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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C22C
管理番号 1360373
審判番号 不服2019-2660  
総通号数 244 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-02-27 
確定日 2020-03-24 
事件の表示 特願2014-258286「軟磁気特性に優れたFe系非晶質合金及び非晶質合金薄帯」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 6月30日出願公開、特開2016-117929、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年12月22日の出願であって、平成30年4月16日付けで拒絶理由通知がされ、同年6月21日付けで意見書が提出されると共に手続補正がされ、同年11月20日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成31年2月27日に拒絶査定不服審判の請求がされると共に手続補正がされたものである。


第2 原査定の概要
原査定(平成30年11月20日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-3に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された事項、及び、引用文献3、4に例示される周知技術に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開昭57-190304号公報
2.特開2008-240148号公報
3.特開昭59-59862号公報(周知技術を示す文献)
4.特開平10-321429号公報(周知技術を示す文献)


第3 特許請求の範囲の記載について

本願の特許を受けようとする発明は、平成31年2月27日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下、「本願発明1」等という。)である。

「 【請求項1】
原子%で、Feを80%以上88%以下、Pを6%以上16%以下、Cを2%以上8%以下、Alを0.1%以上3%以下含有し、さらに、Moを0.1%以上5%以下含有し、残部不可避的不純物からなり、
磁束密度1.3T、周波数50Hzにおける鉄損(鉄損W13/50)が0.10W/kg未満、かつ、飽和磁束密度が1.6T超であることを特徴とする、軟磁気特性に優れたFe系非晶質合金。
【請求項2】
Ni、Cr、Coのうち少なくとも1種以上で、請求項1に記載のFe系非晶質合金のFeを10原子%以下の範囲で、代替したことを特徴とする、軟磁気特性に優れたFe系非晶質合金。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のFe系非晶質合金からなり、板厚10μm以上100μm以下であることを特徴とするFe系非晶質合金薄帯。」

以下では、本願発明1?3に対して、原査定を依然として維持できるか否かについて検討する。


第4 引用文献に記載された事項及び引用文献に記載された発明
1 引用文献1について
(1)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、次の事項が記載されている。

ア 「特許請求の範囲
実質的に組成式(原子%)
Fe_(100-a-b-c)Mo_(a)X_(b)Y_(c)
但し、0.1≦a≦6
0≦b≦30
15≦c≦30
X;Ni,Co,Ti,V,Cr,Mn,Zr,Nb,
Cu,Mg,W,Ta,Hf,Ru,Ag,
白金属元素,希土類元素,Sn,Pb
Y;Si,B,C,Al,P,Ga,Ge,Bi,Asからなり、直流磁化特性における角型比Br/B_(10)G≧60%であり、かつ少なくとも50%以上が非晶質状態からなることを特徴とする磁性材料。」(審決注:≦、≧は、正しくは、<、>の下に_。以下同様。)
イ 「本発明は上記従来技術の欠点を改良し、磁場を印加すること無しに単なる焼鈍により、高い角型比が得られる新規な非晶質合金を提供することを目的とする。」(第2頁左上欄第7?10行)
ウ 「Moは、本発明による必須の元素であり、Moの角型性に対する添加効果を見出したのが本発明のポイントである。」(第2頁右上欄第12?14行)
エ 「次に実施例に基づき本発明を具体的に説明する
実施例1
Fe_(78-x)Mo_(x)Si_(8)B_(14)なる組成を有する非晶質合金薄帯を片ロール法により作製した。これをトロイダル状に巻いた後、450?500℃の間で5℃おきに30分間焼鈍を行なった後、巻線をほどこして磁気特性を測定した。但し、焼鈍時には磁場をかけなかった。その結果を第1図に示す。第1図により、Moの添加が角型比Br/B_(1)の向上に有効である事は明りようで、Br/B_(1)の最大値はMo4at%添加材で得られ、その値は92%で、従来の磁場中焼鈍材に匹敵するものであった。
実施例2
実施例1と同様な方法で、Fe_(98-x-y)Mo_(2)Si_(x)B_(y)系の磁場なし焼鈍時における、角型磁気特性を調べた。
その結果の一例(Fe_(76)Mo_(2)Si_(13)B_(9)における角型磁気特性)を第2図に示す。この図に示す如き、優れた角型性を有する磁気特性は、Mo添加無しでは得られなかったものである。」(第2頁左下欄第16行?右下欄第15行)
オ 「



(2)引用文献1に記載された発明
上記(1)より、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

[引用発明]
「実質的に組成式(原子%)
Fe_(100-a-b-c)Mo_(a)X_(b)Y_(c)
但し、0.1≦a≦6
0≦b≦30
15≦c≦30
X;Ni,Co,Ti,V,Cr,Mn,Zr,Nb,
Cu,Mg,W,Ta,Hf,Ru,Ag,
白金属元素,希土類元素,Sn,Pb
Y;Si,B,C,Al,P,Ga,Ge,Bi,Asからなり、直流磁化特性における角型比Br/B_(10)G≧60%であり、かつ少なくとも50%以上が非晶質状態からなる磁性材料。」


2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、次の事項が記載されている。

「【請求項1】
原子%で、Feを78%以上86%以下、Pを6%以上18%以下、Cを2%以上10%以下含有し、さらに、Si、Alの少なくとも一方を0.1%以上5%以下含有し、残部不可避的不純物からなることを特徴とする、軟磁気特性に優れたFe系非晶質合金。
【請求項2】
Ni、Cr、Coのうち少なくとも1種以上で、請求項1に記載の合金のFeを30%以下の範囲で、代替することを特徴とする、軟磁気特性に優れたFe系非晶質合金。
【請求項3】
原子%で、Feを78%以上86%以下、Pを6%以上18%以下、Cを2%以上10%以下含有し、さらに、Si、Alの少なくとも一方を、Siが0.1%以上5%以下、Alが0.005%以上5%以下の範囲で含有し、残部不可避的不純物からなることを特徴とする、軟磁気特性に優れたFe系非晶質合金。
【請求項4】
Ni、Cr、Coのうち少なくとも1種以上で、請求項3に記載の合金のFeを30%以下の範囲で、代替することを特徴とする、軟磁気特性に優れたFe系非晶質合金。」
「【0008】
本発明の目的は、このような更なる鉄損改善のニ-ズに応えるべく、一層の低鉄損化を実現できる非晶質合金を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、これまで提案された各種合金成分の構成元素のうち、先に述べた例えば、特許文献1および3での第2の成分群として分類されるP、C、Bの元素に注目し、再度それら元素の組み合わせ及び含有量について検討、実験を行った。そして、P、Cを主体とする成分系を基本として、さらに他の元素も組み合わせた詳細実験を行った結果、課題を実現できる、すなわち、鉄損W13/50(磁束密度1.3T、周波数50Hzにおける鉄損)で、安定して0.10W/kg以下を実現できる非晶質合金の成分を見出した。そして、この知見を基に検討を重ね、本発明を完成するに至ったのである。」
「【0018】
以下、本発明の実施例によりさらに説明する。
(実施例1)
表1に示す各種成分の合金をアルゴン雰囲気中で溶解し、単ロ-ル法で薄帯に鋳造した。鋳造雰囲気は大気中であった。そして、得られた薄帯について薄帯特性を調査した。使用した単ロ-ル薄帯製造装置は、直径300mmの銅合金製冷却ロ-ル、試料溶解用の高周波電源、先端にスロットノズルが付いている石英ルツボ等から構成される。この実験では、長さ20mm、幅0.6mmのスロットノズルを使用した。冷却ロ-ルの周速は24m/秒とした。結果として、得られた薄帯の板厚は約25μmであり、板幅はスロットノズルの長さに依存するので20mmであった。
【0019】
薄帯の鉄損は、SST(Single Strip Tester)を用いて行った。測定条件は、磁束密度1.3T、周波数50kHzである。鉄損測定試料には、1ロットの全長に渡って12箇所から120mm長さに切断した薄帯サンプルを用い、それらの薄帯サンプルを360℃にて1時間磁場中でアニ-ルを行って測定に供した。アニ-ル中の雰囲気は窒素とした。
【0020】
鉄損測定結果として、1ロットの中での最大値(Wmax)、最小値(Wmin)の値、および偏差((Wmax-Wmin)/Wmin)の値を、表1に示した。
【0021】
表1の試料No.1?27の結果から明らかなように、Feを78原子%以上86原子%以下、Pを6原子%以上18原子%以下、Cを2原子%以上10原子%以下、Si、Alの少なくとも一方を、Siが0.1%以上5%以下、Alが0.005%以上5%以下の本発明の範囲とすることによって、磁束密度1.3T、周波数50Hzにおける鉄損が0.1W/kg未満で、かつ、その偏差((Wmax-Wmin)/Wmin)が0.1未満となり、薄帯の全長に渡って軟磁気特性に優れた薄帯が得られることがわかった。
これに対して、試料No.28?38に示す比較例の成分範囲では、鉄損が0.1W/kgより大きくなる部位が存在し、偏差((Wmax-Wmin)/Wmin)も0.1以上となってしまう。
これらのころから、本発明によって、更なる軟磁気特性の改善が実現できることがわかった。
【表1】

【0022】
(実施例2)
表1のNo.1に示す合金について、Feの一部をNi、Cr、Coの少なくとも1種で代替した各種成分の合金を用いて、実施例1と同様の装置、条件により薄帯を鋳造した。なお、用いた合金の具体的な成分については、Ni、Cr、Coについてのみを表2に示した。結果として、得られた薄帯の板厚は約25μmであった。得られた薄帯の鉄損を評価した。鉄損評価のための測定サンプルの採取方法及び測定条件は、実施例1と同じであった。その測定結果を表2に示す。なお、表2での表示要領は、表1の場合同様である。
【0023】
表2の試料No.1?9の結果から明らかなように、Feの一部をNi、Cr、Coの少なくとも1種で、30原子%以下の範囲で代替しても、鉄損をW13/50で安定して0.10W/kg未満とできることがわかった。
【表2】

【0024】
(実施例3)
表1のNo.12に示す合金について、Feの一部をNi、Cr、Coの少なくとも1種で代替した各種成分の合金を用いて、実施例1と同様の装置、条件により薄帯を鋳造した。なお、用いた合金の具体的な成分については、Ni、Cr、Coについてのみを表3に示した。結果として、得られた薄帯の板厚は約25μmであった。得られた薄帯の鉄損を評価した。鉄損評価のための測定サンプルの採取方法及び測定条件は、実施例1と同じであった。その測定結果を、表3に示す。なお、表3での表示要領は、表1の場合同様である。
【0025】
表3の試料No.1?7の結果から明らかなように、Feの一部をNi、Cr、Coの少なくとも1種で、30原子%以下の範囲で代替しても、鉄損をW13/50で安定して0.10W/kg未満とできることがわかった。
【表3】

【0026】
(実施例4)
表1のNo.21に示す合金について、Feの一部をNi、Cr、Coの少なくとも1種で代替した各種成分の合金を用いて、実施例1と同様の装置、条件により薄帯を鋳造した。なお、用いた合金の具体的な成分については、Ni、Cr、Coについてのみを表4に示した。結果として、得られた薄帯の板厚は約25μmであった。得られた薄帯の鉄損を評価した。鉄損評価のための測定サンプルの採取方法及び測定条件は、実施例1と同じであった。その測定結果を、表4に示す。なお、表4での表示要領は、表1の場合同様である。
【0027】
表4の試料No.1?7の結果から明らかなように、Feの一部をNi、Cr、Coの少なくとも1種で、30原子%以下の範囲で代替しても、鉄損をW13/50で安定して0.10W/kg未満とできることがわかった。
【表4】

【0028】
(実施例5)
表1のNo.25に示す合金について、Feの一部をNi、Cr、Coの少なくとも1種で代替した各種成分の合金を用いて、実施例1と同様の装置、条件により薄帯を鋳造した。なお、用いた合金の具体的な成分については、Ni、Cr、Coについてのみを表5に示した。結果として、得られた薄帯の板厚は約25μmであった。得られた薄帯の鉄損を評価した。鉄損評価のための測定サンプルの採取方法及び測定条件は、実施例1と同じであった。その測定結果を、表5に示す。なお、表5での表示要領は、表1の場合同様である。
【0029】
表5の試料No.1?7の結果から明らかなように、Feの一部をNi、Cr、Coの少なくとも1種で、30原子%以下の範囲で代替しても、鉄損をW13/50で安定して0.10W/kg未満とできることがわかった。
【表5】




第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
ア 引用発明における「Fe_(100-a-b-c)Mo_(a)X_(b)Y_(c)」は、Feを主成分とする合金であるから、引用発明の「Fe_(100-a-b-c)Mo_(a)X_(b)Y_(c)」からなる「少なくとも50%以上が非晶質状態からなる磁性材料」は、本願発明1における「Fe系非晶質合金」に相当する。
イ 引用発明の組成と本願発明1の組成とは、Fe、Moを含有する点で共通し、P、C、Alを含有し得る点で共通する。
ウ したがって、本願発明1と引用発明とは、次の一致点で一致し、相違点1、2で相違する。

[一致点]
「Fe、Moを含有し、P、C、Alを含有し得る、Fe系非晶質合金。」

[相違点1]
本願発明1は、
「原子%で、Feを80%以上88%以下、Pを6%以上16%以下、Cを2%以上8%以下、Alを0.1%以上3%以下含有し、さらに、Moを0.1%以上5%以下含有し、残部不可避的不純物からな」るものであるのに対し、
引用発明は、
「実質的に組成式(原子%)
Fe_(100-a-b-c)Mo_(a)X_(b)Y_(c)
但し、0.1≦a≦6
0≦b≦30
15≦c≦30
X;Ni,Co,Ti,V,Cr,Mn,Zr,Nb,
Cu,Mg,W,Ta,Hf,Ru,Ag,
白金属元素,希土類元素,Sn,Pb
Y;Si,B,C,Al,P,Ga,Ge,Bi,Asからな」るものである点。

[相違点2]
本願発明1は、「磁束密度1.3T、周波数50Hzにおける鉄損(鉄損W13/50)が0.10W/kg未満、かつ、飽和磁束密度が1.6T超であることを特徴とする、軟磁気特性に優れた」ものであるのに対し、引用発明は、そのようなものかどうか不明な点。

(2)相違点についての判断
ア 相違点1について
上記相違点1について、軟磁気特性に優れたFe系非晶質合金に関する引用文献2の記載をみてみると、その実施例1に示された試料No.15の組成は、Fe=81.3%、P=14.8%、C=3.8%、Al=0.1%であり、本願発明1のMo以外の組成を満たす。
そして、引用発明の「Fe_(100-a-b-c)Mo_(a)X_(b)Y_(c)」において、bが0の場合において、Yの組成として、軟磁気特性に優れたものとするために引用文献2の上記組成を採用して、YをP=14.8%、C=3.8%、Al=0.1%とし、かつ、引用発明におけるMoの含有量の範囲から、0.1%以上1.3%以下の範囲を選択した場合には、Feの含有量が80%以上81.2%以下の範囲となり、相違点1に係る組成を満たすこととなるが、当審は、以下の(ア)?(エ)に示す理由により、引用発明に対し引用文献2の上記組成を適用することは当業者が容易に想到し得ることではないと判断する。
(ア)引用文献2に記載のFe系非晶質合金は、Fe、P、C、Al、Si、Ni、Cr、Co及び不可避的不純物からなる組成を有し(請求項1?4)、当該組成により0.10W/kg以下の低鉄損化を実現したものである(【0008】、【0009】)。
そして、引用文献2のFe系非晶質合金は、たとえば上述の請求項の記載にあるとおり、Fe、P、C、Al、Si、Ni、Cr及びCo以外には不可避的不純物を除いて他の成分は含有せず、実施例においてもFe、P、C、Al、Si、Ni、Cr及びCo以外の元素を含む場合の影響については検討されていないから(実施例1?5)、引用文献2に開示された組成にさらに他の成分が添加された場合に、低鉄損が保たれるか否かは、引用文献2の記載からは当業者に明らかとはいえない。
また、引用文献1にも、鉄損と各成分との関係は記載されていない。
したがって、引用文献2に開示された組成を、引用文献2に開示された成分以外の成分であるMoを少なくとも含む引用発明に対して適用した場合に、引用文献2に開示された組成と同様に0.10W/kg未満の低鉄損を実現し得ることが当業者に明らかとはいえないから、低鉄損化を達成することは、引用発明に引用文献2の実施例1における試料No.15の組成を適用する動機付けとはならない。また、他に、引用発明に、引用文献2の実施例1における試料No.15の組成を適用する動機はない。
(イ)上記(ア)で述べたとおり、引用文献2に開示された組成にさらにMoが添加された場合に、低鉄損が保たれるか否かは、引用文献2の記載からは当業者に明らかとはいえないから、本願発明1における0.10W/kg未満の低鉄損が得られる効果は、引用発明に引用文献2の実施例1における試料No.15の組成を適用した場合の効果として当業者が予測し得る効果でない。
(ウ)引用文献1の図1を参照すると、Moの添加量が多くなるほど飽和磁束密度が低下することが認められ、仮に、低鉄損化のために、引用文献2に開示された組成を引用発明に適用したとしても、飽和磁束密度の低下が予想されるから、本願発明1における、1.6T超の飽和磁束密度と0.10W/kg未満の低鉄損を両立し得る効果は、引用発明に引用文献2の実施例1における試料No.15の組成を適用した場合の効果として当業者が予測し得る効果でない。
(エ)引用文献1の実施例において具体的に効果が検討されている組成は、FeMoSiBからなる組成のみであり(実施例1、2)、当該組成から大きくかけ離れた相違点1に係る組成を採用した場合に、引用発明において実施例と同様に高い角型比が得られることは明らかでないから、このことからも、引用発明において、引用文献2の実施例1における試料No.15の組成を適用することは、当業者が容易に想到し得ることとはいえない。
なお、引用文献3、4は、拒絶査定において、引用文献1と同様FeSiBの組成からなる合金であってMoを含まないものが周知技術であることを示すために提示された文献であるが、当該周知技術を考慮しても、引用発明において、引用文献2の実施例1における試料No.15の組成を適用することは、当業者が容易に想到し得ることとはいえない。
よって、本願発明1は、上記相違点2について判断するまでもなく、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項及び周知技術に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。


2 本願発明2、3について
本願発明2、3は、本願発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された事項及び周知技術に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。


第6 むすび
以上のとおり、本願発明1?3は、当業者が引用発明、引用文献2に記載された事項及び周知技術に基いて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-03-09 
出願番号 特願2014-258286(P2014-258286)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (C22C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 川村 裕二  
特許庁審判長 中澤 登
特許庁審判官 北村 龍平
亀ヶ谷 明久
発明の名称 軟磁気特性に優れたFe系非晶質合金及び非晶質合金薄帯  
代理人 寺本 光生  
代理人 勝俣 智夫  
代理人 山口 洋  
代理人 棚井 澄雄  
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