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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 B41J
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない。 B41J
管理番号 1361240
審判番号 不服2019-4207  
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-04-01 
確定日 2020-04-02 
事件の表示 特願2014-203058「画像形成装置及びその制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 5月 9日出願公開、特開2016- 68521〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年10月1日に出願したものであって、平成29年9月29日付けで手続補正がなされ、平成30年7月13日付けで拒絶の理由が通知され、同年9月14日付けで意見書が提出されるとともに、手続補正がなされ、同年12月27日付けで拒絶査定(原査定)がなされ、これに対し、平成31年4月1日付けで拒絶査定に対する不服審判請求がなされるとともに、手続補正がなされたものである。


第2 平成31年4月1日付け手続補正書による補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成31年4月1日付け手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲について、下記(1)に示す本件補正前の(すなわち、平成30年9月14日付けで提出された手続補正書により補正された)特許請求の範囲の請求項1を、下記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1(以下「本願補正発明」という。)へと補正するものを含むである。(下線は審決で付した。以下同じ。)

(1)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「画像形成装置であって、
前記画像形成装置を低電力状態に移行させる移行指示を受信したときに移行するべき低電力状態として、前記画像形成装置内の所定のデバイスに電力が供給される第1のモード、又は、前記所定のデバイスへの電力供給が停止される第2のモードを選択する第1選択手段と、
前記画像形成装置を低電力状態から復帰させる復帰指示を受信したときに、前記画像形成装置を低電力状態から、前記所定のデバイスに電力が供給される第3のモード、又は、前記所定のデバイスへの電力供給がされない第4のモードに復帰する復帰手段と、
前記第1選択手段によって前記第1のモードが選択された場合、前記復帰手段が前記画像形成装置を低電力状態から前記第3のモードに復帰するのを禁止する禁止手段と、を備えることを特徴とする画像形成装置。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「画像形成装置であって、
前記画像形成装置を低電力状態に移行させる移行指示を受信したときに移行するべき低電力状態として、前記画像形成装置内の所定のデバイスに電力が供給される第1のモード、又は、前記所定のデバイスへの電力供給が停止される第2のモードを選択する第1選択手段と、
前記画像形成装置を低電力状態から復帰させる復帰指示を受信したときに、第3のモードが設定されていれば、前記画像形成装置を前記低電力状態から前記所定のデバイスへの電力が停止されている第1の電力状態に復帰させ、第4のモードが設定されていれば、前記画像形成装置を前記低電力状態から前記所定のデバイスに電力が供給される第2の電力状態に復帰させる復帰手段と、を備え、
前記復帰手段は、少なくとも前記第1選択手段によって前記第1のモードが選択されている場合、前記復帰指示を受信しても前記画像形成装置を前記低電力状態から前記第1の電力状態に復帰させないことを特徴とする画像形成装置。」

2 補正の適否
(1)補正事項
上記1によれば、本件補正は、
本件補正前の「前記画像形成装置を低電力状態から復帰させる復帰指示を受信したときに、前記画像形成装置を低電力状態から、前記所定のデバイスに電力が供給される第3のモード、又は、前記所定のデバイスへの電力供給がされない第4のモードに復帰する復帰手段と、前記第1選択手段によって前記第1のモードが選択された場合、前記復帰手段が前記画像形成装置を低電力状態から前記第3のモードに復帰するのを禁止する禁止手段と、を備えること」を「前記画像形成装置を低電力状態から復帰させる復帰指示を受信したときに、第3のモードが設定されていれば、前記画像形成装置を前記低電力状態から前記所定のデバイスへの電力が停止されている第1の電力状態に復帰させ、第4のモードが設定されていれば、前記画像形成装置を前記低電力状態から前記所定のデバイスに電力が供給される第2の電力状態に復帰させる復帰手段と、を備え、前記復帰手段は、少なくとも前記第1選択手段によって前記第1のモードが選択されている場合、前記復帰指示を受信しても前記画像形成装置を前記低電力状態から前記第1の電力状態に復帰させないこと」とする補正(以下「補正事項」という。)、を含むものである。

(2)新規事項の追加の有無について
上記補正事項に関して、本願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、これらを「当初明細書等」という。)には、以下の記載がある。
「【0021】
図2は、操作部5に表示される電力モード設定画面の例を示す図である。本実施の形態では、画像形成装置1000の電力モードを複数設定可能である。特に、ジョブ実行可能状態と低電力状態のそれぞれにおける電力モード設定することができる。低電力状態はジョブ実行可能状態よりも消費電力の少ない状態である。低電力状態における電力モードには、節電モード(第1のモード)とスリープモード(第2のモード)とがある。ジョブ実行可能状態における電力モードには、エコ復帰ONモード(第3のモード)とエコ復帰OFFモード(第4のモード)とがある。」
「【0023】
「ジョブ実行可能状態」とは、原則として、ジョブ実行指示を受け付けると速やかにジョブの処理に移行できる状態であり、一般に、スタンバイ状態と同義である。しかし、ジョブ実行可能状態であっても、省電力と静音性を向上させるために、エコ復帰OFFモードとは別にエコ復帰ONモードが設けられている。所定のデバイスの電源は、エコ復帰OFFモードではオフに維持されるが、エコ復帰ONモードではオフに維持された状態で、実行するジョブが決定されるとそのジョブに応じたデバイスの電源がオンにされる。すなわちエコ復帰ONモードは、実行するジョブが確定し、すなわち使用する機能が確定した時点で、必要なデバイスの電源を入れるモードである。
【0024】
節電モードとエコ復帰ONモードとは、目的が相反する関係にあるので、同時に設定される状態となるのはユーザの意図に沿わない可能性が高い。そこで、コントローラ1は、電力モードの組み合わせとしては、節電モードとエコ復帰OFFモードとの組み合わせ、または、スリープモードとエコ復帰ONモードとの組み合わせ、のいずれかとなるよう電力モードを設定する。そのための制御は図5?図7で後述する。
【0025】
ジョブ実行可能状態で低電力移行復帰ボタン5aが押下されると、画像形成装置100力状態へと移行する。また、低電力状態で低電力移行復帰ボタン5aが押下されると、低電力状態からジョブ実行可能状態へと移行する。
【0026】
ジョブ実行可能状態から低電力状態へ移行したとき、操作部5の表示部に、図2(a)または図2(b)に示す低電力状態時の電力モード設定画面が表示される。図2(a)、(b)ではそれぞれ、低電力状態における電力モードとしてスリープモード、節電モードが設定されている状態を示している。これらの画面で、ユーザがスリープまたは節電のボタンを押下すれば、設定状態を切り替えることができ、OKボタンを押下するとその設定状態が確定する。」
「【0044】
本実施の形態によれば、CPU101は、低電力状態における電力モードをスリープモードから節電モードへと切り替える場合には、それと併せて、ジョブ実行可能状態における電力モードをエコ復帰ONモードからエコ復帰OFFモードへと切り替える。また、CPU101は、ジョブ実行可能状態における電力モードをエコ復帰OFFモードからエコ復帰ONモードへと切り替える場合には、それと併せて、低電力状態における電力モードを節電モードからスリープモードへと切り替える。その結果、節電モードとエコ復帰OFFモードとの組み合わせ、または、スリープモードとエコ復帰ONモードとの組み合わせ、のいずれかとなるよう電力モードが設定される。これにより、目的が相反するようなモード設定の組み合わせとなることを避け、省電力と時間短縮との整合をとることができる。よって、低電力状態とジョブ実行可能状態とで、ユーザの意向に沿った電力状態を設定することができる。」
上記記載より、当初明細書等には、低電力状態においてスリープのボタンが押下されると、電力モードとしてスリープモードが設定され、ジョブ実行可能状態における電力モードがエコ復帰ONモードへと切り替わるよう電力状態が設定され、低電力状態において節電のボタンが押下されると、電力モードとして節電モードが設定され、ジョブ実行可能状態における電力モードがエコ復帰OFFモードへと切り替わるよう電力状態が設定され、低電力状態で低電力移行復帰ボタンが押下されると、低電力状態における電力モードがスリープモードの場合は、ジョブ実行可能状態における電力モードをエコ復帰ONモードへと移行し、低電力状態における電力モードが節電モードの場合は、ジョブ実行可能状態における電力モードをエコ復帰OFFモードへと移行する手段が記載されているものと認められる。
そして、本願補正発明及び当初明細書等の記載より、本願補正発明の「第1のモード」、「第2のモード」、「第3のモード」、「第4のモード」及び「『スリープのボタン』及び『節電のボタン』」は、それぞれ、当初明細書等の「節電モード」、「スリープモード」、「エコ復帰ONモード」、「エコ復帰OFFモード」及び「第1選択手段」に対応する。
また、本願補正発明の「第1の電力状態」及び「第2の電力状態」は、それぞれ、当初明細書等の「エコ復帰ONモード」の状態及び「エコ復帰OFFモード」の状態に対応する。
そうすると、当初明細書等には、低電力状態において第1選択手段が押下されると、電力モードとして第2のモードが設定され、ジョブ実行可能状態における電力モードが第3のモードへと切り替わるよう電力状態が設定され、低電力状態において第1選択手段が押下されると、電力モードとして第1のモードが設定され、ジョブ実行可能状態における電力モードが第4のモードへと切り替わるよう電力状態が設定され、低電力状態で低電力移行復帰ボタンが押下されると、低電力状態における電力モードが第2のモードの場合は、ジョブ実行可能状態における電力モードを第1の電力状態である第3のモードへと移行し、低電力状態における電力モードが第1のモードの場合は、ジョブ実行可能状態における電力モードを第2の電力状態である第4のモードへと移行する手段が記載されているものと認められる。
これに対し、上記補正事項には、「第1選択手段によって第1のモードが選択されている場合、復帰指示を受信しても画像形成装置を低電力状態から第1の電力状態に復帰させないこと」と特定されているものの、「第1選択手段によって第2のモードが選択されている場合」であって、「復帰指示を受信し」た場合については何ら特定がされていないから、上記補正事項には、「第1選択手段によって第2のモードが選択されている場合、復帰指示を受信したら、画像形成装置を低電力状態から第1の電力状態または第2の電力状態のいずれにも復帰させること」を包含するものと認められる。
しかし、上記のとおり、当初明細書等に記載されているのは、第2のモードが設定されている場合、ジョブ実行可能状態における電力モードが第3のモードである第1の電力状態に復帰することであって、第4のモードである第2の電力状態に復帰することは、記載も示唆もされていない。
そうすると、上記補正事項は、当初明細書等に記載されているとはいえない。
また、上記補正事項が、当初明細書等から自明であるとする理由もない。
よって、上記補正事項は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。

したがって、本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

(3)小括
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

(4)補正の目的について
上記補正事項によって、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の「前記第1選択手段によって前記第1のモードが選択された場合、前記復帰手段が前記画像形成装置を低電力状態から前記第3のモードに復帰するのを禁止する禁止手段」との記載が、「前記復帰手段は、少なくとも前記第1選択手段によって前記第1のモードが選択されている場合、前記復帰指示を受信しても前記画像形成装置を前記低電力状態から前記第1の電力状態に復帰させないこと」と補正された。
上記補正事項について、「第1選択手段によって前記第1のモードが選択された場合」、「停電力状態」からの復帰について、補正前は、「所定のデバイスに電力が供給される」「第3のモードに復帰するのを禁止する」ことを発明特定事項としていたのに対し、補正後は、「所定のデバイスへの電力が停止されている」「第1の電力状態に復帰させないこと」る事項を発明特定事項とするものである。
そして、上記補正事項における「第1の電力状態」とは、「所定のデバイスへの電力が停止されている」状態であるから、「所定のデバイスに電力が供給される」「第3のモード」とは異なるものであるのは明らかである。
そうすると、補正後の発明特定事項である「第1の電力状態に復帰させないこと」は、補正前の発明特定事項である「第3のモードに復帰するのを禁止する」ことの下位概念とはいえず、上記補正事項は、特許請求の範囲を変更するものである。
したがって,本件補正は,本件補正前の請求項に記載された発明の発明特定事項の限定であるとは認められないから,特許法第17条の2第5項第2号に規定される「特許請求の範囲の減縮(第三十6条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」に該当しない。
また,本件補正前の請求項に対して特許法第36条に基づく記載不備に係る拒絶理由は指摘されていないから、特許法第17条の2第5項第4号に規定される「明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」に該当しない。
さらに、本件補正は,特許法第17条の2第5項第1号に規定される「第36条第5項に規定する請求項の削除」、同項第3号に規定される「誤記の訂正」にも該当しない。
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項に規定されたいずれの事項を目的とするものとも認められないから、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものである。

3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、また、本件補正は、特許法第17条の2第5項に規定する要件に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成30年9月14日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
画像形成装置であって、
前記画像形成装置を低電力状態に移行させる移行指示を受信したときに移行するべき低電力状態として、前記画像形成装置内の所定のデバイスに電力が供給される第1のモード、又は、前記所定のデバイスへの電力供給が停止される第2のモードを選択する第1選択手段と、
前記画像形成装置を低電力状態から復帰させる復帰指示を受信したときに、前記画像形成装置を低電力状態から、前記所定のデバイスに電力が供給される第3のモード、又は、前記所定のデバイスへの電力供給がされない第4のモードに復帰する復帰手段と、
前記第1選択手段によって前記第1のモードが選択された場合、前記復帰手段が前記画像形成装置を低電力状態から前記第3のモードに復帰するのを禁止する禁止手段と、を備えることを特徴とする画像形成装置。」

2 原査定の拒絶の理由
(1)原査定の理由とされた、平成30年7月13日付け拒絶理由通知書に記載した理由の概要は、以下のとおりである。
「(新規事項)平成29年9月29日付け手続補正書でした補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。」
(2)平成30年12月27日付け拒絶査定に記載した理由の概要は、以下のとおりである。
「この出願については、平成30年 7月13日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって、拒絶をすべきものです。
備考:(新規事項)平成30年9月14日付け手続補正書でした補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。」

3 当審の判断(平成30年9月14日付け手続補正書でした補正について)
上記「第2 2 (2)」において説示したとおり、当初明細書等には、低電力状態においてスリープのボタンが押下されると、電力モードとしてスリープモードが設定され、ジョブ実行可能状態における電力モードがエコ復帰ONモードへと切り替わるよう電力状態が設定され、低電力状態において節電のボタンが押下されると、電力モードとして節電モードが設定され、ジョブ実行可能状態における電力モードがエコ復帰OFFモードへと切り替わるよう電力状態が設定され、低電力状態で低電力移行復帰ボタンが押下されると、低電力状態における電力モードがスリープモードの場合は、ジョブ実行可能状態における電力モードをエコ復帰ONモードへと移行し、低電力状態における電力モードが節電モードの場合は、ジョブ実行可能状態における電力モードをエコ復帰OFFモードへと移行する手段が記載されているものと認められる。
そして、本願発明及び当初明細書等の記載より、本願発明の「第1のモード」、「第2のモード」、「第3のモード」、「第4のモード」及び「『スリープのボタン』及び『節電のボタン』」は、それぞれ、当初明細書等の「節電モード」、「スリープモード」、「エコ復帰OFFモード」、「エコ復帰ONモード」及び「第1選択手段」に対応する。
そうすると、当初明細書等には、低電力状態において第1選択手段が押下されると、電力モードとして第2のモードが設定され、ジョブ実行可能状態における電力モードが第4のモードへと切り替わるよう電力状態が設定され、低電力状態において第1選択手段が押下されると、電力モードとして第1のモードが設定され、ジョブ実行可能状態における電力モードが第3のモードへと切り替わるよう電力状態が設定され、低電力状態で低電力移行復帰ボタンが押下されると、低電力状態における電力モードが第2のモードの場合は、ジョブ実行可能状態における電力モードを第1の電力状態である第4のモードへと移行し、低電力状態における電力モードが第1のモードの場合は、ジョブ実行可能状態における電力モードを第2の電力状態である第3のモードへと移行する手段が記載されているものと認められる。
そうすると、当初明細書等には、低電力状態における電力モードが第1のモードが選択された場合は、ジョブ実行可能状態における電力モードを第2の電力状態である第3のモードへと移行する手段が記載されているのであって、本願発明の「第1選択手段によって前記第1のモードが選択された場合、前記復帰手段が前記画像形成装置を低電力状態から前記第3のモードに復帰するのを禁止する禁止手段」は、記載も示唆もされていない。
また、本願発明には、「第1選択手段によって前記第1のモードが選択された場合、前記復帰手段が前記画像形成装置を低電力状態から前記第3のモードに復帰するのを禁止する禁止手段と、を備える」(以下「本願補正事項」という。)と特定されているものの、「第1選択手段によって第2のモードが選択された場合」については何ら特定がされていないから、本願発明には、「第1選択手段によって第2のモードが選択されている場合、復帰手段が画像形成装置を低電力状態から第3のモードまたは第4のモードのいずれにも復帰する手段と、を備える」ことを包含するものと認められる。
しかし、上記のとおり、当初明細書等に記載されているのは、第2のモードが設定されている場合、ジョブ実行可能状態における電力モードが第4のモードに復帰することであって、第3のモードに復帰することは、記載も示唆もされていない。
そうすると、上記本願補正事項は、当初明細書等に記載されているとはいえない。
また、上記本願補正事項が、当初明細書等から自明であるとする理由もない。
よって、上記本願補正事項は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。
したがって、平成30年9月14日付け手続補正書でした補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。


第5 むすび
以上のとおりであって、平成30年9月14日付け手続補正書による補正が、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものであるとはいえないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。


よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-01-29 
結審通知日 2020-02-04 
審決日 2020-02-18 
出願番号 特願2014-203058(P2014-203058)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (B41J)
P 1 8・ 55- Z (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 牧島 元  
特許庁審判長 尾崎 淳史
特許庁審判官 藤本 義仁
畑井 順一
発明の名称 画像形成装置及びその制御方法  
代理人 別役 重尚  

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