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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1361011
審判番号 不服2019-605  
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-01-17 
確定日 2020-03-18 
事件の表示 特願2013-219553「磁気共鳴イメージングシステム及び磁気共鳴イメージング方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 5月12日出願公開、特開2014- 83445〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年10月22日(パリ条約による優先権主張 2012年10月23日 韓国、2012年11月14日 韓国)の出願であって、平成29年8月17日付けで拒絶理由が通知され、同年11月28日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成30年4月20日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年7月31日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年9月12日付けで、平成30年7月31日付けの手続補正書に対する補正の却下の決定がなされ、同日付けで拒絶査定されたところ、平成31年1月17日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされ、その後、平成31年4月22日に上申書が提出されたものである。

第2 本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正後の請求項1に係る発明(下線は補正箇所を示す。)
本件補正により、補正前の特許請求の範囲の請求項1は、

「 【請求項1】
磁気共鳴イメージング(MRI)方法において、
被写体のボリュームを構成する複数のサブボリュームの内、隣接するサブボリュームが互いに異なるグループに属するようにグループ化された少なくとも2つ以上のグループそれぞれに含まれた複数のサブボリュームが同時に励起されるように、複数の周波数成分を含むRF(Radio Frequency)パルス及び選択グラディエント(gradient)を前記被写体に印加する段階と、
前記励起されたサブボリュームそれぞれに対して3次元エンコードを行い、前記複数のサブボリュームから磁気共鳴信号を取得する段階と、
前記取得した磁気共鳴信号を前記複数のサブボリュームそれぞれに対応するイメージデータに復元する段階とを有し、
前記少なくとも2つ以上のグループがn個(nは、自然数)存在し、前記n個のグループそれぞれには、M個(Mは、自然数)のサブボリュームが含まれた場合、前記M個のサブボリュームそれぞれは、複数のスライスが蓄積されたものであり、
前記印加する段階は、前記n個のグループのうち、第1グループに対して磁気共鳴信号を取得しようとする場合、前記第1グループに含まれた前記M個のサブボリュームが同時に励起されるように、前記RFパルス及び前記選択グラディエントを前記被写体に印加し、
前記取得する段階は、前記第1グループに含まれた前記励起されたM個のサブボリュームそれぞれに対して第1方向に対する第1エンコードグラディエント、第2方向に対する第2エンコードグラディエント、第3方向に対する周波数エンコードグラディエントを印加する前記3次元エンコードを行うことで前記磁気共鳴信号を取得し、
前記第1方向または前記第2方向のうち、いずれか一方向は、前記選択グラディエントが印加された方向と同一であることを特徴とする磁気共鳴イメージング方法。」
と補正された。

本件補正は、補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「2つ以上のグループそれぞれに含まれた複数のサブボリューム」が「前記複数のサブボリュームそれぞれは、複数のスライスが蓄積された」ものであることについて、「前記少なくとも2つ以上のグループがn個(nは、自然数)存在し、前記n個のグループそれぞれには、M個(Mは、自然数)のサブボリュームが含まれた場合、前記M個のサブボリュームそれぞれは、複数のスライスが蓄積されたものであり」と、「2つ以上のグループそれぞれに含まれた複数のサブボリューム」の「グループ」の数と「サブボリューム」の数を明示的に限定し、
「前記被写体に印加する段階」について、「前記n個のグループのうち、第1グループに対して磁気共鳴信号を取得しようとする場合、前記第1グループに含まれた前記M個のサブボリュームが同時に励起されるように、前記RFパルス及び前記選択グラディエントを前記被写体に印加し、」と限定し、
「前記複数のサブボリュームから磁気共鳴信号を取得する段階」について、「前記第1グループに含まれた前記励起されたM個のサブボリュームそれぞれに対して第1方向に対する第1エンコードグラディエント、第2方向に対する第2エンコードグラディエント、第3方向に対する周波数エンコードグラディエントを印加する前記3次元エンコードを行うことで前記磁気共鳴信号を取得し、
前記第1方向または前記第2方向のうち、いずれか一方向は、前記選択グラディエントが印加された方向と同一である」と限定したものである。

したがって、本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項について、上記のとおり限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下に検討する。

2 引用文献及びその記載事項
(1)本願の最先の優先権主張日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された特開2009-268891号公報(以下、「引用文献A」という。)には、「マルチスライス/スラブ磁気共鳴信号を同時に取得する制御方法、成像方法およびシステム」について図面とともに次の事項が記載されている。なお、以下の摘記において、(2)の引用発明の認定に関連する箇所に下線を付与した。

(1-ア)
「【技術分野】
【0001】
本発明は磁気共鳴システムの制御方法、成像方法およびシステムに関するもので、特にマルチスライス/スラブ磁気共鳴信号を同時に取得する制御方法、成像方法およびシステムを、指すものである。
・・・
【0009】
図2を参照するが、既存の3次元空間的な符号化手続きが1回のスキャンに測定物の単一のスラブのみに対して励起をしか進行できないことにより、該スラブの全てのスライス映像を取得するが、更に3次元磁気共鳴映像の映像取得時間も例えば公式1のように示し、但し全部の符号化回数Npe=位相符号化回数(Np)×スライス符号化回数(Nz)となり、考えてみると分かり、3次元磁気共鳴映像の取得時間が2次元磁気共鳴映像の取得時間よりも、もっと時間の無駄となる。」

(1-イ)
「【発明が解決しようとする課題】
【0016】
既存のマルチスライス/スラブ映像磁気共鳴の映像処理技術がハードウェア・設備またはソフトウェアの運算の負担を増加する必要があることに鑑み、従って本発明は、即ち既存のシステム・ハードウェアの動作に互換性があり且つ余分なハードウェア・設備の必要がない更にマルチスライス/スラブ磁気共鳴信号を同時に取得できる制御方法、成像方法およびシステムを、提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明のマルチスライス/スラブ磁気共鳴信号を同時に取得する制御方法は、測定物に対して行い、下記のステップを含むが、(a)少なくとも2つの周波数をロードする一つまたは多数のラジオ波(RF)パルスと一つのスライス/スラブ励起勾配磁場をかけることにより該測定物が該各周波数の少なくとも2つのスライス/スラブに対応して励起されること、(b)空間的な符号化勾配磁場をかけること及び(c)該各スライス/スラブを互いに分離できるスライス/スラブ分離勾配磁場を少なくとも一つかけること。
【0018】
本発明のマルチスライス/スラブ磁気共鳴信号を同時に取得する成像システムは、測定物が磁気共鳴信号を生成させるように用いられ、且つ該磁気共鳴信号により異なるスライス/スラブの空間的な符号化データを復元するが、該成像システムは、一つのラジオ波励起モジュール、一つのラジオ波受信モジュール、一つの勾配磁場出力モジュール、及び前述の素子の動作を制御する一つのシーケンス・コントローラを含む。
【0019】
該シーケンス・コントローラは、該ラジオ波励起モジュール,該勾配磁場出力モジュールと該ラジオ波受信モジュールを制御するように用いられ、マルチスライス/スラブ磁気共鳴信号を同時に取得する制御手続きを、実行するように用いられる。」

(1-ウ)
「【0028】
本発明を詳細に陳述する前に、注意すべきのは、以下の説明内容の中に、同じ符号により類似する素子を表示し、且つ説明に便宜を図るために、符号の”/”が”又は”を意味する。それ以外に、本発明の使用する座標システム(X,Y,Z)は、映像の座標となり、器具の空間絶対座標ではない。
【実施例】
【0029】
本発明のマルチスライス/スラブ磁気共鳴信号を同時に取得する制御方法、成像方法およびシステムの効果は、同時に励起でき、且つ数多くの測定物の異なる位置の磁気共鳴映像をピックアップし、更に多種類の既存の磁気共鳴器具・設備に互換性があることを可能とし、また余分なハードウェア・施設、例えば余分なラジオ波(RF)チャンネル/勾配コイルを増加する必要がなく、且つ余分な映像情報演算時間とコンピューター設備を増加する必要がない。
【0030】
説明すべきなのは、本発明の言及するマルチスライス/スラブ磁気共鳴信号を同時に取得する制御方法が、磁気共鳴システムに応用され、エコープラナー撮像(Echo Planar Imaging, EPI),灌流造影(Perfusion),フロー映像(Flow),血管造影検査映像(Angio),温度映像(Temperature),T1映像(格子-スピン緩和時間常数),T2映像(スピン-スピン緩和時間常数)又は拡散造影(Diffusion)などの成像システムを含むものである。
【0031】
一、ハードウェア設備:
図3を参照するが、それがシステム・ブロック図で、本発明のマルチスライス磁気共鳴信号を同時に取得する成像システムのより好ましい実施例を説明するためである。
【0032】
成像システム100は、一つのシーケンス・コントローラ1,励起波形を発射できる一つのラジオ波励起モジュール21,磁気共鳴映像信号を受信できる一つのラジオ波受信モジュール22,一つの静磁場出力モジュール3,一つの勾配磁場出力モジュール4,一つのメインコンソール7,一つの表示装置52及び一つの入力装置53を含むが、その中でも、ラジオ波励起モジュール21とラジオ波受信モジュール22がそれぞれシングルチャンネル又はマルチチャンネルのラジオ波コイルであってもよく、勾配磁場出力モジュール4が一つの勾配制御器41と数個の勾配コイル42を具することを可能とし、メインコンソール7が一つのコントローラモジュール71,一つの格納モジュール72と一つの画像処理モジュール73を具する。
【0033】
測定物6が測定空間30に位置決めすることを可能とし、且つ測定空間30の内には、静磁場出力モジュール3により生成された均一磁場および勾配制御器41が該等の勾配コイル42を制御することにより生成された勾配磁場を、具するが、該均一磁場は、該勾配磁場に対応して測定物6が磁気共鳴信号ソースの磁化量を生成させるように用いられる。」

(1-エ)
「【0034】
二、前述の装置を利用する成像方法:
a.2次元磁気共鳴造影
・・・
【0045】
b.3次元磁気共鳴造影成像
3次元磁気共鳴造影と2次元磁気共鳴造影との差異は、2次元磁気共鳴造影が1回に一つのスライスを励起し、更に取得された映像の情報を2次元空間的な符号化するが、3次元磁気共鳴造影が1回に一つのスラブを励起し、更に取得された映像の情報を3次元空間的な符号化する。
【0046】
図5を参照するが、それがフローチャートで、本発明のマルチスラブ磁気共鳴信号を同時に取得する成像方法ののより好ましい実施例を説明するためである。
【0047】
図3と図5を参照するが、ステップ301の中で、ラジオ波励起モジュール21は、測定物6に対し、少なくとも2つの周波数をロードする一つまたは多数のラジオ波(RF)パルスと一つのスラブ励起勾配磁場をかけることにより、測定物6が該各周波数の少なくとも2つのスラブに対応して励起されるように用いられる。
【0048】
2つのスラブを励起するために用いられるロード周波数f1と周波数f2を出力するラジオ波(RF)パルス101’を例とし、設計上では、周波数f1と周波数f2の両者の周波数ギャップfsepは、前述の公式2に合致する必要がある。
【0049】
ステップ302の中で、勾配磁場出力モジュール4から、一つの空間的な符号化勾配磁場、および該各スラブを互いに分離できる少なくとも一つのスラブ勾配磁場をかけ、且つ空間的な符号化勾配磁場が一つの位相勾配磁場Gy、一つの周波数勾配磁場Gxと一つのスラブ勾配磁場Gzを含んで測定物6にかける。
【0050】
その中でも、該スラブ分離勾配磁場の強度Gsepは、対応して同時に磁気共鳴信号を受信する空間的な符号化勾配磁場の強度Gspen(位相勾配磁場Gy、周波数勾配磁場Gx又はスラブ勾配磁場Gzであってもよい)との割合が前述の公式3に合致する必要がある。
【0051】
ステップ303の中で、勾配磁場出力モジュール4が空間的な符号化勾配磁場をかける期間に、ラジオ波受信モジュール22は、測定物6が励起された磁気共鳴信号を受信することに対応する。
【0052】
ステップ304は、即ち磁気共鳴信号に対して空間的な符号化データの再構成および3次元変換を行うことにより、個別のスラブの即時映像を取得するものである。」

(1-オ)
「【0053】
三、制御手続き:
a.2次元磁気共鳴造影成像
・・・
【0058】
b.3次元磁気共鳴造影成像
図7がタイミングチャートであるが、図5の手続きを実行する時に、図3のシステムのタイミングチャートを例として説明する。
【0059】
図3と図7を参照するが、シーケンス・コントローラ1は、駆動信号を出力することにより、ラジオ波励起モジュール21,ラジオ波受信モジュール22と勾配磁場出力モジュール4の動作を駆動・制御するように配置できるが、その制御手続きは、i.シーケンス・コントローラ1が、ラジオ波励起モジュール21を駆動してが測定物6に少なくとも2つの周波数をロードする一つまたは多数のラジオ波(RF)パルス101’を生成することにより周波数f1と周波数f2をロードするラジオ波(RF)パルス101’を出力することを、例とし、周波数f1と周波数f2の両者の周波数ギャップfsepは公式2に合致する必要があり且つシーケンス・コントローラ1が、勾配制御器42を駆動して勾配コイル41を制御してスラブ励起勾配磁場の強度Gssを生成すること(104’)、ii.シーケンス・コントローラ1が、測定物6に各スラブの位置符号化の異なる方向に空間的な符号化勾配磁場をかけること、及びiii.シーケンス・コントローラ1が勾配制御器42を駆動して勾配コイル41を制御して測定物6にスラブ分離勾配磁場の強度Gsep(105’)を生成することを、含む。
【0060】
この実施例の中に、該空間的な符号化勾配磁場は、位相勾配磁場102’,周波数勾配磁場103’とスラブ勾配磁場106’を含み、且つ該空間的な符号化勾配磁場をかける期間に、該スラブ分離勾配磁場105’をかけ、更に該測定物6を励起した磁気共鳴信号を受信し、且つスラブ分離勾配磁場の強度Gsep(105’)は、対応して同時に磁気共鳴信号を受信する空間的な符号化勾配磁場の強度Gspenとの割合が前述の公式3に合致する必要があることにより、隣接する2つのスライスを完全に分離できる。
【0061】
周波数勾配磁場103’とスラブ分離勾配磁場105’をかけると同時にラジオ波受信モジュール22により、測定物6を励起した磁気共鳴信号を受信するが、その後に映像処理モジュール73により該磁気共鳴信号を空間的な符号化して変換、例えばフーリエ変換した後に、3次元変換にて適時スラブの映像データを再構成でき、更に映像処理モジュール73が、再構成した後の処理結果、即ち分離のスラブの映像画面を出力することにより、表示装置52に表示できる。」

(1-カ)図3には、以下の図面が記載されている。



(1-キ)図5には、以下の図面が記載されている。



(1-ク)図7には、以下の図面が記載されている。



(2)引用発明について
上記(1-ア)?(1-ク)の記載を踏まえれば、上記引用文献には、以下の発明が記載されていると認められる。なお、参考のため、引用発明の認定に使用した引用文献等の段落番号等を、括弧内に付記してある。
「a)磁気共鳴システムの成像方法であって、(【0029】)
b)ラジオ波励起モジュール21が、測定物6に対し、少なくとも2つの周波数をロードする一つまたは多数のラジオ波(RF)パルスと一つのスラブ励起勾配磁場をかけることにより、測定物6の該各周波数の少なくとも2つのスラブに対応して励起させるステップ301と、(【0047】)
c)勾配磁場出力モジュール4が、一つの空間的な符号化勾配磁場、および該各スラブを互いに分離できる一つのスラブ勾配磁場をかけ、且つ空間的な符号化勾配磁場が一つの位相勾配磁場Gy、一つの周波数勾配磁場Gxと一つのスラブ勾配磁場Gzを含んで測定物6にかけるステップ302と、(【0049】)
d)ラジオ波受信モジュール22が、勾配磁場出力モジュール4が空間的な符号化勾配磁場をかける期間に、測定物6が励起された磁気共鳴信号を受信するステップ303と、(【0051】)
e)磁気共鳴信号に対して空間的な符号化データの再構成および3次元変換を行うことにより、個別のスラブの即時映像を取得するステップ304、(【0052】)
f)からなる上記方法。」(以下、「引用発明」という。)

(3)本願の最先の優先権主張日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第2011/106649号(以下、「引用文献B」という。)には、「単一および多重チャネル受信コイルを用いた同時マルチスライス磁気共鳴画像法」について図面とともに次の事項が記載されている。(なお、ファミリー文献である特表2013-521013号を翻訳文として用いている。)

(3-ア)
「BACKGROUND OF THE INVENTION
[0003] The field of the invention is magnetic resonance imaging ("MRI"} methods and systems. More particularly, the invention relates to methods and systems for simultaneous multi-slice MRI, in which either a single or multiple channel receiver coil is employed to simultaneously acquire image data from multiple slice locations.」
(当審訳:背景技術
[0003]本発明は、磁気共鳴画像(MRI)方法および装置に関するものであり、特に、同時マルチスライスMRIの方法および装置に関する。単一または多重チャネル受信コイルは、複数のスライス位置から画像データを同時に取得するのに用いられる。)

(3-イ)
「[0008] Depending on the technique used, many MR scans currently require many minutes to acquire the necessary data used to produce medical images. The reduction of this scan time is an important consideration, since reduced scan time increases patient throughout, improves patient comfort, and improves image quality by reducing motion artifacts. Many different strategies have been developed to shorten the scan time.
[0009] One such strategy for shortening scan time is referred to generally as "parallel MRI" ("pMRI"}. Parallel MRI techniques use spatial information from arrays of radio frequency ("RF"} receiver coils to substitute for the spatial encoding that would otherwise have to be obtained in a sequential fashion using RF pulses and magnetic field gradients, such as phase and frequency encoding gradients. Each of the spatially independent receiver coils of the array carries certain spatial information and has a different spatial sensitivity profile. This information is utilized in order to achieve a complete spatial encoding of the received MR signals, for example, by combining the simultaneously acquired data received from each of the separate coils. Parallel MRI techniques allow an undersampling of k-space by reducing the number of acquired phase-encoded k-space sampling lines, while keeping the maximal extent covered in k- space fixed. The combination of the separate MR signals produced by the separate receiver coils enables a reduction of the acquisition time required for an image, in comparison to a conventional k-space data acquisition, by a factor related to the number of the receiver coils. Thus the use of multiple receiver coils acts to multiply imaging speed, without increasing gradient switching rates or RF power. 」
(当審訳:[0008]
用いられる技術に応じて、多くのMRスキャンは、医療画像を生成するのに必要なデータを取得するために、多くの時間が現在必要とされている。このスキャン時間の短縮は、重要な事項である。スキャン時間を短縮することは、全体的に患者を増やし、患者の快適を向上させることができると共に、モーションアーチファクト(motion artifacts)を減らすことで画像の品質を高めることができる。多くの異なる画像方法は、スキャン時間を短くするために開発されている。
[0009]
スキャン時間を短くするための1つの方法としては、一般的に「パラレルMRI(pMRI:parallel MRI)」と呼ばれる方法がある。そのパラレルMRI法は、RFパルス(radio frequency pulse)や磁場傾斜、例えば、位相や周波数エンコード傾斜を用いて、逐次的方法で取得されなければならない空間エンコードの代わりに、RF受信コイルのアレイから空間的情報を用いる。そのアレイの空間的に独立した各受信コイルは、特定の空間情報を伝え、異なる空間的感度プロファイルを有する。その情報は、受信したMR信号の完全な空間エンコードを達成するために、用いられる。例えば、別々のコイルから受信して同時に取得したデータを結合することによって、空間エンコードを達成することができる。固定のk空間でカバーされる最大範囲を保持している間、パラレルMRI法は、取得され位相エンコードされたk空間のサンプリングライン(phase-encoded k-space sampling lines)の数を減らすことによって、k空間をアンダーサンプリングすることが可能である。別々の受信コイルによって生成された個々のMR信号の結合は、従来のk空間データ取得に比べて、受信コイルの数に関連する係数によって、画像に必要とされる取得時間の短縮を可能にする。したがって、複数の受信コイルの使用は、傾斜切り替え速度(gradient switching rates)またはRFパワーを増やすことなく、画像化速度を増加させる働きをする。」

(3-ウ)
「[0058] With reference now to FIGS. 6A and 6B, exemplary groups of multiple slice locations are illustrated. In FIG. 6A, a first group of slice locations 602 is shown, in which the slice locations are closely grouped together. This close grouping of slice locations is moved sequentially through the desired field-of-view in order to acquire image data throughout the desired field-of-view. For example, the first group of slice locations is moved sequentially through a plurality of group locations until a last group location, indicated by dashed lines 604. When imaging in regions where significant air- tissue interfaces exist, such as the more inferior regions of the brain, it may be advantageous to use a thinner slice thickness than used for imaging other regions. Thus, as illustrated in FIG. 6A, a second group of slice locations 606 may be used, in which the slice locations are again closely spaced, but in which the slice thickness of each individual slice location in the group 606 is thinner than those in the first group 602. Like the first group 602, the second group of slice locations 606 may be sequentially moved through the field-of-view until a last group location 608 is reached. As shown in FIG. 6B, the selected slice locations do not need to be closely spaced; rather, each slice location in a group of slice locations may be spaced apart such that subsequent locations of the group of slice locations are interleaved with other group locations. It will be appreciated by those skilled in the art that the preceding examples of multiple slice location groupings and movement are just examples and that many other variations other than those expressly stated herein are possible within the scope of the invention. 」
(当審訳:[0058]
図6(A)および図6(B)には、複数のスライス位置のグループが示されている。図6(A)では、スライス位置の第1グループ602が示され、スライス位置が一緒に密接してグループ化されている。スライス位置のこの密接したグループ化は、所望のフィールドオブビューの全体を通して画像データを取得するために、所望のフィールドオブビューを通じて順に動かされる。例えば、スライス位置の第1グループは、複数のグループ位置を通って、点線604で示される最後のグループ位置まで順次動かされる。重要な空気組織界面が存在する領域、例えば、脳の下部領域で画像化するとき、薄いスライス厚みを用いることで、他の領域を画像化するのに用いられるよりも利点を有することができる。このため、図6(A)に示すように、スライス位置の第2グループ606が用いられている。そのスライス位置は、再度接近して間隔を置いて配置されているが、第2グループ606の各スライス位置のスライス厚みは、第1グループ602の各スライス位置のスライスの厚みよりも薄い。スライス位置の第1グループ602のように、スライス位置の第2グループ606は、最後のグループ608に到達するまで、フィールドオブビューを通じて順次動かされる。また、図6(B)に示すように、選択されたスライス位置は、隣接して空間を置いて配置する必要はなく、むしろ、スライス位置のグループにおける各スライス位置が、間隔を置いて配置されている。このため、スライス位置のグループの次の位置が、他のグループ位置と交互に配置される。複数のスライス位置のグループ化および動作の前述の例は、ただ例を記載しただけであり、ここに記載されていない多くの他の変化が、本発明の範囲内で可能である。)

(3-エ)



3 対比・判断
(1)対比

補正発明と引用発明とを対比する。
ア 方法について
引用発明の「a)磁気共鳴システムの成像方法」は、「磁気共鳴システム」での画像を作成する方法であるから、補正発明の「磁気共鳴イメージング(MRI)方法」に相当する。


イ 印加する段階について
(ア)引用発明の「b)」「測定物6」及び「スラブ」は、それぞれ、補正発明の「被写体のボリューム」及び「サブボリューム」に相当する
また、引用発明の「b)」「ラジオ波(RF)パルス」及び「一つのスラブ励起勾配磁場」は、それぞれ、補正発明の「RF(Radio Frequency)パルス」及び「選択グラディエント(gradient)」に相当することは、明らかである。

(イ)、引用発明の「少なくとも2つのスラブ」と、
補正発明の「被写体のボリュームを構成する複数のサブボリュームの内、隣接するサブボリュームが互いに異なるグループに属するようにグループ化された少なくとも2つ以上のグループそれぞれに含まれた複数のサブボリューム」とは、
「被写体のボリュームを構成する複数のサブボリューム」で共通する。

(ウ)そうすると、引用発明の「b)ラジオ波励起モジュール21が、測定物6に対し、少なくとも2つの周波数をロードする一つまたは多数のラジオ波(RF)パルスと一つのスラブ励起勾配磁場をかけることにより、測定物6の該各周波数の少なくとも2つのスラブに対応して励起させるステップ301」と、
補正発明の「被写体のボリュームを構成する複数のサブボリュームの内、隣接するサブボリュームが互いに異なるグループに属するようにグループ化された少なくとも2つ以上のグループそれぞれに含まれた複数のサブボリュームが同時に励起されるように、複数の周波数成分を含むRF(Radio Frequency)パルス及び選択グラディエント(gradient)を前記被写体に印加する段階」とは、
「被写体のボリュームを構成する複数のサブボリュームが同時に励起されるように、複数の周波数成分を含むRF(Radio Frequency)パルス及び選択グラディエント(gradient)を前記被写体に印加する段階」で共通する。


ウ 磁気共鳴信号を取得する段階について
(ア)引用発明の「c)勾配磁場出力モジュール4が、一つの空間的な符号化勾配磁場、および該各スラブを互いに分離できる一つのスラブ勾配磁場をかけ、且つ空間的な符号化勾配磁場が一つの位相勾配磁場Gy、一つの周波数勾配磁場Gxと一つのスラブ勾配磁場Gzを含んで測定物6にかけるステップ302」は、補正発明の「前記励起されたサブボリュームそれぞれに対して3次元エンコードを行」うことに相当する。

(イ)引用発明の「d)ラジオ波受信モジュール22が、勾配磁場出力モジュール4が空間的な符号化勾配磁場をかける期間に、測定物6が励起された磁気共鳴信号を受信するステップ303」は、補正発明の「前記複数のサブボリュームから磁気共鳴信号を取得する」ことに相当する。

(ウ)上記(ア)及び(イ)を踏まえると、引用発明の「c)勾配磁場出力モジュール4が、一つの空間的な符号化勾配磁場、および該各スラブを互いに分離できる一つのスラブ勾配磁場をかけ、且つ空間的な符号化勾配磁場が一つの位相勾配磁場Gy、一つの周波数勾配磁場Gxと一つのスラブ勾配磁場Gzを含んで測定物6にかけるステップ302と、
d)ラジオ波受信モジュール22が、勾配磁場出力モジュール4が空間的な符号化勾配磁場をかける期間に、測定物6が励起された磁気共鳴信号を受信するステップ303」は、補正発明の「前記励起されたサブボリュームそれぞれに対して3次元エンコードを行い、前記複数のサブボリュームから磁気共鳴信号を取得する段階」に相当する。


エ イメージデータの復元について
(ア)引用発明の「e)」「個別のスラブの即時映像」は、補正発明の「複数のサブボリュームそれぞれに対応するイメージデータ」に相当する。
そうすると、引用発明の「e)磁気共鳴信号に対して空間的な符号化データの再構成および3次元変換を行うことにより、個別のスラブの即時映像を取得するステップ304」は、補正発明の「前記取得した磁気共鳴信号を前記複数のサブボリュームそれぞれに対応するイメージデータに復元する段階」に相当する。


オ グループについて
(ア)引用発明は「測定物6」を「少なくとも2つのスラブに対応して励起させる」のであるから、少なくとも2つのスラブからなる1つのグループを備えているといえる。
そしてスラブが複数のスライスから成ることは、上記摘記(1-ア)に、「該スラブの全てのスライス映像を取得する」と記載されていることから明らかである。
さらに、補正発明の「被写体のボリュームを構成する」「サブボリューム」の個数は「複数」であるから、補正発明の「M個のサブボリューム」の「M個」が2個以上であることは自明である。
そうすると、 引用発明の「少なくとも2つのスラブ」と、
補正発明の「前記少なくとも2つ以上のグループがn個(nは、自然数)存在し、前記n個のグループそれぞれには、M個(Mは、自然数)のサブボリュームが含まれた場合、前記M個のサブボリュームそれぞれは、複数のスライスが蓄積されたもの」とは、
「M個(Mは、自然数)のサブボリュームが含まれた場合、前記M個のサブボリュームそれぞれは、複数のスライスが蓄積されたもの」で共通する。


カ 印加する段階について2
上記イ及びオを踏まえると、引用発明の「b)ラジオ波励起モジュール21が、測定物6に対し、少なくとも2つの周波数をロードする一つまたは多数のラジオ波(RF)パルスと一つのスラブ励起勾配磁場をかけることにより、測定物6の該各周波数の少なくとも2つのスラブに対応して励起させるステップ301」と、
補正発明の「前記印加する段階は、前記n個のグループのうち、第1グループに対して磁気共鳴信号を取得しようとする場合、前記第1グループに含まれた前記M個のサブボリュームが同時に励起されるように、前記RFパルス及び前記選択グラディエントを前記被写体に印加」することとは、
「前記印加する段階は、磁気共鳴信号を取得しようとする場合、前記M個のサブボリュームが同時に励起されるように、前記RFパルス及び前記選択グラディエントを前記被写体に印加」することで共通する。


キ 磁気共鳴信号を取得する段階について2
(ア)引用発明の「c)」「空間的な符号化勾配磁場が一つの位相勾配磁場Gy、一つの周波数勾配磁場Gxと一つのスラブ勾配磁場Gzを含んで測定物6にかける」ことの「一つの周波数勾配磁場Gx」は、補正発明の「前記取得する段階は」「第1方向に対する第1エンコードグラディエント、第2方向に対する第2エンコードグラディエント、第3方向に対する周波数エンコードグラディエントを印加する前記3次元エンコードを行うこと」ことの「第3方向に対する周波数エンコードグラディエント」に相当する。
そうすると、引用発明の「一つのスラブ勾配磁場Gz」は、補正発明の「第1方向に対する第1エンコードグラディエント」または「、第2方向に対する第2エンコードグラディエント」に相当することは明らかである。

(イ)上記(ア)及びイ(ア)を踏まえれば、引用発明の「c)」「空間的な符号化勾配磁場が一つの位相勾配磁場Gy、一つの周波数勾配磁場Gxと一つのスラブ勾配磁場Gzを含んで測定物6にかけるステップ302と、
d)ラジオ波受信モジュール22が、勾配磁場出力モジュール4が空間的な符号化勾配磁場をかける期間に、測定物6が励起された磁気共鳴信号を受信するステップ303」は、補正発明の「前記取得する段階は、前記第1グループに含まれた前記励起されたM個のサブボリュームそれぞれに対して第1方向に対する第1エンコードグラディエント、第2方向に対する第2エンコードグラディエント、第3方向に対する周波数エンコードグラディエントを印加する前記3次元エンコードを行うことで前記磁気共鳴信号を取得し、
前記第1方向または前記第2方向のうち、いずれか一方向は、前記選択グラディエントが印加された方向と同一である」ことに相当する。


ク よって、補正発明と引用発明とは、
「磁気共鳴イメージング(MRI)方法において、
被写体のボリュームを構成する複数のサブボリュームが同時に励起されるように、複数の周波数成分を含むRF(Radio Frequency)パルス及び選択グラディエント(gradient)を前記被写体に印加する段階と、
前記励起されたサブボリュームそれぞれに対して3次元エンコードを行い、前記複数のサブボリュームから磁気共鳴信号を取得する段階と、
前記取得した磁気共鳴信号を前記複数のサブボリュームそれぞれに対応するイメージデータに復元する段階とを有し、
M個(Mは、自然数)のサブボリュームが含まれた場合、前記M個のサブボリュームそれぞれは、複数のスライスが蓄積されたものであり、
前記印加する段階は、磁気共鳴信号を取得しようとする場合、前記M個のサブボリュームが同時に励起されるように、前記RFパルス及び前記選択グラディエントを前記被写体に印加し、
前記取得する段階は、前記励起されたM個のサブボリュームそれぞれに対して第1方向に対する第1エンコードグラディエント、第2方向に対する第2エンコードグラディエント、第3方向に対する周波数エンコードグラディエントを印加する前記3次元エンコードを行うことで前記磁気共鳴信号を取得し、
前記第1方向または前記第2方向のうち、いずれか一方向は、前記選択グラディエントが印加された方向と同一である磁気共鳴イメージング方法。」
の発明である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
同時に励起された複数のサブボリュームが、補正発明では、「隣接するサブボリュームが互いに異なるグループに属するようにグループ化された少なくとも2つ以上のグループそれぞれに含まれた」ものである即ち、「同時に励起された複数のサブボリューム」が隣接していないのに対して、引用発明では、そのような特定がない点。

(相違点2)
前記M個のサブボリュームと、前記RFパルス及び前記選択グラディエントを前記被写体に印加する段階が、
補正発明では、前記M個のサブボリュームが、「M個(Mは、自然数)のサブボリュームが含まれた」「前記少なくとも2つ以上のグループがn個(nは、自然数)存在し」、前記印加する段階が、「前記n個のグループのうち、第1グループに対して磁気共鳴信号を取得しようとする場合、前記第1グループに含まれた前記M個のサブボリューム」が同時に励起されるように」印加しているのに対して、
引用発明では、そのような特定がない点。


(2)判断
ア 相違点1についての検討
引用発明の、「一つまたは多数のラジオ波(RF)パルスと一つのスラブ励起勾配磁場をかけることにより」「励起させる」、「少なくとも2つのスラブ」の配置に特段の制約が無く適宜の配置であることは技術的に明らかである。
引用文献Bには、「選択されたスライス位置は、隣接して空間を置いて配置する必要はなく、むしろ、スライス位置のグループにおける各スライス位置が、間隔を置いて配置されている。このため、スライス位置のグループの次の位置が、他のグループ位置と交互に配置される。」と記載されており、複数のスライスの配置として隣接しない配置が記載されている。
そうすると、引用発明も引用文献Bも、共にマルチスライス/スラブ磁気共鳴信号を同時に取得する成像方法に関する発明であるから、引用発明の複数のスラブの配置として、引用文献Bに記載されている、複数のスライスの配置として隣接しない配置を採用し、相違点1に係る補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到するものである。

イ 相違点2についての検討
複数のスラブを同時に励起する引用発明において、測定物6の全体のイメージデータを得るためには、該励起を測定物6に複数回行うことが必要であることは明らかであるから、RFパルス及び前記選択グラディエントを前記被写体に印加する段階を何回とするかは、当業者が適宜なし得ることであり、引用発明のスラブの数をM個と表現し、該励起を測定物6に行う回数をn回と表現して、その結果、相違点2に係る補正発明の構成とすることは、当業者が適宜成し得る設計事項にすぎない。

ウ そして、補正発明の作用効果は、引用文献A及びBの記載事項及び周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎず、格別顕著なものともいえない。

エ 請求人の主張について
請求人は、平成31年4月22日付けで上申書を提出し、補正案を提示しているので、以下一応検討する。
補正案では、請求項1について、
「隣接するサブボリュームが互いに異なるグループに属するようにグループ化された少なくとも2つ以上のグループに含まれた複数のサブボリュームが同時に励起されるように」を「隣接するサブボリュームが互いに異なるグループに属するようにグループ化された少なくとも2つ以上のグループの内の現在処理されるグループに含まれた複数のサブボリュームが同時に励起されるように」とし(以下、「上申書補正1」という。)、
「前記印加する段階は、前記現在処理されるグループに対するイメージデータの復元が完了された後、次に処理されるグループに含まれた複数のサブボリュームが同時に励起されるように、前記RFパルス及び前記グラディエントを前記被写体に印加し、」を追加し(以下、「上申書補正2」という。)、
「前記少なくとも2つ以上のグループがn個(nは、自然数)存在し、前記n個のグループのそれぞれにはM個(Mは、自然数)のサブボリュームが含まれた場合、前記M個のサブボリュームのそれぞれは、複数のスライスが蓄積されたものであり、」を「前記少なくとも2つ以上のグループがn個(nは、自然数)存在し、前記n個のグループのそれぞれには互いに隣接しないM個(Mは、2以上の自然数)のサブボリュームが含まれた場合、前記M個のサブボリュームのそれぞれは、複数のスライスが蓄積されたものであり、前記M個のサブボリュームのそれぞれは第1グループ乃至第nグループに順次に繰り返されて含まれ、」としている(以下、「上申書補正3」という。)。
しかしながら、当該「上申書補正1」は、「同時に励起される」「複数のサブボリューム」を現在処理されるグループであることを明確にした補正であり、当該「上申書補正2」は、復元の段階の完了後に次に処理されるグループに対する印加する段階があることを特定したものであるが、復元の段階の完了後に次に処理されるスライス/スラブを励起することは常套手段にすぎず、当該「上申書補正3」は、印加する段階、取得する段階、復元する段階からなる磁気共鳴イメージング方法を第1グループから第nグループまで順次繰り返すことを特定したものであるが、測定物の全体のイメージを取得する場合は当然、印加する段階、取得する段階、復元する段階を繰り返すものであるから、依然として当業者が容易に発明をすることができたものとの判断に変わりはない。

オ したがって、補正発明は、引用発明及び引用文献Bに記載の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 まとめ
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?18に係る発明は、平成29年11月28日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?18に記載された事項により特定されたものであって、その請求項1に係る発明は、次のとおりであると認める。
「 【請求項1】
磁気共鳴イメージング(MRI)方法において、
被写体のボリュームを構成する複数のサブボリュームの内、隣接するサブボリュームが互いに異なるグループに属するようにグループ化された少なくとも2つ以上のグループそれぞれに含まれた複数のサブボリュームが同時に励起されるように、複数の周波数成分を含むRF(Radio Frequency)パルス及び選択グラディエント(gradient)を前記被写体に印加する段階と、
前記励起されたサブボリュームそれぞれに対して3次元エンコードを行い、前記複数のサブボリュームから磁気共鳴信号を取得する段階と、
前記取得した磁気共鳴信号を前記複数のサブボリュームそれぞれに対応するイメージデータに復元する段階とを有し、
前記複数のサブボリュームそれぞれは、複数のスライスが蓄積されたことを特徴とする磁気共鳴イメージング方法。」(以下、「本願発明」という。)

2 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1?18に係る発明は、本願の優先権主張日前日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献に記載された発明に基いて、本願の優先権主張日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

1.国際公開第2011/106649号(引用文献B)
2.特開2009-268891号公報(引用文献A)

なお、原査定の拒絶の理由は、上記のとおり、引用文献1(引用文献B)を主引例とし、引用文献2(引用文献A)を副引例とする進歩性に関するものであるが、平成30年9月12日付けの補正の却下の決定において主引例と副引例を入れ替えた進歩性について説示している。
その後、請求人は、審判請求と同時に補正の機会があり、審判請求書において、引用文献Aを主引例とし、引用文献Bを副引例とした進歩性についての反論をしている。

3 引用文献及びその記載事項
本願の最先の優先権主張日前に頒布された引用文献A、Bの記載事項及び引用発明は、上記「第2[理由] 2」に記載したとおりである。

4 当審の判断
本願発明は、補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「2つ以上のグループそれぞれに含まれた複数のサブボリューム」が「前記複数のサブボリュームそれぞれは、複数のスライスが蓄積された」ものであることについて、「前記少なくとも2つ以上のグループがn個(nは、自然数)存在し、前記n個のグループそれぞれには、M個(Mは、自然数)のサブボリュームが含まれた場合、前記M個のサブボリュームそれぞれは、複数のスライスが蓄積されたものであり」と、「2つ以上のグループそれぞれに含まれた複数のサブボリューム」の「グループ」の数と「サブボリューム」の数を明示的に限定し、
「前記被写体に印加する段階」について、「前記n個のグループのうち、第1グループに対して磁気共鳴信号を取得しようとする場合、前記第1グループに含まれた前記M個のサブボリュームが同時に励起されるように、前記RFパルス及び前記選択グラディエントを前記被写体に印加し、」と限定し、
「前記複数のサブボリュームから磁気共鳴信号を取得する段階」について、「前記第1グループに含まれた前記励起されたM個のサブボリュームそれぞれに対して第1方向に対する第1エンコードグラディエント、第2方向に対する第2エンコードグラディエント、第3方向に対する周波数エンコードグラディエントを印加する前記3次元エンコードを行うことで前記磁気共鳴信号を取得し、
前記第1方向または前記第2方向のうち、いずれか一方向は、前記選択グラディエントが印加された方向と同一である」と限定した本件補正から、上記限定事項を全て削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「第2の[理由]2、3」に記載したとおり、引用発明及び引用文献Bに記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び引用文献Bに記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 まとめ
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その他の請求項について言及するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-10-18 
結審通知日 2019-10-23 
審決日 2019-11-06 
出願番号 特願2013-219553(P2013-219553)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61B)
P 1 8・ 121- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 後藤 順也荒井 隆一  
特許庁審判長 福島 浩司
特許庁審判官 三崎 仁
信田 昌男
発明の名称 磁気共鳴イメージングシステム及び磁気共鳴イメージング方法  
代理人 特許業務法人共生国際特許事務所  
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