ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61M 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61M 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61M |
---|---|
管理番号 | 1361285 |
審判番号 | 不服2018-13710 |
総通号数 | 245 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-05-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-10-16 |
確定日 | 2020-04-01 |
事件の表示 | 特願2015-560807「バルブ」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 9月12日国際公開、WO2014/135997、平成28年 3月24日国内公表、特表2016-508810〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件出願は,2014年(平成26年)1月31日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年(平成25年)3月7日,米国)を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は,以下のとおりである。 平成29年 1月19日 :手続補正書の提出 平成29年11月22日付け:拒絶理由通知書 平成30年 5月24日 :意見書,手続補正書の提出 平成30年 6月29日付け:拒絶査定 平成30年10月16日 :審判請求書,同時に手続補正書の提出 第2 平成30年10月16日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成30年10月16日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により,特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおり補正された。(下線部は,補正箇所である。) 「導管が十字型に配置された筺体であって,前記導管の各端部において第1乃至第4のポートが配置された前記筐体と, 前記筺体内に配置され,第1のバルブ部材と第2のバルブ部材とが取り付けられたステムを有する,前記ステムを回転軸として回転可能な回転バルブ素子と, 前記筺体に接続された第1のシール部であって,前記第1のシール部は,前記第1のポートと前記第2のポートとの間で前記筺体に接続される前記第1のシール部と, 前記筺体に接続された第2のシール部であって,前記第2のシール部は,前記第2のポートと前記第3のポートとの間で前記筺体に接続される前記第2のシール部と, 前記筐体に接続された第3のシール部であって,前記第3のシール部は,前記第3のポートと前記第4のポートとの間で前記筐体に接続される前記第3のシール部と, 前記筐体に接続された第4のシール部であって,前記第4のシール部は,前記第4のポートと前記第1のポートとの間で前記筐体に接続される前記第4のシール部と, を有し, 前記回転バルブ素子の回転運動により,前記第1のバルブ部材,前記第2のバルブ部材,前記第1のシール部,及び,前記第3のシール部が協働して,前記第3のポートと前記第4のポートとの間を少なくとも密封する第1の状態と,前記第1のバルブ部材,前記第2のバルブ部材,前記第2のシール部,及び,前記第4のシール部が協働して,前記第2のポートと前記第3のポートとの間を少なくとも密封する第2の状態と,前記第1のバルブ部材,前記第2のバルブ部材,前記第1のシール部,前記第2のシール部,前記第3のシール部,及び,前記第4のシール部によって何れのポートも密封されない第3の状態と,がもたらされ, 前記第1及び第2のバルブ部材の変形,あるいは,前記第1乃至第4のシール部の変形によって,前記第1及び第2のバルブ部材及び/又は前記第1乃至第4のシール部の位置における偏差が打ち消される,バルブ。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の,平成30年5月24日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「導管が十字型に配置された筺体であって,前記導管の各端部において第1乃至第4のポートが配置された前記筐体と, 前記筺体内に配置され,第1のバルブ部材と第2のバルブ部材とが取り付けられたステムを有する,前記ステムを回転軸として回転可能な回転バルブ素子と, 前記筺体に接続された第1のシール部であって,前記第1のシール部は,前記第1のポートと前記第2のポートとの間で前記筺体に接続される前記第1のシール部と, 前記筺体に接続された第2のシール部であって,前記第2のシール部は,前記第2のポートと前記第3のポートとの間で前記筺体に接続される前記第2のシール部と, 前記筐体に接続された第3のシール部であって,前記第3のシール部は,前記第3のポートと前記第4のポートとの間で前記筐体に接続される前記第3のシール部と, 前記筐体に接続された第4のシール部であって,前記第4のシール部は,前記第4のポートと前記第1のポートとの間で前記筐体に接続される前記第4のシール部と, を有し, 前記回転バルブ素子の回転運動により,前記第1のバルブ部材,前記第2のバルブ部材,前記第1のシール部,及び,前記第3のシール部が協働して,前記第3のポートと前記第4のポートとの間を少なくとも密封する第1の状態と,前記第1のバルブ部材,前記第2のバルブ部材,前記第2のシール部,及び,前記第4のシール部が協働して,前記第2のポートと前記第3のポートとの間を少なくとも密封する第2の状態と,前記第1のバルブ部材,前記第2のバルブ部材,前記第1のシール部,前記第2のシール部,前記第3のシール部,及び,前記第4のシール部によって何れのポートも密封されない第3の状態と,がもたらされる,バルブ。」 2 本件補正の適否 本件補正は,補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である,「第1及び第2のバルブ部材」又は「第1乃至第4のシール部」に関し,「第1及び第2のバルブ部材の変形,あるいは,第1乃至第4のシール部の変形によって,前記第1及び第2のバルブ部材及び/又は前記第1乃至第4のシール部の位置における偏差が打ち消される」ものと限定するものであるから,特許請求の範囲の減縮(特許法第17条の2第5項第2号)を目的とするものに該当する。そして,本件補正は,同条第3項及び第4項の規定に違反するものではない。 そこで,本件補正後の請求項1に係る発明(以下,「本件補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか,すなわち同条第6項において準用する同法第126条第7項に規定される特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならないとの要件に適合するものであるかについて検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は,上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献1の記載及び引用発明 (ア)原査定の拒絶の理由に引用された,本件出願の優先日前に頒布された実願昭48-129163号(実開昭50-073933号)のマイクロフィルム(昭和50年6月28日公開。以下,「引用文献1」という。)には,「四路切換弁」に関して,図面とともに以下の事項が記載されている。 A 「従来の四路切換弁を,第1図を参照して説明すると,空気調和装置の調和空気などを切換える四路切換弁1の弁箱2には4個の流体通路R_(1),R_(2),R_(3),R_(4)が連結されており,これらの各流体通路間の連通を弁3によつて制御するようにしている。 これをさらに詳細に説明すると,弁軸4を中心として回動する弁3は第1図において実線で示すように弁押え5A,6A間を閉塞するときは,通路R_(1)から実線矢印(1)(注:引用文献1内の記載は,数字の1に丸囲みであるが,便宜上(1)で代用する。以下,(2),(3),(4)についても同様。)のように流入する流体は実線矢印(2),(3),(4)で示す経路にしたがって通路R_(2),R_(3),R_(4)を通過する。これとは逆に,弁3が同図において鎖線で示す如く弁押え5B,6B間を閉塞するときは,通路R_(1)から鎖線矢印(1)のように流入する流体は鎖線矢印(2),(3),(4)で示す経路にしたがつて通路R_(3),R_(2),R_(4)を通過するようになつている。 上述の四路切換弁は単なる一例であるが,このような四路切換弁は,工作精度の不良や,使用中の熱変形等の原因によつて第2図に示すように弁3とパツキング7とが完全に接触せず,両者間に隙間Sが発生して流体漏洩が生じることがある。したがつて,このような漏洩のない四路切換弁を製作しようとするときは,弁3および弁箱2の材料を熱変形の少い良質のものとしたり,加工精度を厳格にする必要があり,組立と調整に工数がかかり製造コストの高いものとなる。 本考案は弁構造を剛体とせず,四路切換弁を構成する弁板を相互に直交する2本の軸の周りで回動自在とすることにより,常に弁板と弁押えとを密着させるようにしたものである。」(明細書1頁17行-明細書3頁7行) B 「第3図において,弁3は弁軸4を貫通して取付けた板バネよりなるスプリング弁杆10の両端に弁板3Aおよび3Bを以下に記述するような方法で取付けている。即ち,スプリング弁杆10には軸12を固定し,該軸12に対しては該軸12の周りで回動することのできる垂直軸13を取付けている。弁板3A,3Bはこの垂直軸13に枢支されているため結局,弁板3A,3Bはx軸の周りにおいては矢印u-uで示すように回動可能となり,y軸の周りにおいては矢印p-pで示すように回動可能となる。さらにスプリング弁杆10は比較的小さいモーメントでS字状に撓曲することができるので弁板3A,3Bはスプリング弁杆10の撓曲にしたがって第3図において二点鎖線で示すように変位することができる。 次に,第4図の四路切換弁の作用を説明すると,弁3が実線で示すように弁押え5Aと6Aの間に懸架されるときは弁板3Aは弁開口P_(3)を閉塞し,弁板3Bは弁開口P_(2)を閉塞する。弁板3Aと3Bの間は弁軸4に摺接するパツキン8Aおよび8Bによって封塞される。図中,符号9A,9Bはパツキン8A,8Bを取付けるためのパツキン押えである。 この状態においては通路を流通する空気は実線矢印(1),(2),(3),(4)で示す経路にしたがつて通路R_(1),R_(2)を連通しR_(3),R_(4)を連通する。これに対して,弁3が鎖線で示すように90°左旋回して弁押え5B,6Bの間に懸架されるときは弁板3Aは弁開口P_(4)を閉塞し,且つ弁板3Bは弁開口P_(1)を閉塞する。この場合は通路を流通する空気は鎖線矢印(1),(2),(3),(4)で示す経路にしたがつて通路R_(1),R_(3)と連通し,R_(2),R_(4)を連通する。」(明細書3頁14行-明細書5頁5行) C 「本考案は叙上の如くであるので弁3の弁板3A,3Bが熱変形を起こしたり加工精度が十分でなくてもスプリング弁杆10の両端に取付けた弁板3A,および3Bをスプリング弁杆10の軸xおよび軸yの周りに自由に回動できるので,弁板の押しつけ力を弁板の重心力上にもってくるので弁板3A,3Bは常に弁押え5A,6A,5B,6Bに密着してシール面に自然になじみ弁開口P_(1),P_(2),P_(3),P_(4)を密閉することができるものである。」(明細書5頁19行-明細書6頁7行) D 「第1図 」 E 「第3図 」 F 「第4図 」 (イ)上記記載から,引用文献1には,次の技術的事項が記載されているものと認められる。 a 引用文献1に記載された技術は,四路切換弁に関するものであり,常に弁板と弁押えとを密着させることを課題としたものである(A)。 b 管状部材が十字型に配置された弁箱2及び管状部材であって,前記管状部材によって4個の流体通路R_(1),R_(2),R_(3),R_(4)が形成されている前記弁箱2及び管状部材(D,F)。 c 弁箱2内に配置され,スプリング弁杆10の一端部側を介した弁板3Aとスプリング弁杆10の他端部側を介した弁板3Bとが固定された弁軸4を有する,前記弁軸4を中心として回動する弁3(A,B,D,E,F)。 d 弁箱2に接続された弁押え5Bであって,前記弁押え5Bは,流体通路R_(1)と流体通路R_(2)との間で前記弁箱2に接続される前記弁押え5Bと, 前記弁箱2に接続された弁押え6Aであって,前記弁押え6Aは,流体通路R_(2)と流体通路R_(4)との間で前記弁箱2に接続される前記弁押え6Aと, 前記弁箱2に接続された弁押え6Bであって,前記弁押え6Bは,流体通路R_(3)と流体通路R_(4)との間で前記弁箱2に接続される前記弁押え6Bと, 前記弁箱2に接続された弁押え5Aであって,前記弁押え5Aは,流体通路R_(3)と流体通路R_(1)との間で前記弁箱2に接続される前記弁押え5A(D,F)。 e 弁3の回動により,前記弁3が前記弁押え5Aと6Aの間に懸架され,前記弁板3Aは弁開口P_(3)を閉塞し,前記弁板3Bは弁開口P_(2)を閉塞して,通路R_(1),R_(2)を連通しR_(3),R_(4)を連通する状態と,前記弁3が前記弁押え5B,6Bの間に懸架され,前記弁板3Aは弁開口P_(4)を閉塞し,前記弁板3Bは弁開口P_(1)を閉塞して,通路R_(1),R_(3)を連通しR_(2),R_(4)を連通する状態と,がもたらされる(A,B,F)。 f スプリング弁杆10の撓曲,及び,弁板3A,3Bのスプリング弁杆10に対する回動によって,弁3の弁板3A,3Bが熱変形を起こしたり加工精度が十分でなくても弁板3A,3Bは常に弁押え5A,6A,5B,6Bに密着する(B,C)。 (ウ)上記(ア),(イ)から,引用文献1には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「管状部材が十字型に配置された弁箱2及び管状部材であって,前記管状部材によって4個の流体通路R_(1),R_(2),R_(3),R_(4)が形成されている前記弁箱2及び管状部材と, 前記弁箱2内に配置され,スプリング弁杆10の一端部側を介した弁板3Aと前記スプリング弁杆10の他端部側を介した弁板3Bとが固定された弁軸4を有する,前記弁軸4を中心として回動する弁3と, 前記弁箱2に接続された弁押え5Bであって,前記弁押え5Bは,前記流体通路R_(1)と前記流体通路R_(2)との間で前記弁箱2に接続される前記弁押え5Bと, 前記弁箱2に接続された弁押え6Aであって,前記弁押え6Aは,前記流体通路R_(2)と前記流体通路R_(4)との間で前記弁箱2に接続される前記弁押え6Aと, 前記弁箱2に接続された弁押え6Bであって,前記弁押え6Bは,前記流体通路R_(3)と前記流体通路R_(4)との間で前記弁箱2に接続される前記弁押え6Bと, 前記弁箱2に接続された弁押え5Aであって,前記弁押え5Aは,前記流体通路R_(3)と前記流体通路R_(1)との間で前記弁箱2に接続される前記弁押え5Aと, を有し, 前記弁3の回動により,前記弁3が前記弁押え5Aと6Aの間に懸架され,前記弁板3Aは弁開口P_(3)を閉塞し,前記弁板3Bは弁開口P_(2)を閉塞して,通路R_(1),R_(2)を連通しR_(3),R_(4)を連通する状態と,前記弁3が前記弁押え5B,6Bの間に懸架され,前記弁板3Aは弁開口P_(4)を閉塞し,前記弁板3Bは弁開口P_(1)を閉塞して,通路R_(1),R_(3)と連通しR_(2),R_(4)を連通する状態と,がもたらされ, 前記スプリング弁杆10の撓曲,及び,前記弁板3A,3Bの前記スプリング弁杆10に対する回動によって,前記弁3の前記弁板3A,3Bが熱変形を起こしたり加工精度が十分でなくても前記弁板3A,3Bは常に前記弁押え5A,6A,5B,6Bに密着する,四路切換弁。」 (3)対比 本件補正発明と引用発明とを対比すると,引用発明の「管状部材」は,その文言の意味,機能又は構成等からみて,本件補正発明の「導管」に相当する。以下同様に,「弁箱2及び管状部材」は「筐体」に,「4個の流体通路R_(1),R_(2),R_(3),R_(4)」は「第1乃至第4のポート」に,「管状部材によって4個の流体通路R_(1),R_(2),R_(3),R_(4)が形成されている」という態様は「導管の各端部において第1乃至第4のポートが配置された」という態様に,「スプリング弁杆10の一端部側を介した弁板3A」は「第1のバルブ部材」に,「スプリング弁杆10の他端部側を介した弁板3B」は「第2のバルブ部材」に,「固定された」は「取り付けられた」に,「弁軸4」は「ステム」に,「弁軸4を中心として回動する」という態様は「ステムを回転軸として回転可能な」という態様に,「弁3」は「回転バルブ素子」に,「弁押え5B」は「第1のシール部」に,「流体通路R_(1)」は「第1のポート」に,「流体通路R_(2)」は「第2のポート」に,「弁押え6A」は「第2のシール部」に,「流体通路R_(3)」は「第3のポート」に,「弁押え6B」は「第3のシール部」に,「流体通路R_(4)」は「第4のポート」に,「弁押え5A」は「第4のシール部」に,「回動」は「回転運動」に,「弁3が弁押え5Aと6Aの間に懸架され,弁板3Aは弁開口P_(3)を閉塞し,弁板3Bは弁開口P_(2)を閉塞して,通路R_(1),R_(2)を連通しR_(3),R_(4)を連通する状態」は「第1のバルブ部材,第2のバルブ部材,第1のシール部,及び,第3のシール部が協働して,第3のポートと第4のポートとの間を少なくとも密封する第1の状態」に,「弁3が弁押え5B,6Bの間に懸架され,弁板3Aは弁開口P_(4)を閉塞し,弁板3Bは弁開口P_(1)を閉塞して,通路R_(1),R_(3)と連通しR_(2),R_(4)を連通する状態」は「第1のバルブ部材,第2のバルブ部材,第2のシール部,及び,第4のシール部が協働して,第2のポートと第3のポートとの間を少なくとも密封する第2の状態」に,「スプリング弁杆10の撓曲,及び,弁板3A,3Bの前記スプリング弁杆10に対する回動」は「第1及び第2のバルブ部材の変形」に,「弁3の弁板3A,3Bが熱変形を起こしたり加工精度が十分でなくても前記弁板3A,3Bは常に弁押え5A,6A,5B,6Bに密着する」という態様は「第1及び第2のバルブ部材及び/又は前記第1乃至第4のシール部の位置における偏差が打ち消される」という態様に,「四路切換弁」は「バルブ」に,それぞれ相当する。 してみると,本件補正発明と引用発明とは,以下の点において一致する。 「導管が十字型に配置された筺体であって,前記導管の各端部において第1乃至第4のポートが配置された前記筐体と, 前記筺体内に配置され,第1のバルブ部材と第2のバルブ部材とが取り付けられたステムを有する,前記ステムを回転軸として回転可能な回転バルブ素子と, 前記筺体に接続された第1のシール部であって,前記第1のシール部は,前記第1のポートと前記第2のポートとの間で前記筺体に接続される前記第1のシール部と, 前記筺体に接続された第2のシール部であって,前記第2のシール部は,前記第2のポートと前記第3のポートとの間で前記筺体に接続される前記第2のシール部と, 前記筐体に接続された第3のシール部であって,前記第3のシール部は,前記第3のポートと前記第4のポートとの間で前記筐体に接続される前記第3のシール部と, 前記筐体に接続された第4のシール部であって,前記第4のシール部は,前記第4のポートと前記第1のポートとの間で前記筐体に接続される前記第4のシール部と, を有し, 前記回転バルブ素子の回転運動により,前記第1のバルブ部材,前記第2のバルブ部材,前記第1のシール部,及び,前記第3のシール部が協働して,前記第3のポートと前記第4のポートとの間を少なくとも密封する第1の状態と,前記第1のバルブ部材,前記第2のバルブ部材,前記第2のシール部,及び,前記第4のシール部が協働して,前記第2のポートと前記第3のポートとの間を少なくとも密封する第2の状態と,がもたらされ, 前記第1及び第2のバルブ部材の変形,あるいは,前記第1乃至第4のシール部の変形によって,前記第1及び第2のバルブ部材及び/又は前記第1乃至第4のシール部の位置における偏差が打ち消される,バルブ。」 そして,本件補正発明と引用発明とは,以下の点において一応相違する。 [相違点] 本件補正発明は,さらに第1のバルブ部材,第2のバルブ部材,第1のシール部,第2のシール部,第3のシール部,及び,第4のシール部によって何れのポートも密封されない第3の状態がもたらされるのに対し,引用発明は,そのような状態がもたらされるのか明確に特定されていない点。 (4)判断 上記相違点について,以下検討する。 引用発明は,弁3の回動により,前記弁3が弁押え5Aと6Aの間に懸架され,弁板3Aは弁開口P_(3)を閉塞し,弁板3Bは弁開口P_(2)を閉塞して,通路R_(1),R_(2)を連通しR_(3),R_(4)を連通する状態と,前記弁3が弁押え5B,6Bの間に懸架され,前記弁板3Aは弁開口P_(4)を閉塞し,前記弁板3Bは弁開口P_(1)を閉塞して,通路R_(1),R_(3)と連通しR_(2),R_(4)を連通する状態と,がもたらされるものである。そして,上記2つの状態は,弁3の回動に伴って切り換えられるものであるから,その切り換えの途中で,弁板3A及び弁板3Bがともに弁押え5A,5B,6A,6Bのいずれにも当接せず,いずれの通路R_(1),R_(2),R_(3),R_(4)も密封しない状態となることは,当業者にとって自明な事項である。 よって,上記相違点は,実質的な相違点ではない。 したがって,本件補正発明は,引用発明であるので,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 また,例え両者に微細な差異があったとしても,その程度のことは当業者が適宜なし得ることである。 したがって,本件補正発明は,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 本件補正についての結び 以上のとおりであるから,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反している。よって,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により,本件補正は却下すべきものである。 よって,上記[補正却下の決定の結論]のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1ないし4に係る発明は,平成30年5月24日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は,請求項1に係る発明は,本願の優先日前に頒布された上記引用文献1に記載された発明であるので,特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない,という理由を含むものである。 3 引用文献の記載及び引用発明 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1の記載事項並びに引用発明は,上記第2[理由]2(2)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は,前記第2[理由]2で検討した本件補正発明から,「第1及び第2のバルブ部材の変形,あるいは,第1乃至第4のシール部の変形によって,前記第1及び第2のバルブ部材及び/又は前記第1乃至第4のシール部の位置における偏差が打ち消される」という限定事項を削除したものである。 そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が,前記第2[理由]2(3),(4)に記載したとおり引用発明であるので,本願発明も引用発明である。 第4 むすび 以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
|
審理終結日 | 2019-11-06 |
結審通知日 | 2019-11-07 |
審決日 | 2019-11-19 |
出願番号 | 特願2015-560807(P2015-560807) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A61M)
P 1 8・ 113- Z (A61M) P 1 8・ 575- Z (A61M) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 杉▲崎▼ 覚 |
特許庁審判長 |
林 茂樹 |
特許庁審判官 |
倉橋 紀夫 寺川 ゆりか |
発明の名称 | バルブ |
代理人 | 浅村 敬一 |
代理人 | 五十嵐 貴裕 |
代理人 | 笛田 秀仙 |