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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) A41D
管理番号 1360531
判定請求番号 判定2019-600021  
総通号数 244 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2020-04-24 
種別 判定 
判定請求日 2019-08-26 
確定日 2020-03-05 
事件の表示 上記当事者間の特許第6148417号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号及びその説明書、並びにそのパッケージ写真に記載するエプロンは、特許第6148417号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 1 請求の趣旨
本件判定の請求の趣旨は、イ号及びその説明書、並びにそのパッケージ写真に記載するエプロン(以下「イ号物件」という。)が、特許第6148417号(以下「本件特許」という。)の請求項1に係る発明(以下「本件特許発明」という。)の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。

なお、判定請求書の「5 請求の趣旨」では、判定の対象となる請求項の記載はないものの、判定請求書3ページ12?26行の「[3]本件特許発明の説明」には、「本件特許発明の「簡易ベスト服構造」は、特許公報(甲第1号証)及び代表図(甲第6号証)の記載からみて、以下に示すように、特許請求の範囲の請求項1に記載された通りのものである。」と記載し、請求項1に係る発明の構成要件をア)?エ)に分けて記載しており、判定請求書4ページ12行?6ページ24行の「[5]本件特許発明の構成とイ号ベストの構成との対比」では、請求項1に係る発明の構成要件ア)?エ)とイ号との対比を行っており、請求項2との対比等に係る記載がないことからみて、技術的範囲について判定を求める特許発明は、請求項1に係る発明であることは明らかである。

2 本件特許発明
(1)手続の経緯
本件特許発明に係る特許出願は、平成29年1月4日に請求人によって出願され、同年5月26日にその特許権の設定登録がされ、同年6月14日に特許公報が発行されたものである。そして、令和元年8月26日(判定請求書差出日)に本件判定の請求がされ、同年11月28日に被請求人より判定請求答弁書が提出されたものである。

(2)本件特許発明
本件特許発明は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「本件特許明細書」という。)の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであって、符号A?Dを付して分説すると次のとおりである。

「A 略長手帯状に形成した簡易ベスト生地の長手方向略中央部を幅方向左右側縁から襞状にしわ寄せして厚手の重ね代としこの部分を着用者の首掛け部とすると共に、
B 簡易ベスト生地の長手方向左右半部のうち一半部の幅方向一側縁にボタンを、他半部の幅方向一側縁に前記ボタン部分に連結する連結部を設け、
C しかも簡易ベスト生地の左右端部は略山形状として、
D 簡易ベスト生地を首掛け部を介して首元から折返して胸元で着用した際に簡易ベスト生地の前記左右半部の上半部がスーツの襟元から露見してベスト風の外観を呈し、かつ、食事用のナプキン機能も兼用することを特徴とする簡易ベスト服構造。」(以下、分説した各構成要件を「構成要件A」等という。)

(3)本件特許発明の課題及び効果
ア.本件特許明細書の記載
本件特許明細書には、本件特許発明の課題及び効果等に関連して、以下の記載がある。なお、下線は当審が付したものである。
(ア)「【0001】
本発明は、簡易ベスト服構造に関する。」

(イ)「【0003】
かかるフォーマルな服装としては、ある程度体裁の整ったものであれば普段着用している仕事用のスーツも礼装として着用することは可能であるが、更なるワンポイントとしてスーツ内にベストを着用すれば、より豊かな装いを演出することができるため広く普及している(例えば、非特許文献1参照。)。

(ウ)「【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来のベスト服構造は、本来、毛皮又は人口毛等を首周りに装着するための基礎地として機能するもので、仮にベストとして着用するにしても、後身頃を排しているため両腕を通す袖部分がない。
【0011】
それゆえ、首回りに掛けて使用する関係上、着用者の動作に伴いベストの装いが崩れないようにスナップボタンを介して下地の被服に掛止して固定する構造としており、使用にあたり煩雑であった。
【0012】
また、上述の如き会合は立食や会食を伴う場合も多く、食事の際の不用意な食べこぼしや飛び跳ねなどで折角の礼装を汚してしまうことがある。
【0013】
このため会場でナプキンが用意されているが、常にナプキンを襟元に差し込んだまま会話するのも憚られる。
【0014】
また、このような会合は社交の場である場合も多く、礼装としての一定の装いは保ちながらも、時間の経過と共に、より親しまれやすいファッションへ変化することができれば、相手方との距離も縮まり、また、相手方に好印象を与えることができる。
【0015】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、着用性やファッション性といった着用者の快適な着心地を損なうことなく、装いを手軽に変化させることができ、折り畳み収容して携帯でき、更には食事用ナプキンとして使用できるなどの多機能性、安価に生産でき商品価格を抑えることができる経済性を兼ね備えた被服として利用可能な簡易ベスト服構造を提供する。」

(エ)「【0018】
請求項1に係る発明によれば、略長手帯状に形成した簡易ベスト生地の長手方向略中央部を幅方向左右側縁から襞状にしわ寄せして厚手の重ね代としこの部分を着用者の首掛け部とすると共に、簡易ベスト生地の長手方向左右半部のうち一半部の幅方向一側縁にボタンを、他半部の幅方向一側縁に前記ボタン部分に連結する連結部を設け、しかも簡易ベスト生地の左右端部は略山形状として、簡易ベスト生地を首掛け部を介して首元から折返して胸元で着用した際に簡易ベスト生地の前記左右半部の上半部がスーツの襟元から露見してベスト風の外観を呈し、かつ、食事用のナプキン機能も兼用することとしたため、着用性やファッション性といった着用者の快適な着心地を損なうことなく、装いを手軽に変化させることができ、折り畳み収容して携帯することができ、会食や立食の際には食事用ナプキンとして使用できるなどの多機能性、安価に生産でき商品価格を抑えることができる経済性を兼ね備えた被服として利用可能な簡易ベスト服構造を提供することができる。
【0019】
また、略長手帯状に形成した簡易ベスト生地の長手方向略中央部を幅方向左右側縁から襞状にしわ寄せして厚手の重ね代としこの部分を着用者の首掛け部としたため、着用者が簡易ベストを着用した際には首掛け部をシャツの襟とシャツの襟台との間にしっかりと挟持させることができ、簡易ベスト服構造を備えるベストを着用者に確実にフィットさせ、スーツの襟元から露見したベスト風の外観位置を着用者が動いても変位させることなく、礼服としての堅実な身だしなみを保持することができる。
【0020】
また、簡易ベスト生地の左右端部は略山形状としているため、着用者が簡易ベストを着用した際に、スーツのボタンを閉めない状態において正面視で前身頃のベスト裾が正面側へ反り返してしまうことを防止すると共に、ベスト裾のラインを露見させてベスト風の外観をさらに呈することができ、シックな装いを一層際立たせることができる。」

(オ)「【0031】
ボタンは、後述する連結部と対をなして係合できるものであればよく、例えばスナップ式、磁石式、ホック式、ファスナー式などのボタンを採用することができる。」

(カ)「【0040】
首掛け部20は、着用者の首まわりに沿ってシャツの襟台と襟の間で挟持される部位であり、襞状にしわ寄せした複数の襞を有した厚手部分としている。」

(キ)「【0047】
首掛け部20は、生地10の正面側から背面側にかけて順にタック、折返片12a、折返片12bとを重ね合わせ、それぞれを生地10の長手方向中央位置10gで幅方向に、また、2つの折返線25a、25bの中途位置25c同士の間を幅方向に沿って縫合することで形成する。
【0048】
この2つの折返線25a、25bの中途位置25c同士の間を幅方向に沿って縫合することにより、首掛け部20の左右端25L、25Rが形成される。」

(ク)「【0051】
すなわち首掛け部20は、生地10の幅方向略中央部から長手方向に沿って谷折と山折とをして形成した襞21aと、折返片12aの折返しにより形成した襞21bと、折返片12bと、を正面側から背面側にかけて順次階段状に降下するように配置して構築した重畳構造25を有している。
【0052】
このように構築した重畳構造25は、空気中の水分を生地10が吸湿したり発散することで襞21a、襞21bが伸縮し、首掛け部20の厚みを変位自在とする厚み伸縮機能を首掛け部20に付与している。」

(ケ)「【0073】
このように構成したベストAを使用した際には以下のような効果がある。図6及び図7は、ベストAをベスト風に着用した例を示し、図8は、ベストAを食事用ナプキンとして着用した例を示す。
【0074】
ベストAを着用した際には、図6に示すように、首掛け部20は、その肉厚によりシャツ100の襟部と面接触する。すなわち、首掛け部20の正面側に配置された襞21a、21bの上面がシャツ100の襟120の裏面に、また、折返片12bの背面がシャツ100の襟台110の表面に、それぞれ面接触することで首まわりを中心に左身頃30や右身頃40が一方に引っ張られてベストAが定位置からずれてしまうことを防止できる。
【0075】
特に、首掛け部20の重畳構造25の伸縮機能により、折り畳まれた生地10の伸縮性も相俟って、首掛け部20の厚み方向に伸縮することで首掛け部20の肉厚を可変可能とし、首掛け部20がシャツの襟部に確実に面接触可能な厚みを維持することを可能としている。
【0076】
また、重畳構造25において2つの襞21a、21bは、それぞれの折曲部22a、22b、22cを階段状にずらして配置しているため、各折曲部の影響(折曲部の厚み)が背面側に響かず、着用者が頸部に首掛け部20を巻き掛けた際の着心地を良くしている。
【0077】
さらに、襞21a、21bは、それぞれの倒し方向(折曲部22a、22bの方向)を幅方向左側縁10d(着用者の背中側)に向けて同じ方向になるように形成しているため、首掛け部20をシャツ100の襟部の間に挟持させる際には、シャツの襟部に対して階段状の襞21a、21bが滑り込みやすくなる。
【0078】
一方で、シャツ100の襟部の間に挟持させた状態においては、各襞21a、21bが、それぞれの折曲部22a、22bを下側に向けた状態でシャツの襟120に対して係合することとなり、首掛け部20をシャツの襟部の間にしっかりと挟持させた状態とし首掛け部20がシャツの襟からはみ出すことを防止している。」

(コ)「【0084】
また、ボタン31を連結部41に係合する際には、右身頃40と左身頃30の対向縁同士を近接、すなわち右身頃下半部40bの正面側の一側縁10eを左身頃下半部30bの背面側の一側縁10eに近づけるだけで、それぞれの磁性体31a、41a同士が引き合い連結するため、ボタン31と連結部41との係合作業を容易とすることができる。」

イ.本件特許発明の課題及び効果
上記ア.(ア)?(コ)の記載からみて、本件特許発明は、着用性やファッション性といった着用者の快適な着心地を損なうことなく、装いを手軽に変化させることができ、折り畳み収容して携帯することができ、会食や立食の際には食事用ナプキンとして使用できるなどの多機能性、安価に生産でき商品価格を抑えることができる経済性を兼ね備えた被服として利用可能な簡易ベスト服構造を提供することを課題としたものであると認められる。
そして、本件特許発明は、「略長手帯状に形成した簡易ベスト生地の長手方向略中央部を幅方向左右側縁から襞状にしわ寄せして厚手の重ね代としこの部分を着用者の首掛け部とすると共に、簡易ベスト生地の長手方向左右半部のうち一半部の幅方向一側縁にボタンを、他半部の幅方向一側縁に前記ボタン部分に連結する連結部を設け、しかも簡易ベスト生地の左右端部は略山形状として、簡易ベスト生地を首掛け部を介して首元から折返して胸元で着用した際に簡易ベスト生地の前記左右半部の上半部がスーツの襟元から露見してベスト風の外観を呈し、かつ、食事用のナプキン機能も兼用すること」としたため、首掛け部重畳構造の伸縮機能により、首掛け部の厚み方向に伸縮することで首掛け部の肉厚を可変可能とし、首掛け部がシャツの襟部に確実に面接触可能な厚みを維持することを可能とするとともに、各襞が、それぞれの折曲部を下側に向けた状態でシャツの襟に対して係合することとなり、着用者が簡易ベストを着用した際には首掛け部をシャツの襟とシャツの襟台との間にしっかりと挟持させることができることで、簡易ベスト服構造を備えるベストを着用者に確実にフィットさせ、スーツの襟元から露見したベスト風の外観位置を着用者が動いても変位させることなく、礼服としての堅実な身だしなみを保持することができるという効果を奏するものである。

3.イ号物件
請求人は、イ号物件の内容を証するものとして、判定請求書とともに、甲第7の2号証?甲第8号証を提出している。
まず、甲第8号証について検討し、続いて甲第7号証の2、甲第7号証の3の順で検討する。
(1)甲第8号証
製品「Table with(プリーツタイプ)」のパッケージを展開して印刷したものと認められる甲第8号証から、以下の事項が把握できる。
ア.[パッケージ裏面]の左下部分に「品名」「Table with(プリーツタイプ)」と記載され、右下部分に「フットマーク株式会社」と記載されていること。

イ.[パッケージ裏面]の上部に「洋服の汚れを気にせずに、食事ができるエプロン。」及び「食事中にお気に入りの洋服を汚してしまうのが気になる・・・そんな大人のお悩みに、汚れを気にせず食事ができるエプロンです。ストールのように首にかけてカンタンに装着できます。」と記載されていること。

ウ.[パッケージ裏面]の中央部右側に「使い方」として、丸数字の1に続いて「ストールのように首にかけます」及び丸数字の2に続いて「スナップボタンを留めます」と記載され、「ストールのように首にかけます」の記載の下の図には、首元から折返して首にかけた生地の長手方向左半部の幅方向一側縁に少なくとも2つのボタン状のものが図示され、「スナップボタンを留めます」の左の丸囲みの図面には、小さな正方形を千鳥状に配置した部材が二つの生地の側縁にそれぞれ設けられ、一方の部材から他方の部材の方向へ向かう矢印が図示され、「スナップボタンを留めます」の下の図面には、首にかけた生地の長手方向左半部及び右半部のそれぞれの側縁が重ねて配置され、胸元に着用された状態で、食事をしている点が図示されていること。

エ.[パッケージ裏面]の中央部左側に「留めやすいボタン」及び「ボタンの中心位置を気にせずに軽い力で留められる、使い易いスナップボタンです。」と記載されていること。

(2)甲第7の2号証
上記(1)アに示されているフットマーク株式会社のウェブサイトに掲載されたイ号物件の画像を印刷したものとされる甲第7号証の2から、以下の事項が把握できる。
ア.生地が長手方向略中央部において襞状にしわ寄せられて折り曲げられるとともに、生地の左右端部は略方形状であること。

イ.ページ右上の楕円囲みの写真には、小さな突部を千鳥状に配置した部材が二つの生地の側縁にそれぞれ設けられていること。

(3)甲第7の3号証
上記(1)アに示されているフットマーク株式会社のウェブサイトに掲載されたイ号物件の画像を印刷したものとされる甲第7号証の3から、以下の事項が把握できる。
生地の長手方向略中央部を幅方向左右側縁から襞状にしわ寄せしてこの部分をトルソーの首部分に掛けて、布地生地の長手方向左半部及び右半部のそれぞれの側縁が重ねて配置され、トルソーの前面に装着されていること。

(4)上記(1)?(3)から、イ号物件について、以下のように理解できる。
ア.上記(1)イ.、ウ.、(2)ア.及び(3)ア.から、イ号物件は、生地の長手方向略中央部を幅方向左右側縁から襞状にしわ寄せした部分を着用者の首掛け部として、生地を首掛け部を介して首元から折り返してストールのように首にかけて胸元で着用した際に、お気に入りの洋服を汚してしまうのを気にせずに食事ができるエプロンであること。

イ.上記(1)ウ.、エ.及び(2)イ.から、イ号物件に設けられた小さな正方形または突部を千鳥状に配置した部材はスナップボタンであること。

ウ.上記イ.、(1)ウ.、及び(3)ア.から、イ号物件は、生地をストールのように首にかけて体の前面に装着した際に、生地の長手方向左半部及び右半部の重ねて配置される側縁の部分のそれぞれにスナップボタンを設け、それぞれのスナップボタンを留めるものであること。

エ.上記(2)ア.から、イ号物件の生地の左右端部は略方形状であること。

(5)上記(4)から、イ号物件は、以下の構成a?dを備えるものといえる。
「a 生地の長手方向略中央部を幅方向左右側縁から襞状にしわ寄せしてこの部分を着用者の首掛け部とすると共に、
b 生地をストールのように首にかけて体の前面に装着した際に生地の長手方向左半部及び右半部の重ねて配置される側縁の部分のそれぞれに、互いに留めるスナップボタンを設け、それぞれのスナップボタンを留めるものであり、
c 生地の左右端部は略方形状として、
d 生地を首掛け部を介して首元から折返して胸元で着用した際に、汚れを気にせずに食事ができるエプロン。」

4.対比・判断
まず、構成bが構成要件Bを充足するか否か検討し、続いて、構成d、a、cが、それぞれ構成要件D、A、Cを充足するか順に検討する。
(1)構成要件Bの充足性について
本件発明の構成要件Bは、「簡易ベスト構造」の「簡易ベスト生地」において、「生地の長手方向左右半部のうち一半部の幅方向一側縁にボタンを、他半部の幅方向一側縁に前記ボタン部分に連結する連結部を設け」ることであり、この構成要件Bの「ボタン」は、上記2.(3)ア.(オ)の記載から、連結部と対をなして係合できるものであればよい。

一方、イ号物件の構成bは、「エプロン生地」における「生地の長手方向左右半部のうち一半部の幅方向一側縁」に設けられた「スナップボタン」と、「他半部の幅方向一側縁」に設けられた「スナップボタン」を、互いに「連結する」ことで係合するものである。
そうすると、イ号物件の構成要件bは、「生地の長手方向左右半部のうち一半部の幅方向一側縁にボタンを、他半部の幅方向一側縁に前記ボタン部分に連結する連結部を設け」る点で、本件特許発明の構成要件Bを充足するものである。
なお、イ号のボタンが本件発明の構成要件Bに対応することは、被請求人も答弁書の4ページ19?26行において認めるところである。

(2)構成要件Dの充足性について
本件特許発明の構成要件Dは「簡易ベスト生地を首掛け部を介して首元から折返して胸元で着用した際に簡易ベスト生地の前記左右半部の上半部がスーツの襟元から露見してベスト風の外観を呈し、かつ、食事用のナプキン機能も兼用することを特徴とする簡易ベスト服構造。」である。
そして、上記2.(3)ア.(ア)、(イ)及び(エ)の記載から、本件特許発明の「簡易ベスト構造」は、着用した際に簡易ベスト生地の前記左右半部の上半部がスーツの襟元から露見してベスト風の外観を呈することで、礼装として豊かな装いを演出するためのものである。
一方、イ号物件の構成dは「エプロン」が「生地を首掛け部を介して首元から折返して胸元で着用した際に、お気に入りの洋服を汚してしまうのを気にせずに食事ができる」ものであるところ、イ号物件は上記3.(4)ア.に示したとおりストールのように首にかけて着用するものであり、お気に入りの洋服を汚さないためには、お気に入りの洋服の上に着用する必要があるから、イ号物件は、上記2.(3)ア.(イ)に記載されたように、本件特許発明のような礼装の際のワンポイントとしてスーツの下にベスト風に着用するものではない。
そうすると、イ号物件はスーツの襟元から露見してベスト風の外観を呈し、礼装として豊かな装いを演出するものではないから、全体として「簡易ベスト服構造」としての構成を有しているものとは認められない。
したがって、イ号物件の構成dは、本件特許発明の構成要件Dを充足しない。

(3)構成要件Aの充足性について
ア.本件特許発明の構成要件Aは、「略長手帯状に形成した簡易ベスト生地の長手方向略中央部を幅方向左右側縁から襞状にしわ寄せして厚手の重ね代としこの部分を着用者の首掛け部とする」というものである。
ここで、「首掛け部」は、上記2(3)ア.(カ)の記載から、着用者の首まわりに沿ってシャツの襟台と襟の間で挟持される部位である。

イ.一方、イ号物件は、上記(2)で指摘したように、ストールのように首にかけて、お気に入りの洋服を汚さないためにお気に入りの洋服の上に着用するものであり、一般的にストールは、襟付きのカッターシャツの襟と襟台との間に挟持させて使用するものではないから、イ号物件はシャツの襟台と襟の間で挟持される部位を有するものではない。
したがって、イ号物件の構成aは、本件特許発明の構成要件Aを充足しない。

ウ.請求人は判定請求書において、「本件特許発明の特許請求の範囲に記載の「首掛け部」は、襞状(プリーツ状)により、しわ寄せられ厚手の重ね代となる構成であればよ」い旨主張している(判定請求書の5ページ5?6行)。
しかしながら、上記ア.で指摘したように、本件特許発明の構成要件Aにおいて、「首掛け部」は、着用者の首まわりに沿ってシャツの襟台と襟の間で挟持される部位であり、単に襞状(プリーツ状)によりしわ寄せられるだけでは、着用者の首まわりに沿ってシャツの襟台と襟の間で挟持される部位とはならないから、請求人の上記主張は採用できない。

エ.また、請求人は判定請求書において、「本件特許発明と同一の構成a)を備えるイ号ベストを襟付きのカッターシャツ等に適応させた場合には、必然的に本件特許発明の有する(1)首掛け部がシャツの襟と襟台との間にしっかりと挟持させることができ、(2)首掛け部の厚みを変位自在とする厚み伸縮できる同一の作用効果を発揮することは明らかである」旨主張している(判定請求書の5ページ24?27行)。
しかしながら、上記イ.で指摘したように、イ号物件はストールのように首にかけてお気に入りの洋服を汚さないためにお気に入りの洋服の上に着用するものであり、一般的にストールは、襟付きのカッターシャツの襟と襟台との間に挟持させて使用するものではないから、請求人の上記主張は採用できない。

(4)構成要件Cの充足性について
本件特許発明の構成要件Cは「簡易ベスト生地の左右端部は略山形状とし」たことであり、「略山形状」は、上記2.(3)ア.(イ)の記載から、ベスト裾のラインとして露見させることで、ベスト風の外観をさらに呈するための形状であると解される。
一方、イ号物件の構成cの「エプロン生地の左右端部」は「略山形状」ではない。また、上記(2)で指摘したように、イ号物件はストールのように首にかける「エプロン」であり、スーツの下にベスト風に着用するものではないから、その生地の左右端部はベスト裾のラインとして露見されるものではない。
したがって、イ号物件の構成cは、本件特許発明の構成要件Cを充足しない。
なお、イ号物件の構成d、aは本件特許発明の構成要件D、Aを充足しないものであるから、構成cについての均等論による充足性については検討していない。


5.むすび
以上のとおり、イ号物件について、本件特許発明の構成要件A?Dを充足するということはできないから、イ号物件は、本件特許発明の技術的範囲に属しない。
 
判定日 2020-02-26 
出願番号 特願2017-93(P2017-93)
審決分類 P 1 2・ 1- ZB (A41D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲高▼辻 将人  
特許庁審判長 井上 茂夫
特許庁審判官 佐々木 正章
中村 一雄
登録日 2017-05-26 
登録番号 特許第6148417号(P6148417)
発明の名称 簡易ベスト服構造  
代理人 飯塚 雄二  
代理人 松尾 憲一郎  
代理人 柿本 邦夫  
代理人 市川 泰央  
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