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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H04M
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1361040
審判番号 不服2019-5270  
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-04-22 
確定日 2020-03-19 
事件の表示 特願2017-154030「集合住宅用住宅情報盤,集合住宅用インターホンシステム,情報端末の表示方法及びその表示方法を実行させるためのプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年11月 2日出願公開,特開2017-200240〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由
1.手続の経緯・本願発明

本願は,平成25年12月12日に出願された特願2013-257056号の一部を平成29年8月9日に分割した出願であって,平成30年7月10日付けで拒絶理由が通知され,平成30年9月14日に手続補正がなされ,平成30年10月22日付けで拒絶理由が通知され,平成30年12月28日に手続補正がなされ,平成31年1月28日付けで拒絶査定がされ,平成31年4月22日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに,同時に手続補正がなされたものである。


2.平成31年4月22日の手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成31年4月22日の手続補正を却下する。

[理由]

2-1.本件補正の目的

平成31年4月22日の手続補正(以下,「本件補正」という。)により,特許請求の範囲の請求項1は,

「ネットワークを介してサーバ装置に接続され,共同玄関機またはドアホンと通話する機能を有する集合住宅用住宅情報盤において,
前記集合住宅用住宅情報盤に用意された情報サービスと前記情報サービス以外の機能とのいずれかを選択するためのメニュー画面を表示するタッチパネル式の表示部を備え,
前記表示部は,前記メニュー画面において,前記情報サービスを選択する操作がなされたとき,情報サービス画面を表示し,
前記情報サービス画面において,前記情報サービスを選択する操作がなされたとき,前記ネットワークを介して取得したサービス実行画面を表示し,
前記サービス実行画面は,共用施設,物品の使用および物品の貸出の少なくとも1以上の予約申し込みを受け付けるための画面を含むことを特徴とする集合住宅用住宅情報盤。」(以下,「補正前発明」という。)

から

「ネットワークを介してサーバ装置に接続され,共同玄関機またはドアホンと通話する機能を有する集合住宅用住宅情報盤において,
前記集合住宅用住宅情報盤に用意された情報サービスと前記情報サービス以外の機能とのいずれかを選択するためのメニュー画面を表示するタッチパネル式の表示部を備え,
前記表示部は,前記メニュー画面において,前記情報サービスを選択する操作がなされたとき,情報サービス画面を表示し,
前記情報サービス画面において,前記情報サービスを選択する操作がなされたとき,前記ネットワークを介して取得したサービス実行画面を表示し,
前記サービス実行画面は,共用施設の抽選を伴う予約申し込みを受け付けるための画面を含み,前記予約申し込みに対する抽選結果を前記表示部に表示することを特徴とする請求項1に記載の集合住宅用住宅情報盤。」

と補正された。
ここで,「請求項1に記載の」は,審判請求書に「補正後の新請求項1は,補正前の請求項1に請求項2を付加して,特許請求の範囲を限定的に減縮したものである。」と記載されているように,「請求項2を付加」する際の誤記であることが明らかであるから,本件補正後の発明は,

「ネットワークを介してサーバ装置に接続され,共同玄関機またはドアホンと通話する機能を有する集合住宅用住宅情報盤において,
前記集合住宅用住宅情報盤に用意された情報サービスと前記情報サービス以外の機能とのいずれかを選択するためのメニュー画面を表示するタッチパネル式の表示部を備え,
前記表示部は,前記メニュー画面において,前記情報サービスを選択する操作がなされたとき,情報サービス画面を表示し,
前記情報サービス画面において,前記情報サービスを選択する操作がなされたとき,前記ネットワークを介して取得したサービス実行画面を表示し,
前記サービス実行画面は,共用施設の抽選を伴う予約申し込みを受け付けるための画面を含み,前記予約申し込みに対する抽選結果を前記表示部に表示することを特徴とする集合住宅用住宅情報盤。」(以下,「本件補正発明」という。)

であると認められる。

上記補正は,補正前発明において「共用施設,物品の使用および物品の貸出の少なくとも1以上」から「共用施設」だけに限定するとともに,「予約申し込み」を「抽選を伴う予約申し込み」として,「前記予約申し込みに対する抽選結果を前記表示部に表示する」ようにしたものであるから,本件補正は特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで,本件補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2-2.引用例記載の発明

(1)原査定の拒絶の理由に引用された,本願出願前である平成16年4月22日に頒布された特開2004-128624号公報(以下,「引用例1」という。)には,

「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,集合住宅インターホンシステムに係り,特に,インターホン機能を有すると共に,システム内機器間のネットワークを通じて種々サービスを受けることができる集合住宅インターホンシステムに関する。」

「【0020】
また,本発明の集合住宅インターホンシステムにおいて,生活情報盤は,施設予約がされた内容を確認するため,操作部で所定の操作を行なうと情報サーバに保存した施設の予約状況を読み出して表示部に表示させる機能を有するものである。これにより,生活情報盤の表示部で施設の予約状況を確認できる。」

「【0022】
本発明の集合住宅インターホンシステムは図1に示すように,集合住宅館内に,カメラ16で撮像した訪問者の映像を作成すると共に,居住者を呼び出し,通話を行なうための拡声スピーカ12,マイク13や,居室番号等を表示するためのLCDモニタ等から成る表示部11を有する集合玄関機1と,訪問者と通話するためのハンドセットスピーカ32a,ハンドセットマイク32bから成る通話部であるハンドセット32,訪問者の映像を表示するためのLCDモニタ等から成る表示部31,集合玄関機1による訪問者からの呼び出しを報知するための呼出音を鳴動する拡声スピーカ33,各種操作を行なうための表示部操作ボタン等を有する操作部34,およびLED等から成る表示灯35を有する生活情報盤3a,3b,・・・と,ハンドセットスピーカ22a,ハンドセットマイク22bから成るハンドセット22,集合玄関機1を操作する訪問者や生活情報盤3a,3b,・・・を操作する居住者からの呼び出しを報知するための呼出音を鳴動する拡声スピーカ23,および居室番号等を表示するためのLCDモニタ等から成る表示部21を有し管理室内等に設置される管理室親機2と,集合玄関機1,生活情報盤3a,3b,・・・および管理室親機2を制御する制御装置5とを備えている。
【0023】
制御装置5は,制御回路51および通信回路52a,52b,52c,52dから構成され,集合玄関機1が通信回路52aを,管理室親機2が通信回路52bを,生活情報盤3a,3b,・・・が通信回路52cを介してそれぞれ制御回路51に接続されている。また,制御回路51に接続されている通信回路52dはHUB8に接続されている。
【0024】
また,集合住宅館内には,集合住宅館内の施設情報,館外の地域情報等の各種情報を保存する情報サーバ9と,管理センタ6内に設けられ情報サーバ9に蓄積されている情報を管理し,情報サーバ9に蓄積されている情報を編集し,編集された情報を情報サーバ9に蓄積する機能を有する管理用パソコン62とを備えている。
【0025】
さらに,集合住宅館内には,館内の店舗と契約する場合,館内契約店舗7が所有し契約した店舗からの広告情報を情報サーバ9に蓄積することにより生活情報盤3a,3b,・・・へ情報を提供し,生活情報盤3a,3b,・・・から情報サーバ9を介して館内契約店舗7に対しての注文を受けるための館内契約店舗用パソコン71を備えている。これにより,館内契約店舗7と情報サーバ9,生活情報盤3a,3b,・・・と情報サーバ9間でアクセスすることができるようになる。

【図1】


「【0026】
ここで,生活情報盤3a,3b,・・・の詳細について説明すると,図2に示すように,表示部31は表示部駆動回路36を介して通信インタフェース(IF)45に接続され,ハンドセット32のハンドセットスピーカ32aはスピーカアンプ43を,ハンドセットマイク32bはマイクアンプ44を介してそれぞれ2線4線変換回路であるCODEC42に接続され,CODEC42は通信IF45に接続されている。また,拡声スピーカ33は拡声スピーカアンプ41を介して音声合成回路40に接続され,音声合成回路40はCPU37に接続され,CPU37は通信IF45に接続されている。また,CPU37には,タッチパネル操作信号送出回路38を介して操作部34が,表示灯駆動回路39を介して表示灯35の新着表示灯35a,予約完了表示灯35bがそれぞれ接続されている。」

【図2】


「【0030】
このような集合住宅インターホンシステムの情報サーバ9は,生活情報盤3a,3b,・・・の操作部34の操作により起動され集合住宅内の施設利用を行なうための予約機能,情報サーバ9に保存された各種情報を取得するための情報取得機能,契約店舗への注文機能等の各種機能を実行する機能を有している。なお,生活情報盤3a,3b,・・・の操作部34は集合住宅内の施設利用を行なうための予約機能,情報サーバ9に保存された各種情報を取得するための情報取得機能,契約店舗への注文機能等の各種機能を起動することができ,また,表示部31は情報サーバ9から取得した情報の表示,情報サーバ9から各種情報を取得するためのメニュー画面の表示をすることができる。
【0031】
次に,生活情報盤3a,3b,・・・のCPU37は,操作部34の操作にしたがって管理センタ6の管理用パソコン62で編集された情報を情報サーバ9から読み出し表示部31に表示する機能を有している。また,生活情報盤3a,3b,・・・のCPU37は,管理用パソコン62により情報サーバ9に新規に登録された情報を新着情報として表示期限設定し,生活情報盤3a,3b,・・・に知らされた新着情報を表示部31に表示されたメニュー画面に基づいて操作部34で取得するための所定の操作をすると,該当する期限情報が含まれた新着情報のタイトルを表示部31に表示させる機能を有している。これにより,新着情報の有効期限を生活情報盤3a,3b,・・・の表示部31で確認することができる。このような生活情報盤3a,3b,・・・は表示灯35に,新着情報を受信したとき点灯または点滅するLED等から成る新着表示灯35aを備えている。これにより,新着情報の有無を生活情報盤3a,3b,・・・で視覚にて確認できる。
【0032】
また,生活情報盤3a,3b,・・・は情報サーバ9に保存された新着情報が複数ある場合は,表示部駆動回路36を介して新着情報のタイトルを一覧で表示部31に表示させる機能を有している。これにより,複数ある新着情報を生活情報盤3a,3b,・・・の表示部31で容易に確認することができる。また,生活情報盤3a,3b,・・・の表示部駆動回路36は,生活情報盤3a,3b,・・・の表示部31に表示された新着情報のタイトルを操作部34にて選択すると,新着情報のタイトルとリンクした詳細情報を情報サーバ9から読み出して表示部31に表示させる機能を有している。これにより,新着情報のタイトルからその詳細情報を表示部31に表示させることができる。
【0033】
次に,管理センタ6の管理用パソコン62は,各種情報を簡易作成するにあたり表示されるレイアウトを変更するためのテンプレートを情報サーバ9に登録する機能を有している。これにより,情報サーバ9に登録されるテンプレートのレイアウトを管理用パソコン62で容易に変更することができる。また,管理用パソコン62は,生活情報盤3a,3b,・・・からの施設予約を管理し,施設予約があったときには,その情報を情報サーバ9に予約完了情報として保存するとともに生活情報盤3a,3b,・・・に施設予約の受付がされた旨の情報を通知する機能を有している。これにより,生活情報盤3a,3b,・・・で施設予約が完了したことを確認できる。なお,生活情報盤3a,3b,・・・は表示灯35に,予約完了情報を受信したとき点灯または点滅するLED等から成る予約完了表示灯35bを備えている。これにより,施設予約が完了したことを生活情報盤3a,3b,・・・で視覚にて確認できる。このような生活情報盤3a,3b,・・・は,施設予約がされた内容を確認するため,操作部34で所定の操作を行なうと情報サーバ9に保存した施設の予約状況を読み出して表示部31に表示させる機能を有している。これにより,生活情報盤3a,3b,・・・の表示部31で施設の予約状況を確認できる。」

「【0036】
なお,集合玄関に居る来訪者が集合玄関機1で住戸内に在室中の居住者または管理室内に在室中のマンション管理人を呼び出して,住戸内の生活情報盤3a,3b,・・・または管理室内の管理室親機2との通話を成立させる動作,居住者が住戸内の生活情報盤3a,3b,・・・で管理人を呼び出しして管理室内の管理室親機2との通話を成立させる動作,管理人が管理室内の管理室親機2で居住者を呼び出しして住戸内の生活情報盤3a,3b,・・・との通話を成立させる動作については従来と同様であるので説明を省略する。」

の記載があるから,引用例1には,

「インターホン機能を有すると共に,システム内機器間のネットワークを通じて種々サービスを受けることができる集合住宅インターホンシステムの生活情報盤3aであって,
訪問者と通話するためのハンドセットスピーカ32a,ハンドセットマイク32bから成る通話部であるハンドセット32,訪問者の映像を表示するためのLCDモニタ等から成る表示部31,集合玄関機1による訪問者からの呼び出しを報知するための呼出音を鳴動する拡声スピーカ33,各種操作を行なうための表示部操作ボタン等を有する操作部34,およびLED等から成る表示灯35を有し,
表示部31は表示部駆動回路36を介して通信インタフェース(IF)45に接続され,ハンドセット32のハンドセットスピーカ32aはスピーカアンプ43を,ハンドセットマイク32bはマイクアンプ44を介してそれぞれ2線4線変換回路であるCODEC42に接続され,CODEC42は通信IF45に接続され,拡声スピーカ33は拡声スピーカアンプ41を介して音声合成回路40に接続され,音声合成回路40はCPU37に接続され,CPU37は通信IF45に接続され,CPU37には,タッチパネル操作信号送出回路38を介して操作部34が,表示灯駆動回路39を介して表示灯35の新着表示灯35a,予約完了表示灯35bがそれぞれ接続され,
集合住宅館内には,集合住宅館内の施設情報,館外の地域情報等の各種情報を保存する情報サーバ9と,管理センタ6内に設けられ情報サーバ9に蓄積されている情報を管理し,情報サーバ9に蓄積されている情報を編集し,編集された情報を情報サーバ9に蓄積する機能を有する管理用パソコン62とを備え,
生活情報盤3aと情報サーバ9間でアクセスすることができ,
表示部31は情報サーバ9から取得した情報の表示,情報サーバ9から各種情報を取得するためのメニュー画面の表示をすることができ,
生活情報盤3aは情報サーバ9に保存された新着情報が複数ある場合は,表示部駆動回路36を介して新着情報のタイトルを一覧で表示部31に表示させる機能,表示部31に表示された新着情報のタイトルを操作部34にて選択すると,新着情報のタイトルとリンクした詳細情報を情報サーバ9から読み出して表示部31に表示させる機能を有しており,
集合玄関に居る来訪者が集合玄関機1で住戸内に在室中の居住者を呼び出して,住戸内の生活情報盤3aとの通話を成立させ,
施設予約がされた内容を確認するため,操作部34で所定の操作を行なうと情報サーバ9に保存した施設の予約状況を読み出して表示部31に表示させる機能を有する,
生活情報盤3a。」

の発明が記載されている。(以下,「引用発明」という。)

(2)拒絶査定において周知文献として引用された特開2013-211729号公報(以下,「引用例2」という。)には,

「【0011】
本発明に係る集合住宅管理システムは,インターホンシステムをベースとして,そこに火災等に対するセキュリティサービスや,電子掲示板等の情報サービスを付加したものである。
【0012】
図1に示すように,実施形態として例示するシステム1は,システム全体を制御する制御装置11より棟内回線(インターホン回線)12が集合住宅棟の各住宅,共用部,管理人室まで敷設され,この回線に,住宅情報端末13等の端末装置が分岐器14を介して接続されている。」

「【0020】
ここでシステム1の基本動作を簡単に説明する。すなわちシステム1は,主たる機能の一つとしてインターホン機能を提供する。すなわちロビーインターホン16で部屋番号を指定した呼出操作がなされると,対応した住宅の住宅情報端末13では呼出音が鳴動して来訪者の映像が表示部13cに映される。その住宅情報端末13で応答操作がなされると,ロビーインターホン16との間で相互通話が可能になる。住宅情報端末13で所定操作をすればロビー扉の電気錠18が解錠できる。また住宅情報端末13と管理人室インターホン15との間での呼出通話,住宅情報端末13同士の呼出通話も提供される。これらの相互通話は一方の終了操作または所定時間の経過によって遮断される。」

「【0047】
図4の(a)?(e)は,住宅情報端末13における各種表示画面の例である。
【0048】
図4(a)はトップ画面W1の例である。上段部は,お知らせアイコンが配置されている。中段部は,現在のセキュリティモードを示す状態アイコン(在宅,外出等)と,モード切替ボタンとが配置されている。下段部は,呼出/伝言ボタン,情報ボタン,記録管理ボタンが配置されている。
【0049】
図4(b)は,情報サービス画面W2の例である。この画面はトップ画面の情報ボタンの操作によって呼び出される。情報サービスのサブカテゴリを呼び出すためのボタンが配置されている。
【0050】
図4(c)は,電子掲示板カテゴリに限定された記事一覧画面W3の例である。この画面は情報サービス画面W2のデジタル掲示板ボタンの操作によって呼び出される。画面には,アンケートを含めた記事のヘッドラインが一覧表示されており,そのそれぞれに対応して詳細ボタンが配置されている。
【0051】
図4(d)は,記事画面W4の例である。この画面には,回答画面W5を呼び出すためのアンケートボタンが配置されている。
【0052】
図4(e)は,回答画面W5の例である。設問毎に,「はい」,「いいえ」の回答ボタンが配置されている。
【0053】
図4(f)は,新着情報画面W5の例である。この画面は,トップ画面W1の表示中(消灯中を含む)に新着情報が受信されると,所定時間ポップアップ表示される。記事のヘッドラインが表記され,確認ボタンが配置されている。確認ボタンの操作によって,図4(d)に示した記事画面W4が呼び出される。
【0054】
これらの画面の中で,トップ画面W1および新着情報画面W6は,その画面情報が住宅情報端末13にローカルファイルとして予め用意されている。それ以外の情報サービス画面W2,記事一覧画面W3,記事画面W4,回答画面W5は,サーバ装置3に保存されており,住宅情報端末13のブラウザ13fによって読み出される。」

【図4】


の記載によれば,

トップ画面の情報ボタンの操作によって呼び出される情報サービスの選択とロビーインターホンとの通話が可能な集合住宅の住宅情報端末において,トップ画面の構成として「モード切替」「呼出」「情報」等をメニュー形式で表示し,「情報」ボタンの操作により「デジタル掲示板」「交通情報一覧」「地域情報」等の情報サービスのサブカテゴリを呼び出すためのボタンが配置されている情報サービス画面を表示し,「デジタル掲示板」ボタンの操作により記事のヘッドラインが一覧表示された記事一覧画面を表示する構成とするものであって,トップ画面を住宅情報端末内にローカル文書として準備し,情報サービス画面,記事一覧画面はサーバに保存されていることが記載されている。

ここで,「住宅情報端末」は,「インターホン」であり,「記事一覧画面」は,情報サービス画面において「デジタル掲示板」を選択した結果を閲覧している画面であって,「情報」以外の「モード切替」等が「情報サービス以外の機能」であることは明らかである。

すなわち,引用例2によれば,

情報サービスの選択と共用玄関機との通話が可能な集合住宅用のインターホンに用意された情報サービスと情報サービス以外の機能のいずれかを選択するためのメニュー形式のトップ画面を表示し,メニュー形式のトップ画面において情報サービスを選択する操作がなされた場合に情報サービス画面を表示し,情報サービス画面において,所定のサービスを選択する操作がなされたとき,サーバから取得したサービスの結果を閲覧させる画面を表示すること,は周知である。(以下,「周知技術1」という。)

(3)拒絶査定において周知文献として引用された特開2012-83985号公報(以下,「引用例3」という。)には,

「【0001】
本発明は,マンション等の建物に設けられて入居者が利用することができる共有施設であって,予約等によって利用することができる共有施設予約管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年のマンション等には,入居者が快適に暮らすための共有施設として,エントランスやロビー等の面積を広く確保してオープン施設として利用することができるようにしている他,ゲストルーム,パーティルーム,集会所,来客用駐車スペース等,事前に予約することによって使用することができる共有施設がある。
【0003】
この際,これらの共有施設は,入居者が時間的に占有することができる共有施設であるため,申し込み順としてしまうのでは不平等となってしまう虞がある。
【0004】
そこで,このような共有施設では,一般の公共施設と同様に,例えば,利用日の1ヶ月前に利用者を決定すると共に,その1週間前から予約を受け付け,申込者が単独であった場合にはそのままその申込者に利用の権利を与え,申込者が重複した場合には抽選により利用者を決定する方式を採用している場合が多い。」

の記載によれば,

マンション等の共有施設の利用者を決定するにあたり,申し込み順とすると不公平となる虞があるために,予約受付と申し込み者が重複した場合には抽選により利用者を決定する方式を採用する場合が多いこと,は周知である。(以下,「周知技術2」という。)

2-3.本件補正発明と引用発明の対比

引用発明の「集合住宅インターホンシステムの生活情報盤3a」は,本件補正発明の「集合住宅用住宅情報盤」に,
引用発明の「情報サーバ9」は,本件補正発明の「サーバ装置」に,
引用発明の「集合玄関機1」は,本件補正発明の「共用玄関機」に,
引用発明の「施設」は,本件補正発明の「共用施設」に,
それぞれ相当する。

引用発明の集合住宅インターホンシステムは,「システム内機器間のネットワークを通じて種々サービスを受けることができる」ものであって,「生活情報盤3aの操作部34の操作により起動され集合住宅内の施設利用を行なうための予約機能,情報サーバ9に保存された各種情報を取得するための情報取得機能,契約店舗への注文機能等の各種機能を実行する機能」を情報サーバ9が有しており,生活情報盤3aは「通信IF41」を有し,「生活情報盤3aと情報サーバ9間でアクセスすることができ」るから,引用発明の「生活情報盤3a」は,「ネットワークを介してサーバ装置に接続され」ているといえる。
引用発明は,「訪問者と通話するためのハンドセットスピーカ32a,ハンドセットマイク32bから成る通話部であるハンドセット32,訪問者の映像を表示するためのLCDモニタ等から成る表示部31,集合玄関機1による訪問者からの呼び出しを報知するための呼出音を鳴動する拡声スピーカ33」を有しており,「集合玄関に居る来訪者が集合玄関機1で住戸内に在室中の居住者を呼び出して,住戸内の生活情報盤3aとの通話を成立させ」ることができるから,「共用玄関機と通話する機能」を有しているといえる。
したがって,引用発明の「集合住宅インターホンシステムの生活情報盤3a」は,「ネットワークを介してサーバ装置に接続され,共同玄関機と通話する機能を有する集合住宅用住宅情報盤」である。

引用発明は,「表示部31は情報サーバ9から取得した情報の表示,情報サーバ9から各種情報を取得するためのメニュー画面の表示をすることができ」,「メニュー画面を表示」して「表示された新着情報のタイトルを操作部34にて選択する」ものであって,「操作部34」には,「タッチパネル操作信号送出回路38を介して」CPU37が接続されており,図1を参照すれば,「操作部34」は「表示部31」に存在しているから,引用発明の「表示部31」は「メニュー画面を表示」して「表示された新着情報のタイトルを操作部34にて選択する」ものであって,「タッチパネル」であるといえる。
つまり,引用発明は「メニュー画面を表示するタッチパネル式の表示部を備え」ている。

引用発明の「メニュー画面」は,「情報サーバ9から各種情報を取得するため」の画面である。
そして,「生活情報盤3a」は「新着情報のタイトルを一覧で表示部31に表示させ」て,「表示部31に表示された新着情報のタイトルを操作部34にて選択すると,新着情報のタイトルとリンクした詳細情報を情報サーバ9から読み出して表示部31に表示させる機能を有し」ており,また「施設予約がされた内容を確認するため,操作部34で所定の操作を行なうと情報サーバ9に保存した施設の予約状況を読み出して表示部31に表示させる機能を有し」ている。
つまり,引用発明の「メニュー画面」から,新着情報や施設の予約状況を読み出すことが可能である。
ここで,本願の【0030】によれば,「サービス結果情報を閲覧させるため」の画面が「サービス実行画面」であるから,引用発明の「予約状況」を表示している画面は,本件補正発明の「サービス実行画面」に相当する。

引用発明の生活情報盤3aが施設の予約を行うにあたり,タッチパネルである表示部31に「施設の予約申し込みを受け付けるための画面」が表示されることは自明である。
さらに,施設予約がされた内容を確認するため,表示部31に「予約状況」を表示する機能を有しているから,「予約申し込みに対する結果」を表示部31に表示する,といえる。

したがって,本件補正発明と引用発明は,

「ネットワークを介してサーバ装置に接続され,共同玄関機と通話する機能を有する集合住宅用住宅情報盤において,
前記集合住宅用住宅情報盤にメニュー画面を表示するタッチパネル式の表示部を備え,
前記表示部は,前記メニュー画面において,前記情報サービスを選択する操作がなされたとき,前記ネットワークを介して取得したサービス実行画面を表示し,
前記サービス実行画面は,共用施設の予約申し込みを受け付けるための画面を含み,前記予約申し込みに対する結果を前記表示部に表示することを特徴とする集合住宅用住宅情報盤。」

で一致し,下記の点で相違する。

相違点1

表示部への表示に関し,本件補正発明のメニュー画面は「前記集合住宅用住宅情報盤に用意された情報サービスと前記情報サービス以外の機能とのいずれかを選択するため」の画面であって,メニュー画面の「情報サービス」を選択する操作がなされたときに「情報サービス画面」を表示し,「情報サービス画面において,前記情報サービスを選択する操作がなされたとき,前記ネットワークを介して取得したサービス実行画面」を表示するのに対し,引用発明はどのような画面を表示して新着情報や施設の予約状況を読み出すのか記載がない点。

相違点2

本件補正発明は,共用施設の予約申し込みが「抽選を伴う」ものであって,予約申し込みに対する結果として「抽選結果」を表示するのに対し,引用発明は,予約申し込みが抽選を伴う記載はなく,予約申し込みに対する結果が「予約状況」である点。

2-4.相違点についての検討

相違点1について

引用発明は,メニュー画面を表示して,情報サービスを選択することが可能である一方,共用玄関機と通話する機能も有している。
ここで,情報サービスの選択と共用玄関機との通話が可能な集合住宅用のインターホンに用意された情報サービスと情報サービス以外の機能のいずれかを選択するためのメニュー形式のトップ画面を表示し,メニュー形式のトップ画面において情報サービスを選択する操作がなされた場合に情報サービス画面を表示し,情報サービス画面において,所定のサービスを選択する操作がなされたとき,サーバから取得したサービスの結果を閲覧させる画面を表示することが周知技術1であって,「サービスの結果を閲覧させる画面」とは,本件補正発明の「サービス実行画面」であり,サーバから取得することは,ネットワークを介して取得することである。

引用発明の「生活情報盤3a」は,「集合住宅」用の「インターホン」であるから,引用発明の生活情報盤3aの表示部31への表示に際し,周知技術1のように「住宅情報盤に用意された情報サービスと情報サービス以外の機能のいずれかを選択するためのメニュー画面」を表示し,「メニュー画面において情報サービスを選択する操作がなされた場合に情報サービス画面を表示」し,「情報サービス画面において,所定のサービスを選択する操作がなされたとき,ネットワークを介して取得したサービス実行画面を表示」することは,当業者が容易に想到しうることである。

相違点2について

マンション等の共有施設の利用者を決定するにあたり,申し込み順とすると不公平となるために,予約受付と申し込み者が重複した場合には抽選により利用者を決定する方式を採用する場合が多いことが,周知技術2として知られるように周知であり,引用発明の共用施設の予約申し込みを,周知技術2のように,共用施設利用者の決定を不公平としないよう,抽選により利用者を決定する方式,すなわち「抽選を伴う」予約申し込みとすることは容易に想到しうることである。
ここで,抽選を行う場合は,「予約申し込みに対する結果」は「抽選結果」に他ならないから,引用発明の「予約状況」として「抽選結果」を表示するようにすることは当然のことに過ぎない。

つまり,引用発明において,「共用施設の抽選を伴う予約申し込み」を受け付け,予約申し込みに対する抽選結果を表示部に表示するようにすることは,当業者が容易に想到しうることである。

したがって,本件補正発明は,引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。

2-5.むすび

上記2-4.に記載したとおり,本件補正発明は引用発明及び周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


3.本願発明について

3-1.本願発明

平成31年4月22日の手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成30年12月28日の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。

「ネットワークを介してサーバ装置に接続され,共同玄関機またはドアホンと通話する機能を有する集合住宅用住宅情報盤において,
前記集合住宅用住宅情報盤に用意された情報サービスと前記情報サービス以外の機能とのいずれかを選択するためのメニュー画面を表示するタッチパネル式の表示部を備え,
前記表示部は,前記メニュー画面において,前記情報サービスを選択する操作がなされたとき,情報サービス画面を表示し,
前記情報サービス画面において,前記情報サービスを選択する操作がなされたとき,前記ネットワークを介して取得したサービス実行画面を表示し,
前記サービス実行画面は,共用施設,物品の使用および物品の貸出の少なくとも1以上の予約申し込みを受け付けるための画面を含むことを特徴とする集合住宅用住宅情報盤。」

3-2.原査定の拒絶の理由

平成31年1月28日付けの拒絶査定の理由の概要は,以下のとおりである。

1.(進歩性)この出願の請求項1-8に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特開2004-128624号公報
2.特開2012-83985号公報(周知技術を示す文献)
3.特開2009-266099号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2004-135202号公報(周知技術を示す文献)
5.特開2013-211729号公報(周知技術を示す文献)
6.特開2013-211727号公報(周知技術を示す文献;新たに引用された文献)
7.特開2012-182539号公報(周知技術を示す文献;新たに引用された文献)
8.特開2013-211730号公報(周知技術を示す文献;新たに引用された文献)

3-3.引用例記載の発明

引用発明は,「2-2.引用例記載の発明」の(1)に記載したとおりである。

3-4.本願発明と引用発明の対比と判断

本願発明は,前記2.で検討した本件補正発明において,予約申し込みの対象を「共用施設」から「共用施設,物品の使用および物品の貸出の少なくとも1以上」にするとともに,「抽選を伴う予約申し込み」から「抽選を伴う」との限定を削除したものである。

そうすると,本願発明の構成要件をすべて含み,さらに構成要件を限定した本件補正発明が,前記2-4.に記載したとおり,引用発明及び周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も同様の理由により,引用発明及び周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。


4.まとめ

以上のとおり,本願発明は,引用発明及び周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本願は,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-01-14 
結審通知日 2020-01-21 
審決日 2020-02-05 
出願番号 特願2017-154030(P2017-154030)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04M)
P 1 8・ 537- Z (H04M)
P 1 8・ 121- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 平野 崇中村 信也寺谷 大亮  
特許庁審判長 北岡 浩
特許庁審判官 中野 浩昌
吉田 隆之
発明の名称 集合住宅用住宅情報盤、集合住宅用インターホンシステム、情報端末の表示方法及びその表示方法を実行させるためのプログラム  
代理人 協明国際特許業務法人  

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