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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B60K
管理番号 1360515
異議申立番号 異議2018-700959  
総通号数 244 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-04-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-11-28 
確定日 2020-02-25 
異議申立件数
事件の表示 特許第6334590号発明「インホイールモータ駆動装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6334590号の請求項1?5に係る特許を取り消す。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6334590号の請求項1?5に係る特許についての出願は、平成28年4月6日に出願され、平成30年5月11日にその特許権の設定登録がされ、同年5月30日に特許掲載公報が発行された。
その後、その特許について、平成30年11月28日に特許異議申立人トヨタ自動車株式会社により特許異議の申立てがされ、平成31年2月7日付けで取消理由が通知され、同年4月16日に特許権者より意見書が提出され、その意見書などについて、特許異議申立人に対して令和1年5月17日付けで審尋が通知され、同年7月19日に特許異議申立人より回答書が提出され、同年9月3日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、同年11月8日に特許権者より意見書が提出されたものである。

第2 本件発明
特許第6334590号の請求項1?5に係る発明(以下それぞれ「本件発明1」?「本件発明5」という。)は、特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
車輪と結合する車輪ハブと、
前記車輪ハブを駆動するモータ回転軸、外郭をなすケーシング、および前記ケーシングに設けられる複数の動力線接続部を有するモータ部と、
一端が前記動力線接続部と接続し、他端がケーシング外部の車体まで延び、前記車体から前記モータ部へ電力を供給する屈曲可能な複数の動力線とを備え、
上下方向に延びるストラットの下端部に連結され、
前記ストラットに沿って延びる転舵軸線を中心として転舵可能とされ、
転舵軸線方向にみて、前記複数の動力線接続部は、前記ストラットに設けられるショックアブソーバのスプリングシートと重なるよう配置される、インホイールモータ駆動装置。
【請求項2】
転舵軸線方向にみて、少なくとも2個の動力線接続部は互いに重なるよう配置される、請求項1に記載のインホイールモータ駆動装置。
【請求項3】
前記スプリングシートは、上下に間隔を空けて配置されるアッパスプリングシートおよびロアスプリングシートを含み、
転舵軸線方向にみて、前記複数の動力線接続部は、前記ロアスプリングシートと重なるよう配置される、請求項1または2に記載のインホイールモータ駆動装置。
【請求項4】
前記複数の動力線接続部は、前記転舵軸線よりも車両前後方向にずらして配置され、
前記動力線接続部から延びる前記動力線の一端部は、前記転舵軸線へ近づく方向に延出する、請求項1または2に記載のインホイールモータ駆動装置。
【請求項5】
前記動力線接続部は、前記ケーシングに形成される貫通孔と、前記動力線の端部外周を包囲して前記貫通孔に差し込み固定されるスリーブとで構成される、請求項1?3のいずれかに記載のインホイールモータ駆動装置。」

第3 取消理由の概要
請求項1?5に係る特許に対して、当審が令和1年9月3日付けの取消理由通知(決定の予告)で特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
[取消理由]
本件特許の請求項1?5に係る発明は、その特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は、同法第113条第2号の規定により、取り消されるべきものである。

[刊行物等一覧]
1:米国特許第5087229号明細書
2:特開2005-271909号公報
3:特開2006-264474号公報
4:特開2015-131629号公報
5:特開2008-1241号公報
6:特開2013-159188号公報

上記1?6の刊行物等(以下それぞれ「引用文献1?6」という。)は、特許異議申立人トヨタ自動車株式会社(以下「特許異議申立人」という。)が提出した甲第1?6号証である。

第4 当審の判断
1 引用文献に記載された事項及び発明
(1)引用文献1について
ア 引用文献1に記載された事項
引用文献1には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審が付した。和訳は当審が作成した。以下同様である。)。
(1a)
「FIG. 1 is a partially sectioned view ofthe motor wheel of this invention installed in a vehicle.
FIG. 2 is an elevational end view of themotor wheel of FIG. 1.
FIG. 3 is an enlarged partial sectionalview of the motor and gearset of the assembly depicted in FIG. 1.
・・・
Referring particularly to FIG. 1, thereference numeral 10 generally designates the motor wheel of this invention asinstalled in a motor vehicle. A steering knuckle 12 and ball joint 14 form theupper and lower ends of the motor wheel support element 16 and attach the motorwheel 10 to the vehicle shock tower 18 and frame member 20, respectively. Thesteering knuckle 12 is attached via bolts 22 to a mounting clamp 24 secured toa lower end of a conventional McPherson strut assembly 26. The upper end of thestrut assembly 26 is secured within the vehicle shock tower 18 in aconventional manner by the end plate 28 and nut 30. The end plate 28 rides on aball bearing (not shown) which permits rotation of the strut assembly about itslongitudinal (vertical) axis 26 when the motor wheel 10 is steered. 」(1欄44?67行)
[和訳]
「図1は、車両に搭載された本発明のモータホイールの部分断面図である。
図2は、図1のモータホイールの正面図である。
図3は、モータの部分拡大断面図であり、図1に示したアセンブリの歯車セットである。
・・・
特に、図1を参照すると、参照番号10は、モータービークルに設置される本発明のモータホイールを一般的に示す。ステアリングナックル12とボールジョイント14は、モータホイール支持要素16の上下端を形成し、それぞれ、モータホイール10を車両ショックタワー18及びフレーム部材20に取り付ける。ステアリングナックル12は、従来のマクファーソンストラットアセンブリ26の下端に固定されたマウンティングクランプ24に、ボルト22を介して取り付けられる。ストラットアセンブリ26の上端は、エンドプレート28とナット30により、従来の方法で車両ショックタワー18内に固定される。エンドプレート28は、モータホイール10が操舵されるとき、その縦方向の(垂直な)軸26においてストラットアセンブリの回転を許容するボールベアリング(図示せず)上に載っている。」
(1b)
「The various elements of motor wheel 10are all connected, directly or indirectly, to the support element 16.」(2欄6?7行)
[和訳]
「モータホイール10の種々の要素は、全て、直接または間接的に、支持要素16に接続されている。」
(1c)
「a motor housing 44 is attached to thesupport element 16 via bolts 46; and the housing 48 of a planetary reductiongearset assembly (generally designated by the reference numeral 49) is attachedto the support element 16 via bolts 50.」(2欄9?13行)
[和訳]
「モータハウジング44は、ボルト46を介して支持要素16に取り付けられ、遊星減速歯車セット組立体(一般に参照番号49によって示される)の筐体48はボルト50を介して支持要素16に取り付けられている。」
(1d)
「Referring particularly to FIG. 3, aninner wheel bearing element 52 is rotatably supported within the outer wheelbearing element 40 on a pair of ball bearings 53 and 54. A disk brake rotor 58and wheel rim 60 are secured to the inner wheel bearing 52 via lug nuts 62, thewheel rim 60 supporting a conventional tubeless tire 64 and fill valve 66. Abrake caliper 68 (best seen in FIG. 2) is secured to the housing element 16 viabolts 70, and houses a pair of brake pads 72 which form a friction brake withthe rotor 58.」(2欄18?27行)
[和訳]
「特に、図3を参照すると、インナーホイールベアリング要素52は、一対のボールベアリング53及び54上で、アウターホイールベアリング要素40の範囲内に回転可能に支持されている。ディスクブレーキロータ58及びホイールリム60は、ラグナット62を介してインナーホイールベアリング要素52に固定され、ホイールリム60は、従来のチューブレスタイヤ64及び充填バルブを支持している。ブレーキキャリパ68(図2に最もよく示されている)は、ボルト70を介してハウジング要素16に固定されており、ロータ58と共に摩擦ブレーキを形成する一対のブレーキパッド72を収容している。」
(1e)
「The motor housing 44 comprises a finnedcylindrical section 76 and a finned end cover 78. The section 76 internallysupports a twelve-pole laminated stator core 80 and three-phase stator winding82. The winding lead-in conductors 84 pass through a connector 86 captured inthe end cover 78, and are routed to a central control unit (not shown) viacable 88.」(2欄28?34行)
[和訳]
「モータハウジング44は、フィンのある円筒部76とフィンのあるエンドカバー78とから成る。セクション76は、12のポール積層ステータコア80と三相ステータ巻線82を内部に支持している。屈曲導線84は、エンドカバー78内に捕捉されたコネクタ86を通過して、ケーブル88を介して中央コントロールユニット(図示せず)に送られる。」
(1f)
「The mounting hub, in turn, is securedwithin a recess 162 of end cover 78 via bolts 164.」(3欄11?13行)
[和訳]
「取り付けハブは、エンドカバー78のボルト164を介して凹部162内に固定される。」
(1g)
「In operation, an inverter in the centralcontrol unit (not shown) energizes the stator windings 82 with current from agenerator or battery pack to produce a rotating magnetic field in the air gapbetween permanent magnets 132 and the poles of the stator core 80.」(3欄19?23行)
[和訳]
「動作において、中央コントロールユニット(図示せず)内のインバータは、発電機またはバッテリパックからの電流でステータ巻線82にエネルギーを与えて、永久磁石132とテータコア80のポールの間のエアギャップに回転磁界を発生させる。」
(1h)
「The electromagnetic field interacts withthe magnetic field created by the permanent magnets 132, developing torque forrotating the rotor cup 116. The hub 114 of rotor cup 116, being splined to theshaft 108, rotates the sun gear teeth 106. This rotates the planet gears 92,which react against the stationary ring gear teeth 90, thereby driving thepinion carrier 94 at a reduced speed. In the illustrated embodiment, areduction ratio of approximately 5:1 is employed. The carrier 94, being splinedto the wheel hub 100, which in turn is splined to the inner wheel bearing 52,thereby drives the wheel 60. 」(3欄24?34行)
[和訳]
「電磁界は、永久磁石132によって生成された磁界と相互作用し、ロータカップ116を回転させるためのトルクを発生する。ロータカップ116のハブ114は、軸108にスプライン結合され、太陽ギア106を回転させる。遊星ギア92を、固定リングギア歯90に対して反応して回転させ、それによってピニオンキャリア94を減速駆動させる。図示の実施形態では、約5:1の減速比が使用される。キャリア94は、ホイールハブ100にスプライン結合され、これはインナーホイールベアリング52にスプライン結合し、それにより、ホイール60を駆動する。」
(1i)
Fig.1?3は、以下のとおりである。

(1j)
Fig.1に当審が補助線を付した図を、参考として以下に示す。

イ 引用文献1に記載された発明
イー1
Fig.1(摘記(1i)参照)は、車両に搭載された本発明のモータホイールの部分断面図であるが(摘記(1a)参照)、モータホイール部分の部分断面だけでなく、ストラットアセンブリ26部分なども含め、車輪の周辺部品の全体に符号の記載があることから、部分断面図以外の部分を、大幅に簡略化しているとはいえず、実車の車輪の周辺部品のカタログ等と比較しても、特に意図的又は恣意的に変更された図面であると理解すべきではなく(必要があれば、令和1年7月19日付けの回答書(以下「回答書」ともいう。)の6ページも参照。)、設計図のように緻密な図面とまではいえないとしても、寸法の大小関係や部品の位置関係を特定できる程度には、充分な図面である。
イー2
特に、各図面において、細部の部品(例えば、ナット30、ボルト22、一対の玉軸受53,54、ブレーキパッド72、フィン部76)も、その部品であることが充分に認識できる程度に明確に図示されており、符号は、装置(例えば、モータホイール10、ストラットアセンブリ26)だけでなく、細部の部品(例えば、上記の細部の部品、端部プレート28、ワッシャ102、ナット104)においても、多数付されていることからして、各図面が、大幅に簡略化した図面ではないことは、明らかであるし、Fig.1と実車の車輪(インホイールモータを組み込む部分に対応)の周辺部品のカタログを比較すると、全体的にみて、各装置ないし各部品寸法やそれらの位置関係が類似していることから、Fig.1は、不正確な図面ではなく、部品の配置関係を特定する程度には、充分な図面であると認められる。
イー3
そして、Fig.2及びFig.3も、同様に寸法の大小関係や部品の位置関係を特定できる程度には、充分な図面であり、全体の符号や部品の位置関係を総合すれば、これらFig.1?3は、整合も取れている図面であるといえる(必要があれば回答書の3ページも参照。)。

イー4
したがって、以下のことがいえる。
(ア)
摘記(1d)の「ホイールリム60は、従来のチューブレスタイヤ64及び充填バルブを支持している」という記載を踏まえると、Fig.1から、チューブレスタイヤ64とホイールリム60とを有する車輪が看取できる。
(イ)
上記(ア)を踏まえると、摘記(1d)の「ホイールリム60は、ラグナット62を介してインナーホイールベアリング要素52に固定され」るという記載の「インナーホイールベアリング要素52」は、ホイールリム60に固定されることで、チューブレスタイヤ64とホイールリム60とを有する車輪と結合する、インナーホイールベアリング要素52であると認められる。
(ウ)
遊星減速歯車セットが、太陽ギア、遊星ギア、リングギア及びキャリアを有して構成されることは技術常識であること、摘記(1c)、(1g)、(1h)及びFig.1,3を踏まえると、軸108は、ステータコア80に対向する永久磁石132が設けられたロータカップ116のハブ114とスプライン結合された軸108であり、遊星減速歯車セット組立体49とホイールハブ100とを介して、インナーホイールベアリング要素52を駆動する軸108であることが明らかである。
(エ)
摘記(1e)、(1)、Fig.2及びFig.3(特に、凹部162の構成やエンドカバー78の下部の構成)を参照し、コネクタの一般的な接続機能に鑑みると、摘記(1e)の「エンドカバー78内に捕捉されたコネクタ86」は、モータハウジング44のフィンのあるエンドカバー78の凸部の貫通孔に嵌めこまれケーブル88が接続されるコネクタ86であることが明らかである。
(オ)
引用文献1の「ステータコア80」、「永久磁石132」、「ロータカップ116」、「軸108」、「モータハウジング44」及び「コネクタ86」は、いずれもモータを構成する部品であることが明らかであること、上記(ウ)、(エ)及び摘記(1e)の「モータハウジング44は、フィンのある円筒部76とフィンのあるエンドカバー78とから成る」という記載を踏まえると、Fig.1,3から、遊星減速歯車セット組立体49とホイールハブ100とを介して、インナーホイールベアリング要素52を駆動する、ステータコア80に対向する永久磁石132が設けられたロータカップ116のハブ114とスプライン結合された軸108(上記(ウ))と、ステータコア80、永久磁石132、ロータカップ116と、フィンのある円筒部76とフィンのあるエンドカバー78とから成るモータハウジング44と、モータハウジング44のフィンのあるエンドカバー78の凸部の貫通孔に嵌めこまれケーブル88が接続されるコネクタ86(上記(エ))とを有する、モータ部が看取できる。
(カ)
上記エ?オ、摘記(1e)の「屈曲導線84は、エンドカバー78内に捕捉されたコネクタ86を通過して、ケーブル88を介して中央コントロールユニット(図示せず)に送られる」という記載、中央コントロールユニットが車体に設けられていることが技術常識であること、摘記(1g)、及び、Fig.1を参照すると、ケーブル88は、一端がコネクタ86と接続し、他端がモータハウジング44外部の車体まで延び、前記車体から前記モータ部へ電力を供給するケーブル88であることが明らかである
(キ)
Fig.1から、上下方向に延びるストラットアセンブリ26が看取できる。
(ク)
インナーホイールベアリング要素52と、ホイールハブ100と、遊星減速歯車セット組立体49と、モータ部(上記オ)と、ケーブル88と、モータホイール支持要素16とから構成される装置は、チューブレスタイヤ64とホイールリム60とを有する車輪を駆動するための機構を、ホイールリム60内に、モータホイール支持要素16等で支持することで、ホイールリム60内に組み込んだ装置であることから(摘記(1c)及びFig.1等を参照)、インホイールモータ駆動装置であることが明らかである。
(ケ)
上記(キ)、(ク)、Fig.1、及び、摘記(1a)の「ステアリングナックル12とボールジョイント14は、モータホイール支持要素16の上下端を形成し、それぞれ、モータホイール10を車両ショックタワー18及びフレーム部材20に取り付ける。ステアリングナックル12は、従来のマクファーソンストラットアセンブリ26の下端に固定されたマウンティングクランプ24に、ボルト22を介して取り付けられる。」という記載から、上下方向に延びるストラットアセンブリ26の下端に固定されたマウンティングクランプ24に、インホイールモータ駆動装置のモータホイール支持要素16の上端を形成するステアリングナックル12が、ボルト22を介して取り付けられていることが明らかである。
(コ)
摘記(1a)の「エンドプレート28は、モータホイール10が操舵されるとき、その縦方向の軸26においてストラットアセンブリの回転を許容するボールベアリング上に載っている。」という記載、及び、摘記(1b)の「モータホイール10の種々の要素は、全て、支持要素16に接続されている。」という記載から、エンドプレート28は、モータホイール支持要素16に種々の要素が全て接続されているモータホイール10が操舵されるとき、その縦方向の軸(符号26は、「ストラットアセンブリ26」との混同を避けるために、以下省略する。)においてストラットアセンブリ26の回転を許容するボールベアリング上に載っていることが明らかである。
(サ)
そして、上記(コ)に併せて、Fig.1、及び、「転舵軸線とは」、「ロアアーム外端の転舵中心(ボールジョイント)と回転のためのベアリングが組み込まれたダンパー頂点車体との結合点を結んだ線を指すこと」(必要があれば令和1年7月19日付けの回答書の7ページも参照)が技術常識であることを踏まえると、上記(コ)で述べた「その縦方向の軸」は、ダンパー上部を構成するストラットアセンブリ26の縦方向の軸であり、ボールベアリングの中心部を通り、ストラットアセンブリ26に沿ってストラットアセンブリ26の上端まで延びており、「その縦方向の軸」の上端が、車体との結合点となることが明らかであり、車体との結合点となる、ストラットアセンブリ26の縦方向の軸すなわち「その縦方向の軸」の上端と、ボールジョイント14の中心とを結んだ軸線を中心として、モータホイール支持要素16に種々の要素が全て接続されているモータホイール10が操舵され、当該軸線は、ストラットアセンブリ26の縦方向の軸すなわち「その縦方向の軸」とほぼ平行であって「その縦方向の軸」と同様に、ストラットアセンブリ26に沿って延びていることも明らかである。
したがって、ストラットアセンブリ26に沿って延びている、車体との結合点となるストラットアセンブリ26の縦方向の軸の上端とボールジョイント14の中心とを結んだ軸線を中心として、モータホイール支持要素16に種々の要素が全て接続されているモータホイール10が操舵されることが、明らかである。
(シ)
摘記(1e)の「エンドカバー78内に捕捉されたコネクタ86」、すなわち、モータハウジング44のフィンのあるエンドカバー78の凸部の貫通孔に嵌めこまれたコネクタ86(上記(エ))に関して、上記(サ)を踏まえ、Fig.1?3を総合すると、車体との結合点となるストラットアセンブリ26の縦方向の軸の上端とボールジョイント14の中心とを結んだ軸線の方向にみて、エンドカバー78の凸部の貫通孔に嵌めこまれたコネクタ86は、ストラットアセンブリ26に設けられる、ショックアブソーバのコイルスプリングの上端の巻き部を支持する上側スプリングシート及びショックアブソーバのコイルスプリングの下端の巻き部を支持する下側スプリングシートと、それぞれ、少なくとも一部分が重なるよう配置されることが看取できる。

このことに関して、以下補足して説明する。
a:引用文献1の各図面は、設計図のように厳密にミリ単位まで認定できるようなものではないが、部品の配置関係を特定するには充分な図面である(上記イ-1及びイ-2を参照。)。

b:引用文献1のFig.1?3(特に、Fig.1及びFig.2)を総合すると、転舵軸線方向にみて、コネクタ86が、上側スプリングシート及び下側スプリングシートと、それぞれ重なっていることは、明らかである。
b-1:車幅方向に関して
Fig.1(上記a)において、車体との結合点となるストラットアセンブリ26の縦方向の軸の上端とボールジョイント14の中心とを結んだ軸線(以下「転舵軸線」ともいう。)と、上側スプリングシートの車幅方向内端を通り転舵軸線に平行な線とが、回答書の9ページの図面に示されている(当審が、同様に作成した上記ア(1j)の図面も参照。)。
この図面をみれば、車幅方向において、転舵軸線方向にみて、コネクタ86が、上側スプリングシートと余裕をもって重なっていることは、明らかである。
b-2:車両前後方向に関して
Fig.2において、転舵軸線が、ボールジョイント14のほぼ中心を通り、ステアリングナックル12及びマウンティングクランプ24のほぼ中央を上下方向に延びていることは明らかであり、このことから、ストラットアセンブリ26のほぼ中央を上下方向に延びていることも明らかであり、その転舵軸線上に、コネクタ86が位置していることも明らかである。
そして、コイルスプリングは略円筒状であること、及び、その略円筒状のコイルスプリングの両端部を支持する上側スプリングシート及び下側スプリングシートが、同様に略円形状であることは、技術常識であることから、Fig.2に、コイルスプリングやスプリングシートが記載されていなくとも、スプリングシートと上記の転舵軸線やコネクタ86との関係を特定することができる。
このことを踏まえると、Fig.2において記載はされていないものの、上側スプリングシートの前後方向の端部(Fig.2においては左右の端部)は、いずれもマウンティングクランプ24よりも、前側及び後側(左右それぞれの側)に位置しており、これらの端部間に、しかも、これらの端部間のほぼ中央に、コネクタ86が位置していることが明らかである。
そうすると、コネクタ86の上記の位置から、前後方向においても、転舵軸線方向にみて、コネクタ86が、上側スプリングシートと余裕をもって重なっていることは、明らかである。
b-3
上記b-1及びb-2から、転舵軸線方向にみて、コネクタ86が、上側スプリングシートと余裕をもって重なっていることは、明らかである。
b-4
また、b-1で述べた図面及びb-2で述べた技術常識に鑑みると、転舵軸線方向にみて、コネクタ86が、下側スプリングシートとも重なっていることは、明らかである。

c:上記bのとおりであるから、技術常識に鑑みると、引用文献1のFig.1?3(特に、Fig.1及びFig.2)から、転舵軸線方向にみて、コネクタ86の少なくとも一部分が、上側スプリングシート及び下側スプリングシートと重なっている構成が看取でき、当該構成が、引用文献1に記載されていると認められる。

(ス)
上記(ア)?(シ)、摘記(1a)?(1i)及びFig.1?3から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(なお、記号は、引用発明を説明するために当審が付した。)。
[引用発明]
「ホイールリム60に固定されることで、チューブレスタイヤ64とホイールリム60とを有する車輪と結合する、インナーホイールベアリング要素52(上記(イ))と、
遊星減速歯車セット組立体49とホイールハブ100とを介して、上記インナーホイールベアリング要素52を駆動する、ステータコア80に対向する永久磁石132が設けられたロータカップ116のハブ114とスプライン結合された軸108と、ステータコア80、永久磁石132、ロータカップ116と、フィンのある円筒部76とフィンのあるエンドカバー78とから成るモータハウジング44と、モータハウジング44のフィンのあるエンドカバー78の凸部の貫通孔に嵌めこまれたケーブル88が接続されるコネクタ86とを有する、モータ部(上記(オ))と、
一端がコネクタ86と接続し、他端がモータハウジング44外部の車体まで延び、前記車体から前記モータ部へ電力を供給するケーブル88(上記(カ))とを備え、
上下方向に延びるストラットアセンブリ26の下端に固定されたマウンティングクランプ24に、インホイールモータ駆動装置のモータホイール支持要素16の上端を形成するステアリングナックル12が、ボルト22を介して取り付けられ(上記(ケ))、
エンドプレート28は、モータホイール支持要素16に種々の要素が全て接続されているモータホイール10が操舵されるとき、その縦方向の軸においてストラットアセンブリ26の回転を許容するボールベアリング上に載っており(上記(コ))、
ストラットアセンブリ26に沿って延びている、車体との結合点となるストラットアセンブリ26の縦方向の軸の上端とボールジョイント14の中心とを結んだ軸線を中心として、モータホイール支持要素16に種々の要素が全て接続されているモータホイール10が操舵され(上記(サ))、
車体との結合点となるストラットアセンブリ26の縦方向の軸の上端とボールジョイント14の中心とを結んだ軸線の方向にみて、エンドカバー78の凸部の貫通孔に嵌めこまれたコネクタ86は、ストラットアセンブリ26に設けられる、ショックアブソーバのコイルスプリングの上端の巻き部を支持する上側スプリングシート及びショックアブソーバのコイルスプリングの下端の巻き部を支持する下側スプリングシートと、それぞれ、少なくとも一部分が重なるよう配置される(上記(シ))、
インナーホイールベアリング要素52と、ホイールハブ100と、遊星減速歯車セット組立体49と、モータ部と、ケーブル88と、モータホイール支持要素16とから構成されるインホイールモータ駆動装置(上記(ク))。」

(2)引用文献2について
引用文献2には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(2a)
「【0027】
電動輪1は、さらに、インホイールモータIWMに対して図示しないインバータユニットから駆動用の信号であるU相、V相、W相の三相交流信号を与えるための配線81,82,83と、インホイールモータIWM内部のロータのポジションや温度を検出するセンサ用の配線84と、配線81?84を接続するための端子ボックス100と、キングピン72Aに取付けられアッパーアーム30に対して回転可能に配線81?84を保持する配線クランプ110とを含む。」
(2b)
図1?3は、以下のとおりである。


(3)引用文献3について
引用文献3には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(3a)
「【0025】
図2は、図1に示した昇圧コンバータCVの回路構成を示す回路図である。
【0026】
図2を参照して、数百Vの直流バッテリBの正負電極間には平滑用のコンデンサC1が接続されている。昇圧コンバータCVは、コンデンサC1の電極間に入力側が接続され、インバータINVに出力側が接続される。インバータINVは、昇圧コンバータCVによって昇圧された電圧を受け、三相交流電圧をインホイールモータIWMに供給する。」
(3b)
図1は、以下のとおりである。


(4)引用文献4について
引用文献4には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(4a)
「【0034】
次に図1?図4を参照して動力線61につき説明する。動力線61は、U、V、W相の大電流がそれぞれ流れる3本の電力線であり、インホイールモータ駆動装置11のモータ部11Aから、トレーリングアーム41に沿って前方へ延び、次に上方へ向きを変えるよう屈曲して延び、車体に搭載された図示しないインバータと接続する。またインホイールモータ駆動装置11は1本の信号線62を介して、図示しない車体側のインバータと電気的に接続する。信号線62は小電流が流れる電力線である。」
(4b)
図1?4は、以下のとおりである。


(5)引用文献5について
ア 引用文献5に記載された事項
引用文献5には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(5a)
「【0030】
電動機10には、インバータ3(図1参照)から駆動用の電力を供給する電線(以下給電ケーブル)12が接続される。電動機10は、誘導電動機であり、3相の交流がインバータ3から供給されるので、3本の給電ケーブル12が電動機10に接続される。電動機10には、給電ケーブル12を接続する端子部(電線の接続部)11が設けられており、ここに3本の給電ケーブル12及び信号用電線(図示せず)の計4本が接続される。給電ケーブル12は、車両1を走行させるための電気エネルギを電動機10に供給するため、容量の大きい、すなわち太い電線が用いられる。このため、給電ケーブル12は柔軟性に欠け、曲げやねじりが繰り返されると、耐久性が低下するおそれがある。なお、信号用電線も、給電ケーブル12と同様に、曲げやねじりが繰り返されると、耐久性が低下するおそれがある。特に、インホイールモータ形式のように、タイヤ2Tとともに電動機10が上下に移動したり、あるいはキングピン軸を中心に操舵されたりする場合、耐久性低下のおそれは高くなる。」
(5b)
「【0034】
また、この実施形態において、電動機10が操舵輪に取り付けられる場合には、図2、図5に示すように、電線である給電ケーブル12は、懸架装置のキングピン軸Zpを車輪側(すなわち車両1のOUT側)から回り込むように配置される。これによって、車輪の操舵にともなう、キングピン軸Zpを中心とした電動機10の回動による給電ケーブル12の曲げやねじれを低減する。なお、この実施形態では、図5に示すように、給電ケーブル12が端子部11から引き出される方向(矢印C方向)と、電動機回転軸Zrとは略直交しているが、給電ケーブル12が端子部11から引き出される方向はこれに限定されるものではない。」
(5c)
図1、2、5及び8-2は、以下のとおりである。


イ 引用文献5に記載された技術事項
摘記(5a)?(5c)を参照すると、引用文献5には、複数の給電ケーブル12が接続された端子部11は、懸架装置のキングピン軸Zpよりも車両前後方向にずらして配置され(特に図5)、端子部11から延びる給電ケーブル12の前記キングピン軸Zpよりも端子部11側部分は、端子部11から、前記キングピン軸Zpへ近づく方向に延出する(特に図5及び図8-2)技術(以下「引用文献5に記載された技術事項」という。)が記載されていると認められる。

(6)引用文献6について
ア 引用文献6に記載された事項
引用文献6には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(6a)
「【0059】
<第4実施例の構成>
図4は、本発明の第4実施例になるワイヤハーネス配索構造を示す。
本実施例は、車体側給電線(車体側ワイヤハーネス)21aおよびモータ側給電線(モータ側ワイヤハーネス)21bがそれぞれ、1組(三相のため3本)のケーブル線21a-1,21a-2,21a-3および21b-1,21b-2,21b-3をばらばらにされている場合のワイヤハーネス配索構造である。」
(6b)
「【0060】
モータ側給電線(モータ側ワイヤハーネス)21bのケーブル線21b-1,21b-2,21b-3は、インホイールモータ駆動ユニットケース3に対し前記したと同様に取着した車輪側コネクタ22の対応するワイヤハーネス接続端子22a-1,22a-2,22a-3に接続する。
車輪側コネクタ22は、これらワイヤハーネス接続端子22a-1,22a-2,22a-3の他に、インホイールモータ駆動ユニット2の電動モータコイル31,32,33が接続されている3個の相互に電気絶縁された接点(図示せず)を有する車輪側(操舵輪側)固定端子22bを具える。」
(6c)
図2及び4は、以下のとおりである。

【図4】


イ 引用文献6に記載された技術事項
摘記(6a)?(6c)を参照すると、引用文献6には、「インホイールモータ駆動ユニットケース3に対し取着した車輪側コネクタ22のワイヤハーネス接続端子22a-1,22a-2,22a-3(摘記(6b))が、転舵軸線方向にみて、互いに重なるよう配置される(図2及び図4)」技術(以下「引用文献6に記載された技術事項」という。)が記載されていると認められる。

2 対比・判断
2-1 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と引用発明とを対比する。

引用発明の「チューブレスタイヤ64とホイールリム60とを有する車輪」及び「インナーホイールベアリング要素52」は、それぞれ、本件発明1の「車輪」及び「車輪ハブ」相当する。
このことから、引用発明の「ホイールリム60に固定されることで、チューブレスタイヤ64とホイールリム60とを有する車輪と結合する、インナーホイールベアリング要素52」は、本件発明1の「車輪と結合する車輪ハブ」に相当する。

(ア)
引用発明の「モータ部」の「遊星減速歯車セット組立体49とホイールハブ100とを介して、上記インナーホイールベアリング要素52を駆動する、ステータコア80に対向する永久磁石132が設けられたロータカップ116のハブ114とスプライン結合された軸108」は、「インナーホイールベアリング要素52」すなわち車輪ハブ(上記ア)を駆動するから、本件発明1の「前記車輪ハブを駆動するモータ回転軸」に相当する。
(イ)
引用発明の「フィンのある円筒部76とフィンのあるエンドカバー78とから成るモータハウジング44」は、本件発明1の「外郭をなすケーシング」に相当する。
(ウ)
引用発明の「ケーブル88」は、本件発明1の「動力線」に相当する。
引用発明の「ケーブル88が接続されるコネクタ86」は、本件発明1の「動力線接続部」に相当する。
そして、上記(イ)を踏まえると、引用発明の「モータハウジング44のフィンのあるエンドカバー78の凸部の貫通孔に嵌めこまれケーブル88が接続されるコネクタ86」と、本件発明1の「前記ケーシングに設けられる複数の動力線接続部」とは、「前記ケーシングに設けられる動力線接続部」おいて共通している。
(エ)
上記(ア)?(ウ)を踏まえると、引用発明の「遊星減速歯車セット組立体49とホイールハブ100とを介して、上記インナーホイールベアリング要素52を駆動する、ステータコア80に対向する永久磁石132が設けられたロータカップ116のハブ114とスプライン結合された軸108と、ステータコア80、永久磁石132、ロータカップ116と、フィンのある円筒部76とフィンのあるエンドカバー78とから成るモータハウジング44と、モータハウジング44のフィンのあるエンドカバー78の凸部の貫通孔に嵌めこまれケーブル88が接続されるコネクタ86とを有する、モータ部」と、本件発明1の「前記車輪ハブを駆動するモータ回転軸、外郭をなすケーシング、および前記ケーシングに設けられる複数の動力線接続部を有するモータ部」とは、「前記車輪ハブを駆動するモータ回転軸、外郭をなすケーシング、および前記ケーシングに設けられる動力線接続部を有するモータ部」おいて共通している。

上記イを踏まえると、引用発明の「一端がコネクタ86と接続し、他端がモータハウジング44外部の車体まで延び、前記車体から前記モータ部へ電力を供給するケーブル88」と、本件発明1の「一端が前記動力線接続部と接続し、他端がケーシング外部の車体まで延び、前記車体から前記モータ部へ電力を供給する屈曲可能な複数の動力線」とは、「一端が前記動力線接続部と接続し、他端がケーシング外部の車体まで延び、前記車体から前記モータ部へ電力を供給する動力線」おいて共通している。

(ア)
引用発明の「インナーホイールベアリング要素52と、ホイールハブ100と、遊星減速歯車セット組立体49と、モータ部と、ケーブル88と、モータホイール支持要素16とから構成されるインホイールモータ駆動装置」は、本件発明1の「インホイールモータ駆動装置」に相当する。
(イ)
引用発明の「上下方向に延びるストラットアセンブリ26」は、本件発明1の「上下方向に延びるストラット」に相当する。
(ウ)
引用発明では、「上下方向に延びるストラットアセンブリ26の下端に固定されたマウンティングクランプ24に、インホイールモータ駆動装置のモータホイール支持要素16の上端を形成するステアリングナックル12が、ボルト22を介して取り付けられ」ることから、「インホイールモータ駆動装置」は、「上下方向に延びるストラットアセンブリ26」の下端部に連結されているといえる。
(エ)
引用発明は、「ストラットアセンブリ26に沿って延びている、車体との結合点となるストラットアセンブリ26の縦方向の軸の上端とボールジョイント14の中心とを結んだ軸線を中心として、モータホイール支持要素16に種々の要素が全て接続されているモータホイール10が操舵され」、その「モータホイール10が操舵されるとき」、「ストラットアセンブリ26の回転を許容する」。
そうすると、引用発明において、「モータホイール支持要素16に種々の要素が全て接続されているモータホイール10が操舵されるとき」、「モータホイール支持要素16」を備え(上記(ア))、かつ、「上下方向に延びるストラットアセンブリ26」の下端部に連結されている、「インホイールモータ駆動装置」(上記(ア)及び(ウ))が、「ストラットアセンブリ26」と共に、「ストラットアセンブリ26に沿って延びている、車体との結合点となるストラットアセンブリ26の縦方向の軸の上端とボールジョイント14の中心とを結んだ軸線を中心として」、回転できるようになっている、すなわち、転舵可能とされていることが、明らかである。
したがって、引用発明の「ストラットアセンブリ26に沿って延びている、車体との結合点となるストラットアセンブリ26の縦方向の軸の上端とボールジョイント14の中心とを結んだ軸線」は、本件発明1の「ストラットに沿って延びる転舵軸線」に相当する。
(オ)
上記(ア)?(エ)を踏まえると、
引用発明の「上下方向に延びるストラットアセンブリ26の下端に固定されたマウンティングクランプ24に、インホイールモータ駆動装置のモータホイール支持要素16の上端を形成するステアリングナックル12が、ボルト22を介して取り付けられ」、「エンドプレート28は、モータホイール支持要素16に種々の要素が全て接続されているモータホイール10が操舵されるとき、その縦方向の軸においてストラットアセンブリ26の回転を許容するボールベアリング上に載っており」、「ストラットアセンブリ26に沿って延びている、車体との結合点となるストラットアセンブリ26の縦方向の軸の上端とボールジョイント14の中心とを結んだ軸線を中心として、モータホイール支持要素16に種々の要素が全て接続されているモータホイール10が操舵され」る「インナーホイールベアリング要素52と、ホイールハブ100と、遊星減速歯車セット組立体49と、モータ部と、ケーブル88と、モータホイール支持要素16とから構成されるインホイールモータ駆動装置」は、
本件発明1の「上下方向に延びるストラットの下端部に連結され、前記ストラットに沿って延びる転舵軸線を中心として転舵可能とされ」る「インホイールモータ駆動装置」に相当する。

引用発明の「ショックアブソーバのコイルスプリングの上端の巻き部を支持する上側スプリングシート」及び「ショックアブソーバのコイルスプリングの下端の巻き部を支持する下側スプリングシート」は、いずれも、本件発明1の「ショックアブソーバのスプリングシート」に相当する。
このことと、上記イ(ウ)及びエ(イ)、(エ)を踏まえると、引用発明の「車体との結合点となるストラットアセンブリ26の縦方向の軸の上端とボールジョイント14の中心とを結んだ軸線の方向にみて、エンドカバー78の凸部の貫通孔に嵌めこまれたコネクタ86は、ストラットアセンブリ26に設けられる、ショックアブソーバのコイルスプリングの上端の巻き部を支持する上側スプリングシート及びショックアブソーバのコイルスプリングの下端の巻き部を支持する下側スプリングシートと、それぞれ、少なくとも一部分が重なるよう配置される」構成と、本件発明1の「転舵軸線方向にみて、前記複数の動力線接続部は、前記ストラットに設けられるショックアブソーバのスプリングシートと重なるよう配置される」構成とは、「転舵軸線方向にみて、前記動力線接続部は、前記ストラットに設けられるショックアブソーバのスプリングシートと重なるよう配置される」構成おいて共通している。

以上から、本件発明1と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「車輪と結合する車輪ハブと、
前記車輪ハブを駆動するモータ回転軸、外郭をなすケーシング、および前記ケーシングに設けられる動力線接続部を有するモータ部と、
一端が前記動力線接続部と接続し、他端がケーシング外部の車体まで延び、前記車体から前記モータ部へ電力を供給する動力線とを備え、
上下方向に延びるストラットの下端部に連結され、
前記ストラットに沿って延びる転舵軸線を中心として転舵可能とされ、
転舵軸線方向にみて、前記動力線接続部は、前記ストラットに設けられるショックアブソーバのスプリングシートと重なるよう配置される、インホイールモータ駆動装置。」
<相違点1>
「動力線接続部」及び「動力線」に関して、本件発明1は、「複数の」動力線接続部であり、「屈曲可能な複数の」動力線であるのに対して、引用発明は、そのように特定されていない点。

(2)判断
以下、相違点1について検討する。

引用発明の「ケーブル88が接続されるコネクタ86」を備えている「インホイールモータ駆動装置」は、「転舵」により「車体」に対して回動し、「車体」に対する「ケーブル88が接続されるコネクタ86」の位置が変化するといえることから、引用発明の「一端がコネクタ86と接続し、他端がモータハウジング44外部の車体まで延び、前記車体から前記モータ部へ電力を供給するケーブル88」は、その位置の変化を許容できるような構造となっているといえる。
そうすると、引用発明の「ケーブル88」すなわち「動力線」(上記(1)イ(ウ))は、実質的に屈曲可能な「動力線」であるといえる。
仮に、そうではないとしても、動力線を屈曲可能とすることは、周知技術であり(摘記(5a)及び(5b)参照)、この周知技術を引用発明に適用することで、引用発明の「ケーブル88」(動力線)を屈曲可能に構成することは、当業者であれば適宜なし得たことにすぎない。

転舵可能とされるインホイールモータ駆動装置において、動力線接続部を複数設け、その複数の動力線接続部のそれぞれに対応するように、動力線も複数設けることは、周知技術である(上記1(2)?(6)を参照。)。
この周知技術を、引用発明の「インホイールモータ駆動装置」の「ケーブル88が接続されるコネクタ86」すなわち「動力線接続部」及び「ケーブル88」すなわち「動力線」(上記(1)イ(ウ))に適用し、動力線接続部を複数の動力線接続部とし、それに対応するように、動力線も複数の動力線とすることは、当業者が容易になし得たといえる。

上記ア及びイを踏まえると、引用発明に上記周知技術を適用することで、上記相違点1に係る本件発明1の構成を想到することは、当業者が容易になし得たといえる。
したがって、本件発明1は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)特許権者の主張について
ア 特許権者の主張
特許権者は、令和1年11月8日提出の意見書において、引用発明の認定に関して、以下のとおり主張する。
(ア)3ページ16?17行
「引用発明を認定するにあたり、特許図面のみからたまたま読み取れる事項を根拠とするべきではない。」(以下「主張1」という。)
(イ)9ページ11行?同ページ末行
「そもそも、引用文献1のFig.1と実車のインホイールモータ周辺部品のカタログ等とを比較することに何の意味もなく、それらを比較したからといって、引用文献1のFig.1が特に意図的又は恣意的に変更された図面であると理解すべきではないという論法が理解できない。
令和1年7月19日付けの回答書の6ページ紙面左右にはトヨタ86ウェブカタログP28-29とFig.1が対比されている。トヨタ86ウェブカタログP28-29には、エンジンと、ストラットアセンブリと、ロアコントロールアームと、タイヤと、ブレーキキャリパが表されている。
しかしながらトヨタ86ウェブカタログP28-29にはモータホイールが表されていない。
モータホイールを備えないエンジン車(トヨタ86)のカタログP28-29が正確な図であると仮定しても、モータホイールを備えるFig.1が当該モータホイールとストラットアセンブリのスプリングシートの位置関係を正確に示す図であるという根拠にはならない。回答書の5ページの対比図も同様のことが言える。」(以下「主張2」という。)
(ウ)10ページ6?8行
「Fig.1はモータホイール10とストラットアセンブリ26の正確な位置関係を明示するものではないので、『寸法の大小関係や部品の位置関係を特定できる程度』に充分な図面とは言えない。」(以下「主張3」という。)
(エ)10ページ13?22行
「なぜ、『Fig.2及びFig.3も、同様に寸法の大小関係や部品の位置関係を特定できる程度には、十分な図面であり、』と認定されているのか、理解できない。また。『全体の符号や部品の位置関係を総合』することと、『これらFig.1?3は、整合も取れている図面である』こととが、なぜ結び付くのかを理解できない。符号は部品や部材の存在を示すものであるが、部品の位置関係までも特定できるものではない。
また、ストラットアセンブリ26は、Fig.1のみしか示されず、ストラットアセンブリに関連する位置関係についてはFig.1?Fig.3間の整合とは無関係である。
さらに、仮にFig.1?3間で整合が取れていたとしても、Fig.1自体が部品の大小関係や位置関係を正確に示したものと言えないのであれば、全体的に部品の大小関係や位置関係が正確に描かれたものであるとは言えない。」(以下「主張4」という。)
(オ)11ページ10?15行
「Fig.1?3は、コネクタ86とストラットアセンブリ26のスプリングの正確な位置関係を明示するものではないから、Fig.1?3を総合して、『コネクタ86は、ストラットアセンブリ26に設けられる、ショックアブソーバのコイルスプリングの上端の巻き部を支持する上側スプリングシート及びショックアブソーバのコイルスプリングの下端の巻き部を支持する下側スプリングシートと、それぞれ、少なくとも一部分が重なるよう配置されることが看取できる』とした認定は誤りである。」(以下「主張5」という。)

イ 検討
主張1?5について、以下検討する。
(ア)主張1及び主張5について
「1(1)イ」(以下「引用発明の認定の記載」という。)の「イー4(シ)b」で述べたとおり、「転舵軸線方向にみて、コネクタ86が、上側スプリングシート及び下側スプリングシートと、それぞれ重なっていることは、明らかである」から、特許図面のみからたまたま読み取れる事項を根拠として引用発明を認定しているわけではないし、引用発明の認定の記載の「イー4(シ)c」のとおり、「転舵軸線方向にみて、コネクタ86の少なくとも一部分が、上側スプリングシート及び下側スプリングシートと重なっている構成が看取でき」るとした引用発明の認定も誤りではない。
したがって、主張1及び主張5は採用できない。
(イ)主張2及び主張3について
引用発明の認定の記載の「イー2」で述べたとおり、部品の配置や寸法が正確な、実車の車輪(インホイールモータを組み込む部分に対応)の周辺部品のカタログと、Fig.1とを比較することは、懸架装置(ストラットアセンブリ26等)やタイヤ周辺に関して、全体的に両者の部品の配置が類似していることを根拠として、Fig.1が、特に意図的又は恣意的に変更された図面や正不正確な図面ではなく、部品の配置関係を特定する程度には、充分な図面であるか否かを検討するために、意味があり、当該カタログにおけるモータホイールの有無が、この検討に影響するものではない。
したがって、主張2及び主張3は採用できない。
(ウ)主張4について
Fig.2は、Fig.1のモータホイールの正面図であり、Fig.3は、モータの部分拡大断面図であって、Fig.1に示したアセンブリの歯車セットであるところ(摘記(1a))、Fig.1?3において、部品の配置や符号の示す箇所にほぼ矛盾はなく(引用発明の認定の記載の「イ-4」の「(エ)」及び「(オ)」等も参照)、当業者であれば、Fig.2がFig.1を車両内方側から見た図面であり、Fig.3がFig.1の部分拡大図であることが、充分に認識できる。
むしろ、当業者であれば、これらの図面が相互に何ら関係がない図面であるとみなしたり、これらの図面同士が明らかに矛盾していると理解したりすることは、できないといえる。
また、ストラットアセンブリ26は、Fig.1のみしか示されていないが、
引用発明の認定の記載の「イー4(シ)b」の「b-2」及び「b-3」で述べたとおり、技術常識から、Fig.2においても、ストラットアセンブリ26に関連する部品(上側スプリングシート及び下側スプリングシートなど)の配置関係を特定することができる。
したがって、主張4は採用できない。

2-2 本件発明2について
(1)対比
本件発明2と引用発明とを対比する。
上記2-1を踏まえると、本件発明2と引用発明とは、上記の一致点で一致し、上記の相違点1で相違し、さらに、以下の相違点2で相違する。
<相違点2>
本件発明2は、「転舵軸線方向にみて、少なくとも2個の動力線接続部は互いに重なるよう配置される」のに対して、引用発明は、そのように特定されていない点。
(2)判断
相違点について、以下検討する。

相違点1については、上記2-1(2)で述べたとおりである。

引用文献6に記載された技術事項(上記1(6)イ)の「ワイヤハーネス接続端子22a-1,22a-2,22a-3」は、少なくとも2個の動力線接続部といえる。
そうすると、引用文献6に記載された技術事項は、「インホイールモータ駆動ユニットケース3に対し取着した車輪側コネクタ22の少なくとも2個の動力線接続部(ワイヤハーネス接続端子22a-1,22a-2,22a-3)が、転舵軸線方向にみて、互いに重なるよう配置される」技術事項であるといえる。
そして、大転舵可能であるか否かにかかわらず、引用発明も引用文献6に記載された技術事項も転舵するものであり、それによって、ワイヤハーネスが捩れるものには違いなく、さらに、キングピン軸線周りに転舵可能に懸架されたインホイールモータ操舵輪のワイヤハーネスに関するものであって(引用文献6の段落【0001】の記載も参照)、技術分野も共通するから、引用発明に引用文献6に記載された技術事項を適用する動機付けは充分にあるといえるし、適用において特に阻害要因も存在しない。
したがって、引用発明に引用文献6に記載された技術事項(上記1(6)イ)を適用することで、引用発明において、「転舵軸線方向にみて、少なくとも2個の動力線接続部は互いに重なるよう配置される」構成、すなわち、上記相違点2に係る本件発明2の構成とすることは、当業者が容易になし得たといえる。

したがって、本件発明2は、引用発明、引用文献6に記載された技術事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

2-3 本件発明3について
(1)対比
本件発明3と引用発明とを対比する。

引用発明の「ショックアブソーバのコイルスプリングの上端の巻き部を支持する上側スプリングシート」及び「ショックアブソーバのコイルスプリングの下端の巻き部を支持する下側スプリングシート」は、それぞれ、本件発明3の「アッパスプリングシート」及び「ロアスプリングシート」に相当し、「ショックアブソーバのコイルスプリング」を「支持する」から、上下に間隔を空けて配置されるといえる。

このことと、上記2-1(1)オを踏まえると、引用発明の「車体との結合点となるストラットアセンブリ26の縦方向の軸の上端とボールジョイント14の中心とを結んだ軸線の方向にみて、エンドカバー78の凸部の貫通孔に嵌めこまれたコネクタ86は、ストラットアセンブリ26に設けられる、ショックアブソーバのコイルスプリングの上端の巻き部を支持する上側スプリングシート及びショックアブソーバのコイルスプリングの下端の巻き部を支持する下側スプリングシートと、それぞれ、少なくとも一部分が重なるよう配置される」構成と、本件発明3の「前記スプリングシートは、上下に間隔を空けて配置されるアッパスプリングシートおよびロアスプリングシートを含み、転舵軸線方向にみて、前記複数の動力線接続部は、前記ロアスプリングシートと重なるよう配置される」構成とは、「前記スプリングシートは、上下に間隔を空けて配置されるアッパスプリングシートおよびロアスプリングシートを含み、転舵軸線方向にみて、前記動力線接続部は、前記ロアスプリングシートと重なるよう配置される」構成において共通している。

そして、上記2-1を踏まえると、本件発明3と引用発明とは、上記の一致点及び上記イの共通している構成で一致し、上記の相違点1で相違し、さらに、以下の相違点3で相違する。
<相違点3>
「前記動力線接続部」が、本件発明3は、前記「複数の」動力線接続部であるのに対して、引用発明は、そのように特定されていない点。

(2)判断
相違点について、以下検討する。

相違点1については、上記2-1(2)で述べたとおりである。

上記2-1(2)イで述べたとおり、引用発明の「動力線接続部」を、複数の「動力線接続部」とすること、すなわち、引用発明において、上記相違点3に係る本件発明3の構成とすることは、当業者が容易になし得たといえる。

したがって、本件発明3は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

2-4 本件発明4について
(1)対比
本件発明4と引用発明とを対比する。
上記2-1を踏まえると、本件発明4と引用発明とは、上記の一致点で一致し、上記の相違点1で相違し、さらに、以下の相違点4で相違する。
<相違点4>
本件発明4は、「前記複数の動力線接続部は、前記転舵軸線よりも車両前後方向にずらして配置され、前記動力線接続部から延びる前記動力線の一端部は、前記転舵軸線へ近づく方向に延出する」のに対して、引用発明は、そのように特定されていない点。

(2)判断
相違点について、以下検討する。

相違点1については、上記2-1(2)で述べたとおりである。

本件発明4と引用文献5に記載された技術事項とを対比すると、引用文献5に記載された技術事項(上記1(5)イ)の「複数の給電ケーブル12が接続された端子部11」、「懸架装置のキングピン軸Zp」、「端子部11から延びる給電ケーブル12の前記キングピン軸Zpよりも端子部11側部分」及び「端子部11から、前記キングピン軸Zpへ近づく方向に延出する」構成は、それぞれ、本件発明4の「複数の動力線接続部」、「転舵軸線」、「動力線接続部から延びる動力線の一端部」及び「転舵軸線へ近づく方向に延出する」構成に相当する。
そうすると、引用文献5に記載された技術事項は、複数の動力線接続部(複数の給電ケーブル12が接続された端子部11)は、転舵軸線(懸架装置のキングピン軸Zp)よりも車両前後方向にずらして配置され、動力線接続部から延びる動力線の一端部(端子部11から延びる給電ケーブル12の前記キングピン軸Zpよりも端子部11側部分)は、転舵軸線へ近づく方向に延出する(端子部11から、前記キングピン軸Zpへ近づく方向に延出する)技術事項であるといえる。
そして、引用発明に引用文献5に記載された技術事項を適用することで、引用発明において、「前記複数の動力線接続部は、前記転舵軸線よりも車両前後方向にずらして配置され、前記動力線接続部から延びる前記動力線の一端部は、前記転舵軸線へ近づく方向に延出する」構成、すなわち、上記相違点4に係る本件発明4の構成とすることは、当業者が容易になし得たといえる。

なお、本件発明4の「一端部」に関して、発明の詳細な説明には、「各動力線93の一端部は、車両前後方向と平行に延びる。」(段落【0055】)、「動力線接続部91から延びる動力線93の一端部は、転舵軸線Kへ近づく方向に延出する。」(段落【0069】)等の記載があるが、「一端部」の範囲を定義した記載は無く、本件発明4の「一端部」は、一端とは異なり、ある程度の範囲が存在するものと理解することが妥当であるから、引用文献5において、給電ケーブル12の全体の長さに対して、端子部11からケーブルクランプ13までの給電ケーブル12の範囲を、「一端部」と認定したとしても、それが、本件発明4の「一端部」の上記の理解と矛盾するものではない。
また、上記の理解を踏まえると、本件発明4の「延出する」構成は、動力線の一端に向けて延出するものも、他端に向けて延出するものも、いずれも該当するものといえる。
そうすると、引用文献5に記載された技術事項は、上記相違点4に係る本件発明4の構成(上記イ参照)を備えていることが明らかである。

したがって、本件発明4は、引用発明、引用文献5に記載された技術事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)特許権者の主張について
平成31年4月16日付けの意見書において、特許権者は、「周り込むように配置されるとは、キングピン軸Zpから一定半径の間隔で配置されることをいい、引用文献5の図2、図5からも明らかなように給電ケーブル12の一端部がキングピン軸Zpを中心として周方向に延在する。給電ケーブル12がキングピン軸Zpに近づくように延びるとは解釈できない。」と主張する。
しかしながら、上記(2)ウのとおり、本件発明4の「一端部」は、ある程度の範囲が存在するものと理解することが妥当であり、給電ケーブル12の一部の範囲がキングピン軸Zpから一定半径の間隔で配置されるか否かにかかわらず、上記(2)イ、ウのとおり、引用文献5に記載された技術事項において、動力線接続部から延びる動力線の一端部(端子部11から延びる給電ケーブル12の前記キングピン軸Zpよりも端子部11側部分)は、転舵軸線へ近づく方向に延出する(端子部11から、前記キングピン軸Zpへ近づく方向に延出する)から、この主張は採用できない。

2-5 本件発明5について
(1)対比
本件発明5と引用発明とを対比する。

(ア)
引用発明の「モータハウジング44のフィンのあるエンドカバー78の凸部の貫通孔」は、上記2-1(1)イ(イ)を踏まえると、本件発明5の「前記ケーシングに形成される貫通孔」に相当する。
(イ)
引用発明の「モータハウジング44のフィンのあるエンドカバー78の凸部の貫通孔に嵌めこまれケーブル88が接続されるコネクタ86」は、「ケーブル88が接続される」から、上記2-1(1)イ(ウ)を踏まえると、動力線の端部外周を包囲しているといえる(Fig.1及びFig.3における、コネクタ86からモータハウジング44内へ延びている、リードイン導体84も参照。)
また、引用発明の「モータハウジング44のフィンのあるエンドカバー78の凸部の貫通孔に嵌めこまれケーブル88が接続されるコネクタ86」は、「モータハウジング44のフィンのあるエンドカバー78の凸部の貫通孔に嵌めこまれ」れるから、上記(ア)を踏まえると、前記ケーシングに形成される貫通孔に差し込み固定されるといえる。
(ウ)
したがって、引用発明の「モータハウジング44のフィンのあるエンドカバー78の凸部の貫通孔に嵌めこまれケーブル88が接続されるコネクタ86」は、本件発明5の「前記動力線の端部外周を包囲して前記貫通孔に差し込み固定されるスリーブ」にも相当する。

引用発明の「モータハウジング44のフィンのあるエンドカバー78の凸部の貫通孔に嵌めこまれケーブル88が接続されるコネクタ86」の「モータハウジング44のフィンのあるエンドカバー78の凸部の貫通孔」は、「ケーブル88が接続されるコネクタ86」が「嵌めこまれ」る部分である。
このことから、引用発明の「ケーブル88が接続されるコネクタ86」(本件発明5の「スリーブ」に相当。上記ア(ウ)参照。)、及び、「モータハウジング44のフィンのあるエンドカバー78の凸部の貫通孔」(本件発明5の「前記ケーシングに形成される貫通孔」に相当。上記ア(ア)参照。)は、実質的に「動力線接続部」を構成しているといえる。
なお、引用発明において、ケーブル88の先端にピンなどを備える部材が存在し、そのピンなどをコネクタ86に差し込むことで、接続されるものであったとしても、当該ピンなどを備える部材が、ケーブルを覆っていることは明らかであり、当該ピンなどを備える部材も含めて、実質的に「動力線接続部」を構成しているということもできる。

上記イを踏まえると、引用発明の「モータハウジング44のフィンのあるエンドカバー78の凸部の貫通孔に嵌めこまれケーブル88が接続されるコネクタ86」の構成は、本件発明5の「前記動力線接続部は、前記ケーシングに形成される貫通孔と、前記動力線の端部外周を包囲して前記貫通孔に差し込み固定されるスリーブとで構成される」構成に相当する。

したがって、上記2-1を踏まえると、本件発明5と引用発明とは、上記の一致点及び上記ウの構成で一致し、上記の相違点1で相違する。

(2)判断
相違点について、以下検討する。

相違点1については、上記2-1(2)で述べたとおりである。

なお、本件発明5では特定されていないが、本件発明5の「スリーブ」が、本件の実施例などのように、動力線を挿入してケーシング内に通す構成を意味しているとしても、当該構成とすることは、当業者が適宜なし得たことにすぎない。

したがって、本件発明5は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび
以上のとおり、本件発明1、3及び5は、引用発明及び周知技術(引用文献2ないし6)に基いて、本件発明2は、引用発明、引用文献6に記載された技術事項及び周知技術(引用文献2ないし6)に基いて、本件発明4は、引用発明、引用文献5に記載された技術事項及び周知技術(引用文献2ないし6)に基いて、いずれも当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1?5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2020-01-14 
出願番号 特願2016-76351(P2016-76351)
審決分類 P 1 651・ 121- Z (B60K)
最終処分 取消  
前審関与審査官 畔津 圭介  
特許庁審判長 中川 真一
特許庁審判官 出口 昌哉
藤井 昇
登録日 2018-05-11 
登録番号 特許第6334590号(P6334590)
権利者 NTN株式会社
発明の名称 インホイールモータ駆動装置  
代理人 特許業務法人アイミー国際特許事務所  
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