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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 B21B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B21B
管理番号 1361043
審判番号 不服2019-9816  
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-07-24 
確定日 2020-03-19 
事件の表示 特願2017-58739「スラブの幅圧下方法及びサイジングプレス」拒絶査定不服審判事件〔平成30年3月8日出願公開、特開2018-34204〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年3月24日(優先権主張 平成28年8月30日)の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年10月26日付け :拒絶理由通知
平成30年12月20日 :意見書、手続補正書の提出
平成31年 4月26日付け :拒絶査定
令和 1年 7月24日 :審判請求書と同時に手続補正書の提出
令和 1年 9月20日 :上申書

第2 令和1年7月24日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和1年7月24日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「一対の金型を用いた間欠的な鍛造によりスラブを幅圧下する幅圧下方法において、
前記一対の金型として、前記スラブの搬送方向下流側に前記搬送方向と平行となる平行面と前記スラブの搬送方向上流側に前記搬送方向に所定の角度で傾斜した傾斜面とをそれぞれ有するものを用い、
前記スラブの搬送方向下流側の先端部及び前記スラブの搬送方向上流側の後端部の少なくとも一方の少なくとも一部を幅圧下する前に、前記一対の金型の前記スラブとの接触面である前記平行面及び前記傾斜面に潤滑剤を塗布し、
前記潤滑剤を塗布して幅圧下を行う領域を、前記スラブの板幅と同じ長さの先端部とすることを特徴とするスラブの幅圧下方法。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成30年12月20日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「一対の金型を用いた間欠的な鍛造によりスラブを幅圧下する幅圧下方法において、
前記一対の金型として、前記スラブの搬送方向下流側に前記搬送方向と平行となる平行面と前記スラブの搬送方向上流側に前記搬送方向に所定の角度で傾斜した傾斜面とをそれぞれ有するものを用い、
前記スラブの搬送方向下流側の先端部及び前記スラブの搬送方向上流側の後端部の少なくとも一方の少なくとも一部を幅圧下する前に、前記一対の金型の前記スラブとの接触面である前記平行面及び前記傾斜面に潤滑剤を塗布することを特徴とするスラブの幅圧下方法。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「潤滑剤」の塗布について、上記のとおり「前記潤滑剤を塗布して幅圧下を行う領域を、前記スラブの板幅と同じ長さの先端部とする」という限定を付加するものである。そして、本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開昭61-222601号公報(昭和61年10月3日出願公開。以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある(下線は理解の便のため当審にて付与。以下同。)。

(ア)公報第2ページ左上欄第2-13行
「そこで、スラブの端部異形を回避し、かつ先端から後端までを逐次に幅圧下する連続幅圧下プレス方法の提供を、この発明の目的とする。
(問題点を解決するための手段)
この発明は、熱間スラブの搬送方向に沿う平行部、及び該平行部の上記搬送方向の入側に逃げ傾斜部を備える一対の金敷により、熱間スラブを幅方向に挾んで先端から後端までを逐次に幅圧下する際、上記熱間スラブの先端及び後端では、少なくとも上記逃げ傾斜部に潤滑を適用して幅圧下を加えることを特徴とする熱間スラブの連続幅圧下プレス方法である。」

(イ)公報第2ページ左上欄第14行-右上欄下から1行
「さてスラブ1の幅圧下は、例えば第1図に示す一対の金敷2を用いる。金敷2はスラブ1の搬送方向に沿う平行部3と、平行部3から搬送方向の入側に続く相互間隔の開いた逃げ傾斜部4とを備える。なお図中5は、スラブのバツクリング防止パツドである。そして金敷2を所定の幅圧下量の下で周期的に振動させつつ、その間隙にスラブ1を連続的または間欠的に送り込み、先端から後端までを順次幅圧下する。
まずスラブ1の先端を幅圧下するに当つては、金敷2の逃げ傾斜部4及びスラブ1間に潤滑剤を供給して両者間の摩擦力を小さくする。潤滑剤としては、通常の熱間圧延に用いる圧延油の如き耐熱性に富む油、あるいは黒鉛、ワツクス等を使用する。供給手段としては、油の場合は金敷2の逃げ傾斜部4へ向けて噴霧し、また黒鉛、ワツクスの場合は逃げ傾斜部4へ塗布すればよい。
スラブ1の先端に続く中央部では、潤滑剤を供給しない状態での圧下を行う。このときスラブ1及び金敷2間の摩擦力は、潤滑剤が介在していないため、スラブ1の先端での幅圧下に比べかなり大きくなる。
さらに順次に幅圧下が進みスラブ1の後端に圧下領域が近付いたならば、上記スラブ1の先端での幅圧下と同様に、金敷2の逃げ傾斜部4及びスラブ1間に潤滑剤を供給して幅圧下をする。」

(ウ)公報第3ページ右上欄第5行-左下欄第5行
「(実施例)
上掲の実験と同様の金敷を用い、その圧下面に第6図に示す如きスラブの搬送方向に延びる幅25mm、深さ5mmの溝6をピッチ50mmで形成した。そして先の実験と同様の圧下条件にて、スラブの先後端の圧下に際して熱間圧延に用いる圧延油を金敷圧下面に噴霧し、先後端を除く定常部の圧下に際しては無潤滑状態で幅圧下を行つた。スラブの寸法は、板厚220mm、幅1500mm、長さ8400mmであり、幅圧下代350mmとした。また圧延油の噴霧は、スラブの先端及び後端の各端面から約1000mmの部分の幅圧下に当つて実施した。
この幅圧下によつて得たスラブは、従来の機械荒仕上金敷を用いた無潤滑状態の連続プレスを行つたものに比べて、スラブ先後端の端部異形の変形量がほぼ半分になり、また定常部でのドツグボーン形状の増厚量も約20%減少した。」

イ 上記アの記載事項から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「一対の金敷2を用いて、金敷2を所定の幅圧下量の下で周期的に振動させつつ、その間隙にスラブ1を間欠的に送り込み、先端から後端までを順次幅圧下する方法において、
前記一対の金敷2は、スラブ1の搬送方向に沿う平行部3と、平行部3から搬送方向の入側に続く相互間隔の開いた逃げ傾斜部4とを備え、
スラブ1の先後端の圧下に際して、金敷2の少なくとも上記逃げ傾斜部4に潤滑を適用し、又は、圧延油を金敷圧下面に噴霧し、
前記圧延油を金敷圧下面に噴霧して幅圧下を行う領域を、前記スラブ1の板幅1500mmに対してスラブの先端及び後端の各端面から約1000mmの部分とするスラブ1の幅圧下方法。」

(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比すると、以下のとおりとなる。

(ア)引用発明の「金敷2」は本件補正発明の「金型」に相当し、以下同様に「スラブ1」は「スラブ」に、「平行部3」は「平行面」に、「逃げ傾斜部4」は「傾斜面」に、「圧延油」は「潤滑剤」に、それぞれ相当する。

(イ)引用発明の「一対の金敷2を用いて、金敷2を所定の幅圧下量の下で周期的に振動させつつ、その間隙にスラブ1を間欠的に送り込み、先端から後端までを順次幅圧下する方法」は、技術常識から、鍛造により幅圧下していることは明らかであるから、本件補正発明の「一対の金型を用いた間欠的な鍛造によりスラブを幅圧下する幅圧下方法」に相当する。

(ウ)引用発明の「前記一対の金敷2は、スラブ1の搬送方向に沿う平行部3と、平行部3から搬送方向の入側に続く相互間隔の開いた逃げ傾斜部4とを備え」ることは、「平行部3」が「スラブ1」の搬送方向の出側(下流側)にあることから、本件補正発明の「前記一対の金型として、前記スラブの搬送方向下流側に前記搬送方向と平行となる平行面と前記スラブの搬送方向上流側に前記搬送方向に所定の角度で傾斜した傾斜面とをそれぞれ有するものを用い」ることに相当する。

(エ)引用発明の「スラブ1の先後端の圧下に際して」は、「スラブ1の先端」が「スラブの搬送方向下流側の先端部」に相当し、「スラブ1の後端」が「スラブの搬送方向上流側の後端部」に相当するから、本件補正発明の「前記スラブの搬送方向下流側の先端部及び前記スラブの搬送方向上流側の後端部の少なくとも一方の少なくとも一部を幅圧下する前に」に相当する。

(オ)上記(2)ア(ウ)に「上掲の実験と同様の金敷を用い、その圧下面に第6図に示す如きスラブの搬送方向に延びる幅25mm、深さ5mmの溝6をピッチ50mmで形成した。」と記載され、第6図を参酌すると、「溝6」は、「平行部3」及び「傾斜部4」に形成されていることが看てとれるから、「圧下面」は「平行部3」及び「傾斜部4」を含むことがわかる。また、「少なくとも上記逃げ傾斜部4に潤滑を適用」することが記載され、かつ、前述のとおり「(金敷)圧下面」に「金敷2」の「平行部3」及び「傾斜部4」が含まれることが開示されていることから、引用発明の「金敷2の少なくとも上記逃げ傾斜部4に潤滑を適用し、又は、圧延油を金敷圧下面に噴霧」することは、本件補正発明の「前記一対の金型の前記スラブとの接触面である前記平行面及び前記傾斜面に潤滑剤を塗布」することに相当する。

イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「一対の金型を用いた間欠的な鍛造によりスラブを幅圧下する幅圧下方法において、
前記一対の金型として、前記スラブの搬送方向下流側に前記搬送方向と平行となる平行面と前記スラブの搬送方向上流側に前記搬送方向に所定の角度で傾斜した傾斜面とをそれぞれ有するものを用い、
前記スラブの搬送方向下流側の先端部及び前記スラブの搬送方向上流側の後端部の少なくとも一方の少なくとも一部を幅圧下する前に、前記一対の金型の前記スラブとの接触面である前記平行面及び前記傾斜面に潤滑剤を塗布するスラブの幅圧下方法。」

【相違点】
本件補正発明は、「潤滑剤を塗布して幅圧下を行う領域を、前記スラブの板幅と同じ長さの先端部とする」のに対し、引用発明は、「圧延油を金敷圧下面に噴霧して幅圧下を行う領域を、前記スラブ1の板幅1500mmに対してスラブの先端及び後端の各端面から約1000mmの部分とする」点。

(4)判断
上記相違点について、判断する。

ア 上記(2)ア(ウ)に「圧延油の噴霧は、スラブの先端及び後端の各端面から約1000mmの部分の幅圧下に当つて実施した」、「この幅圧下によつて得たスラブは、従来の機械荒仕上金敷を用いた無潤滑状態の連続プレスを行つたものに比べて、スラブ先後端の端部異形の変形量がほぼ半分に」なることが記載されるとおり、端面から約1000mmの部分の幅圧下に対して圧延油(潤滑剤)を噴霧した場合には、圧延油(潤滑剤)を噴霧しない場合と比べて端部異形の変形量がほぼ半分になり、圧延油(潤滑剤)を噴霧して幅圧下を行う範囲をさらに長くすると端部異形の変形量はさらに減少することが理解できる。一方、前記範囲を長くするほど圧延油(潤滑剤)の使用量が増すことは自明な事項である。
ここで、スラブの端部の変形量、つまり、スラブの切断量をどの程度にするか、及び、潤滑材の使用量をどの程度にするかは、状況に応じて当業者が適宜選択し得る設計事項である。
引用発明においては、本件補正発明と比較して圧延油(潤滑剤)を噴霧して幅圧下を行う範囲が短いことから、圧延油(潤滑剤)の使用量が減っている代わりに、スラブの端部の変形量、つまり、スラブの切断量が増えていることになるが、スラブの切断量を減らすために前記範囲をより長くすることは、当業者にとって容易に想到し得ることであり、その際、前記範囲をどの程度長くしてスラブの切断量をどの程度減らすかは、前述のとおり状況に応じて当業者が適宜選択し得る設計事項であり、前記範囲をスラブの板幅と同じ長さ程度にすることに特段の困難性はない。

イ 本件補正発明の奏する作用効果について、本件明細書の段落【0048】-【0050】、【表1】に実施例1-1?1-3及び比較例1を記載し、実施例1-1では、スラブ3の長手方向全長にわたる複数回の幅圧下工程において潤滑剤を毎回塗布した条件、実施例1-2では、最先端から3プレス(回)までの各幅圧下工程前、及び最後端までの幅圧下となる最後の3プレスの各幅圧下工程前に、潤滑剤を塗布した条件、実施例1-3では、最先端の幅圧下工程前、及び最後端の幅圧下工程前に潤滑剤を塗布した条件、比較例1では、スラブ3に対して潤滑剤を塗布しなかった条件を示し、各条件においてスラブの切断量がどのように変化するかを示している。
しかし、潤滑剤を塗布して幅圧下を行う領域の長さとスラブの板幅との関係については、「最先端から3プレスまでの領域及び最後端までの最後の3プレスの領域は、それぞれ、最先端及び最後端からの長手方向の長さが板幅の長さ(1500mm)未満となる。」(段落【0049】)と記載されているのみであり、結局、潤滑剤を塗布して幅圧下を行う領域を、スラブの板幅と同じ長さの先端部とする実施例はないことから、「スラブの板幅と同じ長さ」とすることに臨界的意義があるか否かは不明である。
そうすると、上記相違点を勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

ウ したがって、本件補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
令和1年7月24日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成30年12月20日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1ないし5に係る発明は、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明であるか、又は、引用文献1ないし3に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号、又は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開昭61-222601号公報
引用文献2:特開2000-254748号公報
引用文献3:特開2000-254709号公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
ア 本願発明と引用発明とを対比する。

(ア)引用発明の「金敷2」は本願発明の「金型」に相当し、以下同様に「スラブ1」は「スラブ」に、「平行部3」は「平行面」に、「逃げ傾斜部4」は「傾斜面」に、「圧延油」は「潤滑剤」に、それぞれ相当する。

(イ)引用発明の「一対の金敷2を用いて、金敷2を所定の幅圧下量の下で周期的に振動させつつ、その間隙にスラブ1を間欠的に送り込み、先端から後端までを順次幅圧下する方法」は、技術常識から、鍛造により幅圧下していることは明らかであるから、本願発明の「一対の金型を用いた間欠的な鍛造によりスラブを幅圧下する幅圧下方法」に相当する。

(ウ)引用発明の「前記一対の金敷2は、スラブ1の搬送方向に沿う平行部3と、平行部3から搬送方向の入側に続く相互間隔の開いた逃げ傾斜部4とを備え」ることは、「平行部3」が「スラブ1」の搬送方向の出側(下流側)にあることから、本願発明の「前記一対の金型として、前記スラブの搬送方向下流側に前記搬送方向と平行となる平行面と前記スラブの搬送方向上流側に前記搬送方向に所定の角度で傾斜した傾斜面とをそれぞれ有するものを用い」ることに相当する。

(エ)引用発明の「スラブ1の先後端の圧下に際して」は、「スラブ1の先端」が「スラブの搬送方向下流側の先端部」に相当し、「スラブ1の後端」が「スラブの搬送方向上流側の後端部」に相当するから、本願発明の「前記スラブの搬送方向下流側の先端部及び前記スラブの搬送方向上流側の後端部の少なくとも一方の少なくとも一部を幅圧下する前に」に相当する。

(オ)上記第2の2の(2)ア(ウ)に「上掲の実験と同様の金敷を用い、その圧下面に第6図に示す如きスラブの搬送方向に延びる幅25mm、深さ5mmの溝6をピッチ50mmで形成した。」と記載され、第6図を参酌すると、「溝6」は、「平行部3」及び「傾斜部4」に形成されていることが看てとれるから、「圧下面」は「平行部3」及び「傾斜部4」を含むことがわかる。また、「少なくとも上記逃げ傾斜部4に潤滑を適用」することが記載され、かつ、前述のとおり「(金敷)圧下面」に「金敷2」の「平行部3」及び「傾斜部4」が含まれることが開示されていることから、引用発明の「金敷2の少なくとも上記逃げ傾斜部4に潤滑を適用し、又は、圧延油を金敷圧下面に噴霧」することは、本願発明の「前記一対の金型の前記スラブとの接触面である前記平行面及び前記傾斜面に潤滑剤を塗布」することに相当する。

イ 以上のことから、本願発明と引用発明とは以下のとおり一致し、相違点はない。
【一致点】
「一対の金型を用いた間欠的な鍛造によりスラブを幅圧下する幅圧下方法において、
前記一対の金型として、前記スラブの搬送方向下流側に前記搬送方向と平行となる平行面と前記スラブの搬送方向上流側に前記搬送方向に所定の角度で傾斜した傾斜面とをそれぞれ有するものを用い、
前記スラブの搬送方向下流側の先端部及び前記スラブの搬送方向上流側の後端部の少なくとも一方の少なくとも一部を幅圧下する前に、前記一対の金型の前記スラブとの接触面である前記平行面及び前記傾斜面に潤滑剤を塗布するスラブの幅圧下方法。」

ウ よって、本願発明は引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2020-01-15 
結審通知日 2020-01-21 
審決日 2020-02-05 
出願番号 特願2017-58739(P2017-58739)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (B21B)
P 1 8・ 121- Z (B21B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 河口 展明坂口 岳志  
特許庁審判長 栗田 雅弘
特許庁審判官 中川 隆司
青木 良憲
発明の名称 スラブの幅圧下方法及びサイジングプレス  
代理人 森 哲也  
代理人 宮坂 徹  
代理人 廣瀬 一  
代理人 田中 秀▲てつ▼  

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