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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 F24H 審判 全部申し立て 2項進歩性 F24H 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 F24H |
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管理番号 | 1360494 |
異議申立番号 | 異議2018-701060 |
総通号数 | 244 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2020-04-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-12-27 |
確定日 | 2020-02-10 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6352110号発明「温水器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6352110号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項[1ないし5]及び6について訂正することを認める。 特許第6352110号の請求項2ないし5に係る特許を維持する。 特許第6352110号の請求項1及び6に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6352110号の請求項1ないし6に係る特許についての出願は、平成26年8月25日に出願され、平成30年6月15日にその特許権の設定登録がされ、平成30年7月4日に特許掲載公報が発行された。 本件特許異議申立ての経緯は、次のとおりである。 平成30年12月27日:特許異議申立人 TOTO株式会社(以下「異議申立人」という。)により請求項1ないし6に係る特許に対する異議の申立て 平成31年3月1日付け:取消理由通知書 平成31年4月12日:特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 平成31年4月23日付け:訂正拒絶理由通知 令和1年7月17日付け:取消理由通知書(決定の予告) 令和1年9月9日:特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和1年9月13日付け:訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の 5第5項) 令和1年10月16日:異議申立人による意見書の提出 なお、令和1年9月9日に訂正請求がなされたため、特許法第120条の5第7項の規定により、平成31年4月12日の訂正請求は取り下げられたものとみなす。 第2 訂正の請求について 1 訂正の内容 令和1年9月9日付けの訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、次の訂正事項よりなる。(なお、下線を付した箇所は訂正箇所である。) (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1の削除。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に、 「前記制御部は、前記開閉部に対して閉動作を指示した後、所定の時間が経過するまで前記加熱部による加熱を継続させてから前記加熱部による加熱を停止させることを特徴とする請求項1に記載の温水器。」とあるのを、 「吐水口から吐水されるべき水を加熱する加熱部と、 吐水の水路を開閉する開閉部と、 前記加熱部および前記開閉部を制御する制御部と、を備え、 前記加熱部は、吐水口から吐水されるべき水を、当該加熱部を流れる間に加熱し、 前記制御部は、前記開閉部に対して閉動作を指示した後、当該開閉部が閉状態になるのと実質的に同時に前記加熱部による加熱が終了するように、所定の時間が経過するまで前記加熱部による加熱を継続させてから前記加熱部による加熱を停止させることを特徴とする温水器。」と訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に、 「前記制御部は、前記開閉部に対して閉動作を指示した後、前記加熱部より加熱された水の温度が第1の温度以上になるまで前記加熱部による加熱を継続させてから前記加熱部による加熱を停止させることを特徴とする請求項1に記載の温水器。」とあるのを、 「吐水口から吐水されるべき水を加熱する加熱部と、 吐水の水路を開閉する開閉部と、 前記加熱部および前記開閉部を制御する制御部と、を備え、 前記加熱部は、吐水口から吐水されるべき水を、当該加熱部を流れる間に加熱し、 前記制御部は、前記開閉部に対して閉動作を指示した後、当該開閉部が閉状態になるのと実質的に同時に前記加熱部による加熱が終了するように、前記加熱部より加熱された水の温度が第1の温度以上になるまで前記加熱部による加熱を継続させてから前記加熱部による加熱を停止させることを特徴とする温水器。」と訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4に、 「前記制御部は、前記開閉部に対して閉動作を指示した後、水路を流れる水の流量が所定の流量以下になるまで前記加熱部による加熱を継続させてから前記加熱部による加熱を停止させることを特徴とする請求項1に記載の温水器。」とあるのを、 「吐水口から吐水されるべき水を加熱する加熱部と、 吐水の水路を開閉する開閉部と、 前記加熱部および前記開閉部を制御する制御部と、を備え、 前記加熱部は、吐水口から吐水されるべき水を、当該加熱部を流れる間に加熱し、 前記制御部は、前記開閉部に対して閉動作を指示した後、当該開閉部が閉状態になるのと実質的に同時に前記加熱部による加熱が終了するように、水路を流れる水の流量が所定の流量以下になるまで前記加熱部による加熱を継続させてから前記加熱部による加熱を停止させることを特徴とする温水器。」と訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5に、 「請求項1から4のいずれかに記載の温水器。」とあるのを、 「請求項2から4のいずれかに記載の温水器。」と訂正する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項6の削除。 (7)訂正事項7 【発明の名称】、明細書の段落【0001】、【0005】、【0015】にそれぞれ「温水器及びそれを用いた吐水システム」と記載されているのを、「温水器」と訂正する。 (8)訂正事項8 明細書の段落【0012】、【0013】の削除。 2 訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1 ア 訂正の目的について 訂正事項1は、請求項1を削除するというものである。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項1は、上記アに記載したとおりであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと 訂正事項1は、上記アに記載したとおりであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。 (2)訂正事項2ないし4 ア 訂正の目的について 訂正事項2ないし4は、訂正前の請求項2ないし4の記載が、訂正前の請求項1を引用する形式であったものを、訂正前の請求項1の記載を引用しないものとして、独立形式で記載された請求項としたものである。 したがって、訂正事項2ないし4は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定された他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすることを目的とするものに該当する。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項2ないし4は、上記アに記載したとおりであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと 訂正事項2ないし4は、上記アに記載したとおりであって、独立形式で記載された請求項としたものであって、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。 (3)訂正事項5 ア 訂正の目的について 訂正事項5は、請求項5が引用する請求項について、「請求項1から4」とあるのを、「請求項2から4に記載の」と訂正することにより特許請求の範囲の請求項5の引用請求項数を削減するというものである。 したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記アに記載したとおり、訂正事項5は、請求項5の引用請求項数を削減するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した範囲内の訂正である。 したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記アに記載したとおり、訂正事項5は、特許請求の範囲の請求項5の引用請求項数を削減するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである (4)訂正事項6 ア 訂正の目的について 訂正事項6は、請求項6を削除するというものである。 したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項6は、上記アに記載したとおりであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと 訂正事項6は、上記アに記載したとおりであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。 (5)訂正事項7及び8 ア 訂正の目的について 訂正事項7及び8は、上記訂正事項1ないし6に伴って、特許請求の範囲と、【発明の名称】及び明細書の記載との整合を図るための訂正である。 したがって、訂正事項7及び8は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定された明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項7及び8は、上記アに記載したとおりであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと 訂正事項7及び8は、上記アに記載したとおりであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。 3 むすび 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項1ないし6について訂正することを認める。 第3 特許異議の申立てについて 1 本件訂正発明 本件訂正後の請求項1ないし6に係る発明(以下それぞれ「本件訂正発明1」、「本件訂正発明2」、「本件訂正発明3」、「本件訂正発明4」、「本件訂正発明5」及び「本件訂正発明6」という。)は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】(削除)」 「【請求項2】吐水口から吐水されるべき水を加熱する加熱部と、 吐水の水路を開閉する開閉部と、 前記加熱部および前記開閉部を制御する制御部と、を備え、 前記加熱部は、吐水口から吐水されるべき水を、当該加熱部を流れる間に加熱し、 前記制御部は、前記開閉部に対して閉動作を指示した後、当該開閉部が閉状態になるのと実質的に同時に前記加熱部による加熱が終了するように、所定の時間が経過するまで前記加熱部による加熱を継続させてから前記加熱部による加熱を停止させることを特徴とする温水器。」 「【請求項3】吐水口から吐水されるべき水を加熱する加熱部と、 吐水の水路を開閉する開閉部と、 前記加熱部および前記開閉部を制御する制御部と、を備え、 前記加熱部は、吐水口から吐水されるべき水を、当該加熱部を流れる間に加熱し、 前記制御部は、前記開閉部に対して閉動作を指示した後、当該開閉部が閉状態になるのと実質的に同時に前記加熱部による加熱が終了するように、前記加熱部より加熱された水の温度が第1の温度以上になるまで前記加熱部による加熱を継続させてから前記加熱部による加熱を停止させることを特徴とする温水器。」 「【請求項4】吐水口から吐水されるべき水を加熱する加熱部と、 吐水の水路を開閉する開閉部と、 前記加熱部および前記開閉部を制御する制御部と、を備え、 前記加熱部は、吐水口から吐水されるべき水を、当該加熱部を流れる間に加熱し、 前記制御部は、前記開閉部に対して閉動作を指示した後、当該開閉部が閉状態になるのと実質的に同時に前記加熱部による加熱が終了するように、水路を流れる水の流量が所定の流量以下になるまで前記加熱部による加熱を継続させてから前記加熱部による加熱を停止させることを特徴とする温水器。」 「【請求項5】前記加熱部に供給される水の温度が第2の温度以上の場合、前記制御部は、前記加熱部による加熱を開始させないことを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の温水器。」 「【請求項6】(削除)」 2 取消理由(決定の予告)の概要 当審において、令和1年7月17日付けで通知した取消理由の概要は以下のとおりである。 (1)理由1 請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 (2)理由2 請求項1及び5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1及び5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 (3)理由3 請求項1ないし5に係る発明は明確でないから、請求項1ないし5に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。 請求項1には、「・・・前記制御部は、前記開閉部に対して閉動作を指示した後、当該開閉部が閉状態になるのと実質的に同時に前記加熱部による加熱が終了するように前記加熱部による加熱を停止させることを特徴とする・・・」と記載されているが、ここでいう「実質的に同時」という記載は、前記開閉部が閉状態になるタイミングと前記加熱部による加熱を終了するタイミングとの間にどの程度の時間差を許容するのかという点で、この記載の意味するところが不明確であり、また、請求項1を引用する請求項2?4に記載された態様以外のものを含むのかも不明であるから、請求項1に係る発明における技術的範囲の外延が不明瞭である。 この点、本件明細書の段落【0019】、【0024】、【0042】ないし【0044】、【0048】、【0052】には、前記加熱部による加熱を終了するタイミングを定める方法(実験等)は開示されているが、これらの記載を踏まえても、請求項1に係る発明に、前記開閉部が閉状態になるタイミングと前記加熱部による加熱を終了するタイミングとの時間差がどの程度まで存在する場合が包含されるのかは、依然として明確でない。 <甲号証> 甲第1号証:特開2013-104621号公報(以下「甲1」という。) 3 取消理由についての判断 (1)理由1及び2について 取消理由の対象とされた訂正前の請求項1は、本件訂正により削除されている。 また、本件訂正発明5については、取消理由で通知していない本件訂正発明2-4のみを引用しており、取消理由を有していない。 (2)理由3について ア 訂正前の請求項1について 取消理由の対象とされた訂正前の請求項1は、本件訂正により削除されている。 イ 本件訂正発明2-4について 本件訂正発明2は、「前記制御部は、前記開閉部に対して閉動作を指示した後、当該開閉部が閉状態になるのと実質的に同時に前記加熱部による加熱が終了するように、所定の時間が経過するまで前記加熱部による加熱を継続させてから前記加熱部による加熱を停止させる」と、特定されている。 本件訂正発明3は、「前記制御部は、前記開閉部に対して閉動作を指示した後、当該開閉部が閉状態になるのと実質的に同時に前記加熱部による加熱が終了するように、前記加熱部より加熱された水の温度が第1の温度以上になるまで前記加熱部による加熱を継続させてから前記加熱部による加熱を停止させる」と特定されている。 本件訂正発明4は、「前記制御部は、前記開閉部に対して閉動作を指示した後、当該開閉部が閉状態になるのと実質的に同時に前記加熱部による加熱が終了するように、水路を流れる水の流量が所定の流量以下になるまで前記加熱部による加熱を継続させてから前記加熱部による加熱を停止させる」と特定されている。 そして、本件訂正後の明細書には、下記の事項が記載されている。 「【0007】 この態様によると、開閉部が閉動作を開始してからしばらく後に加熱部による加熱を停止させることができる。開閉部が閉動作を開始してから閉状態となって流水が止まるまでにはある程度の時間がかかるため、閉動作を指示した後もしばらくは加熱部に水が流れ込む。閉動作を指示した後も加熱を継続することで、閉弁指示をした後に加熱部に流れ込んだ水も加熱できる。これにより、加熱されていない水が加熱部やその下流に残るのを抑止でき、心地よい温度で吐水できる。」 「【0008】 制御部は、所定の時間が経過するまで加熱部による加熱を継続させてから加熱部による加熱を停止させてもよい。」 「【0009】 制御部は、加熱部より加熱された水の温度が第1の温度以上になるまで加熱部による加熱を継続させてから加熱部による加熱を停止させてもよい。」 「【0010】 制御部は、水路を流れる水の流量が所定の流量以下になるまで加熱部による加熱を継続させてから加熱部による加熱を停止させてもよい。」 「【0042】(4)第1停止条件 加熱制御部76は、開閉制御部74が電磁弁32に開弁指示を送った後、「第1の時間」が経過するまで加熱部40による加熱を継続させてから加熱部40に停止指示を送る。なお、閉弁動作時間と実施的に同一である時間を「第1の時間」に設定することにより、電磁弁32が閉状態になるのと実質的に同時に加熱部40による加熱を終了できる。なお、「第1の時間」は実験により定めればよい。」 「【0043】 (5)第2停止条件 加熱制御部76は、開閉制御部74が電磁弁32に閉弁指示を送った後、出湯温度が「第1の出湯温度」以上になるまで加熱部40による加熱を継続させてから加熱部40に停止指示を送る。ここで、閉弁動作が開始されて電磁弁32が閉じ始めると水路52を流れる水の流れが遅くなり、水が加熱部40内を通過するのに要する時間は長くなる。したがって、加熱部40内を通過する水は開状態のときよりもより長い時間加熱され、出湯温度は開状態のときよりも高くなる。例えば電磁弁32を開状態から閉状態にしたときの出湯温度の変化を測定し、出湯温度の最高値を「第1の出湯温度」に設定すればよい。この場合、電磁弁32が閉状態になるのと実質的に同時に加熱部40による加熱を終了できる。」 「【0044】 (6)第3停止条件 加熱制御部76は、開閉制御部74が電磁弁32に閉弁指示を送った後、流量が「第1の流量」以下になるまで加熱部40による加熱を継続させてから加熱部40に停止指示を送る。ここで、閉弁動作が開始されて電磁弁32が閉じ始めると流量は少なくなり、閉状態になると流量はゼロになる。例えば実質的にゼロと見なせる流量を「第1の流量」に設定すれば、電磁弁32が閉状態になるのと実質的に同時に加熱部40による加熱を終了できる。」 これらの記載によれば、本件訂正発明2-4は、例えば実験により定められた、閉弁動作時間と実施的に同一である「第1の時間」、「第1の出湯温度」(になるまでの時間)、「第1の流量」(になるまでの時間)、加熱を継続させることで、加熱されていない水が加熱部やその下流に残るのを抑止する発明である。 したがって、本件訂正発明2-4における「実質的に同時」の「実質的に」とは、加熱されていない水が加熱部やその下流に残るのを抑止することができる範囲において、ある程度の時間差が許容されたという意味であり、明確である。 ウ まとめ したがって、本件訂正後の請求項2ないし4及び請求項2から4のいずれかを引用する請求項5に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえない。 4 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について (1)特許異議申立理由の概要 取消理由(決定の予告)において採用しなかった理由の概要は次のとおりである。 ア[理由1]請求項4及び6に係る発明は、甲第1または2号証に記載された発明と同一であるから、その特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消すべきものである。 イ[理由2]請求項2ないし6に係る発明は、甲第1ないし4号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消すべきものである。 ウ[理由3]請求項6に係る発明は不明確であるから、その特許は特許法第36条第6項第2項の規定に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、特許を取り消すべきものである。 (2)甲第1ないし4号証に記載された発明 ア 甲第1号証に記載された発明 甲1号証には、特に、段落【0013】、【0017】、【0020】、【0030】ないし【0031】及び図2の記載を参酌すると以下の「甲1発明」が記載されていると認められる。 「温水取出口71aから吐水される水を加熱する加熱部10aと、 吐水の水路を開閉するメインバルブ60aと、 装置の各構成を制御する加熱制御部51や水路制御部52を有する制御部50と、を備え、 加熱部10aは、温水取出口71aから吐水される水を、加熱部10aを流れる間に加熱し、 制御部50は、吐出を停止させる操作を行ったとき、加熱制御部51が加熱部10による水の加熱を停止させるとともに、水路制御部52がメインバルブ60aを閉状態とし通水を停止させる温水器。」 イ 甲第2号証に記載された発明 甲第2号証には、特に段落【0021】及び【0022】の記載を参酌すると、以下の「甲2発明」が記載されている。 「センサが感知した信号で電磁弁が開放する自動排水用の水栓において、センサが感知した信号で電磁弁が開放して送水された水圧でヒーターに通電するフロースイッチ1が作動するように設ける湯沸器」 ウ 甲第3号証に記載された発明 甲第3号証には、特に段落【0059】、【0061】及び【0089】並びにFIGURE2及び10の記載を参酌すると、以下の「甲3発明」が記載されている。 「バルブを開き(t1)、ヒーターに通電し(t1)、バルブを閉じ(t2)、ヒーターを停止する(t3)温水器」 エ 甲第4号証に記載された発明 甲第4号証には、特に段落【0012】及び【0014】及び図1の記載を参酌すると、以下の「甲4発明」が記載されている。 「バルブ10を閉止した後も、温度調節手段6が予め設定された設定温度(例えば35℃)に達するまでヒータ4は作動を続ける温水器」 (3)本件訂正発明2について ア 対比 甲1発明と本件訂正発明2とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比すると、甲1発明の「温水器」、「温水取出口71a」、「温水取出口71aから吐水される水を加熱する加熱部10a」、「吐水の水路を開閉するメインバルブ60a」、「装置の各構成を制御する加熱制御部51や水路制御部52を有する制御部50」は、それぞれ、本件訂正発明2の「温水器」、「吐水口」、「吐水口から吐水されるべき水を加熱する加熱部」、「吐水の水路を開閉する開閉部」、「前記加熱部および前記開閉部を制御する制御部」に相当し、甲1発明の「加熱部10aは、温水取出口71aから吐水される水を、加熱部10aを流れる間に加熱し、」は、本件訂正発明2の「前記加熱部は、吐水口から吐水されるべき水を、当該加熱部を流れる間に加熱し、」に相当する。 甲1発明の「吐出を停止させる操作を行ったとき」、「加熱制御部51が加熱部10による水の加熱を停止させる」は、それぞれ、本件訂正発明2の「前記開閉部に対して閉動作を指示した後」、「前記加熱部による加熱を停止させる」に相当する。 以上のことから、本件訂正発明2と甲1発明は、以下の点で一致し、以下の点で相違する。 (一致点) 「 吐水口から吐水されるべき水を加熱する加熱部と、 吐水の水路を開閉する開閉部と、 前記加熱部および前記開閉部を制御する制御部と、を備え、 前記加熱部は、吐水口から吐水されるべき水を、当該加熱部を流れる間に加熱し、 前記制御部は、前記開閉部に対して閉動作を指示した後、前記加熱部による加熱を停止させる温水器。」 (相違点) 制御部が、「前記開閉部に対して閉動作を指示した後、前記加熱部による加熱を停止させる」際に、本件訂正発明2は、「当該開閉部が閉状態になるのと実質的に同時に前記加熱部による加熱が終了するように、所定の時間が経過するまで前記加熱部による加熱を継続させてから前記加熱部による加熱を停止させる」のに対して、甲1発明は、「加熱制御部51が加熱部10による水の加熱を停止させるとともに、水路制御部52がメインバルブ60aを閉状態とし通水を停止させる」点。 イ 相違点についての判断 甲2発明は、「センサが感知した信号で電磁弁が開放する自動排水用の水栓において、センサが感知した信号で電磁弁が開放して送水された水圧でヒーターに通電するフロースイッチ1が作動するように設ける湯沸器」であって、「電磁弁」が閉じられた場合、水圧の変化により「ヒーター」に通電する「フロースイッチ」が作動する。しかしながら、「フロースイッチ」は水圧の変化で作動し、本件訂正発明2のごとく、「所定の時間が経過するまで前記加熱部による加熱を継続させて」いる制御をおこなっているものではない。 甲3発明は、「バルブを開き(t1)、ヒーターに通電し(t1)、バルブを閉じ(t2)、ヒーターを停止する(t3)温水器」であって、「バルブ」を閉じた後も「ヒーター」が「所定の時間」作動し続ける。しかしながら、本件訂正発明2のごとく、「当該開閉部が閉状態になるのと実質的に同時に前記加熱部による加熱が終了するように」制御をおこなっているものではない。 甲4発明は、「バルブ10を閉止した後も、温度調節手段6が予め設定された設定温度(例えば35℃)に達するまでヒータ4は作動を続ける温水器」であるが、本件訂正発明2のごとく、「当該開閉部が閉状態になるのと実質的に同時に前記加熱部による加熱が終了するように、所定の時間が経過するまで前記加熱部による加熱を継続させて」いる制御をおこなっているものではない。 したがって、本件訂正発明2は、甲1ないし4発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (4)本件訂正発明3ないし5について 上記「(3)本件訂正発明2について」で記載した事項と同様に、甲1ないし4発明において、「前記制御部は、前記開閉部に対して閉動作を指示した後、当該開閉部が閉状態になるのと実質的に同時に前記加熱部による加熱が終了するように」、「加熱された水の温度が第1の温度以上になるまで」(本件訂正発明3)又は「水の流量が所定の水量以下になるまで」(本件訂正発明4)、「前記加熱部による加熱を継続させてから前記加熱部による加熱を停止させる」いる制御をおこなっているものはない。 したがって、本件訂正発明3は、甲1ないし4発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 また、本件訂正発明4は、甲1発明又は甲2発明と同一ではなく、甲1ないし4発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 そして、本件訂正発明2ないし4のいずれかの発明の特定事項を全て含む本件訂正発明5においても、同様に甲1ないし4発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (5)意見書について 異議申立人は、令和1年10月16日付け意見書において、本件訂正発明4は、甲第2号証に記載された発明から、当業者であれば容易に想到可能と主張している。 しかしながら、上記(4)で検討したとおり、甲1ないし4発明から当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (6)まとめ よって、本件訂正発明4は、特許法第29条第1項の規定により、また、本件訂正発明2ないし5は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものとすることができない。 (7)請求項1及び6に係る特許に対する申立 本件訂正発明1及び6は、本件訂正により削除されたため、請求項1及び6に係る特許に対して、申立人がした本件特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しないものとなった。 したがって、本件特許の請求項1及び6に係る特許に対して申立人がした本件特許異議の申立ては、不適法であって、その補正をすることができないものであることから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。 第4 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された申立理由によっては、本件特許の請求項2ないし5に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項2ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 また、請求項1及び6に係る特許は、本件訂正により削除されたため、本件特許の請求項1及び6に対して異議申立人がした特許異議の申立については、対象となる請求項が存在しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 温水器 【技術分野】 【0001】 本発明は温水器に関する。 【背景技術】 【0002】 手洗いなどに用いられる吐水システムは、オフィスビル、店舗、公共施設、学校、病院などの洗面所やトイレなどに設置され、広く普及している。吐水システムに用いられる温水器には様々な改良が加えられ、従来では、例えば特許文献1に記載されるよう温水器が提案されている。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0003】 【特許文献1】特開2013-104266号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 上述した従来の温水器は、冷たすぎず熱すぎない心地よい温度で吐水できる。しかし、この温水器では、使用者が差し出した手を検知して加熱部の駆動を開始した後、所定の予備時間が経過してから水路を開くため、吐水が始まるのが遅く感じる。これは使用者にとってはストレスとなる。 【0005】 本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、心地よい温度で吐水し、かつ、使用者に与えるストレスを低減しうる温水器を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0006】 上記課題を解決するために、本発明のある態様の温水器は、吐水口から吐水されるべき水を加熱する加熱部と、吐水の水路を開閉する開閉部と、加熱部および開閉部を制御する制御部と、を備える。制御部は、開閉部に対して閉動作を指示した後、所定の停止条件を満たすまで加熱部による加熱を継続させてから加熱部による加熱を停止させる。 【0007】 この態様によると、開閉部が閉動作を開始してからしばらく後に加熱部による加熱を停止させることができる。開閉部が閉動作を開始してから閉状態となって流水が止まるまでにはある程度の時間がかかるため、閉動作を指示した後もしばらくは加熱部に水が流れ込む。閉動作を指示した後も加熱を継続することで、閉弁指示をした後に加熱部に流れ込んだ水も加熱できる。これにより、加熱されていない水が加熱部やその下流に残るのを抑止でき、心地よい温度で吐水できる。 【0008】 制御部は、所定の時間が経過するまで加熱部による加熱を継続させてから加熱部による加熱を停止させてもよい。 【0009】 制御部は、加熱部より加熱された水の温度が第1の温度以上になるまで加熱部による加熱を継続させてから加熱部による加熱を停止させてもよい。 【0010】 制御部は、水路を流れる水の流量が所定の流量以下になるまで加熱部による加熱を継続させてから加熱部による加熱を停止させてもよい。 【0011】 加熱部に供給される水の温度が第2の温度以上の場合、制御部は、加熱部による加熱を開始させない。この場合、加熱部により加熱せずとも、止水栓から提供される水は快適に使用できると考えられる。つまり、加熱部よって加熱する必要はないと考えられる。したがって、不要な加熱を行わなくてよいため節電が図られる。 【0012】(削除) 【0013】(削除) 【0014】 なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。 【0015】 本発明によれば、心地よい温度で吐水し、かつ、使用者に与えるストレスを低減しうる温水器を提供できる。 【図面の簡単な説明】 【0016】 【図1】図1(a)?(c)は、比較例に係る温水器を示す図である。 【図2】実施の形態に係る吐水システムを示す斜視図である。 【図3】図2の温水器を示す模式図である。 【図4】図3の制御部の機能および構成を示すブロック図である。 【図5】吐水システムの動作を示すフローチャートである。 【発明を実施するための形態】 【0017】 以下、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。 【0018】 実施の形態に係る吐水システムは、洗面所やトイレなどにおいて好適に用いられ、特にオフィスや駅など頻繁に再吐水が繰り返される洗面所やトイレにおいて好適に用いられる。 【0019】 実施の形態を説明する前に、基礎となった知見を説明する。図1(a)?(c)は、比較例に係る温水器を示す。図1(a)は吐水時を示し、図1(b)は止水時を示し、図1(c)は再吐水時を示す。温水器200では、一般に、電磁弁232に閉弁指示が送られるのと実質的に同時に加熱部240に加熱の停止指示が送られる。電磁弁232が閉弁動作を開始してから電磁弁が完全に閉じた閉状態となるまでには所定の時間が掛かってしまうため、加熱を停止した加熱部240やその下流側に、図1(b)のごとく温められていない水Wcが流れ込んでしまう場合がある。この状態で次回の吐水が始まると、図1(c)のごとく加熱部240で加熱されなかった冷たい水Wcが温かい水Whに挟まれて水栓212から吐水される。このような温度変化の激しい水に触れると使用者は不快に感じる。したがって、心地よい温度で吐水するためには、電磁弁が閉状態となるのと実質的に同時に、すなわち電磁弁が閉弁指示を受けて閉弁動作を開始して電磁弁が完全の閉じた閉状態となって流水が止まるタイミングと同時に、加熱部の加熱を停止することが求められる。以上の知見から、本発明者は実施の形態に係る吐水システムを得るに至った。 【0020】 図2は、実施の形態に係る吐水システム100を示す斜視図である。吐水システム100は、洗面所やトイレなどに設置され、手洗いなどに使用される。吐水システム100は、温水器10と、水栓12と、洗面器14と、人体検知センサ16と、を備える。人体検知センサ16は、水栓12に取り付けられる。なお、人体検知センサ16は、洗面器14やその他の場所に取り付けられてもよい。人体検知センサ16は、水栓12の吐水口12aの下方の領域に差し出される使用者の手を非接触で検知する。人体検知センサ16は、手を検知している間、ケーブル18を経由して温水器10に信号を送る。 【0021】 温水器10は、壁に取り付けられる。温水器10は、人体検知センサ16が手を検知している間、水栓12にホース20を介して水を供給する。温水器10は特に、給水管(不図示)から壁に取り付けられた止水栓(不図示)を経由して供給される水を温めてから水栓12に供給する。水栓12は、温水器10において温められた水を吐水口12aから吐水する。洗面器14は、壁に取り付けられる。洗面器14は、水栓12から吐水された水を受けて排水管(不図示)へ排水する。 【0022】 図3は、温水器10を示す模式図である。温水器10は、入水管30と、電磁弁32と、流量調整部34と、給水温度センサ36と、流量センサ38と、加熱部40と、出湯温度センサ42と、雰囲気温度センサ44と、出水管46と、操作部48と、制御部50と、を備える。 【0023】 止水栓から供給される水は、給水口30aと、入水管30と、加熱部40と、出水管46と、吐水口46aと、を通って水栓12に供給される。したがって、これらは温水器10内の水路52を構成する。 【0024】 電磁弁32は入水管30に設けられる。制御部50は人体検知センサ16からの信号を受けて電磁弁32に開弁指示を送る。電磁弁32は、この開弁指示を受けると開弁する。制御部50は人体検知センサ16からの信号を受け取らなくなると電磁弁32に閉弁指示を送る。電磁弁32は、この閉弁指示を受けると閉弁する。電磁弁32が閉弁動作を開始してから閉状態になるまでは、所定の時間(以下、この時間を「閉弁動作時間」と呼ぶ)を要する。閉弁動作時間は、電磁弁32の性能、開状態における電磁弁32の開度、止水弁から供給される水の圧力などによって決まる。 【0025】 電磁弁32が開くと水路52を水が流れ、水栓12に水が供給され、水栓12の吐水口12aから吐水される。電磁弁32が閉状態になると水路52の水の流れが止まり、水栓12に水が供給されなくなり、水栓12の吐水口12aからの吐水が止まる。つまり電磁弁32は水路52を開閉する。 【0026】 流量調整部34は、入水管30に設けられる。流量調整部34は例えば減圧弁である。流量調整部34は、水路52を流れる水の流量を調整する。これにより、水栓12の吐水口12aから吐水される水の流量が調整される。 【0027】 給水温度センサ36は、入水管30に設けられる。給水温度センサ36は、止水栓から供給されて入水管30を流れる水の温度、すなわち加熱部40によって温められる前の水の温度(以下、単に「給水温度」と呼ぶ)を測定する。給水温度センサ36により測定された給水温度は、ケーブル54を介して制御部50に送られる。 【0028】 流量センサ38は、入水管30に設けられる。流量センサ38は、水路52を流れる水の流量(以下、単に「流量」とも呼ぶ)を測定する。流量センサ38により測定された流量は、ケーブル56を介して制御部50に送られる。 【0029】 加熱部40は、いわゆる瞬間式の加熱器である。加熱部40は、その内部に電気式のヒータ40aを有する。ヒータ40aはガス式のヒータであってもよい。制御部50は人体検知センサ16からの信号を受けて加熱部40に加熱指示を送る。加熱部40は、この加熱指示を受けるとヒータ40aによる加熱を開始する。入水管30から加熱部40内に流れ込んだ水は、加熱部40内を流れる間にヒータ40aにより加熱されて所定の温度(例えば30度)に温められ、出水管46に出ていく。また、制御部50は人体検知センサ16からの信号を受け取らなくなると加熱部40に停止指示を送る。加熱部40は、この停止指示を受けるとヒータ40aによる加熱を停止する。 【0030】 出湯温度センサ42は、出水管46に設けられる。出湯温度センサ42は特に、出水管46の加熱部40側の端部に設けられる。出湯温度センサ42は、加熱部40により加熱された水の温度(以下、単に「出湯温度」と呼ぶ)を測定する。出湯温度センサ42により測定された出湯温度は、ケーブル58を介して制御部50に送られる。 【0031】 雰囲気温度センサ44は、温水器10の周囲の雰囲気温度(以下、単に「雰囲気温度」と呼ぶ)を測定する。雰囲気温度センサ44により測定された雰囲気温度は、ケーブル60を介して制御部50に送られる。 【0032】 操作部48は、温水器10の前面側に設けられる(図2参照)。操作部48は、タッチパネル式の表示部を有する。表示部には各種の操作画面が表示され、使用者はこの操作画面を介して情報を入力する。また、表示部には、各種の情報が表示される。 【0033】 制御部50は、電磁弁32による水路52の開閉と、加熱部40による加熱と、を制御する。 【0034】 図4は、制御部50の機能および構成を示すブロック図である。これら各ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。 【0035】 制御部50は、表示制御部70と、入力受付部72と、開閉制御部74と、加熱制御部76と、記憶部78と、を含む。 【0036】 表示制御部70は、操作部48の表示部に、所定の画面を表示させる。入力受付部72は、操作部48の表示部に表示された画面を介して入力された情報を受け付ける。例えば、入力受付部72は、操作部48の表示部に表示された画面を介して、給水温度が高い場合は加熱を実施しない「第1節電モード」、または、雰囲気温度が高い場合は加熱を実施しない「第2節電モード」の選択を受け付ける。入力受付部72は、これらを受け付けると記憶部78に格納する。記憶部78は、あらかじめ用意された各種の設定データや、入力受付部72が受け付けたデータを記憶する。 【0037】 開閉制御部74は、電磁弁32の開閉を制御する。開閉制御部74は、人体検知センサ16から信号を受け取ると電磁弁32に開弁指示を送り、電磁弁32に開弁動作を開始させる。また、開閉制御部74は、人体検知センサ16から信号を受け取らなくなると電磁弁32に閉弁指示を送り、電磁弁32に閉弁動作を開始させる。 【0038】 加熱制御部76は、加熱部40による加熱を制御する。加熱制御部76は、開閉制御部74が電磁弁32に開弁指示を送るのと実質的に同時に加熱部40に加熱指示を送り、加熱部40による加熱を開始させる。ただし、加熱制御部76は、以下の(1)、(2)いずれかの場合は、加熱部40に加熱指示を送らない。したがって、止水栓から供給された水は温水器10で温められずに水栓12から吐水される。 【0039】 (1)第1節電モードが選択されている場合において、給水温度が「第1の給水温度」(例えば28度)以上の場合 給水温度が高い場合、加熱部40によって温めなくとも、止水栓から供給される水は快適に使用できると考えられる。つまり、加熱部40によって加熱する必要がないと考えられる。したがって、不必要な加熱を行わなくてよいため、節電が図られる。 【0040】 (2)第2節電モードが選択されている場合において、雰囲気温度が「第1の雰囲気温度」(例えば35度)以上の場合 雰囲気温度が高い場合は、通常、給水温度も高い。この場合、加熱部40によって温めなくとも、止水栓から供給される水は快適に使用できると考えられる。つまり、加熱部40によって加熱する必要がないと考えられる。したがって、不必要な加熱を行わなくてよいため、節電が図られる。 【0041】 また、加熱制御部76は、開閉制御部74が電磁弁32に閉弁指示を送った後、使用者によってあらかじめ選択された第1?3停止条件のいずれかの停止条件が満たされるまで加熱部40による加熱を「継続」させてから加熱部40に停止指示を送り、加熱部40による加熱を停止させる。 【0042】 (4)第1停止条件 加熱制御部76は、開閉制御部74が電磁弁32に開弁指示を送った後、「第1の時間」が経過するまで加熱部40による加熱を継続させてから加熱部40に停止指示を送る。なお、閉弁動作時間と実施的に同一である時間を「第1の時間」に設定することにより、電磁弁32が閉状態になるのと実質的に同時に加熱部40による加熱を終了できる。なお、「第1の時間」は実験により定めればよい。 【0043】 (5)第2停止条件 加熱制御部76は、開閉制御部74が電磁弁32に閉弁指示を送った後、出湯温度が「第1の出湯温度」以上になるまで加熱部40による加熱を継続させてから加熱部40に停止指示を送る。ここで、閉弁動作が開始されて電磁弁32が閉じ始めると水路52を流れる水の流れが遅くなり、水が加熱部40内を通過するのに要する時間は長くなる。したがって、加熱部40内を通過する水は開状態のときよりもより長い時間加熱され、出湯温度は開状態のときよりも高くなる。例えば電磁弁32を開状態から閉状態にしたときの出湯温度の変化を測定し、出湯温度の最高値を「第1の出湯温度」に設定すればよい。この場合、電磁弁32が閉状態になるのと実質的に同時に加熱部40による加熱を終了できる。 【0044】 (6)第3停止条件 加熱制御部76は、開閉制御部74が電磁弁32に閉弁指示を送った後、流量が「第1の流量」以下になるまで加熱部40による加熱を継続させてから加熱部40に停止指示を送る。ここで、閉弁動作が開始されて電磁弁32が閉じ始めると流量は少なくなり、閉状態になると流量はゼロになる。例えば実質的にゼロと見なせる流量を「第1の流量」に設定すれば、電磁弁32が閉状態になるのと実質的に同時に加熱部40による加熱を終了できる。 【0045】 以上のように構成された吐水システム100の動作を説明する。 図5は、吐水システム100の動作を示すフローチャートである。使用者が水栓12の吐水口12aの下方の領域に手を差し出すと、人体検知センサ16はこれを検知する(S10)。開閉制御部74は電磁弁32に開弁指示を送り(S12)、電磁弁32は開弁する(S14)。第1節電モードが選択されている場合において給水温度が「第1の給水温度」以上の場合(S16のY)、または、第2節電モードが選択されている場合において雰囲気温度が「第1の雰囲気温度」以上の場合(S18のY)、加熱制御部76は加熱部40による加熱を開始しない。この場合、加熱部40で温められていない水が温水器10から水栓12に送られ、吐水される。一方、これらに該当しない場合(S16のNかつS18のN)、加熱制御部76は、加熱部40に加熱指示を送る(S20)。加熱部40は、加熱部40を通る水の加熱を開始する(S22)。すると、加熱部40で加熱されて温められた水が温水器10から水栓12に送られ、吐水される。 【0046】 使用者が水栓12の吐水口12aの下方の領域から手を引っ込めると、人体検知センサ16が使用者の手を検知していない状態になる(S24)。開閉制御部74は、電磁弁32に閉弁指示を送り(S26)、電磁弁32は閉弁する(S28)。加熱部40が水を加熱している場合(S30のY)、加熱制御部76は、第1?3停止条件のうち、使用者によってあらかじめ選択された停止条件が満たされるまで加熱部40による加熱を継続させてから(S32)、加熱部40に停止指示を送り(S34)、加熱部40は加熱を停止する(S36)。一方、加熱部40が水を加熱していなかった場合(S30のN)、そのまま終了する。 【0047】 実施の形態に係る吐水システム100によると、制御部50は、電磁弁32に閉弁指示をした後、第1?3停止条件のうち、使用者によってあらかじめ選択された停止条件が満たされるまで加熱部40による加熱を継続させてから加熱部40による加熱が停止する。この場合、電磁弁32が閉弁動作を開始してからしばらく後に加熱部40による加熱を停止させることができる。これにより、閉弁指示をした後に加熱部40に流れ込んだ水も加熱できる。つまり、加熱されていない水が加熱部40や出水管46に残るのを抑止でき、心地よい温度で吐水できる。 【0048】 また、実施の形態に係る吐水システム100によると、制御部50は、電磁弁32に閉弁指示をした後、「第1の時間」が経過するまで、出湯温度が「第1の出湯温度」以上になるまで、または、流量が「第1の流量」以下になるまで、加熱部40による加熱を継続させてから加熱部40による加熱を停止する。この場合、電磁弁32が閉状態になるのと実質的に同時に加熱部40による加熱を終了できる。これにより、閉弁指示をした後に加熱部40に流れ込んだ水をより確実に加熱できる。 【0049】 また、実施の形態に係る吐水システム100によると、給水温度が高い場合、または、雰囲気温度が高い場合、加熱部40によって温めなくとも、止水栓から供給される水は快適に使用できると考えられる。つまり、加熱部40よって加熱する必要はないと考えられる。したがって、不要な加熱を行わなくてよいため節電が図られる。 【0050】 以上、実施の形態に係る吐水システムについて説明した。この実施の形態は例示であり、その各構成要素の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。 【0051】 (変形例1) 実施の形態では、電磁弁32および流量調整部34が入水管30に設けられる場合について説明したが、これに限られない。電磁弁32および流量調整部34のうちの少なくともひとつは、出水管46に設けられてもよい。 【0052】 (変形例2) また、実施の形態では特に言及しなかったが、「第1の時間」、「第1の出湯温度」、「第1の流量」は、使用者が設定できるようにしてもよい。この場合、入力受付部72は、「第1の時間」、「第1の出湯温度」、「第1の流量」を受け付ける。加熱制御部76は、これ基づいて停止条件が満たされているかを判断する。吐水システム100を設置する環境によって閉弁動作時間は変動しうるため、「第1の時間」、「第1の出湯温度」、「第1の流量」を調整することによって、電磁弁32が閉状態になるのと実質的に同時に加熱部40による加熱を終了させることが可能となる。 【符号の説明】 【0053】 10 温水器、 12 水栓、 14 洗面器、 16 人体検知センサ、 32 電磁弁、 40 加熱部、 50 制御部、 74 開閉制御部、 76 加熱制御部、 100 吐水システム。 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】(削除) 【請求項2】 吐水口から吐水されるべき水を加熱する加熱部と、 吐水の水路を開閉する開閉部と、 前記加熱部および前記開閉部を制御する制御部と、を備え、 前記加熱部は、吐水口から吐水されるべき水を、当該加熱部を流れる間に加熱し、 前記制御部は、前記開閉部に対して閉動作を指示した後、当該開閉部が閉状態になるのと実質的に同時に前記加熱部による加熱が終了するように、所定の時間が経過するまで前記加熱部による加熱を継続させてから前記加熱部による加熱を停止させることを特徴とする温水器。 【請求項3】 吐水口から吐水されるべき水を加熱する加熱部と、 吐水の水路を開閉する開閉部と、 前記加熱部および前記開閉部を制御する制御部と、を備え、 前記加熱部は、吐水口から吐水されるべき水を、当該加熱部を流れる間に加熱し、 前記制御部は、前記開閉部に対して閉動作を指示した後、当該開閉部が閉状態になるのと実質的に同時に前記加熱部による加熱が終了するように、前記加熱部より加熱された水の温度が第1の温度以上になるまで前記加熱部による加熱を継続させてから前記加熱部による加熱を停止させることを特徴とする温水器。 【請求項4】 吐水口から吐水されるべき水を加熱する加熱部と、 吐水の水路を開閉する開閉部と、 前記加熱部および前記開閉部を制御する制御部と、を備え、 前記加熱部は、吐水口から吐水されるべき水を、当該加熱部を流れる間に加熱し、 前記制御部は、前記開閉部に対して閉動作を指示した後、当該開閉部が閉状態になるのと実質的に同時に前記加熱部による加熱が終了するように、水路を流れる水の流量が所定の流量以下になるまで前記加熱部による加熱を継続させてから前記加熱部による加熱を停止させることを特徴とする温水器。 【請求項5】 前記加熱部に供給される水の温度が第2の温度以上の場合、前記制御部は、前記加熱部による加熱を開始させないことを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の温水器。 【請求項6】(削除) |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2020-01-31 |
出願番号 | 特願2014-170919(P2014-170919) |
審決分類 |
P
1
651・
113-
YAA
(F24H)
P 1 651・ 537- YAA (F24H) P 1 651・ 121- YAA (F24H) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 青木 良憲 |
特許庁審判長 |
松下 聡 |
特許庁審判官 |
槙原 進 塚本 英隆 |
登録日 | 2018-06-15 |
登録番号 | 特許第6352110号(P6352110) |
権利者 | 株式会社LIXIL |
発明の名称 | 温水器 |
代理人 | 特許業務法人グランダム特許事務所 |
代理人 | 特許業務法人グランダム特許事務所 |
代理人 | 日向寺 雅彦 |