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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1361289 |
審判番号 | 不服2019-1824 |
総通号数 | 245 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-05-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-02-08 |
確定日 | 2020-04-01 |
事件の表示 | 特願2015- 54088「基板処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月24日出願公開、特開2015-211216〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯・本願発明 本願は平成27年3月18日(パリ条約による優先権主張2014年4月29日、米国)の出願であって、平成30年6月20日付けで拒絶理由通知が通知され、同年7月30日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年10月1日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成31年2月8日に拒絶査定不服審判が請求されたものであり、本願の請求項に係る発明は、平成30年7月30日に補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものと認める。 「【請求項1】 基板の搬送に用いる複数のアームと、 基板を処理する複数の処理部と、 前記複数のアームのなかで使用可能なユーザブルアーム、前記複数の処理部のなかで使用可能なユーザブル処理部、及び前記ユーザブル処理部での処理条件を規定するレシピを複数格納したレシピ記憶部と、 前記レシピに基づいて、前記ユーザブルアームで基板を搬送し、前記ユーザブル処理部で前記処理条件のとおり基板を処理するように、前記複数のアームと前記複数の処理部を制御する制御ユニットと、を備え、 複数の前記レシピは処理条件毎に異なる前記ユーザブルアームと異なる前記ユーザブル処理部を規定することを特徴とする基板処理装置。」 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明(本願発明)は、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用例1?3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用例1:特開2005-101320号公報 引用例2:特開2003-264218号公報(周知技術を示す文献) 引用例3:特開2004-119635号公報(周知技術を示す文献) 3 引用例の記載と引用発明 (1)引用例1:特開2005-101320号公報 ア 引用例1の記載 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2005-101320号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに次の記載がある(下線は、当審による。以下、同じ。)。 「【請求項1】 基板を保持して搬送するための複数のハンドを有する搬送ロボットと、 所定部に対して基板を搬入および搬出する際に用いるべき上記搬送ロボットのハンドをそれぞれ指定して入力するためのハンド指定入力手段と、 このハンド指定入力手段からの入力に基づいて、基板の搬送手順ならびに上記所定部に対する基板の搬入および搬出にそれぞれ用いるべきハンドを規定したレシピを作成するレシピ作成手段と、 このレシピ作成手段によって作成されたレシピを記憶しておくためのレシピ記憶手段と、 このレシピ記憶手段に記憶されているレシピに従って、上記搬送ロボットの動作を制御する動作制御手段と を含むことを特徴とする基板処理装置。」 「【技術分野】 【0001】 この発明は、基板を処理するための基板処理装置に関する。処理の対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用ガラス基板、プラズマディスプレイ用ガラス基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板などが含まれる。」 「【0003】 このような洗浄処理が行われる場合、汚染物質が付着した基板(以下「汚染基板」という。)を保持したハンドで汚染物質が除去された後の清浄な基板(以下「清浄基板」という。)を保持すると、汚染基板からハンドに転移した汚染物質が清浄基板に転移して、清浄基板を再汚染する、いわゆるクロスコンタミネーションが発生する。そこで、従来の基板処理装置では、搬送ロボットが一対のハンドを有していて、汚染基板と汚染物質が除去された後の清浄基板とが別々のハンドによって搬送されるようになっている。すなわち、複数の処理チャンバによる一連の処理において、処理対象の基板が清浄になるまでの間(清浄基板が得られるまでの間)は、一方のハンドを用いて処理チャンバに対する基板(汚染基板)の搬送が行われ、処理対象の基板が清浄になった後は、他方のハンドを用いて処理チャンバに対する基板(清浄基板)の搬送が行われるようになっている(たとえば、特許文献1参照)。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0004】 処理対象の基板が清浄になったと判断される基準は、基板処理装置のユーザ(半導体装置や液晶表示装置の製造メーカ)によって異なる。たとえば、或る処理チャンバでの処理が終わった時点で基板が清浄になったと判断するユーザもいれば、その次の処理チャンバでの処理が終わった時点で基板が清浄になったと判断するユーザもいる。また、処理の種類によっては、クロスコンタミネーションの問題よりもスループットの向上を重視して、ハンドの使い分けをせずに、空いているハンドで処理チャンバに対する基板の搬送を行うことをユーザが望む場合もある。 【0005】 ところが、従来の基板処理装置では、各処理チャンバに対する基板の搬送に用いるハンドはプログラム上で規定されており、ユーザが自らの要求に応じて各処理チャンバに対する基板の搬送に用いるべきハンドを自由に指定するといったことはできなかった。 そこで、この発明の目的は、ユーザが処理チャンバなどの所定部に対する基板の搬送に用いるべきハンドを指定可能な基板処理装置を提供することである。」 「【課題を解決するための手段】 【0006】 上記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、基板(W)を保持して搬送するための複数のハンド(UH,LH)を有する搬送ロボット(CR,TR)と、所定部に対して基板を搬入および搬出する際に用いるべき上記搬送ロボットのハンドをそれぞれ指定して入力するためのハンド指定入力手段(6)と、このハンド指定入力手段からの入力に基づいて、基板の搬送手順ならびに上記所定部に対する基板の搬入および搬出にそれぞれ用いるべきハンドを規定したレシピを作成するレシピ作成手段(4)と、このレシピ作成手段によって作成されたレシピを記憶しておくためのレシピ記憶手段(5)と、このレシピ記憶手段に記憶されているレシピに従って、上記搬送ロボットの動作を制御する動作制御手段(4)とを含むことを特徴とする基板処理装置である。」 「【0012】 以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。 図1は、この発明の一実施形態に係る基板処理装置のレイアウトを示す図解的な平面図である。この基板処理装置は、基板の一例としての半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」という。)Wを1枚ずつ処理する枚葉式の装置であり、基板処理部1と、この基板処理部1に結合されたインデクサ部2とを備えている。また、インデクサ部2の基板処理部1が結合されている側とは反対側には、それぞれ1つのカセットCを載置可能なカセットステージ3が複数並べて設けられている。カセットCは、この基板処理装置が設置された工場内でウエハWを搬送する際に用いられるものであり、複数枚のウエハWを多段に積層した状態で収容して保持することができる。 【0013】 基板処理部1には、平面視における中央部にセンタロボットCRが配置されていて、このセンタロボットCRの周囲を取り囲むように、それぞれウエハWに所定の処理を施すための4つの処理チャンバMPC1,MPC2,MPC3,MPC4が区画形成されている。センタロボットCRは、各処理チャンバMPC1?MPC4にアクセスして、各処理チャンバMPC1?MPC4に対してウエハWを搬入および搬出することができる。 【0014】 なお、処理チャンバMPC1?MPC4で行われる処理は、ウエハWに対するどのような処理でもよく、たとえば、フッ酸や硫酸などの薬液を用いてウエハWの表面を洗浄(エッチング)する処理であってもよいし、純水やオゾン水などのリンス液を用いてウエハWの表面をリンス洗浄する処理であってもよい。また、ウエハWを加熱または冷却する熱処理など、薬液やリンス液などの処理液を用いない処理であってもよい。 【0015】 インデクサ部2には、カセットCとセンタロボットCRとの間でウエハWを搬送するためのトランスファロボットTRが備えられている。トランスファロボットTRは、各カセットステージ3に載置されたカセットCにアクセスして、カセットCから未処理のウエハWを払い出したり、処理済みのウエハWをカセットCに収納したりすることができる。また、カセットCから取り出した未処理のウエハWをセンタロボットCRに受け渡したり、基板処理部1で処理を受けたウエハWをセンタロボットCRから受け取ったりすることができる。 【0016】 図2は、この基板処理装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。この基板処理装置は、マイクロコンピュータで構成される制御部4を備えている。制御部4には、各処理チャンバMPC1?MPC4の内部機構、トランスファロボットTRおよびセンタロボットCRが制御対象として接続されている。トランスファロボットTRおよびセンタロボットCRは、それぞれ、一対の上ハンドUHおよび下ハンドLHを有しており、各ハンドUH,LHでウエハWを受け取って保持することができる。 【0017】 また、制御部4には、ハードディスクドライブなどの記憶装置で構成されるレシピ記憶部5が接続されており、このレシピ記憶部5には、CCレシピおよびプロセスレシピが記憶されている。CCレシピは、処理チャンバMPC1?MPC4で行われるウエハWの処理の条件(たとえば、処理に使用する薬液名など)を規定したものであり、個別の番号が付与されて、その付与された番号と対応づけられてレシピ記憶部5に記憶されている。プロセスレシピは、ウエハWを搬送する手順、具体的には、4つの処理チャンバMPC1?MPC4のうちのどの処理チャンバ(1または複数の処理チャンバ)にどのような順序でウエハWを経由させるかを規定している。また、プロセスレシピは、ウエハWが経由する各処理チャンバでの処理に採用するCCレシピの番号も規定している。さらに、プロセスレシピは、カセットCに対するウエハWの払出しおよび収納にそれぞれトランスファロボットTRのどちらのハンドUH,LHを使用するか、ならびに、ウエハWを経由させる各処理チャンバに対するウエハWの搬入および搬出にそれぞれセンタロボットCRのどちらのハンドUH,LHを使用するかを規定している。 【0018】 制御部4は、レシピ記憶部5からプロセスレシピおよびこのプロセスレシピで規定されているCCレシピを読み込み、その読み込んだプロセスレシピおよびCCレシピに従って、トランスファロボットTR、センタロボットCRおよびウエハWが搬入される処理チャンバの内部機構を制御する。これにより、ウエハWの処理のための一連の動作が達成される。すなわち、プロセスレシピに規定されているトランスファロボットTRのハンド(上ハンドUHまたは下ハンドLH)によって、未処理のウエハWを収容したカセットCからウエハWが1枚ずつ払い出されて(取り出されて)、その払い出されたウエハWがプロセスレシピに規定されているセンタロボットCRのハンド(上ハンドUHまたは下ハンドLH)に受け渡される。そして、そのセンタロボットCRのハンドによって、プロセスレシピに規定されている最初の処理チャンバに搬入される。最初の処理チャンバでウエハWに対する処理が行われると、ウエハWは、プロセスレシピに規定されているセンタロボットCRのハンドによって処理チャンバから搬出されて、センタロボットCRのハンドからプロセスレシピに規定されているトランスファロボットTRのハンド(上ハンドUHまたは下ハンドLH)に受け渡されるか、または、センタロボットCRのハンドによって次の処理チャンバに搬入される。センタロボットCRからトランスファロボットTRのハンドへと受け渡されたウエハWは、そのハンドによって所定のカセットステージ3に載置されたカセットCに収納される。」 「【0030】 さらには、ユーザがクロスコンタミネーションの問題よりもスループットの向上を重視する場合には、センタロボットCRのハンドの使い分けをせずに、空いているハンドで処理チャンバに対してウエハWを搬入および搬出させることもできる。 さらにまた、センタロボットCRおよびトランスファロボットTRのハンド動作がプログラム上で規定されている従来装置では、たとえば、互いに異なるハンド動作を規定した複数のプログラムをインストールしておいて、カセットステージ3に載置されるカセットCごとにプログラムを切り換えることによって異なるハンド動作を実現しようとすると、プログラムを切り替えるには装置の動作を一時停止させてメンテナンス状態にしなければならないために、ウエハWの処理のスループット(単位時間あたりのウエハWの処理枚数)が低下するのに対し、この実施形態に係る基板処理装置では、プロセスレシピの切替えによって異なるハンド動作を実現でき、プロセスレシピの切替えは装置の動作を停止させなくてよいから、ウエハWの処理のスループットの低下を招くおそれがない。」 図1?2は、以下のとおりである。 【図1】 【図2】 イ 引用発明 上記アの請求項1及び段落【0006】に記載された「動作制御手段(4)」と「レシピ記憶手段(5)」は、それぞれ、段落【0016】?【0018】に記載の「制御部4」と「レシピ記憶部5」が対応することは明らかである。 したがって、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「基板(W)を保持して搬送するための複数のハンド(UH,LH)を有する搬送ロボット(CR,TR)と、 所定部に対して基板を搬入および搬出する際に用いるべき上記搬送ロボットのハンドをそれぞれ指定して入力するためのハンド指定入力手段(6)と、 このハンド指定入力手段からの入力に基づいて、基板の搬送手順ならびに上記所定部に対する基板の搬入および搬出にそれぞれ用いるべきハンドを規定したレシピを作成するレシピ作成手段(4)と、 このレシピ作成手段によって作成されたレシピを記憶しておくためのレシピ記憶手段(5)と、 このレシピ記憶手段に記憶されているレシピに従って、上記搬送ロボットの動作を制御する動作制御手段(4)と を含む基板処理装置であって、 基板処理部1と、この基板処理部1に結合されたインデクサ部2とを備えており、 基板処理部1には、平面視における中央部にセンタロボットCRが配置されていて、このセンタロボットCRの周囲を取り囲むように、それぞれウエハWに所定の処理を施すための4つの処理チャンバMPC1,MPC2,MPC3,MPC4が区画形成されており、センタロボットCRは、各処理チャンバMPC1?MPC4にアクセスして、各処理チャンバMPC1?MPC4に対してウエハWを搬入および搬出することができ、 インデクサ部2には、カセットCとセンタロボットCRとの間でウエハWを搬送するためのトランスファロボットTRが備えられており、 前記動作制御手段(4)である制御部4は、各処理チャンバMPC1?MPC4の内部機構を制御し、 制御部4には、前記レシピ記憶手段(5)であるレシピ記憶部5が接続されており、このレシピ記憶部5には、CCレシピおよびプロセスレシピが記憶されており、 CCレシピは、処理チャンバMPC1?MPC4で行われるウエハWの処理の条件(たとえば、処理に使用する薬液名など)を規定したものであり、 プロセスレシピは、ウエハWを搬送する手順、具体的には、4つの処理チャンバMPC1?MPC4のうちのどの処理チャンバ(1または複数の処理チャンバ)にどのような順序でウエハWを経由させるかを規定しており、プロセスレシピは、ウエハWが経由する各処理チャンバでの処理に採用するCCレシピの番号も規定している、基板処理装置。」 (2)引用例2 同じく原査定に引用され、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、特開2003-264218号公報(以下「引用例2」という。)には、図面とともに次の記載がある。 「【請求項1】 基板に対してそれぞれ異なる処理を行う複数の処理室と、該各処理室に連通する搬送室内に設けられ、各処理室間で基板を搬送する搬送ロボットと、該搬送ロボットに取付けられ、基板搬送時に基板を保持するアームとを有する基板処理装置において、 前記アームは、前記複数の処理室のいずれかに対応して交換可能に複数備えられると共に、前記アームを交換するアーム交換手段が備えられていることを特徴とする基板処理装置。」 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、異なる処理を行う複数の処理室にアームを用いて基板を搬送する際に、各処理室毎に対応した異なるアームに交換して基板を搬送するようにした基板処理装置及び半導体装置の製造方法に関するものである。」 「【0010】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。 実施の形態1.図1は本発明の第1の実施の形態における基板処理装置を示す図である。図2は交換ステージにおけるアームの交換の様子を示す図である。実施の形態の基板処理装置は、例えばシリコン基板などの基板10(図2参照)に対してそれぞれ異なる処理を行う2つの処理室12,14が設けられており、各処理室12,14に連通する搬送室16内には、基板10を搬送するための真空搬送ロボット18が設けられている。真空搬送ロボット18には、基板10の搬送時に基板10を保持する2つのアーム20、22が取付けられている。それぞれのアーム20、22は、処理室12,14それぞれに対応して、基板10を専用に扱うために設けられている。すなわち、アーム20は処理室12に対して基板10の搬入出を行う前処理専用のアームであり、アーム22は処理室14に対して基板10の搬入出を行う後処理専用のアームである。 【0011】処理室12と処理室14の間には、これら処理室12,14に隣接して、交換ステージ24が設けられている。…(略)… 【0013】真空搬送ロボット18が設けられる搬送室16には、ロードロック26、28が連通しており、ロードロック26、28を介して搬送室16に対して基板10が搬入出される。ロードロック26,28と隣設して、これらロードロック26,28に基板10を搬入出する大気搬送ロボット30が設けられており、大気搬送ロボット30にはアーム32,34が取付けられている。アーム32は処理が施されていない基板10を搬送するための前処理専用のアームであり、アーム34は処理が施された基板を搬送するための後処理専用のアームである。大気搬送ロボット30と隣り合って、基板が収納されている3つのウエハカセット36と、大気搬送ロボット30によって3つのウエハカセット36のいずれか一つから取り出された基板10を載置可能なアライナ38が設けられている。 【0014】次に、本実施の形態の動作について説明する。 1)大気搬送ロボット30によりアーム32を用いて、3つのウエハカセット36のいずれか一つから基板10を取出す。 2)大気搬送ロボット30によりアーム32からアライナ38に基板10を移載し、アライナ38上で基板10のノッチの方向をそろえる。 3)大気搬送ロボット30によりアーム32を用いてアライナ38から基板10を取り出す。 【0015】4)ロードロック26を大気圧にする。 5)大気搬送ロボット30によりアーム32を用いて、基板10をロードロック26内に置く。 6)ロードロック26内を真空に引く。 7)真空搬送ロボット18によりアーム20を用いて、ロードロック26内から基板10を取出し、処理室12に移動する。 8)処理室12内では、基板(Si基板)10のクリーニングや下層膜の成膜などの前処理を行う。具体的には、クリーニングとしては、…(略)…、基板10の表面に付着した金属汚染物などを自然酸化膜とともに除去する。また、下層膜の成膜としては、…(略)…基板表面を酸化したり、…(略)…を用いて、基板表面を窒化したりする。 【0016】9)真空搬送ロボット18によりアーム20を用いて処理室12から基板10を取り出す。 10)交換ステージ24上で基板10を保持するアームをアーム20からアーム22に後述する手順に従って交換する。 11)真空搬送ロボット18によりアーム22を用いて処理室14に基板10を移動する。 12)処理室14内では、処理室12内で処理された処理基板又は処理膜上に積層して成膜する材料を堆積する。具体的には、…(略)…、半導体、金属、金属酸化膜などを成膜する。また、熱やO_(2),N_(2),H_(2)などのガスをプラズマや紫外光などにより励起したものを用い、成膜した半導体、金属、金属酸化物の薄膜の改質処理を行う場合もある。 【0017】13)処理室14での成膜後、真空搬送ロボット18によりアーム22を用いて、処理室14から基板10を取出し、ロードロック28に基板10を移動する。 14)ロードロック28を大気にする。 15)大気搬送ロボット30によりアーム34を用いて、ロードロック28から基板10を取出し、最初に基板を取出したウエハカセット36に基板10を戻す。ここで、アームをアーム32を使わずアーム34を用いることで、前処理の基板10への汚染を防いでいる。 …(略)… 【0021】なお、アームの交換方法は、第1及び第2の実施の形態に示される方法に限定されるものではない。また、第1及び第2の実施の形態では、2個のアーム20,22を使用したものについて説明したが、アームは2個に限らず複数使用することができる。また、真空搬送ロボット18上で基板10を持ち変える方法は、第2の実施の形態の方法に限定されるものではない。また、基板10は、交換ステージ24上や真空搬送ロボット18上のみで持ち変えられる方法に限定されるものではない。さらには、各処理室毎に対応してアームを交換したが、これに限るものではなく、例えば、汚染の影響を及ぼし合う処理単位毎にアームを交換してもよい。 【0022】 【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、各処理室毎に対応したアームを設け、各処理室に対応したアームに交換するアーム交換手段を設けたことにより、汚染されたアームや汚染されたアームから基板に付着した物質などが別の工程の処理室に挿入されることが無くなるので、処理室の汚染を防止することができるという効果を奏する。」 上記記載から、引用例2には、以下の技術が記載されていると認められる。 「シリコン基板などの基板に対してそれぞれ異なる処理を行う複数の処理室と、該各処理室に連通する搬送室内に設けられ、各処理室間で基板を搬送する搬送ロボットと、該搬送ロボットに取付けられ、基板搬送時に基板を保持するアームとを有する基板処理装置において、 前記アームは、前記複数の処理室のいずれかに対応して交換可能に複数備えられると共に、前記アームを交換するアーム交換手段が備えられており、 前記搬送ロボットである真空搬送ロボット18には、基板10の搬送時に基板10を保持する2つのアーム20、22が取付けられており、アーム20は処理室12に対して基板10の搬入出を行う前処理専用のアームであり、アーム22は処理室14に対して基板10の搬入出を行う後処理専用のアームであり、 処理室12内で、下層膜の成膜などの前処理を行い、具体的には、基板表面を酸化したり、基板表面を窒化したりし、 処理室14内で、処理室12内で処理された処理基板又は処理膜上に積層して成膜する材料を堆積し、具体的には、金属などを成膜する、 あるいは、各処理室毎に対応してアームを交換するものではなく、例えば、汚染の影響を及ぼし合う処理単位毎にアームを交換してもよい、基板処理装置。」 (3)引用例3 同じく原査定に引用され、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、特開2004-119635号公報(以下「引用例3」という。)には、図面とともに次の記載がある。 「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、半導体ウエハ等の被処理体に対して所定の処理を施す処理システム等における被処理体の搬送方法に関する。」 「【0008】 【発明が解決しようとする課題】 ところで、上記処理室4A?4Dにおける各処理の中では、半導体ウエハWに対して汚染の生じ易い処理を行う場合がある。例えばCu膜、Ti膜、W(タングステン)膜のような金属薄膜を成膜する処理室がある場合、この種の金属のパーティクルがウエハ表面に付着していると、これが核になってCVD成膜時に膜の異常成長が生じたり、逆にパーティクルが付着している部分に他の膜を堆積できなくなったり、或いは特にCuパーティクルの場合にはこのCu原子の酸化膜中での拡散係数が大きいことからSiO_(2 )膜の誘電率を低下させてしまう、等の不都合を生じてしまう。 【0009】 このような状況下において、例えば処理室4Cにおいて上記した金属薄膜の成膜処理を行うものと仮定すると、上述のように上記各ピック16A、16B及び18A、18Bはスループットを最優先して運用されることから、処理室4Cにて処理済みのウエハは、この搬送時にそれぞれのピック16A、16Bや18A、18Bにより保持される場合があり、その時、ウエハの裏面等に付着している金属膜のパーティクルがピック側に再付着してこれを汚染させる、いわゆる汚染の伝播が生じてしまう。このように汚染されたピックによって、処理室4Cへの搬入前のウエハWを保持した場合には、このウエハ自体が上記した金属膜のパーティクルによって汚染される、といった問題点があった。また、このようなピックの汚染は、金属膜の成膜処理を行う処理室4C内へウエハWの搬入のためにピックを挿入しただけでも生ずる可能性がある。 【0010】 本発明は、上記したクロスコンタミネーションの問題に着目し、これを有効に解決すべく創案されたものである。本発明の目的は、被処理体を保持する複数のピックを区別して用いることにより、スループットを犠牲にしてでもクロスコンタミネーション(汚染の伝播)の発生を抑制することが可能な被処理体の搬送方法を提供することにある。 【0011】 【課題を解決するための手段】 請求項1に係る発明は、被処理体に対して所定の処理を連続的に施すために、2つのピックを有する搬送機構によって前記被処理体に対して汚染の生じ易い処理を行う特定処理室を含む複数の処理室間に渡って前記被処理体を順次渡り歩くように搬送するようにした被処理体の搬送方法において、前記特定処理室へ前記被処理体を搬入する直前までの搬送は、前記2つのピックの内の一方のピックを用いて行い、前記特定処理室への前記被処理体の搬入及びそれ以降の搬送は他方のピックを用いて行うようにしたことを特徴とする被処理体の搬送方法である。 このように、クロスコンタミネーション等の汚染の伝播が生じ易い特定処理室に被処理体を搬入する直前までは一方のピックを用い、特定処理室への被処理体の搬入及びそれ以降の搬送は他方のピックを用いるようにしたので、被処理体に対してクロスコンタミネーション(汚染の伝播)が発生することを極力抑制することが可能となる。」 「【0018】 【発明の実施の形態】 以下に、本発明に係る被処理体の搬送方法の一実施例を添付図面に基づいて詳述する。 図1は本発明に係る搬送方法を実施するための処理システムの一例を示す概略構成図、図2はバッファ機構の一例を示す斜視図である。尚、図7に示す構成と同一構成部分については同一符号を付して説明する。 図1に示すように、まずこの処理システム30は、1つの例えば六角形状の共通搬送室2の周囲に真空引き可能になされた4つの処理室4A?4Dをそれぞれゲートバルブ6を介して連結してなる真空処理装置を有している。また、各処理室4A?4Dには被処理体である半導体ウエハWを載置するサセプタ32A?32Dが設けられ、それぞれ半導体ウエハWに対して所定の処理を施し得るようになっている。そして、この共通搬送室2には、真空引き可能になされた2つのロードロック室8A、8Bを介して長方形状の搬入側搬送室10が連結されている。 【0019】 上記ロードロック室8A、8Bと共通搬送室2及び搬入側搬送室10との連結部にはそれぞれゲートバルブ6が介在されている。また、上記搬入側搬送室10には、半導体ウエハを複数枚収容できるカセットを載置する例えば3つの導入ポート12及び半導体ウエハWを回転してこの偏心量を光学的に求めて位置合わせを行うオリエンタ14が連結されている。 そして、上記搬入側搬送室10内には、半導体ウエハWを保持する2つのピック16A、16Bを有して屈伸、旋回、昇降及び直線移動可能になされた搬入側搬送機構16が設けられている。また、上記共通搬送室2内には、半導体ウエハWを保持する2つのピック18A、18Bを有して屈伸及び旋回可能になされた搬送機構18が設けられている。 【0020】 ここで、上記共通搬送室2と2つのロードロック室の内のいずれか一方、例えばロードロック室8Aとの連結部の搬送口34は半導体ウエハを共通搬送室2内へ専用に搬入する搬入口として用いられ、他方のロードロック室8Bとの連結部の搬送口36は半導体ウエハを共通搬送室2から外へ専用に搬出する搬出口として用いられる。 そして、上記共通搬送室2内の片隅には、半導体ウエハWを一時的に保持するためのバッファ機構38が設けられている。このバッファ機構38は、図2にも示すように、上下動する昇降ロッド40の上端に板状のバッファベース42を設け、このバッファベース42上に例えば3本の支持ピン44を突出させて設け、この3本の支持ピン44の上端でウエハWの裏面を支持できるようになっている。 【0021】 次に、以上のように構成された処理システム30における被処理体の搬送方法について説明する。 ここでは、処理室4Cにおいて半導体ウエハWに対して汚染が生じ易い処理として、例えばCu膜等の金属薄膜を堆積する処理を行うものと仮定し、処理室4Cにおいて当該処理を行なうことから、この処理室4Cが特定処理室となる。尚、この[特定]なる言葉は、単に他の処理室から区別するために用いている。従って、半導体ウエハWに対するコンタミネーション(汚染の伝播)を防止する上からは、本発明では少なくともこの金属薄膜の成膜処理がなされた半導体ウエハWを搬送する際には、このウエハWの裏面等にも不要な金属薄膜が付着してこれがピックにも付着する恐れが生ずるので、一方のピックをコンタミ用ピックとして専用に用い、上記特定処理室4CへウエハWを搬入する直前までは、他方のピックをクリーン用ピックとして専用に用いる。更に、このクリーン用ピックを上記特定処理室4C内へ侵入させると、このクリーン用ピックが汚染される恐れが生ずるので、本実施例ではウエハをこの特定処理室4C内へ搬入する際にも、コンタミ用ピックを用いることとする。また、コンタミ用ピックを、この金属薄膜の堆積処理の直前の処理を行う処理室、ここでは処理室4Bへ侵入させるとこの処理室4B内が汚染される恐れが生ずるので、これを避けなけらばならない。そこで、本実施例では、半導体ウエハをクリーン用ピックからコンタミ用ピックへ持ち換える操作は、上記バッファ機構38を使用して行う。 【0022】 さて、上記した条件を確認した上で、ここでは半導体ウエハWに対しては、各処理室4A?4Dにおける処理の順序が上記した順序で行われるものと仮定すると、半導体ウエハWの搬送経路は、矢印で示されたように行われる。ここでは一例として3つの導入ポート12の内の中央の導入ポート12に設置したカセット(キャリアも含む)からウエハが取り出されるものとし、また、2つのロードロック室8A、8Bの内のいずれか一方のロードロック室、例えばロードロック室8Aが特定処理室4Cで処理前のウエハWの搬入用に用い、他方のロードロック室8Bが特定処理室4Cで処理後のウエハWの搬出用に用いる。 【0023】 また、ここでは各搬送機構16、18の2つのピックの内のいずれか一方のピック、例えばピック16A、18Aがクリーン用ピックとして用いられ、他方のピック16B、18Bがコンタミ用ピックとして用いられる。図示例の搬送経路の矢印は、クリーン用ピックを用いる場合が黒色の矢印として表され、コンタミ用ピックを用いる場合が白抜きの矢印として表されている。 今、各処理室4A?4D内にはそれぞれウエハWが収容されてそれぞれの処理が終了しているか、略終了しかけているものとする。 【0024】 <搬入側搬送室10内の搬送操作> …(略)… 【0025】 <共通搬送室2内の搬送操作> 次に、共通搬送室2内でのウエハの搬送操作について説明する。 1.まず、搬送機構18のコンタミ用ピック18Bを用いて処理室4Dにて処理済みのウエハWを取りに行き、搬送経路Y1に示すようにこれを空き状態のコンタミ用のロードロック室8B内に置く。 2.次に、コンタミ用ピック18Bを用いて特定処理室4C内の処理済みのウエハWを取りに行き、搬送経路Y2に示すようにこれを空き状態の処理室4D内へ搬入して置き、処理室4D内での処理を開始する。 3.次に、バッファ機構38上には、予め処理室4Bにて処理済みのウエハWが保持されているので、コンタミ用ピック18Bでこのバッファ機構38上に載置されているウエハWを取りに行き、搬送経路Y3に示すようにこれを空き状態のコンタミ用処理室4C内に搬入して置き、この特定処理室4C内での処理を開始する。 【0026】 4.次に、処理室4B内の処理済みのウエハWをクリーン用ピック18Aで取りに行き、搬送経路Y4に示すようにこれを上記空き状態のバッファ機構38上に置き、ここで待機させる。 5.次に、処理室4A内の処理済みのウエハWをクリーン用ピック18Aで取りに行き、搬送経路Y5に示すようにこれを上記空き状態の処理室4B内へ搬送して置き、この処理室4B内での処理を開始する。 【0027】 6.次に、クリーン用ロードロック室8A内で待機していた未処理のウエハWをクリーン用ピック18Aで取りに行き、搬送経路Y6に示すようにこれを上記空き状態の処理室4A内へ搬入して置き、この処理室4A内での処理を開始する。尚、半導体ウエハWの搬出入の際には、それに対応するゲートバルブ6を開閉操作するのは勿論である。 そして、各処理室4A?4Dにて半導体ウエハWの処理が完了する毎に上記した操作が繰り返し行われることになる。 このように、金属薄膜が形成されて金属汚染の生ずる恐れのウエハを搬送する工程、および特定処理室4C内へウエハWを搬送する工程では、必ずコンタミ用ピック16B、18Bを用い、逆に、それより以前のウエハWの搬送工程ではクリーン用ピック16A、18Aを用いるようにしてピックを区別して使用しているので、クロスコンタミネーション(汚染の伝播)が発生することを極力抑制することが可能となる。 【0028】 尚、上記各処理室4A?4D間における搬送順序は単に一例を示したに過ぎず、これに限定されないのは勿論である。どのような搬送経路の場合でも、ウエハに対して汚染の生じ易い処理を行なう処理室にウエハを搬入する直前に、前工程の処理室で処理済みのウエハを一旦バッファ機構38で保持させ、ここでクリーン用ピック18Aとコンタミ用ピック18Bとの間でウエハの持ち換え操作を行うようにする。これにより、上述したように、クリーン用ピック18Aが汚染されることを防止し、その結果、特定処理室4Cにて処理を行う前のウエハWに対する汚染も防止することが可能となる。」 上記の段落【0011】に記載された「一方のピック」と「他方のピック」は、それぞれ、「特定処理室へ被処理体を搬入する直前までの搬送」に用いられるピックと、「特定処理室への被処理体の搬入及びそれ以降の搬送」に用いるピックであるので、処理システム30においては、段落【0021】に記載の「クリーン用ピックとして専用に用いるピック」と「コンタミ用ピックとして専用に用いるピック」とが、それぞれ対応するピックであるといえる。 したがって、引用例3には、以下の技術が記載されていると認められる。 「半導体ウエハ等の被処理体に対して所定の処理を施す処理システムであって、 共通搬送室2の周囲に処理室4A?4Dを連結してなる真空処理装置を有しており、 各処理室4A?4Dは、それぞれ半導体ウエハWに対して所定の処理を施し得るようになっており、 共通搬送室2内には、半導体ウエハWを保持する2つのピック18A、18Bを有して屈伸及び旋回可能になされた搬送機構18が設けられており、 特定処理室となる、処理室4Cにおいて半導体ウエハWに対して汚染が生じ易い処理として、金属薄膜を堆積する処理を行うものであり、 前記特定処理室へ前記被処理体を搬入する直前までの搬送は、前記2つのピックの内の一方のピックである、クリーン用ピックとして専用に用いるピックを用いて行い、前記特定処理室への前記被処理体の搬入及びそれ以降の搬送は、他方のピックである、コンタミ用ピックとして専用に用いるピックを用いて行うようにした、処理システム。」 4 引用発明との対比 本願発明と引用発明とを対比する。 (1)引用発明の「基板(W)(ウエハW)]、「ハンド(UH,LH)」、「処理チャンバMPC1,MPC2,MPC3,MPC4」、「動作制御手段(4)」、「レシピ(CCレシピおよびプロセスレシピ)」、「レシピ記憶手段(5)」は、それぞれ本願発明の「基板」、「アーム」、「処理部」、「制御ユニット」、「レシピ」、「レシピ記憶部」に相当する。 (2)本願発明の「前記複数のアームのなかで使用可能なユーザブルアーム、前記複数の処理部のなかで使用可能なユーザブル処理部、及び前記ユーザブル処理部での処理条件を規定するレシピを複数格納したレシピ記憶部」と、引用発明の「このレシピ作成手段によって作成されたレシピを記憶しておくためのレシピ記憶手段(5)」とを対比する。 また、本願発明の「複数の前記レシピは処理条件毎に異なる前記ユーザブルアームと異なる前記ユーザブル処理部を規定する」と、引用発明の「このハンド指定入力手段からの入力に基づいて、基板の搬送手順ならびに上記所定部に対する基板の搬入および搬出にそれぞれ用いるべきハンドを規定したレシピ」、「プロセスレシピは、ウエハWを搬送する手順、具体的には、4つの処理チャンバMPC1?MPC4のうちのどの処理チャンバ(1または複数の処理チャンバ)にどのような順序でウエハWを経由させるかを規定しており、プロセスレシピは、ウエハWが経由する各処理チャンバでの処理に採用するCCレシピの番号も規定している」とを対比する。 ア 引用発明において、「レシピ」は、「所定部に対して基板を搬入および搬出する際に用いるべき上記搬送ロボットのハンドをそれぞれ指定して入力するためのハンド指定入力手段(6)」からの「入力に基づいて、基板の搬送手順ならびに上記所定部に対する基板の搬入および搬出にそれぞれ用いるべきハンドを規定した」ものであるから、本願発明における「レシピ」と引用発明における「レシピ」とは、「複数のアームのなかで使用可能なユーザブルアーム」を規定するものであり、「異なる前記ユーザブルアーム」を規定するものである点で一致する。 イ 引用発明は、「CCレシピは、処理チャンバMPC1?MPC4で行われるウエハWの処理の条件(たとえば、処理に使用する薬液名など)を規定したもの」であり、「プロセスレシピは、ウエハWを搬送する手順、具体的には、4つの処理チャンバMPC1?MPC4のうちのどの処理チャンバ(1または複数の処理チャンバ)にどのような順序でウエハWを経由させるかを規定しており、プロセスレシピは、ウエハWが経由する各処理チャンバでの処理に採用するCCレシピの番号も規定している」ものであるところ、「CCレシピおよびプロセスレシピ」は、「ウエハWの処理の条件」や「4つの処理チャンバMPC1?MPC4のうちのどの処理チャンバ(1または複数の処理チャンバ)にどのような順序でウエハWを経由させるか」を規定したものであるといえるから、複数の処理チャンバMPC1?MPC4のなかで使用可能な処理チャンバでの「処理条件」を規定するものであるといえる。 したがって、本願発明における「レシピ」と、引用発明における「レシピ(CCレシピおよびプロセスレシピ)」とは、「前記複数の処理部のなかで使用可能なユーザブル処理部、及び前記ユーザブル処理部での処理条件」を規定するものであり、「異なる前記ユーザブル処理部」を規定するものである点で一致する。 ウ そして、引用発明の「レシピ記憶手段(5)」は、レシピを作成するレシピ作成手段によって作成されたレシピを記憶しておくためのものであるから、そうすると、上記ア、イから、本願発明と引用発明とは、「前記複数のアームのなかで使用可能なユーザブルアーム、前記複数の処理部のなかで使用可能なユーザブル処理部、及び前記ユーザブル処理部での処理条件を規定するレシピを格納したレシピ記憶部」を備え、「前記レシピは異なる前記ユーザブルアームと異なる前記ユーザブル処理部を規定する」点で一致する。 (3)本願発明の「前記レシピに基づいて、前記ユーザブルアームで基板を搬送し、前記ユーザブル処理部で前記処理条件のとおり基板を処理するように、前記複数のアームと前記複数の処理部を制御する制御ユニット」と、引用発明の「このレシピ記憶手段に記憶されているレシピに従って、上記搬送ロボットの動作を制御する動作制御手段(4)」とを対比する。 ア 引用発明において、「動作制御手段(4)」は、「所定部に対して、基板を搬入および搬出する際に用いるべき上記搬送ロボットのハンドをそれぞれ指定して入力するためのハンド指定入力手段(6)」からの「入力に基づいて」、「上記所定部に対する基板の搬入および搬出にそれぞれ用いるべきハンドを規定したレシピ」に従って、「上記搬送ロボットの動作を制御する動作制御手段(4)」であるといえるから、「複数のハンド(UH,LH)」のなかで使用可能なハンドで「基板(W)を搬送」するように、「複数のハンド(UH,LH)」を制御するものであるといえる。 イ また、引用発明は、「制御部4は、各処理チャンバMPC1?MPC4の内部機構を制御し、制御部4には、レシピ記憶部5が接続されており、このレシピ記憶部5には、CCレシピおよびプロセスレシピが記憶されており、CCレシピは、処理チャンバMPC1?MPC4で行われるウエハWの処理の条件(たとえば、処理に使用する薬液名など)を規定し、プロセスレシピは、ウエハWを搬送する手順、具体的には、4つの処理チャンバMPC1?MPC4のうちのどの処理チャンバ(1または複数の処理チャンバ)にどのような順序でウエハWを経由させるかを規定しており、プロセスレシピは、ウエハWが経由する各処理チャンバでの処理に採用するCCレシピの番号も規定している」ものであるところ、プロセスレシピは、複数の処理チャンバMPC1?MPC4のなかで使用可能な処理チャンバでの「処理条件」を規定するものであるといえるから、「動作制御手段(4)(制御部4)」は、「複数の処理チャンバMPC1?MPC4」のなかで使用可能な処理チャンバで「処理条件のとおり基板を処理する」ように、「複数の処理チャンバーMPC1?MPC4」を制御するものであるといえる。 ウ したがって、本願発明と引用発明とは、「前記レシピに基づいて、前記ユーザブルアームで基板を搬送し、前記ユーザブル処理部で前記処理条件のとおり基板を処理するように、前記複数のアームと前記複数の処理部を制御する制御ユニット」を備える点で一致する。 (4)以上のことから、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「基板の搬送に用いる複数のアームと、 基板を処理する複数の処理部と、 前記複数のアームのなかで使用可能なユーザブルアーム、前記複数の処理部のなかで使用可能なユーザブル処理部、及び前記ユーザブル処理部での処理条件を規定するレシピを格納したレシピ記憶部と、 前記レシピに基づいて、前記ユーザブルアームで基板を搬送し、前記ユーザブル処理部で前記処理条件のとおり基板を処理するように、前記複数のアームと前記複数の処理部を制御する制御ユニットと、を備え、 前記レシピは異なる前記ユーザブルアームと異なる前記ユーザブル処理部を規定する基板処理装置。」 <相違点> <相違点1> 本願発明では、「レシピ記憶部」は、レシピを「複数」格納するものであり、「複数」の前記レシピは「処理条件毎」に異なる前記ユーザブルアームと異なる前記ユーザブル処理部を規定するのに対し、引用発明では、レシピ記憶手段(5)に記憶されているレシピが「複数」であるか否か不明であり、また、レシピにおける、ハンド(UH,LH)と処理チャンバMPC1?MPC4の規定について、本願発明の上記のような特定はなされていない点。 5 判断 (1)以下、上記相違点について検討する。 ア 上記3(2)に摘記の引用例2の段落【0022】には、「汚染されたアームや汚染されたアームから基板に付着した物質などが別の工程の処理室に挿入されることが無くなるので、処理室の汚染を防止することができるという効果を奏する。」と記載されている。 また、引用例2に記載の技術は、複数のアームと、シリコン基板などの基板に対してそれぞれ異なる処理を行う複数の処理室とを有する基板処理装置であって、処理室12内で、「下層膜の成膜などの前処理を行い、具体的には、基板表面を酸化したり、基板表面を窒化したりし」、処理室14内で、「処理室12内で処理された処理基板又は処理膜上に積層して成膜する材料を堆積し、具体的には、金属などを成膜する」ものであり、アームを、「汚染の影響を及ぼし合う処理単位毎」に交換してもよいものであるところ、金属の成膜に用いるアームと処理室を、前処理を行うために用いるアームと処理室とは異なるものとしているから、「処理条件毎」に、複数のアームのなかの異なるアームを用い、複数の処理部のなかの異なる処理部を用いるものであるといえる。 イ 上記3(3)に摘記の引用例3の段落【0010】には、「被処理体を保持する複数のピックを区別して用いることにより、スループットを犠牲にしてでもクロスコンタミネーション(汚染の伝播)の発生を抑制することが可能な被処理体の搬送方法を提供すること」と、段落【0027】には、「ピックを区別して使用しているので、クロスコンタミネーション(汚染の伝播)が発生することを極力抑制することが可能となる。」と記載されている。 また、引用例3に記載の技術は、2つのピック18A、18Bと、処理室4A?4Dとを有する処理システムであって、「各処理室4A?4Dは、それぞれ半導体ウエハWに対して所定の処理を施し得るようになっており」、「特定処理室となる、処理室4Cにおいて半導体ウエハWに対して汚染が生じ易い処理として、金属薄膜を堆積する処理を行うものであり」、「前記特定処理室へ前記被処理体を搬入する直前までの搬送は、前記2つのピックの内の一方のピックである、クリーン用ピックとして専用に用いるピックを用いて行い、前記特定処理室への前記被処理体の搬入及びそれ以降の搬送は、他方のピックである、コンタミ用ピックとして専用に用いるピックを用いて行うようにした」ものであるところ、金属薄膜を堆積する処理を行うために用いるピックと処理室(4C)を、他の処理を行うために用いるピックと処理室と異なるものとしているから、「処理条件毎」に、複数のアームのなかの異なるアームを用い、複数の処理部のなかの異なる処理部を用いるものであるといえる。 ウ そうすると、シリコン基板などの基板や半導体ウエハの搬送に用いる複数のアームと、シリコン基板などの基板や半導体ウエハを処理する複数の処理部とを備える基板処理装置において、スループットを犠牲にしてでもクロスコンタミネーションの発生を抑制するためには、処理条件毎に、複数のアームのなかの異なるアームと、複数の処理部のなかの異なる処理部とを用いることは、引用例2、3に記載されているように、周知技術であると認められる。 エ 上記3(1)アに摘記の引用例1の段落【0003】には、「汚染基板からハンドに転移した汚染物質が清浄基板に転移して、清浄基板を再汚染する、いわゆるクロスコンタミネーションが発生する。そこで、従来の基板処理装置では、搬送ロボットが一対のハンドを有していて、汚染基板と汚染物質が除去された後の清浄基板とが別々のハンドによって搬送されるようになっている。」と記載されている。また、同段落【0014】には、「処理チャンバMPC1?MPC4で行われる処理は、ウエハWに対するどのような処理でもよく」と記載されている。 オ 引用発明と引用例2、3に記載の技術とは、複数のアームと、シリコン基板などの基板や半導体ウエハを処理する複数の処理部とを有する基板処理装置であって、条件に応じて、複数のアームのなかの異なるアームを用い、複数の処理部のなかの異なる処理部を用いるものである点で一致し、しかも、クロスコンタミネーションの発生の抑制に関する技術である点でも一致する。 カ 引用例1の段落【0004】、【0030】の記載や引用例3の段落【0010】の記載を参照すると、上記のような複数の処理部を有する基板処理装置において、クロスコンタミネーションの問題とスループットの向上のどちらを重視するかは、ユーザや被処理体の処理の目的(どのような処理を行うかなど)に応じることと認められる。 そして、引用発明において、処理チャンバMPC1?MPC4で行われるウエハWに対する処理として、例えば、引用例2、3に記載のような下層膜の成膜と金属の成膜とを選択した場合において、スループットを犠牲にしてでもクロスコンタミネーションの発生の抑制を可能としたいのであれば、引用例2、3に記載の技術のように、下層膜等の成膜や金属の成膜のそれぞれにおいて、異なるアーム及び異なる処理チャンバを用いるものとすること、すなわち、「処理条件毎に、異なるアーム及び異なる処理チャンバを用いる」ものを採用することは、当業者であれば容易になし得たことである。 そして、引用発明において、レシピは、「基板の搬送手順ならびに上記所定部に対する基板の搬入および搬出にそれぞれ用いるべきハンドを規定した」ものであり、プロセスレシピは、「4つの処理チャンバMPC1?MPC4のうちのどの処理チャンバ(1または複数の処理チャンバ)にどのような順序でウエハWを経由させるかを規定して」いるものであるから、レシピ記憶手段(5)に記憶されるレシピを「複数」とし、当該複数のレシピを、「処理条件毎に、異なるアーム及び異なる処理チャンバを用いる」ものとすることも、当業者であれば当然なし得たことである。 したがって、引用発明において、引用例2、3に記載の技術に基づき、相違点1に係る本願発明の構成を採用することは当業者が容易になし得たことである。 キ なお、審判請求人は、審判請求書において、引用文献2は「各処理室毎に対応したアームを設け」るものであり、「処理条件毎に異なる前記ユーザブルアームと異なる前記ユーザブル処理部を」用いるものではない旨、引用例3に記載の技術も、「処理条件毎に異なる前記ユーザブルアームと異なる前記ユーザブル処理部を」用いるものではない旨主張しているが、上記ア、イで検討したように、引用例2、3に記載の技術は、いずれも、「処理条件毎」に、複数のアームのなかの異なるアームを用い、複数の処理部のなかの異なる処理部を用いるものであるといえるから、審判請求人の当該主張を採用することはできない。 (2)判断についてのまとめ よって、本願発明は、引用発明及び引用例2、3に記載の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 よって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 6 むすび 以上のとおりであるから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2019-10-29 |
結審通知日 | 2019-11-05 |
審決日 | 2019-11-20 |
出願番号 | 特願2015-54088(P2015-54088) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 杢 哲次 |
特許庁審判長 |
加藤 浩一 |
特許庁審判官 |
恩田 春香 西出 隆二 |
発明の名称 | 基板処理装置 |
代理人 | 高田 守 |
代理人 | 高橋 英樹 |