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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C02F
管理番号 1360508
異議申立番号 異議2019-701031  
総通号数 244 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-04-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-12-18 
確定日 2020-03-06 
異議申立件数
事件の表示 特許第6533359号発明「超純水製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6533359号の請求項1?5に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第6533359号(以下、「本件」という。)の請求項1?5に係る特許についての出願は、平成25年10月7日に出願され、令和1年5月31日に特許権の設定登録がされ、同年6月19日に特許掲載公報が発行され、その後、本件の請求項1?5に係る特許に対し、令和1年12月18日付けで特許異議申立人 井上幸三(以下「異議申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。


第2 本件特許発明
本件の請求項1?5に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」?「本件特許発明5」ということがあり、また、これらを、まとめて、「本件特許発明」ということがある。)は、その特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される以下のとおりのものであると認める。

「【請求項1】
尿素濃度10?100μg/Lの被処理水を2.0?4.0MPaに加圧する加圧工程と、
加圧された被処理水を逆浸透膜を有する逆浸透膜装置により、該逆浸透膜装置1段あたりの尿素の除去率を65%以上で処理する第1の逆浸透膜処理工程と
を備えることを特徴とする超純水製造方法。
【請求項2】
前記第1の逆浸透膜処理工程における水回収率が、60?90%であることを特徴とする請求項1記載の超純水製造方法。
【請求項3】
原水から前記被処理水を生成する第1の除去工程を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の超純水製造方法。
【請求項4】
前記第1の除去工程は、
原水を活性炭に接触させる活性炭処理工程と、
活性炭処理水を逆浸透膜により処理する第2の逆浸透膜処理工程と、
紫外線酸化処理及び混床式イオン交換処理の組合せにより第2の逆浸透膜処理工程で得られた透過水中の有機物を分解除去する第2の除去工程と
を備えることを特徴とする請求項3記載の超純水製造方法。
【請求項5】
前記第1の除去工程は、
原水を活性炭に接触させる活性炭処理工程と、
活性炭処理水を陽イオン交換処理、脱炭酸処理及び陰イオン交換処理の組合せで処理する、2床3塔式処理工程又は3床4塔式処理工程と、
紫外線酸化処理及び混床式イオン交換処理の組合せを用いて、前記2床3塔式処理工程又は3床4塔式処理工程で得られた透処理水中の有機物を分解除去する第2の除去工程と
を備えることを特徴とする請求項3記載の超純水製造方法。」


第3 申立理由の概要
異議申立人は、以下の甲第1号証?甲第9号証を提出して、本件特許発明1?5は、主引用例の甲第1号証に記載された発明と、副引用例である、甲第2号証または甲第3号証に記載された発明とに基づいて、あるいは、さらに周知技術を考慮することにより、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明1?5の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである旨主張している。

[異議申立人が提出した証拠方法]
甲第1号証:特開2011-183273号公報
甲第2号証:大矢晴彦ら著、「尿素水溶液の逆浸透分離」、膜、Vol.
10 、No.6(1985)、p.371?379
甲第3号証:特開2012-245439号公報
甲第4号証:特開2012-196588号公報
甲第5号証:特開平9-122690号公報
甲第6号証:特開平9-29233号公報
甲第7号証:栗原優、「合成複合逆浸透膜による水溶性有価物の濃縮回
収」、膜、Vol.8、No.2(1983)、p.97?
112
甲第8号証:中垣正幸監修、膜処理技術大系 下巻〔応用・資料編〕、初版
第1刷、1991年10月5日、株式会社フジ・テクノシステ
ム、p.219?223
甲第9号証:M.A.KRAUS et.al.,“UREA-REJECTING MEMBRANES AND THEIR
APPLICATION IN THE DEVELOPMENT OF A MINIATURE ARTIFICIAL
KIDNEY”,Journal of Membrane Science,Vol.1(1976)p.115-
127

なお、甲第1号証?甲第9号証を、以下では、それぞれ、「甲1」?「甲9」ということがある。


第4 甲各号証の記載事項(当審注:「…」は記載の省略を表す。以下、同じ。)、及び、甲1発明
1. 甲1の記載事項、及び、甲1発明
1ア. 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物を含有する原水を生物処理する水処理方法において、
この生物処理を酸化剤及び/又は殺菌剤の存在下で行うことを特徴とする水処理方法。

【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の水処理方法の処理水を1次純水装置及び2次純水装置で処理して超純水を製造することを特徴とする超純水製造方法。」

1イ. 「【技術分野】
【0001】
本発明は原水の水処理方法及び超純水製造方法に係り、特に、原水中の尿素を高度に除去することができる水処理方法と、この水処理方法を利用した超純水製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、市水、地下水、工水等の原水から超純水を製造する超純水製造装置は、基本的に、前処理装置、一次純水製造装置及び二次純水製造装置から構成される。このうち、前処理装置は、凝集、浮上、濾過装置で構成される。一次純水製造装置は、2基の逆浸透膜分離装置及び混床式イオン交換装置、或いは、イオン交換純水装置及び逆浸透膜分離装置で構成され、また、二次純水製造装置は、低圧紫外線酸化装置、混床式イオン交換装置及び限外濾過膜分離装置で構成される。」

1ウ. 「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、より高純度の超純水を製造することが求められており、そのためには、超純水中のTOCの低減を阻む原因となっている尿素をより高度に除去する必要がある。
【0007】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、原水中の尿素を高度に分解することができる水処理方法と、この水処理方法を利用した超純水製造方法を提供することを目的とする。」

1エ. 「【0032】
次に、この水処理方法を利用して超純水を製造する方法について第1図を参照して説明する。
【0033】
第1図に示す超純水製造方法では、原水を、前処理システム10、生物処理手段11、限外濾過膜分離(UF)装置12、一次純水処理システム20及びサブシステム30で処理する。
【0034】
前処理システム10は、凝集、加圧浮上(沈殿)、濾過(膜濾過)装置等よりなる。この前処理システム10において、原水中の懸濁物質やコロイド物質が除去される。…
【0035】
この前処理システム10からの流出水に酸化剤及び/又は殺菌剤を添加し、生物処理手段11に導入され、上述の処理が行われる。…この生物処理手段11の下流側に設置された限外濾過膜分離装置12では、生物処理手段11から流出する微生物や担体微粒子等を分離除去する。
【0036】
一次純水処理システム20は、第1逆浸透(RO)膜分離装置21と、第2逆浸透(RO)膜分離装置22と、混床式イオン交換装置23とをこの順に設置したものである。…
【0037】
サブシステム30は、サブタンク31と、熱交換器32と、低圧紫外線酸化装置33と、混床式イオン交換装置34と、UF膜分離装置35とをこの順に設置したものである。一次純水処理システム20の処理水は、サブシステム30にて、サブタンク31及び熱交換器32を経て低圧紫外線酸化装置33に導入され、含有されるTOCがイオン化ないし分解され、このうち、イオン化された有機物は、後段の混床式イオン交換装置34で除去される。この混床式イオン交換装置34の処理水は更にUF膜分離装置35で膜分離処理され、超純水が得られる。…」

1オ. 「【図1】



1カ. 「【0019】
本発明の水処理方法は、有機物を含有する原水を生物処理する水処理方法において、この生物処理を酸化剤及び/又は殺菌剤の存在下で行うことを特徴とするものである。

【0021】
原水(処理対象水)中の尿素濃度は5?200μg/L特に5?100μg/L程度が好適である。

【0024】
これらの酸化剤及び/又は殺菌剤の添加量としては、生物処理水中に残存する酸化剤及び/又は殺菌剤の濃度が所定範囲となるようにするのが好ましい。この所定範囲は酸化剤及び/又は殺菌剤の種類によって異なるが、塩素系薬剤の場合、生物処理水中の全残留塩素濃度がCl_(2)として0.02?0.1mg/L特に0.02?0.05mg/Lとなるようにするのが好ましい。…

【0031】
本発明の水処理方法によると、被処理水中に酸化剤及び/又は殺菌剤が存在した状態で生物処理するため、尿素分解効率が向上する。また、生物処理水中に残存する酸化剤及び/又は殺菌剤の濃度が所定範囲となるようにして処理を行うことにより、尿素分解効率がより向上する。」

1キ. 「【0040】
[実施例1?5]
本発明方法に従って、原水に酸化剤及び/又は殺菌剤を添加した後、生物処理を行った。原水としては野木町水(平均尿素濃度21μg/L、遊離残留塩素0.5mg/L、全残留塩素0.6mg/L)を用いた。
【0041】
この原水に対し、酸化剤及び/又は殺菌剤としてスライムコントロール剤(結合塩素系「クリバータIK110」、栗田工業株式会社製)を表1に示す添加量にて添加した後、生物処理手段に通水した。
【0042】
生物処理手段としては、生物担体としての粒状活性炭(「クリコール WG160、10/32メッシュ」、栗田工業株式会社製)を円筒容器に10L充填したものを用いた。通水速度SVは20とした
【0043】
一ヶ月間の馴養通水後、生物処理手段の出口における尿素濃度を分析し、結果を表1に示した。

【0045】
[比較例1]
スライムコントロール剤を添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして原水を処理した。生物処理手段の流出水中の尿素濃度の測定結果を表1に示す。
【0046】
[比較例2]
SVを5としたこと以外は比較例1と同様にして原水を処理した。生物処理手段の流出水中の尿素濃度の測定結果を表1に示す。
【0047】
[参考例1]
生物処理水に全残留塩素が検出されないようにスライムコントロール剤の添加量を0.1mg/LasCl_(2)としたこと以外は実施例1と同様にして原水を処理した。生物処理手段の流出水中の尿素濃度の測定結果を表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
上記の通り、本発明の原水の生物処理方法によれば、尿素を効率的に分解することが可能であることが確認された。これにより、生物処理手段Bを小型化しても尿素濃度を十分に低くすることが可能である。」

1ク. 上記1ア.によれば、甲1には、有機物を含有する原水を、酸化剤及び/又は殺菌剤の存在下で、生物処理した処理水を1次純水装置及び2次純水装置で処理して超純水を製造する超純水製造方法に係る発明が記載されていると認められる。

1ケ. 上記1イ.?1エ.によれば、上記1ク.に示した超純水製造方法は、上記1オ.の図1に示されるとおり、2基の逆浸透膜分離装置及び混床式イオン交換装置で構成される1次純水装置と、低圧紫外線酸化装置、イオン交換装置及び限外濾過膜分離装置で構成される2次純水装置で処理して超純水を製造するものであるとされている。

1コ. 上記1ク.?1ケ.の検討を踏まえ、上記1オ.の図1に示される超純水製造方法に注目すると、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「有機物を含有する原水を、酸化剤及び/又は殺菌剤の存在下で、生物処理した処理水を、2基の逆浸透膜分離装置及び混床式イオン交換装置で構成される1次純水装置と、低圧紫外線酸化装置、混床式イオン交換装置及び限外濾過膜分離装置で構成される2次純水装置とで処理して超純水を製造する超純水製造方法。」

2. 甲2の記載事項
2ア. 「 1 緒 言
現在検討されている宇宙ステーション,あるいは,遠い未来のスペースコロニ,月面基地等の地球外に,人間が長期滞在し,種々の活動を行うためには完全な人間の生命維持システム(Closed ecological life support system・CELSS)の完成が待たれる^(1)).水の再循環の問題は,このCELSSの重要な要素の1つである.膜分離法を用いることによって水の再循環システムを構成することができるならば,…種々の観点から好都合と考えられる^(2)).
宇宙ステーションの廃水は,シャワー水,洗浄水,凝縮水,尿などから成立しており,含まれる有機物,無機物を分離しなければならない.分離すべき有機物のうちで尿素は分子量が小さくかつ多量に存在(人間の尿中に9,300?23,300ppm)している.
逆浸透法による尿素分離の可能性の検討は,かなり以前よりなされている.酢酸セルロース膜^(3-5,12))…複合膜^(12))などの種々の膜についての報告がある.…
しかし,いずれの膜についても,尿素の分離率はそれ程良好ではなく,飲料水を回収するためには多段操作とならざるを得ない^(3)).
最近,新しい複合膜が利用できるようになったので,逆浸透法による尿素分離の可能性の再検討を行ってみた.」(p.371 左欄下から4行?p.372 左欄第18行)

2イ. 「 2. 実 験
2.1 膜
実験に供した膜は,複合膜として,PEC-1000(東レ(株)),FT-30BWおよびSW(米国Film Tech),NS-100(自家製)^(14))を使用し,その他に酢酸セルロース膜^(15))(熱処理温度90℃,87℃,85℃)を使用した.NS-100膜はCadotteらの手法^(14))により製膜した.支持膜はUCC社製のポリサルホンP1700およびP3500より製膜した.…

2.5 運転方法およびサンプリング
運転は,Table 1の順序で行った.尿素水溶液の実験前後に約3.5wt%の食塩水を用いて,塩分離率,および透過流束を求め,膜性能の変化を調べた. その結果をTable 2に示す.FT膜では,実験終了後の透過流束に約15%減少が観測された.他の膜では,膜性能に変化は生じていない.最後に,圧力5.52MPaで純水の透過流束を測定した.その結果を,Table 2に併せ示した.
サンプリングは,Table 1中の各ステップの最後に,約10mlの試料を採取した.」(p.372 左欄第19行?p.373 左欄第14行)

2ウ. 「

」(p.372 右欄中段)

2エ. 「

」(p.372 下段)

2オ. 「 3. 実験結果
3.1 PEC-1000膜
Fig.1にPEC膜による尿素水溶液の逆浸透濃縮実験の結果を示した.分離率はフィード液濃度1wt%で約90%であり,濃度が増加するほど悪化してゆき,さらに,濃度が増加するほど操作圧が低くなるにつれて大きく悪化してゆく.透過流束は,濃度の増加に伴って低下してゆき,操作圧依存性も大きくなってゆく.
3.2 FT-30膜
Fig.2(a)にFT-30(B.W)膜の,Fig.2(b)にFT-30(S.W)膜の実験結果を示した.分離率は50%前後と低く,B.W.のほうがS.W.よりわずかに低い.透過流束は大きくPEC膜の約5倍ほどであり,各濃度において操作圧の増加に伴ってゆるやかに増大してゆく.
3.3 NS-100膜
NS-100膜による実験結果をFig.3(a)から(d)に示した.分離率は操作圧が減少すると大きく低下する傾向にあり,例えば,P1700の10wt%で6.86MPaの操作圧のときの分離率が70%であったものが3.92MPaでは45%にまで低下してゆく.PVP入りの膜と入っていない膜の分離率の差が大きく,P1700ではPVP入りの方が10%ほど分離率が低く,P3500では30%ほどPVP入りの膜の分離率が低い.」(p.373 左欄第15行?p.375 左欄第16行)

2カ. 「

」(p.373 右欄上段)

2キ. 「

」(p.374 左欄)

2ク. 「 5. スペースステーションの水循環利用における試算
1999年頃打ち上げ予定の第3次スペースステーション内に,太陽光のみを唯一のエネルギー源とした完全循環系による乗組員1人の生命維持システム装置の計画が進行している.第一次ドラフト案^(2))によれば,水の循環系として,1日当り,尿1.8L,シャワー1.0L,呼気1.2L,その他排水1.0L,全計5L/日・人の処理を考えている.人間1名が1日当り排泄する尿の主要成分の量^(20))および,5Lで徐した濃度はTable 4に示すような値となる.
かりに,PEC-1000膜を用いて,50%回収を目指すとすると,それぞれの成分の平均濃度と分離率より算出された,透過液中の予測値はTable 4のようになる.…尿素の値は飲用可能値200ppmよりはるかに大きい.もう一段の逆浸透処理を行えば100ppmくらいとなろう.」(p.378 左欄第1行?右欄第11行)

2ケ. 「

」(p.378 下段)

3. 甲3の記載事項
3ア. 「【請求項1】
一次純水システムと、該一次純水システムの処理水を処理するサブシステムとを備え、少なくとも該一次純水システムに逆浸透膜分離装置が設けられている超純水製造装置において、該一次純水システムに設置された逆浸透膜分離装置が高圧型逆浸透膜分離装置であり、且つ単段にて設置されていることを特徴とする超純水製造装置。
【請求項2】
請求項1において、前記高圧型逆浸透膜分離装置は、標準運転圧力5.52MPa以上、標準運転圧力における純水フラックス0.5m^(3)/m^(2)・D以上、NaCl除去率99.5%(NaCl32000mg/L)以上の特性を有することを特徴とする超純水製造装置。

【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記高圧型逆浸透膜分離装置の膜面有効圧力が1.5?3MPaであることを特徴とする超純水製造装置。」

3イ. 「【技術分野】
【0001】
本発明は超純水製造装置に係り、特に逆浸透膜分離装置(RO装置)を有する一次純水システムを備えた超純水製造装置に関する。」

3ウ. 「【背景技術】
【0002】
従来、半導体洗浄用水として用いられている超純水は、図2に示すように前処理システム1、一次純水システム2、サブシステム(二次純水システム)3から構成される超純水製造装置で、原水(工業用水、市水、井水、半導体工場から排出される使用済み超純水(以下「回収水」と称す。)等)を処理することにより製造される。図2において各システムの役割は次の通りである。
【0003】
凝集、加圧浮上(沈殿)、濾過(膜濾過)装置などよりなる前処理システム1では、原水中の懸濁物質やコロイド物質の除去を行う。また、この過程では高分子系有機物、疎水性有機物などの除去も可能である。
【0004】
逆浸透膜分離(RO)装置、脱気装置及びイオン交換装置(混床式又は4床5塔式など)を備える一次純水システム2では、原水中のイオンや有機成分の除去を行う。なお、逆浸透膜分離装置では、塩類を除去すると共に、イオン性、コロイド性のTOCを除去する。イオン交換装置では、塩類を除去すると共にイオン交換樹脂によって吸着又はイオン交換されるTOC成分の除去を行う。脱気装置では無機系炭素(IC)、溶存酸素(DO)の除去を行う。
【0005】
低圧紫外線酸化装置、イオン交換純水装置及び限外濾過膜分離装置を備えるサブシステム3では、一次純水システム2で得られた純水の純度をより一層高めて超純水にする。なお、低圧紫外線酸化装置では、低圧紫外線ランプより出される波長185nmの紫外線によりTOCを有機酸、さらにはCO_(2)まで分解する。分解により生成した有機物及びCO_(2)は後段のイオン交換樹脂で除去される。限外濾過膜分離装置では、微粒子が除去され、イオン交換樹脂の流出粒子も除去される。
【0006】
なお、図2では、一次純水システムの逆浸透膜分離装置が前段側と最後段部とに配置されているが、直列に2段に設置することもある。…」

3エ. 「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来、超純水製造システムにおいては有機物濃度低減目的からRO分離装置を直列で2段通水する2段RO方式が一次純水あるいは排水回収システムにおいて主として採用されている。RO膜種としては処理対象となる原水が工業用水、水道水、井戸水あるいは塩類負荷の低い希薄系排水であることから、標準運転圧力0.75MPa、純水フラックス25m^(3)/m^(2)・D/本(8インチ)以上である超低圧RO膜、あるいは標準運転圧力1.47MPa、純水フラックス25m^(3)/m^(2)・D/本(8インチ)以上である低圧RO膜を用いるのが一般的であった。
【0009】
しかしながら、このように逆浸透膜分離装置を2段に設置すると、設置スペースが増大すると共に、装置運転管理が煩雑化する。即ち、半導体製造工場の超純水製造プラントでは、規模にもよるが、一次純水システムの第1段目の逆浸透膜分離装置として例えば4?40個を並列設置し、第2段目にこれと同程度の逆浸透膜分離装置を並列設置しており、逆浸透膜分離装置の設置数が極めて多いものとなっており、逆浸透膜分離装置の設備コスト及びランニングコストが嵩むと共に、設置面積も大きいものとなっている。
【0010】
本発明は、上記従来の問題点を解決し、逆浸透膜分離装置の設置数が少ない超純水製造装置を提供することを目的とする。」

3オ. 「【発明の効果】
【0015】
高圧型逆浸透膜分離装置は、従来、海水淡水化プラントに用いられているものであり、塩分濃度の高い海水を逆浸透膜処理するために膜面有効圧力(1次側圧力と2次側圧力との差)を5.52MPa程度の高圧として使用される。
【0016】
本発明では、この高圧型逆浸透膜分離装置を超純水製造装置の一次純水システムに単段(1段)に設置する。一般に、海水淡水化用逆浸透膜は、脱塩や有機物除去に寄与するスキン層の分子構造が緻密であるため、有機物除去率が高い。海水淡水化においては、原水の塩類濃度が高く、これに伴い浸透圧が高くなるため、透過水量を確保するには、膜面有効圧力が5.5MPa以上となる。一方、電子産業分野における一般的なRO膜に適用する原水の塩類濃度は低く、TDS(全溶解性物質)が1500mg/L以下である。このような原水においては、浸透圧が低く、膜面有効圧力わずか2?3MPa程度で十分な透過水量を得、かつ上述のごとく透過水の水質は、従来の逆浸透膜(超低圧RO膜、低圧RO膜)に比べ格段と向上する。
【0017】
このように一次純水システムに高圧型逆浸透膜分離装置を単段設置することにより、逆浸透膜分離装置の設置数が従来の2段設置の場合に比べて半分となり、逆浸透膜分離装置の設置スペースが半減すると共に、設備コスト、運転管理コストもほぼ半減する。」

3カ. 「【0020】
本発明においては、図1に示すように、原水を好ましくは前処理システム、一次純水システム及びサブシステムで順次処理して超純水を製造するに当たり、一次純水システムに逆浸透膜分離装置(RO装置)として高圧型逆浸透膜分離装置を単段にて設置する。
【0021】
高圧型逆浸透膜分離装置は、従来、海水淡水化に用いられている逆浸透膜分離装置であり、標準運転圧力5.52MPa以上であり、標準運転圧力において、純水フラックス0.5m^(3)/m^(2)・D以上、NaCl除去率99.5%(NaCl32000mg/L)以上の特性を有する。このNaCl除去率は、NaCl濃度32000mg/LのNaCl水溶液に対する25℃における除去率である。なお、逆浸透膜のカタログ(技術資料を含む)には、膜メーカーよりスペック表示がなされており、高圧型であるか低圧型又は超低圧型であるかはカタログ値として判別できる。
【0022】
この高圧型逆浸透膜は、従来の超純水製造装置の一次純水システムに用いられている低圧又は超低圧型逆浸透膜に比べて膜表面のスキン層が緻密となっている。そのため、高圧型逆浸透膜は低圧型又は超低圧型逆浸透膜に比べて単位操作圧力当りの膜透過水量は低いものの有機物除去率は極端に高い。TDS(全溶解性物質)1500mg/L以下の塩類濃度の給水を逆浸透膜処理する場合においては、回収率90%時の運転条件下で逆浸透膜にかかる浸透圧は最大1.0MPa程度である。従って、TDS1500mg/L以下の給水の処理に高圧型逆浸透膜分離装置を用いた場合、好ましくは15?3MPa、特に好ましくは2?3MPa程度の膜面有効圧力(1次側と2次側との圧力差)で、低圧型又は超低圧型逆浸透膜と同程度の水量を確保することが可能となる。その結果、1段RO膜処理のみで従来の2段ROと同等の処理水水質・処理水量を得ることが可能となり、それに伴い膜本数、ベッセル、配管が削減でき低コスト、省スペース化が可能となる。」

3キ. 「【0025】
<実験例1>
電子デバイス工場排水(電気伝導率100mS/m、TDS600mg/L、TOC10mg/L)を1段のみ設置された高圧型逆浸透膜分離装置(RO膜はSWC4+:日東電工製。運転圧力5.52MPaにおけるフラックス24.6m^(3)/m^(2)・D、NaCl除去率99.8%(NaCl32000mg/L))に回収率73%の条件で通水した。その結果、透過水のTOCは0.85mg/Lとなった。膜面有効圧力は2.0MPaであった。
【0026】
<実験例2>
実験例1と同じ電子デバイス工場排水を、超低圧RO膜(ES-20:日東電工製)を充填した2段RO装置に前段RO回収率75%、後段RO回収率90%、全体水回収率73%の条件(後段RO濃縮水は前段RO給水に合流)で通水した。その結果、第1段目RO透過水のTOC濃度は1.35mg/L、第2段目RO透過水のTOC濃度は0.9mg/Lとなった。膜面有効圧力は1段目0.5MPa、2段目0.75MPaであった。
【0027】
この実験例1,2より、高圧型逆浸透膜分離装置単段通水と超低圧型逆浸透膜分離装置の2段通水とで、同等の水質の透過水が得られることが認められた。また、実験例2において、第1段目RO透過水のTOC濃度は1.35mg/Lと高く、超低圧型逆浸透膜分離装置の単段設置ではTOC及びTDSの除去が高圧型逆浸透膜分離装置よりも低いことが認められた。
【0028】
そこで、上記高圧型逆浸透膜分離装置を用い、図2に示す既存のフローの超純水製造装置の一次純水システムを図1のように高圧型逆浸透膜分離装置単独設置とし、膜面有効圧力を2.0MPaとして運転したところ、従前(2段RO。1段目の膜面有効圧力0.5MPa、2段目の膜面有効圧力0.75MPa)と同様の水質の超純水がほぼ同生産水量にて製造されることが認められた。」

3ク. 「【図1】

【図2】



4. 甲4の記載事項
4ア. 「【発明が解決しようとする課題】

【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、原水中のTOC、特に尿素を高度に分解することができる水処理方法を提供することを目的とする。また、本発明は、この水処理方法を利用した超純水製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、第一に本発明は、有機物を含有する原水を生物処理する水処理方法において、前記生物処理が硝化菌を優占種化したものであることを特徴とする水処理方法を提供する(発明1)。
【0010】
上記発明(発明1)によれば、尿素の除去には硝化菌群が関与しており、原水にアンモニア性の窒素源を添加することにより、硝化菌群(アンモニア酸化菌)がアンモニア性の窒素源を酸化して亜硝酸イオン(NO^(2-))とすることで、硝化菌群の活性を維持し、尿素を分解除去することができる。…」

4イ. 「【0033】
…生物処理装置において、処理対象となる原水Wとしては、地下水、河川水、市水、その他の工業用水、半導体製造工程からの回収水等を用いることができる。原水(処理対象水)W中の尿素濃度は、5?200μg/L、特に5?100μg/L程度が好適である。
【0034】
…尿素はイオン性を持たないことから、逆浸透膜処理やイオン交換処理での除去率も低い一方、尿素以外の有機物(TOC成分)は逆浸透膜処理やイオン交換処理によりある程度除去可能であるので、逆浸透膜処理装置やイオン交換処理装置を前処理システム1に採用することにより、生物処理手段3において、除去対象成分を尿素に絞り込んだ処理が可能となり好ましい。」

4ウ. 「【0113】
〔実施例5〕
市水に試薬尿素及び酢酸ナトリウムを添加して、尿素濃度約50μg/L、TOC濃度約20mg/L(asC)に調整して原水Wとした。
【0114】
試験期間中市水の水温は20℃以下であつたため、熱交換器2により水温約20℃に調整を実施した。また、市水のpHは6.8?7.3であったが、pH調整剤としての硫酸の添加は実施しなかった。
【0115】
この原水Wをカーボナー(「CF25」、栗田工業社製)に通水し、残留塩素を除去し、さらに逆浸透膜(「ES20-D4」(日東電工社製)で処理して、尿素濃度41μg/L、TOC濃度90μg/L(asC),及び有機態窒素濃度40μg/L(asN)の給水を得た。この給水を実施例1と同じ生物処理手段3に下向流にて通水した。…」


第5 当審の判断
上記第3に示した、本件特許発明1?5は、主引用例の甲第1号証に記載された発明と、副引用例である、甲第2号証または甲第3号証に記載された発明とに基づいて、あるいは、さらに周知技術を考慮することにより、当業者が容易に発明をすることができたものである旨の申立理由につき、以下に検討する。
(1) 本件特許発明1と甲1発明との対比・検討
ア. 本件特許発明1と上記第4の1コ.に示した甲1発明を対比すると、甲1発明における「有機物を含有する原水を、酸化剤及び/又は殺菌剤の存在下で、生物処理した処理水」は、本件特許発明1における「被処理水」に相当し、また、甲1発明における「2基の逆浸透膜分離装置」は、本件特許発明1における「逆浸透膜を有する逆浸透膜装置」に相当する。そして、甲1発明において、「有機物を含有する原水を、酸化剤及び/又は殺菌剤の存在下で、生物処理した処理水を、2基の逆浸透膜分離装置」「で処理して超純水を製造する」にあたって、本件特許発明1における「処理水を加圧する加圧工程」、「加圧された被処理水を逆浸透膜分離装置により、処理する第1の逆浸透膜処理工程」を備えることは自明の事項であると認める。
してみると、両者は、以下の点で一致し、以下の点で相違していると認められる。
<一致点>
「被処理水を加圧する加圧工程と、加圧された被処理水を逆浸透膜を有する逆浸透膜装置により、処理する第1の逆浸透膜処理工程とを備える超純水製造方法」の点。

<相違点>
相違点1: 超純水製造方法が、本件特許発明1では「尿素濃度10?100μg/Lの被処理水であって、2.0?4.0MPaに加圧された被処理水を逆浸透膜装置1段あたりの尿素の除去率を65%以上で処理する」という発明特定事項を備えているのに対し、甲1発明では、前記の発明特定事項を備えているのか明らかではない点。

イ. そこで、上記相違点1について検討するに、甲1発明は、原水中の尿素を高度に分解することができる水処理方法を利用した超純水製造方法を提供することを目的とするものであり(上記第4の1ウ.)、尿素濃度が5?200μg/Lである原水を生物処理する水処理方法において、この生物処理水中に残存する酸化剤及び/又は殺菌剤の濃度が所定範囲(例えば塩素系薬剤の場合、この生物処理水中の全残留塩素濃度がCl_(2)として0.02?0.1mg/L)となるように添加して生物処理を行うことを特徴とするものである(上記第4の1カ.)。具体的には、甲1発明において、平均尿素濃度21μg/Lである原水に対して、残留塩素濃度が0.04?0.1mg/Lとなるように塩素系薬剤を添加して生物処理を行った、実施例1?2の場合には、尿素濃度は4μg/L以下であり、尿素濃度を十分に低減できたのに対し、平均尿素濃度21μg/Lである原水を、残留塩素濃度が0.15?0.3mg/Lと過剰となるように添加して生物処理を行った、実施例3?5の場合には、尿素濃度は17?22μg/Lであり、尿素濃度の十分な低減ができなったことが記載されている(上記第4の1キ.)ものの、それらの生物処理の後に行われる逆浸透膜処理工程に関しては、甲1には、具体的な記載は見当たらない。

ウ. ここで、出願日が甲1(平成22年3月5日)よりも後である、甲4には、原水中の尿素を高度に分解することができる水処理方法を利用した超純水製造方法を提供することを目的とするものが記載されている(上記第4の4ア.)ことから、甲1発明と発明の目的を同じくするものが記載されているところ、尿素濃度が5?200μg/Lの原水に対する、逆浸透膜処理工程に関しては、尿素はイオン性を持たないことから、逆浸透膜処理やイオン交換処理での除去率が低く(上記第4の4イ.)、具体的には、尿素濃度約50μg/Lの原水を逆浸透膜で処理して、尿素濃度41μg/Lの処理水を得た後に、すなわち18%の尿素を除去した後に、甲4発明の特定の生物処理を行っていることが理解できる(上記第4の4ウ.)。
してみると、甲4の出願当時(平成23年3月18日)には、5?200μg/L程度、すなわち5?200ppb程度の低濃度の尿素を含む被処理水に対する逆浸透膜処理による尿素除去率は18%程度と低いとの技術常識(以下、「本件技術常識」という。)があったことが認められる。

エ. そして、被処理水に対する逆浸透膜処理に関し、甲2の記載事項を参照してみても、尿素濃度が1?10wt%の被処理水を逆浸透膜装置で処理して、飲用可能な200ppmくらいの透過液を得ることを目標としていることが把握できるだけであって、その透過液よりも尿素濃度が格段に低い被処理水を逆浸透膜装置で処理することは把握できないし、甲3の記載事項を参照してみても、塩類の除去とともにイオン性、コロイド性のTOCの除去を逆浸透膜装置で行うことが把握できるだけであって、イオン性を持たない尿素の処理について、その濃度が格段に低い被処理水を逆浸透膜装置で処理することは把握できない。さらに、被処理水に対する逆浸透膜処理に関し、甲4?甲9を参照してみても、尿素濃度が格段に低い被処理水に対して、逆浸透膜装置1段あたり、例えば65%以上等の高い除去率で尿素除去処理を行うとの技術事項は見当たらない。
すなわち、甲2?甲9を参照してみても、本件技術常識を覆し得る逆浸透膜処理工程についての知見は見当たらないことから、本件特許の出願時(平成25年10月7日)においても、尿素濃度が格段に低い被処理水に対して逆浸透膜処理による尿素除去率は低いとの本件技術常識があったと認められる。

オ. そして、本件の明細書(【0002】?【0008】、【0018】?【0020】、【0025】、【0050】?【0060】)及び図面(【図5】?【図6】)によれば、本件特許発明は、甲4等を従来技術とするもので、本件技術常識を踏まえつつ、尿素濃度が格段に低い被処理水を逆浸透膜処理するに際し、所定の供給圧以上とすることで、尿素の除去率を飛躍的に向上させることを可能としたものであり、具体的には、尿素濃度が10?100μg/Lの被処理水に対して、1.5Mpaまでに加圧された前記被処理水を逆浸透膜装置で処理する、従来の超純水製造システムにおける逆浸透膜処理である、比較例1の方法では、その逆浸透膜装置1段当たりの尿素除去率は30%以下と低い除去率を示していたが、2.0?4.0MPaに加圧された前記被処理水を逆浸透膜装置で処理することによって、その逆浸透膜装置1段当たりの尿素除去率が飛躍的に向上することとなり、上記相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項を備えることとなったものである。

カ. 上記イ.?オ.の検討によれば、甲2?甲3の記載事項、さらに、甲4?甲9に記載の周知技術に接したとしても、これらの文献には、尿素濃度が10?100μg/Lの被処理水に対して、逆浸透膜装置1段あたり、例えば65%以上等の高い除去率で尿素除去処理を行うとの技術事項が記載も示唆もされているとはいえず、本件技術常識を考慮すると、甲1発明において、上記相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項を備えるようにすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。


キ. 補足
(ア) 異議申立人の主張
異議申立人は、特許異議申立書において、本件特許発明1は、主引用例の甲第1号証に記載された発明と、副引用例である、甲第2号証または甲第3号証に記載された発明とに基づいて、あるいは、さらに周知技術を考慮することにより、当業者が容易に発明をすることができたものであることに関し、以下の1a.?1d.の主張をしている。

1a. 甲2の図1、図3(a)、図3(c)のプロットのうち左端のものは、尿素濃度1?10重量%で有効圧力3.92MPaにおける尿素除去率を示しており、これらの値を尿素濃度と除去率の関係を示すグラフを表した参考資料1からすると、尿素濃度1?10重量%では、尿素濃度が低くなる程、尿素除去率が高くなる傾向にあり、このような傾向の延長上の尿素濃度10?100μm/Lでの尿素除去率は、65%以上となることは明らかであるため、本件特許発明1は、甲1発明の尿素濃度10?100μm/Lの生物処理水を処理するための逆浸透膜分離装置として、甲1で採用されている逆浸透膜装置に代えて、甲2開示の逆浸透膜装置を採用することで、当業者が容易になし得たものである。
仮に甲1発明への甲2開示の逆浸透膜装置の適用が容易でないとしても、甲9には尿素除去率65%以上の逆浸透膜が多数紹介され、高尿素除去率の逆浸透膜の採用が周知であることが甲2、甲7?甲9に示されているから、本件特許発明1は、甲1および甲2と周知技術を考慮することにより、当業者が容易に発明できたものである。(特許異議申立書第24頁第22行?第26頁第16行)


1b. 甲1の超純水製造方法は逆浸透膜分離装置を2段に設置することから、甲3の図2に示される従来法に属するものであり、甲3で指摘される問題点を解決するために、甲1の超純水製造方法で採用されている逆浸透膜分離装置に代えて、甲3開示の高圧型逆浸透膜分離装置を単段に設置する構成を採用することは、当業者が容易になし得ることであり、この際に、甲1発明の尿素濃度10?100μm/Lの生物処理水を処理するための逆浸透膜分離を、甲3に開示されている、「SWC4+」を逆浸透膜として使用して膜面有効圧力1.5?3MPaで処理を行えば、本件特許発明1の処理が行われることになる。
ここで、この「SWC4+」は、本件の明細書の【0028】の「NTR-SWC(日東電工株式会社製)」に含まれるものである。
仮に、甲3開示の逆浸透膜の尿素除去率が不明であるとしても、甲2、甲7?甲9に示された周知の逆浸透膜を採用することは、当業者が容易になし得ることであり、本件特許発明1は甲1および甲3と周知技術を考慮することにより、当業者が容易に発明できたものである。(特許異議申立書第26頁第17行?第27頁第19行)

1c. 甲1の逆浸透膜分離装置に甲2開示の逆浸透膜分離装置を採用することにより、また、甲1の2段の逆浸透膜分離装置に代えて、甲3開示の単段高圧逆浸透膜分離装置を採用することにより、本件特許発明1の効果と同等以上の効果が得られることは明らかである。
仮に、同等以上の効果が得ら得ることは明らかでないとしても、甲2、甲7?甲9に示されている周知の高尿素除去率逆浸透膜を採用することにより、本件特許発明1の効果と同等以上の効果が得られることは明らかである。
また、参考資料1によれば、逆浸透膜による尿素除去率は尿素濃度が低いほど高くなるから、本件特許発明の図5、図6に示される、尿素除去率は尿素濃度が低いほど高くなる結果は予測可能な効果にすぎない。(特許異議申立書第27頁第21行?第29頁第5行)

1d. 仮に、低濃度になるにしたがって予想外の効果が得られる場合があるとしても、本件特許発明の図5、図6には、尿素濃度が低いほど尿素除去率が低くなるものや尿素除去率が65%未満のものも含まれているが、本件特許発明1は効果が顕著な範囲を特定したものではないから、本件特許発明の図5、図6の結果は本件特許発明1全体の効果を示したものと認めることはできない。(特許異議申立書第29頁第6?11行)

(イ) 当審の判断
上記ウ.?エ.で検討した本件技術常識を考慮すると、以下の2a.?2d.の検討のとおり、上記1a.?1d.の主張は、いずれも採用できない。

2a. 上記1a.の主張について、異議申立人は、甲2の図1、図3(a)、図3(c)の左端のプロットから、有効圧力3.92MPaにおける尿素濃度1?10重量%と尿素除去率との関係を示すグラフを表した参考資料1を用いて、本件特許発明1の尿素濃度10?100μm/Lでの尿素除去率は65%以上となることは明らかである旨を主張しているが、このような主張は、本件技術常識に反するものであり、また、甲2の記載事項を参照してみても、尿素濃度が1?10wt%の被処理水を逆浸透膜装置で処理して、飲用可能な200ppmくらいの透過液を得ることを目標としていることが把握できるだけであって、その透過液よりも尿素濃度が格段に低い被処理水を逆浸透膜装置で処理することは把握できないことからして、参考資料1を用いた前記の主張は、甲2の記載事項に基づいた合理的な主張とはいえず、採用できない。
また、甲1には、尿素濃度が5?200μg/Lの被処理水を処理して超純水を製造する方法が記載されているのに対し、甲2の記載事項を参照してみても、尿素濃度が1?10wt%の被処理水を逆浸透膜装置で処理して、飲用可能な200ppmくらいの透過液を得ることを目標としていることが把握できるだけであって、その透過液の尿素濃度よりも格段に低い濃度の被処理水を逆浸透膜装置で処理することは把握できないことからして、甲1に記載される、尿素濃度が5?200μg/Lと格段に低い被処理水を処理して超純水を製造する方法に、甲2開示の逆浸透膜装置による処理を適用することに合理性はないことからしても、前記の主張は採用できない。

2b. 甲1には、尿素濃度が5?200μg/Lの被処理水を処理して超純水を製造する方法が記載されている。これに対して、甲3の記載事項を参照してみても、半導体製造工場の超純水製造プラントにおいて、逆浸透膜分離装置が第1段目に4?40個並列設置され、第2段目にも同程度の逆浸透膜分離装置が並列設置されるため、逆浸透膜分離装置の設置数が極めて多いとの従来技術の問題点を解決し、そして、塩類の除去とともにイオン性、コロイド性のTOCの除去を逆浸透膜装置で行うことが把握できるだけであって、イオン性を持たない尿素について、その濃度が5?200μg/Lの被処理水を1段のみ設置された高圧型逆浸透膜装置で処理することは把握できない。
さらに、甲3において、1段のみで設置された高圧型逆浸透膜分離装置で用いられている、RO膜(SWA+:日東電工製。)が、本件明細書【0028】の「NTR-SWC(日東電工株式会社製)」に含まれるということも、本件明細書に接しなければ把握し得ない技術事項である。
また、甲1の記載からは、逆浸透膜分離装置の設置数が極めて多いとの技術事項を把握することができないことから、甲1の超純水製造方法が、逆浸透膜分離装置を2段に設置するものとしても、甲3の図2に示される従来法に属するものとはいえない。
それらのため、甲1に記載される、尿素濃度が5?200μg/Lの被処理水を処理して超純水を製造する方法に、甲3の図2に示される従来法の問題点を解決するための、甲3開示の1段のみ設置された高圧型逆浸透膜分離装置による処理を、本件特許の出願前に適用することに合理性はなく、上記1b.の主張は採用できない。

2c. 上記2a.?2b.の検討を踏まえ、また、本件技術常識を考慮すると、異議申立人の上記1c.の主張も、本件明細書に接しなければ生じ得ない主張であって、合理性はなく、採用できない。

2d. 本件特許発明1は、上記相違点1に係る発明特定事項を備えたもの、すなわち、「被処理水を逆浸透膜装置1段あたりの尿素の除去率を65%以上で処理する」との発明特定事項を備えたものであり、発明の効果が顕著な範囲に特定したものであるから、異議申立人の上記1d.の主張は、本件特許発明1を正解しないことに基づくものであって、採用できない。


(2) 本件特許発明2?5と甲1発明との対比・検討
本件特許発明2?5は、請求項1を引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て備えたものであるから、上記(1)での検討と同様にして、甲1発明に甲2?甲3の記載事項を組み合わせたとしても、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないし、さらに、甲4?甲9に記載の周知技術を組み合わせたとしても、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。


第6 むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?5に係る特許を取り消すことはできない。

また、他に請求項1?5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2020-02-27 
出願番号 特願2013-210551(P2013-210551)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (C02F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 河野 隆一朗  
特許庁審判長 服部 智
特許庁審判官 宮澤 尚之
小川 進
登録日 2019-05-31 
登録番号 特許第6533359号(P6533359)
権利者 野村マイクロ・サイエンス株式会社
発明の名称 超純水製造方法  
代理人 特許業務法人サクラ国際特許事務所  

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