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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02F |
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管理番号 | 1361241 |
審判番号 | 不服2019-4618 |
総通号数 | 245 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-05-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-04-08 |
確定日 | 2020-04-02 |
事件の表示 | 特願2015-562745「光モジュール」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 8月20日国際公開、WO2015/122189〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2015年2月12日(優先権主張2014年2月14日、日本国)を国際出願日とする出願であって、その後の主な手続の経緯は、以下のとおりである。 平成28年 6月27日 :国内書面の提出 平成30年 1月15日 :出願審査請求書の提出 同年10月 4日付け:拒絶理由通知(同年10月11日発送) 同年12月 7日 :手続補正書・意見書の提出 同年12月26日付け;拒絶査定(平成31年1月8日送達。) 平成31年 4月 8日 :審判請求書・手続補正書の提出 令和元年11月25日付け:拒絶理由通知(同年11月26日発送) 令和2年 1月24日 :手続補正書・意見書の提出 第2 本願発明 本願の請求項1ないし9に係る発明は、令和2年1月24日付け手続補正書により補正された請求項1ないし9に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 「【請求項1】 高周波で駆動する半導体光変調器、レーザ光源、波長ロッカー及び偏波合成器により形成される光路と、 前記光路よりも高い位置に配置された回路基板と、 前記半導体光変調器と前記回路基板とを電気的に接続するための配線であって、前記回路基板に接続された前記配線の一端部の接続面が、前記半導体光変調器に接続された前記配線の他端部の接続面の位置より高い位置に、配置された前記配線を含む配線用サブマウントと、 前記波長ロッカー及び前記偏波合成器と平面視において重複するように配置され、前記配線用サブマウントと前記回路基板とを電気的に接続する配線基板と、 ハウジングとを有し、 前記ハウジング内の空間内に前記光路、前記回路基板、前記配線用サブマウント及び前記配線基板が収納されていることを特徴とする光モジュール。」(なお、下線は、当審で付した。以下同じ。)。 第3 令和元年11月25日付け拒絶理由通知 当審で通知した令和元年11月25日付け拒絶理由通知の理由は、概略、次のとおりのものである。 本願の請求項1ないし9に係る発明は、下記の引用文献1ないし5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:国際公開第2012/144082号(図1) 引用文献2:特開2011-28087号公報(図2) 引用文献3:特開2010-286770号公報(図3及び図4) 引用文献4:特開平10-332939号公報(図1) 引用文献5:NTT技術ジャーナル 2011.3、美野真司他、 PLC-LNハイブリッド集積技術を用いた高速多値光変 調器 57?61頁(図3及び図11) 第4 引用文献2の記載及び引用発明 1 引用文献2(特開2011-28087号公報)の記載 引用文献2には、図面とともに、以下の記載がある。 (1)「【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は、光信号送信装置および偏波多重光信号の制御方法に係わり、例えば、偏波多重伝送システムにおいて使用される光信号送信装置に適用可能である。 【背景技術】 【0002】 40Gbit/sを超える超高速光伝送システム(例えば、100Gbit/s)の実現の要求は急速に高まってきている。このため、無線システムに適用されている多値変調方式(例えば、4値の位相変調を用いるQPSK変調方式)を適用した光伝送システムの実用化に向けた開発が進められている。しかし、伝送信号速度の高速化に伴い、電気信号回路の実現性に係わる課題、光伝送信号の劣化に係わる課題(光フィルタによる伝送信号スペクトル劣化、波長分散や光雑音の累積による信号劣化など)の解決は、ますます困難になる。 【0003】 これらの課題を解決する技術の1つとして、光偏波多重が注目されている。偏波多重光信号は、例えば、図1(a)に示す光信号送信装置により生成される。この光信号送信装置は、光源(LD)、1組の変調器、偏波ビーム結合器(PBC)を備える。光源から出力される連続光は、分岐されて1組の変調器に導かれる。1組の変調器は、それぞれデータ信号で連続光を変調し、1組の光変調信号を生成する。そして、偏波ビーム結合器は、1組の光変調信号を結合して図1(b)に示す偏波多重光信号を生成する。すなわち、偏波多重では、同一波長の互いに直交する2つの偏波(X偏波、Y偏波)を利用して、2つのデータストリームが伝送される。 【0004】 このため、偏波多重技術では、変調速度が2分の1になり、電気信号生成回路の特性向上、低コスト化、小型化、低消費電力化が実現される。また、光伝送路上での分散等の品質劣化要因による影響が低減され、光伝送システム全体として特性が向上する。なお、特許文献1?3には、偏波多重技術を用いた伝送システムが開示されている。また、関連する技術として特許文献4、5に記載の構成が提案されている。」 (2)「【発明を実施するための形態】 【0013】 図2は、実施形態の光信号送信装置の構成を示す図である。実施形態の光信号送信装置は、第1および第2の光変調信号を結合することにより得られる偏波多重光信号を送信する。偏波多重光信号は、互いに直交するX偏波およびY偏波を利用して受信局へデータを伝送する。ここで、X偏波およびY偏波のパワーが互いに異なっていると、偏波多重光信号の特性が劣化する。したがって、実施形態の光信号送信装置においては、X偏波およびY偏波のパワー差を小さく(望ましくは、最小化)するための制御が行われる。 【0014】 光源(LD)1は、例えばレーザーダイオードであり、所定の周波数の光信号を生成する。この光信号は、例えば連続光(CW:Continuous Wave)であり、例えば光スプリッタにより分岐されて変調器10、20に導かれる。 【0015】 変調器10、20は、この実施例では、それぞれ、駆動電圧に応じて出力光のパワーが周期的に変化する変調器(例えば、マッハツェンダ型のLN変調器)である。ここで、変調器10は、1組の光パスおよびその1組の光パスに位相差を与える位相シフト部11を備える。そして、変調器10は、データXに従って入力光信号を変調して光変調信号Xを生成する。同様に、変調器20は、1組の光パスおよびその1組の光パスに位相差を与える位相シフト部21を備える。そして、変調器20は、データYに従って入力光信号を変調して光変調信号Yを生成する。 【0016】 駆動部12は、データXを表す駆動電圧信号を生成して変調器10に与え、駆動部22は、データYを表す駆動電圧信号を生成して変調器20に与える。また、変調器10、20は、それぞれ、LN変調器の動作点(すなわち、バイアス)を制御するために、不図示のバイアス回路を備える。バイアス回路は、例えば、ABC(Auto Bias Control)回路である。ABC回路は、例えば、対応するLN変調器に対して低周波電圧信号を印加し、変調器10、20の出力光に含まれる低周波成分に基づいて、対応するLN変調器の動作点の位置(すなわち、DCバイアス電圧)を調整する。 【0017】 なお、この明細書においては、光変調器の一例としてLN変調器を記載しているが、これに限定されるものではない。すなわち、光変調器は、LN変調器に限定されるものではなく、電気光学材料を用いた変調器、例えば、InP等の半導体材料で構成される変調器であってもよい。 【0018】 光アッテネータ13、23は、それぞれ光変調信号X、Yのパワーを調整する。なお、光アッテネータ13、23は、必須の構成要素ではない。また、光アッテネータ13、23は、変調器10、20の入力側に設けられてもよいし、変調器10、20の内部に設けられてもよいし、変調器10、20の出力側に設けられてもよい。 【0019】 上記構成において、光変調信号Xを生成する変調部は、変調器10、駆動部12、不図示のバイアス回路、光アッテネータ13を含むようにしてもよい。同様に、光変調信号Yを生成する変調部は、変調器20、駆動部22、不図示のバイアス回路、光アッテネータ23を含むようにしてもよい。 【0020】 偏波ビーム結合器(PBC:Polarization Beam Combiner)31は、光変調信号Xおよび光変調信号Yを偏波多重して偏波多重光信号を生成する。ここで、偏波多重においては、図1(b)に示すように、互いに直交するX偏波およびY偏波が使用される。すなわち、X偏波を利用して光変調信号Xが伝搬され、Y偏波を利用して光変調信号Yが伝搬される。」 (3)図1(a)は、以下のものである。 (4)図2は、以下のものである。 2 引用文献2に記載された発明 (1)上記1(1)の「偏波多重信号」に関する記載を踏まえて、図1(a)を見ると、 超高速光伝送システムに用いられる偏波多重光信号は、 「光源(LD)と、 一組の変調器と、 偏波ビーム結合器(PBC)と、備える光信号送信装置」により生成されることが理解できる。 (2)上記1(1)及び(2)の記載を踏まえて、図2を見ると、以下のことが理解できる。 ア 「光源(LD)」は、所定の周波数の光信号を生成するレーザーダイオードであってもよいこと。 イ 「光信送信装置」は、駆動部を有し、該駆動部と変調器とを電気的に接続するための配線を備えること。 ウ 「一組の変調器」は、マッハツェンダ型のLN変調器に限らず、半導体MZ変調器であってもよいこと。 なお、マッハツェンダ型の変調器について、必要ならば、下記の文献を参照。 特開2014-6494号公報(【0002】ないし【0004】 ) 特開2008-64915号公報(【0002】 ) ちなみに、特開2014-6494号公報の【0004】には、 「MZ変調器には、ポッケルス効果による屈折率変化を利用したLiNbO_(3)型変調器(以下、LN-MZ変調器)と、量子閉じ込めシュタルク効果による屈折率変化を利用した多重量子井戸構造の半導体MZ変調器とがある。」と記載されている。 (3)上記(1)及び(2)の検討からして、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「超高速光伝送システム用の光信号送信装置であって、 所定の周波数の光信号を生成するレーザーダイオードと、 半導体MZ変調器と、 偏波ビーム結合器と、 駆動部と、 前記駆動部と前記半導体MZ変調器とを電気的に接続するための配線と、を備える光信号送信装置。」 第5 対比 1 本願発明と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「半導体MZ変調器」は、「超高速光伝送システム用の光信号送信装置」を構成する部材であるから、高周波で駆動することは明らかであり、本願発明の「高周波で駆動する半導体光変調器」に相当する。 以下、同様に、 「レーザーダイオード」は、「レーザ光源」に、 「偏波ビーム結合器」は、「偏波合成器」に、 「配線」は、「配線」に、 「光信号送信装置」は、「光モジュール」に、それぞれ、相当する。 イ 引用発明の「駆動部」は、回路基板上に形成されたものであることは、当業者にとって明らかである。 また、引用発明の「光信号送信装置」は、筐体(ハウジング)を備えることは、当業者にとって明らかである。 必要ならば、本願明細書の【先行技術文献】において例示された特開2005-128440号公報の図1を参照。 ちなみに、図1は、以下のものである。 1 パッケージ本体 2 蓋部 5 変調器基板(光回路部) 6 高周波電気回路基板(電気回路部) 7 終端抵抗基板 8 フレキシブルな配線基板 2 上記1の検討からして、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致する。 <一致点> 「高周波で駆動する半導体光変調器、レーザ光源及び偏波合成器により形成される光路と、 回路基板と、 前記半導体光変調器と前記回路基板とを電気的に接続するための配線と、 ハウジングとを有し、 前記ハウジング内の空間内に前記光路及び前記配線が収納されている、光モジュール。」 3 一方、両者は、以下の点で相違する。 <相違点> 本願発明は、 (1)「『高周波で駆動する半導体光変調器、レーザ光源、波長ロッカー及び偏波合成器により形成される光路』と、 (2)『光路よりも高い位置に配置された回路基板』と、 (3)『回路基板に接続された配線の一端部の接続面が、半導体光変調器に接続された配線の他端部の接続面の位置より高い位置に、配置された配線を含む配線用サブマウント』と、 (4)『波長ロッカー及び偏波合成器と平面視において重複するように配置され、前記配線用サブマウントと前記回路基板とを電気的に接続する配線基板』と、を有し」、 (5)「ハウジング内の空間内に光路、回路基板、配線用サブマウント及び配線基板が収納されている」のに対して、 引用発明は、上記構成を備えていない点。 第6 判断 1 上記<相違点>について検討する。 (1)上記<相違点>のうち(1)について 引用発明の「所定の周波数の光信号を生成するレーザーダイオード」において、一定の周波数の光信号が生成されるように、波長ロッカーを採用することは、必要に応じて適宜なし得る設計事項である。 必要ならば、下記の文献を参照(以下「周知技術1」という。)。 特開2012-252290号公報(図11) 特開2011-258758号公報(【0021】) 特開2010-251851号公報(【請求項2】及び図1) ちなみに、特開2010-251851号公報の図1は、以下のものである。 122a,122b…波長ロッカー (2)上記<相違点>のうち(2)ないし(5)について 光モジュールを構成する部材を「ハウジング」内に収容する際に、回路基板を具体的にどの位置に配置するかは、当業者が引用発明を実施する際に、スペースや放熱性等を勘案して適宜決めるべき事項であるところ、 ハウジング内の上部に回路基板を配置することは、下記の文献に記載されているように、本願の優先日(2014年2月14日)時点で周知であることから(以下「周知技術2」という。)、 引用発明の「駆動部」をハウジング内の上部に配置し、「(上方の)駆動部」と「(下方の)半導体MZ変調器」を電気的に接続するために、「水平方向又は垂直方向に延びる配線基板」又は「フレキシブル配線基板」等を用いることに何ら困難性は認められない。 その際、「配線基板又はフレキシブル配線基板の水平方向に延びる部分」を、平面視において「『波長ロッカー』及び『偏波合成器』」と重複するように配置することは、単なる設計事項である。 本願明細書の【先行技術文献】において例示された特開2005-128440号公報(図1) 特開2009-111194号公報(図1及び図2) 特開2005-128185号公報(図3及び図4) 特開2003-110184号公報(図5及び図8) 特開平5-175608号公報(図6) 特開平3-296288号公報(第1図) ちなみに、特開2009-111194号公報の図2は、以下のものである。 1…上部筺体 2…下部筺体 3…マウント 4…プレーナ光波回路 5…光電変換部 6…フラットフレキシブルケーブル 7…電子制御ボード 11…中継配線基板 12…金ワイヤボンド (3)上記(1)及び(2)の検討からして、 引用発明において、上記<相違点>に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が上記周知技術1及び周知技術2に基いて容易になし得たことである。 2 効果 本願発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果、上記周知技術1及び周知技術2から予測し得る範囲内のものである。 3 令和2年1月24日提出の意見書における主張 請求人は、波長ロッカー及び偏波合成器と配線基板とが平面視において重複するように配置されていることから、ハウジングの体積を減らし、モジュールの小型化が容易となる旨主張する(第2頁中段)。 しかしながら、本願明細書の【0031】には「…また、終端基板40を光素子に重なるように配置することで、終端基板40のサイズが光モジュール全体のサイズに与える影響を抑制することができ、光モジュールの小型化が容易となる。」と記載されているように、 小型化は、終端基板40を「レーザ光源12、波長ロッカー14、光変調器16及び偏波合成器18」(これらを総括したものが「光素子」である。)に重なるように配置することにより得られる効果であって、終端基板40を「(光素子のうち)波長ロッカー及び偏波合成器」に重ねることにより得られる効果ではない。 よって、請求人の主張は、上記「1」の判断を左右するものではない。 4 まとめ 本願発明は、当業者が引用発明、上記周知技術1及び周知技術2に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2020-02-03 |
結審通知日 | 2020-02-04 |
審決日 | 2020-02-17 |
出願番号 | 特願2015-562745(P2015-562745) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G02F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 廣崎 拓登 |
特許庁審判長 |
瀬川 勝久 |
特許庁審判官 |
星野 浩一 松川 直樹 |
発明の名称 | 光モジュール |
代理人 | 岡部 讓 |
代理人 | 岡部 洋 |
代理人 | 三村 治彦 |
代理人 | 吉澤 弘司 |