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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B05C
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B05C
審判 全部申し立て 2項進歩性  B05C
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  B05C
管理番号 1360443
異議申立番号 異議2018-701026  
総通号数 244 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-04-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-12-19 
確定日 2020-01-27 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6349480号発明「液体材料塗布装置および液体材料塗布方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6349480号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?8〕、〔9?18〕について訂正することを認める。 特許第6349480号の請求項1?7、9?15、17?18に係る特許を維持する。 特許第6349480号の請求項8、16に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6349480号(以下、「本件特許」という。)は、平成29年5月25日を国際出願日とする特許出願に係るものであって、平成30年6月8日に特許権の設定登録(請求項の数18)がされ、同年同月27日に特許掲載公報が発行された。
その後、本件特許に対して4件の特許異議の申立てがあり、次のとおりに手続きが行われた。

平成30年12月19日 :特許異議申立人藤江桂子(以下、「申立人A」という。)による請求項1?6、8?14、16、18に係る特許に対する特許異議の申立て
平成30年12月21日 :特許異議申立人藤本博基(以下、「申立人B」という。)による請求項1?18に係る特許に対する特許異議の申立て
平成30年12月27日 :特許異議申立人宮川貴浩(以下、「申立人C」という。)による請求項1?18に係る特許に対する特許異議の申立て
平成30年12月26日 :特許異議申立人荒木博之(以下、「申立人D」という。)による請求項1?5、9?13に係る特許に対する特許異議の申立て
平成31年3月22日付け :取消理由通知書
令和1年5月27日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和1年7月5日 :申立人Dによる意見書の提出
令和1年6月12日 :申立人Bによる意見書の提出
令和1年6月17日 :申立人A及びCによる意見書の提出
令和1年8月29日付け :取消理由通知書(決定の予告)
令和1年10月31日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出

なお、令和1年10月31日に特許権者により提出された訂正請求書による訂正の請求(2回目の訂正請求)は、令和1年5月27日に提出された訂正請求書による特許請求の範囲についての訂正(1回目の訂正請求)と同じ訂正をした上で、さらに、一部の請求項の削除をする訂正、それに伴い不明瞭となる引用請求項の記載を削除する訂正をするものであって、迅速かつ効率的な審理の観点からみて実質的な判断に影響を与えるものではないし、1回目の訂正の請求後に、申立人A?Dに対して意見書の提出の機会を与えていることから、2回目の訂正の請求に関しては、特許法120条の5第5項ただし書所定の特別の事情があると認め、申立人らに対し、同項所定の意見書を提出する機会を与えていない。また、1回目の訂正請求は取り下げられたものとみなす。

第2 訂正の適否についての判断
1.請求の趣旨
令和1年10月31日に特許権者が行った訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)は、「特許第6349480号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?18について訂正することを求める」ことを請求の趣旨とするものである。

2.訂正の内容
本件訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」ともいう。)の内容は、以下のとおりである。なお、下線は、訂正箇所を分かりやすく対比するために、当審合議体が付した。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「前記吐出制御部は、前記塗布プログラムに基づいて、前記吐出ヘッドと前記ワークとの相対移動速度に基づいて前記吐出ヘッドが前記液体材料を吐出する単位時間当たりの吐出量を変更する第1モードの吐出制御と、前記相対移動速度とは関係なく前記吐出ヘッドに予め定められた単位時間当たりの吐出量の液体材料を吐出させる第2モードの吐出制御とを切り替え可能である液体材料塗布装置。」と記載されているのを、
「前記吐出制御部は、前記塗布プログラムに基づいて、前記吐出ヘッドと前記ワークとの相対移動速度に基づいて前記吐出ヘッドが前記液体材料を吐出する単位時間当たりの吐出量を変更する第1モードの吐出制御と、前記相対移動速度とは関係なく前記吐出ヘッドに予め定められた単位時間当たりの吐出量の液体材料を吐出させる第2モードの吐出制御とを切り替え可能であり、かつ、前記第1モードおよび前記第2モードの吐出制御で、線引塗布を実行可能である液体材料塗布装置。」
に訂正する。
(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2?7も同様に訂正する。)

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3に
「前記第1モードの吐出制御では、前記塗布プログラムに基づいて、線幅が一定の塗布線を塗布する」と記載されているのを、
「前記塗布パターンが、直線部およびコーナー部を有する塗布パターンを含み、
前記第1モードの吐出制御では、前記塗布プログラムに基づいて、前記相対移動速度が変化するコーナー部でも線幅が一定の塗布線を塗布する」
に訂正する。
(請求項3の記載を直接又は間接的に引用する請求項4?7も同様に訂正する。)

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に
「線引塗布、捨て打ち塗布、試し打ち塗布、および点塗布のうち少なくとも1つの塗布を実行することが可能である」と記載されているのを、
「さらに、捨て打ち塗布、試し打ち塗布、および点塗布のうち少なくとも1つの塗布を実行することが可能である」
に訂正する。
(請求項4の記載を直接又は間接的に引用する請求項5?7も同様に訂正する。)

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項8を削除する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項9に
「前記塗布プログラムに基づいて、前記吐出ヘッドと前記ワークとの相対移動速度に基づいて前記吐出ヘッドが前記液体材料を吐出する単位時間当たりの吐出量を変更する第1モードの吐出制御と、前記相対移動速度とは関係なく前記吐出ヘッドに予め定められた単位時間当たりの吐出量の液体材料を吐出させる第2モードの吐出制御とを切り替えする液体材料塗布方法。」と記載されているのを、
「前記吐出制御部は、前記吐出ヘッドと前記ワークとの相対移動速度に基づいて前記吐出ヘッドが前記液体材料を吐出する単位時間当たりの吐出量を変更する第1モードの吐出制御、および、前記相対移動速度とは関係なく前記吐出ヘッドに予め定められた単位時間当たりの吐出量の液体材料を吐出させる第2モードの吐出制御を有し、かつ、前記第1モードおよび前記第2モードの吐出制御で、線引塗布を実行可能であり、
前記塗布プログラムに基づいて、前記第1モードの吐出制御と、前記第2モードの吐出制御とを切り替えする液体材料塗布方法。」
に訂正する。
(請求項9の記載を直接又は間接的に引用する請求項10?15、17?18も同様に訂正する。)

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項11に
「前記第1モードの吐出制御では、前記塗布プログラムに基づいて、線幅が一定の塗布線を塗布する」と記載されているのを、
「前記塗布パターンが、直線部およびコーナー部を有する塗布パターンを含み、
前記第1モードの吐出制御では、前記塗布プログラムに基づいて、前記相対移動速度が変化するコーナー部でも線幅が一定の塗布線を塗布する」
に訂正する。
(請求項11の記載を直接又は間接的に引用する請求項12?15、17?18も同様に訂正する。)

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項12に
「線引塗布、捨て打ち塗布、試し打ち塗布、および点塗布のうち少なくとも1つの塗布を実行する」と記載されているのを、
「さらに、捨て打ち塗布、試し打ち塗布、および点塗布のうち少なくとも1つの塗布を実行する」
に訂正する。
(請求項12の記載を直接又は間接的に引用する請求項13??15、17?18も同様に訂正する。)

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項16を削除する。

(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項17に
「請求項9ないし16のいずれかに記載の液体材料塗布方法。」と記載されているのを、
「請求項9ないし15のいずれかに記載の液体材料塗布方法。」
に訂正する。

(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項18において、
「請求項9ないし17のいずれかに記載の液体材料塗布方法。」と記載されているのを、
「請求項9ないし15および17のいずれかに記載の液体材料塗布方法。」
に訂正する。

(11)一群の請求項について
本件訂正請求は、訂正前の請求項1?18を訂正するものであるところ、本件訂正前の請求項2?8は、本件訂正前の請求項1の記載を直接又は間接的に引用する関係にあるし、本件訂正前の請求項10?18は、訂正前の請求項9の記載を直接又は間接的に引用する関係にあるから、訂正前の請求項1?8及び9?11は、それぞれ、一群の請求項である。
そうすると、本件訂正請求は、一群の請求項〔1?8〕、〔9?18〕ごとに請求されたものである。

3.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1及び訂正事項5による訂正について
訂正事項1及び訂正事項5による訂正は、本件訂正前の請求項1及び9では、「第1モード」及び「第2モード」の吐出制御で、どのような種類の塗布が実行可能であるかについての特定はなされていなかったのを、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件特許明細書等」という。)の【0044】、【0076】?【0080】、【0099】及び図7の記載に基づいて、「前記第1モードおよび前記第2モードの吐出制御で、線引塗布を実行可能」である態様に特定するものである。
よって、訂正事項1及び訂正事項5による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるし、これらの訂正は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2?7についての訂正、及び、請求項9の記載を直接又は間接的に引用する請求項10?15、17?18についての訂正も同様である。)

(2)訂正事項2及び訂正事項6による訂正について
訂正事項2及び訂正事項6による訂正は、本件訂正前の請求項3及び請求項11では、(塗布プログラムに基づいて実行される)「線幅が一定の塗布線を塗布する線引塗布」が、どのような塗布パターンにおけるどのような箇所で実行される線引塗布であるかについての特定はなされていなかったのを、本件特許明細書等の【0044】、【0055】、【0068】?【0070】及び図6の記載に基づいて、(塗布プログラムに基づいて行われる)「線幅が一定の塗布線を塗布する線引塗布」が、「直線部およびコーナ一部を有する塗布パターンを含」む「塗布パターン」においてなされるものであり、「相対移動速度が変化するコーナー部でも」実行されるものであることを特定するものである。
よって、訂正事項2及び訂正事項6による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるし、これらの訂正は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(請求項3の記載を直接又は間接的に引用する請求項4?7についての訂正、及び、請求項11の記載を直接又は間接的に引用する請求項12?15、17?18についての訂正も同様である。)

(3)訂正事項3及び訂正事項7による訂正について
訂正事項3及び訂正事項7による訂正は、本件訂正前の請求項4及び12では、「第2モードの吐出制御」においては「線引塗布、捨て打ち塗布、試し打ち塗布、および点塗布のうち少なくとも1つの塗布を実行することが可能」であるとされており、「第2モードの吐出制御」として、「線引塗布を実行可能」であり、かつ、「捨て打ち塗布、試し打ち塗布、および点塗布のうち少なくとも1つの塗布を実行することが可能」である態様も包含されていたといえるところ(この点は、本件特許明細書等の【0086】、【0094】?【0096】及び【0099】からも理解できる。)、訂正事項1及び訂正事項5による訂正により、「第2モードの吐出制御」が(少なくとも)「線引塗布を実行可能」である態様に限定されたことから、これと整合させるために、「第2モードの吐出制御」を「さらに、捨て打ち塗布、試し打ち塗布、および点塗布のうち少なくとも1つの塗布を実行することが可能」なものに限定するものであるから、訂正事項3及び訂正事項7による訂正は、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項3及び訂正事項7による訂正は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(請求項4の記載を直接又は間接的に引用する請求項5?7についての訂正、及び、請求項12の記載を直接又は間接的に引用する請求項13?15、17?18についての訂正も同様である。)

(4)訂正事項4及び訂正事項8による訂正について
訂正事項4による訂正は本件訂正前の請求項8を削除するものであり、また、訂正事項8による訂正は、本件訂正前の請求項16を削除するものであるから、これらの訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるし、また、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(5)訂正事項9及び訂正事項10による訂正について
訂正事項9及び訂正事項10による本件訂正は、訂正事項8による訂正で本件訂正前の請求項16が削除されたことに伴い、請求項17及び18で引用していた請求項から請求項16を除いた引用請求項としたものであるから、訂正事項9及び10による訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるし、また、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(6)小括
以上のとおり、本件訂正請求による訂正事項1?10は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?8〕、〔9?18〕について訂正することを認める。


第3 本件発明
前記第2で述べたとおり、本件訂正請求による訂正は認められるので、本件特許の請求項1?18に係る発明は、令和1年10月31日提出の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?18に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(以下、請求項番号に対応して、それぞれ「本件発明1」等という。)

「【請求項1】
液体材料を吐出する吐出ヘッドと、
前記吐出ヘッドをワークに対し相対移動させるロボットと、
塗布プログラムに基づいて、前記吐出ヘッドと前記ワークとの相対移動を制御する移動制御部と、
前記吐出ヘッドからの前記液体材料の吐出動作を制御する吐出制御部と、を備え、
前記移動制御部と前記吐出制御部とが協働し、前記液体材料を所定の塗布パターンで前記ワークに塗布作業を行う液体材料塗布装置であって、
前記吐出制御部は、前記塗布プログラムに基づいて、前記吐出ヘッドと前記ワークとの相対移動速度に基づいて前記吐出ヘッドが前記液体材料を吐出する単位時間当たりの吐出量を変更する第1モードの吐出制御と、前記相対移動速度とは関係なく前記吐出ヘッドに予め定められた単位時間当たりの吐出量の液体材料を吐出させる第2モードの吐出制御とを切り替え可能であり、かつ、前記第1モードおよび前記第2モードの吐出制御で、線引塗布を実行可能である液体材料塗布装置。
【請求項2】
前記第1モードの吐出制御では、前記塗布プログラムに基づいて、単位長さ当たりの塗布量が一定の塗布線を塗布する線引塗布を実行する請求項1に記載の液体材料塗布装置。
【請求項3】
前記塗布パターンが、直線部およびコーナ一部を有する塗布パターンを含み、
前記第1モードの吐出制御では、前記塗布プログラムに基づいて、前記相対移動速度が変化するコーナー部でも線幅が一定の塗布線を塗布する線引塗布を実行する、請求項2に記載の液体材料塗布装置。
【請求項4】
前記第2モードの吐出制御では、前記塗布プログラムに基づいて、さらに、線引塗布、捨て打ち塗布、試し打ち塗布、および点塗布のうち少なくとも1つの塗布を実行することが可能である請求項2または3に記載の液体材料塗布装置。
【請求項5】
前記吐出制御部は、前記塗布プログラムに基づく移動制御部からの信号の受信により、前記第1モードの吐出制御と前記第2モードの吐出制御とを切り替える請求項1ないし4のいずれかに記載の液体材料塗布装置。
【請求項6】
前記吐出制御部は、前記相対移動速度と単位時間当たりの吐出量との関係が互いに異なる複数の前記第1モードの吐出制御、または、予め定められた単位時間当たりの吐出量が互いに異なる複数の第2モードの吐出制御を設定することが可能であり、前記複数の第1モードの吐出制御、または、前記複数の第2モードの吐出制御の中から1の吐出制御を選択して実行できる請求項1ないし5のいずれかに記載の液体材料塗布装置。
【請求項7】
前記吐出制御部は、第1の相対移動速度および第1の相対移動速度に対応する第1の単位時間当たりの吐出量と、第2の相対移動速度および第2の相対移動速度に対応する第2の単位時間当たりの吐出量とに基づき、第3の相対移動速度に対応する第3の単位時間当たりの吐出量を自動算出する機能を備え、
前記第1モードの吐出制御において、前記吐出ヘッドを前記第1ないし第3のいずれかの相対移動速度で移動させながら当該相対移動速度に対応する単位時間当たりの吐出量の液体材料を前記吐出ヘッドから吐出する請求項1ないし6のいずれかに記載の液体材料塗布装置。
【請求項8】
(削除)
【請求項9】
液体材料を吐出する吐出ヘッドと、
前記吐出ヘッドをワークに対し相対移動させるロボットと、
塗布プログラムに基づいて、前記吐出ヘッドと前記ワークとの相対移動を制御する移動制御部と、
前記吐出ヘッドからの前記液体材料の吐出動作を制御する吐出制御部と、を備え、
前記移動制御部と前記吐出制御部とが協働し、前記液体材料を所定の塗布パターンで前記ワークに塗布作業を行う液体材料塗布装置を用いた液体材料塗布方法であって、
前記吐出制御部は、前記吐出ヘッドと前記ワークとの相対移動速度に基づいて前記吐出ヘッドが前記液体材料を吐出する単位時間当たりの吐出置を変更する第1モードの吐出制御、および、前記相対移動速度とは関係なく前記吐出ヘッドに予め定められた単位時間当たりの吐出量の液体材料を吐出させる第2モードの吐出制御を有し、かつ、前記第1モードおよび前記第2モードの吐出制御で、線引塗布を実行可能であり、
前記塗布プログラムに基づいて、前記第1モードの吐出制御と、前記第2モードの吐出制御とを切り替えする液体材料塗布方法。
【請求項10】
前記第1モードの吐出制御では、前記塗布プログラムに基づいて、単位長さ当たりの塗布量が一定の塗布線を塗布する線引塗布を実行する請求項9に記載の液体材料塗布方法。
【請求項11】
前記塗布パターンが、直線部およびコーナ一部を有する塗布パターンを含み、
前記第1モードの吐出制御では、前記塗布プログラムに基づいて、前記相対移動速度が変化するコーナー部でも線幅が一定の塗布線を塗布する線引塗布を実行する、請求項10に記載の液体材料塗布方法。
【請求項12】
前記第2モードの吐出制御では、前記塗布プログラムに基づいて、さらに、線引塗布、捨て打ち塗布、試し打ち塗布、および点塗布のうち少なくとも1つの塗布を実行する請求項10または11に記載の液体材料塗布方法。
【請求項13】
前記吐出制御部は、前記塗布プログラムに基づく移動制御部からの信号の受信により、前記第1モードの吐出制御と前記第2モードの吐出制御とを切り替える請求項9ないし12のいずれかに記載の液体材料塗布方法。
【請求項14】
前記吐出制御部は、前記相対移動速度と単位時間当たりの吐出量との関係が互いに異なる複数の前記第1モードの吐出制御、または、予め定められた単位時間当たりの吐出量が互いに異なる複数の第2モードの吐出制御が設定されており、前記複数の第1モードの吐出制御、または、前記複数の第2モードの吐出制御の中から1の吐出制御を選択して実行できる請求項9ないし13のいずれかに記載の液体材料塗布方法。
【請求項15】
前記吐出制御部は、第1の相対移動速度および第1の相対移動速度に対応する第1の単位時間当たりの吐出量と、第2の相対移動速度および第2の相対移動速度に対応する第2の単位時間当たりの吐出量とに基づき、第3の相対移動速度に対応する第3の単位時間当たりの吐出量を自動算出する機能を備え、
前記第1モードの吐出制御において、前記吐出ヘッドを前記第1ないし第3のいずれかの相対移動速度で移動させながら当該相対移動速度に対応する単位時間当たりの吐出量の液体材料を前記吐出ヘッドから吐出する請求項9ないし14のいずれかに記載の液体材料塗布方法。
【請求項16】
(削除)
【請求項17】
前記塗布パターンに応じて前記相対移動速度が変わる線引塗布を行う場合には、前記第1モードの吐出制御を実行し、
一定の相対移動速度で線引塗布を行う場合には、前記第2モードの吐出制御を実行する請求項9ないし15のいずれかに記載の液体材料塗布方法。
【請求項18】
前記ワークが、1個もしくは複数個の半導体チップ、1個の半導体チップが搭載された1枚もしくは複数枚の基板、または、複数個の半導体チップが搭載された1枚もしくは複数枚の基板である請求項9ないし15および17のいずれかに記載の液体材料塗布方法。」


第4 申立人A?Dが特許異議申立書で主張する特許異議の申立ての理由の概要
訂正前(特許の設定登録時)の請求項1?18に係る特許に対して、申立人A?Dが申立てていた申立理由の概要は、それぞれ、以下のとおりである。

(1)申立人Aによる申立てについて
請求項1?6、8?14、16、18に係る特許は、下記ア?イのとおりの理由により、取り消されるべきものである。証拠方法として、下記ウの甲第1号証?甲第7号証(以下、各甲号証の数字を付して「甲1A」?「甲7A」という。)を提出する。

ア 申立理由A1(新規性)
請求項1?5、9?13に係る発明は、甲1Aに記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
イ 申立理由A2(進歩性)
請求項3、11に係る発明は、甲1Aに記載された発明及び甲2Aに記載された事項に基づいて、請求項4、12に係る発明は、甲1Aに記載された発明及び甲3A又は甲4Aに記載された事項に基づいて、請求項6、14に係る発明は、甲1Aに記載された発明及び甲5A又は甲6Aに記載された事項に基づいて、請求項8、16に係る発明は、甲1Aに記載された発明及び甲7Aに記載された事項に基づいて、請求項18に係る発明は、甲1Aに記載された発明並びに甲3A及び甲6Aに示される周知技術に基づいて、それぞれ、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(なお、請求項12に係る発明についての取消理由A2に関し、特許異議申立書の6頁には進歩性に関する理由の項目に請求項12に係る発明の記載がないが、申立書の24頁の項目8の記載から見て、請求項12に係る発明も進歩性の対象にした申立てをしているものと認める。)
ウ 証拠方法
・甲1A:特開2006-159161号公報
・甲2A:特開昭62-269771号公報
・甲3A:特開平11-97484号公報
・甲4A:国際公開第2007/083585号
・甲5A:国際公開第2015/083722号
・甲6A:特開2000-308842号公報
・甲7A:特開2004-158529号公報

(2)申立人Bによる申立てについて
請求項1?18に係る特許は、下記ア?エのとおりの理由により取り消されるべきものである。証拠方法として、下記オの甲第1号証?甲第4号証(以下、各甲号証の数字を付して「甲1B」?「甲4B」という。)を提出する。

ア 申立理由B1(進歩性)
請求項1、9に係る発明は、甲1Bに記載された発明及び甲2Bに記載された事項に基づいて、請求項2?6、10?14、17に係る発明は、甲1Bに記載された発明並びに甲2B及び甲3Bに記載された事項に基づいて、請求項18に係る発明は、甲1Bに記載された発明及び甲2B?甲4Bに記載された事項に基づいて、それぞれ、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
イ 申立理由B2(明確性要件)
請求項8、16に係る本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
ウ 申立理由B3(実施可能要件)
請求項8、16に係る本件特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
エ 申立理由B4(サポート要件)
請求項7、8、15、16に係る本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
オ 証拠方法
・甲1B:特開2010-17629号公報
・甲2B:国際公開第2015/083722号
・甲3B:特開平5-285434号公報
・甲4B:特開2008-108988号公報

(3)申立人Cによる申立てについて
請求項1?18に係る特許は、下記ア?エのとおりの理由により取り消されるべきものである。証拠方法として、下記オの甲第1号証?甲第6号証(以下、各甲号証の数字を付して「甲1C」?「甲6C」という。)を提出する。

ア 申立理由C1(新規性)
請求項1?7、9?15、17に係る発明は、甲1Cに記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(なお、申立理由C1については、特許異議申立書の2頁の「(3)」において、対象請求項が1?7、9?11、17とされているが、異議申立書の申立ての理由の記載全般から見て、対象請求項は、1?7、9?15、17の誤記と認める。)
イ 申立理由C2(進歩性)
請求項4?5、12?13に係る発明は、甲1Cに記載された発明並びに甲2C及び甲3Cに記載された事項に基づいて、請求項6、14に係る発明は、甲1Cに記載された発明及び甲2C?甲4Cに記載された事項に基づいて、請求項7、15に係る発明は、甲1Cに記載された発明及び甲2C?甲5Cに記載された事項に基づいて、請求項8、16?18に係る発明は、甲1Cに記載された発明及び甲2C?甲6Cに記載された事項に基づいて、それぞれ、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
ウ 申立理由C3(実施可能要件)
請求項1?18に係る本件特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
エ 申立理由C4(サポート要件)
請求項1?18に係る本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
オ 証拠方法
・甲1C:特開2009-39661号公報
・甲2C:国際公開第2007/083585号の再公表
・甲3C:特開2010-17629号公報
・甲4C:特開2007-245033号公報
・甲5C:特開2009-98272号公報
・甲6C:特開2010-284568号公報

(4)申立人Dによる申立てについて
請求項1?5、9?13に係る特許は、下記アのとおりの理由により取り消されるべきものである。証拠方法として、下記イの甲第1号証?甲第3号証(以下、各甲号証の数字を付して「甲1D」?「甲3D」という。)を提出する。

ア 申立理由D1(進歩性)
請求項1、9に係る発明は、甲1Dに記載された発明及び周知技術に基づいて、請求項2、10に係る発明は、甲1Dに記載された発明、甲2Dに記載された事項、及び、周知技術に基づいて、請求項3?5、11?13に係る発明は、甲1Dに記載された発明、甲2D、3Dに記載された事項、及び、周知技術に基づいて、それぞれ、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
イ 証拠方法
・甲1D:特開2012-50968号公報
・甲2D:特開2009-50828号公報
・甲3D:国際公開第2015/083722号の再公表


第5 取消理由(決定の予告)の概要及び取消理由(決定の予告)に対する判断
1.取消理由(決定の予告)の概要
本件訂正前の請求項1?18(令和1年5月27日提出の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?18)に係る特許に対して、当審合議体が令和1年8月29日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の概要は、次のとおりである。

(1)取消理由3(明確性)
請求項8、16?18に係る本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)取消理由4(実施可能要件)
請求項8、16?18に係る本件特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

また、取消理由通知書(決定の予告)においては、取消理由3に関し、以下の点を指摘した。
「1 取消理由3(明確性)について
(1)・・・
すなわち、本件発明8及び16では、「(前記)所定の塗布パターン」でワークへ塗布するための相対移動速度に、「塗布プログラムに予め入力された相対移動速度」に「加えて」、これを「補足」するための、「塗布プログラムに予め入力された相対移動速度に基づいて自動で算出された相対移動速度」(以下、「補足速度」という。)が含まれることが特定されている。
しかしながら、請求項8及び16の記載からは、「補足」がどのような目的でなされるのか不明であり、「塗布プログラムに予め入力された相対移動速度を補足する」の意味内容を当業者は技術的に明確に理解することができない。また、「塗布プログラムに予め入力された相対移動速度」と「補足速度」と「ワークに塗布作業を行う際の相対移動速度」との関係も不明であるし、「補足速度」と「移動制御部」との関係も不明である。

(2) ここで、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌し上記の点が明確であるといえるかについて検討すると、・・・明確とはいえない。
・・・
(3) 以上のとおりであるから、本件発明8及び16は明確とはいえない。
請求項16を引用する請求項17、18に係る発明についても同様である。 ・・・」

さらに、取消理由4に関しては、以下の点を指摘した。
「2 取消理由4(実施可能要件)について
(1) 上記1(2)で説示したとおり、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載(【0072】)からは、当業者は、本件発明8及び16で特定される「塗布プログラムに予め入力された相対移動速度に加えて、前記塗布プログラムに予め入力された相対移動速度を補足するため」の「相対移動速度」(つまり、「補足速度」)の「算出」をどのように行うのかを理解できないし、そのような算出を「塗布プログラムに予め入力された相対移動速度に基づいて自動で」行う方法も理解できない。
また、これらが本件特許の出願時の技術常識から理解可能であるともいえない。
そうすると、・・・本件発明8の液体材料塗布装置の発明、及び、・・・液体材料塗布装置を使用する液体材料塗布方法に関する本件発明16について、実施可能要件を満足するとはいえない。
請求項16を引用する本件発明17、18も同様である。・・・」

2.取消理由(決定の予告)に対する判断
本件訂正により取消理由3及び4の対象とされていた請求項8及び16は削除された。
そして、本件発明17は、「請求項9ないし15のいずれかに記載の液体材料塗布方法」の発明であり、本件発明18は、「請求項9ないし15および17のいずれかに記載の液体材料塗布方法」の発明であるところ、取消理由3において本件発明17及び18が不明確とされたのは、上記1.に記載するとおり、請求項16に記載されていた発明特定事項に起因するものであるから、本件発明17及び18において引用請求項16が削除されたことにより、不明確な発明特定事項は存在しなくなった。
また、取消理由4に関しても、本件発明17及び18が実施可能要件を満足するとはいえないとされたのは、上記1.に記載するとおり、請求項16に記載されていた発明特定事項に起因するものであるから、本件発明17及び18において引用請求項16が削除されたことにより、実施可能でない発明特定事項は存在しなくなった。
したがって、本件発明17?18についての取消理由3及び4には理由がなく、取消理由3及び4によって本件発明17?18に係る特許を取り消すことはできない。


第6 取消理由(決定の予告)に採用しなかった申立人Aによる申立理由について
1.申立理由A1(甲1Aに基づく新規性)、及び、申立理由A2(甲1Aを主引用文献とする進歩性)について
申立人Aが特許異議申立時に申立てていた申立理由A1及び申立理由A2の対象請求項は上記第4(1)で記載したとおりであるが、令和1年6月17日提出の意見書において、申立人Aは訂正後の請求項1?6、8?14、16、18についての新規性及び進歩性違反を主張しており(意見書の(3-6))、請求項8及び16は削除されていることから、申立理由A1及び申立理由A2の判断は、請求項1?6、9?14、18について行った。

(1)甲1Aの記載事項及び甲1Aに記載された発明
ア 甲1Aの記載事項
甲1Aには、以下の記載がある。(なお、下線は合議体が付した。)
「【請求項1】
モータにより駆動されて塗布剤の瞬時吐出量を制御する塗布装置をロボット先端に取付けるとともに、その移動範囲内に塗布剤の固化を防止する溶剤貯留用の貯留槽を配置して塗布装置の塗布ノズルを貯留槽内の溶剤内に位置させるように構成した塗布ロボットにおいて、
塗布装置の塗布ノズルが貯留槽内の溶剤から離脱して塗布開始ポイントに達するまでに、塗布ノズルから塗布剤を吐出するように構成したことを特徴とする塗装ロボット。
【請求項2】
塗布装置の移動範囲内に空吹き受け槽を配置し、塗布装置の塗布ノズルを空吹き受け槽上方に移動させ、この位置で塗布ノズルから塗布剤を吐出するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の塗布ロボット。」

「【0001】
本発明は、自動車や電気機器等に使用される部品の表面あるいは裏面に塗料、接着剤あるいはシール剤を塗布する塗布ロボット、特に待機時に塗布剤が固化するのを防止するために使用される溶剤の影響を排除することができる塗布ロボットに関する。」

「【0007】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。図1において、1は塗布ロボットであり、X軸テーブル2、Y軸テーブル3およびZ軸テーブル4を有している。これらテーブル2,3,4はそれぞれサーボモータ(図示せず)により駆動されており、X軸テーブル2およびY軸テーブル3が作動してZ軸テーブル4が任意の平面位置に位置決めされるように構成されている。また、このZ軸テーブル4はその作動によりスライド部(図示せず)をロボット先端として上下方向位置に位置決めするように構成されており、このスライド部には塗布用サーボモータ5aにより駆動される塗布ポンプ(図示せず)を備えた塗布装置5が取付けられている。この塗布装置5は、塗布用サーボモータ5aの回転速度に応じて、塗布ノズル5bから塗布剤が吐出されるように構成されており、しかも塗布用サーボモータ5aに付設されたエンコーダ5cの回転パルスが後記する塗布用パルス処理部6jに送られ、瞬時吐出量が後記する瞬時吐出量パターンに制御されるように構成されている。」

「【0010】
6は塗布ロボット1の制御装置であり、この制御装置6は後記するサーボモータ駆動部6gに指令信号を送る制御部6aと、各テーブル2,3,4を位置決め制御する制御プログラム、速度パラメータ等各種制御パラメータおよび図2に示す各サーボモータの速度パターン並びに塗布個所の位置情報を記憶する記憶部6bと、作業開始信号等各種指令信号を制御部6aに送る操作部6cと、位置情報を記憶部6bに送るティーチングペンダント6dと、各種情報を表示する表示部6eと、前記制御部6aに入出力部6fを介して接続されるサーボモータ駆動部6gおよびパルス処理部6hとからなっている。これらサーボモータ駆動部6gおよびパルス処理部6hは各テーブル毎に設けられており、各テーブル2,3,4のサーボモータが同一の制御プログラムにより駆動されるように構成されている。
【0011】
前記操作部6cは動作モード、設定モード等のモード指令信号を制御部6aに送るように構成されており、動作モード時には制御部6aに作業開始信号を、また設定モード時には記憶部6bに各種情報を送ることができるように構成されている。また、前記ティーチングペンダント6dは設定モード指令信号を選択できるように構成されており、設定モード時にティーチングペンダント6d内に持つ位置情報、速度パラメータを含む各種制御パラメータを記憶部6bに送ることができるように構成されている。
【0012】
前記記憶部6bには所望ワーク上の塗布個所毎に塗布開始ポイント、塗布終了ポイント、通過ポイント、塗布開始ポイントでの上下方向の高さ位置、塗布装置5の吐出量制御パラメータ並びに塗布用サーボモータ5aを駆動するための各種制御パラメータが位置情報として記憶されている。また、この位置情報にはワーク(図示せず)上に塗布個所が複数ある場合に対応して、作業サイクル完了指令信号の有無が含まれており、塗布装置5が塗布終了ポイントに達して停止する都度、作業サイクル完了指令信号の有無を判断することにより連続して塗布作業が行えるように構成されている。
【0013】
前記制御部6aには入出力部6fを介して塗布用サーボモータ駆動部6iおよび塗布用パルス処理部6jが接続されており、塗布装置5もテーブル2,3,4と同一の制御プログラムで、しかも塗布終了ポイントまでの移動距離の長い方のテーブルの指令信号により駆動され、図2に示す瞬時吐出量パターンが得られるように構成されている。
【0014】
また、前記制御部6aは操作部6cから作業開始信号を受けると、図3に示すように
1)Z軸テーブルのサーボモータ駆動部に原点復帰指令信号を送る(原点復帰確認)。
2)記憶部から空吹きポイントを呼び出す。
3)あらかじめ設定された速度パラメータで決まる最高速度で、しかも所定の速度パターンでX軸テーブルおよびY軸テーブルのサーボモータを駆動するように各サーボモータ駆動部に指令信号を送るとともに、パルス処理部からのパルスを受けて塗布装置を速度制御しながら空吹きポイントに位置決めする。
4)記憶部から空吹きポイントでの上下方向の高さ位置を呼び出す。
5)あらかじめ設定された速度パラメータで決まる最高速度で、しかも所定の速度パターンでZ軸テーブルのサーボモータを駆動するようにサーボモータ駆動部に指令信号を送るとともに、パルス処理部からのパルスを受けて塗布装置を速度制御しながら空吹きポイントでの所定高さ位置に位置決めする。
6)塗布用サーボモータ駆動部に所定時間所定速度パラメータで塗布用サーボモータを駆動するように指令信号を送る(所定時間経過を待つ)。
7)Z軸テーブルのサーボモータ駆動部に原点復帰指令信号を送る(原点復帰確認)。
8)記憶部から塗布開始ポイントを呼び出す。
9)あらかじめ設定された速度パラメータで決まる最高速度で、しかも所定の速度パターンでX軸テーブルおよびY軸テーブルのサーボモータを駆動するように各サーボモータ駆動部に指令信号を送るとともに、パルス処理部からのパルスを受けて塗布装置を速度制御しながら塗布開始ポイントに位置決めする。
10)記憶部から塗布開始ポイントでの上下方向の高さ位置を呼出し、あらかじめ設定された速度パラメータで決まる最高速度で、しかも所定の速度パターンでZ軸テーブルのサーボモータを駆動するようにサーボモータ駆動部に駆動指令信号を送るとともに、パルス処理部からのパルスを受けて塗布装置の塗布ノズル先端を速度制御しながら所定の高さに位置決めする。
11)記憶部から通過ポイント、塗布終了ポイントを記憶部から呼出す。
12)あらかじめ設定された速度パラメータで決まる最高速度で、しかも所定の速度パターンでX軸テーブルおよびY軸テーブルのサーボモータを駆動するように各サーボモータ駆動部に指令信号を送ってロボット先端の塗布装置の塗布ノズルを通過ポイントを経由して塗布終了ポイントに位置決めするとともに、これら指令信号を塗布用サーボモータ駆動部に送り、塗布用パルス処理部からのパルスを受け、瞬時吐出量を所定瞬時吐出量パターンとなるように制御する。
13)Z軸テーブルのサーボモータ駆動部に原点復帰指令信号を送る(塗布開始ポイントのアドレスを+1、原点復帰確認)。
14)作業サイクル完了信号の有無を判断して、これがない時、8)に戻る。
15)X軸テーブルおよびY軸テーブルの各サーボモータ駆動部に待機ポイント復帰指令信号を送る。
16)待機ポイント復帰確認信号を待つ。
17)Z軸テーブルのサーボモータ駆動部に最下限移動指令信号を送り、塗布装置を最下限位置に位置決めする。
18)エンド。
となるように構成されている。
・・・
【0016】
その後、動作モード時に操作部6cから作業開始信号が送られると、Z軸テーブル4のサーボモータ駆動部6gに原点復帰指令信号が送られる。そのため、待機ポイントで溶剤中に先端を浸した塗布ノズル5bを持つ塗布装置5が上昇復帰する。続いて、塗布装置5が待機ポイントから空吹きポイントまで移動し、空吹き受け槽8の上方に達する。塗布装置5がこの位置で停止すると、塗布用サーボモータ駆動部6iに所定時間所定速度で塗布用サーボモータ5aを駆動するように指令信号が送られ、塗布ノズル5bから所定時間所定量の塗布剤が空吹き受け槽8内に吐出される。この時、塗布ノズル5bの先端開口から浸入した溶剤が染込んだ粘度の低い塗布剤は空吹き受け槽8に吐出され、塗布ノズル先端内には新たに所定粘度の塗布剤が充填される。
・・・
【0019】
一方、X軸テーブル2およびY軸テーブル3の各サーボモータ駆動部6gに指令信号が送られると同時に、この指令信号が塗布用サーボモータ駆動部6iに送られ、塗布用サーボモータ5aが駆動される。この時、塗布用サーボモータ5aはX軸テーブル2あるいはY軸テーブル3のいずれかの移動速度に応じて回転するので、塗布装置5の瞬時吐出量も移動速度と同様に変化する。そのため、塗布開始ポイントから塗布終了ポイントまでの速度パターンに応じて塗布装置5の瞬時吐出量が変化し、塗布剤の塗布面の厚さは均一に保たれる。」

イ 甲1Aに記載された発明
上記アの記載事項によれば、甲1Aには、次のとおりの発明が記載されていると認められる。

「以下の構成を有する、部品の表面あるいは裏面に塗料、接着剤あるいはシール剤を塗布する塗布ロボット。

(i)それぞれがモータにより駆動されるX軸テーブル、Y軸テーブル及びZ軸テーブル、
(ii)Z軸テーブルのロボット先端となるスライド部に取付けられた、塗布用モータにより駆動されて塗布剤の瞬時吐出量を制御する塗布装置、
(iii)塗布装置の移動範囲内に配置される塗布剤の固化を防止する溶剤貯留用の貯留槽、及び、空吹き受け槽、
(iv)以下の構成からなる制御装置、
・モータ駆動部に指令信号を送る制御部、
・各テーブルの位置決め制御及び塗布装置の瞬時吐出量制御をする制御プログラム、
・速度パラメータ等の各種制御パラメータ、及び、各モータの速度パターン、並びに、ワーク上の塗布個所毎の塗布開始・終了・通過ポイント、塗布開始ポイントでの高さ位置、塗布装置の吐出量制御パラメータ及び塗布用モータを駆動するための制御パラメータといった位置情報を記憶する記憶部、
・動作モード、設定モード等のモード指令信号を制御部に送るように構成され、動作モード時には制御部に作業開始信号を、設定モード時には記憶部に各種情報を送ることができるように構成されている、作業開始信号等各種指令信号を制御部に送る操作部、
・位置情報を記憶部に送るティーチングペンダント、
・各種情報を表示する表示部、
・前記制御部に入出力部を介して接続されるモータ駆動部およびパルス処理部
を備えており、

塗布装置の塗布ノズルを貯留槽内の溶剤内に位置させるように構成し、動作モード時に操作部から作業開始信号が送られると、塗布装置の塗布ノズルが貯留槽内の溶剤から離脱して塗布開始ポイントに達するまでに、塗布ノズルを空吹き受け槽上方に移動させ、この位置で塗布ノズルから塗布剤を空吹き受け槽内に吐出するように動作され、
塗布作業の際には、X軸テーブルおよびY軸テーブルの各モータ駆動部及び塗布用モータ駆動部に指令信号が同時に送られ、塗布用モータはX軸テーブルあるいはY軸テーブルのいずれかの移動速度に応じて回転することで、塗布開始ポイントから塗布終了ポイントまでの速度パターンに応じて塗布装置の瞬時吐出量が同様に変化し、塗布剤の塗布面の厚さが均一に保たれるように動作され、
前記制御部は、操作部から作業開始信号を受けると、以下の様に動作制御する。
1)Z軸テーブルのサーボモータ駆動部に原点復帰指令信号を送る。
2)記憶部から空吹きポイントを呼び出し、
3)X軸テーブルおよびY軸テーブルのモータを駆動するように各モータ駆動部に指令信号を送るとともに、パルス処理部からのパルスを受けて塗布装置を速度制御しながら位置決めする。
4)記憶部から空吹きポイントでの上下方向の高さ位置を呼び出し、
5)位置決めする。
6)塗布用モータ駆動部に所定時間所定速度パラメータで塗布用モータを駆動するように指令信号を送る。
7)Z軸テーブルのモータ駆動部に原点復帰指令信号を送る。
8)記憶部から塗布開始ポイントを呼び出し、
9)X軸テーブルおよびY軸テーブルのモータを駆動するように各モータ駆動部に指令信号を送るとともに、パルス処理部からのパルスを受けて塗布装置を速度制御しながら塗布開始ポイントに位置決めする。
10)記憶部から塗布開始ポイントでの高さ位置を呼出し、塗布装置の塗布ノズル先端を所定の高さに位置決めする。
11)記憶部から通過ポイント、塗布終了ポイントを記憶部から呼出す。
12)X軸テーブルおよびY軸テーブルのモータを駆動するように各モータ駆動部に指令信号を送ってロボット先端の塗布装置の塗布ノズルを通過ポイントを経由して塗布終了ポイントに位置決めするとともに、指令信号を塗布用モータ駆動部に送り、塗布用パルス処理部からのパルスを受け、瞬時吐出量を所定瞬時吐出量パターンとなるように制御する。
13)Z軸テーブルのモータ駆動部に原点復帰指令信号を送る。」(以下「甲1A装置発明」という。)

また、甲1Aには、「甲1A装置発明の装置を用いた塗料、接着剤あるいはシール剤塗布方法。」(以下「甲1A方法発明」という。)の発明が記載されていると認められる。

(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1A装置発明とを対比する。

(ア)甲1A装置発明の「塗布装置」、「部品」は、それぞれ、本件発明1の「吐出ヘッド」、「ワーク」に相当するし、甲1A装置発明の「塗布装置」は本件発明1の「塗布ロボット」に相当するから、甲1A装置発明の「塗料、接着剤あるいはシール剤を塗布する塗布ロボット」は、本件発明1の「液体材料塗布装置」に相当する。
(イ)甲1A装置発明の「塗布ロボット」は、「それぞれがモータにより駆動されるX軸テーブル、Y軸テーブル及びZ軸テーブル」、「Z軸テーブルのロボット先端となるスライド部」に取付けられた「塗布装置」、「モータ駆動部に指令信号を送る制御部」、「各テーブルの位置決め制御をする制御プログラム」、及び、速度パラメータ等の各種制御パラメータ等を記憶する「記憶部」を備えた制御装置を有し、「塗布作業の際には、X軸テーブルおよびY軸テーブルの各モータ駆動部に指令信号が送られ」て動作されるものであるから、これは、本件発明1の「液体材料塗布装置」が、「吐出ヘッドをワークに対し相対移動させるロボット」、及び、「塗布プログラムに基づいて、前記吐出ヘッドと前記ワークとの相対移動を制御する移動制御部」を備えることに相当するといえるし、また、「液体材料を所定の塗布パターンで前記ワークに塗布作業を行う」ものであるといえる。
(ウ)甲1A装置発明における、「塗布装置の瞬時吐出量制御をする制御プログラム」、及び、塗布装置の吐出量制御パラメータ等の情報を記憶する「記憶部」を備えた「制御装置」は、本件発明1の「吐出ヘッドからの前記液体材料の吐出動作を制御する吐出制御部」に相当する。
(エ)甲1A装置発明においては、塗布開始ポイントに位置決め後、塗布終了ポイントまでX、Y軸テーブルを所定の速度パターンで駆動し、これに合わせて所定瞬時吐出量パターンとなるよう、制御装置の制御部が制御している(動作9)?動作12))から、これは、本件発明1の「移動制御部と(前記)吐出制御部とが協働し」との構成を満足するといえる。
(オ)甲1A装置発明においては、塗布作業の際には、「制御プログラム」に基づいて、「制御部」から「X軸テーブルおよびY軸テーブルの各モータ駆動部及び塗布用サーボモータ駆動部に指令信号が同時に送られ、塗布用モータはX軸テーブルあるいはY軸テーブルのいずれかの移動速度に応じて回転することで、塗布開始から塗布終了ポイントまでの速度パターンに応じて塗布装置の瞬時吐出量が同様に変化し、塗布剤の塗布面の厚さが均一に保たれるように動作され」て制御されるところ、これは、本件発明1の「吐出制御部」による、「塗布プログラムに基づいて、前記吐出ヘッドと前記ワークとの相対移動速度に基づいて前記吐出ヘッドが前記液体材料を吐出する単位時間当たりの吐出量を変更する第1モードの吐出制御」に相当するといえるし、当該第1モードにおいては、「線引塗布を実行可能」となっているといえる。
(カ)甲1A装置発明における制御部は、動作3)?5)で位置決めされた空吹きポイントにおいて、「塗布用モータ駆動部に所定時間所定速度パラメータで塗布用モータを駆動するように指令信号を送」り(動作6))、「空吹き受け槽上方に移動」された「塗布ノズル」から、「塗布剤を空吹き受け槽内に吐出するように」動作されるように制御させる制御装置を有するものであって、空吹きポイントにおいては、テーブルは駆動されず、部品と塗布ノズルとの相対移動はないから、これは、本件発明1の「前記相対移動速度とは関係なく前記吐出ヘッドに予め定められた単位時間当たりの吐出量の液体材料を吐出させる第2モードの吐出制御」に相当するといえる。
(キ)甲1A装置発明においては、制御部が、(オ)に記載した制御と(カ)に記載した制御を行う信号を塗布用モータ駆動部に送るのであるから、これは、本件発明1の「吐出制御部」が「吐出制御」を「切り替え可能」であることに相当する。

そうすると、本件発明1と甲1A装置発明とは、以下の一致点で一致し、以下の相違点A1で相違する。

<一致点>
液体材料を吐出する吐出ヘッドと、
前記吐出ヘッドをワークに対し相対移動させるロボットと、
塗布プログラムに基づいて、前記吐出ヘッドと前記ワークとの相対移動を制御する移動制御部と、
前記吐出ヘッドからの前記液体材料の吐出動作を制御する吐出制御部と、を備え、
前記移動制御部と前記吐出制御部とが協働し、前記液体材料を所定の塗布パターンで前記ワークに塗布作業を行う液体材料塗布装置であって、
前記吐出制御部は、前記塗布プログラムに基づいて、前記吐出ヘッドと前記ワークとの相対移動速度に基づいて前記吐出ヘッドが前記液体材料を吐出する単位時間当たりの吐出量を変更する第1モードの吐出制御と、前記相対移動速度とは関係なく前記吐出ヘッドに予め定められた単位時間当たりの吐出量の液体材料を吐出させる第2モードの吐出制御とを切り替え可能であり、かつ、前記第1モードの吐出制御で、線引塗布を実行可能である液体材料塗布装置。

<相違点1A>
液体材料塗布装置の吐出制御部により行われる第2モードの吐出制御について、本件発明1では「線引塗布を実行可能」とされているのに対して、甲1A装置発明では、「塗布剤を空吹き受け槽内に吐出するように動作される」ものであり、線引塗布を実行可能とはされていない点。

新規性についての判断
上述のとおり、本件発明1と甲1A装置発明とは上記相違点1Aで相違しており、また、上記相違点1Aは実質的な相違点であるから、甲1A装置発明と相違点1Aで異なる本件発明1について、甲1A装置発明、つまり、甲1Aに記載された発明であるということはできない。

進歩性についての判断
相違点1Aについて検討する。
申立人Aが提出したいずれの証拠にも、吐出ヘッドとワークとの相対移動速度とは関係なく吐出ヘッドに予め定められた単位時間当たりの吐出量の液体材料を吐出させる第2モードの吐出制御において、線引塗布を実行可能とする点の記載はない。
そして、申立人Aは、相違点1Aに関し、令和1年6月17日に提出した意見書において、第2モードの吐出制御において、線引塗布を実行可能とする点が公知あるいは周知であるとして、甲1B、甲3A、甲3B、甲6Cを指摘し、甲1A装置発明を、第2モードでの線引塗布が実行可能なものとすることは容易である旨主張しているところ、申立人Aが指摘する甲3Bには、液体吐出装置において、液体材料の塗布を、本件発明1の第2モードでの線引塗布に相当する方法で行うことは記載されている(【0029】?【0034】、図8及び図9)。
しかしながら、甲1A装置発明は、従来の塗布ロボットでは、移動速度の変化にともなって、塗布装置の瞬時吐出量も変化し(つまり、第1モードでの線引きを行い)、塗布面の厚さが均一に保たれているところ、当該ロボットでは、塗布ノズルに充満された塗布剤の固化を防止するため、塗布ノズルが塗布装置の移動路下方の貯留槽に貯留された溶剤内に浸されるために、塗布ノズル先端の塗布剤には溶剤が染込み塗布剤の粘度が低くなり、塗布作業再開時に塗布開始ポイントでの塗布剤の塗布量が多くなり、塗布面全面に亘って塗布面の厚さを均一に保つことが困難となる等の欠点があるのを解決するために、塗布装置の移動範囲内に空吹き受け槽を配置し、塗布装置の塗布ノズルを空吹き受け槽に移動させ、この位置で塗布ノズルから塗布剤を吐出するように構成することで、塗布作業が開始時には塗布ノズル先端には所定粘度の塗布剤が充満されるようにした点に特徴を有しており、甲1Aには、線引き工程における制御に着目する言及や、線引塗布を第2のモードで行うことを示唆する記載はない。
また、1つの塗布装置において線引塗布を行う際に、第1モードと第2モードの両方で行えるようにすることが周知の課題であったとはいえない。
そうすると、甲1A装置発明において、当業者が、塗布ロボットを、塗布開始ポイントから塗布終了ポイントまでの速度パターンに応じて塗布装置の瞬時吐出量が同様に変化し、塗布剤の塗布面の厚さが均一に保たれるように動作させる制御(つまり、第1モードでの制御)に加えて、上記相対移動速度とは関係なく塗布装置に予め定められた単位時間当たりの吐出量の塗布剤を吐出させる制御(つまり、第2モードの制御)での線引きも行えるように構成し、第1モードおよび第2モードを切り替可能とすること、つまり、相違点1Aに係る本件発明1の構成を備えたものとすることを当業者が動機付けられるとはいえない。
申立人A?Dが提出した全ての証拠を参酌しても同様である。
(なお、申立人Aが上記意見書で指摘する甲1B及び甲6Cの記載(甲1Bの請求項2、【0022】、【0024】、【図2】、甲6Cの【0030】、【0036】、【図5】)からは、線引きを第2モードで実施しているかは不明であるし、甲3Aにおいて、捨て打ち工程後、本来の接着剤塗布工程の前に、所定の圧力の圧縮空気を所定の時間送り出することにより接着剤をノズルから押し出して行う試し塗布(請求項6、【0011】?【0013】、【0019】、【0025】?【0027】、図14)は、接着剤を玉状(スポット状)に押し出して広げるものであり、これは、線引きにはあたらない。)

以上のとおり、申立人が提出したいずれの証拠からも、甲1A装置発明を相違点2に係る本件発明1の構成を備えたものとすることを当業者は動機付けられないから、本件発明1について、甲1Aに記載された発明及び申立人A?Dが提出した証拠に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(3)本件発明2?6について
本件発明2?6は、請求項1を直接あるいは間接的に引用する請求項に係るものであって、本件発明2?6は、甲1装置発明と、少なくとも上記相違点1Aで相違している。
そして、相違点1Aについての判断は、上記(2)イ及びウで記載したとおりであるから、甲1装置発明と少なくとも上記相違点1Aで相違する本件発明2?6についても、上記(2)イ及びウで記載したことと同様の理由によって、甲1Aに記載された発明であるということはできないし、また、甲1Aに記載された発明及び申立人A?Dが提出した証拠に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

(4)本件発明9について
ア 対比
本件発明9は、本件発明1で特定される装置を用いた液体材料塗布方法に関するものであるし、甲1方法発明は、甲1装置発明の装置を用いた塗料、接着剤あるいはシール剤塗布方法の発明である。
そして、上記(2)アにおける対比を踏まえて、本件発明9と甲1A方法発明を対比すると、両者は、以下の一致点で一致し、以下の相違点2Aで相違する。

<一致点>
液体材料を吐出する吐出ヘッドと、
前記吐出ヘッドをワークに対し相対移動させるロボットと、
塗布プログラムに基づいて、前記吐出ヘッドと前記ワークとの相対移動を制御する移動制御部と、
前記吐出ヘッドからの前記液体材料の吐出動作を制御する吐出制御部と、を備え、
前記移動制御部と前記吐出制御部とが協働し、前記液体材料を所定の塗布パターンで前記ワークに塗布作業を行う液体材料塗布装置を用いた液体材料塗布方法であって、
前記吐出制御部は、前記吐出ヘッドと前記ワークとの相対移動速度に基づいて前記吐出ヘッドが前記液体材料を吐出する単位時間当たりの吐出置を変更する第1モードの吐出制御、および、前記相対移動速度とは関係なく前記吐出ヘッドに予め定められた単位時間当たりの吐出量の液体材料を吐出させる第2モードの吐出制御を有し、かつ、前記第1モードで、線引塗布を実行可能であり、
前記塗布プログラムに基づいて、前記第1モードの吐出制御と、前記第2モードの吐出制御とを切り替えする液体材料塗布方法。

<相違点2A>
液体材料塗布方法に用いられる液体材料塗布装置の吐出制御部により行われる第2モードの吐出制御について、本件発明9では「線引塗布を実行可能」とされているのに対して、甲1A方法発明では、「塗布剤を空吹き受け槽内に吐出するように動作される」ものであり、線引塗布を実行可能とはされていない点。

新規性について
上述のとおり、本件発明9と甲1A方法発明とは上記相違点2Aで相違しており、また、上記相違点2Aは実質的な相違点であるから、甲1A方法発明と相違点2Aで異なる本件発明9について、甲1A方法発明、つまり、甲1Aに記載された発明であるということはできない。

進歩性について
相違点2Aについて検討すると、相違点2Aは、本件発明1の上記相違点1Aに対応するものであり、相違点2Aと相違点1Aは実質的に同じである。
そして、相違点2Aについての進歩性の判断は、上記(2)ウにおいて相違点1Aについて説示したことと同様であり、上記(2)ウで説示したことと同様の理由によって、本件発明9について、甲2Aに記載された発明及び申立人A?Dが提出した証拠に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(5)本件発明10?14、18について
本件発明10?14、18は、請求項9を直接あるいは間接的に引用する請求項に係るものであって、本件発明10?14、18は、甲1方法発明と、少なくとも上記相違点2Aで相違している。
そして、相違点2Aについての判断は、上記(4)イ及びウで記載したとおりであるから、甲1A方法発明と少なくとも上記相違点2Aで相違する本件発明10?14、18についても、上記(4)イ及びウで記載したことと同様の理由によって、甲1Aに記載された発明であるということはできないし、また、甲1Aに記載された発明及び申立人A?Dが提出した証拠に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

2.まとめ
以上のとおりであるから、申立理由A1及びA2には理由がない。


第7 取消理由(決定の予告)に採用しなかった申立人Bによる申立理由について

1.申立理由B1(甲1Bに基づく進歩性)について
(1)甲1Bの記載事項及び甲1Bに記載された発明
ア 甲1Bの記載事項
甲1Bには、以下の記載がある。
「【0011】
・・・本発明の実施の形態に係るペースト塗布装置1は、塗布対象物としての基板Kが水平状態(図1中、X軸方向とそれに直交するY軸方向に沿う状態)で載置される基板ステージ2と、その基板ステージ2上の基板Kにシール剤などのシール性及び接着性を有するペーストをそれぞれ塗布する複数の塗布ヘッド3A、3Bと、それらの塗布ヘッド3A、3BをX軸方向(図1中)に移動可能に支持してX軸方向に沿って移動させるX軸移動機構4と、そのX軸移動機構4を介して各塗布ヘッド3A、3Bを支持する支持部材5と、その支持部材5をY軸方向(図1中)に移動可能に支持してY軸方向に沿って移動させる一対のY軸移動機構6A、6Bと、基板ステージ2や一対のY軸移動機構6A、6Bなどを支持する架台7と、各部を制御する制御部8とを備えている。」

「【0021】
制御部8は、架台7内に設けられており、各部を集中的に制御するマイクロコンピュータと、ペースト塗布に関する塗布情報や各種のプログラムなどを記憶する記憶部と(いずれも図示せず)を備えている。この制御部8には、各種の設定値を設定するためなどに操作者により入力操作される入力部(図示せず)が接続されている。なお、塗布情報は、所定の塗布パターン(ペーストパターン)や描画速度、ペーストの塗布量(吐出量)等に関する情報を含んでいる。
【0022】
この制御部8は、塗布情報や各種のプログラムに基づいて、各塗布ヘッド3A、3Bの中から塗布実行対象の塗布ヘッドを選択し、X軸移動機構4や一対のY軸移動機構6A、6Bなどを制御し、選択した塗布ヘッド3A、3Bのノズル3bと基板ステージ2上の製造用の基板Kとをその基板Kの表面方向に平行に相対移動させ、製造用の基板K上に所定塗布パターンにペーストを塗布する。このとき、制御部8は、距離測定器3dにより測定された離間距離によるフィードバック制御を行い、基板Kの表面とノズル3bとのギャップを所定のギャップに保つように制御する(ギャップ制御)。また、制御部8は、各塗布ヘッド3A、3Bの各々の収容筒3aに供給する気体の圧力をそれぞれ調整し、ペーストを吐出する際にペーストに加える吐出圧力を制御する(吐出量制御)。
・・・
【0025】
このような段取り替えを含む製造工程中、制御部8は、所望のタイミングで、塗布実行対象の塗布ヘッドに対して(面取り数が1である場合、塗布ヘッド3Aに対して、また、面取り数が2である場合、各塗布ヘッド3A、3Bに対して)、塗布性能を維持するための維持動作を実行させる。このとき、制御部8は、各塗布ヘッド3A、3B中の塗布実行非対象の塗布ヘッドに対しても(面取り数が1である場合、塗布ヘッド3Bに対しても)、維持動作を実行させる。したがって、各塗布ヘッド3A、3Bは、製造用の基板Kにペーストを吐出して塗布する塗布動作を面取り数に応じてそれぞれ行う一方、面取り数に関係なく、すなわち塗布実行対象の塗布ヘッドであるか否かに関係なく維持動作をそれぞれ同時に行うことになる。これにより、全ての塗布ヘッド3A、3Bの塗布性能を常に良好に維持することができる。」

「【0035】
捨て打ちを行う場合、制御部8は、一対のY軸移動機構6A、6Bにより支持部材5をY軸方向に移動させ、X軸移動機構4により各塗布ヘッド3A、3BをX軸方向にそれぞれ移動させ、基板ステージ2上の捨て打ち基板Kaの各塗布開始位置にそれぞれ塗布実行対象、塗布実行非対象に関係なく各塗布ヘッド3A、3Bを対向させる。その後、制御部8は、塗布情報(吐出圧力、描画速度及びギャップなど)に基づいて、各塗布ヘッド3A、3Bの各々のノズル3bからペーストを吐出させながら、X軸移動機構4により各塗布ヘッド3A、3BをX軸方向に移動させ、基板ステージ2上の捨て打ち基板Kaの表面にペーストを塗布し、直線状あるいは枠形状のペーストパターンを形成する(図4参照)。これにより、捨て打ち基板Ka上にペーストパターンが形成されるので、そのペーストパターンを用いてペーストの検査を行うことが可能になり、さらに、固化状態あるいは軟化状態のペーストが吐出されて取り除かれるので、待機している塗布実行非対象の塗布ヘッドにおいてもペースト固化やペースト軟化による塗布性能の低下を防止することが可能になる。
【0036】
また、捨て吐出を行う場合には、制御部8は、X軸移動機構4により各塗布ヘッド3A、3BをX軸方向にそれぞれ移動させ、塗布ヘッド3Aを受け部材9aに対向させ、塗布ヘッド3Bを受け部材9bに対向させる。その後、制御部8は、塗布実行対象、塗布実行非対象に関係なく各塗布ヘッド3A、3Bの各々のノズル3bからそれぞれペーストを吐出させる。塗布ヘッド3Aから吐出されたペーストは受け部材9a上に溜まり、塗布ヘッド3Bから吐出されたペーストは受け部材9b上に溜まる(図5参照)。これにより、強固化状態のペーストが吐出されて取り除かれるので、ペースト固化による塗布性能の低下を防止することが可能になる。
・・・
【0038】
また、塗布を行う場合には、制御部8は、各塗布ヘッド3A、3Bの中から塗布実行対象の塗布ヘッドを選択し、一対のY軸移動機構6A、6Bにより支持部材5をY軸方向に移動させ、X軸移動機構4により塗布実行対象の塗布ヘッドをX軸方向に移動させ、基板ステージ2上の製造用の基板Kの塗布開始位置に塗布実行対象の塗布ヘッドを対向させる。その後、制御部8は、描画条件である塗布情報(吐出圧力、描画速度及びギャップなど)に基づいて、塗布実行対象の塗布ヘッドのノズル3bからペーストを吐出させながら、一対のY軸移動機構6A、6Bにより支持部材5をY軸方向に移動させ、X軸移動機構4により塗布実行対象の塗布ヘッドをX軸方向に移動させ、基板ステージ2上の製造用の基板Kの表面にペーストを塗布し、所定枠形状のペーストパターンを形成する。」

イ 甲1Bに記載された発明
甲1Bの上記アの記載事項によれば、甲1Bには、以下の発明が記載されていると認められる。

「ペーストを吐出する複数の塗布ヘッド3A、3Bと、
塗布ヘッド3A、3BをX軸方向に移動可能に支持してX軸方向に沿って移動させるX軸移動機構4と、そのX軸移動機構4を介して各塗布ヘッド3A、3Bを支持する支持部材5と、その支持部材5をY軸方向に移動可能に支持してY軸方向に沿って移動させる一対のY軸移動機構6A、6Bと、
塗布情報(塗布パターンや描画速度、ペーストの塗布量(吐出量)等の情報)や各種のプログラムに基づいて、各塗布ヘッド3A、3Bの中から塗布実行対象の塗布ヘッドを選択肢し、X軸移動機構4や一対のY軸移動機構6A、6Bを制御し、塗布ヘッド3A、3Bのノズル3bを基板Kの表面方向に平行に相対移動させるとともに、
各塗布ヘッド3A、3Bの各々の収容筒3aに供給する気体の圧力をそれぞれ調整し、ペーストを吐出する際にペーストに加える吐出圧力を制御する制御部8と、
を備えた、製造用の基板K上に所定塗布パターンにペーストを塗布するペースト塗布装置であって、
制御部8は、塗布情報や各種のプログラムに基づいて、塗布ヘッドをペーストを吐出させながら移動させて、基板Kの表面に所定枠状のペーストパターンを形成する塗布動作と、塗布ヘッド3A、3Bに対向した位置にある受け部材9a、9bに塗布ヘッド3A、3Bからペーストを吐出させる維持動作である捨て吐出とを切替え可能である、
ペースト塗布装置。」(以下「甲1B装置発明」という。)

また、甲1Bには、「甲1B装置発明の装置を用いたペースト塗布方法。」(以下「甲1B方法発明」という。)の発明が記載されていると認められる。

(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1B装置発明とを対比する。
(ア)甲1B装置発明の「ペーストを吐出する複数の塗布ヘッド3A、3B」、「製造用の基板K」は、それぞれ、本件発明1の「液体材料を吐出する吐出ヘッド」、「ワーク」に相当する。
(イ)甲1B装置発明の「ペースト塗布装置」は、「塗布ヘッド3A、3BをX軸方向に移動可能に支持してX軸方向に沿って移動させるX軸移動機構4と、そのX軸移動機構4を介して各塗布ヘッド3A、3Bを支持する支持部材5と、その支持部材5をY軸方向に移動可能に支持してY軸方向に沿って移動させる一対のY軸移動機構6A、6B」、及び、「塗布情報(塗布パターンや描画速度、ペーストの塗布量(吐出量)等の情報)や各種のプログラムに基づいて、各塗布ヘッド3A、3Bの中から塗布実行対象の塗布ヘッドを選択肢し、X軸移動機構4や一対のY軸移動機構6A、6Bを制御し、塗布ヘッド3A、3Bのノズル3bを基板Kの表面方向に平行に相対移動させる」、「制御部8」を有するから、これは、本件発明1の「液体材料塗布装置」が、「吐出ヘッドをワークに対し相対移動させるロボット」、及び、「塗布プログラムに基づいて、前記吐出ヘッドと前記ワークとの相対移動を制御する移動制御部」を備えることに相当するといえる。
(ウ)甲1B装置発明の「各塗布ヘッド3A、3Bの各々の収容筒3aに供給する気体の圧力をそれぞれ調整し、ペーストを吐出する際にペーストに加える吐出圧力を制御する制御部8」は、本件発明1の「吐出ヘッドからの前記液体材料の吐出動作を制御する吐出制御部」に相当する。
(エ)甲1B装置発明においては、「制御部8」は、「(塗布パターンや描画速度、ペーストの塗布量(吐出量)等の情報である)塗布情報・・・に基づいて、塗布ヘッドをペーストを吐出させながら移動させて、基板Kの表面に所定枠状のペーストパターンを形成する塗布動作」を行うものであるから、これは、本件発明1の「移動制御部と(前記)吐出制御部とが協働し」との構成を満足するといえる。
(オ)甲1B装置発明においては、「制御部8」は、「塗布動作」と、「維持動作である捨て吐出」とを「切替え可能」であるから、これは、本件発明1の「吐出制御部」が「吐出制御」を「切り替え可能」であることに相当する。
(カ)甲1B装置発明の「制御部8」が行う、「塗布ヘッド3A、3Bに対向した位置にある受け部材9a、9bに塗布ヘッド3A、3Bにからペーストを吐出させる維持動作である捨て吐出」制御は、塗布ヘッド3A、3Bが受け部材9a、9bに対向した位置に停止した状態でペーストが吐出されることから、相対移動速度とは関係がないといえるし、その際には、「ペーストの塗布量(吐出量)等の情報」を含む「塗布情報」等に基づいて、ペーストの吐出がなされることから、塗布ヘッド3A、3Bから、予め定められた単位時間当たりの吐出量のペーストが吐出されるといえる。
そうすると、甲1B装置発明における上記「捨て吐出」制御は、本件発明1の「前記相対移動速度とは関係なく前記吐出ヘッドに予め定められた単位時間当たりの吐出量の液体材料を吐出させる第2モードの吐出制御」に相当するといえる。
(キ)甲1B装置発明の「制御部8」による「塗布情報や各種のプログラムに基づいて、塗布ヘッドをペーストを吐出させながら移動させて、基板Kの表面に所定枠状のペーストパターンを形成する塗布動作」は、本件発明1の「吐出制御部」による「前記塗布プログラムに基づいて、前記吐出ヘッドと前記ワークとの相対移動速度に基づいて前記吐出ヘッドが前記液体材料を吐出する単位時間当たりの吐出量を変更する第1モードの吐出制御」と、「液体材料を吐出する第1のモードの吐出制御」である限りにおいて一致するし、上記甲1B装置発明の制御部8による塗布動作は「線引塗布」であるから、甲1B装置発明は、本件発明1の「第1モードの吐出制御で、線引塗布を実行可能である」との構成を満足するといえる。

そうすると、本件発明1と甲1B装置発明とは、以下の一致点で一致し、以下の相違点1B及び相違点2Bで相違する。

<一致点>
液体材料を吐出する吐出ヘッドと、
前記吐出ヘッドをワークに対し相対移動させるロボットと、
塗布プログラムに基づいて、前記吐出ヘッドと前記ワークとの相対移動を制御する移動制御部と、
前記吐出ヘッドからの前記液体材料の吐出動作を制御する吐出制御部と、を備え、
前記移動制御部と前記吐出制御部とが協働し、前記液体材料を所定の塗布パターンで前記ワークに塗布作業を行う液体材料塗布装置であって、
前記吐出制御部は、前記塗布プログラムに基づいて、液体材料を吐出する第1のモードと、前記相対移動速度とは関係なく前記吐出ヘッドに予め定められた単位時間当たりの吐出量の液体材料を吐出させる第2モードの吐出制御へ切り替え可能であり、かつ、前記第1モードの吐出制御で、線引塗布を実行可能である液体材料塗布装置。

<相違点1B>
吐出制御部が、塗布プログラムに基づいて液体材料を吐出する第1のモードでの吐出制御について、本件発明1では、「吐出ヘッドとワークとの相対移動速度に基づいて前記吐出ヘッドが前記液体材料を吐出する単位時間当たりの吐出量を変更する」と特定されているのに対し、甲1B装置発明では、「塗布ヘッドをペーストを吐出させながら移動させて、基板Kの表面に所定枠状のペーストパターンを形成する塗布動作」を行うことが特定されるのみで、「吐出ヘッドとワークとの相対移動速度に基づいて前記吐出ヘッドが前記液体材料を吐出する単位時間当たりの吐出量を変更する」吐出制御を行うことは特定されていない点。
<相違点2B>
液体材料塗布装置の吐出制御部により行われる第2モードの吐出制御について、本件発明1では「線引塗布を実行可能」とされているのに対して、甲1B装置発明では、「塗布ヘッド3A、3Bに対向した位置にある受け部材9a、9bに塗布ヘッド3A、3Bからペーストを吐出させる維持動作」である「捨て吐出」がされるものであり、線引塗布を実行可能とはされていない点。

イ 判断
事案に鑑み、相違点1Bと相違点2Bについてまとめて検討する。
相違点1Bに関し、本件特許に係る出願の出願時、液体材料塗布装置の分野において、吐出ヘッド(ノズル)と被塗布物(ワーク)との相対移動速度に基づいて吐出ヘッド(ノズル)が液体材料を吐出する単位時間当たりの吐出量を変更して塗布を行うことは周知であった(例えば、甲2Bの請求項1)。
また、相違点2Bに関し、甲1B装置発明と同様、塗布に使用される装置に関する甲3Bには、液体吐出装置による液体材料の塗布を、本件発明1の第2モードでの線引塗布に相当する方法で行うことが記載されており(【0029】?【0034】、図8及び図9)、第2モードでの線引塗布は周知であった。

しかしながら、甲1B装置発明は、従来のペースト塗布装置では、パネルサイズ及び面取り数を変更する際、塗布ヘッドの取り付けあるいは取り外しを行い、さらに、描画条件出しを行う必要があるため、段取り替え時間は数十分から数時間となり、生産性が低下してしまう問題があったのを、ペースト塗布装置において、塗布対象物にペーストを吐出して塗布する塗布動作及び塗布性能を維持するための維持動作をそれぞれ行う複数の塗布ヘッドと、複数の塗布ヘッド中の塗布実行対象の塗布ヘッドに対して塗布動作を実行させる手段と、塗布実行対象の塗布ヘッドに対して維持動作を実行させる手段と、塗布実行対象の塗布ヘッドに対して維持動作を実行させる場合に複数の塗布ヘッド中の塗布実行非対象の塗布ヘッドに対しても維持動作を実行させる手段とを備えることで解決したものであり(【0004】?【0007】)、塗布動作についての一般的な説明はある(【0038】)が、塗布動作自体の制御自体に着目する言及はないし、甲1Bには、線引塗布を第2のモードで行うことを示唆する記載はない。
また、線引塗布を行う際に、1つの塗布装置において第1モードと第2モードの両方を行えるようにすることが周知の課題であったとはいえない。

そうすると、塗布動作を、第1モードあるいは第2モードでの線引塗布で行うことが周知であったとしても、甲1B装置発明における制御部8を、第1モードでの線引塗布及び第2モードでの線引塗布の両方の塗布動作を実行可能なものとし、当該線引塗布のモードを切り替え可能なものとすること、つまり、相違点1B及び相違点2Bを兼ねあわせた構成を有するものとすることまでを当業者が動機付けられるとはいえない。
申立人A?Dが提出した全ての証拠を参酌しても同様である。

よって、本件発明1について、甲1Bに記載された発明及び申立人A?Dが提出した証拠に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(3)本件発明2?6について
本件発明2?6は、請求項1を直接あるいは間接的に引用する請求項に係るものであって、本件発明2?6は、甲1B装置発明と、少なくとも上記相違点1B及び相違点2Bで相違している。
そして、相違点1B及び相違点2Bについての判断は、上記(2)イで記載したとおりであるから、甲1B装置発明と少なくとも上記相違点1B及び相違点2Bで相違する本件発明2?6についても、上記(2)イで記載したことと同様の理由によって、甲1Bに記載された発明及び申立人A?Dが提出した証拠に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(4)本件発明9について
ア 対比
本件発明9は、本件発明1で特定される装置を用いた液体材料塗布方法に関するものであるし、甲1B方法発明は、甲1B装置発明の装置を用いたペースト塗布方法の発明である。
そして、上記(2)アにおける対比を踏まえて、本件発明9と甲1B方法発明を対比すると、両者は、以下の一致点で、一致し、以下の相違点3B及び相違点4Bで相違する。

<一致点>
液体材料を吐出する吐出ヘッドと、
前記吐出ヘッドをワークに対し相対移動させるロボットと、
塗布プログラムに基づいて、前記吐出ヘッドと前記ワークとの相対移動を制御する移動制御部と、
前記吐出ヘッドからの前記液体材料の吐出動作を制御する吐出制御部と、を備え、
前記移動制御部と前記吐出制御部とが協働し、前記液体材料を所定の塗布パターンで前記ワークに塗布作業を行う液体材料塗布装置であって、
前記吐出制御部は、前記塗布プログラムに基づいて、液体材料を吐出する第1のモードの吐出制御、および、前記相対移動速度とは関係なく前記吐出ヘッドに予め定められた単位時間当たりの吐出量の液体材料を吐出させる第2モードの吐出制御を有し、かつ、前記第1モードで、線引塗布を実行可能であり、
前記塗布プログラムに基づいて、前記第1モードの吐出制御と、前記第2モードの吐出制御とを切り替えする液体材料塗布方法。

<相違点3B>
吐出制御部が塗布プログラムに基づいて液体材料を吐出する第1のモードでの吐出制御について、本件発明9では、「吐出ヘッドとワークとの相対移動速度に基づいて前記吐出ヘッドが前記液体材料を吐出する単位時間当たりの吐出量を変更する」と特定されているのに対し、甲1B方法発明では、「塗布ヘッドをペーストを吐出させながら移動させて、基板Kの表面に所定枠状のペーストパターンを形成する塗布動作」を行うことが特定されるのみで、「吐出ヘッドとワークとの相対移動速度に基づいて前記吐出ヘッドが前記液体材料を吐出する単位時間当たりの吐出量を変更する」吐出制御を行うことは特定されていない点。
<相違点4B>
液体材料塗布装置の吐出制御部により行われる第2モードの吐出制御について、本件発明9では「線引塗布を実行可能」とされているのに対して、甲1B方法発明では、「塗布ヘッド3A、3Bに対向した位置にある受け部材9a、9bに塗布ヘッド3A、3Bからペーストを吐出させる維持動作」である「捨て吐出」がされるものであり、線引塗布を実行可能とはされていない点。

イ 判断
相違点3B及び相違点4Bについて検討すると、相違点3B、相違点4Bは、それぞれ、本件発明1の上記相違点1B、相違点2Bに対応するものであり、相違点3Bと相違点1B、相違点4Bと相違点2Bは、実質的に同じである。
そして、相違点3B及び相違点4Bについての進歩性の判断は、上記(2)イにおいて相違点1B及び相違点2Bについて検討したことと同様であり、上記(2)イで説示したことと同様の理由によって、本件発明9について、甲1Bに記載された発明及び申立人A?Dが提出した証拠に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(5)本件発明10?14、17、18について
本件発明10?14、17、18は、請求項9を直接あるいは間接的に引用する請求項に係るものであって、本件発明10?14、17、18は、甲1B方法発明と、少なくとも上記相違点3B及び相違点4Bで相違している。
そして、相違点3B及び相違点4Bについての判断は、上記(4)イで記載したとおりであるから、甲1B方法発明と少なくとも上記相違点3B及び相違点4Bで相違する本件発明10?14、17、18についても、上記(4)イで記載したことと同様の理由によって、甲1Bに記載された発明及び申立人A?Dが提出した証拠に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

2.申立理由B4(サポート要件)について
請求項7及び15に係る本件特許に対して申立人Bが主張する申立理由B4は、より具体的には、概略、次のとおりである。

請求項7及び15には「吐出制御部は、第1の相対移動速度および第1の相対移動速度に対応する第1の単位時間当たりの吐出量と、第2の相対移動速度および第2の相対移動速度に対応する第2の単位時間当たりの吐出量とに基づき、第3の相対移動速度に対応する第3の単位時間当たりの吐出量を自動算出する」と記載されており、当該記載によれは、本件発明7及び8の吐出制御においては相対移動速度と吐出量との具体的関係は規定されていないから、あらゆる関係が含まれる。
一方、本願明細書の発明の詳細な説明には、【0058】に、「作業者は、求めた相対移動速度Va,Vbと、吐出制御量Da,Dbとをディスペンスコントローラ40に入力する。これにより、ディスペンスコントローラ40により、塗布線の線幅がWaとなる、相対移動速度Vと吐出制御量Dとの関係を示す一次関数が算出される。」と記載され、吐出制御部は、この相対移動速度Vと吐出制御量Dとの関係を示す一次関数により、【0045】に示されるように、相対移動速度Vに応じた吐出制御量Dが算出されるものである。つまり、本願明細書には、相対移動速度Vと吐出制御量Dとの関係は一次関数で表されることが開示されているのみであり、出願時の技術常識に照らしても、本件特許発明7及び15の範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。

そこで、検討すると、請求項7及び15には、上記発明特定事項の記載に続けて、「第1モードの吐出制御において、前記吐出ヘッドを前記第1ないし第3のいずれかの相対移動速度で移動させながら当該相対移動速度に対応する単位時間当たりの吐出量の液体材料を前記吐出ヘッドから吐出する」ことが特定されている。
そして、請求項7及び15のこれら発明特定事項の記載を併せみれば、当業者であれば、吐出ヘッドとワークとの相対移動速度に基づいて吐出ヘッドが液体材料を吐出する単位時間当たりの吐出量を変更する第1モードにおいて、「第1の相対移動速度および第1の相対移動速度に対応する第1の単位時間当たりの吐出量と、第2の相対移動速度および第2の相対移動速度に対応する第2の単位時間当たりの吐出量とに基づき」導き出される関数は一次関数であると理解し、また、「自動算出」される「第3の相対移動速度に対応する第3の単位時間当たりの吐出量」が、当該一次関数に基づいて算出された値であると理解できるし、発明の詳細な説明な記載(特に、【0058】)には、相対移動速度Vと吐出制御量Dとの関係は一次関数で表されることが開示されている。
そうすると、本件発明7及び15は発明の詳細な説明に記載された発明であるといえる。

3.まとめ
以上のとおりであるから、申立理由B1及びB4には理由がない。
なお、申立理由B2(明確性要件)は上記取消理由3として、また、申立理由B3(実施可能要件)は上記取消理由4として採用されており、これらの申立理由についての判断は、すでに上記第5の2.においてなされている。


第8 取消理由(決定の予告)に採用しなかった申立人Cによる申立理由について

1.申立理由C1(甲1Cに基づく新規性)及び申立理由C2(甲1Cに基づく進歩性)について
申立人Cが特許異議申立時に申立てていた申立理由C1及び申立理由C2の対象請求項は上記第4(3)で記載したとおりであるが、令和1年6月17日提出の意見書において、申立人Cは訂正後の全請求項1?3及び9?11についても進歩性違反を主張している。そして、訂正により請求項8及び16は削除されていることから、申立理由C1の判断は、請求項1?7、9?15、17について、申立理由C2の判断は、請求項1?7、9?15、17、18について行った。

(1)甲1Cの記載事項及び甲1Cに記載された発明
ア 甲1Cの記載事項
甲1Cには、以下の記載がある。
「【請求項1】
塗布対象物に向けてスクリューの回転によりノズルから前記スクリューの回転速度に応じた量のペーストを吐出する塗布ヘッドと、
直線部分及び屈曲部分を有する塗布パターンに基づいて前記塗布対象物と前記塗布ヘッドとを相対移動させる移動機構と、
前記スクリューの回転開始タイミングから前記塗布対象物と前記塗布ヘッドとの相対移動開始タイミングまでの時間、前記直線部分の塗布を行う場合の前記スクリューの回転速度より小さく前記スクリューの回転速度を制御し、前記時間が経過した場合、前記塗布対象物と前記塗布ヘッドとの相対移動速度に応じて前記スクリューの回転速度を制御する手段と、
を備えることを特徴とするペースト塗布装置。
・・・
【請求項3】
前記制御する手段は、前記時間中における前記スクリューの回転速度を所定時間一定に制御することを特徴とする請求項1又は2記載のペースト塗布装置。
【請求項4】
塗布対象物に向けてスクリューの回転によりノズルから前記スクリューの回転速度に応じた量のペーストを吐出する塗布ヘッドを用いて、直線部分及び屈曲部分を有する塗布パターンに基づいて前記塗布対象物と前記塗布ヘッドとを相対移動させながら、前記塗布対象物にペーストを塗布する工程と、
前記スクリューの回転開始タイミングから前記塗布対象物と前記塗布ヘッドとの相対移動開始タイミングまでの時間、前記直線部分の塗布を行う場合の前記スクリューの回転速度より小さく前記スクリューの回転速度を制御し、前記時間が経過した場合、前記塗布対象物と前記塗布ヘッドとの相対移動速度に応じて前記スクリューの回転速度を制御する工程と、
を有することを特徴とするペースト塗布方法。
・・・
【請求項6】
前記制御する工程は、前記時間中における前記スクリューの回転速度を所定時間一定に制御することを特徴とする請求項4又は5記載のペースト塗布方法。」

イ 甲1Cに記載された発明
上記アの記載事項(請求項1及び3)の記載からみて、甲1Cには、次のとおりの発明が記載されていると認められる。
「塗布対象物に向けてスクリューの回転によりノズルから前記スクリューの回転速度に応じた量のペーストを吐出する塗布ヘッドと、
直線部分及び屈曲部分を有する塗布パターンに基づいて前記塗布対象物と前記塗布ヘッドとを相対移動させる移動機構と、
前記スクリューの回転開始タイミングから前記塗布対象物と前記塗布ヘッドとの相対移動開始タイミングまでの時間、前記直線部分の塗布を行う場合の前記スクリューの回転速度より小さく前記スクリューの回転速度を制御し、前記時間が経過した場合、前記塗布対象物と前記塗布ヘッドとの相対移動速度に応じて前記スクリューの回転速度を制御する手段と、
を備えるペースト塗布装置であって、
前記制御する手段は、前記時間中における前記スクリューの回転速度を所定時間一定に制御するペースト塗布装置。」(以下「甲1C装置発明」という。)

また、上記アの記載事項(請求項1、3、4及び6)の記載からみて、甲1Cには、次のとおりの発明も記載されていると認められる。

「甲1C装置発明の装置を用いた、以下の工程を有するペースト塗布方法。
塗布対象物に向けてスクリューの回転によりノズルから前記スクリューの回転速度に応じた量のペーストを吐出する塗布ヘッドを用いて、直線部分及び屈曲部分を有する塗布パターンに基づいて前記塗布対象物と前記塗布ヘッドとを相対移動させながら、前記塗布対象物にペーストを塗布する工程と、
前記スクリューの回転開始タイミングから前記塗布対象物と前記塗布ヘッドとの相対移動開始タイミングまでの時間、前記直線部分の塗布を行う場合の前記スクリューの回転速度より小さく前記スクリューの回転速度を制御し、前記時間が経過した場合、前記塗布対象物と前記塗布ヘッドとの相対移動速度に応じて前記スクリューの回転速度を制御する工程であって、
前記制御する工程は、前記時間中における前記スクリューの回転速度を所定時間一定に制御する工程。」(以下、「甲1C方法発明」という。)

(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1C装置発明とを対比する。
(ア)甲1C装置発明の「ペースト」、「塗布ヘッド」、「塗布対象物」、は、それぞれ、本件発明1の「液体材料」、「吐出ヘッド」、「ワーク」に相当するし、甲1C装置発明の「塗布対象物と前記塗布ヘッドとを相対移動させる移動機構」、「ペースト塗布装置」は、それぞれ、本件発明1の「吐出ヘッドをワークに対し相対移動させるロボット」、「液体材料塗布装置」に相当する。
(イ)甲1C装置発明の「直線部分及び屈曲部分を有する塗布パターン」は本件発明1の「塗布プログラム」に相当するところ、甲1C装置発明の移動機構は、「直線部分及び屈曲部分を有する塗布パターンに基づいて」前記塗布対象物と前記塗布ヘッドとを相対移動させるものであるから、これが、「塗布パターンに基づいて」移動機構を制御する「移動制御部」を有することは、当業者に自明である。
(ウ)甲1C装置発明において「前記塗布対象物と前記塗布ヘッドとの相対移動速度に応じて前記スクリューの回転速度を制御する手段」は、本件発明1の「前記吐出ヘッドからの前記液体材料の吐出動作を制御する吐出制御部」に相当するし、また、当該制御部で行われる制御は、本件発明1の「前記吐出ヘッドと前記ワークとの相対移動速度に基づいて前記吐出ヘッドが前記液体材料を吐出する単位時間当たりの吐出量を変更する第1モードの吐出制御」に相当し、当該制御により「線引塗布」がなされるものと認められる。
さらに、甲1C装置発明においては、「塗布対象物と前記塗布ヘッドとの相対移動速度に応じて前記スクリューの回転速度を制御する手段」により、スクリューの回転速度が制御されて、塗布パターンに基づいて塗布がなされるのであるから、これが本件発明1の「前記移動制御部と前記吐出制御部とが協働し、前記液体材料を所定の塗布パターンで前記ワークに塗布作業を行う」との構成を満足することは当業者に自明である。

そうすると、本件発明1と甲1C装置発明とは、以下の一致点で一致し、以下の相違点1Cで相違する。
<一致点>
液体材料を吐出する吐出ヘッドと、
前記吐出ヘッドをワークに対し相対移動させるロボットと、
塗布プログラムに基づいて、前記吐出ヘッドと前記ワークとの相対移動を制御する移動制御部と、
前記吐出ヘッドからの前記液体材料の吐出動作を制御する吐出制御部と、を備え、
前記移動制御部と前記吐出制御部とが協働し、前記液体材料を所定の塗布パターンで前記ワークに塗布作業を行う液体材料塗布装置であって、
前記吐出制御部は、前記塗布プログラムに基づいて、前記吐出ヘッドと前記ワークとの相対移動速度に基づいて前記吐出ヘッドが前記液体材料を吐出する単位時間当たりの吐出量を変更する第1モードでの線引塗布を実行可能である液体材料塗布装置。

<相違点1C>
本件発明1の吐出制御部は、「相対移動速度とは関係なく前記吐出ヘッドに予め定められた単位時間当たりの吐出量の液体材料を吐出させる第2モードの吐出制御」での「線引塗布を実行可能」なものであり、かつ、第1モードと第2モードが切り替え可能であるのに対して、甲1C装置発明では、スクリューの回転速度の制御手段は、かかる構成を備えていない点。

新規性についての判断
上述のとおり、本件発明1と甲1C装置発明とは上記相違点1Cで相違しており、また、上記相違点1Cは実質的な相違点であるから、甲1C装置発明と相違点1Cで異なる本件発明1について、甲1C装置発明、つまり、甲1Cに記載された発明であるということはできない。

進歩性についての判断
相違点1Cについて検討する。
相違点1Cに関し、液体材料の塗布を、本件発明1の第2モードでの線引塗布に相当する方法で行うことは、上記第7の1.(2)イで記載したとおり、周知であった。
しかしながら、甲1C装置発明は、従来、塗布対象物に向けてスクリューの回転によりノズルから前記スクリューの回転速度に応じた量のペーストを吐出して塗布する方法により液晶表示パネル等を製造する場合において、シール剤等のペーストを、描画開始位置の始点(描画開始点)と描画終了位置の終点(描画終了点)とをつなぎ合わせて基板上に塗布する際に、基板K上の塗布パターンの始点の大きさが設計値を外れると不具合が生じることから、始点の大きさを調整するために、スクリューの回転開始タイミングと基板の移動開始タイミングとの間に時間差T1を設定し、この時間T1を変更することにより、始点の大きさが設計値と同じになるように行うことが考えられてきたところ、この時間T1を変更した場合、例えば時間T1を長くした場合には、描画速度が最大値(塗布パターンの直線部分の描画速度)に達するまでの加速領域T2において、描画速度とスクリューの回転速度との関係が変化してしまい、加速領域T2でのペースト断面積が一定でなくなるたり、加速領域T2でパターン切れやペースト断面積ばらつきが発生してしまうのという問題があったのを解決することを目的とするものであって(【0002】?【0011】)、この問題を、甲1C装置発明の構成を備えることで解決したものである。
すなわち、甲1C装置発明においては、塗布対象物に向けてスクリューの回転によりノズルから前記スクリューの回転速度に応じた量のペーストを吐出して塗布することを前提としつつ、塗布ヘッドノズルからペーストを吐出するためのスクリューの回転速度の制御手段を、スクリューの回転開始タイミングから前記塗布対象物と前記塗布ヘッドとの相対移動開始タイミングまでの時間、前記直線部分の塗布を行う場合の前記スクリューの回転速度より小さく前記スクリューの回転速度を制御し、前記時間が経過した場合、前記塗布対象物と前記塗布ヘッドとの相対移動速度に応じて前記スクリューの回転速度を制御するようにして、描画速度の加速領域における描画速度とスクリューの回転速度との関係変化に起因したパターン切れやペースト断面積ばらつきの発生を防止することができるようにした点に特徴を有しており、また、甲1Cには、線引塗布を第2のモードで行うことを示唆する記載はない。
さらに、線引塗布を行う際に、1つの塗布装置において第1モードと第2モードの両方を行えるようにすることが周知の課題であったともいえない。

そうすると、甲1C装置発明において、当業者が、ペースト塗布装置におけるスクリューの回転速度制御手段を、塗布対象物と前記塗布ヘッドとの相対移動速度に応じて前記スクリューの回転速度を制御する制御(つまり、第1モードでの制御)に加えて、上記相対移動速度とは関係なく塗布装置に予め定められた単位時間当たりの吐出量の塗布剤を吐出させる制御(つまり、第2モードの制御)での線引きも行えるように構成し、第1モードおよび第2モードを切り替可能とすること、つまり、相違点1Cに係る本件発明1の構成を備えたものとすることを当業者が動機付けられるとはいえない。
申立人A?Dが提出した全ての証拠を参酌しても同様である。

以上のとおり、申立人が提出したいずれの証拠からも、甲1C装置発明を相違点1Cに係る本件発明1の構成を備えたものとすることを当業者は動機付けられないから、本件発明1について、甲1Cに記載された発明及び申立人A?Dが提出した証拠に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

なお、申立人Cは、相違点1Cに関し、令和1年7月17日に提出した意見書において、甲1Cの【0034】、【0045】及び図4の記載によれば、描画速度を表すグラフB3は、T3の間は0になっていて、塗布ヘッドが停止しているときに、スクリュー5cの回転速度B4は、Rcで一定になっているから、甲1C装置発明は第2モードを備える旨主張する。
しかしながら、時間T3は、甲1C装置発明における「前記スクリューの回転開始タイミングから前記塗布対象物と前記塗布ヘッドとの相対移動開始タイミングまでの時間」に相当し、この時間は、甲1Cの【0020】?【0021】に記載のように、塗布へッドのシリンダ部材5b内の液室にペーストを充満させるための予備吐出動作時間であって、また、塗布作業は行われていないから、本件発明1の「第2モード」での「所定の塗布パターン」での「塗布作業」にはあたらない。
そして、始点Oの塗布自体は、「第1モード」の実行開始時点で行われるものである。
よって、請求人の主張は採用できない。

(3)本件発明2?7について
本件発明2?7は、請求項1を直接あるいは間接的に引用する請求項に係るものであって、本件発明2?7は、甲1C装置発明と、少なくとも上記相違点1Cで相違している。
そして、相違点1Cについての判断は、上記(2)イ及びウで記載したとおりであるから、甲1C装置発明と少なくとも上記相違点1Cで相違する本件発明2?7についても、上記(2)イ及びウで記載したことと同様の理由によって、甲1Cに記載された発明であるということはできないし、また、甲1Cに記載された発明及び申立人A?Dが提出した証拠に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

(4)本件発明9について
ア 対比
本件発明9は、本件発明1で特定される装置を用いた液体材料塗布方法に関するものであるし、甲1C方法発明は、甲1C装置発明の装置を用いたペースト布方法の発明である。
そして、上記(2)アにおける対比を踏まえて、本件発明9と甲1C方法発明を対比すると、両者は、以下の一致点で一致し、以下の相違点2Cで相違する。

<一致点>
液体材料を吐出する吐出ヘッドと、
前記吐出ヘッドをワークに対し相対移動させるロボットと、
塗布プログラムに基づいて、前記吐出ヘッドと前記ワークとの相対移動を制御する移動制御部と、
前記吐出ヘッドからの前記液体材料の吐出動作を制御する吐出制御部と、を備え、
前記移動制御部と前記吐出制御部とが協働し、前記液体材料を所定の塗布パターンで前記ワークに塗布作業を行う液体材料塗布装置を用いた液体材料塗布方法であって、
前記吐出制御部は、前記塗布プログラムに基づいて、前記吐出ヘッドと前記ワークとの相対移動速度に基づいて前記吐出ヘッドが前記液体材料を吐出する単位時間当たりの吐出量を変更する第1モードでの線引塗布を実行可能である液体材料塗布方法。

<相違点2C>
液体材料塗布方法に用いられる液体材料塗布装置の吐出制御部は、本件発明9では、「相対移動速度とは関係なく前記吐出ヘッドに予め定められた単位時間当たりの吐出量の液体材料を吐出させる第2モードの吐出制御」での「線引塗布を実行可能」なものであり、かつ、第1モードと第2モードが切り替え可能であるのに対して、甲1C方法発明では、スクリューの回転速度の制御手段は、かかる構成を備えていない点。

新規性についての判断
上述のとおり、本件発明9と甲1C方法発明とは上記相違点2Cで相違しており、また、上記相違点2Cは実質的な相違点であるから、甲1C方法発明と相違点2Cで異なる本件発明9について、甲1C方法発明、つまり、甲1Cに記載された発明であるということはできない。

進歩性についての判断
相違点2Cについて検討すると、相違点2Cは、本件発明1の上記相違点1Cに対応するものであり、相違点2Cと相違点1Cは実質的に同じである。
そして、相違点2Cについての進歩性の判断は、上記(2)ウにおいて相違点1Cについて説示したことと同様であり、上記(2)ウで説示したことと同様の理由によって、本件発明9について、甲1Cに記載された発明及び申立人A?Dが提出した証拠に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(5)本件発明10?15、17、18について
本件発明10?15、17、18は、請求項9を直接あるいは間接的に引用する請求項に係るものであって、本件発明10?15、17、18は、甲1C方法発明と、少なくとも上記相違点2Cで相違している。
そして、相違点2Cについての判断は、上記(4)イ及びウで記載したとおりであるから、甲1C方法発明と少なくとも上記相違点2Cで相違する本件発明10?15、17について、甲1Cに記載された発明であるということはできないし、また、本件発明10?15、17、18について、甲1Cに記載された発明及び申立人A?Dが提出した証拠に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

2.申立理由C3(実施可能要件)及び申立理由C4(サポート要件)について
請求項1?7、9?15、17及び18に係る本件特許に対して申立人Cが主張する申立理由C3及びC4は、より具体的には、「本件特許発明の「移動制御部」及び「吐出制御部」は、発明の詳細な説明において、その具体的構成が何ら説明されておらず、かつ周知のものでもないから、いわゆる当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていない。」、「また、・・・発明の詳細な説明に記載されたものとはいえない。」(特許異議申立書の54?55頁の(6))というものである。
そこで、検討すると、本件特許明細書の発明の詳細な説明には「移動制御部」及び「吐出制御部」という用語自体について、【0010】?【0013】に特許請求の範囲と同様の記載があるのみで、他に具体的な記載はない。
しかしながら、発明の詳細な説明には、「ロボットコントローラ(30)」及び「ディスペンスコントローラ(40)」の具体的な構成が明細書の全体にわたって詳細に記載されているところ、この「ロボットコントローラ(30)」が「移動制御部」に、「ディスペンスコントローラ(40)」が「吐出制御部」に相当するものであることは当業者に自明の事項である。
そうすると、「移動制御部」及び「吐出制御部」を備える請求項1?7、9?15、17及び18に係る発明について、発明の詳細な説明に記載されているといえる。
また、当業者は、発明の詳細な説明中の「ロボットコントローラ(30)」及び「ディスペンスコントローラ(40)」に関する記載(【0017】?【0097】、特に、【0020】?【0026】のロボットコントローラ(30)の構成部材やロボットコントローラ(30)からの指令内容、信号の出力についての記載、【0028】?【0030】のディスペンスコントローラ(40)の構成部材やロボットコントローラ(30)からの指令内容、信号の出力についての記載、両者のコントローラによる第1モードでの吐出制御(【0045】?【0050】)あるいは、第2モードでの吐出制御(【0053】?【0055】)、【0057】?【0091】の実施例1?4における両者のコントローラの設定内容についての記載)から、「移動制御部」及び「吐出制御部」を備える液体材料塗布装置あるいは液体材料塗布方法の発明に関する請求項1?7、9?15、17及び18に係る発明を容易に実施することができるといえる。

3.まとめ
以上のとおりであるから、申立理由C1?C4には理由がない。


第9 取消理由(決定の予告)に採用しなかった申立人Dによる申立理由について

1.申立理由D1(甲1Dに基づく進歩性)について
(1)甲1Dの記載事項及び甲1Dに記載された発明
ア 甲1Dの記載事項
甲1Dには、以下の記載がある。
「【請求項1】
ペーストをノズルから吐出させて予め設定されたパターンで基板に塗布描画するペースト塗布装置において、
前記ノズルと前記基板とを相対的に移動させる移動装置と、
該ノズルから前記ペーストを吐出させる吐出装置と、
前記塗布描画されたパターンの塗布欠陥部を塗布補修する際の塗布補修パターンを選択する塗布補修パターン選択部と、
該選択された塗布補修パターンで該塗布欠陥部を塗布補修するように前記移動装置と前記吐出装置を制御する制御装置と、を備えたことを特徴とするペースト塗布装置。
・・・
【請求項3】
前記塗布補修パターン選択部は線状の塗布補修パターンと点状の塗布補修パターンのいずれかを選択可能である請求項1又は2に記載のペースト塗布装置。
・・・
【請求項7】
基板と基板上にペーストを吐出するノズルとを相対的に移動させて、ペーストを予め設定されたパターンで基板に塗布描画するペースト塗布方法において、
前記塗布描画されたパターンの塗布欠陥部の長さに関する情報に基づいて、
該塗布欠陥部を線状の塗布補修パターンにて補修するか又は点状の塗布補修パターンにて補修するかを選択し、
該選択された塗布補修パターンにて該塗布欠陥部を塗布補修することを特徴とするペースト塗布方法。」

イ 甲1Dに記載された発明
甲1Dの記載(請求項1及び3)によれば、甲1Dには、以下の発明が記載されていると認められる。
「ペーストをノズルから吐出させて予め設定されたパターンで基板に塗布描画するペースト塗布装置において、
前記ノズルと前記基板とを相対的に移動させる移動装置と、
該ノズルから前記ペーストを吐出させる吐出装置と、
前記塗布描画されたパターンの塗布欠陥部を塗布補修する際の塗布補修パターンを線状の塗布補修パターンと点状の塗布補修パターンのいずれかから選択する塗布補修パターン選択部と、
該選択された塗布補修パターンで該塗布欠陥部を塗布補修するように前記移動装置と前記吐出装置を制御する制御装置と、を備えたペースト塗布装置。」(以下「甲1D装置発明」という。)

また、甲1Dの記載(請求項1及び7)によれば、甲1Dには、以下の発明も記載されていると認められる。
「甲1D装置発明を用いて、基板と基板上にペーストを吐出するノズルとを相対的に移動させて、ペーストを予め設定されたパターンで基板に塗布描画するペースト塗布方法であって、
前記塗布描画されたパターンの塗布欠陥部の長さに関する情報に基づいて、
該塗布欠陥部を線状の塗布補修パターンにて補修するか又は点状の塗布補修パターンにて補修するかを選択し、
該選択された塗布補修パターンにて該塗布欠陥部を塗布補修するペースト塗布方法。」(以下「甲1D方法発明」という。)

(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1D装置発明とを対比する。
(ア)甲1D装置発明の「ノズルから(前記)ペーストを吐出させる吐出装置」、「基板」、「ノズルと(前記)基板とを相対的に移動させる移動装置」、は、それぞれ、本件発明1の「液体材料を吐出する吐出ヘッド」、「ワーク」、「吐出ヘッドをワークに対し相対移動させるロボット」に相当し、また、甲1D装置発明の「ペーストをノズルから吐出させて予め設定されたパターンで基板に塗布描画するペースト塗布装置」は、本件発明1の「液体材料を所定の塗布パターンで前記ワークに塗布作業を行う液体材料塗布装置」に相当する。
(イ)甲1D装置発明の「制御装置」は、塗布描画されたパターンの塗布欠陥部を塗布補修する際に、「選択された塗布補修パターンで該塗布欠陥部を塗布補修するように前記移動装置と前記吐出装置を制御する」ものであるから、これは、本件発明1の「塗布プログラムに基づいて、前記吐出ヘッドと前記ワークとの相対移動を制御する移動制御部と、前記吐出ヘッドからの前記液体材料の吐出動作を制御する吐出制御部と、を備え」との構成、及び、「前記移動制御部と(前記)吐出制御部とが協働し」との構成を満足するといえる。
(ウ)甲1D装置発明の「制御装置」は、塗布補修パターン選択部での選択に応じて、選択された塗布補修パターンで塗布欠陥部を塗布補修するように吐出装置を制御するものであるから、これは、本件発明1の「吐出制御部」についての、「吐出制御」を「切り替え可能」との構成を満足するといえる。
また、塗布描画されたパターンの塗布欠陥部の塗布補修に際し、「点状の塗布補修パターン」が選択された場合、塗布は「点状」に行われるから、ノズルと基板との間に相対的移動はなく、従って、ノズルと基板との相対速度は塗布量に関係しないといえる。よって、甲1D装置発明は、本件発明1の「前記相対移動速度とは関係なく前記吐出ヘッドに予め定められた単位時間当たりの吐出量の液体材料を吐出させる第2モードの吐出制御」を行う吐出制御部を備えるといえる。
さらに、甲1D装置発明の制御装置による「線状の塗布補修パターン」での「吐出装置」の「制御」は、本件発明1の吐出制御部による、「前記塗布プログラムに基づいて、前記吐出ヘッドと前記ワークとの相対移動速度に基づいて前記吐出ヘッドが前記液体材料を吐出する単位時間当たりの吐出量を変更する第1モードの吐出制御」と、「液体材料を吐出する第1のモードの吐出制御」である限りにおいて一致する。

そうすると、本件発明1と甲1D装置発明は、以下の一致点で一致し、以下の相違点1D及び相違点2Dで相違する。
<一致点>
液体材料を吐出する吐出ヘッドと、
前記吐出ヘッドをワークに対し相対移動させるロボットと、
塗布プログラムに基づいて、前記吐出ヘッドと前記ワークとの相対移動を制御する移動制御部と、
前記吐出ヘッドからの前記液体材料の吐出動作を制御する吐出制御部と、を備え、
前記移動制御部と前記吐出制御部とが協働し、前記液体材料を所定の塗布パターンで前記ワークに塗布作業を行う液体材料塗布装置であって、
前記吐出制御部は、前記塗布プログラムに基づいて、液体材料を吐出する第1のモードと、前記相対移動速度とは関係なく前記吐出ヘッドに予め定められた単位時間当たりの吐出量の液体材料を吐出させる第2モードの吐出制御へ切り替え可能であり、かつ、前記第1モードで、線引塗布を実行可能である液体材料塗布装置。

<相違点1D>
吐出制御部による液体材料を吐出する第1のモードでの吐出制御について、本件発明1では、「(塗布プログラムに基づいて、)吐出ヘッドとワークとの相対移動速度に基づいて前記吐出ヘッドが前記液体材料を吐出する単位時間当たりの吐出量を変更する」吐出制御を行うことが特定されているのに対し、甲1D装置発明では、「線状の塗布補修パターン」となるように塗布補修することが特定されるのみで、「吐出ヘッドとワークとの相対移動速度に基づいて前記吐出ヘッドが前記液体材料を吐出する単位時間当たりの吐出量を変更する」吐出制御を行うことは特定されていない点。
<相違点2D>
液体材料塗布装置の吐出制御部により行われる第2モードの吐出制御について、本件発明1では「線引塗布を実行可能」とされているのに対して、甲1D装置発明では、「点状の塗布補修パターン」で塗布がされ、線引塗布を実行可能とはされていない点。

イ 判断
事案に鑑み、相違点1Dと相違点2Dをまとめて検討する。
相違点1Dに関し、本件特許に係る出願の出願時、液体材料塗布装置の分野において、吐出ヘッド(ノズル)と被塗布物(ワーク)との相対移動速度に基づいて吐出ヘッド(ノズル)が液体材料を吐出する単位時間当たりの吐出量を変更することは、周知であった(例えば、甲3Dの請求項1、甲3Bの【0020】、甲5Aの請求項1参照。)。
また、相違点2Dに関し、液体材料の塗布を、本件発明1の第2モードでの線引塗布に相当する方法で行うことは、上記第7の1.(2)イで記載したとおり周知であった。

しかしながら、甲1D装置発明は、基板上に塗布描画する際に、基板上に塗布描画されたシール剤のパターンに断線等の塗布欠陥部が発生した場合に、塗布欠陥部の補修を良好に行なうことができるペースト塗布装置等を提供することを目的としており(【0015】)、塗布描画されたパターンの塗布欠陥部を塗布補修する際の塗布補修パターンを線状の塗布補修パターンと点状の塗布補修パターンのいずれかから選択可能とすることで、断線部の状態に合った塗布補修パターンで断線部を補修することができ、その結果、断線部を必要な塗布量で良好に補修することができ、生産性を向上させることができるものである(【0114】)。
そして、線状に補修を行う際に、第1モードと第2モードの両方で補修を行えるようにすることが周知の課題であったとはいえないし、その補修距離は通常それほど長くないと解されるからその必要性もない。
そうすると、塗布動作を第1モードあるいは第2モードでの線引塗布で行うことが周知であったとしても、補修を目的とする甲1D装置発明において、線状の塗布補修パターンを、第1モード及び第2モードの両方で実行可能なものとし、当該モードを切り替え可能なものとすること、つまり、相違点1D及び相違点2Dを兼ねあわせた構成を有するものとすることを当業者が動機付けられるとはいえない。
申立人A?Dが提出した全ての証拠を参酌しても同様である。

そうすると、本件発明1について、甲1Dに記載された発明及び申立人A?Dが提出した証拠に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(3)本件発明2?5について
本件発明2?5は、請求項1を直接あるいは間接的に引用する請求項に係るものであって、本件発明2?5は、甲1D装置発明と、少なくとも上記相違点1D及び相違点2Dで相違している。
そして、相違点1D及び相違点2Dについての判断は、上記(2)イで記載したとおりであるから、甲1D装置発明と少なくとも上記相違点1D及び相違点2Dで相違する本件発明2?5についても、上記(2)イで記載したことと同様の理由によって、甲1Dに記載された発明及び申立人A?Dが提出した証拠に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(4)本件発明9について
ア 対比
本件発明9は、本件発明1で特定される装置を用いた液体材料塗布方法に関するものであるし、甲1D方法発明は、甲1D装置発明を用いた方法である点を発明特定事項として備えるものである。
そして、上記(2)アにおける対比を踏まえて、本件発明9と甲1D方法発明を対比すると、両者は、以下の一致点で一致し、以下の相違点3D及び相違点4Dで相違する。

<一致点>
液体材料を吐出する吐出ヘッドと、
前記吐出ヘッドをワークに対し相対移動させるロボットと、
塗布プログラムに基づいて、前記吐出ヘッドと前記ワークとの相対移動を制御する移動制御部と、
前記吐出ヘッドからの前記液体材料の吐出動作を制御する吐出制御部と、を備え、
前記移動制御部と前記吐出制御部とが協働し、前記液体材料を所定の塗布パターンで前記ワークに塗布作業を行う液体材料塗布装置を用いた液体材料塗布方法であって、
前記塗布プログラムに基づいて、液体材料を吐出する第1のモードと、前記相対移動速度とは関係なく前記吐出ヘッドに予め定められた単位時間当たりの吐出量の液体材料を吐出させる第2モードの吐出制御とを切り替えする液体材料塗布方法。

<相違点3D>
液体材料を吐出する第1のモードでの吐出制御について、本件発明9では、「吐出ヘッドとワークとの相対移動速度に基づいて前記吐出ヘッドが前記液体材料を吐出する単位時間当たりの吐出量を変更する」吐出制御を行うことが特定されているのに対し、甲1D方法発明では、「線状の塗布補修パターン」となるように塗布補修することが特定されるのみで、「吐出ヘッドとワークとの相対移動速度に基づいて前記吐出ヘッドが前記液体材料を吐出する単位時間当たりの吐出量を変更する」吐出制御を行うことは特定されていない点。
<相違点4D>
液体材料塗布方法に用いられる装置の吐出制御部により行われる第2モードの吐出制御について、本件発明9では「線引塗布を実行可能」とされているのに対して、甲1D方法発明では、「点状の塗布補修パターン」で塗布がされ、線引塗布を実行可能とはされていない点。

イ 判断
相違点3D及び相違点4Dについて検討すると、相違点3D、相違点4Dは、それぞれ、本件発明1の上記相違点1D、相違点2Dに対応するものであり、相違点3Dと相違点1D、相違点4Dと相違点2Dは、実質的に同じである。
そして、相違点3D及び相違点4Dについての進歩性の判断は、上記(2)イにおいて相違点1D及び相違点2Dについて検討したことと同様であり、上記(2)イで説示したことと同様の理由によって、本件発明9について、甲1Dに記載された発明及び申立人A?Dが提出した証拠に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(5)本件発明10?13について
本件発明10?13は、請求項9を直接あるいは間接的に引用する請求項に係るものであって、本件発明10?13は、甲1D方法発明と、少なくとも上記相違点3D及び相違点4Dで相違している。
そして、相違点3D及び相違点4Dについての判断は、上記(4)イで記載したとおりであるから、甲1D方法発明と少なくとも上記相違点3D及び相違点4Dで相違する本件発明10?13についても、上記(4)イで記載したことと同様の理由によって、甲1Dに記載された発明及び申立人A?Dが提出した証拠に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

2.まとめ
以上のとおりであるから、申立理由D1には理由がない。


第10 むすび
以上のとおり、請求項1?7、9?15、17?18に係る特許は、取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、取り消すことはできない。
また、他にこれらの請求項に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

さらに、請求項8及び16は、訂正により削除されたため、本件特許の請求項8及び16に係る特許に対して、特許異議申立人らがした特許異議の申立てについては、申立ての対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体材料を吐出する吐出ヘッドと、
前記吐出ヘッドをワークに対し相対移動させるロボットと、
塗布プログラムに基づいて、前記吐出ヘッドと前記ワークとの相対移動を制御する移動制御部と、
前記吐出ヘッドからの前記液体材料の吐出動作を制御する吐出制御部と、を備え、
前記移動制御部と前記吐出制御部とが協働し、前記液体材料を所定の塗布パターンで前記ワークに塗布作業を行う液体材料塗布装置であって、
前記吐出制御部は、前記塗布プログラムに基づいて、前記吐出ヘッドと前記ワークとの相対移動速度に基づいて前記吐出ヘッドが前記液体材料を吐出する単位時間当たりの吐出量を変更する第1モードの吐出制御と、前記相対移動速度とは関係なく前記吐出ヘッドに予め定められた単位時間当たりの吐出量の液体材料を吐出させる第2モードの吐出制御とを切り替え可能であり、かつ、前記第1モードおよび前記第2モードの吐出制御で、線引塗布を実行可能である液体材料塗布装置。
【請求項2】
前記第1モードの吐出制御では、前記塗布プログラムに基づいて、単位長さ当たりの塗布量が一定の塗布線を塗布する線引塗布を実行する請求項1に記載の液体材料塗布装置。
【請求項3】
前記塗布パターンが、直線部およびコーナー部を有する塗布パターンを含み、
前記第1モードの吐出制御では、前記塗布プログラムに基づいて、前記相対移動速度が変化するコーナー部でも線幅が一定の塗布線を塗布する線引塗布を実行する請求項2に記載の液体材料塗布装置。
【請求項4】
前記第2モードの吐出制御では、前記塗布プログラムに基づいて、さらに、捨て打ち塗布、試し打ち塗布、および点塗布のうち少なくとも1つの塗布を実行することが可能である請求項2または3に記載の液体材料塗布装置。
【請求項5】
前記吐出制御部は、前記塗布プログラムに基づく移動制御部からの信号の受信により、前記第1モードの吐出制御と前記第2モードの吐出制御とを切り替える請求項1ないし4のいずれかに記載の液体材料塗布装置。
【請求項6】
前記吐出制御部は、前記相対移動速度と単位時間当たりの吐出量との関係が互いに異なる複数の前記第1モードの吐出制御、または、予め定められた単位時間当たりの吐出量が互いに異なる複数の第2モードの吐出制御を設定することが可能であり、前記複数の第1モードの吐出制御、または、前記複数の第2モードの吐出制御の中から1の吐出制御を選択して実行できる請求項1ないし5のいずれかに記載の液体材料塗布装置。
【請求項7】
前記吐出制御部は、第1の相対移動速度および第1の相対移動速度に対応する第1の単位時間当たりの吐出量と、第2の相対移動速度および第2の相対移動速度に対応する第2の単位時間当たりの吐出量とに基づき、第3の相対移動速度に対応する第3の単位時間当たりの吐出量を自動算出する機能を備え、
前記第1モードの吐出制御において、前記吐出ヘッドを前記第1ないし第3のいずれかの相対移動速度で移動させながら当該相対移動速度に対応する単位時間当たりの吐出量の液体材料を前記吐出ヘッドから吐出する請求項1ないし6のいずれかに記載の液体材料塗布装置。
【請求項8】
(削除)
【請求項9】
液体材料を吐出する吐出ヘッドと、
前記吐出ヘッドをワークに対し相対移動させるロボットと、
塗布プログラムに基づいて、前記吐出ヘッドと前記ワークとの相対移動を制御する移動制御部と、
前記吐出ヘッドからの前記液体材料の吐出動作を制御する吐出制御部と、を備え、
前記移動制御部と前記吐出制御部とが協働し、前記液体材料を所定の塗布パターンで前記ワークに塗布作業を行う液体材料塗布装置を用いた液体材料塗布方法であって、
前記吐出制御部は、前記吐出ヘッドと前記ワークとの相対移動速度に基づいて前記吐出ヘッドが前記液体材料を吐出する単位時間当たりの吐出量を変更する第1モードの吐出制御、および、前記相対移動速度とは関係なく前記吐出ヘッドに予め定められた単位時間当たりの吐出量の液体材料を吐出させる第2モードの吐出制御を有し、かつ、前記第1モードおよび前記第2モードの吐出制御で、線引塗布を実行可能であり、
前記塗布プログラムに基づいて、前記第1モードの吐出制御と、前記第2モードの吐出制御とを切り替えする液体材料塗布方法。
【請求項10】
前記第1モードの吐出制御では、前記塗布プログラムに基づいて、単位長さ当たりの塗布量が一定の塗布線を塗布する線引塗布を実行する請求項9に記載の液体材料塗布方法。
【請求項11】
前記塗布パターンが、直線部およびコーナー部を有する塗布パターンを含み、
前記第1モードの吐出制御では、前記塗布プログラムに基づいて、前記相対移動速度が変化するコーナー部でも線幅が一定の塗布線を塗布する線引塗布を実行する請求項10に記載の液体材料塗布方法。
【請求項12】
前記第2モードの吐出制御では、前記塗布プログラムに基づいて、さらに、捨て打ち塗布、試し打ち塗布、および点塗布のうち少なくとも1つの塗布を実行する請求項10または11に記載の液体材料塗布方法。
【請求項13】
前記吐出制御部は、前記塗布プログラムに基づく移動制御部からの信号の受信により、前記第1モードの吐出制御と前記第2モードの吐出制御とを切り替える請求項9ないし12のいずれかに記載の液体材料塗布方法。
【請求項14】
前記吐出制御部は、前記相対移動速度と単位時間当たりの吐出量との関係が互いに異なる複数の前記第1モードの吐出制御、または、予め定められた単位時間当たりの吐出量が互いに異なる複数の第2モードの吐出制御が設定されており、前記複数の第1モードの吐出制御、または、前記複数の第2モードの吐出制御の中から1の吐出制御を選択して実行できる請求項9ないし13のいずれかに記載の液体材料塗布方法。
【請求項15】
前記吐出制御部は、第1の相対移動速度および第1の相対移動速度に対応する第1の単位時間当たりの吐出量と、第2の相対移動速度および第2の相対移動速度に対応する第2の単位時間当たりの吐出量とに基づき、第3の相対移動速度に対応する第3の単位時間当たりの吐出量を自動算出する機能を備え、
前記第1モードの吐出制御において、前記吐出ヘッドを前記第1ないし第3のいずれかの相対移動速度で移動させながら当該相対移動速度に対応する単位時間当たりの吐出量の液体材料を前記吐出ヘッドから吐出する請求項9ないし14のいずれかに記載の液体材料塗布方法。
【請求項16】
(削除)
【請求項17】
前記塗布パターンに応じて前記相対移動速度が変わる線引塗布を行う場合には、前記第1モードの吐出制御を実行し、
一定の相対移動速度で線引塗布を行う場合には、前記第2モードの吐出制御を実行する請求項9ないし15のいずれかに記載の液体材料塗布方法。
【請求項18】
前記ワークが、1個もしくは複数個の半導体チップ、1個の半導体チップが搭載された1枚もしくは複数枚の基板、または、複数個の半導体チップが搭載された1枚もしくは複数枚の基板である請求項9ないし15および17のいずれかに記載の液体材料塗布方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-01-17 
出願番号 特願2018-513690(P2018-513690)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (B05C)
P 1 651・ 113- YAA (B05C)
P 1 651・ 537- YAA (B05C)
P 1 651・ 536- YAA (B05C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 高崎 久子  
特許庁審判長 大島 祥吾
特許庁審判官 渕野 留香
加藤 友也
登録日 2018-06-08 
登録番号 特許第6349480号(P6349480)
権利者 武蔵エンジニアリング株式会社
発明の名称 液体材料塗布装置および液体材料塗布方法  
代理人 須藤 阿佐子  
代理人 須藤 晃伸  
代理人 須藤 阿佐子  
代理人 須藤 晃伸  
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