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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G09G
管理番号 1360886
審判番号 不服2019-4799  
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-04-10 
確定日 2020-03-13 
事件の表示 特願2016-253701号「表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年4月20日出願公開、特開2017-76148号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年5月29日に出願された日本語特許出願(特願2015-521415号:優先権主張 平成25年6月3日)の一部を平成28年12月27日に新たな特許出願(特願2016-253701号)としたものであって、平成29年12月25日付けの拒絶理由通知に対して平成30年2月23日に意見書とともに、特許請求の範囲及び明細書について補正する手続補正書が提出され、同年7月24日付けの拒絶理由通知に対して同年8月31日に意見書とともに、明細書について補正する手続補正書が提出されたところ、平成31年1月31日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ(原査定の謄本の送達日:同年2月5日)、これに対して同年4月10日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に、明細書について補正する手続補正書が提出されたものである。


第2 特許請求の範囲の記載
本願の特許請求の範囲の記載は、次のとおりのものであると認められる(下線は当審が付した。)。

「【請求項1】
第1の絵柄が透明な領域に囲まれて描画された第1のレイヤと、半透明の画像が描画された第2のレイヤと、第2の絵柄が描画された第3のレイヤと、をデータとして有し、前記第2のレイヤが前記第1のレイヤの背面に仮想的に配置され、前記第3のレイヤが前記第2のレイヤの背面に仮想的に配置され、前記第2の絵柄が表示される領域に前記第1の絵柄が重ねられるように、前記第1の絵柄及び前記第2の絵柄を表示する表示部と、
前記表示部に光を照射する光源と、
を備え、
前記光源の照明レベルを上げることにより前記第1の絵柄の輝度を上げる場合、前記第1の絵柄の輝度が前記第2の絵柄の輝度より高い状態を維持しながら、前記照明レベルの増加分に見合う分だけ前記半透明の画像の濃淡が濃くされることで前記第2の絵柄の輝度が変わらないように調節される、
表示装置。
【請求項2】
前記第1の絵柄は、前記第1のレイヤにおいて移動可能に描画され、
前記表示部は、前記第1の絵柄を移動させた後に、前記第1の絵柄が表示されていた領域に他の表示対象を表示する、
請求項1に記載の表示装置。」


第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の概要は次のとおりである。

本願の請求項1及び2に係る発明は、
「前記光源の照明レベルを上げることにより前記第1の絵柄の輝度を上げる場合、前記第1の絵柄の輝度が前記第2の絵柄の輝度より高い状態を維持しながら、前記照明レベルの増加分に見合う分だけ前記半透明の画像の濃淡が濃くされることで前記第2の絵柄の輝度が変わらないように調節される、」
という発明特定事項を含むところ、発明が解決しようとする課題及び発明の詳細な説明に開示された実施形態からみて、技術常識に照らしても、上記発明特定事項により特定される発明の範囲にまで発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化することができない。
したがって、上記発明特定事項を含む上記請求項に係る発明は、発明の詳細な説明において「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えて特許を請求するものであるから、発明の詳細な説明に記載されたものではない。
よって、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。


第4 発明の詳細な説明の記載
本願の発明の詳細な説明には、以下のとおりの記載がある(下線は当審が付した。)。

「【背景技術】
【0002】
従来、車両用表示装置として、液晶表示器等の表示デバイスを用いて、車速、燃料残量、過給圧力値等のメータを画面に表示するグラフィックメータが知られている。また、車用に異常がある場合に点灯するテルテール(ウォーニングランプ)等もグラフィックメータの画面に表示される。
【0003】
このように、液晶表示器等を表示デバイスとしているグラフィックメータでは、周囲が明るくなると、グラフィックメータの画面が見づらくなるので、輝度を上げる必要があった。一方、トンネル内を通過する時等、周囲が暗くなると、グラフィックメータの画面が眩しくなるので、輝度を下げる必要が生じた。
【0004】
グラフィックメータの画面の輝度は、バックライトの照明レベルを変えることで調節される。例えば、バックライトの照明レベルを最小値0、最大値15とし、照明レベルが最大の時に液晶表示器の輝度値を100%としていた(図5(B)参照)。
【0005】
この種の先行技術として、特許文献1に記載の車両用表示装置が知られている。この車両用表示装置は、電球をバックライトとして、表示素子及びカラーフィルタを介して受光性表示素子に描かれた絵柄を表示する際、表示素子に印加する電圧を調整することにより、表示素子の透過率を変化させる。この場合、カラーフィルタはRGBの各色を選択的に透過させるものであり、カラーフィルタには、絵柄が描かれてはいない。
【0006】
また、特許文献2には、第1の光制御要素と、第2の光制御要素と、これらの間に介在するディスプレイ要素とを備え、視野角の制御が可能なディスプレイ装置が示されている。
【0007】
また、特許文献3には、メータ画像が配置された主画像レイヤとは別の補助画像レイヤに配置され、背景が黒い領域で囲まれるウォーニング画像をメータ画像とともに表示するグラフィックメータが示されている。」

「【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の表示装置では、画面に表示された特定の絵柄のみの明るさを調節することは困難であった。即ち、絵柄毎に濃淡を変えることはできなかった。このため、例えば、絵柄がグラフィックメータの画面に表示されるテルテールである場合、トンネル内を通過する時、周囲が暗くなって輝度を下げる際、バックライトの照明レベルが最小になると、テルテールの輝度が法規で定められた値を下回ることも予想された。このような場合、画面全体を明るくすることでしか、テルテールの輝度を調節することはできなかった。また、特許文献3のように、特定の絵柄の輝度を調節するために当該特定の絵柄の周囲を黒い領域で覆う場合、特定の絵柄を他の絵柄の近傍に配置すると、黒い領域が他の絵柄を塗りつぶしてしまうという問題があった。
【0010】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、光源から照射される光の光量を下げて画面全体を暗くしても特定の絵柄を明るくすることができるとともに、当該特定の絵柄に対する配置の自由度を高めることができる表示装置を提供することにある。」

「【0014】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。」

「【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態における表示装置について図面を用いて説明する。本実施形態の表示装置は、車両に搭載され、各種の計器を含むグラフィックメータに適用される。
【0017】
図1は、本実施形態の表示装置100のハードウェアの構成例を示すブロック図である。
図1に示すように、表示装置100は、マイクロコンピュータ(CPU:Central Processing Unit)101、読み出し専用メモリ(EEPROM:Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)102、インタフェース103、104、116、CPU電源部105、グラフィックコントローラ106、フレームメモリ107、Xドライバ108、Yドライバ109、LCD(Liquid Crystal Display)電源部110、及び液晶表示器(TFT-LCD:Thin Film Transistor Liquid Crystal Display)111等を備えている。
【0018】?【0027】
(省略)
【0028】
図2は液晶表示器111のグラフィック表示画面120を示す図である。グラフィック表示画面120は、表示される領域がそれぞれ異なる、第1の表示領域31、第2の表示領域32、及び第3の表示領域33を有している。
【0029】
第1の表示領域31は、現在の車両の走行速度を示す速度計21が表示される領域である。第1の表示領域31には、速度計21を構成する速度スケール35と指針36とが表示される。指針36は、速度スケール35上の一部を指し示すことで、現在の車両の走行速度を指示する。また、速度計21の外形を表すリング37の内側の下方には、車両に異常がある場合に点灯するテルテール(ウォーニングランプ)51の画像が表示される。
【0030】
第2の表示領域32は、現在の過給圧力値(呈示量)を示すブースト計22が表示される領域である。過給圧力値は予め設定された最大値に対する割合(パーセント)として呈示される。
【0031】
第3の表示領域33は、現在の燃料残量を示す燃料計23が表示される領域である。第3の表示領域33には、燃料スケール41とバー40とが表示される。バー40は、燃料スケール41上の一部を指し示すことで、現在の燃料残量を表す。
【0032】?【0033】
(省略)
【0034】
グラフィックコントローラ106は、マイクロコンピュータ101から入力される様々な命令に従って、様々なグラフィック要素を液晶表示器111の画面上に表示する。グラフィックコントローラ106の内部には、フレームメモリ107が設けられている。このフレームメモリ107には、画像が描画された3つのレイヤである、レイヤA、レイヤB及びレイヤCがデータとして用意されている。
【0035】
本実施形態では、レイヤAには、明るさを変化させる第1の絵柄として、メータ機種毎に異なる絵柄、ここではテルテール51(図2参照)の画像が透明な背景に、つまり透明な領域53に囲まれて描画される。レイヤCには、明るさを変化させない第2の絵柄として、全機種に共通する絵柄、ここでは速度計21、ブースト計22及び燃料計23の画像が描画される。
【0036】
また、レイヤBには、半透明の画像(マスク画像)が描画される。半透明の画像は例えば灰色の画像である。レイヤBの背面に位置するレイヤCを視たとき、該レイヤCに描画された第2の絵柄の輝度は、レイヤBによって減衰され描画される。なお、レイヤBに描画される半透明の画像は、中間調(ハーフトーンと呼ばれることもある。)で表現されてもよいし、誤差拡散法等による2値のドットパターンで表現されてもよい。
【0037】
各レイヤA、B、Cの画素毎の表示内容を保持するフレームメモリ107に対して、マイクロコンピュータ101又はグラフィックコントローラ106が表示データを書き込み、グラフィックの描画を行う。
【0038】?【0039】
(省略)
【0040】
上記構成を有する表示装置100の表示制御動作を示す。本実施形態の表示装置100はグラフィック表示画面120を生成する。図3はグラフィック表示画面120を生成する際のレイヤのデータ構造を模式的に説明する図である。前述したように、レイヤAのデータには、グラフィック表示画面120に表示される第1の絵柄として、透明な領域53に囲まれたテルテール51の画像が含まれる。また、レイヤCのデータには、グラフィック表示画面120に表示される第2の絵柄として描画された、速度計21、ブースト計22及び燃料計23の画像が含まれる。
【0041】
また、レイヤBのデータは、レイヤCに描画された第2の絵柄の輝度を変更するための、半透明(例えば灰色)の画像65で構成される。即ち、グラフィックコントローラ106は、レイヤBに描画された半透明の画像65の不透明度が濃くなる程、レイヤCに描画された第2の絵柄の輝度が下がるような描画処理を行う。本実施形態では、レイヤBの全領域に、バックライト115の照明レベルを増加させても、速度計21、ブースト計22及び燃料計23の画像の輝度値が変わらないように、バックライト115の照明レベルの増加分に見合う分だけレイヤBの不透明度が濃く設定された灰色の画像が描画される。
【0042】
これらのレイヤA、レイヤB及びレイヤCを表示装置100に表示する際、レイヤA、レイヤB及びレイヤCは、この順に仮想的に配置された状態で重畳して表示される。このため、レイヤCは、レイヤBによって全面が覆われた状態で表示される。
【0043】
図4は表示制御手順を示すフローチャートである。この制御プログラムは、読み出し専用メモリ102に記憶されており、マイクロコンピュータ(CPU)101によって実行される。
【0044】
CPU101は、インタフェース116を介して、グラフィック表示画面120の明るさを変更するために設定された照明レベルを入力する(ステップS1)。本実施形態では、グラフィック表示画面120の照明レベルは、最小値0?最大値15までの範囲で段階的に設定される。
【0045】
CPU101は、EEPROM102に保持されているテーブルを参照し、バックライト115の照明レベルに対応するグラフィック表示画面120の輝度値を決定する(ステップS2)。
【0046】
図5(A)及び図5(B)はバックライト115の照明レベルに対応するグラフィック表示画面120に描画された絵柄の輝度値を示すグラフである。図5(A)に示すグラフは、EEPROM102に保持されているテーブルの内容を表す。輝度値は、照明レベルが最大値15である場合の輝度値を100%とする相対値で表されている。
【0047】
図5(A)に示すように、テルテール51の画像の輝度値81は、その他の画像の輝度値82と比べ、照明レベルが下がっても、あまり下がらないように設定されている。(ここでは、その下限値が40%に設定されている。)。言い換えれば、その他の画像の輝度値82は、その他の画像から出射される光がレイヤBによって減衰されることを表現するため、テルテール51の画像の輝度値81よりも下がり易く設定されている。従って、照明レベルが下がるほど、両者の差は広がっている。一方、従来では、図5(B)に示すように、照明レベルを変えた場合、テルテールの画像の輝度値とその他の画像の輝度値は同じように変化する。
【0048】
CPU101は、ステップS2で決定された、照明レベルに対応する輝度値になるように、レイヤBに描画される灰色の画像の濃淡を変更する(ステップS3)。即ち、CPU101は、テルテール51が輝度値81となり、その他の画像が輝度値82となるような、濃淡を持つ灰色の画像をレイヤBの全領域に描画する。これにより、照明レベルを増やして、レイヤAに描画されたテルテール51の画像の輝度を上げる際、レイヤBに描画された灰色の画像によってその他の画像の輝度値82が下げられる。この後、CPU101はステップS1の処理に戻る。
【0049】
このグラフィックメータ100では、例えば車両がトンネル内に入り、急に周囲が暗い環境になると、グラフィック表示画面120は明るくなり過ぎるので、バックライト115の照明レベルが自動もしくは手動で下げられる。
【0050】
従来では、グラフィック表示画面120が眩しくならない程度に、グラフィック表示画面全体の輝度が下がっていた。本実施形態では、テルテール51の輝度は、多少下がるものの、その他の画像の輝度と比べて高くなっている。
【0051】
また、仮に照明レベルが最小値に設定されても、テルテール51の輝度は、法規で定められた下限値を下回らない。この場合、その他のメータ画像(速度計21、ブースト計22、燃料計23)と比べて、テルテール51の画像の輝度は高いので、運転者はテルテール51の画像だけは依然として視認可能である。
【0052】
一方、例えば車両がトンネルを抜け、周囲が明るい環境になると、グラフィック表示画面全体の輝度が下がったままだと見づらくなるので、バックライト115の照明レベルが上げられる。テルテール51の画像及びその他のメータ画像(速度計21、ブースト計22、燃料計23)の輝度はともに上昇し、運転者にとって見易くなる。特に、直射日光が当たる場合、バックライト115の照明レベルは最大値まで上げられる。この場合、テルテール51の画像及びその他のメータ画像(速度計21、ブースト計22、燃料計23)は同じ輝度値で表示される。従って、運転者は、テルテール51の画像をその他のメータ画像と同じ明るさで視認することができる。
【0053】
図6は別のグラフィック表示画面320を示す図である。このグラフィック表示画面320では、テルテール351の画像として、ハイビーム作動等の警告を表す画像が表示されている。また、指針の周囲にスポットライトの像が形成されている。このスポットライトの像は、指針の移動に応じて移動するようになっており、スポットライトの中心が指針に重なるようになっている。
【0054】
図6(A)に示すように、グラフィック表示画面320では、テルテール351の周囲が透明な領域で囲まれている。この場合、指針が低速を表すことに応じてスポットライトの像が画面の下方に移動したとしても、テルテール351の透明な領域がスポットライトの像に重なるだけであり、スポットライトの像に欠けが生じることがない。つまり、テルテール351が、透明な領域に囲まれているので、メータ画像である速度計321が表示された領域(リングの内側の領域)に重ねられるように表示される。そして、背景が透明であるので、テルテール351の画像と、速度計321(特に目盛りを含む速度スケール)の画像とが直接に重ならない限り、テルテール351の画像を速度計321の内側で自由に配置できる。
【0055】
一方、比較例として図6(B)に示すグラフィック表示画面220では、テルテール251の周囲が黒い領域で囲まれている。この場合、指針が低速を表すことに応じてスポットライトの像が画面の下方に移動すると、テルテール251の黒い領域がスポットライトの像に重なってしまう。このため、スポットライトの一部が欠けて表示されることになり、見栄えが悪くなる。
【0056】
従って、本実施形態では、テルテール51の画像及び速度計21であるメータ画像を密に配置することができ、配置の自由度が大きくなるとともに、全体の表示領域を狭くできる。また、背景が邪魔にならないことで、速度計21の見栄えを良くすることができる。即ち、背景が不透明な領域で囲まれるテルテールの画像を速度計の内側に表示した場合、背景が、値0や最大値180付近の速度を指し示す指針の画像と重なると、像の欠けが生じてしまうことが考えられた。この結果、見栄えが悪くなる。
【0057】
図7はテルテール51の画像を移動させた場合のグラフィック表示画面120を示す図である。グラフィック表示画面120において、警告表示、駐車支援システムの表示、運転支援システムの表示等、他の表示対象の表示が行われる場合、速度計21のリング37の内側に表示されていたテルテール51の画像を移動させる。
【0058】
ここでは、テルテール51の画像を速度計21の中心側にずらし、空いたスペースに警報メッセージ55が表示される。この警報メッセージ55は、「車間距離に注意しましょう」といった運転支援システムの表示であり、レイヤCに描画される。
【0059】
このように、テルテール51の画像は透明な領域に囲まれているので、テルテール51の画像が速度計21を構成する速度スケール35やリング37と直接に重ならない限り、任意の位置に移動可能であり、移動の自由度が大きい。また、テルテール51の画像の背景が透明であるので、例えば背景が指針36の画像と重なっても像の欠けが生じることなく、つまり速度計21の表示を邪魔することなく、テルテール51の画像を配置することができ、見栄えを良くすることができる。即ち、背景が不透明な領域で囲まれるテルテールの画像を速度計の内側で移動させようとすると、背景が指針、目盛り、リング等の画像と重なって像の欠けが生じ易く、移動が大きく制限された。
【0060】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限られるものではなく、特許請求の範囲で示した機能、または本実施形態の構成が持つ機能が達成できる構成であればどのようなものであっても適用可能である。
【0061】
例えば、上記実施形態では、グラフィック表示画面のテルテールの画像の輝度を上げる場合、その他の画像の輝度が変わらない場合を示したが、その他の画像の輝度をテルテールの画像の輝度とは異なるように変化させてもよい。これにより、表示形態に更なる変化を持たせることができる。
【0062】
また、上記実施形態では、車両に搭載されたグラフィックメータに適用されたが、各種の機器に搭載された表示装置にも、本発明は適用可能である。
また、本発明は、液晶表示器に限らず、バックライトからの光を受けて画面に描画された画像を表示する表示装置一般に適用可能である。
【0063】
本発明は、描画された絵柄を表示する際、絵柄毎の濃淡を可変とすることでより複雑な表示形態を実現でき、有用である。
【0064】
ここで、上述した本発明に係る表示装置の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]?[2]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 第1の絵柄(51)が透明な領域(53)に囲まれて描画された第1のレイヤ(A)と、半透明の画像(65)が描画された第2のレイヤ(B)と、第2の絵柄(21,22,23)が描画された第3のレイヤ(C)と、をデータとして有し、前記第2のレイヤ(B)が前記第1のレイヤ(A)の背面に仮想的に配置され、前記第3のレイヤ(C)が前記第2のレイヤ(B)の背面に仮想的に配置され、前記第2の絵柄(21,22,23)が表示される領域に前記第1の絵柄(51)が重ねられるように、前記第1の絵柄(51)及び前記第2の絵柄(21,22,23)を表示する表示部(111)と、
前記表示部(111)に光を照射する光源(115)と、
を備え、
前記光源(115)の照明レベルを上げることにより前記第1の絵柄(51)の輝度を上げる場合、前記照明レベルの増加分に見合う分だけ前記半透明の画像(65)の濃淡が濃くされることで前記第2の絵柄(21,22,23)の輝度が変わらないように調節される、
表示装置。
[2] 前記第1の絵柄(51)は、前記第1のレイヤ(A)において移動可能に描画され、
前記表示部(11)は、前記第1の絵柄(51)を移動させた後に、前記第1の絵柄(51)が表示されていた領域に他の表示対象(55)を表示する、
[1]に記載の表示装置。
【0065】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。」

また、本願の図面【図1】?【図5】は以下のとおりである。

「【図1】



「【図2】



「【図3】



「【図4】



「【図5】




第5 当審の判断
1 本願発明の範囲
(1)本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、請求項1の記載からみて、表示部に光を照射する光源の照明レベルを上げることにより第1のレイヤに描画された第1の絵柄の輝度を上げる場合、前記第1の絵柄の輝度が第3のレイヤに描画された第2の絵柄の輝度より高い状態を維持しながら、前記照明レベルの増加分に見合う分だけ第2のレイヤに描画された半透明の画像の濃淡が濃くされることで前記第2の絵柄の輝度が変わらないように調節されることを特徴とするから、光源の照明レベルがどのようなレベルにあるかに関わらず、第1の絵柄の輝度が第2の絵柄の輝度より高い状態を維持しながら、第2の絵柄の輝度は一定の値をとるように半透明の画像の濃淡の濃さを調節することを含むものである。

(2)この点に関し、請求人は、審判請求書において、「本願発明では、光源の照明レベルがどのレベルであっても(最も下げられた場合を含む)、第2の絵柄の輝度は、法規で定められた下限値よりは上の明るさでほぼ一定となっており、第1の絵柄の輝度は、第2の絵柄の輝度よりは高い範囲内で、光源の照明レベルが上がるほど高くなっていく態様を想定しております。」と主張しており、本願発明が、光源の照明レベルがどのようなレベルにあるかに関わらず、第1の絵柄の輝度が第2の絵柄の輝度より高い状態を維持しながら、第2の絵柄の輝度は一定の値をとるように半透明の画像の濃淡の濃さを調節することを含むことは、請求人も認めるところである。


2 本願発明の課題
(1)上記第4で摘記した【発明が解決しようとする課題】の欄には、
「【0009】
しかしながら、従来の表示装置では、画面に表示された特定の絵柄のみの明るさを調節することは困難であった。即ち、絵柄毎に濃淡を変えることはできなかった。このため、例えば、絵柄がグラフィックメータの画面に表示されるテルテールである場合、トンネル内を通過する時、周囲が暗くなって輝度を下げる際、バックライトの照明レベルが最小になると、テルテールの輝度が法規で定められた値を下回ることも予想された。このような場合、画面全体を明るくすることでしか、テルテールの輝度を調節することはできなかった。また、特許文献3のように、特定の絵柄の輝度を調節するために当該特定の絵柄の周囲を黒い領域で覆う場合、特定の絵柄を他の絵柄の近傍に配置すると、黒い領域が他の絵柄を塗りつぶしてしまうという問題があった。
【0010】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、光源から照射される光の光量を下げて画面全体を暗くしても特定の絵柄を明るくすることができるとともに、当該特定の絵柄に対する配置の自由度を高めることができる表示装置を提供することにある。」
との記載があるところ、このうちの「また、特許文献3のように、特定の絵柄の輝度を調節するために当該特定の絵柄の周囲を黒い領域で覆う場合、特定の絵柄を他の絵柄の近傍に配置すると、黒い領域が他の絵柄を塗りつぶしてしまうという問題があった。」という記載、及び、「当該特定の絵柄に対する配置の自由度を高めることができる表示装置を提供する」という記載は、請求項2に係る発明に対応するものであるから、これらの記載は、本願発明の課題を認定するにあたって直接関係はない。

(2)そうすると、本願発明の課題は、
「グラフィックメータの画面において、周囲が暗くなって輝度を下げる際、従来は、照明レベルが最小になると、特定の絵柄(テルテールの絵柄)の輝度が法規で定められた値を下回ることが予想され、画面全体を明るくすることでしか、特定の絵柄(テルテールの絵柄)の輝度を調節することはできなかったところ、このような困難を解消すべく、光源から照射される光の光量を下げて画面全体を暗くしても特定の絵柄(テルテールの絵柄)を明るくできるようにすること」
であると認められる。

(3)上述した本願発明の課題は、「周囲が暗くなって輝度を下げる際」及び「光源から照射される光の光量を下げて画面全体を暗くしても」とあることから、周囲の明暗に応じてグラフィックメータの画面全体の明暗調節をすることを前提としている。
これは、上記第4で摘記した【背景技術】の欄に
「【0003】
このように、液晶表示器等を表示デバイスとしているグラフィックメータでは、周囲が明るくなると、グラフィックメータの画面が見づらくなるので、輝度を上げる必要があった。一方、トンネル内を通過する時等、周囲が暗くなると、グラフィックメータの画面が眩しくなるので、輝度を下げる必要が生じた。」
との記載があることからも裏付けられる。


3 サポート要件の適合性
(1)本願発明と本願発明の課題との関係
ア 上記1(1)において述べたとおり、本願発明は、光源の照明レベルがどのようなレベルにあるかに関わらず、第1の絵柄の輝度が第2の絵柄の輝度より高い状態を維持しながら、第2の絵柄の輝度は一定の値をとるように半透明の画像の濃淡の濃さを調節することを含むから、このことが本願発明の課題とどのように関係するかについて、以下検討する。

イ 光源の照明レベルがどのようなレベルにあるかに関わらず、第1の絵柄の輝度が第2の絵柄の輝度より高い状態を維持しながら、第2の絵柄の輝度は一定の値をとるということを、上記第4において摘記した【発明を実施するための形態】(段落【0016】?【0065】)に開示された内容に照らして検討すると、照明レベルが最小値0から最大値15のうちのいずれのレベル値をとったとしても、テルテール51の画像の輝度値81が、その他のメータ画像(速度計21、ブースト計22、燃料計23)の輝度値より高い状態を維持しながら、その他のメータ画像(速度計21、ブースト計22、燃料計23)の輝度値は一定の値をとること(例えば、照明レベルが最大値15のときのテルテール51の画像の輝度値81を100%とした場合の20%のままで変わらないこと)を意味する。
したがって、その他のメータ画像(速度計21、ブースト計22、燃料計23)の輝度値は、本願の図5(A)を基にして当審が作成した以下のグラフ(以下、「参考グラフ」という。)における「輝度値82’」の実線のようになるといえる。

[参考グラフ(当審作成)]


ウ 上掲した参考グラフによれば、照明レベルが上げられた場合、テルテール51の画像の輝度値81は上昇し、照明レベルが最大値15まで上げられると、その輝度値81は100%になる一方で、その他のメータ画像(速度計21、ブースト計22、燃料計23)の輝度値82’は常に一定の輝度値20%のままであり、照明レベルが最大値15のときは、テルテール51の画像の輝度値81と、その他のメータ画像(速度計21、ブースト計22、燃料計23)の輝度値82’との差は80%になり、両者は大きくかけ離れたものになることが読み取れるから、照明レベルが最大値15のときは、テルテール51の画像は、その他のメータ画像(速度計21、ブースト計22、燃料計23)に比べて、十分明るい状態で視認されることになる。

エ しかしながら、上記第4において摘記した【図2】をみれば明らかなように、テルテール51の画像は、グラフック表示画面120の第1の表示領域31に表示される速度計21の外形を表すリング37の内側の下方に表示されるものであり(段落【0028】?【0029】の記載を参照)、照明レベルが上げられて、テルテール51の画像は、上掲した参考グラフの「輝度値81」の直線のように輝度が上昇し、その他のメータ画像(速度計21、ブースト計22、燃料計23)に比べて、十分明るい状態で視認されることになったとしても、その他のメータ画像(速度計21、ブースト計22、燃料計23)は、上掲した参考グラフの「輝度値82’」の直線のように輝度は一定で暗いままであるから、これらのメータ画像の大きさや配置を考慮すると、グラフィック表示画面120全体が明るくなるとは認められない。

オ そうすると、本願発明においては、光源の照明レベルをどのような値に設定しても、本願発明の課題の前提となる、グラフィックメータ(「表示部」)の画面全体の明暗が調節されることはないから、かかる前提を欠く本願発明が、本願発明の課題を解決できるとはいえない。

カ また、【発明が解決しようとする課題】の欄の記載(【0009】?【0010】)を除いた発明の詳細な説明の記載において、技術水準を考慮しても、上記2で認定した本願発明の課題とは異なる課題を読み取ることはできない。

キ したがって、本願発明は、技術常識に照らしても、発明の詳細な説明の記載により当業者が本願発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえず、本願の特許請求の範囲の記載は、いわゆるサポート要件を満たさない。


(2)請求人の主張
ア 請求人は、審判請求書において、
「(3-1)本願発明の説明
(中略)
本願発明が想到された経緯について、以下、簡単にご説明いたします。
車両の車室内にある表示部によっては、周囲が明るい状況(例えば、トンネルの外)では、画像に表示された複数の絵柄のうち特定の絵柄のみは十分に明るく、且つ、特定の絵柄以外のその他の絵柄は暗めに抑え(法規で定められた下限値よりは上の明るさ)、周囲が暗い状況(例えば、トンネルの中)では、その他の絵柄は暗めのままに維持し(法規で定められた下限値よりは上の明るさ)、且つ、特定の絵柄を暗くしたい(ただし、その他の絵柄よりは明るく)、という要求があります。このような要求を満足するために、本願発明が想到されました。
つまり、本願発明は、画面に表示された特定の絵柄のみの明るさを調節することができる表示装置を提供することを、発明が解決しようとする課題(目的)とし、その解決手段として、第1の絵柄の輝度を上げる(下げる)場合に、第1の絵柄の輝度が第2の絵柄の輝度より高い状態を維持しながら、照明レベルの増加(減少)分に見合う分だけ半透明の画像の濃淡が濃く(淡く)されることで第2の絵柄の輝度が変わらないように調節する構成を採用して、画面に表示された特定の絵柄(即ち、第1の絵柄)のみの明るさを調節するものであります。」(下線は当審が付した。)
と主張している。

イ しかしながら、請求人の主張する発明の解決しようと課題(画面に表示された特定の絵柄のみの明るさを調節することができる表示装置を提供すること)は、上記「2 本願発明の課題」において検討した内容を踏まえると、発明の詳細な説明の記載から離れたところのものであり、かかる課題が発明の詳細な説明から読み取れることについて何ら立証されてもいないから、上記アの主張を採用することはできない。

ウ この点に関し、審判請求書では、
「(3-3)拒絶理由についての反論
(中略)
本願発明の課題及び解決内容は、上記「(3-1)本願発明の説明」の欄に記載したものです。このような課題及び解決内容は、出願当初の本願明細書には逐語的には記載されておりませんが、本願明細書の段落0035,0041,0061に基づき、明細書及び図面全体を通じて把握できるものであると確信いたします。(以下省略)」としており、上記段落【0035】、【0041】及び【0061】の記載を根拠として、請求人の主張するような課題を把握することができる旨主張している。

エ これらの段落には、「明るさを変化させない第2の絵柄」(【0035】)、「バックライト115の照明レベルを増加させても、速度計21、ブースト計22及び燃料計23の画像の輝度値が変わらない」(【0041】)、「その他の画像の輝度が変わらない」(【0061】)との記載があることから、これらの記載だけを部分的に抽出すれば、請求人の主張するような発明の課題及び解決手段が一見すると開示されているようにも思われる。

オ しかしながら、【発明を実施するための形態】の欄の記載(段落【0016】?【0065】)を通読しても、発明の実施形態として開示されているのは、図5(A)に対応するような、照明レベルが最大値まで上げられると、テルテール51の画像及びその他のメータ画像が同じ輝度値で表示される一つの実施形態のみであって、他の実施形態も含む旨の具体的記載は見当たらないし、段落【0035】、【0041】及び【0061】の記載が別の実施形態に係る説明である旨の記載も見当たらないから、上記段落【0016】?【0065】の記載には、複数の実施形態が開示されているとは認められない。
なお、段落【0053】?【0059】の記載は、テルテールの画像の配置位置を移動させることに関するものであり、請求項2に係る発明に対応するものであるから、これらの記載は、本願発明(請求項1に係る発明)と直接関係はなく、それらを除いて上述した実施形態の認定を行っている。

カ そうすると、段落【0035】、【0041】及び【0061】の記載は、発明の詳細な説明に開示された唯一の実施形態から離れて理解するのは適切ではなく、先に認定した本願発明の課題や開示された唯一の実施形態と整合するように理解するべきである。
そして、上記記載にある「明るさを変化させない第2の絵柄」、「速度計21、ブースト計22及び燃料計23の画像の輝度値が変わらない」、「その他の画像の輝度が変わらない」などの表現は、本願発明(の実施形態)によってその課題(すなわち、特定の絵柄(テルテールの絵柄)の輝度が法規で定められた値を下回ることを避けるには画面全体を明るくするしかなかったという困難)が解決されたこと、すなわち、特定の絵柄(テルテールの絵柄)の輝度が法規で定められた値を下回ることを避けるために、その輝度を上げて明るくしても、画面全体が明るくはならないことを、「第2の絵柄」、「速度計21、ブースト計22及び燃料計23の画像」及び「その他の画像」の明るさ又は輝度が変わらないという具体例を挙げて述べたものと解して何ら矛盾を生じない。

キ 上記オ及びカの検討内容を踏まえると、上記段落【0035】、【0041】及び【0061】の記載を根拠として、請求人の主張するような課題を把握することができるとはいえないから、上記ウの主張も採用することはできない。


第6 むすび
以上のとおりであるから、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。



 
審理終結日 2020-01-07 
結審通知日 2020-01-14 
審決日 2020-01-29 
出願番号 特願2016-253701(P2016-253701)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 武田 悟  
特許庁審判長 小林 紀史
特許庁審判官 濱野 隆
関根 裕
発明の名称 表示装置  
代理人 特許業務法人栄光特許事務所  
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