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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F16H |
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管理番号 | 1360831 |
審判番号 | 不服2017-19351 |
総通号数 | 245 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-05-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-12-27 |
確定日 | 2020-03-09 |
事件の表示 | 特願2016- 38524「車両推進システム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 8月 4日出願公開、特開2016-138657〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成22年3月10日(パリ条約による優先権主張2009年3月17日、アメリカ合衆国(US))に出願した特願2010-52445号の一部を平成28年3月1日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。 平成29年 1月16日付け:拒絶理由通知書 同年 4月18日 :意見書、手続補正書の提出 同年 9月 1日付け:拒絶査定 同年12月27日 :審判請求書、手続補正書の提出 平成31年 2月28日付け:拒絶理由通知書 令和 元年 5月15日 :意見書、手続補正書の提出 同年 6月11日付け:拒絶理由通知書(最後) 同年 8月29日 :意見書、手続補正書の提出 第2 令和元年8月29日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和元年8月29日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) 本件補正前後の特許請求の範囲の記載は次のとおりである(下線部は補正箇所を示す。)。 (1)補正前 「【請求項1】 バッテリ蓄積ユニット(108)に結合され、非条件付け出力を発生させるように構成された電気式機械(EM)(16、88)と、 入力側(20、98)及び出力側(22、106)を有する連続可変トランスミッション(CVT)(14、90)であって、該入力側(20、98)は、内燃エンジン(82)及びクラッチ(114)を介してEM(16、88)に対して機械的に結合されると共にEM(16、88)からの非条件付け出力を受け取り、該出力側(22、106)上に条件付け出力を生成するように構成されている連続可変トランスミッション(CVT)(14、90)と、 前記CVT(14、90)の出力側(22、106)に機械的に結合されると共に、 CVT(14、90)から条件付け出力を受け取ること、及び 再条件付け出力を生成すること、 を行うように構成され、前進する方向で、複数の固定ギア比で動作する固定比トランスミッション(40、104)と、 を備え、 前記再条件付け出力が所望の推進システム出力となるように前記CVT(14、90)と前記固定比トランスミッション(40、104)の合成ギア比が選択され、 前記クラッチ(114)が前記内燃エンジン(82)によって前記CVT(14、90)にパワーを伝達せずに前記バッテリ蓄積ユニット(108)を充電することを可能にする、車両推進システム(12、84、124)。」 (2)補正後 「【請求項1】 バッテリ蓄積ユニット(108)に結合され、非条件付け出力を発生させるように構成された電気式機械(EM)(16、88)と、 入力側(20、98)シャフト及び出力側(22、106)シャフトを有する連続可変トランスミッション(CVT)(14、90)であって、該入力側(20、98)シャフトは、内燃エンジン(82)及びクラッチ(114)を介してEM(16、88)に対して機械的に結合されると共にEM(16、88)からの非条件付け出力を受け取り、該出力側(22、106)シャフト上に条件付け出力を生成するように構成されている連続可変トランスミッション(CVT)(14、90)と、 前記CVT(14、90)の出力側(22、106)シャフトに機械的に結合されると共に、 CVT(14、90)から条件付け出力を受け取ること、及び 再条件付け出力を生成すること、 を行うように構成され、前進する方向で、複数の固定ギア比で動作する固定比トランスミッション(40、104)と、 を備え、 前記再条件付け出力が所望の推進システム出力となるように前記CVT(14、90)と前記固定比トランスミッション(40、104)の合成ギア比が選択され、 前記クラッチ(114)が、前記CVT(14、90)の外部で前記内燃エンジン(82)と前記CVT(14、90)の間に配置され、 前記クラッチ(114)が前記内燃エンジン(82)によって前記CVT(14、90)にパワーを伝達せずに前記バッテリ蓄積ユニット(108)を充電することを可能にする、車両推進システム(12、84、124)。」 2 補正の適否 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「CVT」の「入力側」と「出力側」、及び「クラッチ」について、願書に最初に添付された明細書の段落【0020】及び図3等の記載に基づき、上記のとおり限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、また、新規事項の追加はない。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1(2)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献1の記載事項及び引用発明 令和元年6月11日付けで当審が通知した拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)において引用文献1として示され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2004-52656号公報には、図面と共に、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同様。)。 ア 「【0021】 図1は、本発明の第1の実施形態のエンジン始動制御装置が適用されるハイブリッド車両の駆動機構を概略的に示すブロック図である。このハイブリッド車両は、所定の停車状態では、エンジンを停止させ、再発進する際には、エンジンが始動するまではバッテリからの電気エネルギで走行し、エンジンが始動してエンジンによるトルクが発生し始めると、エンジンによる走行に切り換える、アイドルストップ機構を備えたハイブリッド車両である。 【0022】 図1に示されているように、本実施形態のハイブリッド車両1は、CVT自動変速機2を介して、左右の駆動輪4、6を駆動するエンジン8と、エンジン8に連結され駆動輪4、6を補助的に駆動するモータ10とを備えている。モータ10は、インバータ12を介してバッテリ14の電力により駆動され、エンジン8をクランキングし更に駆動輪4、6を駆動し、減速時には、エンジン8を介して駆動輪4、6によって駆動され回生発電を行いバッテリ14を蓄電する。 【0023】 本実施形態では、エンジン8は高燃費型のバルブの閉弁タイミングを遅延させるタイプであり、モータ10はIPM同期式モータであり、バッテリ14はニッケル水素電池である。しかしながら、本発明のエンジン、モータ、バッテリはこれらに限定されるものではない。 【0024】 車両1は、ECU(電子制御ユニット)16を備えている。ECU16は、CPU、ROM、RAM、インターフェース回路、インバータ回路等を備えている。ECU16は、入力されたアクセル開度、エンジン回転数、エンジン水温、吸気温度、吸気量、車速、変速レンジなどに関する信号に基づいて、スロットル弁開度、エンジン8への燃料噴射、点火時期等をコントロールすると共に、モータ10の出力トルクや回転数等、CVT2の作動を制御する。また、ECU16は、エンジン8の作動時にモータ10が発電した電力をバッテリ14に蓄電させる等のインバータ12の作動を制御する。更に、ECU16は、吸気通路18に配置されたエアフローセンサ20からの吸気量信号を入力し、この信号に所定の進み補正を施す進み補正手段22を備えている。この補正手段22は、後述するように、エンジン始動後の所定期間は、他の期間とは異なった内容の進み補正を行うように構成されている。そして、ECU16は、補正した吸気量信号等に基づいて燃料噴射量を決定する。また、ECU16は、吸気通路18に配置されたスロットルバルブ24の開度制御も行う。 【0025】 また、CVT2の変速制御では、ECU16に記憶されているCVTマップに基づいて、アクセル開度と車速に対応する目標エンジン回転数となるように、変速比が制御される。例えば、定常走行中にアクセルが踏み込まれると、車速は直ぐには上昇しないので目標エンジン回転数が上昇し、これに対応するように変速比が小さくなる。その後、車速の上昇に伴って、アクセル開度が変わらなければ、変速比が大きくなる。」 イ 「【0029】 次に、本実施形態のハイブリッド車両の作動について説明する。上述したように、本実施形態のハイブリッド車両は、所定の停車状態では、エンジンを停止させ、エンジンが停止した停車状態から再発進する際には、エンジンが始動するまではバッテリからの電気エネルギで走行し、エンジンが始動してエンジンによるトルクが発生し始めると、エンジンによる走行に切り換える、アイドルストップ機構を備えたハイブリッド車両である。従って、例えば、信号による停車などで所定条件が満たされると、ECU16が、インジェクタ42からの燃料噴射を停止させてエンジンを停止させる。信号が青に変わるなどして、ドライバがブレーキベダルから足を離して車両を再発進させる動作を開始すると、ECU16は、モータ10の駆動力で駆動輪4、6を駆動して、車両をクリープ発進させる。さらに、ECU16は、所定時間経過後にエンジン8への燃料噴射制御を開始してエンジン8を始動させる。」 ウ 「【0037】 (停止時) 目標トルクTrが0(Tr=0)且つ車速Vが0(V=0)であって、ブレーキON変速レンジD、あるいは、ブレーキOFF変速レンジP(NまたはP)である停止時には、エンジンおよびモータを停止させる制御が行われる。しかしながら、バッテリ14の蓄電量が少ないときには、エンジン8を駆動し、モータ10を発電機として作動させ、バッテリ14を充電する。尚、このときには,CVT2のクラッチはOFFとされる。」 エ 上記ウの記載によれば、引用文献1のCVT自動変速機2には、少なくとも車両の停止時であってエンジン8を駆動する際にOFFとされる図示されないクラッチが設けられていると認められる。また、図1からは、CVT自動変速機2の入力側及び出力側にシャフト状の部材が記載されていることが看取でき、一般に無段変速機(CVT)が入力側シャフトと出力側シャフトを有していることが技術常識であることにも鑑みれば、引用文献1に記載のCVT自動変速機2は入力側に入力側シャフトを、出力側に出力側シャフトを有していると認められる。 上記の記載事項、認定事項及び図面の記載を総合し、本件補正発明の記載振りに則って整理すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「バッテリ14にインバータ12を介して結合され、駆動力を発生させるように構成されたモータ10と、 入力側シャフト及び出力側シャフトを有するCVT自動変速機2であって、該入力側シャフトは、エンジン8を介してモータ10に対して連結されると共にモータ10からの駆動力を受け取り、該出力側シャフト上に駆動力を伝達するCVT自動変速機2と、 を備え、 CVT自動変速機2は、少なくとも車両の停止時であってエンジン8を駆動する際にOFFとされるクラッチを有し、そのように該クラッチがOFFとされたときに、エンジン8によってバッテリ14を充電することを可能にする、ハイブリッド車両1の駆動機構。」 (3)対比 ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。 (ア)後者の「バッテリ14」は前者の「バッテリ蓄積ユニット」に相当する。そして、後者の「駆動力を発生させるように構成されたモータ10」は、変速機等によって変速されていない状態の駆動力を発生させるものであって、「インバータ12」を介して「バッテリ14」に結合されたものであるから、前者の「バッテリ蓄積ユニットに結合され、非条件付け出力を発生させるように構成された電気式機械(EM)」に相当するといえる。 (イ)後者の「CVT自動変速機2」は前者の「連続可変トランスミッション(CVT)」に、「エンジン8」は「内燃エンジン」に、「モータ10からの駆動力」は「EMからの非条件付け出力」にそれぞれ相当する。また、後者の「CVT自動変速機2」が「出力側シャフト」上に伝達する「駆動力」は、CVT自動変速機2によって変速された駆動力であるから、前者の「条件付け出力」に相当するといえ、後者の「CVT自動変速機2」は前者の「出力側シャフト上に条件付け出力を生成する」構成を有している。 (ウ)後者の「入力側シャフトは、エンジン8を介してモータ10に対して連結される」構成は、前者の「入力側シャフトは、内燃エンジン及びクラッチを介してEMに対して機械的に結合される」構成との対比において、「入力側シャフトは、内燃エンジンを介してEMに対して機械的に結合される」構成である限りにおいて一致する。 (エ)後者の「ハイブリッド車両1の駆動機構」は、前者の「車両推進システム」に相当する。 イ そうすると、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「バッテリ蓄積ユニットに結合され、非条件付け出力を発生させるように構成された電気式機械(EM)と、 入力側シャフト及び出力側シャフトを有する連続可変トランスミッション(CVT)であって、該入力側シャフトは、内燃エンジンを介してEMに対して機械的に結合されると共にEMからの非条件付け出力を受け取り、該出力側シャフト上に条件付け出力を生成するように構成されている連続可変トランスミッション(CVT)と、 を備えた車両推進システム。」 <相違点1> 本件補正発明は、「CVTの外部」で、「内燃エンジン」と「CVT」の間に「クラッチ」を配置し、「CVT」の「入力側シャフトは、内燃エンジン及びクラッチを介してEMに対して機械的に結合される」ものであり、その「クラッチ」が「前記内燃エンジンによって前記CVTにパワーを伝達せずに前記バッテリ蓄積ユニットを充電することを可能にする」構成であるのに対し、引用発明において、「CVT自動変速機2」が有する「クラッチ」は、「少なくとも車両の停止時であってエンジン8を駆動する際にOFFとされる」ものであり、「そのように該クラッチがOFFとされたときに、エンジン8によってバッテリ14を充電することを可能にする」ものの、その「クラッチ」が「CVT自動変速機2」の具体的にどの部分に設けられているか特定されておらず(CVT自動変速機2の変速機構部の入力側なのか出力側なのか等)、本件補正発明における上記構成を有しているか否か不明な点。 <相違点2> 本件補正発明は、「CVTの出力側シャフトに機械的に結合されると共に、CVTから条件付け出力を受け取ること、及び再条件付け出力を生成すること、を行うように構成され、前進する方向で、複数の固定ギア比で動作する固定比トランスミッション」を備え、「前記再条件付け出力が所望の推進システム出力となるように前記CVTと前記固定比トランスミッションの合成ギア比が選択され」る構成を有しているのに対し、引用発明はこのような構成を具備していない点。 (4)判断 ア 相違点1について ハイブリッド車両の駆動機構に関する技術分野において、CVT等の変速機の外部で、駆動源(内燃機関又はモータ)とCVT等の変速機との間に、車両の停止時にOFFとされるクラッチを設けることは、本願の優先日前、当業者にとって慣用手段といえる事項であった(例えば、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平11-270664号公報の段落【0009】、【0011】、【0012】及び図4、特開2001-355481号公報の段落【0018】?【0021】及び図1、3、並びに、米国特許出願公開第2008/0245332号明細書の要約(ABSTRACT)、段落[0005]、[0006]、[0010]、[0084]及びFIG.2等を参照。)。 してみると、引用発明において、車両の停止時にOFFとされる「クラッチ」を、「CVT自動変速機2」の外部で、「エンジン8」と「CVT自動変速機2」の間に配置するようにすることは、当該技術分野における慣用手段に基いて当業者が容易に想到し得たことである。 そして、引用発明において、そのように「クラッチ」を「CVT自動変速機2」の外部で「エンジン8」と「CVT自動変速機2」の間に配置すると、「CVT自動変速機2」の入力側シャフトは、「エンジン8」及び該「クラッチ」を介して「モータ10」に対して機械的に結合されるものとなるとともに、その「クラッチ」が「エンジン8」によって「CVT自動変速機2」にパワー、すなわちエンジン8の駆動力を伝達せずに「バッテリ14」を充電することを可能にする構成となることは、明らかである。 よって、引用発明において、上記相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、上記慣用手段に基いて当業者が容易に想到し得たことである。 イ 相違点2について 車両用のCVTに関する技術分野において、CVTの出力側シャフトに、前進する方向で、複数の変速段を有する副変速機(本件補正発明の「複数の固定ギア比で動作する固定比トランスミッション」に相当)を機械的に結合し、CVTの出力(本件補正発明の「条件付け出力」に相当)をさらに変速すること(本件補正発明の「再条件付け出力を生成すること」に相当)で、所望の推進システム出力となるようにCVTと副変速機の合成ギア比を選択することは、当審拒絶理由において引用文献2?4として示され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開昭62-137239号公報(「副変速機30」、2ページ左下欄15行?3ページ左上欄6行、4ページ左上欄2行?5ページ右下欄3行、及び第2図等を参照。)、特開平4-285355号公報(「有段変速機構18」、段落【0010】?【0013】、【0019】、【0020】、【0030】、及び図1等を参照。)、及び特開平9-217812号公報(「DNR装置29」、「トランスミッション機構30」、段落【0009】?【0020】、及び図1等を参照。)に記載されているように、本願の優先日前、当業者にとって周知技術であった。そして、そのような構成を採用することにより、CVTを大型化することなく比較的大きいギア比を得ることができることも当業者に知られていた(例えば引用文献4の段落【0002】、【0009】等を参照。)。 引用発明においても、CVTを大型化することなく比較的大きいギア比を得るという課題を内在しているといえるから、引用発明に上記周知技術を適用し、相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 ウ 効果について 上記の各相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明、周知技術、及び慣用手段の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 エ 審判請求人の主張について 審判請求人は、令和元年8月29日付け意見書において、「引用文献1の第0037段落のクラッチは、『CVT2のクラッチ』と説明されておりますように、CVT2の内部に配置され、本願の図2に示されるDNR組64(本願明細書第0018段落)と対比されるべき構成要素であり、引用文献1はCVT2の外部でCVT2とエンジン8との間に配置されるクラッチを開示しません。引用文献1の第0037段落に記載されておりますように、CVT2のクラッチは、車両の停止時にOFFとされます。このため、引用文献1の発明ではCVT2のクラッチがOFFとなっても、CVT2の入力はエンジンとともに回転することとなります。」と主張している。 しかしながら、引用文献1には、当該「クラッチ」が本願明細書でいうところの「DNR組」(前進、中立、後進切換機構)におけるクラッチであることを示す記載や示唆は存在しないし、仮にそうであったとしても、上記「ア」で説示したとおり、CVT等の変速機の外部で、駆動源(内燃機関又はモータ)とCVTとの間に、車両の停止時にOFFとされるクラッチを設けること自体、慣用手段に過ぎないから、かかる構成を採用することは当業者が容易に想到し得たことである。 したがって、審判請求人の主張は採用できない。 オ まとめ 以上のとおりであるから、本件補正発明は、引用発明、周知技術、及び慣用手段に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 本件補正についてのむすび したがって、本件補正は特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 令和元年8月29日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、令和元年5月15日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2[理由]1(1)」に記載のとおりのものである。 2 当審拒絶理由 当審拒絶理由の概要は、この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2?4に記載された周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用文献1:特開2004-52656号公報 引用文献2:特開昭62-137239号公報(周知技術を示す文献) 引用文献3:特開平4-285355号公報(周知技術を示す文献) 引用文献4:特開平9-217812号公報(周知技術を示す文献) 3 引用文献 当審拒絶理由で引用された引用文献1の記載事項等は、上記「第2[理由]2(2)」に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、上記「第2[理由]2」で検討した本件補正発明から、「シャフト」、「クラッチ」に係る限定事項を削除したものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、上記「第2[理由]2(3)、(4)」に記載したとおり、引用発明、周知技術、及び慣用手段に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明、周知技術、及び慣用手段に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2019-09-30 |
結審通知日 | 2019-10-04 |
審決日 | 2019-10-24 |
出願番号 | 特願2016-38524(P2016-38524) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(F16H)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 瀬川 裕 |
特許庁審判長 |
大町 真義 |
特許庁審判官 |
尾崎 和寛 藤田 和英 |
発明の名称 | 車両推進システム |
代理人 | 黒川 俊久 |
代理人 | 田中 拓人 |
代理人 | 小倉 博 |