現在、審決メルマガは配信を一時停止させていただいております。再開まで今暫くお待ち下さい。

  • ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
令和1行ケ10160 審決取消請求事件 判例 特許
異議2018701011 審決 特許
異議2021700592 審決 特許
異議2019700557 審決 特許
令和1行ケ10067 審決取消請求事件 判例 特許

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1361261
審判番号 不服2019-2327  
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-02-20 
確定日 2020-03-31 
事件の表示 特願2016-523688「炎症を治療するための魚油及びジュースを含む組成物の使用」拒絶査定不服審判事件〔平成26年12月31日国際公開、WO2014/209132、平成28年 8月12日国内公表、特表2016-523905〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年6月26日(パリ条約による優先権主張 2013年6月27日 ノルウェー(NO))を国際出願日とする特許出願であって、出願後の主な手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年 2月19日付け :拒絶理由通知
平成30年 5月25日 :意見書及び手続補正書の提出
平成30年10月25日付け :拒絶査定
平成31年 2月20日 :審判請求書及び手続補正書の提出
平成31年 5月17日付け :前置報告
平成31年 6月 6日 :上申書の提出

第2 平成31年2月20日提出の手続補正書による手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成31年2月20日提出の手続補正書による手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
(1)補正後
本件補正により、特許請求の範囲の記載は、次のとおり補正された。(なお、下線部は本件補正による変更箇所である。)

「【請求項1】
炎症及び/又は根本原因が炎症である疾患の治療に使用するための、水中油型乳剤中に魚油とジュースとの組み合わせを含む組成物であって、前記魚油が、20未満のtotox値及び魚油の総質量に対して10質量%超のオメガ-3含有率を有する魚油から選択され、乳剤を安定化させるために適切な乳化剤が使用され、
前記組成物が、少なくとも1つの生物活性アミノ酸と、天然に存在しない少なくとも一つの酸化防止剤とを含まず、
前記炎症又は疾患/状態が、上気道感染症(URTI)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、軽度認知機能障害(MCI)を含めたアルツハイマー病(AD)、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、嚢胞性線維症、脳卒中、糖尿病、脳震盪を含めた外傷性脳障害、術後認知低下、冠状動脈疾患及び関節リウマチの群、及びそれらの任意の組み合わせから選択され、
ジュースが、ザクロ、アンズ、グレープフルーツ、オレンジ、クランベリー、バラの実、パイナップル、ブラックチョークベリー、クワの実、クラウドベリー、アセロラ、ラズベリー、スイカ、モモ、ブドウ、チェリー、ジャンボラン、リンゴ、マンゴー、セイヨウナシ、アロニア、パッションフルーツ及びキーウィの群、及びそれらの任意の組み合わせから選択され、
前記乳化剤が、乳固形分、ホエータンパク質、カラスムギタンパク質及びエンドウ豆タンパク質の群から選択される、組成物。
【請求項2】
魚油のtotox値が、10未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
魚油の含有率が、組成物の全質量に対して約0.5から15質量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
ジュースの含有率が、組成物の全質量に対して約20?95質量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
ペクチンを更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
甘味料、香味料、抗酸化物質及び防腐剤を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
投与する場合、EPA及びDHAが約300mg/日から約5000mg/日の範囲内、好ましくは約3000mg/日、より好ましくは約2000mg/日、最も好ましくは約1100mg/日の投与量である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
飲用可能であるか、又はカプセル若しくは粉末の形態である、請求項6に記載の組成物。」

(2)補正前
本件補正前の、平成30年5月25日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の記載は、次のとおりである。

「【請求項1】
炎症の治療に使用するための、水中油型乳剤中に魚油とジュースとより本質的になる組み合わせを含む組成物であって、前記魚油が、20未満のtotox値及び魚油の総質量に対して10質量%超のオメガ-3含有率を有する魚油から選択され、乳剤を安定化させるために適切な乳化剤が使用される、組成物。
【請求項2】
前記炎症が、上気道感染症(URTI)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、軽度認知機能障害(MCI)を含めたアルツハイマー病(AD)、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)並びに過体重及び肥満の群、又はそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
魚油のtotox値が、10未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
魚油の含有率が、組成物の全質量に対して約0.5から15質量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
ジュースの含有率が、組成物の全質量に対して約20?95質量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記ジュースが、適切な高いレベルの抗酸化物質を有する果物及び液果から選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
ジュースが、ザクロ、アンズ、グレープフルーツ、オレンジ、クランベリー、バラの実、パイナップル、ブラックチョークベリー、クワの実、クラウドベリー、アセロラ、ラズベリー、スイカ、モモ、ブドウ、チェリー、ジャンボラン、リンゴ、マンゴー、セイヨウナシ、アロニア、パッションフルーツ及びキーウィの群から選択される、請求項5又は6に記載の組成物。
【請求項8】
前記乳化剤が、乳固形分、ホエータンパク質、カラスムギタンパク質及びエンドウ豆タンパク質の群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
ペクチンを更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
甘味料、香味料、抗酸化物質及び防腐剤を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
投与する場合、EPA及びDHAが約300mg/日から約5000mg/日の範囲内、好ましくは約3000mg/日、より好ましくは約2000mg/日、最も好ましくは約1100mg/日の投与量である、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
飲用可能であるか、又はカプセル若しくは粉末の形態である、請求項11に記載の組成物。」

2 本件補正の適否
(1)補正の目的について
ア 本件補正による請求項1についての補正事項のうち、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である、「組成物」、「ジュース」及び「乳化剤」についての補正は、本件補正後の請求項1では、それぞれ、「前記組成物が、少なくとも1つの生物活性アミノ酸と、天然に存在しない少なくとも一つの酸化防止剤とを含ま」ないことを特定し、「ジュースが、ザクロ、アンズ、グレープフルーツ、オレンジ、クランベリー、バラの実、パイナップル、ブラックチョークベリー、クワの実、クラウドベリー、アセロラ、ラズベリー、スイカ、モモ、ブドウ、チェリー、ジャンボラン、リンゴ、マンゴー、セイヨウナシ、アロニア、パッションフルーツ及びキーウィの群、及びそれらの任意の組み合わせから選択され」るとして、具体的に限定し、「前記乳化剤が、乳固形分、ホエータンパク質、カラスムギタンパク質及びエンドウ豆タンパク質の群から選択される」として、具体的に限定するものである。

イ しかしながら、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するための事項である「炎症」についての補正は、本件補正後の請求項1では、さらに、「及び/又は根本原因が炎症である疾患」という事項を並列的又は択一的に加入したうえで、「前記炎症又は疾患/状態が、上気道感染症(URTI)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、軽度認知機能障害(MCI)を含めたアルツハイマー病(AD)、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、嚢胞性線維症、脳卒中、糖尿病、脳震盪を含めた外傷性脳障害、術後認知低下、冠状動脈疾患及び関節リウマチの群、及びそれらの任意の組み合わせから選択され」るとして疾患を具体的に列記するものであるところ、「及び/又は根本原因が炎症である疾患」の加入は、疾患の種類を拡張するものであり、また、上記の列記された疾患の中には、根本原因が病原菌や病原ウイルスの感染である上気道感染症、根本原因がアミロイドβの蓄積であるとされるアルツハイマー病、根本原因が外傷である外傷性脳障害等、根本原因が炎症ではない疾患が含まれる点で、不明瞭な点が存在するものの、上記の列記された疾患は、明らかに炎症以外の疾患を含み、補正前の請求項2において「炎症」の選択肢として列記された疾患以外のものを含む点で、上記の具体的に列記された疾患の加入も、疾患の種類を拡張するものである。

ウ そうすると、上記イの補正事項は、特許法第17条の2第5項第2号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものではなく、また、同法同条同項第1号、第3号又は第4号のいずれの事項を目的とするものにも該当しない。よって、本件補正は、同法第17条の2第5項に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しない補正事項を含むものである。

(2)独立特許要件について
前記(1)のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項に規定する要件に適合するものではないが、仮に、同補正が、同条同項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであるとしても、同補正が適法であるというためには、本件補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する(特許出願の際独立して特許を受けることができるものである)ことが必要である。
この点について、以下、検討する。

ア 本件補正発明
本件補正発明は、前記1(1)の【請求項1】に記載したとおりのものである。

イ 引用文献の記載事項等
(ア)引用文献1
a 原査定の拒絶の理由において引用文献1として引用された国際公開第2011/005113号(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。(和訳は、当合議体が付した。以下、同じ。)

(摘記1a)
「Field of invention
The present invention relates to food supplements. Particularly, the present invention relates to a composition comprising marine oil in a stable oil-in-water emulsion, further comprising at least one bioactive amino acid or peptide, or derivatives thereof. In addition, the present invention relates to a process for the production of said composition and the use of said composition as a functional or therapeutic composition.」(1頁5?10行)
(和訳:
発明の属する分野
本発明は、栄養補助食品に関する。特に、本発明は、安定な水中油型エマルション中の魚油、少なくとも1種の生物活性アミノ酸若しくはペプチド又はそれらの誘導体を含む組成物に関する。また、本発明は、機能的又は治療的組成物としての前記組成物の製造方法及び前記組成物の使用方法に関する。)

(摘記1b)
「Following consumption, omega-3 can be incorporated into cell membranes and reduce the amount of arachidonic acid available for the synthesis of proinflammatory eicosanoids e.g. prostaglandins, leukotrienes. Likewise, omega-3 PUFA can also reduce the production of inflammatory cytokines. Omega-3 fatty acids have been thoroughly examined for heart and cardiovascular health and found to be of great importance. Omega-3 has been shown beneficial for inflammation and oxidative stress conditions. Studies have also indicated positive effect on diabetes, osteophorosis, asthma, cancer etc.」(3頁32?4頁4行)
(和訳:
摂取後、オメガ-3は、細胞膜に組み込まれ、そしてプロスタグランジン、ロイコトリエンなどの前炎症性エイコサノイドの合成に利用可能なアラキドン酸量を減少させることができる。同様に、オメガ-3 PUFAは、炎症性サイトカインの産生を減少させることもできる。オメガ-3脂肪酸は、心臓および心臓血管の健康に対して徹底的に検証され、そして非常に重要であることが見出されてきた。オメガ-3脂肪酸は、炎症及び酸化ストレス状態に対して有益であることが示されている。研究はまた、糖尿病、骨粗鬆症、喘息、癌などに対する正の効果を示している。)

(摘記1c)
「Present invention
The present invention provides a new composition combining the health promoting effect of bioactive amino acids and peptides and the health promoting effect of omega-3 polyunsaturated fatty acids in a combined formula for oral administration. 」(5頁20?23行)
(和訳:
本発明
本発明は、生物活性アミノ酸およびペプチドの健康促進効果とオメガ-3多価不飽和脂肪酸の健康促進効果を組み合わせた経口投与製剤形態の新規組成物を提供する。)

(摘記1d)
「For the preparation of the stable oil-in-water emulsion according to the invention any suitable emulsifier or combinations thereof, may be used. Milk solid, whey protein and pectin or anyo combination thereof are preferred emulsifiers.」(7頁8?10行)
(和訳:
本発明による安定な水中油型乳剤を調製するために、任意の適切な乳化剤、またはそれらの組み合わせを使用することができる。乳固形分、ホエータンパク質およびペクチンまたはそれらの組み合わせが好ましい乳化剤である。)

(摘記1e)
「A further aspect of the present invention relates a composition for use as a therapeutic drink. Further aspects relate to the use of a drink according to the invention for the production of a medical preparation for the prophylaxis or treatment of diseases associated with elevated oxidative stress, such as cancer, inflammatory disorders, neurological disorders, cardiovascular disorders and respiratory disorders.」(8頁20?24行)
(和訳:
本発明のさらなる態様は、治療用飲料としての使用のための組成物に関する。さらなる態様は、癌、炎症性疾患、神経疾患、心臓血管疾患、呼吸器疾患のような、酸化的ストレスの上昇に伴う疾患の予防又は治療のための医薬製剤の製造のための、本発明に係る飲料の使用に関するものである。)

(摘記1f)
「Drink according to the invention
Marine oil from Marine Harvest Ingredients or Denomega Nutritional Oil, were used in the preparation of all compositions. The totox value was below 5 and the preparation was conducted according to functional oil standards. The values are given as % by weight unless otherwise is stated.

Example 1
Composition comprising fresh marine omega-3 emulsion, L-carnosine, selenium, zinc, iodine, and vitamin D.

Suppliers:
Grindsted 3115, Toco 50 and Rosemary extract from Danisco
Nat mandarine flavour from Frey +Lau GmbH
L-Carnosine, Selenium, Iodine, Vitamin D and Zinc gluconate from K.W Pfannensniidt - Hamburg
Fish oil from Denomega Nutritional Oils
」(9頁5行?10頁3行)
(和訳:
本発明に係る飲料
Marine Harvest Ingredients又はDenomega Nutritional Oilの魚油が、全ての組成物の調製に使用された。そのtotox値は、5未満であり、調製は、機能性油規格に従って行った。別段の記載がされない限り、値は重量%として記載される。

実施例1
新鮮な魚のオメガ-3乳剤、L-カルノシン、セレン、亜鉛、ヨウ素、およびビタミンDを含む組成物。

供給業者:
Danisco社より、Grindsted3115、Toco50及びローズマリー抽出物。
Frey +Lau GmbH社より、Natマンダリン香味料
KW Pfannensniidt- Hamburg社より、L-カルノシン、セレン、ヨウ素、ビタミンD及びグルコン酸亜鉛
Denomega Nutritional Oils社より、魚油)
(当審注:表中の「Aronina」との記載は、「Aronia」の明らかな誤記と認める。)

(摘記1g)
「Example 5
PROCESS FOR PRODUCTION
Water phase
A tank is filled with purified and deionised water. The active ingredients in the form of peptides and/or amino acids or their derivatives or precursors are mixed in the water phase. Further, water soluble additives are added.
Oil phase
The oil is mixed with rosemary extract, Toco 50 (an antioxidant preparation favourable to the stabilization of the oil). It is important that the oil is protected against oxidation during processing. Thereafter, the emulsifier or emulsifier combination is added, mixed gently at room temperature to a homogenous mixture. At least the oil soluble additives, e.g. flavouring agents are added.」(12頁10行?13頁2行)
(和訳:
実施例5
製造方法
水相
タンクは、精製された脱イオン水で満たされる。ペプチド及び/又はアミノ酸又はそれらの誘導体又は前駆体形態での活性成分は水相中で混合される。さらに、水溶性添加剤が添加される。
油相
油が、ローズマリー抽出物、Toco 50(油の安定化に適した抗酸化剤)と混合される。オイルが処理時に酸化から保護されることが重要である。その後、乳化剤または乳化剤混合物が添加され、室温で静かに混合され均質な混合物にされる。少なくとも油溶性添加剤、例えば香味剤が添加される。)

(摘記1h)
「Background and summary of results
β-alanine is a naturally occurring beta amino acid, which differs from L-β-alanine with respect to the amino group's position on the carboxylate group. Together with histidine, β-alanine makes up the dipeptide carnosine.」(15頁28?31行)
(和訳:
背景と結果の要約
β-アラニンは天然に存在するβアミノ酸であって、カルボン酸基上のアミノ基の位置に関してL-β-アラニンと異なっている。β-アラニンは、ヒスチジンとともに、ジペプチドであるカルノシンを構成する。)

(摘記1i)
「1.
Composition comprising at least one bioactive amino acid and/or peptide or derivative thereof, and marine oil in a stable oil-in-water emulsion.
2.
Composition according to claim 1 , wherein the at least one bioactive amino acid and/or peptide, or derivatives thereof are selected from the group comprising L-carnosine, glutathione, theanine and taurine or any combination thereof.

7.
Composition according to claim 1 , further comprising a suitable emulsifier, sweeteners, flavouring agents, antioxidants and preservatives..」(21頁?23頁、特許請求の範囲)

(和訳:
1.
安定な水中油型乳剤中に、少なくとも1種の生物活性アミノ酸及び/又はペプチド若しくはその誘導体、および魚油を含む組成物。
2.
少なくとも1種の生物活性アミノ酸及び/又はペプチド若しくはその誘導体は、L-カルノシン、グルタチオン、タウリン又はそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される、請求項1に記載の組成物。

7.
適切な乳化剤、甘味剤、香味剤、抗酸化剤及び防腐剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。)

b 上記aの記載によれば、引用文献1には、安定な水中油型乳剤中に、魚油、及び、L-カルノシン等から選択される生物活性アミノ酸及び/又はペプチド若しくはその誘導体を含む組成物が開示され(摘記1a,1i)、当該組成物は、炎症性疾患等の予防又は治療のために使用されることが記載されており(摘記1a,1e)、当該組成物の具体例である実施例1の組成物は、魚油として、5未満のtotox値を有し、オメガ-3を含有するものが用いられており(摘記1c,1f)、また、当該組成物は、セイヨウナシ、ザクロ、アロニア及びリンゴからなるジュースが含まれ(摘記1f)、また、乳剤を安定化させるための適切な乳化剤としてのホエータンパク質が使用されている(摘記1d,1f,1i)。
また、上記実施例1の組成物(摘記1f)には、抗酸化剤であるToco 50(摘記1g)、Grindsted 3115なる成分、及び、ジペプチドであるL-カルノシン(摘記1h)が含まれている。
そして、摂取されたオメガ-3は、アラキドン酸量、炎症性サイトカインを減少させること、及び、オメガ-3が炎症及び酸化的ストレスを受ける状況にとって有益であるとされている(摘記1b)。
そうすると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「治療に使用するための、水中油型乳剤中に、魚油、ジュース及び生物活性ペプチドであるL-カルノシンを含む組成物であって、当該魚油が、5未満のtotox値を有し、オメガ-3を含有するものであり、乳剤を安定化させるための適切な乳化剤としてのホエータンパク質が使用され、
前記組成物は、抗酸化剤であるToco 50、Grindsted 3115、ジペプチドであるL-カルノシンを含み、
前記ジュースが、セイヨウナシ、ザクロ、アロニア及びリンゴからなり、
以下の組成:

を有する組成物。」

(イ)引用文献2
a 原査定の拒絶の理由において引用文献2として引用された国際公開第2009/120091号(以下「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。

(摘記2a)
「The effects of omega-3 fatty acids (EPA, DHA and DPA) on a number of diseases and conditions, such as cardiovascular, mental, skin and ageing, are well documented. Supplementation of omega-3 increases world wide. There is an increase in the consumption of omega-3 containing products, and omega-3 in the form offish and/or food supplement is highly recommended by health authorities.」(1頁18?22行)
(和訳:
心血管、精神疾患、皮膚及び老化のような多くの疾患及び症状に対するオメガ-3脂肪酸(EPA、DHAおよびDPA)の効果はよく知られている。オメガ-3の補給は、世界的に増加している。オメガ-3を含有する製品の消費が増加しており、魚及び/又は栄養補助食品の形態でのオメガ-3が医療専門家によって高く推奨されている。)

(摘記2b)
「A further aspect of the present invention relates a drink for use as a therapeutic drink. Further aspects relate to the use of a drink according to the invention for the production of a medical preparation for the prophylaxis or treatment of diseases associated with elevated oxidative stress, such as cancer, inflammatory disorders, neurological disorders, cardiovascular disorders and respiratory disorders.」(6頁13?17行)
(和訳:
本発明のさらなる態様は、治療用飲料としての使用のための飲料に関するものである。さらなる態様は、癌、炎症性疾患、神経疾患、心血管障害、呼吸器障害等の酸化的ストレスの上昇に伴う疾患の予防または治療のための医薬製剤の製造のための、本発明による飲料の使用に関する。)

(摘記2c)
「Drink according to the invention
The marine oil used in all preparations was Xalar salmon oil from Marine Harvest Ingredients, batch number: 099000F016. The totox value was below 5 and the preparation were conducted according to functional oil standards.」(7頁4?7行)
(和訳:
本発明による飲料
すべての調製物において使用される魚油は、Marine Harvest IngredientsのXalarサケ油:バッチ番号:099000F016である。totox値は、5未満であり、そして調製は機能性油規格に従って行われた。)

(摘記2d)
「Example 3
Drink comprising emulsified fresh marine omega-3 fatty acids and lycopene and lutein.

Rosemary exctract 201, Toco 50 and Grindsted 3115 from Dansico
Whey protein from AxIa Foods
Natural flavouring agents from Firmenich
Natural lycopene ( Lyconat ) from Vitatene
Natural lutein ( Lutenat ) from Vitatene
」(8頁8行?9頁5行)
(和訳:
実施例3
乳化された新鮮な魚のオメガ-3脂肪酸、リコピン及びルテインを含む飲料。

Dansico社より、ローズマリー抽出物201、Toco50およびGrindsted3115
AxIa Foods社より、ホエータンパク質
フィルメニッヒ(Firmenich)社より、天然香味剤
Vitatene社より、天然リコピン(Lyconat)
Vitatene社より、天然ルテイン(Lutenat))

(摘記2e)
「Example 6
PROCESS FOR PRODUCTION
1. Oil phase
The oil is mixed with rosemary extract, Toco 50 (an antioxidant preparation favourable to the stabilization of the oil). It is important that the oil is protected against oxidation during processing. Thereafter, the emulsifier is added (Grindsted 3115) to the oil, mixed gently at room temperature to a homogenous mixture. The flavouring agents are then added.
」(10頁9?16行)
(和訳:
実施例6
製造方法
1. 油相
油が、ローズマリー抽出物、Toco 50(油の安定化に適した抗酸化剤)と混合される。油が、処理時に酸化から保護されることが重要である。その後、乳化剤(Grindsted3115)が油に添加され、均質な混合物になるまで室温で穏やかに混合される。香味剤がそれから添加される。)

(摘記2f)
「Sample preparation
Drink as described in Example 3 were used and identified as sample 1 = Smartfish.
The drink contains 900 mg omega-3 pr 200 ml of drink. The amount of lycopene and lutein are 16 mg and 10 mg lutein pr 900 mg omega-3, respectively.
」(11頁31?34行)
(和訳:
試料の調製
実施例3に記載した飲料が使用され、その飲料を「試料1=Smartfish」とする。
その飲料は、飲料200ml当たり900mgのオメガ-3を含む。リコピン及びルテインの量は、900mgのオメガ-3当たりそれぞれ16mgのリコピン及び10mgのルテインである。)

(摘記2g)
「1. Drink, characterized in that the drink comprises fresh marine oil in an oil-in-water emulsion wherein the marine oil has a totox value below 10, and further added at least one antioxidant not naturally present in said oil-in-water emulsion.

17. Drink according to claim 1, wherein the at least one added antioxidant is a combination of lutein and lycopene.

25. Use of a drink according to any of claims 1 - 19 for the production of a medical preparation for the prophylaxis or treatment of inflammatory disorders.
」(19頁?21頁、特許請求の範囲)
(和訳:
1.水中油型乳剤中に新鮮な魚油を含み、魚油が10未満のtotox値を有し、前記水中油型乳剤中に天然に存在しない抗酸化剤を少なくとも1つさらに添加したことを特徴とする飲料。

17.前記少なくとも1つの添加された抗酸化剤は、ルテイン及びリコピンの組合せであることを特徴とする、請求項1に記載の飲料。

25.炎症性疾患の予防または治療のための医薬製剤の製造のための請求項1-19のいずれかに記載の飲料の使用。)

b 上記aの記載によれば、引用文献2には、水中油型乳剤中に魚油、及び、天然に存在しない酸化防止剤を含む組成物が開示され(摘記2b,2g)、当該組成物は、炎症性疾患等の予防又は治療のために使用されることが記載されており(摘記2b,2g)、当該組成物の具体例である実施例3の組成物は、魚油として、5未満のtotox値を有し、オメガ-3を含有するものが用いられており(摘記2c,2d,2f)、リンゴ、ザクロ、アロニア及びセイヨウナシからなるジュースが含まれ(摘記2d)、乳化剤としてのGrindsted 3115が使用されている(摘記2d,2e)。
また、上記実施例3の組成物(摘記2d)には、抗酸化剤であるToco 50(摘記2e)が含まれ、上記酸化防止剤としてリコペン及びルテインが含まれている(摘記2g)。
そうすると、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「治療に使用するための、水中油型乳剤中に、魚油、ジュース及び天然に存在しない酸化防止剤を含む組成物であって、当該魚油が、5未満のtotox値を有し、オメガ-3を含有するものであり、乳化剤が使用され、
前記組成物は、抗酸化剤であるToco 50を含み、上記酸化防止剤としてのリコペン及びルテインを含み、
前記ジュースが、リンゴ、ザクロ、アロニア及びセイヨウナシからなり、
前記乳化剤が、Grindsted 3115からなり、
以下の組成:

を有する組成物。」

(ウ)魚油の総重量に対するオメガ-3脂肪酸含有率についての技術常識
a 国際公開第2007/064222号(以下「引用文献A」という。なお、引用文献Aは、本願明細書[0008]において先行技術文献の【特許文献1】として記載されている文献である。)には、次の事項が記載されている。

「Further the content of omega-3 fatty acids should be at least 16%, preferably about 25-30%. Specifically preferred fish oil is Denomega 100 or Denomega Trout oil. Said oils are clear oils with a very mild fishy odour and taste.」(4頁37行?5頁2行)
(和訳:
さらに、オメガ-3脂肪酸の含有量は少なくとも16%、好ましくは約25?30%であるべきである。特に好ましい魚油はDenomega100またはDenomegaマス油である。これらの油は、非常に弱い魚の臭い及び味を有する透明な油である。)

「1 Composition comprising a combination of fish oil and juice in an oil-in- water emulsion, wherein said fish oil is selected from fish oil having a totox value below 20 and omega-3 content above 16 % by weight.」(14頁、特許請求の範囲)
(和訳:
1 水中油型乳剤中に魚油及びジュースの組合せを含み、前記魚油が、20未満のtotox値及び16質量%超のオメガ-3含有量を有する魚油から選択される組成物。)

b 平成30年2月19日付け拒絶理由通知において引用文献5として引用された国際公開第01/80656号には、次の事項が記載されている。

「Most natural fish oils have a concentration of omega-3 fatty acids of between 30 and 40%.」(3頁5?6行)
(和訳:
大抵の天然の魚油は、30?40%のオメガ-3脂肪酸の濃度を有する。)

「The term "PUFA oil" is in this context intended to mean an oil in general terms, which is extractable from sources such as fish, algae, phytoplankton, fungi or plants by conventional methods, or being synthetically or biogenetically produced and which is composed mainly of triglycerides, diglycerides, monoglycerides or more polar lipids, such as phospholipids, glycolipids, galactolipids or the like containing polyunsaturated fatty acids as defined under "PUFA" above.」(5頁31?36行)
(和訳:
用語「PUFA油」は本文献において一般的な用語としての油を意味することが意図される。それは、魚類、藻類、プランクトン、真菌または植物のような材料から、合成的又は生物学的製造といった通常の方法により抽出可能なものであり、トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリドや、上記「PUFA」として定義された多価不飽和脂肪酸を含むリン脂質、糖脂質、ガラクト脂質等の極性脂質で主に構成される。)

「The PUFA oil preferably contains at least 10 % by weight of one or more PUFAs, specifically 10, 20, 30, 40 or 50 % by weight. In one embodiment of the invention the PUFA oil contains 10-50 % by weight of DHA and 0-20 % by weight of EPA. 」(7頁21?24行)
(和訳:
PUFA油は、好ましくは、1つ若しくはそれ以上のPUFAを少なくとも10重量%含み、特に、10、20、30 40または50重量%を含む。本発明の一態様において、PUFA油は10-50重量%のDHA及び0-20重量%のEPAを含む。)

c 文部科学省科学技術・学術審議会 資源調査分科会、"日本食品標準成分表 五訂増補 脂肪酸成分表 編"、第2章第1表10魚介類、[online]、平成17年1月24日、[令和1年10月23日検索]、インターネットには、次の事項が記載されている。



」(表における、さけ・ます類の食品番号10126?10152)

d 上記a?cの記載によれば、本願優先日前に、魚油が、一般的に、その総重量に対して10質量%超のオメガ-3脂肪酸を含有することは、技術常識であったといえる。

(エ)オメガ-3脂肪酸の各種疾患に対する抗炎症作用についての周知技術
a 原査定の拒絶の理由において引用文献3として引用されたLipids,2003,vol.38, no.4,p.419-424には、次の事項が記載されている。

「Effect of dietary fish oil intake on arachidonic acid (AA) as a proportion of total highly unsaturated FA (HUFA). Dietary fish oil supplementation is thought to exert anti-inflammatory effects at least in part by displacing AA from the pool of HUFA in the sn-2 position of membrane phospholipids, from which it is released by phospholipase A_(2) to provide substrate for eicosanoid-forming enzymes (10). EPA acts as an alternate substrate and inhibitor of AA metabolism. In the highest tertile for plasma phospholipid EPA, AA as a percentage of HUFA was depressed by 37%, whereas essentially no effect was seen in the tertile with the lowest EPA level during treatment (Table 1).」(421頁右欄3行?422頁左欄9行)
(和訳:
総高度不飽和脂肪酸(HUFA)の割合に応じたアラキドン酸(AA)に対する)食用魚油摂取の効果 食用魚油の補給は、少なくとも、リン脂質膜のsn-2位においてAAをHUFAに置き換えることによって、抗炎症効果を奏するものと考えられている。そして、そのリン脂質膜から、AAは、ホスホリパーゼA_(2)により遊離され、エイコサノイド生成酵素の基質となるものである。また、EPAは競合する基質及びAA代謝の阻害剤として振る舞う。血漿中リン脂質EPAの三分位高位において、HUFAに対するAAのパーセンテージは37%減少し、一方で、処置中にEPAの三分位低位において本質的な影響は見られなかった。(表1))

b 生化学,2008,Vol.80, No.11,pp.1042-1046(前置報告書で新たに引用された文献6)には、次の事項が記載されている。

「一方,魚油や健康食品などに多く含まれるエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)などのω3PUFAには古くから抗炎症作用,心血管保護作用,脳神経系保護作用などが知られているが,その分子レベルでの作用機構は未だ不明な点が多い.ω3系列のEPAやDHAがω6系列のアラキドン酸代謝系と拮抗することで起炎性エイコサノイドの産生と作用を抑制するというのが従来の解釈であったが,最近ω3PUFA由来の抗炎症活性を有する代謝物の存在が明らかになった(図1).レゾルビン,プロテクチンと名づけられたω3PUFA由来の活性代謝物は,炎症収束を促進する新しいタイプの抗炎症性脂質メディエーターとして注目されている.」(1042頁右欄1?13行)

「3.ω3PUFA由来のメディエーター
EPAやDHAがアラキドン酸と同様にリポキシゲナーゼ(LOX),シクロオキシゲナーゼ(COX),シトクロムP450などの酵素の基質となることは以前より知られていたが、その代謝物の構造と機能についての詳しい解析はなかった。Serhanらは炎症の終息期に存在する脂肪酸代謝物の包括的メタボローム解析から、EPA由来のレゾルビンE1(RvE1),DHA由来のプロテクチンD1(PD1)等を新たに見出した(図2).RvE1とPD1にはナノモルレベルで好中球の遊走抑制,炎症性サイトカインの産生抑制などの活性が認められた(表1).」(1043頁右欄8行?1044頁左欄4行)



」(1044頁上段)

c バイオインダストリー,2013年2月,Vol.30, No.2,pp.11-17(前置報告書で新たに引用された文献7)には、次の事項が記載されている。

「一方で、炎症浸出液中に存在するオメガ3脂肪酸代謝物の包括的メタボローム解析から、オメガ3脂肪酸に固有の活性代謝物としてEPA由来のレゾルビンE1(RvE1)、DHA由来のプロテクチンD1(PD1)等が見いだされた。いずれの化合物にも強力な抗炎症作用、組織保護作用が認められている(表1)。」(13頁左欄12?19行)



(14頁)

d Obesity,2011年,Vol.19, No.2,pp.362-369(前置報告書で新たに引用された文献8)には、次の事項が記載されている。

「In addition to decreased insulin sensitivity, diabetes is a pathological condition associated with increased inflammation. The ω-3 fatty acids have been proposed as anti-inflammatory agents. Thus, the major goal of this study was to analyze the effects of fatty acid supplementation on both insulin sensitivity and inflammatory status in an animal model of type 2 diabetes. Diabetic rats(Goto-Kakizaki model) were treated with eicosapentaenoic acid(EPA) or linoleic acid at 0.5g/kg body weigh (bw) dose. In vivo incorporation of ^(14)C-triolein into adipose tissue was improved by the ω-3 administration. In vitro incubations of adipose tissue slices from EPA-treated rats showed an increase in ^(14)C-palmitate incorporation into the lipid fraction. These observations were linked with a decreased rate of fatty acid oxidation. EPA treatment resulted in a decreased fatty acid oxidation in incubated strips from extensor digitorum longus (EDL) muscles. The changes in lipid utilization were associated with a decrease in insulin plasma concentration, suggesting an improvement in insulin sensitivity.」(Abstract 1?10行)
(和訳:
インスリン感受性の低下に加えて、糖尿病は炎症の増加を伴う病態である。 ω-3脂肪酸は、抗炎症剤として提案されてきた。したがって、この研究の主な目標は、2型糖尿病の動物モデルにおけるインスリン感受性と炎症状態の双方に対する脂肪酸補給の効果を分析することである。糖尿病マウス(Goto-Kakizaki model)は、エイコサペンタエン酸(EPA)又はリノール酸の体重当たり0.5g/kgの投与で処置された。^(14)C-トリオレインの脂肪組織への生体内取り込みは、ω-3投与により改善された。 EPA投与ラットの脂肪組織切片のin vitroインキュベーションでは、脂質分画への^(14)C-パルミテートの取り込みの増加が示された。これらの結果は、脂肪酸酸化の減少率と関連している。 EPA治療により、長趾伸(EDL)筋の培養ストリップの脂肪酸酸化が減少した。脂質代謝の変化は、インスリン血漿濃度の低下と関連しており、インスリン感受性の改善を示唆している。)

「Concerning the inflammatory status, EPA treatment resulted in an decreased gene expression for both tumor necrosis factor-α (TNF-α) and interleukin-6 (IL-6) both in skeletal muscle and adipose tissue.」(Abstract14?16行)
(和訳:
炎症状態については、EPAによる処置は、骨格筋と脂肪組織において、腫瘍壊死因子α(TNF-α)とインターロイキン6(IL-6)のいずれに対しても、それらの遺伝子発現の減少を示した。)

e Am J Neurodegener Dis(Epub),2013.6.21,Vol.2, No.2,pp.129-139(前置報告書で新たに引用された文献9)には、次の事項が記載されている。

「Inflammation is a current therapeutic target in sALS patients, but previous anti-inflammatory approach with the cyclooxygenase-2 (COX-2) inhibitor celecoxib [8] failed in clinical trials, and celecoxib did not show biological effect on prostaglandin E_(2) (PGE_(2)) levels in the spinal fluid. COX-2 is an enzyme responsible for production of inflammatory mediators called prostanoids from arachidonic acid. When acetylated by aspirin, however, COX-2 stimulates production of pro-resolving and anti-inflammatory lipid mediators called resolvins (e.g. resolvin D1 (RvD1)) from omega-3 fatty acids docosahexaenoic acid (DHA) and eicosapentaenoid acid (EPA) [9]. RvD1 attenuates the transcription and secretion of inflammatory cytokines induced by aggregated SOD1 in ALS PBMCs and macrophages [3]. Thus COX-2 inhibition by celecoxib could have adverse effect on the production of resolvins, which are produced by prostanoid class switching [10]. On the other hand, ALS patients could benefit from fish oil supplements with DHA.」(130頁左欄11?33行)
(和訳:
炎症はsALS患者の現在の治療目標であるが、シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)阻害剤セレコキシブ[8]によるこれまでの抗炎症アプローチは臨床試験で失敗し、セレコキシブは髄液中のプロスタグランジンE_(2)(PGE_(2))レベルに生物学的効果を示さなかった。COX-2は、アラキドン酸からのプロスタノイドと呼ばれる炎症性メディエーターの産生に関与する酵素である。しかし、アスピリンによってアセチル化されると、COX-2は、オメガ3脂肪酸のドコサヘキサエン酸(DHA)及びエイコサペンタエン酸(EPA)からのレゾルビン(レゾルビンD1(RvD1)など)と呼ばれる抗炎症脂質代謝物メディエーターの産生を刺激する[9]。RvD1はALSの PBMCとマクロファージ中の集積SOD1により誘導される炎症性サイトカインの転写と分泌を抑制する。したがって、セレコキシブによるCOX-2阻害は、プロスタノイドのクラススイッチングによって産生されるレゾルビンの産生に悪影響を与える可能性がある[10]。一方、ALS患者はDHAを含む魚油サプリメントの恩恵を受ける。)

f 上記a?eの記載によれば、本願優先日前に、オメガ-3脂肪酸が、関節リウマチ、喘息、アルツハイマー病、脳梗塞、糖尿病、筋萎縮性側索硬化症等の疾患に対して抗炎症作用を有することは、周知技術であったといえる。

(オ)ルテイン、リコペンについての技術常識
a 食品機能性の科学 編集委員会編,食品機能性の科学,株式会社 産業技術サービスセンター,2008年,第76?79頁(前置報告書で新たに引用された文献10)には、次の事項が記載されている。

「 4)リコペン
トマト、トマト加工品、スイカ、グレープフルーツ(赤肉腫)、柿、アプリコット(ドライフルーツ)、グアバ、パパイヤには0.1mg/100g以上含まれる。最も重要な摂取源はトマト、トマト加工品で総摂取量の大半を依存している。
5)ルテイン
カブラナ、ホウレンソウ、ズッキニ、レタス、ケール、芽キャベツ、ブロッコリーは0.1mg/100g以上含まれる。ホウレンソウなど緑色の濃い野菜とブロッコリーが重要な摂取原であり80%を占める。」(77頁左欄6?16行)

b 上記aによれば、本願優先日前に、ルテイン、リコペンが天然に存在する物質であることは、技術常識であった。

ウ 本件補正発明と引用発明1との対比・判断
(ア)対比
本件補正発明と、引用発明1とを対比する。
引用発明1の「5未満のtotox値」及び「セイヨウナシ、ザクロ、アロニア及びリンゴ」からなる「ジュース」は、それぞれ、本件補正発明の「20未満のtotox値」及び「ザクロ、アンズ、グレープフルーツ、オレンジ、クランベリー、バラの実、パイナップル、ブラックチョークベリー、クワの実、クラウドベリー、アセロラ、ラズベリー、スイカ、モモ、ブドウ、チェリー、ジャンボラン、リンゴ、マンゴー、セイヨウナシ、アロニア、パッションフルーツ及びキーウィの群、及びそれらの任意の組み合わせから選択され」る「ジュース」に包含されるものである。
そうすると、本件補正発明と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>
「治療に使用するための、水中油型乳剤中に魚油とジュースとの組み合わせを含む組成物であって、前記魚油が、20未満のtotox値を有しオメガ-3を含有する魚油から選択され、乳剤を安定化させるために適切な乳化剤が使用され、
ジュースが、ザクロ、アンズ、グレープフルーツ、オレンジ、クランベリー、バラの実、パイナップル、ブラックチョークベリー、クワの実、クラウドベリー、アセロラ、ラズベリー、スイカ、モモ、ブドウ、チェリー、ジャンボラン、リンゴ、マンゴー、セイヨウナシ、アロニア、パッションフルーツ及びキーウィの群、及びそれらの任意の組み合わせから選択され、
前記乳化剤が、乳固形分、ホエータンパク質、カラスムギタンパク質及びエンドウ豆タンパク質の群から選択される、組成物。」

<相違点1-1>
本件補正発明は、魚油が、「魚油の総質量に対して10質量%超のオメガ-3含有率を有する魚油から選択され」るのに対し、引用発明1は、オメガ-3の含有率を特定していない点。

<相違点1-2>
本件補正発明は、「前記組成物が、少なくとも1つの生物活性アミノ酸と、天然に存在しない少なくとも一つの酸化防止剤とを含まず」としているのに対し、引用発明1は、そのような特定をしていない点。

<相違点1-3>
本件補正発明は、その使用される治療の対象が、「炎症及び/又は根本原因が炎症である疾患」であって、「前記炎症又は疾患/状態が、上気道感染症(URTI)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、軽度認知機能障害(MCI)を含めたアルツハイマー病(AD)、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、嚢胞性線維症、脳卒中、糖尿病、脳震盪を含めた外傷性脳障害、術後認知低下、冠状動脈疾患及び関節リウマチの群、及びそれらの任意の組み合わせから選択され」るのに対し、引用発明1は、治療について、かかる特定をしていない点。

(イ)判断
a 相違点1-1について
前記イ(ウ)のとおり、本願優先日前に、一般的に、魚油が、その総重量に対して10質量%超のオメガ-3を含有することは技術常識であった。
そうすると、引用発明1は、オメガ-3脂肪酸が健康増進効果を有することを前提としてオメガ-3脂肪酸を含有する魚油を選択しているものと認められるところ(摘記1b,1c)、上記技術常識と合わせて考えると、引用発明1の魚油は、魚油の総質量に対して10質量%超のオメガ-3含有率を有するものであると推認される。
したがって、相違点1-1は実質的な相違点ではない。

b 相違点1-2について
引用文献Aには、「GRINDOX^(TM) TOCO 50 Antioxidant (E 306, rapeseed oil)」(8頁2行)(和訳:GRINDOX^(TM) TOCO 50 抗酸化剤(E306、菜種油))と記載されており、引用発明1の「Toco 50」は天然に存在する酸化防止剤であると推認できる。また、引用文献2の摘記2eにおける「乳化剤(Grindsted3115)が油に添加され、均質な混合物になるまで室温で穏やかに混合される。」との記載から、引用発明1の「Grindsted 3115」は乳化剤であると推認できる。そして、ジペプチドであるL-カルノシンはアミノ酸ではない。また、引用発明1のその他の成分も、生物活性アミノ酸でも天然に存在しない酸化防止剤でもないことは明らかである。
そうすると、引用発明1の組成物は、生物活性アミノ酸又は天然に存在しない酸化防止剤のいずれも含むものではないから、相違点1-2は実質的な相違点ではない。

c 相違点1-3について
引用文献1には、引用文献1に開示される組成物を炎症性疾患の治療のために使用することが記載されており(摘記1e)、また、摂取されたオメガ-3が、アラキドン酸量、炎症性サイトカインを減少させること及びオメガ-3が炎症及び酸化的ストレスを受ける状況にとって有益であることが示されていることが記載されている(摘記1b)。
そして、前記イ(エ)のとおり、本願優先日前に、オメガ-3脂肪酸が、関節リウマチ、喘息、アルツハイマー病、脳梗塞、糖尿病、筋萎縮性側索硬化症等の疾患に対して抗炎症作用を有することは周知技術であった。
そうすると、引用発明1において、引用文献1に記載の示唆及び周知技術に基づき、引用発明1における組成物を、関節リウマチ、喘息、アルツハイマー病、脳梗塞、糖尿病、筋萎縮性側索硬化症等の疾患の治療に適用することは、当業者が容易に想到し得たことである。

d 本件補正発明の効果について
本願明細書には、実施例1?9として、各種疾患の薬理試験について記載されているが、実施例2?4、6は、単に試験の計画又は内容が示されているだけであって、試験の結果は記載されていない。
また、実施例1、5、7?9に記載された薬理試験では、「本発明の組成物」、「本発明で使用する組成物」又は「Smartfish」なる名称で表された組成物を試験に用いたとされているが([0015]、[0124]、[0126]、[0149]?[0158]、[0167]、[0170]、[0176]、[0179]、[0181]?[0184]、[0189]?[0193]、[0195]?[0205])、これらの組成物は、その含有する成分の具体的な組成が示されておらず不明であり、実施例7では、「Smartfish群は、2種の果汁をベースとした飲料として本発明の組成物を毎日消費するが、その飲料は、飲料当たり0.5gのEPA及び0.5gのDHAを含有し、EPA/DHAを合わせて1日当たり合計2gを含有する。」([0170])とされ、実施例8では、「Smartfishジュース(Nutrifriend 2000 [2500mg オメガ-3、2000mg EPA/DHA])及び良質の1812魚油(20未満のTOTOX)を、EPA及びDHAに関して同じ濃度で細胞に添加した。」([0184])とされているところ、EPA及びDHA以外の成分組成は依然として不明であるから、当該組成物は、魚油と併用するジュースの果実の種類や、乳化剤の種類、その他の成分の存否を含めて、本件補正発明の組成物の条件を満たすものであるか否かを確認することができない。
したがって、そのような成分組成が不明な組成物による薬理試験の結果をもって、本件補正発明が、予測できない格別顕著な効果を奏したものと認めることはできない。
なお、上記実施例8においては、比較例として「良質の1812魚油(20未満のTOTOX)」からなる乳剤を用いているが、EPA及びDHA以外の具体的な成分組成が不明であるから、実施例8に示されている「Smartfish」が「良質の1812魚油」と比較して「LPS刺激マクロファージに及ぼす免疫調節効果」に優れるという結果が、何に基づくものであるのか(ジュースとの併用によるものなのか、その他の成分の影響によるものなのか)、把握することができない。
仮に、上記実施例8に記載された効果が、魚油とジュースとの併用によるものであったとしても、ジュースに含まれる成分は、果実の種類によって異なり、それらの成分ごとに生体に及ぼす活性も異なるから、本件補正発明のジュースの選択肢として多数列記されたいずれの果実を用いた場合でも、ジュースの組成が不明な上記「Smartfish」と同様な効果を奏するものと推認することはできない。

(ウ)小括
したがって、本件補正発明は、引用文献1に記載された発明、技術常識及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

エ 本件補正発明と引用発明2との対比・判断
(ア)対比
本件補正発明と、引用発明2とを対比する。
引用発明2の「5未満のtotox値」及び「リンゴ、ザクロ、アロニア及びセイヨウナシ」からなる「ジュース」は、それぞれ、本件補正発明の「20未満のtotox値」及び「ザクロ、アンズ、グレープフルーツ、オレンジ、クランベリー、バラの実、パイナップル、ブラックチョークベリー、クワの実、クラウドベリー、アセロラ、ラズベリー、スイカ、モモ、ブドウ、チェリー、ジャンボラン、リンゴ、マンゴー、セイヨウナシ、アロニア、パッションフルーツ及びキーウィの群、及びそれらの任意の組み合わせから選択され」る「ジュース」に包含されるものである。
そうすると、本件補正発明と引用発明2との一致点及び相違点は次のとおりである。

<一致点>
「治療に使用するための、水中油型乳剤中に魚油とジュースとの組み合わせを含む組成物であって、前記魚油が、20未満のtotox値を有しオメガ-3を含有する魚油から選択され、乳剤を安定化させるために適切な乳化剤が使用され、
ジュースが、ザクロ、アンズ、グレープフルーツ、オレンジ、クランベリー、バラの実、パイナップル、ブラックチョークベリー、クワの実、クラウドベリー、アセロラ、ラズベリー、スイカ、モモ、ブドウ、チェリー、ジャンボラン、リンゴ、マンゴー、セイヨウナシ、アロニア、パッションフルーツ及びキーウィの群、及びそれらの任意の組み合わせから選択される、組成物。」

<相違点2-1>
本件補正発明は、魚油が、「魚油の総質量に対して10質量%超のオメガ-3含有率を有する魚油から選択され」るのに対し、引用発明2は、オメガ-3の含有率を特定していない点。

<相違点2-2>
本件補正発明は、「前記組成物が、少なくとも1つの生物活性アミノ酸と、天然に存在しない少なくとも一つの酸化防止剤とを含まず」としているのに対し、引用発明2は、そのような特定をしていない点。

<相違点2-3>
本件補正発明は、その使用される治療の対象が、「炎症及び/又は根本原因が炎症である疾患」であって、「前記炎症又は疾患/状態が、上気道感染症(URTI)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、軽度認知機能障害(MCI)を含めたアルツハイマー病(AD)、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、嚢胞性線維症、脳卒中、糖尿病、脳震盪を含めた外傷性脳障害、術後認知低下、冠状動脈疾患及び関節リウマチの群、及びそれらの任意の組み合わせから選択され」るのに対し、引用発明2は、治療について、かかる特定をしていない点。

<相違点2-4>
本件補正発明は、「前記乳化剤が、乳固形分、ホエータンパク質、カラスムギタンパク質及びエンドウ豆タンパク質の群から選択される」であるのに対し、引用発明2は、乳化剤が「Grindsted 3115」からなる点。

(イ)判断
a 相違点2-1について
前記イ(ウ)のとおり、本願優先日前に、一般的に、魚油が、その総重量に対して10質量%超のオメガ-3を含有することは技術常識であった。
そうすると、引用発明2は、オメガ-3脂肪酸が健康増進効果を有することを前提としてオメガ-3脂肪酸を含有する魚油を選択しているものと認められ(摘記2a,2c)、また、引用文献2の実施例においてはサケ油が用いられていることと(摘記2c)、上記技術常識とを合わせて考えると、引用発明2の魚油は、魚油の総質量に対して10質量%超のオメガ-3含有率を有するものであると推認される。
したがって、相違点2-1は実質的な相違点ではない。

b 相違点2-2について
引用文献Aには、「GRINDOX^(TM) TOCO 50 Antioxidant (E 306, rapeseed oil)」(8頁2行)(和訳:GRINDOX^(TM) TOCO 50 抗酸化剤(E306、菜種油))と記載されており、引用発明2の「Toco 50」は天然に存在する酸化防止剤であると推認できる。また、引用発明2の成分について、引用文献2には、リコペンについては「天然リコペン」、ルテインについては「天然ルテイン」との記載があり(摘記2d)、さらに、上記イ(オ)に示したとおり、リコペン及びルテインが天然に存在する物質であるとの技術常識も考慮すると、引用発明2の組成物が含む「Toco 50」、「リコペン」及び「ルテイン」は、いずれも、生物活性アミノ酸でも天然に存在しない酸化防止剤でもないと認められる。また、引用発明2のその他の成分も、生物活性アミノ酸でも天然に存在しない酸化防止剤でもないことは明らかである。
そうすると、引用発明2の組成物は、生物活性アミノ酸又は天然に存在しない酸化防止剤のいずれも含むものではないから、相違点2-2は実質的な相違点ではない。

c 相違点2-3について
引用文献2には、引用文献2に開示される飲料が、炎症性疾患の治療に使用されることが記載されており(摘記2b)、また、前記イ(エ)のとおり、本願優先日前に、オメガ-3脂肪酸が、関節リウマチ、喘息、アルツハイマー病、脳梗塞、糖尿病、筋萎縮性側索硬化症等の疾患に対して抗炎症作用を有することは周知技術であった。そうすると、引用発明2において、引用文献2に記載の示唆及び周知技術に基づき、引用発明2における組成物を、関節リウマチ、喘息、アルツハイマー病、脳梗塞、糖尿病、筋萎縮性側索硬化症等の疾患の治療に適用することは、当業者が容易に想到し得たことである。

d 相違点2-4について
引用発明2の組成物は、乳化剤としての「Grindsted 3115」とともに、ホエータンパク質も含有するものであり、ホエータンパク質が乳化剤として用いられることは技術常識であるから(例えば、摘記1dを参照。)は、引用発明2においては、「Grindsted 3115」だけでなくホエータンパク質も乳化剤として機能しているものと推定される。したがって、相違点2-4は実質的な相違点ではない。

e 本件補正発明の効果について
前記ウ(イ)dで既述したとおり、本願明細書に記載された各種疾患の薬理試験についての実施例は、試験の結果が示されていないもの(実施例2?4、6)、及び、結果は記載されているが、「Smartfish」なる名称で示された具体的な成分組成が不明な組成物を試験に用いたもの(実施例1、5、7?9)であるため、本件補正発明が予測できない格別顕著な効果を奏したものとは認められないし、仮に、実施例8に記載された上記「Smartfish」なる組成物の「LPS刺激マクロファージに及ぼす免疫調節効果」が、魚油とジュースとの併用に基づくものであったとしても、本件補正発明のジュースの選択肢として多数列記されたいずれの果実を用いた場合においても、ジュースの組成が不明な上記「Smartfish」と同様な効果を奏するものと推認することはできない。

(ウ)小括
したがって、本件補正発明は、引用文献2に記載された発明、技術常識及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

オ 審判請求人の主張について
審判請求人は、「驚くべきことに、本願発明に係る組成物は、本質的に魚油及びジュースからなる水中油型乳剤であり、前記魚油は、「20未満のtotox値及び魚油の総質量に対して10質量%超のオメガ-3含有率を有する魚油から選択され、乳剤を安定化させるために適切な乳化剤が使用される」場合、炎症の治療において類似の魚油単独と比較して改善された効果を有することを明確に実証しております(本願出願当初明細書の実施例8及び図5?9を参照ください)。」(審判請求書5頁16?22行)と主張する。
しかしながら、上記ウ(イ)dで既述したとおり、実施例8に示された「Smartfish」なる成分組成が不明な組成物が奏する効果を、本件補正発明の範囲全てにおいて奏される効果と認めることはできない。
したがって、審判請求人の主張は採用できない。

3 補正の却下の決定のむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しない補正事項を含むものであり、或いは、同法同条同項第2号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであるとしても、本件補正発明が、同法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものである。
したがって、本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成31年2月20日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願に係る発明は、平成30年5月25日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1(2)に記載した次のとおりのものである。

「【請求項1】
炎症の治療に使用するための、水中油型乳剤中に魚油とジュースとより本質的になる組み合わせを含む組成物であって、前記魚油が、20未満のtotox値及び魚油の総質量に対して10質量%超のオメガ-3含有率を有する魚油から選択され、乳剤を安定化させるために適切な乳化剤が使用される、組成物。」

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1ないし10、12に係る発明は、引用文献1に記載された発明であり、この出願の請求項1、3ないし8、10、12に係る発明は、引用文献2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、また、この出願の請求項1ないし12に係る発明は、引用文献1又は2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。

3 引用文献の記載事項等
原査定の拒絶理由で引用された引用文献1及び2の記載事項は、前記第2[理由]2(2)イ(ア)及び(イ)に記載したとおりである。
また、本願優先日前の魚油の総重量に対するオメガ-3脂肪酸含有率についての技術常識は、前記第2[理由]2(2)イ(ウ)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本件補正前の請求項1に記載された発明である本願発明は、本件補正発明の発明特定事項との対比において、組成物が治療に使用される疾患を「炎症」と規定するに留まり、組成物が「少なくとも1つの生物活性アミノ酸と、天然に存在しない少なくとも一つの酸化防止剤とを含ま」ないという条件は付されておらず、「ジュース」にも何ら限定はなく、「乳化剤」も選択肢による限定はなされていないというものである。
そこで、本願発明と、引用発明1又は引用発明2とを、前記第2[理由](特に、第2[理由]2(2)ウ(イ)a、第2[理由]2(2)エ(イ)a)の説示も併せて対比すると、本願発明と、引用発明1又は引用発明2との間に、発明特定事項の実質的な差異は無い。
したがって、本願発明は、引用文献1又は引用文献2に記載された発明である。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-10-31 
結審通知日 2019-11-05 
審決日 2019-11-18 
出願番号 特願2016-523688(P2016-523688)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (A61K)
P 1 8・ 113- Z (A61K)
P 1 8・ 575- Z (A61K)
P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長谷川 茜馬場 亮人  
特許庁審判長 井上 典之
特許庁審判官 渡邊 吉喜
前田 佳与子
発明の名称 炎症を治療するための魚油及びジュースを含む組成物の使用  
代理人 実広 信哉  
代理人 阿部 達彦  
代理人 村山 靖彦  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ