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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C12P
管理番号 1360358
審判番号 不服2018-15168  
総通号数 244 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-11-15 
確定日 2020-03-04 
事件の表示 特願2015-561700「バイオマスの加工およびエネルギー」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 9月12日国際公開、WO2014/138551、平成28年 6月16日国内公表、特表2016-517268〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年3月7日(パリ条約による優先権主張 平成25年3月8日の14出願、及び平成25年3月15日の1出願、いずれも米国)を国際出願日とする出願であって、平成29年11月17日付け拒絶理由通知に対して、平成30年2月8日に意見書及び補正書が提出され、同年7月5日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月15日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。


第2 平成30年11月15日付け手続補正についての補正却下の決定
[結論]
平成30年11月15日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正
本件補正は、願書に添付された特許請求の範囲の請求項1に、
(補正前)「【請求項1】
糖化バイオマス材料を燃焼してエネルギーを生成することを含む、エネルギーを発生する方法であって、前記糖化バイオマス材料が、細胞又はタンパク質材料を含み、且つ前記糖化バイオマス材料は、糖化の前に処理して難分解性を低下したリグノセルロース材料由来のリグノセルロース残渣を含む、方法であって、
前記糖化バイオマス材料が、無機固体を含み、
前記無機固体が、珪藻土、セライト、シリカ、軽石、パーライト、アルミナ、ゼオライト、砂およびそれらの混合物からなる群から選択される、
方法。」とあったものを、
(補正後)「【請求項1】
糖化バイオマス材料を燃焼してエネルギーを生成することを含む、エネルギーを発生する方法であって、前記糖化バイオマス材料が、細胞又はタンパク質材料を含み、且つ前記糖化バイオマス材料は、糖化の前に処理して難分解性を低下したリグノセルロース材料由来のリグノセルロース残渣を含む、方法であって、
前記糖化バイオマス材料が、無機固体を含み、
前記無機固体が、珪藻土、セライト、シリカ、軽石、パーライト、アルミナ、ゼオライト、砂およびそれらの混合物からなる群から選択され、
前記リグノセルロース材料を、加速電子で処理して難分解性を低下し、前記加速電子が、0.3MeV?5MeVの平均エネルギーを有し、前記リグノセルロース材料が、10Mrad?100Mradの総線量で処理される、
方法。」とする補正事項を含むものである。

2.目的要件について
上記補正事項によって、補正前の請求項1に記載されていた「処理」について、「前記リグノセルロース材料を、加速電子で処理して難分解性を低下し、前記加速電子が、0.3MeV?5MeVの平均エネルギーを有し、前記リグノセルロース材料が、10Mrad?100Mradの総線量で処理される」ことに補正された。
上記の補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当すると認められる。
そこで、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3.独立特許要件について
(1)引用例
(1-1)引用例1
原査定で文献1として引用された、特開2012-11382号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審が付したものである。
ア 「【課題】バイオマス(例えば、植物バイオマス、動物バイオマス、および都市廃棄物バイオマス)を加工して、燃料などの有用な産物を生産する。
【解決手段】セルロースおよび/またはリグノセルロース材料を含むバイオマス原料を生の形態で受け取り、下流プロセスによって原料として用いるために物理的に調製し貯蔵する供給材料調製サブシステム110、原料の平均分子量および結晶化度を低減することによって主な生産プロセスで用いるための原料を調製する前処理サブシステム114、有用な産物(例えば、エタノール、他のアルコール、医薬、および/または食品産物)を生じさせる一次プロセスサブシステム118、および後処理サブシステム122を含むシステム100による。」(要約)

イ 「【請求項1】
0.5g/cm^(3)未満の嵩密度を有するバイオマス原料を輻射線照射、音波処理、熱分解、および酸化からなる群より選択される処理方法を用いて処理することにより調製された、処理されたバイオマス原料を、微生物を用いて産物に変換する工程を含む、バイオマス原料の分子構造を変化させる方法であって、
処理が電子線を照射する工程を少なくとも含み、電子線を照射する工程は、電子線以外の輻射線の照射、音波処理、熱分解、および酸化からなる群より選択される処理と組み合わされてもよい、前記方法。
・・・・
【請求項11】
前記電子線は、電離放射線が少なくとも50 kGyの総線量で適用される、請求項1記載の方法。
・・・・
【請求項18】
処理されたバイオマス原料を酵素的加水分解に供する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項19】
バイオマス原料が農業廃棄物を含む、請求項1記載の方法。」(特許請求の範囲)

ウ 「【0022】
いくつかの態様において、前処理方法の1つは輻射線照射であるか、またはそれを含む。
【0023】
いくつかの態様において、前処理方法の少なくとも1つ、例えば、輻射線照射は、バイオマス原料が空気に暴露されている間にバイオマス原料に対して行われる。
【0024】
圧力を利用することができる。例えば、前処理方法の少なくとも1つ、例えば、輻射線照射は、約2.5気圧を超える圧力下、例えば5または10気圧を超える圧力下で、バイオマスに対して行うことができる。
【0025】
該プロセスは、バイオマスの酸化、熱分解、または蒸気爆発をさらに含むことができる。
【0026】
バイオマス原料の例は紙、紙産物、紙廃棄物、木材、パーティクルボード、おがくず、農業廃棄物、汚水、サイレージ、草、もみ殻、バガス、綿、ジュート、麻、亜麻、竹、サイザル麻、マニラ麻、ワラ、トウモロコシ穂軸、トウモロコシ茎葉、スイッチグラス、アルファルファ、干し草、ヤシ毛、合成セルロース、海草、海藻、またはこれらの混合物を含む。
【0027】
バイオマスは天然または合成材料とすることができるか、あるいはそれを含むことができる。
【0028】
燃料の例は水素、アルコール、および炭化水素の一つまたは複数を含む。例えば、アルコールはエタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、またはこれらの混合物であり得る。
【0029】
微生物は、例えば、細菌または酵母であり得る。
【0030】
変換は、材料を可燃性燃料などの産物まで発酵させることを含むことができる。
【0031】
照射は、例えば、ガンマ線、電子線、または約100nm?約280nmの波長を有する紫外線C輻射線などの電離放射線を利用して行うことができる。
【0032】
電離放射線は電子線放射線を含むことができる。
【0033】
例えば、輻射線は約100kGy?約1500kGyの間の総線量、例えば約5?約100kGy/日、または10kGy/s?約100kGy/sの線量率で適用することができる。」

エ 「【0075】
さらに、セルロースの分子量の低減を助けるために、酵素、例えば、セルロース分解酵素および/または膨潤剤を本明細書において記載された任意の方法において利用することができる。」

オ 「【0162】
バイオマスを処理するためのシステム
図1は、バイオマス、特に、有意なセルロースおよびリグノセルロース成分を持つバイオマスを有用な産物および副産物に変換するためのシステム100を示す。システム100は供給材料調製サブシステム110、前処理サブシステム114、一次プロセスサブシステム118、および後処理サブシステム122を含む。供給材料調製サブシステム110はバイオマスを生の形態で受け取り、下流プロセスによって原料として用いるためにそのバイオマスを物理的に調製し、(例えば、バイオマスのサイズを低減し、かつバイオマスをホモゲナイズし)、その生および原料形態双方のバイオマスを貯蔵する。有意なセルロースおよびリグノセルロース成分を持つバイオマス原料は、原料を有用な産物に加工する(例えば、原料を発酵してエタノールとする)のを困難にし得る、高い平均分子量および結晶化度を有することができる。
【0163】
前処理サブシステム114は供給材料調製サブシステム110からの原料を受け取り、例えば、原料の平均分子量および結晶化度を低減することによって主な生産プロセスで用いるための原料を調製する。一次プロセスサブシステム118は前処理サブシステム114からの前処理原料を受け取り、有用な産物(例えば、エタノール、他のアルコール、医薬、および/または食品産物)を生じさせる。いくつかの場合において、一次プロセスサブシステム118の産出物は直接的に有用であるが、他の場合には後処理サブシステム122によって提供されるさらなる加工を必要とする。後処理サブシステム122は、それを必要とする一次プロセスサブシステム118からの産物ストリームの加工(例えば、エタノール蒸留および変性)、ならびに他のサブシステムからの廃棄物ストリームのための処理をさらに提供する。いくつかの場合において、サブシステム114、118、122の副産物は、二次的な産物としてかつ/またはシステム100の全効率を増加させることにおいて、直接的または間接的に有用であり得る。例えば、後処理サブシステム122は、他のサブシステムにおけるプロセス水として用いるためにリサイクルすべき処理された水を生じさせることができ、かつ/または蒸気および/もしくは電気を生じさせるボイラー用の燃料として用いることができる、可燃性廃棄物を生じさせることができる。」

カ 「【図1】



キ 「【0208】
前処理
物理的に調製された原料を、例えば、原料の平均分子量および結晶化度を低減し、かつ/または原料の表面積および/もしくは多孔度を増加させることによって、主な生産プロセスで用いるために前処理することができる。前処理は、照射、音波処理、酸化、熱分解、および蒸気爆発の一つまたは複数を含むことができる。種々の前処理システムおよび方法はこれらの技術の2つ、3つ、または4つの組み合わせで用いることができる。」

ク 「【0247】
電子線
いくつかの態様において、電子線を放射線源として用いる。電子線は高い線量率(例えば、秒当たり10、50、またはさらには100kGy)、高いスループット、より少ない封じ込め、およびより少ない閉じ込め機器の利点を有する。電子は分子鎖切断を引き起こすのにより効果的でもあり得る。加えて、4?10MeVのエネルギーを有する電子は、40mmなどの5?30mm以上の透過深度を有することができる。
【0248】
電子線は、例えば、静電気発生器、カスケード発生器、変換発生器、走査系を持つ低エネルギー加速器、線形陰極を持つ低エネルギー加速器、線形加速器、およびパルス加速器によって生成させることができる。電離放射線源としての電子は、例えば、0.5インチ未満、例えば、0.4インチ未満、0.3インチ、0.2インチ、または0.1インチ未満の材料の比較的薄いパイルで有用であり得る。いくつかの態様において、電子線の各電子のエネルギーは約0.3MeV?約2.0MeV(100万電子ボルト)、例えば、約0.5MeV?約1.5MeV、約0.7MeV?約1.25MeVである。」

ケ 「【0429】
一次プロセス
発酵
一般に、種々の微生物は、例えば、前処理されたバイオマス材料の発酵に作用することによって、燃料などの多数の有用な産物を生産することができる。例えば、アルコール、有機酸、炭化水素、水素、タンパク質、またはこれらの材料のうちのいずれかの混合物は発酵または他のプロセスによって生産することができる。
【0430】
微生物は天然微生物または操作された微生物であり得る。例えば微生物は、細菌、例えばセルロース分解性細菌、真菌、例えば、酵母、植物、または原生生物、例えば海藻、原生動物、または真菌様原生生物、例えば粘菌であり得る。生物が適合性を有する場合、生物の混合物を利用することができる。
【0431】
セルロースを含む材料の分解を助けるために、一つまたは複数の酵素、例えばセルロース分解酵素を利用することができる。いくつかの態様において、セルロースを含む材料を、例えば材料および酵素を水溶液中で混合することによって、まず酵素で処理する。次いで、この材料を微生物と混合することができる。他の態様において、セルロース、一つまたは複数の酵素、および微生物を含む材料を、例えば水溶液中で混合することによって同時に混合する。
【0432】
また、セルロースを含む材料の分解を助けるために、照射後に材料を熱、化学物質(例えば、鉱酸、塩基、または次亜塩素酸ナトリウムなどの強酸化剤)、および/または酵素で処理することができる。
【0433】
発酵の際、セルロース分解性加水分解または糖化工程から放出された糖を、酵母などの発酵微生物によって、例えばエタノールまで発酵する。」

コ 「【0449】
後処理
・・・・
【0459】
廃棄物燃焼
バイオマスからのアルコールの産生の結果、プラントの他の部分で使用すべき蒸気および電気を生じさせるのに有用な種々の副産物ストリームが生産され得る。例えば、副産物ストリームの燃焼から生じた蒸気を蒸留プロセスで用いることができる。もう1つの例として、副産物ストリームの燃焼から生じた電気を用いて、前処理で用いる電子線ジェネレーターおよび超音波トランスデューサに電力を与えることができる。
【0460】
蒸気および電気を生じさせるのに用いる副産物はプロセスを通じて多数の供給源に由来する。例えば、廃水の嫌気性消化により、メタンが多く廃棄物バイオマス(スラッジ)が少ないバイオガスが生じる。もう1つの例として、蒸留後固体(例えば、前処理および一次処理から残存している未変換リグニン、セルロース、およびヘミセルロース)を燃料として用いることができる。
【0461】
バイオガスを、電気発生器に連結された燃焼エンジンまで迂回させて、電気を生じさせる。例えば、バイオガスを、火花点火天然ガスエンジンのための燃料源として用いることができる。もう1つの例として、バイオガスを直接噴射式天然ガスエンジンのための燃料源として用いることができる。もう1つの例として、バイオガスを燃焼タービンのための燃料源として用いることができる。追加的にあるいは代替的に、燃焼エンジンは熱電供給配置に配置することができる。例えば、燃焼エンジンからの廃熱を用いて、プラント全体に熱水または蒸気を提供することができる。
【0462】
スラッジおよび蒸留後固体を燃焼して、熱交換器を通って流れる水を熱する。いくつかの態様において、熱交換器を通じて流れる水を蒸発させ、過熱して蒸気とする。ある態様において、この蒸気を前処理リアクター内で、ならびに蒸留および蒸発プロセスにおける熱交換に用いる。追加的にあるいは代替的に、蒸気が膨張して、電気発生器に連結された多段階蒸気タービンに動力を与える。蒸気タービンを出る蒸気は冷却水で凝縮され、蒸気を再度加熱するための熱交換器に戻される。いくつかの態様において、熱交換器を通る水の流速を制御して、電気発生器に連結された蒸気タービンから出力された標的電気を得る。例えば、水を熱交換器に加えて、蒸気タービンが閾値条件を超えて動作することを確実にすることができる(例えば、タービンは電気発生器を回すのに十分なほど早く回転する)。
【0463】
特定の態様を記載してきたが、他の態様が可能である。
【0464】
例として、バイオガスは、電気発生器に連結された燃焼エンジンまで迂回させると記載されているが、ある態様においては、バイオガスに燃料改質装置を通過させて水素を発生させることができる。次いで、水素を燃料セルにより電気に変換する。
【0465】
もう1つの例として、バイオマスはスラッジおよび蒸留後固体とは別に燃焼されると記載されているが、ある態様においては、廃棄物副産物の全てを一緒に燃焼させて蒸気を生じる。」

サ 「【0478】
副産物
リグニン残渣
前記したように、一次プロセスおよび前処理プロセスからのリグニン含有残渣は、高い/中程度のエネルギー燃料として価値を有し、かつプラントプロセスにおいて用いるための動力および蒸気を発生させるために使用することができる。しかしながら、そのようなリグニン残渣は新しいタイプの固体燃料であり、プラント境界の外ではこれに対する需要はほとんどなく、輸送のためにこれを乾燥させるコストがその潜在的価値から差し引かれるだけである。いくつかの場合において、リグニン残渣のガス化によって、これをより低コストでより価値の高い産物に変換することができる。」

(1-2)周知例
原査定で引用された、特開2002-238590号(以下、「周知例」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【0030】
【実施例】図1に示す乳酸製造プロセスに従って、古紙から乳酸を製造した。古紙はオフィス紙が主体であり、セルロース含有量約80%(ドライベース重量%)、ヘミセルロース含有量約10%、リグニン含有量約1%であった。
【0031】古紙は、5mm程度に裁断し、その1kgを容量6Lの温水ジャケットの付いた2軸のディスク型撹拌槽(糖化槽)に投入した。糖化槽に水4Lと、約300FPU/g-タンパク質のセルラーゼ(阪急バイオインダストリー社製のセルロシンT2、またはトリコデルマ属菌由来)100g-タンパク質を加え、温度50℃、pH約4.5に保って、撹拌下で約40時間反応させた。反応後、ベルトプレスによって固液分離し、グルコース濃度11%の糖液4.1Lと0.8kgの固形物(糖液残渣)を得た。
【0032】得られた糖液を孔径0.2μmのフィルターに通して除菌した後、容量5Lの培養槽(東京理科機械社製の微生物用ファーメンターMBF-500ME)に入れ、各々別途加熱殺菌した水、無機塩を加え、以下の組成の培地2.2Lを作製した。
・糖液(グルコースとして):100g/L
・(NH_(4))_(2)SO_(4):3.0g/L
・KH_(2)PO_(4):0.3g/L
・MgSO_(4)・7H_(2)O:0.2g/L
・ZnSO_(4)・7H_(2)O:0.04g/L
【0033】培養槽に、United States Department of Agriculture, Agricultural Research Service, National Center for Agricultural Utilization Researchより入手したリゾプス・オリザエ(Rhizopus oryzae)NRRL395株の培養液を加え、温度30℃、pH5?6、通気量0.25vvmに保ち、4日間発酵を行った。培地のpHは、5.0Nのアンモニア水を投入するpH自動調整器を用いて調整した。
【0034】この乳酸発酵の後、乳酸アンモニウム含有量8.2%の発酵液が4.4L得られた。発酵液は珪藻土をろ過助剤としたフィルタープレスによってSS分(発酵残渣)を取り除き、次いで(株)トクヤマ製の陽イオン交換膜(商品名:ネオセプタCMX)を11枚と陰イオン交換膜(商品名:ネオセプタAMX)を10枚(共に有効膜面積2cm^(2)/枚)を交互に組み込んだ電気透析装置を用い、2A/dm^(2)で3時間通電し、乳酸アンモニウム濃度18%の濃縮液1.9Lと乳酸アンモニウム濃度0.5%の脱塩溶液2.4Lを得た。次に濃縮液を(株)トクヤマ製のバイポーラ膜(商品名:ネオセプタBP-1、有効膜面積2cm^(2)/枚)10枚と陽イオン交換膜(商品名:ネオセプタCMX)11枚を交互に設置した電気透析装置を用い10A/dm^(2)で5時間通電し濃度18%の乳酸水溶液1.9Lを得た。
【0035】この乳酸製造において発生した乳酸以外の固形有機物、即ち糖化残渣、発酵残渣0.9kgを混合して流動層型焼却炉で燃焼させ、発生したガスを水管式ボイラに通し、3kgの低圧蒸気を発生させた。」

(2)引用発明
セルロースやリグノセルロースにセルロース分解酵素を作用させると糖が生成すること、セルロース材料やリグノセルロース材料を含むバイオマスをセルロース分解酵素で処理するとバイオマス糖化物が得られることは明らかであるから、引用例1の記載事項より、引用例1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「セルロースおよび/またはリグノセルロース材料を含むバイオマス原料を受け取り貯蔵する供給材料調製工程(110)、
原料の平均分子量および結晶化度を低減する原料の前処理工程(114)、
有用な産物と副産物とを生じさせる一次プロセス工程(118)、及び
後処理工程(122)、
を含む、バイオマスを加工して有用な産物を生産する方法であって、
前処理工程(114)は、バイオマス原料に電子線を照射する処理を含み、前記電子線は電子線エネルギーが約0.3MeV?約2.0MeVであり、少なくとも50 kGyの総線量で適用され、
一次プロセス工程(118)は、前処理されたバイオマス原料をセルロース分解酵素で処理することで有用な産物(糖)と副産物とを含むバイオマス糖化物を得ることを含む、前記方法。」

4.対比
補正発明(上記第2の1.の(補正後)の請求項1の発明)と引用発明を対比する。
引用発明の「セルロース分解酵素で処理」は補正発明の「糖化」に相当し、引用発明の「セルロース分解酵素で処理」で得られる、セルロース分解酵素を含む「バイオマス糖化物」は、補正発明の「タンパク質材料」を含む「糖化バイオマス材料」に相当すると認められる。
また、引用発明の「バイオマスを加工して有用な産物を生産する方法」は、補正発明の「糖化バイオマス材料を燃焼してエネルギーを生成することを含む、エネルギーを発生する方法」と、「バイオマス材料を糖化することを含む方法」である点で共通すると認められる。
さらに、引用発明の「電子線を照射する処理」は、補正発明の「加速電子で処理して難分解性を低下」させる処理に相当すると認められ、電子線のエネルギー強度に関して、引用発明の「電子線エネルギーが約0.3MeV?約2.0MeV」とは、約0.3MeV?約2.0MeVの範囲のいずれかのエネルギー強度で電子線エネルギーを照射することを特定すると認められる一方、補正発明の「前記加速電子が、0.3MeV?5MeVの平均エネルギーを有し」も、0.3MeV?5MeVの範囲のいずれかの数値の平均エネルギー強度で加速電子を照射することを特定すると認められる。そうすると、引用発明の「電子線エネルギーが約0.3MeV?約2.0MeV」と、補正発明の「前記加速電子が、0.3MeV?5MeVの平均エネルギーを有し」とは、照射するエネルギーの強度が約0.3MeV?約2.0MeVの範囲において重複しているから、引用発明の「電子線エネルギーが約0.3MeV?約2.0MeV」は、補正発明の「前記加速電子が、0.3MeV?5MeVの平均エネルギーを有し」に相当すると認められる。

したがって、両者は、
「バイオマス材料を糖化することを含む方法であって、前記糖化バイオマス材料が、細胞又はタンパク質材料を含み、且つ前記糖化バイオマス材料は、糖化の前に処理して難分解性を低下したリグノセルロース材料由来のリグノセルロース残渣を含む、方法であって、
前記リグノセルロース材料を、加速電子で処理して難分解性を低下し、前記加速電子が、0.3MeV?5MeVの平均エネルギーを有する、方法。」である点で一致し、以下の点で相違すると認められる。

(相違点1)
バイオマス材料を糖化することを含む方法について、補正発明では「糖化バイオマス材料を燃焼してエネルギーを生成することを含む、エネルギーを発生する方法」であることが特定されているのに対して、引用発明では特定されていない点。

(相違点2)
「加速電子で処理して難分解性を低下する」ための処理について、補正発明では「前記リグノセルロース材料が、10Mrad?100Mradの総線量で処理される」と特定されているのに対して、引用発明では「少なくとも50 kGyの総線量で適用される」ものである点。

(相違点3)
補正発明には「前記糖化バイオマス材料が、無機固体を含み、前記無機固体が、珪藻土、セライト、シリカ、軽石、パーライト、アルミナ、ゼオライト、砂およびそれらの混合物からなる群から選択され」ることが特定されているのに対して、引用発明では特定されていない点。

5.判断
(1)相違点1について
引用例1の段落【0163】(上記オ)、段落【0460】(上記コ)、及び段落【0478】(上記サ)の記載から、引用例1には、一次プロセス工程(118)において生じる副産物にはリグニン含有残渣のような可燃性廃棄物が含まれること、一次プロセス工程(118)で得られるバイオマス糖化物から可燃性廃棄物を分離して、可燃性廃棄物を蒸気や電気を生じさせるボイラー燃料として用いることが示されていると認められる。そして、バイオマス糖化物に含まれる有用な産物(糖)は水に可溶であり、リグニン含有残渣のような可燃性廃棄物は水に不溶であることは明らかだから、有用な産物(糖)と可燃性廃棄物とは分離できることが理解される。
そうすると、引用発明の一次プロセス工程で得られた糖化バイオマス材料に含まれる副産物(可燃性廃棄物)を燃焼させてエネルギーを生成することは当業者が容易になし得ることであり、引用発明においてそのことについて「糖化バイオマス材料を燃焼してエネルギーを生成することを含む、エネルギーを発生する方法」などと特定することも当業者が適宜なし得ることである。

(2)相違点2について
1Gyは100radであるから、引用発明の「少なくとも50 kGy」とは「少なくとも5Mrad」に相当する。そして、引用例1の段落【0033】(上記ウ)には「例えば、輻射線は約100kGy?約1500kGyの間の総線量・・・で適用することができる。」と、10?150Mradの総線量とすることが記載されている。
そうすると、引用発明において電子線照射の総線量について「10Mrad?100Mradの総線量で処理される」ことを特定することに格別の困難性はない。

(3)相違点3について
補正発明の「前記糖化バイオマス材料が、無機固体を含み・・・」にいう「糖化バイオマス材料」とは、文言どおりに解釈すれば、バイオマス材料を糖化したものであると認められるから、「前記糖化バイオマス材料が、無機固体を含み・・・」とは、糖化したバイオマス材料が無機固体を含んでいることを特定していると認められる(A)。

一方、審判請求書において審判請求書人は「引用文献1に記載された発明は、バイオマス材料が珪藻土等の無機固体を含む点が特定されていません。本願発明では、段落0053等に「単離された固体/残渣は、例えばセライトなどの珪藻土、シリカガラス、火山性の非晶質ガラス、パーライトなどのガラス、セルロースもしくはリグノセルロース材料、シリカ、アルミナ、ゼオライト、砂、またはこれらの濾過助剤のいずれかの混合物をはじめとする無機材料を含むことができる」との記載がされております。」と、無機固体は濾過助剤である旨の主張をしている。
そして、補正発明には「糖化バイオマス材料を燃焼してエネルギーを生成する」と、補正発明で「糖化バイオマス材料」と呼ばれるものを燃焼することが特定されており、この点に関して本願明細書には、
「【0045】
コジェネレーション施設200への燃料(例えば、様々な工程からの残渣、共生成物、不純物)の流れおよびこれらの燃料から発生したエネルギーから原料変換工程への流れの例を、図2に示す。図には、様々な工程を包囲するコジェネレーションプラント200(例えば、より大きなバイオプロセシングプランの一部)が示されている。両方向の矢印は、コジェネレーションプラントから様々な工程へのエネルギーの移動、および工程からコジェネレーションプラントまでの材料の移動を示す。片側方向の矢印は、バイオマス加工プラントでの工程に可能な流れを示す。」、


」、
「【0049】
一次工程2、240(例えば、発酵)により、例えば糖化残渣中に見出される材料に加えて、酵母細胞、細菌細胞、真菌細胞またはこれらの細胞の混合物を含む固体残渣が発生する。例えば動物および有機体のための栄養素としての使用に加えて、残渣をコジェネレーション工程に投入し、エネルギーを所望の発酵温度の維持に用いることができる。」、
「【0053】
単離された固体/残渣は、例えばセライトなどの珪藻土、シリカガラス、火山性の非晶質ガラス、パーライトなどのガラス、セルロースもしくはリグノセルロース材料、シリカ、アルミナ、ゼオライト、砂、またはこれらの濾過助剤のいずれかの混合物をはじめとする無機材料を含むことができる。」と記載されている。
そうすると、上記審判請求人の主張、及び上記本願明細書の記載からみて、補正発明においてエネルギーを生成するための燃料として燃焼されるのは、糖化したバイオマス材料を濾過することで分離した固体残渣成分であると認められる。
したがって、相違点3にいう「糖化バイオマス材料が、無機固体を含み・・・」とは、糖化バイオマス材料を濾過助剤を用いて濾過して得られる固体残渣が濾過助剤に由来する無機固体を含むことを意味していると認められる(B)。

そこで、「糖化バイオマス材料が、無機固体を含み・・・」が上記(A)、(B)それぞれである場合について以下検討する。
(A)の場合
引用例1には一次プロセス工程(118)の糖化に供するバイオマス原料が農業廃棄物を含むことが記載されており(【請求項19】(上記イ))、段落【0026】(上記ウ))、引用発明のバイオマス原料が農業廃棄物を含むものである場合、バイオマス原料は砂などの無機固体を不可避的に含むといえる。そして、引用発明の前処理工程や一次プロセス工程において、バイオマス原料から砂などの無機固体を全て除去するような処理が存在しているとは認められない。
そうすると、引用発明においてバイオマス原料が農業廃棄物を含むものである場合、セルロース分解酵素で糖化処理されたバイオマス糖化物は砂などの無機固体を含むと認められるから、相違点3は実質的な相違点ではないか、当業者が容易になし得ることである。

(B)の場合
発酵液や酵素反応液のような反応混合液が固形成分を含むものであって、反応混合液中の目的物が液体に可溶性である場合、反応混合液を濾過して目的物を含む液体成分から不要な固形成分を濾過により分離すること、その際に粉末状の濾過助剤を使用することは当業者の常套手段であると認められる。そして、濾過助剤を使用すると除去された不要な固形成分には多少の濾過助剤が混在すると考えられるところ、不要な固形成分を濾過助剤を除去することなく分離して焼却などすることも当業者の常套手段であると認められる。また、上記周知例に記載されるように、珪藻土等を濾過助剤として使用することも当該技術分野で通常に行われているから、引用発明においてバイオマス糖化物から液体に可溶である有用な産物(糖)を分離する際に、珪藻土等を濾過助剤として使用して濾過することで不要な固体成分を除去することは当業者が容易になし得ることであり、その場合、固体成分の分画には濾過助剤に由来する無機固体が含まれることになるといえる。
したがって、相違点3は当業者が容易になし得ることである。

そして、補正発明において引用例1の記載から予測できない効果が奏されたとも認められない。
よって、補正発明は引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

6.審判請求人の主張について
審判請求人は審判請求書において、概ね次の点を主張している。
ア 本願発明は「0.3MeV?5MeVの平均エネルギーを有」するため、エネルギーの範囲が相違する。
イ 引用文献1に記載された発明は、バイオマス材料が珪藻土等の無機固体を含む点が特定されていない。本願発明では、段落0053等に「単離された固体/残渣は、例えばセライトなどの珪藻土、シリカガラス、火山性の非晶質ガラス、パーライトなどのガラス、セルロースもしくはリグノセルロース材料、シリカ、アルミナ、ゼオライト、砂、またはこれらの濾過助剤のいずれかの混合物をはじめとする無機材料を含むことができる」との記載がされている。

アについて
上記4.で述べたとおり、補正発明と引用発明とは、電子線のエネルギー強度が約0.3MeV?約2.0MeVの範囲において重複していると認められる。

イについて
上記5.(3)のとおり、無機材料を含むことは、実質的な相違点でないか、当業者が容易になし得ることである。

(上申書について)
審判請求人は平成31年3月1日付け上申書を提出し、補正案を示しているが、補正案の請求項14に特定される固体リグノセルロース残渣は引用発明の副産物に相当すると認められ、副産物(固体リグノセルロース残渣を含む可燃性廃棄物)を燃焼する際に乾燥させておくことは常套手段であると認められる。また、引用例1には、可燃性廃棄物を発電のためのボイラーで燃焼させることや、図1に示されるバイオマスを処理するためのシステム(100)全体の効率を向上させるために可燃性廃棄物から発生させたエネルギーを利用することも教示されている(段落【0163】、段落【0478】など)と認められるから、補正案の請求項14の発明も、補正発明と同様に、引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

7.小括
以上のとおり、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではなく、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しないから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?23に係る発明は、平成30年2月8日の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?23に記載の事項により特定される発明であると認める。

2.原査定の理由
原査定の理由は、本願の請求項1?23に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1(引用例1)に記載されたに発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

3.当審の判断
本願の請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2の1.に(補正前)として記載したものであり、補正発明(補正後)は、本願発明に特定される事項のすべてを含み、本願発明の「処理」について「前記リグノセルロース材料を、加速電子で処理して難分解性を低下し、前記加速電子が、0.3MeV?5MeVの平均エネルギーを有し、前記リグノセルロース材料が、10Mrad?100Mradの総線量で処理される」ことをさらに限定したものである。
そうすると、本願発明と引用発明とは、上記(相違点1)及び(相違点3)で相違すると認められるが、これらの相違点は補正発明について述べた(相違点1)及び(相違点3)と同様の理由から当業者が容易になし得ることである。
したがって、本願発明は、引用文献1(引用例1)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたといえる。


第4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるであるから、他の請求項に係る発明について言及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-10-02 
結審通知日 2019-10-08 
審決日 2019-10-21 
出願番号 特願2015-561700(P2015-561700)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C12P)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 千葉 直紀  
特許庁審判長 田村 聖子
特許庁審判官 天野 貴子
中島 庸子
発明の名称 バイオマスの加工およびエネルギー  
代理人 新井 剛  
代理人 小林 純子  
代理人 杉山 共永  
代理人 小林 浩  
代理人 鈴木 康仁  
代理人 大森 規雄  
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