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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01N
管理番号 1360965
審判番号 不服2019-22  
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-01-04 
確定日 2020-03-17 
事件の表示 特願2015-560367「血液処理のためのガス枯渇化およびガス添加デバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 9月 4日国際公開、WO2014/134503、平成28年 6月16日国内公表、特表2016-517395〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年2月28日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2013年2月28日 米国(US))を国際出願日とする出願であって、平成29年2月24日付けで手続補正書が提出され、同年2月24日付けで上申書が提出され、同年10月23日付けで拒絶理由が通知され、平成30年3月27日に手続補正書及び意見書が提出され、同年8月30日付けで拒絶査定がされ、平成31年1月4日に審判請求されるとともに手続補正がされ、同年4月12日に上申書が提出されたものである。

第2 平成31年1月4日付けの手続補正について
1 平成31年1月4日付けの手続補正の内容
平成31年1月4日に提出された手続補正書による手続補正(以下、本件補正という。)は、下記(1)に示す特許請求の範囲の記載を下記(2)に示す特許請求の範囲の記載へ補正するものである。


(1)本件補正前の特許請求の範囲
「 【請求項1】
血液製剤からガスを除去するための枯渇化デバイスであって、
a.筐体と、
b.1つまたは複数の流動制御機構を備える1つまたは複数の液体チャンバと、
c.1つまたは複数の枯渇化チャンバと、
d.前記1つまたは複数の液体チャンバの少なくとも1つを、前記1つまたは複数の枯渇化チャンバから分離する、少なくとも1つのガス透過性バリアと、
e.少なくとも1つの液体入口と、
f.少なくとも1つの液体出口と
を備える枯渇化デバイス。
【請求項2】
前記ガス透過性バリアが、酸素、二酸化炭素、およびそれらの組合せからなる群から選択されるガスに対し透過性である、請求項1に記載の枯渇化デバイス。
【請求項3】
前記少なくとも1つのガス透過性バリアが、ポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニリデンモノまたはジフルオリド(PVDF)、ポリスルホン、シリコーン、エポキシ、ポリエステル膜ポリエチレン、またはセラミックを含む膜である、請求項1に記載の枯渇化デバイス。
【請求項4】
前記少なくとも1つのガス透過性バリアが、疎水性多孔質構造である、請求項3に記載の枯渇化デバイス。
【請求項5】
前記1つまたは複数の液体チャンバが、2つ以上のガス透過性バリアにより前記1つまたは複数の枯渇化チャンバから分離されている、請求項1に記載の枯渇化デバイス。
【請求項6】
前記1つまたは複数の流動制御機構が、前記少なくとも1つの液体入口を通って進入し、前記1つまたは複数の液体チャンバを通って流動し、前記少なくとも1つの液体出口を通って出る液体を混合する、請求項1に記載の枯渇化デバイス。
【請求項7】
前記血液製剤は、全血、白血球枯渇血液、白血球および血小板枯渇血液、赤血球懸濁液、および血漿からなる群から選択される、請求項1に記載の枯渇化デバイス。
【請求項8】
前記1つまたは複数の枯渇化チャンバが、前記1つまたは複数の枯渇化チャンバと流体連通した少なくとも1つのガス入口および少なくとも1つのガス出口をさらに備える、請求項1に記載の枯渇化デバイス。
【請求項9】
前記筐体が、剛性材料、可撓性材料、弾性材料、およびそれらの組合せからなる群から選択される材料で作製される、請求項1に記載の枯渇化デバイス。
【請求項10】
前記液体チャンバが、剛性材料、可撓性材料、弾性材料、およびそれらの組合せからなる群から選択されるガスバリア材料で作製される、請求項1に記載の枯渇化デバイス。
【請求項11】
前記液体出口に接続された酸素および二酸化炭素不透過性血液貯蔵デバイスをさらに備える、請求項1に記載の枯渇化デバイス。
【請求項12】
液体からガスを枯渇化する方法であって、請求項1に記載のデバイスを通して液体を流動させ、ガス枯渇液体を調製するステップを含み、
前記液体が、全血、白血球枯渇血液、白血球および血小板枯渇血液、赤血球懸濁液、および血漿からなる群から選択される血液製剤であり、
前記ガス枯渇血液製剤が、10%未満のヘモグロビン酸素飽和度を有する方法。
【請求項13】
赤血球の長期貯蔵のためのシステムであって、
血液採取バッグと、
枯渇化デバイスと、
白血球低減のためのデバイスと、
血液製剤を貯蔵するためのガス不透過性貯蔵バッグと
を備え、
前記血液製剤が貯蔵された血液製剤であり、
前記枯渇化デバイスが、
筐体と、
1つまたは複数の流動制御機構を備える1つまたは複数の液体チャンバと、
1つまたは複数の枯渇化チャンバと、
前記1つまたは複数の液体チャンバの少なくとも1つを、前記1つまたは複数の枯渇化チャンバから分離する、少なくとも1つのガス透過性バリアと、
少なくとも1つの液体入口と、
少なくとも1つの液体出口と
を備えるシステム。
【請求項14】
前記筐体が、前記1つまたは複数の流動制御機構を備える単一の液体チャンバ及びそれぞれ酸素枯渇化媒体を含む1つまたは複数の枯渇化チャンバを備える可撓性筐体であり、 前記1つまたは複数の流動制御機構が、混合を提供する、請求項1に記載の枯渇化デバイス。
【請求項15】
前記1つまたは複数の流動制御機構が、三角形、半円形、卵形、正方形またはそれらの任意の組合せである、請求項1に記載の枯渇化デバイス。
【請求項16】
前記1つまたは複数の流動制御機構が、前記少なくとも1つのガス透過性バリア上に形成される、請求項14に記載の枯渇化デバイス。
【請求項17】
前記少なくとも1つのガス透過性バリアは、シリコーンを含む、請求項1に記載の枯渇化デバイス。

(2)本件補正後の特許請求の範囲
「 【請求項1】
血液製剤からガスを除去するための枯渇化デバイスであって、
a.筐体と、
b.1つまたは複数の流動制御機構を備える1つまたは複数の液体チャンバと、
c.1つまたは複数の枯渇化チャンバと、
d.前記1つまたは複数の液体チャンバの少なくとも1つを、前記1つまたは複数の枯渇化チャンバから分離する、少なくとも1つのガス透過性バリアと、
e.少なくとも1つの液体入口と、
f.少なくとも1つの液体出口と
を備える枯渇化デバイス。
【請求項2】
前記ガス透過性バリアが、酸素、二酸化炭素、およびそれらの組合せからなる群から選択されるガスに対し透過性である、請求項1に記載の枯渇化デバイス。
【請求項3】
前記少なくとも1つのガス透過性バリアが、ポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニリデンモノまたはジフルオリド(PVDF)、ポリスルホン、シリコーン、エポキシ樹脂、ポリエステル膜ポリエチレン、またはセラミックを含む膜である、請求項1に記載の枯渇化デバイス。
【請求項4】
前記少なくとも1つのガス透過性バリアが、疎水性多孔質構造である、請求項3に記載の枯渇化デバイス。
【請求項5】
前記1つまたは複数の液体チャンバが、2つ以上のガス透過性バリアにより前記1つまたは複数の枯渇化チャンバから分離されている、請求項1に記載の枯渇化デバイス。
【請求項6】
前記1つまたは複数の流動制御機構が、前記少なくとも1つの液体入口を通って進入し、前記1つまたは複数の液体チャンバを通って流動し、前記少なくとも1つの液体出口を通って出る液体を混合する、請求項1に記載の枯渇化デバイス。
【請求項7】
前記血液製剤は、全血、白血球枯渇血液、白血球および血小板枯渇血液、赤血球懸濁液、および血漿からなる群から選択される、請求項1に記載の枯渇化デバイス。
【請求項8】
前記1つまたは複数の枯渇化チャンバが、前記1つまたは複数の枯渇化チャンバと流体連通した少なくとも1つのガス入口および少なくとも1つのガス出口をさらに備える、請求項1に記載の枯渇化デバイス。
【請求項9】
前記筐体が、剛性材料、可撓性材料、弾性材料、およびそれらの組合せからなる群から選択される材料で作製される、請求項1に記載の枯渇化デバイス。
【請求項10】
前記液体チャンバが、剛性材料、可撓性材料、弾性材料、およびそれらの組合せからなる群から選択されるガスバリア材料で作製される、請求項1に記載の枯渇化デバイス。
【請求項11】
前記液体出口に接続された酸素および二酸化炭素不透過性血液貯蔵デバイスをさらに備える、請求項1に記載の枯渇化デバイス。
【請求項12】
液体からガスを枯渇化する方法であって、請求項1に記載のデバイスを通して液体を流動させ、ガス枯渇液体を調製するステップを含み、
前記液体が、全血、白血球枯渇血液、白血球および血小板枯渇血液、赤血球懸濁液、および血漿からなる群から選択される血液製剤であり、
前記ガス枯渇血液製剤が、10%未満のヘモグロビン酸素飽和度を有する方法。
【請求項13】
赤血球の長期貯蔵のためのシステムであって、
血液採取バッグと、
枯渇化デバイスと、
白血球低減のためのデバイスと、
血液製剤を貯蔵するためのガス不透過性貯蔵バッグと
を備え、
前記血液製剤が貯蔵された血液製剤であり、
前記枯渇化デバイスが、
筐体と、
1つまたは複数の流動制御機構を備える1つまたは複数の液体チャンバと、
1つまたは複数の枯渇化チャンバと、
前記1つまたは複数の液体チャンバの少なくとも1つを、前記1つまたは複数の枯渇化チャンバから分離する、少なくとも1つのガス透過性バリアと、
少なくとも1つの液体入口と、
少なくとも1つの液体出口と
を備えるシステム。
【請求項14】
前記筐体が、前記1つまたは複数の流動制御機構を備える単一の液体チャンバ及びそれぞれ酸素枯渇化媒体を含む1つまたは複数の枯渇化チャンバを備える可撓性筐体であり、
前記1つまたは複数の流動制御機構が、混合を提供する、請求項1に記載の枯渇化デバイス。
【請求項15】
前記1つまたは複数の流動制御機構が、三角形、半円形、卵形、正方形またはそれらの任意の組合せである、請求項1に記載の枯渇化デバイス。
【請求項16】
前記1つまたは複数の流動制御機構が、前記少なくとも1つのガス透過性バリア上に形成される、請求項14に記載の枯渇化デバイス。
【請求項17】
前記少なくとも1つのガス透過性バリアは、シリコーンを含む、請求項1に記載の枯渇化デバイス。
」(下線は補正された箇所である。)

2 本件補正の適否
本件補正は、特許請求の範囲の請求項3について、補正前の特許請求の範囲の請求項3における「エポキシ」を「エポキシ樹脂」とするもので、拒絶理由に対応して不明確な記載を明確なものとしたものであるから、特許法第17条の2第5項第4号に規定される明りょうでない記載の釈明を目的とするものと認められる。
また、【請求項3】自体の記載及び本願明細書【0083】に記載されるようにエポキシはガス透過性バリアの好適なポリマーとして記載されているのであるから、「樹脂」との用語を加える本件補正は、特許法第17条の2第3項及び第4項に違反するものでもない。
したがって、本件補正は、適法になされたものである。

第3 本願発明
本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された発明は、平成31年1月4日提出の手続補正書により提出された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの、
「血液製剤からガスを除去するための枯渇化デバイスであって、
a.筐体と、
b.1つまたは複数の流動制御機構を備える1つまたは複数の液体チャンバと、
c.1つまたは複数の枯渇化チャンバと、
d.前記1つまたは複数の液体チャンバの少なくとも1つを、前記1つまたは複数の枯渇化チャンバから分離する、少なくとも1つのガス透過性バリアと、
e.少なくとも1つの液体入口と、
f.少なくとも1つの液体出口と
を備える枯渇化デバイス。」である(以下、「本願発明」ともいう)。

第4 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、
この出願の請求項に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献5に記載された発明及び引用文献1に記載された技術的事項に基いて、その優先日前にその発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものを含むものである。

引用文献1:特開2011-92905号公報
引用文献5:特表2013-500794号公報

第5 当審の判断
当審は、原査定の拒絶の理由のとおり、本願発明は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物1?4に記載された発明に基いて、本願優先日当時の技術常識を有する当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないと判断する。
理由は以下のとおりである

刊行物1:特表2013-500794号公報(原査定の引用文献5)
刊行物2:特開2011-92905号公報(原査定の引用文献1)
刊行物3:特開平11-333204号公報
刊行物4:特開2000-93729号公報
なお、刊行物2?4は、本願優先日時点における技術常識を表す文献である。

1 刊行物1?4の記載
(1)刊行物1:特表2013-500794号公報
原査定で引用された本願優先日前に頒布された刊行物である刊行物1には、次の記載がある。
(1a)「【請求項1】
赤血球を含む流体中の酸素の濃度を低減するシステムであって、
ハウジングと、
前記ハウジングの内部に延在し、中を通る流体の流れのため適合し、個々の管が入口及び出口を含む複数の中空管と、
前記管の中を流れる流体から前記管の外部までの酸素の輸送を容易化するために前記管の外面で酸素の濃度を低減する運搬システムと、
を備えるシステム。
【請求項2】
前記運搬システムは、前記ハウジングと流体接続している流体入口と、前記ハウジングと流体接続している流体出口と、前記管の外部にある前記ハウジングの容積の中を通って流体を循環させるためのシステムとを備える、請求項1記載のシステム。」
(1b)「【0005】
例えば、処理直後のヒト赤血球懸濁液(例えば、抗凝血剤溶液中に採取され、そして、血小板、白血球、及び、その他の血液成分を除去するため処理された血液)からの酸素の除去は、保存期間を30%から100%まで延長することが分かった。保存期間の延長に加えて、複数の研究は、嫌気性条件下で保存された赤血球が従来的に保存された細胞より高いATPレベルと、より低い溶血と、より高い輸血後の回復とを有することを明らかにした。
【0006】
この改善された効き目は、すべての状況において有益であるが、輸血頻度と、時間平均血液輸血量と、全体的な鉄負荷とを低減することにより、例えば、慢性輸血療法を必要とする被検者(例えば、鎌状赤血球症又はベータサラセミア)のため特に役立つ。更に、保存期間の延長は、一般的な血液バンクの物流を改善し、定期的な血液不足の緩和を支援し、術前自家血液採取の有用性を高める。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様においては、赤血球を含む流体(例えば、赤血球懸濁液を含む流体)のような生体液中の酸素の濃度を低減するシステムは、ハウジングと、ハウジングの内部に延在し、中を通る流体の流れのため適合し、個々の管が入口及び出口を含む複数の中空管と、管の中を流れる流体から管の外部までの酸素の輸送を容易化するために管の外面で酸素の濃度を低減する運搬システムとを含む。」

(1c)「【0040】
複数の実施形態では、装置、システム、及び/又は、方法が、赤血球を含む流体のような生体液から酸素のようなガスを除去することが記載されている。本明細書に記載された一定数の代表的な実施形態では、酸素は、赤血球懸濁液、赤血球懸濁液製品、又は、赤血球懸濁液成分(ヒト又はそれ以外)から除去される。本願において使用されるような生体液という用語は、生物源(例えば、ヒトを含む動物)に由来する流体を指す。本願において使用されるような赤血球懸濁液という用語は、流体(例えば、血漿、抗凝血溶液、添加溶液、及び/又は、食塩水の混合物であり、例えば、残りの血小板及び白血球を含むことができる混合物)の中に浮遊する赤血球として定義される。
【0041】
・・・赤血球懸濁液、赤血球懸濁液製品、又は、赤血球を含むその他の流体(本明細書では血液として総称されることがある)のような赤血球を含む流体から酸素を除去する装置又はシステムは、本明細書では、酸素減損装置、すなわち、ODDとして総称されることがある。
【0042】
本明細書で検討されたODD装置の複数の代表的な実施形態では、装置は、少なくとも一群又は一束のポリマー製(例えば、ポリカーボネート製)ハウジングの内部にマニフォールド化された疎水性中空ファイバ膜を含んでいた。赤血球を含む流体又は赤血球懸濁液のような生体液は、例えば、中空ファイバの中を流れ、血液からの酸素が中空ファイバの膜を越えてハウジング内部かつファイバの外部の容積へ輸送され、酸素の濃度が低く保たれる。検討されたODDでは、キャリア若しくはガス吸着材、又は、(典型的に、逆流中の)不活性キャリア若しくはスイープ・ガスの流れのいずれかが、ファイバ内部の流体から除去されたO_(2)のようなガスを取り除くためファイバ束の環状空間の周りに使用され、それによって、拡散を促進するための濃度勾配を維持した。
【0043】
代替的な実施形態では、赤血球を含む流体又は赤血球懸濁液のような生体液は、不活性キャリアガスが中を流れることができる複数の中空ファイバを囲むハウジング又はエンクロージャの内部の容積の中を流れることができるので、ファイバの外部を流れる赤血球を含む流体からの酸素を、ファイバの中を流れるキャリアガスの中へ押し進めるため濃度勾配を維持する。」

(1d)「【0121】
図8Aは、ハウジング130の中に延在する複数のほぼ円柱状のガス吸着剤要素140を含む酸素減損装置10の別の実施形態を示す。赤血球を含む流体のような生体液は、入口170を介してハウジング130に入り、吸着剤要素140の外部にある容積の中を流れ、脱酸素化された流体が出口180を介してハウジング130から出る。流体からの酸素は、吸着剤要素140によって吸収される。図8Bに示されるように、吸着剤要素140は、例えば、吸着材144(例えば、線維状吸着材の粒子)を取り囲む(例えば、中空ファイバ膜について上述されているように)ガス浸透又は微小孔性層142を含む。流体、流体からのガス、特にO_(2)は、層142を通って吸着材144の中へ拡散し、このことは、図8Bに破線矢印によって示されている。」

(1e)「【図8A】

【図8B】



(2)刊行物2:特開2011-92905号公報
原査定で引用された本願優先日前に頒布された刊行物である刊行物2には、次の記載がある。
(2a)「【請求項1】
第1の通気膜上に樹脂を吐出することにより前記第1の通気膜に突出部を形成する工程と、前記突出部の樹脂を硬化させた後、前記第1の通気膜上に、前記突出部を覆うように第2の通気膜を形成する工程とを有する脱気膜の製造方法。
・・・
【請求項3】
前記突出部をリブ状に形成する請求項1または2に記載の脱気膜の製造方法。」
(2b)「【0001】
本発明は、液体中に溶存する気体を脱気させる脱気膜の製造方法および、その方法により製造される封筒状物、および該封筒状物を用いた脱気装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化学品製造、食品製造、医療、電気機器、半導体製造装置等の様々な分野において、液体中に溶存している気体の脱気(気液分離)が必要となることが多い。上記液体が機能性粒子のような固体懸濁物を含む場合、従来からある中空糸タイプの脱気モジュールでは中空糸開口部の径が小さいため容易に目詰まりを起こしてしまう。」
(2c)「【0044】
図6?図10は、突出部の変形例を示すものである。ただし、突出部の形状を表すため、いずれも第2の通気膜(図1のPFA膜5)を省略して記載している。図6は、突出部であるリブ6に途切れ部を形成したものである。リブ6が途中で途切れている形状を有するために、被脱気液体がリブ6間で相互に行き来することが可能となる。したがって、液体流路の圧力損失を低減することができる。
【0045】
図7は、突出部をドット状にしたものである。被脱気液体の流れを遮るものが少ないため、圧力損失の一層の低減になる。しかし、ドットの密度が少な過ぎる場合は、封筒状物1と封筒状物1との間のスペーサーの役割を十分に果たせないため逆に圧力損失が上昇してしまうこともある。圧力損失を低く抑えるためには、ドットの密度は、0.1?10個/cm^(2)(好ましくは1?5個/cm^(2))であることが望ましい。
【0046】
図8は、図6に示した途切れ部を有するリブ6を用いた場合であって、かつ、途切れ部を1列おきに互い違いに配置したものである。このような配置にすることにより、被脱気液体が攪拌され乱流を起こすことで脱気効果が促進されることが期待できる。
【0047】
図9は、直線状のリブ6を用いたものであるが、リブ6が筐体12における被脱気液体の流通方向(筐体12に平行である矢印A(図4))に対して、5?85度(好ましくは30?60度、より好ましくは30?45度)の角度をなして形成されているものである。角度をなす方向は、矢印Aの方向に対して左右どちらの方向でもよい。このようにリブ6を斜めに設けることにより、被脱気液体の流路の道のりが増えるため、いっそう十分な脱気を行うことができる。
【0048】
図10は、リブ6が蛇行形状を有する場合を示したものである。リブ6が蛇行している場合も、被脱気液体の流路の道のりが増えるため、いっそう十分な脱気を行うことができる。蛇行形状は、図10に示すような曲線状の蛇行でもよいし、折れ線が連続する直線的な蛇行でもよい。」

(3)刊行物3:特開平11-333204号公報
本願優先日前に頒布された刊行物である刊行物3には、次の記載がある。
(3a)「【請求項1】1nm以下の細孔径が全細孔容積の80%以上の細孔容積を占めるセラミック層を多孔質支持体に被着形成した複数のセラミック複合体を、乱流発生部材を介して接続して成ることを特徴とする脱気用セラミック複合部材。」
(3b)「【0018】そこで、要所で効果的な乱流を発生させ、かつ優れた脱気特性、即ち、液体あるいは液状成分をほとんど通さずかつ高いガス透過率を維持した状態で、工業的に大量処理できる効率的で装置の小型化が実現できる脱気用セラミック複合部材とそれを用いた脱気処理法を実現すべく、前記セラミック層の細孔径分布と液体あるいは液状物質に溶解した気体又は揮発性物質の分離性能と共に、効果的に膜と接触させるための液体あるいは液状物質の流れの関係について検討し、本発明に至った。」
(3c)「【0026】しかも、複数の前記セラミック複合体を乱流発生部材を介して接続することにより、脱気用セラミック複合部材の内部を流れる液体あるいは液状物質の流れを、乱流発生部材で容易に層流状態から乱流状態に変えて攪拌することができて効率良く脱気することが可能となり、その結果、液体あるいは液状物質から気体又は揮発性物質の分離に直接関与する前記セラミック層の面積あるいは長さを小さくすることができ、装置の小型化が実現できることになる。」
(3d)「【0036】次に、前記多孔質支持体に被着形成された所定の細孔径が所定の細孔容積を占めるセラミック層から成る複数のセラミック複合体を接続する乱流発生部材は、該セラミック複合体の内部を層流状態で流れる液体あるいは液状物質を、攪乱することにより一時乱流状態に変化させ得るもので、かつ前記液体あるいは液状物質と反応しないものであればいかなる材質、形状、形態でも脱気効率の向上効果に何ら変化はなく、例えば、アルミナやジルコニア等から成るセラミックボール、あるいは各種樹脂製ボール、ガラスビーズ等の球状の集合体がある。」

(4)刊行物4:特開2000-93729号公報
本願優先日前に頒布された刊行物である刊行物4には、次の記載がある。
(4a)「【請求項1】特定のガスのみが透過可能なガス分離機能を有するガス分離フィルタ管を複数本収束してなる収束体を複数具備するとともに、該収束体同士を乱流発生部材を介して接続したことを特徴とするガス分離モジュール。」
(4b)「【0010】本発明は前記課題を解決するためになされたもので、その目的は、被処理物の乱流を促進してガス分離性能を高めることができるガス分離モジュールを提供することにある。」
(4c)「【0031】また、乱流発生部材18の具体的な構成は、(1)管状体の収束体からなり、該管状体の内径がフィルタ2,2’の内径より小さいもの、(2)乱流発生部材18が粒状体を充填してなるもの、(3)乱流発生部材18がフィルタ2,2’の内径よりも小さい平均気孔径の気孔を有する多孔質体等からなることが望ましく、また、その材質は、セラミックス、ガラス、樹脂、ウレタン等からなる。」

2 刊行物1に記載された発明について
刊行物1の請求項1および請求項2には、摘記(1a)の記載がされており、当該記載の具体的な説明は、摘記(1d)に、対応する図は摘記(1e)に記載されている。
すなわち、摘記(1d)には、酸素低減装置について、「図8Aは、ハウジング130の中に延在する複数のほぼ円柱状のガス吸着剤要素140を含む酸素減損装置10の別の実施形態を示す。赤血球を含む流体のような生体液は、入口170を介してハウジング130に入り、吸着剤要素140の外部にある容積の中を流れ、脱酸素化された流体が出口180を介してハウジング130から出る。流体からの酸素は、吸着剤要素140によって吸収される。図8Bに示されるように、吸着剤要素140は、例えば、吸着材144(例えば、線維状吸着材の粒子)を取り囲む(例えば、中空ファイバ膜について上述されているように)ガス浸透又は微小孔性層142を含む。流体、流体からのガス、特にO_(2)は、層142を通って吸着材144の中へ拡散し、このことは、図8Bに破線矢印によって示されている。」と記載されている。

ここで、酸素低減装置を用いて、「赤血球を含む流体のような生体液」を供して処理しているから、「赤血球を含む流体のような生体液」は酸素が低減される対象であることは明らかである。また、「赤血球を含む流体のような生体液」は「吸着剤要素140の外部にある容積の中を流れ」ているから、吸着剤要素の外部にある容積は、酸素低減装置において赤血球を含む流体のような生体液が流れている構成であるといえる。

したがって、刊行物1には下記のとおりの発明が記載されている。
「赤血球を含む流体のような生体液の酸素低減装置であって、
ハウジングと
吸着剤要素の外部にある容積と
吸着剤要素と
ガス浸透又は微小孔性層と
入口と
出口と
を備える酸素低減装置。」(以下、「刊行物1発明」ともいう。)が記載されている。

3 対比・判断
(3-1)対比
刊行物1発明の「装置」、「ハウジング」、「吸着剤要素の外部にある容積」、「入口」、「出口」は、それぞれ本願発明の「デバイス」、「筐体」、「1つまたは複数の液体チャンバ」、「少なくとも1つの液体入口」、「少なくとも1つの液体出口」に相当する。
そうすると、本願発明と刊行物1発明とは
「a.筐体と、
b.1つまたは複数の液体チャンバと、
e.少なくとも1つの液体入口と、
f.少なくとも1つの液体出口と
を備えるデバイス。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点(ア)本願発明は、「血液製剤からガスを除去するための枯渇化」デバイスと特定されているのに対し、刊行物1発明は、「赤血球を含む流体のような生体液の酸素低減」装置と特定されている点。
相違点(イ)本願発明は、「液体チャンバ」に「1つ又は複数の流動制御機構を備える」のに対し、刊行物1発明は、液体チャンバに相当する構成に流動制御機構を備えることについて特定されていない点。
相違点(ウ)本願発明は、「1つ又は複数の枯渇化チャンバ」を備えているのに対し、刊行物1発明は流体からの酸素を吸収する旨特定されている「吸着剤要素」を備えている点。
相違点(エ)本願発明は、「前記1つまたは複数の液体チャンバの少なくとも1つを、前記1つまたは複数の枯渇化チャンバから分離する、少なくとも1つのガス透過性バリア」を備えているのに対し、刊行物1発明は、「ガス浸透又は微小孔性層」を備えている点。

(3-2)判断
以下、それぞれの相違点について判断する。
相違点(ア)について
刊行物1発明の、赤血球を含む流体のような生体液は、摘記(1b)に記載されたとおり「処理直後のヒト赤血球懸濁液(例えば、抗凝血剤溶液中に採取され、そして、血小板、白血球、及び、その他の血液成分を除去するため処理された血液)」に含まれると解される。
そして、本願明細書の【0017】には、「・・・「赤血球懸濁液」は、赤血球(red blood cellまたはerythrocyte)を有する血液製剤を指し、それを含む。」と記載されていることから、刊行物1発明の赤血球を含む流体のような生体液は、本願における血液製剤の概念に含まれるといえる。
また、刊行物1発明の「酸素低減」装置は、酸素が気体であることから、本願発明における「ガスを除去するため」のデバイスに相当する。また、本願明細書において「枯渇化」は、【0016】の「枯渇血液製剤は、本明細書において使用される場合、特に本開示のデバイスによる処置またはそれへの通過後の、O_(2)、CO_(2)またはその両方が枯渇した血液製剤を指す。」という記載から、酸素等が低減したことを示す用語として用いられていることを意味しているといえ、本願発明における「ガス」には、酸素も含まれる。
したがって、刊行物1発明の「酸素低減」装置は、本願発明の「ガスを除去するための枯渇化」デバイスに相当する。
そうすると、刊行物1発明の「赤血球を含む流体のような生体液の酸素低減」装置は、本願発明の「血液製剤からガスを除去するための枯渇化」デバイスと実質的に相違するところがない。また、仮に相違点であったとしても、刊行物1発明の「赤血球を含む流体のような生体液の酸素低減」装置を「血液製剤からガスを除去するための枯渇化」デバイスとすることに困難性はない。

相違点(イ)について
流動制御機構なる用語が請求項の記載のみから一義的に定まらないので、本願の明細書を参照すると、【0174】(平成29年2月24日の手続補正書)には、「・・・1つまたは複数の流動制御機構が、前記少なくとも1つの液体入口を通って進入し、前記1つまたは複数の液体チャンバを通って流動し、前記少なくとも1つの液体出口を通って出る液体を混合する・・・」、【0044】には、「・・・液体チャンバ101は、液体の流動を誘導するために後述のような流動制御機構108をさらに備えてもよく、例えば液体の層流を妨害することにより、液体チャンバを通って流動する液体の混合を提供してもよい。・・・」、【0045】には、「・・・流動制御機構の数および位置は、特定の構成に合わせてプロセスを最適化するために改変され得る。・・・」、【0092】には、「流動制御機構108は、様々な形状、位置および数を含む。・・・」旨記載されており、ここから、流動制御機構は、液体を混合するための構成であり、具体的な構成は様々な形状のものが含まれる概念であることが理解できる。
以下、その前提で判断をする。
刊行物2には、摘記(2b)のとおり、液体中に溶存する気体を脱気させる脱気膜に関する技術が記載されており、その背景技術として、医療分野において気液分離が必要であることが示唆されている。また、当該技術の構成として、摘記(2a)のとおり、通気膜に突出部が形成された脱気膜を用いること、更に、摘記(2c)のとおりのリブの形状を有することで、被脱気液体が撹拌され乱流を起こって脱気効果が促進されることも記載されている。
また、刊行物3には、摘記(3b)、(3c)のとおり、脱気用セラミック複合部材の内部を流れる液体に乱流を発生させるために、摘記(3a)、(3d)のように種々の材質、形状からなる乱流発生部材を介してセラミック複合体を接続した脱気用セラミック複合部材が記載されている。
さらに、刊行物4にも、摘記(4b)のとおり、被処理物の乱流を促進してガス分離性能を高めるガス分離モジュールを提供することを目的として摘記(4a)、(4c)に記載されたように種々の形状や部材からなる乱流発生部材を介して接続したガス分離モジュールが記載されている。
刊行物2?4に記載されたとおり、液体中に存在する気体成分を分離する際に、液体の流れに何らかの構成で乱流を起こすことで気体の分離を促進することは広く知られていることであるから、刊行物1発明の吸着剤要素の外部にある容積の構造について、液体が撹拌され乱流を起こすことで脱気効果を促進するために、液体を混合するための流動制御構造を採用することは、当業者にとって容易になし得る技術的事項である。

相違点(ウ)について
刊行物1発明における「吸着剤要素」は、摘記(1d)、(1e)のとおり吸着材144を取り囲むガス浸透又は微小孔性層142を含み、「吸着剤要素の外部にある容積」に流れる流体から酸素を低減させており、また、上記相違点(ア)で検討したとおり、本願発明における「枯渇化」は、酸素等を低減させることを示している。
そうすると、刊行物1発明の「吸着剤要素」は、酸素を低減させるための構成を含む場所と理解でき、本願発明の「1つ又は複数の枯渇化チャンバ」と実質的に相違しない。仮に相違点であったとしても、刊行物1発明の「吸着剤要素」を「1つ又は複数の枯渇化チャンバ」とすることは、当業者にとって困難なことではない。

相違点(エ)について
刊行物1には、摘記(1c)のとおり、酸素低減装置(ODD)について、「・・・ハウジングの内部にマニフォールド化された疎水性中空ファイバ膜を含んでいた。赤血球を含む流体又は赤血球懸濁液のような生体液は、例えば、中空ファイバの中を流れ、血液からの酸素が中空ファイバの膜を越えてハウジング内部かつファイバの外部の容積へ輸送され、酸素の濃度が低く保たれる。」と記載され、具体的な構成として摘記(1d)には、「流体、流体からのガス、特にO_(2)は、層142を通って吸着材144の中へ拡散し、このことは、図8Bに破線矢印によって示されている。」と記載されている。
したがって、刊行物1発明の「ガス浸透又は微小孔性層」は気体を液体が流れる箇所から分離する構成であって、本願発明における「前記1つまたは複数の液体チャンバの少なくとも1つを、前記1つまたは複数の枯渇化チャンバから分離する、少なくとも1つのガス透過性バリア」と実質的に相違していない。仮に相違点であったとしても、刊行物1発明の「ガス浸透又は微小孔性層」を「前記1つまたは複数の液体チャンバの少なくとも1つを、前記1つまたは複数の枯渇化チャンバから分離する、少なくとも1つのガス透過性バリア」とすることに困難性はない。

4 効果についての検討
本願発明の効果について検討する。
本願明細書の【0044】には、「・・・理論に制限されないが、液体チャンバ内の液体の混合は、酸素および二酸化炭素ガスの枯渇化チャンバへの効率的な拡散および枯渇化を確実にし得る。」という効果が記載されているか、流動制御機構により、液体が混合された場合により酸素ガス等の枯渇化が確実になされることが理解できるが、それは既に「相違点(イ)について」で示したとおり、刊行物1発明の、赤血球を含む流体のような生体液の流体からの酸素を、吸着剤要素によって吸収しようとするときに、刊行物2?4に記載されているような液体の流れに何らかの構成で乱流を起こし、気体の分離を促進する手段を適用することで奏される効果であって、当業者の予測を超える格別顕著な効果とはいえない。
また、本願明細書の実施例である例15(同一カセット構成を使用した)において流路構造及び酸素レベルの測定について示され(【0162】、【0163】)、表1、表2の結果から、経路の深さによってどの程度酸素が低減されたかが示されているが、深さによって酸素低減効果に差を生じることは技術常識であるから、そのような効果についても刊行物1?4の記載より予測される効果の範囲内であり、格別顕著なものとはいえない。

5 審判請求人の主張について
(1)審判請求人は、審判請求書及び平成31年4月12日付け上申書において下記のとおり主張をしており、それらについての検討をする。

ア 刊行物2に記載された発明は血液製剤を対象にしたものではなく、本願発明は、流動制御機構と血液製剤の枯渇化の組合せの有効性を初めて提示したものである(審判請求書第7頁?第8頁(c)の欄及び上記上申書(3)(b)第11行-第25行)。

イ 刊行物1には本願発明に想到することを促す動機付けとなり得る記載はないし、刊行物1にはガスの除去性能を高めるための実質的な方策が十分に記載されていたから、刊行物1の記載からガスの除去性能を高めるための他の方策である流動制御の採用を相当することについては阻害要因があったというべきである(審判請求書第8頁第19行?第48行及び上記上申書(3)(b)第4行-第10行)。

ウ 刊行物1と刊行物2の国際特許分類が相違し、液体を対象に脱気を行うための装置を提供するためという点で課題の共通性が存在するというのは課題を不当に広く認定するものである(審判請求書第8頁第49行?第9頁第13行及び上記上申書(3)(b)第26行-第39行)。

(2)
ア 上記主張アについての検討
液体中に存在する気体を分離する際の手段として、何らかの機構により乱流を起こさせようとすることは上述したとおり広く知られており、当業者であれば、液体から気体を分離する際の手段として、広く知られた技術手段を採用することが困難であったとはいえないことは既に述べたとおりであり、上記主張は採用できない。

イ 上記主張イについての検討
刊行物1発明でガスの除去性能を高める手段がとられていたということは、むしろ、さらに追加の除去性能を高める構成の組合せの動機といえるものであり、阻害要因とはならない。
したがって、上記主張は採用できない。

ウ 上記主張ウについての検討
刊行物1に刊行物2?4の技術常識を適用できることについては既に述べたとおりであり、刊行物1と刊行物2?4の特許分類が相違していることは、上記結論に影響しない。

(3)小括
以上のとおり、審判請求人の主張はいずれも採用できない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は刊行物1に記載された発明及び刊行物2?4に記載された技術的事項に基いて、本願優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
 
別掲
 
審理終結日 2019-10-17 
結審通知日 2019-10-21 
審決日 2019-11-06 
出願番号 特願2015-560367(P2015-560367)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石井 徹奥谷 暢子  
特許庁審判長 瀬良 聡機
特許庁審判官 神野 将志
齊藤 真由美
発明の名称 血液処理のためのガス枯渇化およびガス添加デバイス  
代理人 山本 泰史  
代理人 弟子丸 健  
代理人 松下 満  
代理人 倉澤 伊知郎  
代理人 田中 伸一郎  

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