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審決分類 |
審判 一部申し立て ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 G10K 審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 G10K 審判 一部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 G10K 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載 G10K 審判 一部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 G10K 審判 一部申し立て 2項進歩性 G10K 審判 一部申し立て 4項(134条6項)独立特許用件 G10K |
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管理番号 | 1360472 |
異議申立番号 | 異議2018-700729 |
総通号数 | 244 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2020-04-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-09-07 |
確定日 | 2020-02-03 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6290198号発明「吸遮音材及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6290198号の特許請求の範囲を令和1年11月7日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?32〕について訂正することを認める。 特許第6290198号の請求項1、2、6、8?16、19、23?29に係る特許を維持する。 特許第6290198号の請求項3、17に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6290198号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?32に係る特許についての出願は、2013年(平成25年)6月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2012年6月20日、韓国)を国際出願日とする出願であって、平成30年2月16日付けでその特許権の設定登録(特許公報発行日 平成30年3月7日)がされた。 これに対して、平成30年9月7日に特許異議申立人特許業務法人朝比奈特許事務所より請求項1?3、6、8?17、19、23?29に対して特許異議の申立てがなされ、その後の手続の経緯は以下のとおりである。 平成30年12月20日 取消理由通知 平成31年 4月 4日 意見書提出及び訂正請求(特許権者) 令和 1年 6月10日 意見書提出(特許異議申立人) 同年 6月28日 審尋(特許権者に対して) 同年 7月19日 回答書(特許権者) 同年 8月19日 取消理由通知(決定の予告) 同年11月 7日 意見書提出及び訂正請求(特許権者) 同年11月18日 意見書提出(特許権者) なお、令和1年11月21日付けで、特許異議申立人に対して、訂正請求があった旨の通知をしたが、通知の発送の日から30日以内に特許異議申立人からの意見書の提出はなかった。 第2 訂正の適否 1 訂正請求の趣旨 令和1年11月7日の訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)により、特許権者が請求する訂正の趣旨は、特許第6290198号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?32について訂正することを求めるものである。 2 訂正事項 本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。 また、下線は訂正箇所である。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1における「を含むことを特徴とする吸遮音材。」との記載を、「を含み、前記耐熱繊維が、アラミド繊維、ポリフェニレンスルフィド(PPS)繊維、酸化されたポリアクリロニトリル(OXI-PAN)繊維、ポリイミド(PI)繊維、ポリベンズイミダゾール(PBI)繊維、ポリベンズオキサゾール(PBO)繊維、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維、及びポリケトン(PK)繊維から選択された1種以上であることを特徴とする吸遮音材。」と訂正する。 (請求項1の記載を直接的または間接的に引用する請求項2?32も同様に訂正する。) (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項4における「請求項3に記載の吸遮音材」との記載を「請求項2に記載の吸遮音材」と訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項14における、「を含むことを特徴とする、請求項1に記載の吸遮音材の製造方法。」との記載を「を含み、前記耐熱繊維が、アラミド繊維、ポリフェニレンスルフィド(PPS)繊維、酸化されたポリアクリロニトリル(OXI-PAN)繊維、ポリイミド(PI)繊維、ポリベンズイミダゾール(PBI)繊雉、ポリベンズオキサゾール(PBO)繊維、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維、及びポリケトン(PK)繊雉から選択された1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の吸遮音材の製造方法。」と訂正する。 (請求項14の記載を直接的または間接的に引用する請求項15?29も同様に訂正する。) (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項17を削除する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項29における「請求項14から28のうち何れか1項に記載の吸遮音材の製造方法。」との記載を、「請求項14から16および18から28のうち何れか1項に記載の吸遮音材の製造方法。」と訂正する。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項30における「請求項1から12のうち何れか1項に記載の吸遮音材を」との記載を「請求項1、2および4から12のうち何れか1項に記載の吸遮音材を」と訂正する。 3 訂正の適否の判断 (1)一群の請求項について 訂正事項1?7に係る訂正前の請求項1?32について、請求項2?32は、請求項1を直接的又は間接的に引用しているものである。 したがって、訂正前の請求項1?32に対応する訂正後の請求項1?32は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 (2)訂正の目的 ア 訂正事項1 訂正事項1は、訂正前の請求項1の「耐熱繊維」が、「アラミド繊維、ポリフェニレンスルフィド(PPS)繊維、酸化されたポリアクリロニトリル(OXI-PAN)繊維、ポリイミド(PI)繊維、ポリベンズイミダゾール(PBI)繊維、ポリベンズオキサゾール(PBO)繊維、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維、及びポリケトン(PK)繊維から選択された1種以上である」ことに限定するための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 訂正事項2 訂正事項2は、請求項3を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 ウ 訂正事項3 訂正事項3は、訂正前の請求項4が訂正前の請求項3を引用する記載であったものを、訂正事項2の訂正により請求項3が削除され、明瞭でない記載となったために、請求項2を引用する記載に訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 エ 訂正事項4 訂正事項4は、訂正前の請求項14の「耐熱繊維」が、「アラミド繊維、ポリフェニレンスルフィド(PPS)繊維、酸化されたポリアクリロニトリル(OXI-PAN)繊維、ポリイミド(PI)繊維、ポリベンズイミダゾール(PBI)繊維、ポリベンズオキサゾール(PBO)繊維、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維、及びポリケトン(PK)繊維から選択された1種以上である」ことに限定するための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 オ 訂正事項5 訂正事項5は、請求項17を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 カ 訂正事項6 訂正事項6は、訂正前の請求項29が訂正前の請求項14から28のうち何れか1項を引用する記載であったものを、訂正事項5の訂正により請求項17が削除され、明瞭でない記載となったために、請求項14から16および18から28のうち何れか1項を引用する記載に訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 キ 訂正事項7 訂正事項7は、訂正前の請求項30が訂正前の請求項1から12のうち何れか1項を引用する記載であったものを、訂正事項2の訂正により請求項3が削除され、明瞭でない記載となったために、請求項1、2および4から12のうち何れか1項を引用する記載に訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 (3)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること ア 訂正事項1、4 訂正事項1、4は、明細書の段落0046の 「前記耐熱繊維は、当分野で通常的に呼ばれる「スーパー繊維」を用いることができる。スーパー繊維は、具体的にアラミド繊維、ポリフェニレンスルフィド(PPS)繊維、酸化されたポリアクリロニトリル(OXI-PAN)繊維、ポリイミド(PI)繊維、ポリベンズイミダゾール(PBI)繊維、ポリベンズオキサゾール(PBO)繊維、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維、ポリケトン(PK)繊維、金属繊維、炭素繊維、ガラス繊維、玄武岩繊維、シリカ繊維、セラミック繊維などから選択された1種以上を含むことができる。」 の記載に基づくものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 よって、訂正事項1、4は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 イ 訂正事項2、5 訂正事項2、5は、請求項を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 よって、訂正事項2、5は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 訂正事項3、6、7 訂正事項3、6、7は、上記(2)ウ、カ、キに示した明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 よって、訂正事項3、6、7は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 (4)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと ア 訂正事項1、4 訂正事項1、4は、上記(2)ア、エに示したように、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、発明のカテゴリーや発明の対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 イ 訂正事項2、5 訂正事項2、5は、請求項を削除するものであり、発明のカテゴリーや発明の対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 ウ 訂正事項3、6、7 訂正事項3、6、7は、上記(2)ウ、カ、キに示したように、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であり、発明のカテゴリーや発明の対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 (5)独立特許要件について 訂正前の請求項1?3、6、8?17、19、23?29は、本件特許異議申立事件において特許異議の申立てがされている請求項であるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第7項に基づき、独立特許要件は課されない。 しかし、訂正前の請求項4、5、7、18、20?22、30?32は、特許異議の申立てがされていない請求項である。 ここで、特許異議の申立てがされていない請求項に係る、特許請求の範囲の減縮もしくは誤記又は誤訳の訂正を目的とする訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第7項に基づき、訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない。 そこで、請求項4、5、7、18、20?22、30?32が、独立特許要件を検討すべき請求項であるか、独立特許要件を検討すべき請求項であれば、特許出願の際独立して特許を受けることができないか否かについて検討する。 ア 請求項4、5、7、18、20?22について 請求項4は「前記耐熱繊維はアラミド繊維であること」、請求項5及び請求項5を引用する請求項7は「前記不織布は、繊度1?15デニールのアラミド繊維から」なること、請求項18は「前記耐熱繊維は、繊度1?15デニール及び原糸の長さ20?100mmのアラミド繊維であること」、請求項20、請求項20を引用する請求項21及び請求項20を引用する請求項22は「繊度1?15デニールのアラミドの耐熱繊維」を用いることに限定されている発明である。 そうすると、訂正事項1により、訂正前の請求項1の「耐熱繊維」が、「アラミド繊維、ポリフェニレンスルフィド(PPS)繊維、酸化されたポリアクリロニトリル(OXI-PAN)繊維、ポリイミド(PI)繊維、ポリベンズイミダゾール(PBI)繊維、ポリベンズオキサゾール(PBO)繊維、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維、及びポリケトン(PK)繊維から選択された1種以上である」ことに限定されたが、請求項4、5、7、18、20?22については、訂正前後のいずれにおいても、耐熱繊維はアラミド繊維であること、もしくは、不繊布がアラミド繊維からなることを構成要件としており、請求項4、5、7、18、20?22は、訂正事項1による訂正前後で発明が変わるものではない。 したがって、請求項4、5、7、18、20?22は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正がなされた発明でなく、誤記又は誤訳の訂正を目的とする訂正でもないので、独立特許要件は課されない。 イ 請求項30?32について 訂正事項1により、訂正前の請求項1の「耐熱繊維」が、「アラミド繊維、ポリフェニレンスルフィド(PPS)繊維、酸化されたポリアクリロニトリル(OXI-PAN)繊維、ポリイミド(PI)繊維、ポリベンズイミダゾール(PBI)繊維、ポリベンズオキサゾール(PBO)繊維、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維、及びポリケトン(PK)繊維から選択された1種以上である」ことに限定されたことに伴い、請求項30?32の吸遮音材の耐熱繊維についても限定されているので、請求項30?32は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正がなされた発明である。 そこで、訂正後における特許請求の範囲の請求項30?32に記載される事項により特定される発明について、独立特許要件を検討するに、特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。 4 むすび 以上のとおり、本件訂正請求は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号に掲げる事項を目的としており、かつ、同条第4項、及び第9項で準用する同法第126条第5項ないし第7項の規定に適合している。 したがって、訂正後の請求項〔1?32〕についての訂正を認める。 第3 本件訂正発明 令和1年11月7日の本件訂正請求により訂正された本件特許請求の範囲の請求項1?32に係る発明(以下、項番にしたがい「本件訂正発明1」?「本件訂正発明32」といい、これらを総称して「本件訂正発明」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲に記載されたとおりのものであり、異議の申立てに係る本件訂正発明1?3、6、8?17、19、23?29は以下のとおりである。 なお、説明のために、本件訂正発明1については、A?Dの記号を当審において付与した。以下、「構成A」?「構成D」と称する。 【請求項1】(本件訂正発明1) A 耐熱繊維の含量が30?100重量%の不織布と、 B 前記不織布と同一層に位置して不織布内部の3次元形状を維持する形態で含まれているバインダーと、 を含み、 C 前記耐熱繊維が、アラミド繊維、ポリフェニレンスルフィド(PPS)繊維、酸化されたポリアクリロニトリル(OXI-PAN)繊維、ポリイミド(PI)繊維、ポリベンズイミダゾール(PBI)繊維、ポリベンズオキサゾール(PBO)繊維、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維、及びポリケトン(PK)繊維から選択された1種以上であることを特徴とする D 吸遮音材。 【請求項2】(本件訂正発明2) 前記耐熱繊維は、限界酸素指数(LOI)が25%以上で、耐熱温度が150℃以上であることを特徴とする請求項1に記載の吸遮音材。 【請求項3】(本件訂正発明3) (削除) 【請求項6】(本件訂正発明6) 前記不織布は、密度100?2000g/m2であることを特徴とする請求項1に記載の吸遮音材。 【請求項8】(本件訂正発明8) 前記バインダーは熱硬化性樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の吸遮音材。 【請求項9】(本件訂正発明9) 前記熱硬化性樹脂はエポキシ樹脂であることを特徴とする請求項8に記載の吸遮音材。 【請求項10】(本件訂正発明10) 前記エポキシ樹脂は、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールBジグリシジルエーテル、ビスフェノールADジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ポリオキシプロピレンジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテルポリマー、ホスファゲンジグリシジルエーテル、ビスフェノールAノボラックエポキシ、フェノールノボラックエポキシ樹脂、及びo-クレゾールノボラックエポキシ樹脂から選択された1種以上であることを特徴とする請求項9に記載の吸遮音材。 【請求項11】(本件訂正発明11) 前記吸遮音材は、適用対象の立体構造形状に成形されることを特徴とする請求項1に記載の吸遮音材。 【請求項12】(本件訂正発明12) 前記吸遮音材は単一層または多層で構成されることを特徴とする請求項1に記載の吸遮音材。 【請求項13】(本件訂正発明13) 前記吸遮音材は自動車用であることを特徴とする請求項1から12のうち何れか1項に記載の吸遮音材。 【請求項14】(本件訂正発明14) a)耐熱繊維の含量が30?100重量%の不織布をバインダー溶液に含浸させる段階と、 b)前記含浸された不織布を乾燥させる段階と、 を含み、 前記耐熱繊維が、アラミド繊維、ポリフェニレンスルフィド(PPS)繊維、酸化されたポリアクリロニトリル(OXI-PAN)繊維、ポリイミド(PI)繊維、ポリベンズイミダゾール(PBI)繊維、ポリベンズオキサゾール(PBO)繊維、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維、及びポリケトン(PK)繊維から選択された1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の吸遮音材の製造方法。 【請求項15】(本件訂正発明15) 前記b)段階の後に、前記乾燥された不織布を高温で成形して吸遮音材を製造する段階(c段階)、 をさらに含むことを特徴とする請求項14に記載の吸遮音材の製造方法。 【請求項16】(本件訂正発明16) 前記耐熱繊維は、限界酸素指数(LOI)が25%以上で、耐熱温度が150℃以上であることを特徴とする請求項14に記載の吸遮音材の製造方法。 【請求項17】(本件訂正発明17) (削除) 【請求項19】(本件訂正発明19) 前記不織布は、厚さ3?20mmで、密度100?2000g/m2であることを特徴とする請求項14に記載の吸遮音材の製造方法。 【請求項23】(本件訂正発明23) バインダー溶液は、バインダー1?60重量%、硬化剤0.1?10重量%、触媒0.01?5重量%、添加剤1?40重量%、及び残量の溶媒からなることを特徴とする請求項14、15及び20のうち何れか1項に記載の吸遮音材の製造方法。 【請求項24】(本件訂正発明24) 前記バインダー溶液は、バインダー1?30重量%、硬化剤0.1?10重量%、触媒0.0l?5重量%、難燃剤1?30重量%、及び溶媒40?95重量%からなることを特徴とする請求項23に記載の吸遮音材の製造方法。 【請求項25】(本件訂正発明25) 前記バインダーは熱硬化性樹脂であることを特徴とする請求項14に記載の吸遮音材の製造方法。 【請求項26】(本件訂正発明26) 前記熱硬化性樹脂はエポキシ樹脂であることを特徴とする請求項25に記載の吸遮音材の製造方法。 【請求項27】(本件訂正発明27) 前記エポキシ樹脂は、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールBジグリシジルエーテル、ビスフェノールADジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ポリオキシプロピレンジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテルポリマー、ホスファゲンジグリシジルエーテル、ビスフェノーAルノボラックエポキシ、フェノールノボラックエポキシ樹脂、及びo-クレゾールノボラックエポキシ樹脂から選択された1種以上であることを特徴とする請求項26に記載の吸遮音材の製造方法。 【請求項28】(本件訂正発明28) 前記乾燥は70?200℃温度で行い、前記乾燥された不織布には不織布100重量部に対してバインダーを1?300重量部含むことを特徴とする請求項14に記載の吸遮音材の製造方法。 【請求項29】(本件訂正発明29) 前記吸遮音材は自動車用であることを特徴とする請求項14から16および18から28のうち何れか1項に記載の吸遮音材の製造方法。 第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について 1 取消理由の要旨 平成31年4月4日付けの訂正請求(以下、「第1訂正」という。)により訂正された特許請求の範囲の請求項1、2、6、8?16、19、23?29に係る発明(以下、それぞれの発明を「本件第1訂正発明1」、「本件第1訂正発明2」などという。)に対して、当審が令和1年8月19日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 (1)本件第1訂正発明1、2、6、8?16、19、23?29は、以下ア?ウの点で、特許法第36条第4項第1号並びに同条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 ア 実施可能要件について (ア)本件第1訂正発明1について 本件第1訂正発明1は、接着性添加剤を使用することに限定されていないため、耐熱繊維として、炭素繊維やガラス繊維のような無機繊維を選択した場合に、接着性添加剤を使用せずにどのようにして吸遮音材を構成できるのか、発明の詳細な説明をみても実施することができない。 (イ)本件第1訂正発明2、6、8?16、19、23?29について 本件第1訂正発明2、6、8?16、19、23?29は、本件第1訂正発明1を直接または間接に引用する発明であるから、上記(ア)と同様の取消理由が存在する。 イ サポート要件について (ア)本件第1訂正発明1について 接着性添加剤を使用することに限定されていない本件第1訂正発明1において、耐熱繊維として無機繊維を選択した場合の構成は、発明の詳細な説明に記載されているものではない。 (イ)本件第1訂正発明2、6、8?16、19、23?29について 本件第1訂正発明2、6、8?16、19、23?29は、本件第1訂正発明1を直接または間接に引用する発明であるから、上記(ア)と同様の取消理由が存在する。 ウ 明確性について (ア)本件第1訂正発明1について 耐熱繊維として有機繊維も無機繊維も含む本件第1訂正発明1は、耐熱繊維として有機繊維及び無機繊維のいずれを選択するかにより接着性添加剤を使用するか否かを限定するという発明特定事項が不足しているため、発明が明確でない。 (イ)本件第1訂正発明2、6、8?16、19、23?29について 本件第1訂正発明2、6、8?16、19、23?29は、本件第1訂正発明1を直接または間接に引用する発明であるから、上記(ア)と同様の取消理由が存在する。 (2)本件第1訂正発明1、6、8、9、11、12、14、15、19、25、26、28は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された技術、甲第3号証に記載された技術事項、甲第4号証に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 (3)本件第1訂正発明2、16は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された技術、甲第3号証に記載された技術事項?甲第5号証に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 (4)本件第1訂正発明13、29は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された技術、甲第3号証に記載された技術事項、甲第4号証に記載された技術事項、甲第6号証に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 甲第1号証:特開2001-73266号公報 甲第2号証:国際公開第2010/013645号 甲第3号証:本宮達也 他7名、「繊維の百科事典」、丸善株式会社、平成14年3月25日、32?33頁 甲第4号証:春日袈裟治、“岩綿(ロックウール)”、繊維學會誌、社団法人繊維学会、昭和39年10月10日、第20巻、第10号、S165?S171頁 甲第5号証:田中豊、“難燃素材の現状”、繊維機械学会誌、社団法人日本繊維機械学会、平成5年10月25日、第46巻、第10号、10?15 甲第6号証:国際公開第2009/081760号 2 当審の判断 (1)上記1(1)ア?ウについて ア 本件訂正発明1について 本件訂正により、本件訂正発明1の記載は、「耐熱繊維」が、「アラミド繊維、ポリフェニレンスルフィド(PPS)繊維、酸化されたポリアクリロニトリル(OXI-PAN)繊維、ポリイミド(PI)繊維、ポリベンズイミダゾール(PBI)繊維、ポリベンズオキサゾール(PBO)繊維、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維、及びポリケトン(PK)繊維から選択された1種以上である」ことに限定され、耐熱繊維は有機繊維のみとなり、無機繊維を含まない構成へと訂正された。 そうすると、接着性添加剤を使用せずに吸遮音材を構成できるので、本件訂正発明1は、実施可能であり、発明の詳細な説明に記載されているものであり、発明が明確である。 イ 本件訂正発明2、6、8?16、19、23?29について 本件訂正発明2、6、8?16、19、23?29は、本件訂正発明1を直接もしくは間接的に引用する発明であり、上記アと同様に、本件訂正発明2、6、8?16、19、23?29は、実施可能であり、発明の詳細な説明に記載されているものであり、発明が明確である。 ウ 小括 したがって、本件訂正発明1、2、6、8?16、19、23?29は、特許法第36条第4項第1号並びに同条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たすものである。 (2)上記1(2)?(4)について ア 各甲号証について (ア)甲第1号証 a 甲第1号証に記載された事項 甲第1号証には、「単層又は複層の不燃吸音電波吸収性内装材」に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。 なお、説明のために、下線を当審において付与した。 (a)「【請求項3】 表面側を隠蔽性が低い化粧加工を施した、嵩密度200kg/m^(3)以下で、10wt%以下の有機質結合材を含有するガラスウール短繊維板の裏面側に、嵩密度400kg/m^(3)以下で80?97wt%のロックウールと2?10wt%の有機質結合材と0.4?8.0wt%の導電性物質との構成からなるロックウールフェルトを嵩密度300kg/m^(3)以下で積層成型したことを特徴とする複層の不燃吸音電波吸収性内装材。」 (b)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、意匠性に優れ、しかも吸音性と電波吸収シールド性を有する不燃吸音電波吸収性内装材に関する。」 (c)「【0019】前記フェルトを構成する有機質結合材として使用される樹脂は、アクリル樹脂、変性アクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、変性ポリ塩化ビニリデン樹脂等のエマルジョンやフェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性の粉末樹脂や無機物配合樹脂、更にはポリエチレンパルプのようなパルプ状の有機質結合材を挙げることができる。また有機結合材の一種として利用される熱融着性有機質繊維としては、ポリプロピレン、ナイロン、ポリ塩化ビニリデン等の各繊維、エチレン・プロピレン複合繊維を挙げることができ、特にエチレン・プロピレン複合繊維が好適である。 【0020】前記フェルトは、湿式抄造法で製造するため、有機質結合材をフェルトに効果的に保持させるポリアクリルアミドや硫酸バンド等の凝集剤や、フェルトに撥水性を付与するワックスエマルジョン、シリコン樹脂エマルジョン等の撥水剤の結合助剤を少量添加する必要がある。又、凝集剤、撥水剤等からなる結合助剤(1wt%以下)を加えた有機質結合剤の配合割合は強度、不燃性との関係から2?10wt%の範囲がよい。」 (d)「【0023】本発明のフェルトは、加工されたロックウール等の無機質短繊維、有機質結合材、結合助剤及び導電性物質からなる混合物を水に分散させ、円網タイプ又は長網タイプのロートフォーマ等の製紙用抄造機と同様の抄造方法でフェルト状に抄造し、乾燥硬化させることにより製造できる。 (e)「【0030】[実施例2] (ロックウールフェルトの製造)SiO240wt%、Al_(2)O_(3) 13wt%、MgO5wt%、CaO37wt%、その他微量成分5wt%の組成からなるロックウール粒状綿を、水に分散してパルパーで解繊・切断した後、クリーナーで脱ショット処理した繊維長100?500μmのロックウール88.3wt%と、繊維長10mmで太さが3デニールのエチレン・プロピレン複合繊維2wt%、ガラス転移温度-14℃で45%濃度の自己架橋型アクリル樹脂エマルジョンが固形分ベースで5wt%、15%濃度のポリアクリルアミド水溶液が固形分ベースで0.2wt%、40%濃度のワックスエマルジョンが固形分ベースで0.1wt%、カーボン粒子(キャブロック(株)製、BPグレード)が4wt%、繊維長2mmのカーボンファイバー(大阪ガス(株)製、ザイラス)が0.4wt%からなる混合物をミキサーで分散し、約1wt%濃度の水性スラリーを調整した。該水性スラリーをロートフォーマー抄造機で抄造して吸引脱水後、150℃で20分乾燥させて厚み4mm、重さ1000g/m2のロックウールフェルトを製作した。」 b 甲第1号証に記載された発明 上記甲第1号証の記載事項及び関連する図面並びにこの分野における技術常識を考慮して甲第1号証に記載された発明を認定する。 (a)上記a(a)、(b)より、甲第1号証には、不燃吸音電波吸収性内装材についての発明が記載されている。 (b)上記a(a)、(e)より、甲第1号証の不燃吸音電波吸収性内装材は、80?97wt%(一例として88.3wt%)のロックウールを含むロックウールフェルトを含むものである。 (c)上記a(a)、(c)、(d)より、甲第1号証の不燃吸音電波吸収性内装材のロックウールフェルトは、有機質結合材を含むものである。 (d)上記a(c)より、甲第1号証の不燃吸音電波吸収性内装材は、有機質結合材をフェルトに効果的に保持させるため凝集剤等からなる結合助剤を少量添加したものである。 (e)上記a(d)より、甲第1号証の不燃吸音電波吸収性内装材のフェルトは、ロックウール、有機質結合材、結合助剤等からなる混合物を水に分散させ、フェルト状に抄造し、乾燥硬化させることにより製造できる。 上記(a)?(e)より、甲第1号証には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。 なお、説明のためにa?dの記号を当審において付与した。以下、「構成a」?「構成d」と称する。 (甲1発明) 「a 80?97wt%(一例として88.3wt%)のロックウールを含むロックウールフェルトと、 b ロックウールフェルトに保持された有機質結合材とを含み、 有機質結合材をフェルトに効果的に保持させるため凝集剤等からなる結合助剤を少量添加し、 フェルトは、ロックウール、有機質結合材、結合助剤等からなる混合物を水に分散させ、フェルト状に抄造し、乾燥硬化させることにより製造できる d 不燃吸音電波吸収性内装材。」 (イ)甲第2号証 a 甲第2号証に記載された事項 甲第2号証には、「プリプレグ、プリフォーム、成形品およびプリプレグの製造方法」に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。 なお、説明のために、下線を当審において付与した。 (a)「[0019][ 強化繊維 ] 本発明のプリプレグに用いられる強化繊維としては特に制限はなく、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、ボロン繊維、金属繊維、天然繊維、鉱物繊維などが使用でき、これらは1種または2種以上を併用してもよい。中でも、比強度、比剛性が高く軽量化効果の観点から、PAN系、ピッチ系、レーヨン系などの炭素繊維が好ましく用いられる。また、得られる成形品の経済性を高める観点から、ガラス繊維が好ましく用いることができ、とりわけ力学特性と経済性のバランスから炭素繊維とガラス繊維を併用することが好ましい。さらに、得られる成形品の衝撃吸収性や賦形性を高める観点から、アラミド繊維が好ましく用いることができ、とりわけ力学特性と衝撃吸収性のバランスから炭素繊維とアラミド繊維を併用することが好ましい。また、得られる成形品の導電性を高める観点から、ニッケルや銅やイッテルビウムなどの金属を被覆した強化繊維を用いることもできる。」 (b)「[0063]そこで、本発明では、以下の方法によりプリプレグを製造することが好ましい。すなわち、強化繊維束を分散させて強化繊維基材を得る工程(I)と、前記工程(I)で得られる強化繊維基材にバインダーを付与する工程(II)と、前記工程(II)において得られるバインダーの付与された強化繊維基材にマトリックス樹脂を複合化する工程(III)とを有してなるプリプレグの製造方法であって、前記工程(I)?(II)がオンラインで実施されてなり、プレプリグ全体に対する前記強化繊維束の含有率が10質量%以上80質量%以下、前記バインダーの含有率が0.1質量%以上10質量%以下および前記マトリックス樹脂の含有率が10質量%以上80質量%以下であるプリプレグの製造方法である。本発明のプリプレグの製造方法によれば、強化繊維の分散状態に優れ、成形品とした場合に力学特性に優れるプリプレグを短時間で得ることができる。」 (c)「[0083]工程(II)では工程(I)において得られる強化繊維基材に、バインダーを付与する。 [0084]バインダーとは、強化繊維基材とマトリックス樹脂との間に介在し両者を連結するバインダーを意味する。バインダーは通常、熱可塑性樹脂である。熱可塑性樹脂としては、アクリル系重合体、ビニル系重合体、ポリウレタン、ポリアミド及びポリエステルが例示される。本発明においてはこれらの例より選ばれる1種、または2種以上が好ましく用いられる。また、熱可塑性樹脂は、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、オキサゾリン基、カルボン酸塩基及び酸無水物基から選択される少なくとも1種の官能基を有することが好ましく、2種以上を有していてもよい。中でも、アミノ基を有する熱可塑性樹脂がより好ましい。 [0085]バインダーの強化繊維基材への付与は、バインダー(例えば上記熱可塑性樹脂)の水溶液、エマルジョンまたはサスペンジョンの形態で行うことが好ましい。水溶液とは水にほぼ完全に溶解した状態の溶液を意味し、エマルジョンとは完全に溶解しない2つの液体が液中で微細粒子を形成している状態の溶液(乳濁液)を意味し、サスペンジョンとは水に懸濁した状態の溶液(懸濁液)を意味する。液中の成分粒径の大きさは、水溶液<エマルジョン<サスペンジョンの順である。付与方式は特に問わないが、例えば熱可塑性樹脂の水溶液、エマルジョンまたはサスペンジョンに炭素繊維基材を浸漬する方式、シャワー式等によることができる。接触後は乾燥工程の前に、例えば吸引または吸収紙などの吸収材へ吸収させるなどで、過剰分のバインダーを除去しておくことが好ましい。」 (d)「[0201]本発明の本発明のプリプレグまたはプリフォームを用いて得られる成形品の用途としては、例えば、電気機器部品、電子機器部品、土木用部品、建材用部品、自動車用構造部品、二輪車用構造部品、自動車用部品、二輪車用部品、航空機用部品が挙げられる。力学特性の観点より、電気、電子機器用の筐体、土木、建材用のパネル、自動車用の構造部品、航空機用の部品に好ましく用いられる。とりわけ、力学特性および等方性の観点より、自動車、二輪車用構造部品に好ましく用いられる。」 b 甲第2号証に記載された技術 上記a(a)?(d)より、甲第2号証には次の技術(以下、「甲2技術」という。)が記載されている。 なお、段落0085には、「熱可塑性樹脂の水溶液、エマルジョンまたはサスペンジョンに炭素繊維基材を浸漬する方式」と記載されているが、段落0019に、「プリプレグに用いられる強化繊維としては特に制限はなく、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、ボロン繊維、金属繊維、天然繊維、鉱物繊維などが使用でき」ることが記載されているので、強化繊維基材としては炭素繊維基材だけでなく、特に制限がなく、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、ボロン繊維、金属繊維、天然繊維、鉱物繊維などであることが記載されているといえる。 (甲2技術) 「自動車用の構造部品等に好適に用いられるプリプレグの製造方法において、バインダーの水溶液、エマルジョン、サスペンジョンに、強化繊維基材を浸漬する方式であり、強化繊維基材は、特に制限がなく、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、ボロン繊維、金属繊維、天然繊維、鉱物繊維などである技術。」 (ウ)甲第3号証 甲第3号証には、 「羊毛繊維の塊(かたまり)を水で濡らしてもむと,フェルトとよぶ一種の不織布ができる.」(33頁19?20行) と記載されている。 すなわち、甲第3号証には以下の技術事項(以下、「甲3技術事項」という。)が記載されている。 (甲3技術事項) 「フェルトは一種の不織布であること。」 (エ)甲第4号証 a 甲第4号証に記載された事項 甲第4号証には、「岩綿(ロックウール)」に関し以下の事項が記載されている。 なお、説明のために、下線を当審において付与した。 (a)「2.岩綿の原料と組成 日本の岩綿は原料的にアメリカのそれと別のものとして発達してきた。(略)従来の日本の岩綿は石灰-ケイ酸と苦土(MgO)-ケイ酸との中間を行き,その原料としては安山岩,玄武岩など日本のいたる所に産出する火成岩と,(略)などを用いてきた。」(S165頁右欄9?17行) (b)「(3)耐熱度:岩綿繊維の耐熱度は原料礦石の種類と割合によって若干の相違はあるが,(略)また加熱,圧縮による耐熱試験でも700℃までは繊維の脆弱化はほとんど行なわれないので,この程度なら繊維は十分使用に耐え得るとされているが,一応長期間使用で安全を保証するという建前から安全使用温度の最高を約600℃としている。」(S167頁右欄35?41行) (c)「石綿,岩綿,ガラス綿などの礦物繊維は,材料そのものとしては,明らかに不燃材料である。」(S169頁21?22行) b 甲第4号証に記載された技術事項 上記a(a)?(c)より、甲第4号証には次の技術事項(以下、「甲4技術事項」という。)が記載されている。 (甲4技術事項) 「岩綿(ロックウール)は、玄武岩が原料であり、岩綿繊維は、700℃までは繊維の脆弱化がほとんど行われず、不燃材料であること。」 (オ)甲第5号証 甲第5号証には、以下の表が記載されている。 すなわち、甲第5号証には以下の技術事項(以下、「甲5技術事項」という。)が記載されている。 (甲5技術事項) 「難燃性の繊維のLOI値は、26.4以上、耐熱性のLOI値は、30以上であること。」 (カ)甲第6号証 a 甲第6号証に記載された事項 甲第6号証には、「車両用断熱吸音材」に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。 なお、説明のために、下線を当審において付与した。 (a)「[0001]本発明は、鉄道車両などの壁内部に並置すると高い断熱および吸音効果を発揮する車両用断熱吸音材に関し、特に厚み方向のヘタリが小さいので断熱および吸音効果を長期間維持できる車両用断熱吸音材に関する。」 (b)「[0002]車両内部の断熱および吸音のために壁内部に設置する断熱材は、既に数多く提案されている。(略)」 (c)「[0032]本発明に係る断熱吸音材は、薄葉ウェブがジグザグ状に縦配列されて嵩高であり且つマット材の主成分が不燃性繊維であるので、各種の鉄道車両や自動車に使用すると断熱および吸音効果が非常に優れており、しかもへたりが少ないので断熱性と吸音性を取付後の長期間に亘って維持できる。本発明の断熱吸音材は、鉄道車両や自動車などに取り付けた際に従来よりも安全性が高くなり、鉄道車両に関して日本のJIS規格だけでなく、英国規格に準拠する諸外国における高速鉄道の車両にも十分に適用できる。」 (d)「[0038]得た断熱吸音材1は、十分な耐熱性(不燃性)と断熱性ならびに吸音性を有しており、且つ荷重を掛けた時の厚み方向のヘタリも少ない。」 b 甲第6号証に記載された技術事項 上記a(a)?(d)より、甲第6号証には次の技術事項(以下、「甲6技術事項」という。)が記載されている。 (甲6技術事項) 「断熱吸音材は、鉄道車両や自動車の壁内部に並置すると高い断熱および吸音効果を発揮するという技術。」 イ 本件訂正発明と甲1発明との対比・判断 (ア)本件訂正発明1について a 対比 (a)構成A、Cと構成aについて 構成aの「ロックウール」は、甲4技術事項より、不燃材料であるから、本件訂正発明1の「耐熱繊維」に対応する。 構成aの「ロックウールフェルト」は、甲3技術事項より、フェルトが不織布であることから、本件訂正発明1の「不織布」に対応する。 また、構成aの「80?97wt%(一例として88.3wt%)のロックウールを含む」ことは、構成Aの「耐熱繊維の含量が30?100重量%」であることに対応する。 したがって、構成aは構成Aに対応する。 しかし、耐熱繊維として、甲1発明が、「ロックウール」であるのに対し、本件訂正発明1は、構成Cのように、「アラミド繊維、ポリフェニレンスルフィド(PPS)繊維、酸化されたポリアクリロニトリル(OXI-PAN)繊維、ポリイミド(PI)繊維、ポリベンズイミダゾール(PBI)繊維、ポリベンズオキサゾール(PBO)繊維、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維、及びポリケトン(PK)繊維から選択された1種以上である」点で相違する。 (b)構成Bと構成bについて 構成bにおいて、有機質結合材はロックウールフェルトに保持されており、有機質結合材をフェルトに効果的に保持させるため凝集剤を少量添加していることから、有機質結合材は、フェルトの内部においてロックウール同士を結合させており、同じ層にあることは明らかである。 そうすると、構成bの「有機質結合材」は、ロックウールフェルトに保持され、ロックウール同士を結合させるものであることから、構成Bの「前記不織布と同一層に位置して」いる「バインダー」に相当する。 また、構成bの「フェルトは、ロックウール、有機質結合材等からなる混合物を水に分散させ、フェルト状に抄造」することにより、本件特許明細書の段落0053の「バインダーが不織布繊維の原糸の表面に全体的に均一に分布された状態で付着され、不定形の通気孔構造を維持またはさらに形成することで、不織布本来の3次元内部形状を維持することを意味する。」という記載のように、有機質結合材がロックウールフェルトの原糸の表面に全体的に均一に分布された状態で付着され、ロックウールフェルト本来の3次元内部形状を維持することとなるので、構成bにおいても、構成Bのように「不織布内部の3次元形状を維持する」構成となる。 したがって、構成bは、構成Bに相当する。 (c)構成Dと構成dについて 構成dの「不燃吸音電波吸収性内装材」は、吸音する内装材であり、吸音することにより遮音することとなるから、構成Dの「吸遮音材」に相当する。 (d)一致点・相違点 上記(a)?(c)より、本件訂正発明1と甲1発明の一致点・相違点は、以下のとおりである。 (一致点) A 耐熱繊維の含量が30?100重量%の不織布と、 B 前記不織布と同一層に位置して不織布内部の3次元形状を維持する形態で含まれているバインダーと、 を含む、 D 吸遮音材。 (相違点1) 耐熱繊維に関して、本件訂正発明1は、「アラミド繊維、ポリフェニレンスルフィド(PPS)繊維、酸化されたポリアクリロニトリル(OXI-PAN)繊維、ポリイミド(PI)繊維、ポリベンズイミダゾール(PBI)繊維、ポリベンズオキサゾール(PBO)繊維、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維、及びポリケトン(PK)繊維から選択された1種以上である」のに対し、甲1発明は、「ロックウール」である点。 b 判断 (a)相違点1についての検討 甲第1号証には、「ロックウール」に代えて、本件訂正発明1のように、「アラミド繊維、ポリフェニレンスルフィド(PPS)繊維、酸化されたポリアクリロニトリル(OXI-PAN)繊維、ポリイミド(PI)繊維、ポリベンズイミダゾール(PBI)繊維、ポリベンズオキサゾール(PBO)繊維、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維、及びポリケトン(PK)繊維から選択された1種以上」とすることについて、記載も示唆も無く、本件訂正発明1が、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 また、甲2技術は、強化繊維基材として「特に制限がなく、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、ボロン繊維、金属繊維、天然繊維、鉱物繊維などである」こと、すなわち、強化繊維基材として、有機系の繊維でも無機系の繊維でも特に制限がなく使用されることが開示されている。 しかし、甲1発明における「ロックウール」について、甲2技術を検討しても、「ロックウール」に代えて「アラミド繊維、ポリフェニレンスルフィド(PPS)繊維、酸化されたポリアクリロニトリル(OXI-PAN)繊維、ポリイミド(PI)繊維、ポリベンズイミダゾール(PBI)繊維、ポリベンズオキサゾール(PBO)繊維、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維、及びポリケトン(PK)繊維から選択された1種以上」のような、有機系の繊維のみに置き換えることは、当業者であっても容易に発明できたものではない。 そして、本件訂正発明1は、耐熱繊維が、「アラミド繊維、ポリフェニレンスルフィド(PPS)繊維、酸化されたポリアクリロニトリル(OXI-PAN)繊維、ポリイミド(PI)繊維、ポリベンズイミダゾール(PBI)繊維、ポリベンズオキサゾール(PBO)繊維、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維、及びポリケトン(PK)繊維から選択された1種以上」である有機系の繊維とすることにより、接着性添加剤を必要としないという効果を奏する発明であり、そのような効果は、甲1発明及び甲2技術から導くことができないものである。 さらに、甲3技術事項?甲6技術事項を検討しても、相違点1に係る構成が、当業者であっても容易に想到し得るものとはいえない。 したがって、本件訂正発明1は、甲1発明、甲2技術、甲3技術事項?甲6技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。 (イ)本件訂正発明2、6、8、9、11?16、19、25、26、28、29について 本件訂正発明2、6、8、9、11?16、19、25、26、28、29は、本件訂正発明1を直接もしくは間接的に引用する発明であり、上記(ア)と同様の理由により、甲1発明、甲2技術、甲3技術事項?甲6技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。 ウ 小括 以上より、本件訂正発明1、2、6、8、9、11?16、19、25、26、28、29は、甲1発明、甲2技術、甲3技術事項?甲6技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。 (3)まとめ 上記(1)、(2)より、取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由により、請求項1、2、6、8?16、19、23?29に係る特許を取り消すことはできない。 第5 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について 1 特許異議申立書における特許異議申立理由 特許異議申立書における、請求項1?3、6、8?17、19、23?29に係る特許に対しての特許異議申立理由は、以下のとおりである。(特許異議申立書の「3 申立の理由」) (1)理由1:特許法第29条第1項第3号(同法第113条第2号) 請求項1?3、6、8、9、11?13は、甲第1号証に記載の発明である。 (2)理由2:特許法第29条第2項(同法第113条第2号) 請求項1?3、6、8、9、11?17、19、25、26、28、29は、甲第1号証?甲第6号証に記載の発明に基づき容易想到である。 (3)理由3?5:特許法第36条第4項第1号並びに同条第6項第1号及び第2号(同法第113条第4号) 請求項1?3、6、8?17、19、23?29は、以下a、bの点で、実施可能でなく、発明の詳細な説明に開示された範囲を超えており、発明が明確でない。 a 「バインダー」の素材について 「しかしながら、本件特許発明1では、バインダーの素材について何ら規定されていない。(中略) そのため、本件特許発明1でいう「バインダー」は、熱硬化性樹脂以外のバインダー(たとえば熱可塑性樹脂)を、定義上含んでいるといえる。 (中略)本件特許発明1における「バインダー」が、いかなるバインダーであるか(たとえば熱可塑性樹脂を含むものであるか)不明であるし、バインダーの種類によっては課題を解決し得ないものである。さらに、もし仮に、本件特許発明1が、あらゆるバインダーを用いることができるとすれば、比較例3の開示に照らして、本件特許発明の課題を解決するための実施方法が何ら開示も示唆もない(比較例3のように熱可塑性樹脂を用いる場合でも課題を解決するためには、いかなる実施方法を採用すればよいか開示も示唆もない)。」(特許異議申立書43頁4行?44頁2行) b 「不織布内部の3次元形状を維持する」構成について 「また、構成要件1Bには、「1000℃の熱を加えても不織布内部の3次元形状が維持される」ことが明記されていないが、上記比較例3の記載によれば、1000℃の熱において形状が維持されることが、必須の要件であると考えられる。このような必須の要件が規定されていない本件特許発明1は、製造条件(たとえば1000℃以上の高温に付される条件)によっては実施可能でない。また、このような必須条件が規定されていない本件特許発明1は、発明の外延が不明確である。さらに、本件特許発明1は、比較例3で示されたような、課題を解決し得ない態様を含んでおり、発明の詳細な説明に開示された範囲を超えている。」(特許異議申立書44頁3行?10行) ここで、上記(2)は、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由(上記第4の1(2)?(4))と同様であり、上記第4の2(2)で検討したとおりである。 また、上記(3)は、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由(上記第4の1(1))と、適用条文は同じであるが、その詳細な理由は異なる。 したがって、以下では、上記(1)及び(3)について検討する。 2 当審の判断 (1)上記1(1)について ア 本件訂正発明1について 上記第4の2(2)イ(ア)a(d)で検討したように、本件訂正発明1と甲1発明を対比すると、両者は上記相違点1を有するものであるから、本件訂正発明1は、甲1発明と同一ではない。 イ 本件訂正発明2、6、8、9、11?13について また、本件訂正発明2、6、8、9、11?13は、本件訂正発明1を直接もしくは間接に引用する発明である。 したがって、上記アと同様の理由により、本件訂正発明2、6、8、9、11?13は、甲1発明と同一ではない。 (2)上記1(3)について ア 「バインダー」の素材について バインダーの素材に関して、本件特許明細書には、以下のような記載がある。 なお、説明のために、下線を当審において付与した。 「【0033】 また、本発明の好ましい実施例によれば、前記バインダーは熱硬化性樹脂である。」 「【0053】 また、本発明の吸遮音材は、前記不織布と同一層に位置して不織布内部の3次元形状を維持する形態で含まれているバインダーを含む。したがって、本発明は、前記バインダーとして不織布内部の3次元形状を維持できる素材のバインダーであれば何れもよい。(以下略)」 「【0104】 比較例3.熱可塑性樹脂に含浸されたアラミド不織布からなる吸遮音材の製造前記実施例1と同じニードルパンチ工程で密度300g/m^(2)及び厚さ6mmのアラミド不織布を製造し、バインダー溶液に含浸、乾燥及び成形した。 【0105】 バインダー溶液は、ポリエチレン樹脂10重量%、メラミンシアヌレート(Melaminecyanurate)10重量%、ジメチルカーボネイト(DMC)80重量%の 組成を有する熱可塑性樹脂溶液を製造して使用した。」 「【0126】 その結果、吸遮音材の反対側面で測定した温度が、実施例1の吸遮音材は250℃、比較例1の吸遮音材は350℃であった。それによって、本発明の吸遮音材は、熱硬化性樹脂が含浸されることで、遮熱性能も向上したことが分かる。反面、比較例3の吸遮音材は、熱可塑性樹脂が含浸された吸遮音材であって、1000℃の熱を加えるとすぐに熱可塑性樹脂が溶けてしまって吸遮音材の形態が変形された。」 そうすると、バインダーが何れもいいことが本件特許明細書に記載されている以上、本件訂正発明1において、バインダーは、あらゆるバインダーを用いることができるものであり、熱硬化性樹脂に限定する必要はないものである。 また、1000℃以上では熱可塑性樹脂であると溶けてしまうので、熱硬化性樹脂が好ましいことが記載されているが、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれを選択するかは、吸遮音材をどのような温度の状況下で使用するかに応じて適宜決定すれば良いことである。 例えば、100℃を超えることが少ないような状況で使用されるのであれば、熱可塑性樹脂を使用することに格別の問題はない。 さらに、何れのバインダーを選択しても、本件特許明細書の段落0011に記載されているように、「吸音性、難燃性、耐熱性、遮熱性に優れたことはもちろん、耐熱繊維からなる不織布に含浸されたバインダーが硬化する過程中に所望する形状に成形が可能となる吸遮音材を提供することを目的とする。」発明であり、課題を解決するための発明である。 イ 「不織布内部の3次元形状を維持する」構成について 上記アの検討と同様に、例えば、100℃を超えることが少ないような状況で使用されるのであれば、1000℃の熱において形状が維持される必要は無いものである。 したがって、実際に使用される状況に応じて「不織布内部の3次元形状が維持される」ように設計すれば良いものであり、1000℃の熱において形状が維持されることが必須の要件であると認めることはできない。 また、1000℃の熱において形状が維持されることが必須の要件ではない以上、発明の外延は明確である。 さらに、「不織布内部の3次元形状が維持される」ように設計すれば、本件特許明細書の段落0011に記載されているように、「吸音性、難燃性、耐熱性、遮熱性に優れたことはもちろん、耐熱繊維からなる不織布に含浸されたバインダーが硬化する過程中に所望する形状に成形が可能となる吸遮音材を提供することを目的とする。」発明であり、課題を解決するための発明である。 ウ 小括 以上より、本件訂正発明1、2、6、8?16、19、23?29は、実施可能であり、発明の詳細な説明に開示された範囲のものであり、発明が明確である。 (3)まとめ 上記(1)、(2)より、特許異議申立理由を採用することはできない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1、2、6、8?16、19、23?29に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1、2、6、8?16、19、23?29に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 さらに、本件請求項3、17に係る特許は、訂正により、削除されたため、本件特許の請求項3、17に対して、特許異議申立人特許業務法人朝比奈特許事務所がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 耐熱繊維の含量が30?100重量%の不織布と、 前記不織布と同一層に位置して不織布内部の3次元形状を維持する形態で含まれているバインダーと、 を含み、 前記耐熱繊維が、アラミド繊維、ポリフェニレンスルフィド(PPS)繊維、酸化されたポリアクリロニトリル(OXI-PAN)繊維、ポリイミド(PI)繊維、ポリベンズイミダゾール(PBI)繊維、ポリベンズオキサゾール(PBO)繊維、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維、及びポリケトン(PK)繊維から選択された1種以上であることを特徴とする吸遮音材。 【請求項2】 前記耐熱繊維は、限界酸素指数(LOI)が25%以上で、耐熱温度が150℃以上であることを特徴とする請求項1に記載の吸遮音材。 【請求項3】 (削除) 【請求項4】 前記耐熱繊維はアラミド繊維であることを特徴とする請求項2に記載の吸遮音材。 【請求項5】 前記不織布は、繊度1?15デニールのアラミド繊維からなり、厚さ3?20mmの単一層の不織布であることを特徴とする請求項1に記載の吸遮音材。 【請求項6】 前記不織布は、密度100?2000g/m^(2)であることを特徴とする請求項1に記載の吸遮音材。 【請求項7】 前記不織布は、密度200?1200g/m^(2)であることを特徴とする請求項5に記載の吸遮音材。 【請求項8】 前記バインダーは熱硬化性樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の吸遮音材。 【請求項9】 前記熱硬化性樹脂はエポキシ樹脂であることを特徴とする請求項8に記載の吸遮音材。 【請求項10】 前記エポキシ樹脂は、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールBジグリシジルエーテル、ビスフェノールADジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ポリオキシプロピレンジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテルポリマー、ホスファゲンジグリシジルエーテル、ビスフェノールAノボラックエポキシ、フェノールノボラックエポキシ樹脂、及びo-クレゾールノボラックエポキシ樹脂から選択された1種以上であることを特徴とする請求項9に記載の吸遮音材。 【請求項11】 前記吸遮音材は、適用対象の立体構造形状に成形されることを特徴とする請求項1に記載の吸遮音材。 【請求項12】 前記吸遮音材は単一層または多層で構成されることを特徴とする請求項1に記載の吸遮音材。 【請求項13】 前記吸遮音材は自動車用であることを特徴とする請求項1から12のうち何れか1項に記載の吸遮音材。 【請求項14】 a)耐熱繊維の含量が30?100重量%の不織布をバインダー溶液に含浸させる段階と、 b)前記含浸された不織布を乾燥させる段階と、 を含み、 前記耐熱繊維が、アラミド繊維、ポリフェニレンスルフィド(PPS)繊維、酸化されたポリアクリロニトリル(OXI-PAN)繊維、ポリイミド(PI)繊維、ポリベンズイミダゾール(PBI)繊維、ポリベンズオキサゾール(PBO)繊維、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維、及びポリケトン(PK)繊維から選択された1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の吸遮音材の製造方法。 【請求項15】 前記b)段階の後に、前記乾燥された不織布を高温で成形して吸遮音材を製造する段階(c段階)、 をさらに含むことを特徴とする請求項14に記載の吸遮音材の製造方法。 【請求項16】 前記耐熱繊維は、限界酸素指数(LOI)が25%以上で、耐熱温度が150℃以上であることを特徴とする請求項14に記載の吸遮音材の製造方法。 【請求項17】 (削除) 【請求項18】 前記耐熱繊維は、繊度1?15デニール及び原糸の長さ20?100mmのアラミド繊維であることを特徴とする請求項14に記載の吸遮音材の製造方法。 【請求項19】 前記不織布は、厚さ3?20mmで、密度100?2000g/m^(2)であることを特徴とする請求項14に記載の吸遮音材の製造方法。 【請求項20】 前記a)段階の前に、繊度1?15デニールのアラミドの耐熱繊維を用いてニードルパンチ工程によって厚さ3?20mmのアラミド不織布を形成する段階をさらに含むことを特徴とする請求項15に記載の吸遮音材の製造方法。 【請求項21】 前記不織布は、アップ-ダウンニードル、ダウン-アップニードル、アップ-ダウンニードルを連続して行って形成されることを特徴とする請求項20に記載の吸遮音材の製造方法。 【請求項22】 前記不織布は、ニードルストローク30?350回/m^(2)で形成されることを特徴とする請求項20に記載の吸遮音材の製造方法。 【請求項23】 バインダー溶液は、バインダー1?60重量%、硬化剤0.1?10重量%、触媒0.01?5重量%、添加剤1?40重量%、及び残量の溶媒からなることを特徴とする請求項14、15及び20のうち何れか1項に記載の吸遮音材の製造方法。 【請求項24】 前記バインダー溶液は、バインダー1?30重量%、硬化剤0.1?10重量%、触媒0.01?5重量%、難燃剤1?30重量%、及び溶媒40?95重量%からなることを特徴とする請求項23に記載の吸遮音材の製造方法。 【請求項25】 前記バインダーは熱硬化性樹脂であることを特徴とする請求項14に記載の吸遮音材の製造方法。 【請求項26】 前記熱硬化性樹脂はエポキシ樹脂であることを特徴とする請求項25に記載の吸遮音材の製造方法。 【請求項27】 前記エポキシ樹脂は、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールBジグリシジルエーテル、ビスフェノールADジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ポリオキシプロピレンジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテルポリマー、ホスファゲンジグリシジルエーテル、ビスフェノールAノボラックエポキシ、フェノールノボラックエポキシ樹脂、及びo-クレゾールノボラックエポキシ樹脂から選択された1種以上であることを特徴とする請求項26に記載の吸遮音材の製造方法。 【請求項28】 前記乾燥は70?200℃温度で行い、前記乾燥された不織布には不織布100重量部に対してバインダーを1?300重量部含むことを特徴とする請求項14に記載の吸遮音材の製造方法。 【請求項29】 前記吸遮音材は自動車用であることを特徴とする請求項14から16および18から28のうち何れか1項に記載の吸遮音材の製造方法。 【請求項30】 i)騒音を誘発する装置の立体構造を確認する段階と、 ii)前記装置の立体構造と一部または全部が一致するように、請求項1、2および4から12のうち何れか1項に記載の吸遮音材を製作及び成形する段階と、 iii)前記吸遮音材を前記騒音誘発装置に隣接させる段階と、 を含むことを特徴とする騒音誘発装置の騒音低減方法。 【請求項31】 前記装置は、モータ、エンジンまたは排気系であることを特徴とする請求項30に記載の騒音誘発装置の騒音低減方法。 【請求項32】 前記隣接は、騒音誘発装置に密着させて締結するか、または騒音誘発装置から一定の距離を置いて設置するか、または騒音誘発装置に適用する部品として成形して適用することを特徴とする請求項30に記載の騒音誘発装置の騒音低減方法。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2020-01-23 |
出願番号 | 特願2015-518336(P2015-518336) |
審決分類 |
P
1
652・
853-
YAA
(G10K)
P 1 652・ 851- YAA (G10K) P 1 652・ 121- YAA (G10K) P 1 652・ 536- YAA (G10K) P 1 652・ 856- YAA (G10K) P 1 652・ 537- YAA (G10K) P 1 652・ 113- YAA (G10K) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 岩田 淳 |
特許庁審判長 |
鳥居 稔 |
特許庁審判官 |
渡辺 努 小池 正彦 |
登録日 | 2018-02-16 |
登録番号 | 特許第6290198号(P6290198) |
権利者 | 現代自動車株式会社 起亞自動車株式会社 |
発明の名称 | 吸遮音材及びその製造方法 |
代理人 | 勝沼 宏仁 |
代理人 | 箱田 満 |
代理人 | 箱田 満 |
代理人 | 勝沼 宏仁 |
代理人 | 堀田 幸裕 |
代理人 | 関根 毅 |
代理人 | 堀田 幸裕 |
代理人 | 勝沼 宏仁 |
代理人 | 堀田 幸裕 |
代理人 | 箱田 満 |
代理人 | 関根 毅 |
代理人 | 関根 毅 |