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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F25D
管理番号 1360878
審判番号 不服2019-137  
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-01-08 
確定日 2020-03-13 
事件の表示 特願2016- 18819「冷蔵庫」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 8月10日出願公開、特開2017-138050〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年2月3日の出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
・平成29年10月17日付け拒絶理由通知
・平成29年12月12日に意見書及び手続補正書の提出
・平成30年5月2日付け拒絶理由通知
・平成30年6月28日に意見書及び手続補正書の提出
・平成30年11月6日付け拒絶査定
・平成31年1月8日に拒絶査定不服審判の請求及びその請求と同時に手続補正書の提出
・令和元年5月8日に上申書の提出
・令和元年10月8日付け当審における拒絶理由通知
・令和元年11月28日に意見書及び手続補正書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和元年11月28日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認める。

「前面と、前記前面に設けられた第1開口を有する第1貯蔵室と、前記第1貯蔵室よりも室内の設定温度が低くかつ前記前面に設けられた第2開口を有する第2貯蔵室とを含む筐体と、
前記筐体に収容され、かつ圧縮機、凝縮装置、結露防止パイプ、減圧器、パイプおよび冷却器を有する冷凍サイクルとを備え、
前記冷凍サイクルは、前記圧縮機、前記凝縮装置、前記結露防止パイプ、前記減圧器および前記冷却器の順に冷媒が流れるように構成されており、
前記結露防止パイプは、前記第1貯蔵室の前記第1開口および前記第2貯蔵室の前記第2開口が設けられた前記前面側の前記筐体の縁において、前記第1開口の周囲の少なくとも一部に配置されており、かつ前記第2開口の周囲を囲むように配置されており、
前記筐体の前記縁に配置された前記結露防止パイプの前記冷媒の流れの下流側の端部は、前記第2開口の周囲の一部に配置されており、
前記筐体の前記縁に配置された前記結露防止パイプの前記冷媒の流れの上流側の端部は、前記第2開口の周囲の一部に配置されており、
前記筐体は底部を有し、
前記筐体の前記縁に配置された前記結露防止パイプの前記冷媒の流れの下流側の端部は、前記底部に配置されており、
前記上流側の端部および前記下流側の端部は、前記筐体の同じ側面側に配置されており、
前記パイプは、前記減圧器と前記下流側の端部とを接続し、
前記減圧器は前記底部に配置されており、
前記パイプは前記底部に沿って配置されている、冷蔵庫。」

第3 拒絶理由の概要
令和元年10月8日付けで当審が通知した拒絶理由のうちの理由2は、概ね次のとおりのものである。

・本願の請求項1?3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明及び周知の技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

特開2014-77615号公報

第4 引用文献について
1 引用文献の記載
当審における拒絶理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2014-77615号公報(以下「引用文献」という。)には、次の記載がある(下線は、当審で付した。)。

「【請求項1】
前面に開口が形成され内部に複数の貯蔵室を有する断熱箱体と、
前記断熱箱体に設けられ前記開口を仕切って前記貯蔵室の出入口を形成する枠部材と、
前記各貯蔵室を冷却するための冷気を生成する冷凍サイクルと、を備え、
前記複数の貯蔵室は、冷蔵温度帯の貯蔵室と冷凍温度帯の貯蔵室とから構成され、
前記冷凍サイクルは、圧縮機と、冷却器と、前記圧縮機から圧送された冷媒を前記冷却器へ流す第一防露パイプおよび第二防露パイプと、を有し、
前記第一防露パイプは、前記枠部材の内部を通ることなく前記断熱箱体の左右側壁および天井壁の前端内部を通って前記開口の周囲を囲むように設けられ、
前記第二防露パイプは、前記冷媒の流れに対して前記第一防露パイプの下流側にあって、前記枠部材の内部および前記左右側壁の前端内部を通って少なくとも前記冷凍温度帯の貯蔵室の出入口の周囲を囲むとともに、前記左右側壁の前端内部を通る部分のうち前記冷凍温度帯の貯蔵室の側方を通る部分が前記第一防露パイプの前側にあって前記第一防露パイプと並行するように設けられている冷蔵庫。」

「【0001】
本発明の実施形態は、冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷凍サイクルの一部を構成する高温の冷媒が通るパイプを、防露パイプとして冷蔵庫の開口の周囲に設けたものがある。このような冷蔵庫は、防露パイプの熱によって冷蔵庫の開口の周囲を加温することで、開口周囲の露付きの抑制を図っている。
【0003】
しかし、防露パイプ内を流れる冷媒の温度つまり防露パイプの温度が高いと、その熱が貯蔵室内に多く流入し、貯蔵室内の温度が上昇する。すると、上昇した貯蔵室内を冷却するために余分な電力を消費することになり、省エネ効果が阻害されるおそれがあった。これは、外気との温度差が大きい冷凍温度帯の貯蔵室に特に影響が大きかった。」

「【0009】
(第一実施形態)
図1および図2に示すように、冷蔵庫10は、断熱箱体11を主体として構成されている。断熱箱体11は、左側壁12、右側壁13、天井壁14、底壁15、および後壁16を有する縦長矩形箱状に構成されている。断熱箱体11には、その一方の面に、左側壁12、右側壁13、天井壁14、および底壁15によって囲まれた開口111が形成されている。以下、断熱箱体11の開口111側すなわち図1において左側を冷蔵庫10の前側として説明する。
【0010】
断熱箱体11は、図1に示すように、例えば予め箱状に構成された鋼板製の外箱17および合成樹脂製の内箱18の間に断熱部材19を設けて構成されている。なお、断熱箱体11は、複数に分割された壁を組み合わせて箱状に構成してもよい。例えば、左側壁12、右側壁13、天井壁14、底壁15、および後壁16をそれぞれ個別に構成した後、組み合わせることで箱状してもよい。断熱部材19は、例えば発砲ウレタンなど充填式のものや、真空断熱パネルなど予め成形されたもの、又はこれらを併用したものが用いられる。
【0011】
断熱箱体11の内側であって前後方向における開口111近傍には、複数の枠部材、この場合、上段横枠部材20、中段横枠部材21、下段横枠部材22、および縦枠部材23が設けられている。これら枠部材20?23は、例えば鋼板などを折り曲げることにより、後側が閉塞又は開放された角管状に構成されている。枠部材20?23の内部には、例えば発砲スチロールやスポンジ、発泡ウレタンなどの断熱性を有する部材が設けられている。上段横枠部材20は、断熱箱体11の上下方向のほぼ中央部分に設けられ、左側壁12と右側壁13とを接続している。中段横枠部材21は、上段横枠部材20の下方にあって左側壁12と右側壁13とを接続している。下段横枠部材は、中段横枠部材21の下方にあって左側壁12と右側壁13とを接続している。縦枠部材23は、中段横枠部材21および下段横枠部材22の左右方向のほぼ中央部分にあって、中段横枠部材21と下段横枠部材22とを接続している。
【0012】
中段横枠部材21の後ろ側には、断熱性を有する断熱仕切板25が設けられており、断熱箱体11の内部を異なる温度帯の貯蔵室に仕切っている。この場合、断熱仕切板25の上方は冷蔵温度帯の貯蔵室に設定され、断熱仕切板25の下方は冷凍温度帯の貯蔵室に設定されている。
具体的には、断熱箱体11の内部にあって断熱仕切板25の上方には、冷蔵温度帯の貯蔵室として、上から順に冷蔵室30、野菜室31が設けられている。冷蔵室30と野菜室31とは、上段横枠部材20の後ろ側に設けられた樹脂製の仕切板26によって仕切られている。仕切板26の後部には、図1に示すように通気口261が形成されており、この通気口261を介して冷蔵室30と野菜室31とが連通している。
【0013】
断熱仕切板25の下方には、冷凍温度帯の貯蔵室として製氷室32、上段冷凍室33、および下段冷凍室34が設けられている。製氷室32および上段冷凍室33は、断熱仕切板25の下方に左右に並べて設けられている。下段冷凍室34は、製氷室32および上段冷凍室33の下方つまり断熱箱体11の最下部に設けられている。
【0014】
この場合、冷蔵室30の出入口301は、左側壁12の前端部、右側壁13の前端部、天井壁14の前端部、および上段横枠部材20に囲まれて形成されている。野菜室31の出入口311は、左側壁12の前端部、右側壁13の前端部、上段横枠部材20、および中段横枠部材21に囲まれて形成されている。製氷室32の出入口321は、左側壁12の前端部、中段横枠部材21、下段横枠部材22、および縦枠部材23に囲まれて形成されている。上段冷凍室33の出入口331は、右側壁13の前端部、中段横枠部材21、下段横枠部材22、および縦枠部材23に囲まれて形成されている。そして、下段冷凍室34の出入口341は、左側壁12の前端部、右側壁13の前端部、底壁15の前端部、および下段横枠部材22に囲まれて形成されている。
【0015】
冷蔵室30および野菜室31は、通常、異なる冷蔵温度帯の温度に設定されている。例えば、冷蔵室30の維持温度は1?5℃に設定されており、野菜室31の維持温度はそれよりやや高い2?6℃に設定されている。図1に示すように、冷蔵室30の前面部には、ヒンジ開閉式の冷蔵室用断熱扉35が設けられている。野菜室31の前面部には、引出し式の野菜室用断熱扉36が設けられている。野菜室用断熱扉36の背面部には、上下二段に構成された収納容器37が取付けられている。収納容器37には、野菜や果物などが収納される。
【0016】
製氷室32、上段冷凍室33、および下段冷凍室34は、いずれも冷凍温度帯、例えば-10?-20℃のマイナス温度帯に設定されている。上段冷凍室33の前側には、収納容器38が連結された引出し式の上段冷凍室用断熱扉39が設けられている。下段冷凍室34の前側には、二段に構成された収納容器40が連結された引出し式の下段冷凍室用断熱扉41が設けられている。また、詳細は図示しないが、製氷室32の前側にも、収納容器が連結された引出し式の製氷室用断熱扉が設けられている。
【0017】
冷蔵庫10には、図3に示す冷凍サイクル60が組込まれている。冷凍サイクル60は、圧縮機61、凝縮器62、冷蔵用冷却器63および冷凍用冷却器64を有し、これらを環状に接続して構成されている。圧縮機61は、図1に示すように、冷蔵庫10の背面下端部に形成された機械室42内に設けられている。また、機械室42には、蒸発皿43や図3に示す凝縮器62、さらには圧縮機61や凝縮器62を冷却する図示しない冷却ファンなどが設けられている。冷蔵用冷却器63は、冷蔵温度帯の貯蔵室、つまり冷蔵室30および野菜室31を冷却するための冷気を生成する。冷凍用冷却器64は、冷凍温度帯の貯蔵室、つまり製氷室32、上段冷凍室33、および下段冷凍室34を冷却するための冷気を生成する。
【0018】
冷蔵庫10内にあって冷蔵温度帯の貯蔵室つまり冷蔵室30および野菜室31の後部には、冷蔵用ダクト44が設けられている。冷蔵用ダクト44は、野菜室31側に設けられた吸入口441と、冷蔵室30側に設けられた複数の供給口442とを有している。冷蔵用ダクト44内は、吸入口441を介して野菜室31内に連通するとともに、供給口442を介して冷蔵室30内に連通している。
【0019】
冷蔵用ダクト44内において、吸入口441の近傍には冷蔵用ファン45が設けられ、冷蔵用ファン45の上方には冷蔵用冷却器63が設けられている。冷蔵用ファン45が駆動すると、該冷蔵用ファン45の送風作用によって、野菜室31内の空気が吸入口441から冷蔵用ダクト44内へ吸い込まれる。そして、その空気は、冷蔵用冷却器63を通過して冷却され、冷気となって供給口442から冷蔵室30内へ供給される。冷蔵室30内へ供給された冷気は、冷蔵室30内を冷却した後、通気口261を通って野菜室31内に流入する。野菜室31に流入した冷気は、野菜室31を冷却した後、再び吸入口441から冷蔵用ダクト44内へ吸い込まれる。このようにして冷気が循環し、冷蔵室30および野菜室31が冷却される。
・・・
【0021】
冷蔵庫10内にあって冷凍温度帯の貯蔵室つまり製氷室32、上段冷凍室33、および下段冷凍室34の後部には、冷凍用ダクト47が設けられている。冷凍用ダクト47は、製氷室32、上段冷凍室33、および下段冷凍室34に対応した複数の供給口471と、下段冷凍室34の後部に位置する吸入口472とを有している。冷凍用ダクト47内は、供給口471を介して冷凍温度帯の各貯蔵室32、33、34内に連通するとともに、吸入口472を介して下段冷凍室34内に連通している。
【0022】
冷凍用ダクト47内にあって、供給口471の近傍には冷凍用ファン48が設けられ、冷凍用ファン48の下方には冷凍用冷却器64が設けられている。冷凍用ファン48が駆動すると、該冷凍用ファン48の送風作用によって、下段冷凍室34内の空気が吸入口472から冷凍用ダクト47内へ吸い込まれる。そして、その空気は、冷凍用冷却器64を通過して冷却され、冷気となって各供給口471から冷凍温度帯の各貯蔵室32、33、34へ供給される。そして、その冷気は、各貯蔵室32、33、34を冷却した後、再び吸入口472から冷凍用ダクト47内へ吸い込まれる。このようにして冷気が循環し、製氷室32、上段冷凍室33、および下段冷凍室34が冷却される。
・・・
【0024】
次に、冷凍サイクル60の構成について説明する。冷凍サイクル60は、圧縮機61の吐出側から三方弁65までを、分岐の無い一本の流れで構成している。そして、三方弁65によって冷蔵用冷却器63側と冷凍用冷却器64との二本の流れに分岐され、その後合流して圧縮機61の吸入側に接続されている。
【0025】
まず、三方弁65から圧縮機61までの構成について説明する。三方弁65は、一つの入口と、二つの出口とを有している。三方弁65の二つの出口のうち一方の出口には、冷蔵側キャピラリチューブ66と冷蔵用冷却器63とが順に接続され、その後、冷蔵側サクションパイプ67を介して圧縮機61の吸入側に接続されている。三方弁65の二つの出口のうち他方の出口には、冷凍側キャピラリチューブ68と冷凍用冷却器64とが順に接続され、その後、冷凍側サクションパイプ69および逆止弁70を介して圧縮機61に接続されている。
【0026】
三方弁65は、制御装置50に接続されている。三方弁65は、制御装置50からの制御指令を受けて駆動し、二つの出口のうち入口と連通する一の出口を択一的に切替える。これにより、圧縮機61から圧送された冷媒は、冷蔵用冷却器63側又は冷凍用冷却器64側のどちらか一方へ供給される。三方弁65から冷蔵用冷却器63側又は冷凍用冷却器64側へ供給された冷媒は、キャピラリチューブ66、68によって減圧され、その後、冷却器63、64で気化することにより冷却器63、64の温度を低下させる。冷却器63、64で低温となった冷媒は、サクションパイプ67、69を通る間に外気等と熱交換され、ある程度昇温された状態で圧縮機61に吸入される。
【0027】
次に、圧縮機61から三方弁65までの構成について説明する。圧縮機61の高圧吐出側から三方弁65までには、冷媒の流れ順に、蒸発パイプ71、凝縮器62、後側放熱パイプ73、右側放熱パイプ74、天井側放熱パイプ75、左側放熱パイプ76、第一防露パイプ77、第二防露パイプ78、およびドライヤ79が接続されている。ドライヤ79の下流側は三方弁65に接続されている。蒸発パイプ71は、機械室42内の蒸発皿43近傍に設けられている。蒸発皿43は、蒸発パイプ71内を流れる高温高圧の冷媒の熱によって加温され、これにより蒸発皿43内の除霜水の蒸発が促進される。
【0028】
凝縮器62は、例えば多数の放熱用フィンを有するフィンチューブで構成され、断熱箱体11の背面側に設けられている。各放熱パイプ73、74、75、76は、例えば鉄製や銅製など金属製の管で構成されている。このうち、後側放熱パイプ73は、後壁16の内部を引き回されて設けられている。右側放熱パイプ74は、右側壁13の内部を引き回されて設けられている。また、天井側放熱パイプ75は、天井壁14の内部を引き回されて設けられている。そして、左側放熱パイプ76は、左側壁12の内部を引き回されて設けられている。
【0029】
第一防露パイプ77および第二防露パイプ78は、それぞれ異なる材料であって別の部材で構成されている。この場合、第一防露パイプ77は、例えば比較的安価な鉄製の管で構成されている。一方、第二防露パイプ78は、第一防露パイプ77よりは高価ではあるが耐食性や熱伝導性に優れる銅製の管で構成されている。ここで、図4から図7も参照して、第一防露パイプ77および第二防露パイプ78の配置について説明する。
【0030】
第一防露パイプ77は、機械室42内において、上流側の端部が左側放熱パイプ76の下流側の端部にろう付けなどによって接続されている。その後、第一防露パイプ77は、図4および図5に示すように、左側壁12の下後端部から左側壁12の下端内部に入り、左側壁12の下端部内を該左側壁12の下端縁部に沿って前方へ延びる。その後、第一防露パイプ77は、左側壁12の前端部つまり断熱箱体11の開口111付近で上方へ向って折れ曲がる。そして、第一防露パイプ77は、左側壁12の前端内部を該左側壁12の前端縁部に沿って上方へ向って直線的に延びる。このとき、第一防露パイプ77は、図6および図7に示すように、左側壁12の前縁部よりもやや後方に位置し、外箱17の内側に接している。その後、第一防露パイプ77は、天井壁14の高さ位置に達すると、右方へ向って折れ曲がり水平となって天井壁14の前端部内に入る。
【0031】
そして、第一防露パイプ77は、天井壁14の前端内部を該天井壁14の前端縁部に沿って右側壁13まで延びる。この場合も、第一防露パイプ77は、天井壁14の前縁部よりもやや後方に位置している。その後、第一防露パイプ77は、下方へ向って折れ曲がり、垂直となって右側壁13の前端部内に入る。そして、第一防露パイプ77は、右側壁13の前端部内を該右側壁13の前端縁部に沿って下方へ向って直線的に延びる。このときも、第一防露パイプ77は、左側壁12の場合と同様に、右側壁13の前縁部よりもやや後方に位置し、外箱17の内側に接している。
【0032】
そして、第一防露パイプ77は、底壁15付近に達すると、後方へ向って折れ曲がって水平となり、右側壁13の下端部内を該右側壁13の下端縁部に沿って後方へ延びる。そして、第一防露パイプ77は、右側壁13の下後端部から該右側壁13の外部へ出て、機械室42内へ入る。機械室42内に入った第一防露パイプ77の下流側の端部は、機械室42内において第二防露パイプ78の上流側の端部に接続される。
【0033】
第二防露パイプ78は、右側壁13の下後端部であって第一防露パイプ77よりも下方の位置から、右側壁13の下端内部に入る。そして、第二防露パイプ78は、右側壁13の下端部内を、該右側壁13の下端縁部に沿って第一防露パイプ77に並行して前方へ延びる。その後、第二防露パイプ78は、右側壁13の前端部つまり断熱箱体11の開口111付近であって第一防露パイプ77の前側で上方へ向って折れ曲がる。その後、第二防露パイプ78は、右側壁13の前端内部であって第一防露パイプ77の前側を、該右側壁13の前端縁部に沿って第一防露パイプ77に並行して上方へ延びる。このとき、第二防露パイプ78は、図6に示すように、右側壁13の前端内部の前縁部に位置し、外箱17の内側に接している。なお、図6は左側壁12の横断面を示すものであるが、右側壁13の横断面として見る場合は、左右対称の構成となる。
【0034】
第二防露パイプ78は、上段横枠部材20の高さ位置に達すると、左方へ向って折れ曲がり、水平となって上段横枠部材20の内部に入る。そして、第二防露パイプ78は、上段横枠部材20の内部を左方へ延び、その後、左側壁12の前端部内に入り下方へ向って折れ曲がる。そして、第二防露パイプ78は、左側壁12の前端部内であって第一防露パイプ77の前側を、該左側壁12の前端縁部に沿って下方へ延びる。このときも、第二防露パイプ78は、図6に示すように、左側壁12の前端内部の前縁部に位置し、外箱17の内側に接している。
【0035】
そして、第二防露パイプ78は、中段横枠部材21の高さ位置に達すると、右方へ向って折れ曲がり、中段横枠部材21の内部へ入る。その後、第二防露パイプ78は、中段横枠部材21の内部を右方へ向って延び、右側壁13の手前で折り返し、途中で縦枠部材23の内部を引き回された後、再び左側壁12の前端部内に入る。その後、第二防露パイプ78は、下方へ向って折れ曲がり、該左側壁12の前端部内を下方へ延びる。そして、第二防露パイプ78は、下段横枠部材22の高さ位置に達すると、右方へ向って折れ曲がり、下段横枠部材22の内部へ入る。その後、第二防露パイプ78は、下段横枠部材22の
内部を右方へ向って延び、右側壁13の手前で折り返した後、下段横枠部材22の内部を左方へ向って延び、再び左側壁12の前端部内に入る。
【0036】
その後、第二防露パイプ78は、下方へ向って折れ曲がり、該左側壁12の前端縁部に沿って下方へ延びる。そして、第二防露パイプ78は、底壁15付近に達すると、右方へ向って折れ曲がり、底壁15の前端部内に入る。その後、第二防露パイプ78は、底壁15の前端部内を右方へ向って延び、右側壁13の手前で折り返した後、底壁15の前端部内を左方へ向って延び、再び左側壁12の前端部内に入る。そして、第二防露パイプ78は、左側壁12の下端部内であって第一防露パイプ77の下側を、該左側壁12の下端縁部に沿って第一防露パイプ77に並行して後方へ延びる。その後、第二防露パイプ78は、左側壁12の下後端部から該左側壁12の外部へ出て、機械室42内へ入る。機械室42内に入った第二防露パイプ78は、下流側の端部が、機械室42内においてドライヤ79の上流側に接続される。
【0037】
これによれば、各貯蔵室30、31、32、33、34の出入口301、311、321、331、341の周囲には、少なくとも第一防露パイプ77又は第二防露パイプ78のいずれかが設けられている。このため、各出入口301、311、321、331、341の周囲は、第一防露パイプ77および第二防露パイプ78によって露点温度以上に加温される。これにより、各貯蔵室30、31、32、33、34の内部と外部との温度差によって、各出入口301、311、321、331、341の周囲に露付が生じることを抑制することができる。
【0038】
第一防露パイプ77は、第二防露パイプ78よりも冷媒の流れに対して上流側に設けられているため、第二防露パイプ78に比べて高温になる。この第一防露パイプ77は、枠部材20、21、22、23を通ることなく、断熱箱体11の左側壁12、天井壁14、および右側壁13の前端内部を通って、開口111全体の周囲を囲むようにして設けられている。これに対し、第二防露パイプ78は、第一防露パイプ77よりも冷媒の流れに対して下流側に設けられているため、第一防露パイプ77に比べて低温になる。この第二防露パイプ78は、左側壁12と右側壁13と底壁15との前端内部、および枠部材20、21、22、23の内部を通っている。
【0039】
これにより、第二防露パイプ78は、冷凍温度帯の各貯蔵室の出入口、すなわち製氷室32の出入口321、上段冷凍室33の出入口331、および下段冷凍室34の出入口341のそれぞれの周囲を囲んでいる。さらに、第二防露パイプ78は、冷蔵温度帯の貯蔵室のうち野菜室31の出入口311の周囲も囲んでいる。そして、第二防露パイプ78は、左右側壁12、13の前端内部を通る部分のうち、少なくとも冷凍温度帯の各貯蔵室32、33、45の側方を通る部分が、第一防露パイプ77の前側に位置し該第一防露パイプ77と並行するように設けられている。本実施形態の場合、第二防露パイプ78は、左右側壁12、13の前端内部を通り上下方向へ延びる部分の全てが、第一防露パイプ77の前側に位置し該第一防露パイプ77と並行するように設けられている。
【0040】
これによれば、外部からの熱流入の影響を受けやすい冷凍温度帯の貯蔵室32、33、34の各出入口321、331、341の周囲は、第一防露パイプ77よりも低温の第二防露パイプ78によって囲まれている。このため、第二防露パイプ78から冷凍温度帯の貯蔵室32、33、34内に流入する熱を低減させることができる。これにより、防露パイプからの熱流入による冷凍温度帯の各貯蔵室32、33、34の温度上昇を抑制して冷却に要する消費電力を低減させることができる。その結果、冷蔵庫10は、高い省エネ効果を得ることができる。
【0041】
また、冷凍温度帯の貯蔵室32、33、34の出入口321、331、341の周囲において、中段横枠部材21および下段横枠部材22の内部には、第二防露パイプ78が上下方向に二重となるように設けられている。そして、縦枠部材23の内部には、第二防露パイプ78が左右方向に二重となるように設けられている。さらに、冷凍温度帯の貯蔵室32、33、34の出入口321、331、341の周囲において、左右側壁12、13の前端部内には、第一防露パイプ77および第二防露パイプ78が前後方向に重なるように設けられている。
【0042】
これによれば、比較的低温の第二防露パイプ78であっても、各出入口321、331、341の周囲を十分に温めることができるため、より効果的に露付を抑制することができる。そして、各出入口321、331、341の周囲は、高温の一本すなわち一重の防露パイプで構成した場合と異なり、その一本の防露パイプの周囲のみが局所的に高温に加熱されることはない。そのため、各出入口321、331、341の周囲が比較低温度で均一に温められることから、貯蔵室32、33、34への熱の流入を低減しつつ、さらに効果的に露付を抑制することができる。
【0043】
また、第一防露パイプ77は、左側壁12側から右側壁13側へ冷媒が流れるように配置されている。つまり、第一防露パイプ77は、上流側である左側壁12側が、下流側である右側壁13側に比べて高温となるように配置されている。一方、第二防露パイプ78は、右側壁13側から左側壁12側へ冷媒が流れるように配置されている。つまり、第二防露パイプ78は、上流側である右側壁13側が、下流側である左側壁12側に比べて高温となるように配置されている。このように、第一防露パイプ77と第二防露パイプ78とを流れる冷媒は、左右側壁12、13において逆向きとなる。これによれば、左右側壁12、13の前端部の温度を偏らせることなく平均的なものとすることができる。そのため、各出入口321、331、341の周囲の露付をより均一的に抑制することができる。
【0044】
そして、枠部材20、21、22、23の内部を通らない第一防露パイプ77は、比較的安価な鉄製の管で構成されている。一方、枠部材20、21、22、23の内部を通る第二防露パイプ78は、耐食性や熱伝導性に優れた銅製の管で構成されている。つまり、水などがかかるおそれが比較的低い第一防露パイプ77を、安価な材料で構成し、水などがかかるおそれが比較的高い第二防露パイプ78を、高価ではあるが耐食性や熱伝導性などの機能性に優れた材料で構成している。これによれば、第一防露パイプ77および第二防露パイプ78全体として、耐食性や熱伝導性などの必要な機能を確保しつつ、コスト削減を図ることができる。なお、鉄製の第一防露パイプ77は、メッキや塗装などによって耐食性などの機能を付加してもよい。」

「【0052】
以上説明した実施形態の構成によれば、冷蔵庫は、第一防露パイプと第二防露パイプとを備えている。第一防露パイプは、枠部材の内部を通ることなく左右側壁および天井壁の前端内部を通って断熱箱体の開口全体を囲むようにして設けられている。第二防露パイプは、冷媒の流れに対して第一防露パイプの下流側に設けられている。第二防露パイプは、枠部材の内部および左右側壁の前端内部を通り、冷凍温度帯の貯蔵室の出入口の周囲を囲んでいる。そして、第二防露パイプは、左右側壁の前端内部を通る部分のうち冷凍温度帯の貯蔵室の側方を通る部分が第一防露パイプの前側にあって第一防露パイプと並行するように設けられている。
【0053】
これによれば、高温の冷媒が流れる防露パイプによって開口周囲の露付を抑制するものにおいて、防露パイプから貯蔵室内に流入する熱を低減させることができる。これにより、貯蔵室内の温度上昇を抑制して冷却に要する消費電力を低減させることができ、その結果、省エネ効果を向上させることができる。」





2 上記1から認められること
(1)上記1によれば、引用文献には、冷蔵庫10が記載されている。

(2)請求項1、段落0009?0016並びに図1及び2の記載によれば、冷蔵庫10は、前面と、前記前面に左側壁12、右側壁13、天井壁14及び底壁15によって囲まれた開口111が形成され、前記開口111を上段横枠部材20及び中段横枠部材21で仕切って、左側壁12の前端部、右側壁13の前端部、上段横枠部材20及び中段横枠部材21に囲まれて形成された出入口311を有する野菜室31と、前記野菜室よりも室内の設定温度が低く、かつ前記開口111を下段横枠部材22で仕切って、前記左側壁12の前端部、前記右側壁13の前端部、底壁15の前端部及び前記下段横枠部材22に囲まれて形成された出入口341を有する下段冷凍室34とを含む断熱箱体11を備えることが認められる。

(3)請求項1、段落0017?0028及び0052並びに図3の記載によれば、冷蔵庫10は、圧縮機61、凝縮器62、第一防露パイプ77、第二防露パイプ78、ドライヤ79、三方弁65、キャピラリチューブ66及び冷蔵用冷却器63の順、又は、前記圧縮機61、前記凝縮器62、前記第一防露パイプ77、前記第二防露パイプ78、前記ドライヤ79、前記三方弁65、キャピラリチューブ68及び冷凍用冷却器64の順に冷媒が流れるように構成された冷凍サイクル60を備えることが認められる。

(4)請求項1、段落0030?0043(特に、段落0037及び0040)並びに図4及び5の記載によれば、野菜室31の出入口311及び下部冷凍室34の出入口341の周囲には、第二防露パイプ78が設けられ、下部冷凍室34の出入口341の周囲は、第二防露パイプ78によって囲まれていることが認められる。

(5)段落0030及び0036並びに図1、4及び5の記載によれば、第一防露パイプは、冷蔵庫10の背面下端部に形成された機械室42内に上流側の端部があり、その後、前記左側壁12の下後端部から前記左側壁12の下端内部に入り、前記左側壁12の下端部内を前記左側壁12の下端縁部に沿って前方へ延び、その後、前記左側壁12の前端部つまり前記断熱箱体11の前記開口111付近で上方へ向って折れ曲がり、そして、前記左側壁12の前端内部を前記左側壁12の前端縁部に沿って上方へ向って直線的に延びており、第二防露パイプ78は、前記底壁15の前端部内を左方へ向って延び、前記左側壁12の前端部内に入って、後方に向かって折れ曲がり、そして、前記左側壁12の下端部内であって前記第一防露パイプ77の下側を、前記左側壁12の下端縁部に沿って前記第一防露パイプ77に並行して後方へ延び、その後、前記左側壁12の下後端部から前記左側壁12の外部へ出て、前記機械室42内へ入り、前記機械室42内に入った下流側の端部が、前記機械室42内において前記ドライヤ79の上流側に接続されていることが認められる。

3 引用発明
上記1及び2を総合すると、引用文献には、次の事項からなる発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。
「前面と、前記前面に左側壁12、右側壁13、天井壁14及び底壁15によって囲まれた開口111が形成され、前記開口111を上段横枠部材20及び中段横枠部材21で仕切って、左側壁12の前端部、右側壁13の前端部、上段横枠部材20及び中段横枠部材21に囲まれて形成された出入口311を有する野菜室31と、前記野菜室よりも室内の設定温度が低く、かつ前記開口111を下段横枠部材22で仕切って、前記左側壁12の前端部、前記右側壁13の前端部、底壁15の前端部及び前記下段横枠部材22に囲まれて形成された出入口341を有する下段冷凍室34とを含む断熱箱体11と、
圧縮機61、凝縮器62、第一防露パイプ77、第二防露パイプ78、ドライヤ79、三方弁65、キャピラリチューブ66及び冷蔵用冷却器63の順、又は、前記圧縮機61、前記凝縮器62、前記第一防露パイプ77、前記第二防露パイプ78、前記ドライヤ79、前記三方弁65、キャピラリチューブ68及び冷凍用冷却器64の順に冷媒が流れるように構成された冷凍サイクル60とを備え、
前記野菜室31の前記出入口311及び前記下部冷凍室34の前記出入口341の周囲には、前記第二防露パイプ78が設けられ、前記下部冷凍室34の前記出入口341の周囲は、前記第二防露パイプ78によって囲まれており、
前記第一防露パイプ77は、背面下端部に形成された機械室42内に上流側の端部があり、その後、前記左側壁12の下後端部から前記左側壁12の下端内部に入り、前記左側壁12の下端部内を前記左側壁12の下端縁部に沿って前方へ延び、その後、前記左側壁12の前端部つまり前記断熱箱体11の前記開口111付近で上方へ向って折れ曲がり、そして、前記左側壁12の前端内部を前記左側壁12の前端縁部に沿って上方へ向って直線的に延びており、
前記第二防露パイプ78は、前記底壁15の前端部内を左方へ向って延び、前記左側壁12の前端部内に入って、後方へ向かって折れ曲がり、そして、前記左側壁12の下端部内であって前記第一防露パイプ77の下側を、前記左側壁12の下端縁部に沿って前記第一防露パイプ77に並行して後方へ延び、その後、前記左側壁12の下後端部から前記左側壁12の外部へ出て、前記機械室42内へ入り、前記機械室42内に入った下流側の端部が、前記機械室42内において前記ドライヤ79の上流側に接続されている、冷蔵庫10。」

第5 対比
本願発明(以下「前者」ともいう。)と引用発明(以下「後者」ともいう。)とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
・後者の「前面」は、前者の「前面」に相当し、以下同様に、「野菜室31」は「第1貯蔵室」に、「出入口311」は「第1開口」に、「下段冷凍室34」は「第2貯蔵室」に、「出入口341」は「第2開口」に、「圧縮機61」は「圧縮機」に、「凝縮器62」は「凝縮装置」に、「第一防露パイプ77」及び「第二防露パイプ78」(但し、後述する上流側端部と下流側端部の間の部分)は「結露防止パイプ」に、「キャピラリチューブ66」又は「キャピラリチューブ68」は「減圧器」に、「冷蔵用冷却器63」又は「冷凍用冷却器64」は「冷却器」に、「冷凍サイクル60」は「冷凍サイクル」に、「冷蔵庫10」は「冷蔵庫」に、それぞれ相当する。

・後者の「断熱箱体11」は、「前面」と、「出入口311を有する野菜室31」と、「前記野菜室よりも室内の設定温度が低く、かつ」「出入口341を有する下段冷凍室34」とを含むから、前者の「前面と、前記前面に設けられた第1開口を有する第1貯蔵室と、前記第1貯蔵室よりも室内の設定温度が低くかつ前記前面に設けられた第2開口を有する第2貯蔵室とを含む筐体」に相当する。

・後者の「第二防露パイプ78」における、「左側壁12の前端部内に入って、後方へ向かって折れ曲が」る部位から、「ドライヤ79の上流側に接続され」る「下流側の端部」までの部分は、下部冷凍室34の出入口341の露付きを抑制するパイプとして機能せず、接続用のパイプとして機能しているから、前者の「パイプ」に相当する。
そうすると、後者の「圧縮機61、凝縮器62、第一防露パイプ77、第二防露パイプ78、ドライヤ79、三方弁65、キャピラリチューブ66及び冷蔵用冷却器63の順、又は、前記圧縮機61、前記凝縮器62、前記第一防露パイプ77、前記第二防露パイプ78、前記ドライヤ79、前記三方弁65、キャピラリチューブ68及び冷凍用冷却器64の順に冷媒が流れるように構成された冷凍サイクル60」は、前者の「圧縮機、凝縮装置、結露防止パイプ、減圧器、パイプおよび冷却器を有する冷凍サイクル」に相当するものであって、前者の「前記冷凍サイクルは、前記圧縮機、前記凝縮装置、前記結露防止パイプ、前記減圧器および前記冷却器の順に冷媒が流れるように構成されており」に相当する。
また、後者の「冷凍サイクル60」が断熱箱体11に収容されることは自明であり、このことは、前者の「冷凍サイクル」が「前記筐体に収容され」ることに相当する。

・後者の「野菜室31の出入口311」及び「下部冷凍室34の出入口341」は、断熱箱体11の前面側に設けられるものであり、これらの周囲に、第二防露パイプ78が設けられることにより、前面側の断熱箱体11の縁において、野菜室31の出入口311の周囲の少なくとも一部に第二防露パイプ78が設けられることになる。
そうすると、後者の「前記野菜室31の前記出入口311及び前記下部冷凍室34の前記出入口341の周囲には、前記第二防露パイプ78が設けられ、前記下部冷凍室34の前記出入口341の周囲は、前記第二防露パイプ78によって囲まれており」との態様は、前者の「前記結露防止パイプは、前記第1貯蔵室の前記第1開口および前記第2貯蔵室の前記第2開口が設けられた前記前面側の前記筐体の縁において、前記第1開口の周囲の少なくとも一部に配置されており、かつ前記第2開口の周囲を囲むように配置されており」との態様に相当する。

・後者の「前記第一防露パイプ77は、背面下端部に形成された機械室42内に上流側の端部があり、その後、前記左側壁12の下後端部から前記左側壁12の下端内部に入り、前記左側壁12の下端部内を前記左側壁12の下端縁部に沿って前方へ延び、その後、前記左側壁12の前端部つまり前記断熱箱体11の前記開口111付近で上方へ向って折れ曲がり、そして、前記左側壁12の前端内部を前記左側壁12の前端縁部に沿って上方へ向って直線的に延びており」との態様(以下「態様A」という。)ついて検討する。
後者の「第一防露パイプ77」において、左側壁12の下端部内を左側壁12の下端縁部に沿って前方へ延び、その後、左側壁12の前端部つまり断熱箱体11の開口111付近で上方へ向って折れ曲がる部位が、開口周囲の露付きを抑制する機能を奏する部分の始点となるものといえるから、当該第一防露パイプ77の上方へ向かって折れ曲がる部位が、前者の「前記結露防止パイプの前記冷媒の流れの上流側の端部」に相当する。
そして、後者における第一防露パイプ77の上方へ向かって折れ曲がる部位は、左側壁12の前端部かつ下端部に位置する。当該左側壁12の前端部かつ下端部は、下部冷凍室34の出入口341を形成する部位の一部であるから、後者の態様Aは、前者の「前記筐体の前記縁に配置された前記結露防止パイプの前記冷媒の流れの上流側の端部は、前記第2開口の周囲の一部に配置されており」との態様に相当する。

・後者の「前記第二防露パイプ78は、前記底壁15の前端部内を左方へ向って延び、前記左側壁12の前端部内に入って、後方へ向かって折れ曲がり、そして、前記左側壁12の下端部内であって前記第一防露パイプ77の下側を、前記左側壁12の下端縁部に沿って前記第一防露パイプ77に並行して後方へ延び、その後、前記左側壁12の下後端部から前記左側壁12の外部へ出て、前記機械室42内へ入り、前記機械室42内に入った下流側の端部が、前記機械室42内において前記ドライヤ79の上流側に接続されている」との態様(以下「態様B」という。)について検討する。
後者の「第二防露パイプ78」において、左側壁12の前端部内に入って、後方へ向かって折れ曲がる部位から、ドライヤ79の上流側に接続される下流側の端部までの部分(以下「接続部分」という。)は、下部冷凍室34の出入口341の露付きを抑制するパイプとして機能せず、接続用のパイプとして機能しており、前者の「パイプ」に相当することは上述したとおりであるところ、上記第二防露パイプ78の後方へ向かって折れ曲がる部位が、前者の「前記結露防止パイプの前記冷媒の流れの下流側の端部」に相当する。
そして、後者における第二防露パイプ78の後方へ向かって折れ曲がる部位は、左側壁12の前端部かつ下端部に位置する。当該左側壁12の前端部かつ下端部は、下部冷凍室34の出入口341を形成する部位の一部であるから、後者の態様Bは、前者の「前記筐体の前記縁に配置された前記結露防止パイプの前記冷媒の流れの下流側の端部は、前記第2開口の周囲の一部に配置されており」との態様に相当する。
また、後者の「底壁15」、「左側壁12の下端部」及び「右側壁13」の下端部が、前者の「筐体」が有する「底部」に相当するものといえるから、後者の態様Bは、前者の「前記筐体の前記縁に配置された前記結露防止パイプの前記冷媒の流れの下流側の端部は、前記底部に配置されており」との態様に相当する。
さらに、後者における第二防露パイプ78の「接続部分」は、左側壁12の下端部内であって第一防露パイプ77の下側を、左側壁12の下端縁部に沿って前記第一防露パイプ77に並行して後方へ延びるから、後者の態様Bは、前者の「前記パイプは前記底部に沿って配置されている」との態様に相当する。

・後者における第一防露パイプ77の上方へ向かって折れ曲がる部位及び第二防露パイプ78の後方へ向かって折れ曲がる部位は、いずれも左側壁12の前端部かつ下端部であって、下部冷凍室34の出入口341の周囲に位置するから、後者の態様A及び態様Bは、前者の「前記上流側の端部および前記下流側の端部は、前記筐体の同じ側面側に配置されており」との態様に相当する。

したがって、本願発明と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
[一致点]
「前面と、前記前面に設けられた第1開口を有する第1貯蔵室と、前記第1貯蔵室よりも室内の設定温度が低くかつ前記前面に設けられた第2開口を有する第2貯蔵室とを含む筐体と、
前記筐体に収容され、かつ圧縮機、凝縮装置、結露防止パイプ、減圧器、パイプおよび冷却器を有する冷凍サイクルとを備え、
前記冷凍サイクルは、前記圧縮機、前記凝縮装置、前記結露防止パイプ、前記減圧器および前記冷却器の順に冷媒が流れるように構成されており、
前記結露防止パイプは、前記第1貯蔵室の前記第1開口および前記第2貯蔵室の前記第2開口が設けられた前記前面側の前記筐体の縁において、前記第1開口の周囲の少なくとも一部に配置されており、かつ前記第2開口の周囲を囲むように配置されており、
前記筐体の前記縁に配置された前記結露防止パイプの前記冷媒の流れの下流側の端部は、前記第2開口の周囲の一部に配置されており、
前記筐体の前記縁に配置された前記結露防止パイプの前記冷媒の流れの上流側の端部は、前記第2開口の周囲の一部に配置されており、
前記筐体は底部を有し、
前記筐体の前記縁に配置された前記結露防止パイプの前記冷媒の流れの下流側の端部は、前記底部に配置されており、
前記上流側の端部および前記下流側の端部は、前記筐体の同じ側面側に配置されており、
前記パイプは前記底部に沿って配置されている、冷蔵庫。」

[相違点1]
本願発明では、「前記パイプは、前記減圧器と前記下流側の端部とを接続し」ているのに対して、引用発明では、「第二防露パイプ78」の「下流側の端部」が、「前記ドライヤ79の上流側に接続されている」点。

[相違点2]
本願発明では、「前記減圧器は前記底部に配置されて」いるのに対して、引用発明では、キャピラリチューブ66及びキャピラリチューブ68の配置は不明である点。

第6 判断
上記相違点について検討する。
[相違点1について]
引用発明の態様Bは、第二防露パイプ78の接続部分(上記第5で述べたとおり、本願発明の「パイプ」に相当。)が、ドライヤ79と三方弁65を介してはいるものの、キャピラリチューブ66又はキャピラリチューブ68と、上記第二防露パイプ78の後方へ向かって折れ曲がる部位とを接続しているから、本願発明の「前記パイプは、前記減圧器と前記下流側の端部とを接続し」との態様に相当する構成を有しているといえる。
そうすると、上記相違点1は実質的な相違点ではない。
仮に実質的な相違点であるとしても、ドライヤ79や三方弁65は冷凍サイクルにおいて必須とされるものではないから、これらを省いて上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

[相違点2について]
冷蔵庫において、背面下部の機械室に減圧器を設置することは、本願の出願前に周知の技術(例えば、特開平11-211320号公報(特に、段落0022?0029並びに図1及び2)及び特開平10-253225号公報(特に、段落0033?0035及び図1)を参照。)である。
そして、引用文献の図1を参照すると、引用発明の冷凍用冷却器64は、機械室42と近接した位置に配置されており、上記冷凍用冷却器64に接続されるキャピラリチューブ68は、上記冷凍用冷却器64近傍の機械室42に配置するのが合理的である。
したがって、引用発明において、周知技術を採用し、キャピラリチューブ68を背面下端部に形成された機械室42に配置し、上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本願発明の全体構成により奏される作用効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものである。
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について判断するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-01-08 
結審通知日 2020-01-14 
審決日 2020-01-27 
出願番号 特願2016-18819(P2016-18819)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F25D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊藤 紀史  
特許庁審判長 紀本 孝
特許庁審判官 平城 俊雅
槙原 進
発明の名称 冷蔵庫  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  

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