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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65H 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B65H |
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管理番号 | 1360315 |
審判番号 | 不服2019-3057 |
総通号数 | 244 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-04-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-03-05 |
確定日 | 2020-03-05 |
事件の表示 | 特願2015- 39413「接着フィルム用リール及びこれに使用される連結体」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 9月 5日出願公開、特開2016-160027〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成27年2月27日の出願であって、平成30年9月28日付けで拒絶の理由が通知され、同年11月26日付けで意見書が提出されるとともに、手続補正がなされ、同年12月5日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成31年3月5日付けで拒絶査定に対する不服審判請求がなされると同時に手続補正がなされたものである 第2 平成31年3月5日付け手続補正書による補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成31年3月5日付け手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲について、下記(1)に示す本件補正前の(すなわち、平成30年11月26日付けで提出された手続補正書により補正された)特許請求の範囲の請求項1乃至10を、下記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1乃至10へと補正するものである。(下線は審決で付した。以下同じ。) (1)本件補正前の特許請求の範囲 「【請求項1】 円筒形状の巻芯と、 前記巻芯の周面に設けられたリードと、 前記巻芯に巻きつけられる幅1mm未満の接着フィルムと、 前記リードと前記接着フィルムとを接続する接続テープと、を備え、 前記接続テープによる前記リードと前記接着フィルムとの接続強度が5.0N以上であり、 前記接着フィルムと前記接続テープとの接着面長さと、前記リードと前記接続テープとの接着面長さとの比は、3:7?7:3である、接着フィルム用リール。 【請求項2】 前記接着フィルムは、支持フィルムと前記支持フィルム上に形成される接着層とを含み、 前記支持フィルムは、前記接着層に対して長さ方向に突出した突出部を有し、 前記接続テープは、前記支持フィルムの突出部と前記リードとを接続する、請求項1記載の接着フィルム用リール。 【請求項3】 前記接着フィルムと前記接続テープとの接着面長さと、前記リードと前記接続テープとの接着面長さとの合計長さは、前記巻芯の外周面の円周長さの30%より大きい、請求項1または2記載の接着フィルム用リール。 【請求項4】 前記接着フィルムと前記接続テープとの接着面長さと、前記リードと前記接続テープとの接着面長さとの合計長さは、120mm以上である、請求項3記載の接着フィルム用リール。 【請求項5】 前記接続テープは、前記接着フィルム及び前記リードの表裏表面に設けられる、請求項1?4の何れか1項に記載の接着フィルム用リール。 【請求項6】 前記接着フィルムの長さは50m以上である、請求項1?5の何れか1項に記載の接着フィルム用リール。 【請求項7】 前記接着フィルムは異方性導電材料を含む、請求項1?6の何れか1項に記載の接着フィルム用リール。 【請求項8】 前記接着フィルムは異方性導電フィルムである、請求項7記載の接着フィルム用リール。 【請求項9】 リールの巻芯の周面に設けられるリードと、 前記巻芯に巻きつけられる幅1mm未満の接着フィルムと、 前記リードと前記接着フィルムとを接続する接続テープと、を備え、 前記接続テープによる前記リードと前記接着フィルムとの接続強度が5.0N以上であり、 前記接着フィルムと前記接続テープとの接着面長さと、前記リードと前記接続テープとの接着面長さとの比は、3:7?7:3である、連結体。 【請求項10】 前記接着フィルムは異方性導電フィルムである、請求項9記載の連結体。」 (2)本件補正後の特許請求の範囲 「【請求項1】 円筒形状の巻芯と、 前記巻芯の周面に設けられたリードと、 前記巻芯に巻きつけられる幅0.6mm以下の接着フィルムと、 前記リードと前記接着フィルムとを接続する接続テープと、を備え、 前記接続テープによる前記リードと前記接着フィルムとの接続強度が5.0N以上であり、 前記接着フィルムと前記接続テープとの接着面長さと、前記リードと前記接続テープとの接着面長さとの比は、3:7?7:3であり、 前記接着フィルムは、支持フィルムと前記支持フィルム上に形成される接着層とを含み、 前記接続テープは、前記リードと前記支持フィルムの前記接着層が形成されていない面とを接続する、接着フィルム用リール。 【請求項2】 前記支持フィルムは、前記接着層に対して長さ方向に突出した突出部を有し、 前記接続テープは、前記支持フィルムの突出部と前記リードとを接続する、請求項1記載の接着フィルム用リール。 【請求項3】 前記接着フィルムと前記接続テープとの接着面長さと、前記リードと前記接続テープとの接着面長さとの合計長さは、前記巻芯の外周面の円周長さの30%より大きい、請求項1または2記載の接着フィルム用リール。 【請求項4】 前記接着フィルムと前記接続テープとの接着面長さと、前記リードと前記接続テープとの接着面長さとの合計長さは、120mm以上である、請求項3記載の接着フィルム用リール。 【請求項5】 前記接続テープは、前記接着フィルム及び前記リードの表裏表面に設けられる、請求項1?4の何れか1項に記載の接着フィルム用リール。 【請求項6】 前記接着フィルムの長さは50m以上である、請求項1?5の何れか1項に記載の接着フィルム用リール。 【請求項7】 前記接着フィルムは異方性導電材料を含む、請求項1?6の何れか1項に記載の接着フィルム用リール。 【請求項8】 前記接着フィルムは異方性導電フィルムである、請求項7記載の接着フィルム用リール。 【請求項9】 リールの巻芯の周面に設けられるリードと、 前記巻芯に巻きつけられる幅0.6mm以下の接着フィルムと、 前記リードと前記接着フィルムとを接続する接続テープと、を備え、 前記接続テープによる前記リードと前記接着フィルムとの接続強度が5.0N以上であり、 前記接着フィルムと前記接続テープとの接着面長さと、前記リードと前記接続テープとの接着面長さとの比は、3:7?7:3であり、 前記接着フィルムは、支持フィルムと前記支持フィルム上に形成される接着層とを含み、 前記接続テープは、前記リードと前記支持フィルムの前記接着層が設けられていない面とを接続する、連結体。 【請求項10】 前記接着フィルムは異方性導電フィルムである、請求項9記載の連結体。」 2 補正事項について 本件補正により、本件補正後の請求項1乃至8の「接着フィルム用リール」及び本件補正後の請求項9及び10の「連結体」における「接着フィルム」に関して、「幅1mm未満」を「幅0.6mm以下」とし、及び「支持フィルムと前記支持フィルム上に形成される接着層とを含み」との補正事項(以下「補正事項1」という。)を追加し、「接続テープ」に関して、「リードと支持フィルムの接着層が形成されていない面とを接続する」との補正事項(以下「補正事項2」という。)が追加された。 (1)補正事項1について 補正事項1により、本件補正前の請求項1乃至8の「接着フィルム用リール」及び本件補正前の請求項9及び10の「連結体」における「接着フィルム」に関して、その幅を「0.6mm以下」とさらに限定し、「支持フィルムと前記支持フィルム上に形成される接着層とを含み」と具体的に特定したものであって、本件補正前の請求項1乃至10に記載された発明とその補正後の当該請求項1乃至10に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、補正事項1は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 また、補正事項1は、特許法第17条の2第3項及び第4項に違反するところはない。 (2)補正事項2について 補正事項2により、本件補正前の請求項1乃至8の「接着フィルム用リール」及び本件補正前の請求項9及び10の「連結体」における「接続テープ」に関して、「リードと支持フィルムの接着層が形成されていない面とを接続する」と具体的に特定したものであって、本件補正前の請求項1乃至10に記載された発明とその補正後の当該請求項1乃至10に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、補正事項2は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 また、補正事項2は、特許法第17条の2第3項及び第4項に違反するところはない。 3 独立特許要件について 本件補正後の前記請求項1に係る発明(平成31年3月5日付け手続補正書の特許請求の範囲に記載された事項により特定される、上記「1 (2)本件補正後の特許請求の範囲」の【請求項1】乃至【請求項10】(以下、それぞれ「本願補正発明1」乃至「本願補正発明10」という。)における本願補正発明1が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。 (1)本願補正発明1 本願補正発明1は、上記「1 (2)本件補正後の特許請求の範囲」の【請求項1】に記載したとおりのものと認める。 (2)引用例 ア 引用例1 原査定の拒絶の理由において引用され、本願の出願日前の2010年9月2日に頒布された刊行物である国際公開第2010/098354号(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。 (ア)「[請求項1] テープ状の基材及びその一方面上に形成された接着剤層を有する回路接続用テープと、前記回路接続用テープが巻かれる巻芯とを備えた接着材リールであって、 前記回路接続用テープは、終端部に接合されたエンドテープと、当該回路接続用テープの終端から始端の方向に向けて少なくとも前記巻芯の一巻き分の長さにわたって前記接着剤層が形成されていない領域と、当該領域を覆うように設けられたカバーテープとを有する接着材リール。 [請求項2] 前記カバーテープは、前記エンドテープの先端部側にまで延在して前記回路接続用テープの終端部と前記エンドテープの先端部とを接合している、請求項1に記載の接着材リール。 [請求項3] 前記回路接続用テープは、当該回路接続用テープの終端部と前記エンドテープの先端部とを覆うように設けられた粘着テープを更に有する、請求項1又は2に記載の接着材リール。」(16頁の請求の範囲) (イ)「[0001] 本発明は、テープ状の基材及びその一方面上に形成された接着剤層を有する回路接続用テープと、この回路接続用テープが巻かれる巻芯とを備えた接着材リールに関する。」 (ウ)「[0008] 本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、巻かれた状態の回路接続用テープを引き出す際、基材背面への接着剤層の転写を十分に抑制でき、優れた接続信頼性の回路接続体を製造するのに有用な接着材リールを提供することを目的とする。」 (エ)「[0017] <第1実施形態> 図1に示す接着材リール10は、筒状の巻芯1と、巻芯1の軸方向の両端面にそれぞれ設けられた円形の側板2とを備える。図2に示すように、巻芯1の外面1a上には異方導電テープ5が巻かれ、巻重体を構成している。接着材リール10は、圧着装置25の回転軸25aに装着するための軸穴10aを有する。巻芯1の外径は、特に制限されるものではないが、取り扱い性の点から4?15cmであることが好ましい。 [0018] 異方導電テープ5は、図3に示すように、テープ状の基材6と、基材6の一方面上に形成された接着剤層8とを備える。 [0019] 基材6の長さは、1?400m程度であり、好ましくは50?300mである。基材6の厚さは、4?200μm程度であり、好ましくは20?100μmである。基材6の幅は、0.5?30mm程度であり、好ましくは0.5?3.0mmである。基材6の長さ、厚さ及び幅は上記の範囲に限定されるものではない。なお、基材6の幅は、その上に形成される接着剤層8の幅と同じであるか、接着剤層8の幅よりも広いことが好ましい。 … [0021] 接着剤層8は、接着剤組成物からなり、この接着剤組成物は、例えば、接着剤成分8aと導電粒子8bとを含有する。接着剤層8の厚さは、使用する接着剤成分及び被接着物の種類等に合わせて適宜選択すればよいが、好ましくは5?100μmであり、より好ましくは10?40μmである。また、接着剤層8の幅は、使用用途に合わせて調整すればよいが、0.5?5mm程度であり、好ましくは0.5?3.0mmである。」 (オ)「[0029] エンドテープ12は、異方導電テープ5と巻芯1とを連結するテープであり、その終端部12aは巻芯1の外面1aに固定されている。終端部12aと外面1aの固定は、両面テープ(例えば、寺岡製作所のもの)を用いて行うことができる。他方、エンドテープ12の先端部12bは、カバーテープ14及び粘着テープ16によって、異方導電テープ5の終端部5aと接合されている。」 (カ)「[0036] 粘着テープ16は、異方導電テープ5とエンドテープ12との接合強度を高めるためのテープである。粘着テープ16は一方の面が粘着面となっており、異方導電テープ5とエンドテープ12の接合部であって、異方導電テープ5の背面5c側に粘着面が貼り付けられている。なお、カバーテープ14のみで十分な接合強度を達成できる場合は、粘着テープ16を使用しなくてもよい。あるいは、粘着テープ16のみで十分な接合強度を達成できる場合は、カバーテープ14をエンドテープ12の先端部12b側にまで延在させなくてもよい。」 (キ)「[0039] 異方導電テープ5の終端部5aに接着剤層8が存在しない領域5bを形成することで、以下のような効果が奏される。すなわち、異方導電テープ5が巻芯1に巻かれた状態にあっては、領域5bが異方導電テープ5とエンドテープ12との接合部(粘着テープ16)の直上に位置する。当該接合部が領域5bで覆われるため、接合部に多少の凹凸等があったとしても、これを起因とするブロッキングの発生を十分に抑制できる。なお、領域5bを設ける長さは、巻芯1の一巻き分の長さ以上であれば、特に制限はなく、二巻き分であっても、三巻き分であってもよい。ただし、巻芯1の直径にもよるが、領域5bの長さは0.5m以下であることが好ましい。領域5bの長さが0.5mを超えると、領域5b上にカバーテープ14を貼り合わせ際にずれが生じやすくなる。」 (ク)「[0061] 更に、上記実施形態においては、回路接続用テープとして異方導電テープ5を例示したが、接着剤層8が接着剤成分8aからなり導電粒子8bを含有しない非導電テープに対して上記実施形態1,2に係る構成を採用してもよい。」 (ケ)上記(カ)及び図4より、粘着テープは、回路接続用テープとエンドテープの接合部であって、回路接続用テープの接着剤層が形成されていない側に貼り付けられていることが看取できる。 そうすると、上記(ア)乃至(ケ)の記載事項から、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。 「幅が0.5?3.0mmのテープ状の基材及びその一方面上に形成された幅が0.5?3.0mmの接着剤層を有する回路接続用テープと、前記回路接続用テープが巻かれる筒状の巻芯とを備えた接着材リールであって、 前記回路接続用テープは、終端部に接合され終端部が巻芯の外面に固定されているエンドテープと、当該回路接続用テープの終端から始端の方向に向けて少なくとも前記巻芯の一巻き分の長さにわたって前記接着剤層が形成されていない領域と、当該領域を覆うように設けられたカバーテープとを有し、 前記カバーテープは、前記エンドテープの先端部側にまで延在して前記回路接続用テープの終端部と前記エンドテープの先端部とを接合し、 前記回路接続用テープは、当該回路接続用テープの終端部と前記エンドテープの先端部の接合部であって、回路接続用テープの接着剤層が形成されていない側に貼り付けられている粘着テープを更に有する、接着材リール。」 (3)対比 そこで、本願補正発明1と引用発明1とを対比すると、 ア 後者の「筒状の巻芯」、「巻芯の外面に固定されているエンドテープ」、「『筒状の巻芯』に巻かれる『回路接続用テープ』」、「『回路接続用テープの終端部と前記エンドテープの先端部の接合部』『に貼り付けられている粘着テープ』」、「基材」、「接着剤層」、及び「接着材リール」は、それぞれ、前者の「円筒形状の巻芯」、「巻芯の周面に設けられたリード」、「巻芯に巻きつけられる接着フィルム」、「リードと前記接着フィルムとを接続する接続テープ」、「支持フィルム」、「接着層」、及び「接着フィルム用リール」に相当する。 イ 後者の「回路接続用テープ」は、幅が0.5?3.0mmのテープ状の基材及びその一方面上に形成された幅が0.5?3.0mmの接着剤層を有するから、「回路接続用テープ」の幅は、5?3.0mmと認められ、前者の「接着フィルム」と後者の「回路接続用テープ」とは、「幅0.5?0.6mm以下」の範囲で重複するのであるから、「幅0.6mm以下」の点で共通し、「支持フィルムと前記支持フィルム上に形成される接着層とを含み」との概念で共通する。 ウ 後者の「粘着テープ」は、回路接続用テープの終端部と前記エンドテープの先端部の接合部であって、回路接続用テープの接着剤層が形成されていない側に貼り付けられているものであるから、前者の「接続テープ」と後者の「粘着テープ」とは、「リードと支持フィルムの接着層が形成されていない面とを接続する」との概念で共通する。 したがって、両者は、 「円筒形状の巻芯と、 前記巻芯の周面に設けられたリードと、 前記巻芯に巻きつけられる幅0.6mm以下の接着フィルムと、 前記リードと前記接着フィルムとを接続する接続テープと、を備え、 前記接続テープによる前記リードと前記接着フィルムとの接続強度が5.0N以上であり、 前記接着フィルムと前記接続テープとの接着面長さと、前記リードと前記接続テープとの接着面長さとの比は、3:7?7:3であり、 前記接着フィルムは、支持フィルムと前記支持フィルム上に形成される接着層とを含み、 前記接続テープは、前記リードと前記支持フィルムの前記接着層が形成されていない面とを接続する、接着フィルム用リール。」 の点で一致し、以下の点で、相違する。 [相違点1] 接続テープによるリードと接着フィルムとの接続強度が、本願補正発明1が、「5.0N以上」であるのに対し、引用発明1は、明らかでない点。 [相違点2] 接着フィルムと接続テープとの接着面長さと、リードと接続テープとの接着面長さとの比が、本願補正発明1が、「3:7?7:3」であるのに対し、引用発明1は、明らかでない点。 (4)判断 上記各相違点について、以下、検討する。 ア [相違点1]について 特開2007-92028号公報には「液晶パネルやPDP等の分野で使用される回路接続部材の場合、機械がリール3から接着剤テープ20を引き出すときの力は最低でも約500gfである」(【0030】参照。)と記載されていることから、接着フィルム用リールの分野において、接着用フィルムを引き出す力は約500gf(4.9N)以上であることが技術常識(以下「技術常識」という。)といえるものである。 また、接着フィルム用リールの分野において、接続フィルムをリードから外れにくくすることは、当業者が当然考慮すべき事項である。 そして、引用発明1において、接続テープによって、リードと接着フィルムとを接続するに際し、上記技術常識を参酌し、その接続強度を5.0N以上とすることは、当業者が当然試行し、採用しうる程度の事項である。 してみると、引用発明1に、前記技術常識を参酌し、相違点1に係る本願補正発明1とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。 イ [相違点2]について 引用文献1の図4から、異方導電テープ5(回路接続用テープ)の基材6と粘着テープ16との接着面長さと、テープ12と粘着テープ16との接着面長さとの比が、約1:1であることが看取できる。 そして、耐引張力の観点に立てば、接続テープに対して接着フィルムとリードとの接着力が等しければ、接続テープに対する接着フィルムとリードとの接着面の長さ比を等しくすることが一番強固な接着態様であって、通常、採用し得る態様である。 してみると、引用発明1において、回路接続用テープの基材と粘着テープとの接着面長さと、テープと粘着テープとの接着面長さとの比は、実質的に1:1であると推認できる。 仮に、引用発明1において、回路接続用テープの基材と粘着テープとの接着面長さと、テープと粘着テープとの接着面長さとの比が、1:1でなく、不明であったとしても、接着フィルム用リールの分野において、接続フィルムをリードから外れにくくすることは、当業者が当然考慮すべき事項であることからすれば、回路接続用テープの基材と粘着テープとの接着面長さと、テープと粘着テープとの接着面長さとの比を、1:1とし、上記相違点2係る本願補正発明1とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。 そして、本願補正発明1の発明特定事項によって奏される効果も、引用発明、上記技術常識から、当業者が予測しうる範囲内のものである。 なお、請求人は、「粘着テープ16がどのような接続強度を有していれば異方性導電テープ5をエンドテープ12から外れにくくすることができるかについて全く検討がなされていません。」と主張する(審判請求書4頁11?13行)。 しかし、上記技術常識にあるように、接着用フィルムを引き出す力が約500gf(4.9N)以上であるから、接続テープによるリードと接着フィルムとの接続強度を5.0N以上とすることは、当業者が当然採用しうる事項といっても過言でない。 また、発明の詳細な説明に記載の実施例には、幅0.6mm以下の接着フィルムについて、接着フィルムと接続テープとの接着面長さと、リードと接続テープとの接着面長さとの比が「1:1」の場合にテープ外れ発生率が0%である実施例が示されているが(実施例4参照。)、比が「3:7?7:3」の全域にわたって、テープ外れ発生率が0%であることを立証する実施例は記載されていないから、接着フィルムと接続テープとの接着面長さと、リードと接続テープとの接着面長さとの比を「3:7?7:3」とすることの臨界的意義が示されているとはいえない。 なお、本願補正発明1に包含される比較例4、5であっても、テープ外れが発生することが示されているから(【0068】【表1】参照。)、本願補正発明1の発明特定事項だけでは、本願発明の課題を解決する手段が記載されているものとはいえない。 よって、本願補正発明1は、引用発明、上記技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際、独立して特許を受けることが出来ない。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成30年11月26日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される次のとおりのものである。 「円筒形状の巻芯と、 前記巻芯の周面に設けられたリードと、 前記巻芯に巻きつけられる幅1mm未満の接着フィルムと、 前記リードと前記接着フィルムとを接続する接続テープと、を備え、 前記接続テープによる前記リードと前記接着フィルムとの接続強度が5.0N以上であり、 前記接着フィルムと前記接続テープとの接着面長さと、前記リードと前記接続テープとの接着面長さとの比は、3:7?7:3である、接着フィルム用リール。」(以下「本願発明」という。) 2 引用例 平成30年4月17日付けの拒絶の理由に引用された引用例、及び、その記載内容は上記「第2 3 (2)引用例」に記載したとおりである。 3 対比・判断 本願発明は、実質的に、本願補正発明1の「接着フィルム」に関して、「幅0.6mm以下」を「幅1mm未満」とし、「支持フィルムと前記支持フィルム上に形成される接着層とを含み」との限定を省き、「接続テープ」に関して、「リードと支持フィルムの接着層が形成されていない面とを接続する」との限定を省くものである。 そうすると、本願発明と引用発明とを対比すると、上記「第2 3 (3)対比」での検討を勘案すると、両者は、 「円筒形状の巻芯と、 前記巻芯の周面に設けられたリードと、 前記巻芯に巻きつけられる幅1mm未満の接着フィルムと、 前記リードと前記接着フィルムとを接続する接続テープと、を備える、接着フィルム用リール。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点1] 接続テープによるリードと接着フィルムとの接続強度が、本願発明が、「5.0N以上」であるのに対し、引用発明1は、明らかでない点。 [相違点2] 接着フィルムと接続テープとの接着面長さと、リードと接続テープとの接着面長さとの比が、本願発明が、「3:7?7:3」であるのに対し、引用発明1は、明らかでない点。 そして、上記「第2 3 (4)判断」における検討内容を踏まえれば、本願発明は、引用発明、及び上記技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明、及び上記技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2019-12-26 |
結審通知日 | 2020-01-07 |
審決日 | 2020-01-20 |
出願番号 | 特願2015-39413(P2015-39413) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(B65H)
P 1 8・ 121- Z (B65H) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | ▲高▼辻 将人 |
特許庁審判長 |
尾崎 淳史 |
特許庁審判官 |
藤本 義仁 畑井 順一 |
発明の名称 | 接着フィルム用リール及びこれに使用される連結体 |
代理人 | 特許業務法人田治米国際特許事務所 |