明と引用発明は、以下の点で相違するか、一応相違する。
(相違点1)
本件補正後発明では、「前記第1層が支持体に接触するよう配置された」のに対して、引用発明では、「基材20」が「仮固定シート21」に接触するよう配置されたかどうかが、一応、明らかではない点。

(相違点2)
本件補正後発明では、「前記発光素子の側面および前記透光性部材の側面を光反射性の被覆部材で被覆する工程」を含むのに対して、引用発明ではそのような工程は含まれない点。

(相違点3)
本件補正後発明の「前記複数の透光性部材を形成する工程」は、「前記空隙内に前記ブレードを移動させることで、前記透光性シートを小片に切断した後に残った切削屑を排出する工程」を有するのに対して、引用発明ではそのような特定がなされていない点。

(3) 判断
ア 相違点1について
引用文献の図13(a)?図13(c)において、「基材20」が「仮固定シート21」に接触していることが看取できるので、上記相違点1は実質的な差異ではないか、仮に差異であるとしても当業者が容易に想到し得たことである。

イ 相違点2について
発光装置において前方への光取り出しの効率をよくするために「発光素子及び透光性部材の側面を光反射性の被覆部材で被覆する技術」は、周知技術(特開2013-77679号公報の【0032】?【0034】、図5、6、特開2010-219324号公報の【0028】?【0036】、図1、2参照。)である。また、引用発明においても、前方への光取り出しの効率を良くすることが求められていることは明らかである(この点は、引用文献の図13(c)?図13(f)においてレフレクター5が看取されることからも確認できる事項である。)。
そうしてみると、引用発明において、前方への光取り出しの効率をよくするために、上記周知技術を適用して上記相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

ウ 相違点3について
部材をブレードにより切断した後に残った切削屑を排出することは周知の課題であり、引用発明においても、回転刃によって蛍光体シート2と基材20を切断した後に残った切削屑を排出することは当然考慮に入れるべき事項である。
加えて、同じ箇所についてブレードを複数回移動することによって切削の精度を上げることは慣用手段であるところ、「ブレードにより部材を切断した後に残った切削屑を排出するために空隙内にブレードを移動させる技術」は、周知技術(特開2006-59914号公報の【0044】?【0047】、図4A?図4C、特開2008-130929号公報の【0056】?【0059】、図4A?図4C参照。)である。
そして、引用文献の[0153]に「刃物での切削方法としては、単純な刃物を押し込んで切る方法と、回転刃によって切る方法があり、いずれも好適に使用できる。回転刃によって切断する装置としては、ダイサーと呼ばれる半導体基板(ウェハ)を個別のチップに切断(ダイシング)するのに用いる装置が好適に利用できる。」と記載されていることから、引用発明において、刃物によって切断する装置を適用することに何ら困難性はない。
そうしてみると、引用発明において、回転刃によって蛍光体シート2と基材20を切断した後に残った切削屑を排出するために、上記周知技術を適用して上記相違点3に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(4) 発明の効果
本件補正後発明の「透光性部材を簡易に製造することができる。また、発光装置を簡易に製造することができる。」(本件出願の明細書の【0008】)という効果は、引用発明から予測できる範囲内のものである。

(5) 小括
以上のとおりであるから、本件補正後発明は、引用文献に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 補正の却下の決定の結び
本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、補正の却下の決定の結論の通り決定する。


第3 本願発明
1 本願発明
以上のとおり、本件補正は却下されたので、本件出願の請求項1?請求項8に係る発明は、平成30年10月19日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項によって特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記「第2」1(1)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、本件出願前に、日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった国際公開第2015/060289号(引用文献)に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない、というものである。

3 引用文献の記載及び引用発明
原査定の拒絶の理由において引用された引用文献の記載及び引用発明は、前記「第2」3に記載したとおりである。

4 対比、判断
本願発明は、前記「第2」4で検討した本件補正後発明から、前記「第2」1(3)で述べた限定事項を除いたものである。
そうしてみると、本願発明は、引用文献に記載された記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものでもある。


第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-12-20 
結審通知日 2020-01-07 
審決日 2020-01-20 
出願番号 特願2017-53575(P2017-53575)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
P 1 8・ 575- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小久保 州洋三笠 雄司大竹 秀紀  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 井口 猶二
関根 洋之
発明の名称 発光装置の製造方法  
代理人 特許業務法人磯野国際特許商標事務所  
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