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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F01M
管理番号 1361284
審判番号 不服2018-12584  
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-09-20 
確定日 2020-04-01 
事件の表示 特願2013-193076「エンジンを始動する装置および方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年4月10日出願公開、特開2014-62546〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年9月18日(パリ条約による優先権主張2012年(平成24年)9月20日(GB)グレートブリテン及び北アイルランド連合王国)の出願であって、その手続は以下のとおりである。
平成29年6月28日(発送日:同年7月4日) :拒絶理由通知書
平成29年9月19日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年11月21日(発送日:同年11月28日):拒絶理由通知書
平成30年2月20日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年5月16日(発送日:同年5月22日) :拒絶査定
平成30年9月20日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和元年6月26日(発送日:同年7月2日) :拒絶理由通知書(以下、「当審拒絶理由」という。)
令和元年9月20日 :意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1ないし13に係る発明は、令和元年9月20日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「エンジン潤滑油圧力および潤滑油圧力プライミング時間をモニタリングしてエンジンを始動する方法であって、
a)エンジンの始動が要求されたあと、エンジン潤滑油圧力が潤滑油圧力閾値未満である場合、前記エンジン潤滑油圧力をある期間、エンジン燃料インジェクタを停止させた状態で前記エンジンをクランキングすることによってプライミングするステップと、
b)前記エンジン潤滑油圧力をプライミングする前記期間のあと、エンジン燃料インジェクタを始動させた状態で、前記エンジンを始動するステップと
を含み、
前記エンジン潤滑油圧力をプライミングする前記期間は、前記エンジン潤滑油圧力が前記潤滑油圧力閾値を超えるか、または、潤滑油圧力プライミング時間閾値を超えて、前記エンジン潤滑油圧力をプライミングすることに時間を費すかのいずれかまで続く、方法。」

第3 当審における拒絶の理由
当審が通知した拒絶理由のうちの理由2は、次のとおりのものである。

(進歩性)本願の請求項1ないし13に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



● 理由2(進歩性)について
・請求項1-6、10、12及び13に対して 引用文献1ないし引用文献3

1 特開2002-54790号公報
2 実願昭54-79772号(実開昭55-180029号)のマイクロフィルム(周知技術を示す文献)
3 特開平6-42436号公報

第4 引用文献の記載事項
1 引用文献1
当審拒絶理由に引用された、本願の優先日前に頒布された引用文献1(特開2002-54790号公報)には、「潤滑装置」に関して、図面(特に図1ないし図6を参照。)とともに以下の記載がある(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。以下同様。)。

ア 「【0008】本発明の目的は、機械の油必要部位に初期潤滑を適切に行うことができて、機械の寿命を延長できる潤滑装置を提供することにある。」

イ 「【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1には、本発明の一実施形態に係る潤滑装置1が示されている。この潤滑装置1は、たとえば大型建設機械等のエンジン2にある多数の油必要部位(運動部分)を初期潤滑するものである。ここで、油必要部位とは、たとえばクランクシャフト、ピストン、コネクティングロッド、動弁機構、およびタイミングギヤ等である。潤滑装置1は、エンジン2の油供給源としてのオイルパン2Aから潤滑油を汲み上げるポンプ10と、このポンプ10を駆動させるポンプ駆動手段としてのモータ20と、潤滑油の圧力を検出する油圧検出手段としての油圧センサ30と、潤滑油の温度を検出する温度検出手段としての温度センサ40と、モータ20を駆動・停止させるコントローラ50とを備えている。
【0018】ポンプ10には、たとえばギヤポンプやトロコイドポンプ等が用いられており、図示は省略するが、ポンプ10の駆動軸は、モータ20の出力軸に接続されている。このポンプ10は、エンジンのオイルパン2Aから各運動部分、たとえばクランクシャフトやシリンダブロック等にあけられたオイルホール等へと潤滑油を導くオイルギャラリ11(送油管11)の途中に設けられ、このオイルギャラリ11のポンプ10より下流側にはオイルフィルタ12が設けられている。モータ20は、リレー21を介して電源に接続されており、このリレー21は、コントローラ50から送られる信号によって、その動作が制御されている。
【0019】油圧センサ30は、エンジン2の運動部分に送油される潤滑油の油圧を検出するためのもので、機械式のものであってもよく、電気式のものであってもよい。油圧センサ30は、たとえばエンジン2のオイルギャラリ11内等に設置されている。温度センサ40は、潤滑油の温度を検出するためのもので、オイルパン2A内に設置されている。
【0020】コントローラ50は、外部から信号が入力される信号入力部51と、この信号入力部51から得る信号に基づいてモータ20へ停止信号を発する停止手段52と、この停止手段52からの信号をモータ20や後述する各ランプに出力する信号出力部53と、停止手段52で用いられる各種パラメータを記憶したパラメータ情報記憶部54と、タイマ55とを含んで構成されている。このうち、停止手段52は、第1停止手段521、第2停止手段522、および再起動停止手段523を有している。なお、第1停止手段521は、本発明の第1停止手段であり、また、本発明の第3停止手段でもある。
【0021】停止手段52において、第1停止手段521は、油圧センサ30で検出した油圧が予め設定した所定圧に達すると、信号出力部53を介してモータ20に停止信号を送る、つまりモータ20と電源との間に配置されたリレー21を開くものである。所定圧は、温度センサ40で検出した油温および潤滑油の種類に対応して設定されたパラメータであり、パラメータ情報記憶部54で記憶されている。潤滑油は、その温度が低いと粘性が高く、温度が高いと粘性が低い。粘性の高い潤滑油、つまり油温が低い潤滑油を送油すると、油圧は上がりやすくなる。一方、粘性の低い潤滑油、つまり油温が高い潤滑油を送油すると、油圧は上がりにくくなる。また、潤滑油は、その種類によっても粘性が異なり、粘性が高い種類の潤滑油の場合は、油圧が上がりやすく、粘性が低い種類の潤滑油の場合は、油圧が上がりにくい。
【0022】潤滑油が、油圧が立ち上がりやすい状態であった場合に所定圧を高めに設定し、油圧が立ち上がりにくい状態であった場合に所定圧を低めに設定することで、潤滑油の状態に対応した所定圧を逐次設定でき、エンジン2の初期潤滑を十分かつ確実に行えるようになる。たとえば、図2のグラフに示すように、油温が-25[℃]だった場合に所定圧は20[KPa]に設定され、油温が100[℃]だった場合に所定圧は5[KPa]に設定される。なお、これら所定圧の各値は、パラメータ情報記憶部54で記憶されており、潤滑油の温度に応じて逐次読み出されるようになっている。
【0023】第2停止手段522は、油圧センサ30で検出した油圧が所定時間内に所定圧に達しないと、信号出力部53を介してモータ20に停止信号を送る、つまりモータ20と電源との間に配置されたリレー21を開くものである。所定時間は、温度センサ40で検出した油温および潤滑油の種類に対応して設定されたパラメータであり、パラメータ情報記憶部54で記憶されている。潤滑油は、上述したように、油温の高低、または潤滑油の種類によって、その粘性が異なる。所定時間は、油圧が立ち上がるのに十分な時間に設定されており、粘性の高い潤滑油の場合に長く設定され、粘性の低い潤滑油の場合に短く設定されている。たとえば、図3のグラフに示すように、潤滑油にSAE30を用いた場合、油温が-25[℃]だと所定時間は60[sec]に設定され、油温が100[℃]だと所定圧は10[sec]に設定される。また、SAE30よりも粘度が低いSAE10Wを潤滑油に用いた場合、SAE30と同じ油温であっても所定時間は短めに設定される。さらに、合成油であるSAE10W-30を潤滑油に用いた場合、同じ油温だと、所定時間は、SAE30の所定時間とSAE10Wの所定時間との間の値に設定される。なお、これら所定時間の各値は、パラメータ情報記憶部54で記憶されており、潤滑油の温度および潤滑油の種類に応じて逐次読み出されるようになっている。
【0024】ここにおいて、所定時間は、温度センサ30が検出した油温および潤滑油の種類に応じて決められた、たとえば計算上の基準時間の1.5倍?3倍の時間に設定されている。基準時間としては、たとえば、ポンプ10により、潤滑油がオイルパン2Aから汲み上げられて各油必要部位に到達するまでの所要時間等が挙げられる。特に、潤滑油がメタルやターボ等の重要部品に到達するまでの所要時間を基準時間として用いることが望ましい。このような所要時間は、潤滑油の温度および種類によって異なるので、これらを考慮して計算されることが望ましい。なお、本実施形態において、図3のグラフに示される各所定時間は、前記基準時間の1.5倍の時間となっている。
【0025】つまり、所定時間は、通常であれば油圧が所定圧に達するのに十分な時間、すなわちエンジン2の運動部分を十分に初期潤滑できる時間に設定されている。このような所定時間内に油圧が所定圧に達しないときは、たとえば油圧センサ30の故障により油圧が正確に検出できない等の理由がある。このような場合、ポンプ10を長時間連続稼働させても油圧は所定圧に達したという信号を得られることはないので、所定時間を超えてポンプ10を稼働させる必要性はない。従って、所定時間内でのみ、ポンプ10を稼働させることでポンプ10の寿命の延長が図れるようになる。
【0026】また、所定時間は、たとえば最大1分に設定されている。粘性の高い潤滑油をポンプ10で長い時間連続して汲み上げると、ポンプ10に大きな負荷がかかり続けてポンプ10を傷めてしまう可能性があるので、ポンプ10の連続稼働時間に制限を設けることでポンプ10の寿命を延ばしている。なお、本実施形態では、所定時間は最大1分に設定されているが、潤滑油の粘性等によって適宜な時間に設定されてもよい。このような所定時間は、タイマ55で計られている。
【0027】再起動停止手段523は、ポンプ10およびモータ20のクールダウン時間を稼ぐために設けられており、ポンプ10が稼働して停止した後、一定時間再起動しないように、信号出力部53を介してモータ20に再起動停止信号を送る、つまりモータ20と電源との間に配置されたリレー21を一定時間開くものである。このような一定時間は、第2停止手段522と同様に、タイマ55で計られている。
【0028】コントローラ50には、図示しない車両のインストルメントパネルに設置された油圧ランプ61および時間ランプ62がそれぞれ接続されており、これらランプ61,62は、コントローラ50からの信号に応じてそれぞれ点灯するようなっている。油圧ランプ61は、油圧が所定圧に達していない状態では点灯し、油圧が所定圧に達すると消えるようになっている。時間ランプ62は、モータが作動している状態で点灯し、モータ20が停止すると消えるようになっている。
【0029】このようなコントローラ50は、上述した車両のインストルメントパネルに設けられたキー式のキースイッチ3からの信号を受けて作動するようになっている。キースイッチ3は、エンジン2の始動・停止を制御するためのスイッチであり、通常、OFF、ON、およびSTARTの3段切替位置を有している。キースイッチ3とコントローラ50との間には、ONおよびOFFの2段切替位置を有したプレルーブスイッチ1Aが設置されており、このプレルーブスイッチ1Aもインストルメントパネルに設けられている。プレルーブスイッチ1AがONの状態でキースイッチ3をONに入れると、コントローラ50が作動して潤滑装置1がエンジン2の初期潤滑を始める。一方、キースイッチ3をSTARTに入れると、スタータが作動し始めるとともに、スタータの作動信号がコントローラ50に入力され、コントローラ50がモータ20に停止信号を出力するようになっている。」

ウ 「【0030】次に、図4ないし図6のフローチャートを用いて、コントローラ50の動作を説明する。ここで、パラメータ情報記憶部54に潤滑油の種類の情報を予め入力しておく。このような油種情報の入力は、パラメータ情報記憶部54に接続された図示しないコントロールパネル等を用いて行えばよい。まず、たとえば寒冷時や寒冷時でなくとも長期稼働停止後等において、プレルーブスイッチ1AをONに入れ、キースイッチ3をONに入れると、コントローラ50の電源が入ってコントローラ50のたとえばタイマ55等が初期化され(S71)、コントローラ50からモータ20に作動信号が出力されてモータ20が作動する(S72)。ここにおいて、スタータが作動している状態では(S73)、スタータからコントローラ50に作動信号が入力され、この信号に応じてコントローラ50はモータ20に停止信号を送り、モータ20を停止させる(S79)。一方、スタータが作動していない状態では(S73)、スタータからコントローラ50に作動信号が入力されず、タイマ55が時間をカウントし始め(S74)、時間ランプおよび油圧ランプを点灯させる(S75)。
【0031】ポンプ10により、オイルパン2Aから潤滑油が汲み上げられてエンジン2の各運動部分に送油され始めると、温度センサ40から油温を読み込み、この油温およびパラメータ情報記憶部54で予め記憶された油種に基づいて、所定圧および所定時間をパラメータ情報記憶部54から読み込む(S81)。この状態で、油圧センサ30から油圧を読み込み(S82)、この油圧が所定圧に達すると(S83)、油圧が所定圧に達してから連続してたとえば5秒間モータ20を作動させた後、時間ランプ62および油圧ランプ61を消灯させて(S84)、第1停止手段521によってモータ20を停止させ、ポンプ10も停止させる(S85)。そして、運転者は、時間ランプ62および油圧ランプ61の消灯を合図により、プレルーブ(初期潤滑)完了を知り、キースイッチ3をSTARTに入れることでスタータを作動させる。
【0032】油圧が所定圧に達しない状態では、タイマ55のカウント時間が所定時間を超えていなければ(S86)、再び油圧センサ30から油圧を読み込むようになっている(S82)。一方、油圧が所定圧に達しない状態で、タイマ55のカウント時間が所定時間を超えると(S86)、時間ランプ62を消灯させ(S91)、第2停止手段522によってモータ20を停止させて、ポンプ10を停止させる(S92)。このとき、タイマ55が初期化される(S93)。第2停止手段522によってモータ20を停止させると、タイマ55がクールダウン時間をカウントし始める(S94)。タイマ55のカウント時間がクールダウン時間に達しない状態では(S95)、再起動停止手段523によってモータ20を停止させている(S96)。タイマ55のカウント時間がクールダウン時間に達すると(S95)、時間ランプ62を点滅させて(S97)、プレルーブスイッチ1Aを再度ONに入れることが可能であることを運転者に合図する。」

エ 「【0044】前記実施形態では、温度センサ30により、潤滑油の温度を検出していたが、エンジン2の油必要部位を冷却する冷却液の温度を検出してもよい。このような場合、温度センサで検出した冷却液の温度に対応して、第1停止手段で用いられる所定圧、および/または第2停止手段で用いられる所定時間を設定すればよい。」

オ エンジンがエンジン燃料インジェクタを備えること、及びエンジンを始動させるためにエンジン燃料インジェクタを始動させた状態でスタータを始動させることは、エンジンの分野における技術常識であり、エンジン2もこれらを備えていることは明らかといえる。

カ 上記オの事項及び上記ウの段落【0030】の記載からみて、「プレルーブスイッチ1AをONに入れ、キースイッチ3をONに入れ」、「スタータが作動していない」状態で「ポンプ10により潤滑油が汲み上げられてエンジン2の各運動部分に送油され」るのであるから、「ポンプ10により潤滑油が汲み上げられてエンジン2の各運動部分に送油され」るときは「エンジン燃料インジェクタを停止させた状態」であるといえる。

キ 上記オの事項及び上記イの段落【0029】並びに上記ウの段落【0030】の記載からみて、「プレルーブスイッチ1AをONに入れ、キースイッチ3をONに入れる」ことは、エンジンの始動を前提としたものであるから、エンジンの始動を要求するものといえる。

以上から、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「油圧センサ30から潤滑油の油圧を読み込み、油圧が立ち上がるのに十分な時間に所定時間が設定されたタイマ55をカウントしてスタータを作動させる潤滑装置であって、
エンジン2のプレルーブスイッチ1AをONに入れ、キースイッチ3をONに入れると、前記潤滑油の油圧が所定圧に達しない場合、エンジン燃料インジェクタを停止させた状態でポンプ10により前記潤滑油が汲み上げられて前記エンジン2の各運動部分に送油され、
前記ポンプ10により潤滑油が汲み上げられて前記エンジン2の各運動部分に送油されたあと、前記エンジン燃料インジェクタを始動させた状態で前記スタータを作動させること
を含み、
前記ポンプ10により潤滑油が汲み上げられて前記エンジン2の各運動部分に送油されることは、前記潤滑油の油圧が前記所定圧に達するか、または、タイマ55のカウント時間が所定時間を越え、前記ポンプ10により前記潤滑油が汲み上げられて前記エンジン2の各運動部分に送油されるかのいずれかまで続く、潤滑装置。」

2 引用文献2
当審拒絶理由に引用された、本願の優先日前に頒布された引用文献2(実願昭54-79772号(実開昭55-180029号)のマイクロフィルム)には、次の記載がある。

ア 「本考案はこのような事情に鑑みてなされたもので、潤滑系統に機関に駆動されるメインポンプに加えてモーター駆動のオイルポンプを装備すると共に、始動スイッチの投入により機関始動時の一定期間、及び機関停止時における潤滑油圧の低下を検知することにより停止後の一定時間、それぞれ上記モーターを作動せしめる制御装置を備え、これにより始動前及び停止後に自動的に潤滑油を供給して、上記各軸受部等における焼付事故や異常摩耗等を防止せしめるものである。」(明細書2ページ14行ないし3ページ3行。)

イ 「次にその作用を説明すると、機関1を始動させるに際して始動スイッチ9を投入すると、制御装置8におけるリレー11が通電されることにより自己保持用の接点11a及びリレー12に直列の接点11bが閉じられると共に、その時点ではタイマー13の接点13aが閉じられているから、該接点13a及び上記接点11bに直列のリレー12が通電せしめられて接点12aが閉じるのであり、これによりモーター7が作動せしめられ、第1図に示すオイルポンプ5により潤滑系統4を経て機関各部に潤滑油が供給されるのである。然して上記始動スイッチ9の投入ないしモーター7の作動開始と同時にタイマー13,14が刻時を開始するのであるが、タイマー13の設定時間t_(13)が経過するとリレー12に直列の接点13aが開いて該リレーに対する給電が停止されることにより接点12aが開かれ、これによりモーター7が停止して機関始動前の給油が停止することになるのである。然る後、機関が始動し、更に上記タイマー14の設定時間t_(14)が経過すると、リレー15に直列の接点14aが閉じ、且つ潤滑油圧の上昇に伴つて油圧スイッチ10が開き、これにより機関停止後の給油に対する体制が整うのである。」(明細書4ページ20行ないし6ページ2行。)

以上から、上記引用文献2には次の事項が記載されていると認められる。

「機関1を始動させるに際して始動スイッチ9を投入すると、オイルポンプ5により機関1各部に潤滑油が供給され、タイマー13が刻時を開始し、タイマー13の設定時間が経過すると機関始動前の給油が終了し、然る後、機関が始動すること。」(以下、「引用文献2の記載事項」という。)

3 引用文献3
当審拒絶理由に引用された、本願の優先日前に頒布された引用文献3(特開平6-42436号公報)には、次の記載がある。

ア 「【0005】
【作用】本発明は次のように作用する。エンジン1の始動回転操作時、図1(B)に示すように、エンジン回転速度Nは序々に上昇し、クランク軸2に連動連結した潤滑油ポンプ3の吐出側の潤滑油圧送路4に設けた油圧検出手段5によりその検出油圧Pも序々に上昇して行く。その検出油圧Pが潤滑充足用設定圧P_(1)に達しない潤滑不足検出状態では油圧検出手段5としての油圧スイッチ17が作動していて、その油圧スイッチ17の作動により燃焼防止手段7が燃焼室6での燃焼を起こさせないように燃焼防止作動させている。そして、検出油圧Pが潤滑充足用設定圧P_(1)を越える潤滑充足検出状態では油圧スイッチ17が非作動となり、そのため燃焼防止手段7が燃焼防止作動を解除する事により燃焼室6での燃焼が始まってエンジン1が始動する。
【0006】
【発明の効果】本発明は、上記のように構成され作用することから、次の効果を奏する。エンジンの始動時、検出油圧Pが潤滑充足用設定圧P_(1)を越える潤滑充足検出状態、即ちエンジンの潤滑部への潤滑が充足されてから、初めてエンジンが始動して回転上昇する。これにより、エンジンが速やかに始動する条件下でも潤滑遅れが起こらず、エンジン潤滑部に異常摩耗が生じる事を解消できる。
【0007】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面で説明する。図1(A)はエンジンの始動装置の構成系統図、図1(B)は同装置の作動タイミングチャートである。図において、ディーゼルエンジン1はシリンダ11にピストン12を摺動自在に内嵌し、このピストン12をコンロッド13を介してクランク軸2に連動連結してある。上記シリンダ11には燃料噴射バルブ8が設けられ、燃料噴射ポンプ9によりこの燃料噴射バルブ8を介して燃料が燃焼室6内に噴射される。上記エンジン1のクランク軸2に潤滑油ポンプ3を連動連結し、クランクケースの下部に形成されたオイルパン14の潤滑油15をエンジン1の各潤滑部へ圧送するようにしてある。そして、この潤滑油ポンプ3の吐出側の潤滑油圧送路4に油圧検出手段5を設けてある。又、エンジン1を例えば電気力・人力又はエア圧力などで始動回転操作する場合に、燃焼室6での燃焼を起こさせないようにする燃焼防止手段7としての燃料遮断装置16をエンジン1に付設してある。この燃料遮断装置16は、その作動時、例えば前記燃料噴射ポンプ9のコントロールラックを無噴射位置へ動かすようにしてある。そして、前記油圧検出手段5をこの燃焼防止手段7に指令制御可能に連携させ、その油圧検出手段5が検出した上記潤滑油圧送路4の検出油圧Pが、潤滑充足用設定圧P_(1)に達しない潤滑不足検出状態では、油圧検出手段5としての油圧スイッチ17が作動して前記燃焼防止手段7の燃料遮断装置16を燃焼防止作動させるのに対し、その潤滑充足用設定圧P_(1)を越える潤滑充足検出状態では、その油圧スイッチ17の非作動により燃焼防止手段7の燃料遮断装置16の燃焼防止作動を解除するように構成してある。尚、符号18はオイルストレーナ、符号19はリリーフバルブ、符号20は燃料ポンプ、符号21は燃料タンクである。」

以上から、上記引用文献3には次の事項が記載されていると認められる。

(1)「検出油圧Pが潤滑充足用設定油圧P1を超える潤滑充足検出状態では燃焼室6での燃焼が始まってエンジン1が始動すること」(以下、「引用文献3の記載事項1」という。)

(2)「燃焼防止手段7として燃料噴射ポンプ9のコントロールラックを無噴射位置へ動かす燃料遮断装置16をエンジン1に付設し、エンジン1の始動回転操作時、潤滑不足検出状態では燃料遮断装置16を燃焼防止させて潤滑油15をエンジン1の各潤滑部へ圧送し、潤滑充足検出状態では燃料遮断装置16の燃焼防止作動を解除すること。」(以下、「引用文献3の記載事項2」という。)

第5 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「スタータを作動させる」は、その機能、構成及び技術的意義からみて前者の「エンジンを始動する」に相当し、以下同様に、「ポンプ10により潤滑油が汲み上げられてエンジン2の各運動部分に送油され」は「エンジン潤滑油圧力をある期間プライミングする」、「エンジン潤滑油圧力をプライミングする前記期間」及び「エンジン潤滑油圧力をプライミングすることに時間を費す」に、「エンジン2のプレルーブスイッチ1AをONに入れ、キースイッチ3をONに入れると」は前者の「エンジンの始動が要求されたあと」にそれぞれ相当する。そして、後者の「ポンプ10により潤滑油が汲み上げられてエンジン2の各運動部分に送油されたあと、スタータを作動させること」は、前者の「前記エンジン潤滑油圧力をプライミングする前記期間のあと、前記エンジンを始動するステップ」に相当する。
後者の「潤滑油の油圧」は、その機能、構成及び技術的意義からみて前者の「エンジン潤滑油圧力」に相当する。してみると、後者の「油圧センサ30から潤滑油の油圧を読み込み」は前者の「エンジン潤滑油圧力」を「モニタリング」することに相当する。同様に、後者の「油圧が立ち上がるのに十分な時間に所定時間が設定されたタイマ55をカウントして」は前者の「潤滑油圧力プライミング時間」を「モニタリング」することに相当する。してみると、前者の「油圧センサ30から潤滑油の油圧を読み込み、油圧が立ち上がるのに十分な時間に所定時間が設定されたタイマ55をカウント」することは後者の「エンジン潤滑油圧力および潤滑油圧力プライミング時間をモニタリングして」に相当する。
後者の「所定時間」は、前者の「潤滑油圧力プライミング時間閾値」に相当する。してみると、後者の「タイマ55のカウント時間が所定時間を越え」は前者の「潤滑油圧力プライミング時間閾値を超え」に相当する。
また、後者の「所定圧」は、その機能、構成及び技術的意義からみて前者の「潤滑油圧力閾値」に相当する。してみると、後者の「所定圧に達しない」は「潤滑油圧力閾値未満である」に相当する。そうすると、後者の「潤滑油の油圧が所定圧に達しない場合、ポンプ10により潤滑油が汲み上げられてエンジン2の各運動部分に送油され」ることは、前者の「エンジン潤滑油圧力が潤滑油圧力閾値未満である場合、前記エンジン潤滑油圧力をある期間プライミングするステップ」に相当する。さらに、後者の「エンジン燃料インジェクタを停止させた状態でポンプ10により潤滑油が汲み上げられてエンジン2の各運動部分に送油され」ることと、前者の「エンジン燃料インジェクタを停止させた状態で前記エンジンをクランキングすることによってプライミングする」こととは、「エンジン燃料インジェクタを停止させた状態でプライミングする」ことという限りで一致する。そして、後者の「所定圧に達する」は前者の「潤滑油圧力閾値を超える」に相当する。
加えて、このような後者の「潤滑装置」は、前者の「方法」に相当するものを含むものといえる。
したがって、両者は、
「エンジン潤滑油圧力および潤滑油圧力プライミング時間をモニタリングしてエンジンを始動する方法であって、
エンジンの始動が要求されたあと、エンジン潤滑油圧力が潤滑油圧力閾値未満である場合、前記エンジン潤滑油圧力をある期間、エンジン燃料インジェクタを停止させた状態でプライミングするステップと、
前記エンジン潤滑油圧力をプライミングする前記期間のあと、エンジン燃料インジェクタを始動させた状態で、前記エンジンを始動するステップと
を含み、
前記エンジン潤滑油圧力をプライミングする前記期間は、前記エンジン潤滑油圧力が前記潤滑油圧力閾値を超えるか、または、潤滑油圧力プライミング時間閾値を超えて、前記エンジン潤滑油圧力をプライミングすることに時間を費すかのいずれかまで続く、方法。」である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点]
「エンジン燃料インジェクタを停止させた状態」で「プライミングする」点に関し、本願発明は「エンジンをクランキングすること」によるものであるのに対し、引用発明はかかる事項を備えていない点。

第6 判断
上記相違点について検討する。
引用文献3の記載事項2は
「燃焼防止手段7として燃料噴射ポンプ9のコントロールラックを無噴射位置へ動かす燃料遮断装置16をエンジン1に付設し、エンジン1の始動回転操作時、潤滑不足検出状態では燃料遮断装置16を燃焼防止させて潤滑油15をエンジン1の各潤滑部へ圧送し、潤滑充足検出状態では燃料遮断装置16の燃焼防止作動を解除すること。」である。
ここで、本願発明と引用文献3の記載事項2を対比すると、後者の「潤滑不足検出状態では」はその機能、構成及び技術的意義からみて前者の「エンジン潤滑油圧力が潤滑油圧力閾値未満である場合」に相当し、同様に「燃料噴射ポンプ9のコントロールラックを無噴射位置へ動かす」は「エンジン燃料インジェクタを停止」に「潤滑油15をエンジン1の各潤滑部へ圧送」することは「プライミング」することにそれぞれ相当する。また、後者の「エンジン1の始動回転操作」は前者の「エンジンを始動する」に相当すると共に、「エンジンをクランキングすること」に相当する事項を含むことも明らかである。そして、後者の「エンジン1の始動回転操作時」は前者の「エンジンの始動が要求されたあと」に相当する。
後者の「燃料遮断装置16を燃焼防止させ」は「燃料噴射ポンプ9のコントロールラックを無噴射位置へ動かす」ことであるから、前者の「エンジン燃料インジェクタを停止させた状態で」に相当する。してみると、後者の「エンジン1の始動回転操作時、潤滑不足検出状態では燃料遮断装置16を燃焼防止させて潤滑油15をエンジン1の各潤滑部へ圧送」することは、前者の「エンジンの始動が要求されたあと、エンジン潤滑油圧力が潤滑油圧力閾値未満である場合、エンジン燃料インジェクタを停止させた状態で前記エンジンをクランキングすることによってプライミングする」ことに相当する。
そして、後者の「潤滑充足検出状態」は前者の「エンジン潤滑油圧力が前記潤滑油圧力閾値を超える」に相当し、同様に「燃料遮断装置16の燃焼防止作動を解除する」は「エンジン燃料インジェクタを始動させた状態」で、「エンジンを始動する」に相当する。
そうすると、引用文献3の記載事項2は、
「エンジンの始動が要求されたあと、エンジン潤滑油圧力が潤滑油圧力閾値未満である場合、エンジン燃料インジェクタを停止させた状態で前記エンジンをクランキングすることによってプライミングし、
エンジン潤滑油圧力が前記潤滑油圧力閾値を超えると、エンジン燃料インジェクタを始動させた状態で、前記エンジンを始動すること」である。してみると、引用文献3の記載事項2は、
「エンジン燃料インジェクタを停止させた状態で前記エンジンをクランキングすることによってプライミングすること」を開示又は示唆するものといえる。
引用発明と引用文献3の記載事項2とは「エンジン」分野における技術である点で共通し、「始動時に潤滑を行う」技術である点でも共通する。
また、引用文献2の記載事項及び引用文献3の記載事項1からみて、タイマーによる設定時間経過後又は潤滑油の油圧が設定油圧を充足したあと、すなわち「エンジン潤滑油圧力をプライミングする前記期間」のあと、オペレータ或いは運転者の操作を介することなく「エンジンを始動する」ことは、周知技術といえるから、引用発明に引用文献3の記載事項2の適用を阻害する格別な事情を見出すこともできない。
そうすると、引用発明の「エンジン燃料インジェクタを停止させた状態でポンプ10により潤滑油が汲み上げられてエンジン2の各運動部分に送油され」ることついて、周知技術を踏まえて引用文献3の記載事項2を適用し、相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

また、本願発明は、全体としてみても、引用発明及び引用文献3の記載事項2並びに周知技術から予測し得ない格別な効果を奏するものではない。

したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献3の記載事項2並びに周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 意見書における請求人の主張について
平成元年9月20日の意見書において、請求人は以下のとおり主張している。
「カ. 上述したとおり、引用文献1に記載のものにおいては、油圧が所定圧に達しない状態で、タイマ55のカウント時間が所定時間を超えると、モータ20、ポンプ10が停止することになりますが、この所定時間は、ポンプ10の寿命を延ばすために設定されているものであり、エンジンを始動するための条件としての、プライミング時間として設定されているわけではありませんので、仮に、タイマーによる設定時間経過後又は潤滑油の油圧が設定油圧を充足したあと、すなわち『エンジン潤滑油圧力をプライミングする前記期間』のあと、『エンジンを始動する』ことが、周知技術(周知技術1)であるとしても、当業者は、引用文献1に記載のものにおいて、油圧が所定圧に達しない状態で、タイマ55のカウント時間が所定時間を超える場合に、『エンジンを始動する』ようにすることを想起しないと思料します(引用文献1には、『タイマ55のカウント時間がクールダウン時間に達すると(S95)、時間ランプ62を点滅させて(S97)、プレルーブスイッチ1Aを再度ONに入れることが可能であることを運転者に合図する。』(段落0032)と記載されており、この記載から、油圧が所定圧に達しない状態で、タイマ55のカウント時間が所定時間を超える場合には、再度、プライミングが実施されるものと解されます。)。

キ.また、仮に、エンジンの始動後において、潤滑が不十分な状態で生じる損傷を防ぐため、設定時間あるいはオイルレベルが減少したときは機関を構成する回転部材の回転数を制限することは周知技術(周知技術2)であるとしても、当業者は、引用文献1に記載のものにおいて、油圧が所定圧に達しない状態で、タイマ55のカウント時間が所定時間を超える場合に、『エンジンを始動する』ようにすることを想起しないと思料します。」
そこで該主張について検討すると、本願発明は「前記エンジン潤滑油圧力をプライミングする前記期間」のあと、「前記エンジンを始動する」ものであると共に「前記エンジン潤滑油圧力をプライミングする前記期間は、前記エンジン潤滑油圧力が前記潤滑油圧力閾値を超えるか、または、潤滑油圧力プライミング時間閾値を超えて、前記エンジン潤滑油圧力をプライミングすることに時間を費すかのいずれかまで続く」ものである。すなわち、本願発明は、「前記エンジン潤滑油圧力が前記潤滑油圧力閾値を超える」、または「エンジン潤滑油圧力をプライミングすることに時間を費す」の一方を満たす「エンジン潤滑油圧力をプライミングする前記期間」のあと「前記エンジンを始動する」ものと解される。そして、引用発明は、「潤滑油の油圧が前記所定圧に達する(エンジン潤滑油圧力が潤滑油圧力閾値を超える)」という「ポンプ10により潤滑油が汲み上げられてエンジン2の各運動部分に送油された(エンジン潤滑油圧力をプライミングする前記期間)」のあと、「スタータを作動させる(エンジンを始動する)」ものであるから、本願発明の「前記エンジン潤滑油圧力が前記潤滑油圧力閾値を超える」、または「エンジン潤滑油圧力をプライミングすることに時間を費す」の一方を満たす。
すなわち、引用発明は、本願発明の「前記エンジン潤滑油圧力をプライミングする前記期間」のあと、「前記エンジンを始動する」ものであると共に「前記エンジン潤滑油圧力をプライミングする前記期間は、前記エンジン潤滑油圧力が前記潤滑油圧力閾値を超えるか、または、潤滑油圧力プライミング時間閾値を超えて、前記エンジン潤滑油圧力をプライミングすることに時間を費すかのいずれかまで続く」を備えるものといえる。
仮にこのように解されないとしても、引用文献1の段落【0032】(「第4」「1」「ウ」を参照。)には、「油圧が所定圧に達しない状態で、タイマ55のカウント時間が所定時間を超える」と「プレルーブスイッチ1Aを再度ONに入れることが可能であることを運転者に合図する」こと、すなわちエンジン2を始動させるための操作を行うことが記載されているから、「油圧が所定圧に達しない状態で、タイマ55のカウント時間が所定時間を超える(潤滑油圧力プライミング時間閾値を超えて、前記エンジン潤滑油圧力をプライミングすることに時間を費す)」あと「プレルーブスイッチ1Aを再度ONに入れることが可能であることを運転者に合図する(エンジン2を始動させるための操作を行う)」ことは引用発明にも示唆されているといえる。この理解においては、請求人が主張する「油圧が所定圧に達しない状態で、タイマ55のカウント時間が所定時間を超える場合に、『エンジンを始動する』ようにすること」との事項は、引用発明にも示唆されているといえる。
そして、タイマーによる設定時間経過後又は潤滑油の油圧が設定油圧を充足したあと、オペレータ或いは運転者の操作を介することなくエンジンを始動することは、上述したように周知技術である。
そうすると、本願発明の
「前記エンジン潤滑油圧力をプライミングする前記期間のあと、エンジン燃料インジェクタを始動させた状態で、前記エンジンを始動するステップと
を含み、
前記エンジン潤滑油圧力をプライミングする前記期間は、前記エンジン潤滑油圧力が前記潤滑油圧力閾値を超えるか、または、潤滑油圧力プライミング時間閾値を超えて、前記エンジン潤滑油圧力をプライミングすることに時間を費すかのいずれかまで続く」との事項を引用発明が備えていることは、周知技術を知り得た当業者であれば理解し得たことである。
したがって、請求人の主張は採用できない。

第8 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-10-31 
結審通知日 2019-11-05 
審決日 2019-11-18 
出願番号 特願2013-193076(P2013-193076)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F01M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 種子島 貴裕  
特許庁審判長 渋谷 善弘
特許庁審判官 水野 治彦
齊藤 公志郎
発明の名称 エンジンを始動する装置および方法  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  

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