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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B60B
管理番号 1361298
審判番号 不服2019-7504  
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-06-05 
確定日 2020-04-21 
事件の表示 特願2016-123905号「キャスター」拒絶査定不服審判事件〔平成29年12月28日出願公開、特開2017-226323号、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年6月22日の出願であって、平成30年11月9日付けで拒絶理由が通知され、平成31年1月17日に意見書及び手続補正書が提出され、同年2月28日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、令和1年6月5日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。


第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

この出願の請求項1及び2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の引用文献1?3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2008-1355号公報
引用文献2:特開平11-123904号公報(周知技術を示す文献)
引用文献3:特開2003-205701号公報(周知技術を示す文献)


第3 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)は、令和1年6月5日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
車輪と、
前記車輪を回転自在に軸支するフォークと、
前記フォークに上下方向に回動自在に軸支されるブレーキ板と、
前記ブレーキ板の一方に設けられ、前記車輪の外周面に押圧可能な外周制動部と、
前記ブレーキ板の他方に設けられ、前記車輪のホイールに当接可能な側面制動部と、
前記ブレーキ板の上部で前記フォークに上下方向に回動自在に軸支される操作手段と、
前記操作手段の基端に設けたカム部と、
縦軸と、
前記縦軸の下端に固定される円形取付板と、
前記フォークに上下方向に回動自在に軸支される旋回規制部材と、
前記旋回規制部材に形成された旋回規制用円弧部とを備え、
前記フォークは前記円形取付板の下側に回動自在に軸支され、
前記操作手段を操作して前記カム部を回転させて、
回転する前記カム部によって、前記外周制動部を押し下げて前記車輪の外周面に押圧させるとともに、前記外周制動部の下降に対して前記側面制動部を相対的に上昇させて前記ホイールに当接させ、さらに、前記旋回規制部材の前記旋回規制用円弧部が前記円形取付板の外周面に押し付けられることを特徴とするキャスター。」


第4 当審の判断
1 引用文献の記載事項等
(1)引用文献1の記載事項
引用文献1には、次の記載がある(下線は当審で付した。以下同様。)。
(1a)「【0001】
この発明は、簡単な構造で確実に旋回や制動ロックを行うことができる二重ロック式キャスタの改良に関する。」
(1b)「【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明は上記実情に鑑みてなされたもので、その主たる課題は、1回の操作で二重に制動または旋回ロックを行うことができるようにして重荷重用にも使用しうる二重ロック式キャスタを提供することにある。」

(1c)「【実施例1】
【0009】
図1から図3に示す実施例1の二重ロック式キャスタ1は、被取付物へ取り付ける固定プレート2aの中央で上方にステム2を立設し、下方に車輪5を軸支する支持ヨーク3を固定した図示例構成からなっている。
【0010】
[カム]
このステム2内には、枢動可能にカム4が取り付けられている。
カム4は、ステム2内で所定の角度、本実施例では30度の角度で制動と制動解除位置とに切替可能に回転することができるように、左右両側にストッパ面4a、4bが形成されており、後述のリンク部材10枢着用の突片部4cを設けている。
また、カム4の枢軸14は、図示例の場合、断面六角形の軸からなっており、操作レバーなどの操作部材と一体につながっている。
【0011】
[ブレーキシュー]
支持ヨーク3の後方寄りに第1ブレーキとなるブレーキシュー6の後部6bが枢着P1されている。
また、ブレーキシュー6の底面には、制動時に車輪5のトレッド面5aにくい込む爪部9が形成されており、前部には前方へ突出する突出片6aが設けられている。
このブレーキシュー6は、前記カム4と連動可能に変位する。
本実施例では、カム4の突出片4cとブレーキシュー6との間に枢着されたリンク部材10を用いて連動させている。
【0012】
そこで、前記カム4の変位により、リンク部材10を介して、前記ブレーキシュー6を、爪部9が車輪5のトレッド面5aにくい込む第1制動位置(図2参照)と、トレッド面5aから離間する第1制動解除位置(図1、図3参照)とに変位することができる。
また、突出片6aには、上端が支持ヨーク3の上部に取り付けられた第1スプリングS1の下端が掛け止められており、ブレーキシュー6を制動解除方向となる上向きに付勢している。
【0013】
[連動片]
前記ブレーキシュー6の側面後方には、車輪5の側面と隙間を隔てて下方へ延出する略く字状の連動片11を固着している。
図示例で、連動片11は、ブレーキシュー6に固着されており、ブレーキシュー6と共に支持ヨーク3に枢着P1されている。
【0014】
[ブレーキ板]
前記支持ヨーク3の側面の内側には、支持ヨーク3に沿って摺動自在に第2ブレーキとなるブレーキ板7が取り付けられている。
ブレーキ板7は、長孔7cを有する幅広なプレート本体7aと、幅狭な上部プレート7bとを一体に有し、上部プレート7bの上端が内向きに直角に折り曲げられて、後述の係合受部8bと係脱する突部からなる係合部8aを有している。
【0015】
前記長孔7cは、車軸5bを嵌挿しており、該長孔7cの長さの範囲を摺動ストロークとしてブレーキ板7を摺動することができる。
また、支持ヨーク3の内壁面には、長孔7cより上方位置に、前記プレート本体7aの摺動をガイドする一対のガイド部3aが設けられている。
更に、支持ヨーク3の内面下部には、ブレーキ板7の下端に設けた第1掛止部7dに上端が掛け止められた第2スプリングS2の下端を掛止める第2掛止部3bが形成されている。
【0016】
[車輪]
車輪5は、本実施例の場合に、タイヤを外嵌したホイルセンター5cを有しており、該ホイルセンター5cの外周に沿って環状に多数の凹部を等間隔に配置して内歯歯車のように形成した係合受部8bが形成されている。
【0017】
上記構成からなっているので、前記ブレーキシュー6が制動方向に変位すると、連動片11が後方へ変位して下端が上昇してブレーキ板7から離れる方向へ変位する。
これによりブレーキ板7は第2スプリングS2の付勢力で上向きに付勢されて長孔7cの長さの範囲で上方に押し上げられ、ブレーキ板7の係合部8aが係合受部8bに没入する第2制動位置に変位する(図2参照)。
【0018】
また、前記ブレーキシュー6が制動解除方向に変位すると、連動片11が前方へ変位して下端が下降し、ブレーキ板7を押し下げる。
これによりブレーキ板7は第2スプリングS2の付勢力に抗して長孔7cの長さの範囲で下方に押し下げられ、ブレーキ板7の係合部8aが係合受部8bから抜け出て離間する第2制動解除位置に変位する(図1、図3参照)。
【0019】
上記のように構成されているので、ブレーキシュー6による車輪5のトレッド面5aでの制動と、車輪5の側面に形成された係止受部8bとブレーキ板7の係合部8aとの係合による制動で、車輪5の回転を二重にロックすることができる。」

(1d)「【実施例2】
【0020】
次ぎに、図4から図6に示す二重ロック式キャスタ1は、二重制動と共に旋回ロックも同時に行なうことができる異なる実施例を示す。
この実施例では、支持ヨーク3が、固定プレート2aを貫通するステム20に旋回自在に取り付けられている。
【0021】
[連動軸]
このステム20の下部には、カム40を収納した空間21と連通する孔部22が形成されており、該孔部22にカム40の変位を昇降動に変換する連動軸100が嵌挿されている。
ここでカム40は、前記実施例1と同様にステム20内で所定の角度(本実施例では30度)で回転してカム面を変位させる。図示例では左右の上方段部40a、40bがストッパとなる。
連動軸100は上端に前記カム40のカム面と衝合する略半球状の上端接触部101を有しており、ロック解除方向となる上向きに付勢されている。
【0022】
図示例の場合、連動軸100を収納する前記孔部22が、上部を拡開し段差部23を介して下部が小径に狭まる形状からなっており、上記段差部23に第3スプリングS3の下端が掛け止められている。
また連動軸100には中途位置に環状の鍔部102が形成されており、前記第3スプリングS3の上端が掛け止められており、上向きに付勢されている。
次ぎに、ステム20の下端には、中央に貫通孔を有し外周が下方へ垂下すると共に、該垂下壁に下向きに開口する凹部からなる旋回ロック用の受部31を環状に等間隔に複数設
けた旋回ロック板30が固定されている。
【0023】
[ロック部材]
次ぎに、連動軸100と車輪5との間に、第1ブレーキとなるブレーキシューに相当するロック部材60が設けられており、その後方寄りの中途個所で支持ヨーク3に枢着P3されている。
このロック部材60は、下面に押圧用のパッド90を有しており、上部には前記連動軸100の下端と衝合可能な受部61を突設しており、連動軸100の昇降に連動して、前記枢着点P3を支点として枢動する。
なお、65はブレーキシュー60のパッド90の位置を微調整するための調整ネジである。
【0024】
[旋回ロック用バネ材]
支持ヨーク3には、前記連動軸100を避けた位置で上記ロック部材60の枢動により、他方端が上方へ変位して復帰可能に押し上げられる割りピンを開いたような形状のバネ材からなる旋回ロック用バネ材50が設けられている。
該旋回ロック用バネ材50は、折れ曲がり部分の略C形状の環状部53が、支持ヨーク3に固定されたピンP4に外嵌しており、上下一対の片51、52の間に前記ロック部材60の先細り形状の後部62が嵌め込まれている。
【0025】
即ち、下方の片52の先端は前記ロック部材60の下部の中途位置に掛け止められており、上方の片51は前記ロック部材60の後部62の上方部分に接しており、前記ロック部材60が第3ピンP3を支点にして傾動することで下方の片52と上方の片51の間を拡縮して、前記上方の片51を傾斜姿勢から略水平姿勢へと押し上げて変位しうるようになっている。
【0026】
そして、略水平位置において、上方の片51に設けた係合突部54が前記旋回ロック板30の受部31に突入し、旋回ロック板30と支持ヨーク3の動きが規制され、旋回をロックすることができる。
また、これと同時に、前記連動軸100の下端103によって押し下げられたロック部材60の下端に形成されたパッド90が車輪5のトレッド面5aを押圧し、車輪5を制動することができる。
【0027】
[ブレーキ板]
前記支持ヨーク3の側面の内側には、支持ヨーク3の内壁面に沿って摺動自在に第2ブレーキとしてのブレーキ板70が取り付けられている。
このブレーキ板70は、その上部でロック部材60に連動可能に連結されている。
図示例ではブレーキ板70はロック部材60に固定されているが、枢着されていてもよい。あるいは連動可能に連結部材を介設するなどであってもよい。
そして、ブレーキ板70は、長孔70cを有する幅広なプレート本体71と、幅狭な上部プレート72とを一体に有し、プレート本体71の下端が内向きに直角に折り曲げられて、後述の係合受部80bと係脱する突部からなる係合部80aを形成している。
【0028】
前記長孔70cは、車軸5bを嵌挿しており、該長孔70cの長さの範囲を摺動ストロークとしてブレーキ板70を摺動することができる。
また、プレート本体71の中途位置には直交する方向に延びて外向きに折れ曲がり、支持ヨークの直線状に延びる厚み側の端面に沿ってガイドされてブレーキ板70の摺動をガイドする一対のガイド部73が設けられている。
更に、支持ヨーク3の中途位置には、ブレーキ板70の下端に設けた第1掛止部75に下端が掛け止められた第2スプリングS2の上端を掛止める第2掛止部32が形成されており、ブレーキ板70を制動解除方向に付勢している。
【0029】
[車輪]
車輪5には、前記実施例1と同様にホイルセンター5cの外周に沿って環状に多数の凹部を等間隔に配置して内歯歯車のように形成した係合受部80bが形成されている。
【0030】
そこで、ロック部材60とブレーキ板70との連動構成について説明する。
前記ロック部材60が制動方向に変位するとブレーキ板70は第2スプリングS2の付勢力に抗して長孔70cの長さの範囲で下方に押し上げられ、ブレーキ板70の係合部80aが係合受部80bに没入する第2制動位置に変位する(図5参照)。
【0031】
また、前記ロック部材60が制動解除方向に変位するとブレーキ板70が押し上げられる。
これによりブレーキ板70は第2スプリングS2の付勢力も加わって長孔70cの長さの範囲で上方に押し上げられ、ブレーキ板70の係合部80aが係合受部80bから抜け出て離間する第2制動解除位置に変位する(図4、図6参照)。
【0032】
上記のように構成されているので、ロック部材60による車輪5のトレッド面での制動と、車輪5の側面に形成された係止受部80bと係合部80aの係合による制動で二重にロックすることができる。
これにより本実施例では、制動を二重に行うと共に、旋回ロックも行うことができるが、前記旋回ロック機構を設けず、ロック部材は制動解除方向に付勢されており二重に制動しうるだけの構成であってもよい。」

(1e)「【実施例3】
【0033】
次ぎに、旋回ロックを二重に行う二重ロック式キャスタ1の実施例を図7から図11を参照しながら説明する。
ここで、制動ロックの構造は公知のものでよく、前記各実施例のように二重制動を行うものでもよいが、本実施例では、前記実施例2において二重に旋回ロックを行うことができるようにした実施例について説明する。
1つの旋回ロック機構および制動機構は前記実施例2と同様であるので、同一構成には同一符号を付して説明を省略する。
・・・
【0036】
[旋回ロック用バネ材]
この実施例では、前記実施例2の旋回ロック用バネ材50を主たる旋回ロック部材として用いてる。
この旋回ロック用バネ材50は、本実施例の場合、後述の第2旋回ロック部材500と
重ならずに並列に並べて使用するため、図9および図11に示すように切欠穴部55が形成されている。
また、旋回ロック用バネ材50は、その係合突部54が、旋回ロック板30のほぼ中央位置で直径方向に対峙する一対の受部31と係合しうるように形成されており、第2旋回ロック部材500の係合突部540が係合しうる端部側の受部31とは干渉しないようになっている(図11参照)。
・・・
【実施例5】
【0048】
図13および図14に示す実施例5の二重ロック式キャスタ1では、主たる旋回ロック部材と従たる旋回ロック部材とがそれぞれ別々に作動する場合を示す。
このキャスタ1では、連動軸100の下降によりロック方向に付勢されたロック部材600を図示しない支持ヨークとの枢着点P30を支点にして押し下げる(図14参照)。
【0049】
ここでロック部材600には従たる第2旋回ロック部材として断面略L状の第2旋回ロック片501の基端が固着されており、該第2旋回ロック片501の先端は鉤状に折れ曲がった係合突部541となっている。
そして、上記ロック部材600は前記連動軸100の下降で図中時計方向に枢動し、ロック部材600に固着された第2旋回ロック片501の係合突部541が、側方から旋回ロック板30の受部31に突入する。
係合突部541と受部31の係合状態について図15(a)にその待機(イ)、接触(ロ)、係合(ハ)について図示するが、係合方向が異なるだけで前記図10(b)と同様に機能する。
【0050】
一方、主たる旋回ロック部材としての旋回ロック片50’は、略直線状に延びて先端に係合突部54’を有している。
そして、上記ロック部材600の上部側方に枢着点P50で枢着されて旋回ロック解除方向に付勢された連動部材610に基端が固定されている。
前記ロック部材600の旋回ロック方向の枢動により旋回ロック片50’が押し上げられ、これと連動して連動部材610が枢着点P50を支点にして付勢力に抗して枢動し前記係合突部541の受部31への突入に次いで係合突部54’を下方から旋回ロック板30の受部31に突入させる。
この係合突部54’と受部31の係合状態について図15(b)にその待機(イ)、接触(ロ)、係合(ハ)について図示するが、前記図11(b)と同様に機能する。
【0051】
また、前記ロック部材600の変位に連動するブレーキ板700が設けられており、その下端には係合部80a’が設けられている。
一方、車輪5には、その内周に形成された環状の係合受部80b’が形成されており、ロック部材600のアーム620を介してロック部材の枢動に連動してブレーキ板700が下方に摺動し、係合部80a’が係合受部80b’に突入して制動ロックするようになっている。
制動ロックについては、前記ロック部材600の下面に直接に車輪のトレッド面を押圧するパッドや爪などのシューを設けてブレーキ板700や連動用のアーム620を省略する構成でもよく、その他の公知の制動機構を用いることができる。
【0052】
旋回ロックを二重に行う場合に、主たる旋回ロック部材と従たる旋回ロック部材の受部への突入方向は下からでも側方からでもよい。
また、主たる旋回ロック部材と従たる旋回ロック部材の旋回ロック方向への変位はロック作動を生じる同一部材の変位によるものであっても、あるいは連動して作動する別体の部材の変位によるものであってもよい。
また、上記のようにこの場合の制動ロック機構の構成は特に限定されない。
その他、要するにこの発明の要旨を変更しない範囲で種々設計変更しうること勿論である。」

(1f)引用文献1には、以下の図が示されている。









(2)引用文献2の記載事項
引用文献2には、次の記載がある。
(2a)「【0001】
【発明が属する技術分野】この発明は、簡単な構造で衝撃を吸収することができるようにした緩衝機構付きキャスタに関する。
・・・
【0029】更に、本実施例では、一例として制動装置が設けられている。即ち、支持ヨーク3の側壁部30の上方には制動解除方向に付勢されたバネ材からなる制動板12が中途位置でピンP1により枢支されている。この制動板12は一端に旋回ロック用の爪部13が形成されており、他端には車輪のトラッド面に押圧されるシュー部14が形成されている。そして支持ヨーク3の頂壁部3aには操作レバー15が枢着されている。
【0030】そこで、操作レバー15を押し込むと、変位したカム面で上記シュー部14側の制動板12を押し下げてシュー部14を車輪に強く押し付けて車輪の回転を制動する。一方、上記制動板12の爪部13側は押し上げられて取付軸2の小径軸部2aの下端に固着された皿状部材2bの下端面に環状に形成された凹凸状の歯部に係止し、支持ヨーク3側が取付軸2側に拘束されるので、旋回がロックされる。」

(2b)引用文献2には、以下の図が示されている。





(3)引用文献3の記載事項
引用文献3には、次の記載がある。
(3a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はキャスターの脚体が旋回しないようにロックしたり、車輪が回転不能となるロック状態にしたり、当該両ロック状態が得られるようにするため、上記の脚体に回動操作のできるストッパーレバーとか、これにより連動することとなるストッパースプリングを設けるようにしたキャスターにあって、これが上記したロック状態にあるのか非ロック状態であるかを、視覚的に判別可能とするために付設されるロック表示装置に関する。
・・・
【0014】
【発明の実施の形態】本願の請求項1に係る発明につき図面を参照して以下詳記すると、キャスターAとしては既知の如く以下のように構成されている。すなわち椅子、テーブル等に取り付けられる取着部Bにあって、もちろん支承体1のないものも存するが、図示例では、上部転動体1aを内装した上部転動用受部1Aと、下部転動体1bを内装した下部転動用受部1Bとを、取着ボルト1cとナット1dによって一体化された支承体1が示されている。この際上部転動用受部1Aと下部転動用受部1Bとの間に、逆U字状に形成された脚体2の脚背板部2aが、水平に旋回自在なるよう挟装されており、2bは脚背板部2aの前後両端部から下方へ曲設した一対の脚側板部を示している。そして上記一対の脚側板部2b間には、車軸3aによって車輪3が回転自在なるよう軸承されている。
【0015】さらに上記脚体2の図示例では、脚側板部2bにあって横向レバー枢支部4aにより枢支されたストッパーレバー4を、図1の実線で示した非ロック状態から、既知の如く爪先などにより矢印D方向へ押下回動するといった操作で、図示例では脚体2の脚側板部2bにスプリング支部5aにより枢支されているストッパースプリング5が回動自在に設けられている。ここでストッパースプリング5の脚体2に対する枢支手段につき、他の実施態様を例示すると、図2(A)を参照して脚体2の脚背板部2aから下向きに、スプリング支部5aを突設し、その基端部aから首部を介して縮経自在な抜止部3bを連枢し、これにストッパースプリング5の係嵌口cを、抜止め状態に係嵌することで、ストッパースプリング5を回動自在としてある。そしてこの際、当該回動を円滑に行わせるため図示されていないが、脚背板部2aから一対の規制板を下突して、当該規制板間にストッパースプリング5を昇降動自在に挟装状態にて収納するのが望ましい。これにより当該ストッパースプリング5における取着部側部5bが、前記した取着部Bの支承体1における図示例では下部転動用受部1Bの凹溝1eに対して係止され、この結果脚体2は旋回不能のロック状態になるか、同上ストッパースプリング5のストッパーレバー側部5cが車輪3に押当することで、当該車輪3が回転不能となるかの一方または双方のロック状態が得られるよう構成される。
・・・
【0024】上記のように構成することで、キャスターAの非ロック状態にあっては、ロック表示プレート6の前記した非ロック表示面6aが、表示窓4bから直視可能となり、ストッパーレバー4を当該非ロック状態からロック操作によってレバー枢支部4aを中心として押下回動、すなわち矢印D方向へ回動させることで、前記した押隆部4dの回動にてストッパースプリング5のストッパーレバー側部5cを弾圧変形することができる。これにより取着部側部5bの係止突起5eを既知の如く支承体1における凹溝1e等により形成された被係部1fに係止自在とし、これにより脚体2の旋回をロック状態とする。
【0025】上記の旋回ロック状態と同期的に、上記した車輪回転ストッパー部5cを車輪3に押当することで車輪ロック状態となし、これをストッパースプリング5の復元力によって保持自在とするが、これによってストッパーレバー側部5cに前記の如く係嵌遊装されているロック表示プレート6は、既説の通りストッパーレバー4における案内空所4cにあって、その外側方へ向けスライドすることとなり、この結果表示窓4bから直視されていたロック表示プレート6の非ロック表示面6aに替えて、隣装のロック表示面6bが直視されることになる。」

(3b)引用文献3には、以下の図が示されている。


2 引用文献1の認定事項及び引用文献1に記載された発明
(1)引用文献1の認定事項
上記「1(1)」から、以下の事項が認定できる。
ア 「図4?6に示す二重ロック式キャスタ1」を実施態様とする実施例2についての摘示(1d)から、「二重ロック式キャスタ1」に関し、次の事項が認定できる。
「車輪5」と(【0029】)、
「支持ヨーク3」と(【0020】)、
「中途個所で支持ヨーク3に枢着P3されている」「ロック部材60」と(【0023】)、
「ロック部材60」が「下面に」有する「押圧用のパッド90」と(【0023】)、
「上部でロック部材60に連動可能に連結されている」「ブレーキ板70」と(【0027】)、「カム40」と(【0021】)、
「ステム20」と(【0020】)、
「ステム20の下端に」「固定されている」「旋回ロック板30」と(【0022】)、
「支持ヨーク3に」「設けられている」「前記連動軸100を避けた位置で上記ロック部材60の枢動により、他方端が上方へ変位して復帰可能に押し上げられる割りピンを開いたような形状のバネ材からなる」ものであり、「上下一対の片51、52の間に前記ロック部材60の先細り形状の後部62が嵌め込まれ」、「下方の片52の先端は前記ロック部材60の下部の中途位置に掛け止められており、上方の片51は前記ロック部材60の後部62の上方部分に接しており、前記ロック部材60が第3ピンP3を支点にして傾動することで下方の片52と上方の片51の間を拡縮して、前記上方の片51を傾斜姿勢から略水平姿勢へと押し上げて変位しうるようになって」いる「旋回ロック用バネ材50」と(【0024】?【0025】)、
「該旋回ロック用バネ材50」の「上方の片51に設けた係合突部54」と(【0024】、【0026】)、
を備えること。

「支持ヨーク3が、固定プレート2aを貫通するステム20に旋回自在に取り付けられ」ること(【0020】)。

「カム40の変位を昇降動に変換する」「連動軸100の下端103によって押し下げられたロック部材60の下端に形成されたパッド90が車輪5のトレッド面5aを押圧し、車輪5を制動することができ」ること(【0021】、【0026】)。

「前記ロック部材60が制動方向に変位するとブレーキ板70は第2スプリングS2の付勢力に抗して長孔70cの長さの範囲で下方に押し上げられ、ブレーキ板70の係合部80aが係合受部80bに没入する第2制動位置に変位」すること(【0030】)。

「ロック部材60による車輪5のトレッド面での制動と、車輪5の側面に形成された係止受部80bと係合部80aの係合による制動で二重にロックすることができ」ること(【0032】)。

「該旋回ロック用バネ材50は、」「上方の片51に設けた係合突部54が前記旋回ロック板30の受部31に突入し、旋回ロック板30と支持ヨーク3の動きが規制され、旋回をロックする」こと(【0024】、【0026】)。

イ 上記(1f)の図1に示された「車輪5」及び「支持ヨーク3」と同じ図番が上記(1f)の図4に示された「車輪5」及び「支持ヨーク3」に用いられており、摘示(1c)【0009】の「図1から図3に示す実施例1の二重ロック式キャスタ1は、・・・下方に車輪5を軸支する支持ヨーク3を固定した図示例構成からなっている」との記載を踏まえると、同図1に示された「支持ヨーク3」は「下方に車輪5を軸支する支持ヨーク3」であるところ、同図4に示された「支持ヨーク3」も図1と同様に「下方に車輪5」を有することが示されており、「下方に車輪5を軸支する支持ヨーク3」であることは明らかである。
そうすると、摘示(1d)の「支持ヨーク3」は、「下方に車輪5を軸支する支持ヨーク3」であるといえる。

ウ 上記(1f)の図4には「ロック部材60」の上方に位置する「カム40」及び「枢軸14」が示されており、摘示(1d)【0021】の「カム40は、前記実施例1と同様にステム20内で所定の角度(本実施例では30度)で回転してカム面を変位させる」との記載、及び、実施例1についての摘示(1c)【0010】の「このステム2内には、枢動可能にカム4が取り付けられている。カム4は、ステム2内で所定の角度、本実施例では30度の角度で制動と制動解除位置とに切替可能に回転することができるように、左右両側にストッパ面4a、4bが形成されており、後述のリンク部材10枢着用の突片部4cを設けている。また、カム4の枢軸14は、図示例の場合、断面六角形の軸からなっており、操作レバーなどの操作部材と一体につながっている。」との記載から、摘示(1d)の「カム40」について、次の事項が認定できる。
「枢軸14」が、「操作レバーなどの操作部材と一体につながって」いる「カム40」。

また、摘示(1d)の「二重ロック式キャスタ1」に関し、次の事項も認定できる。
「ロック部材60」の上方に位置する「カム40」の「枢軸14」が、「ステム20内で所定の角度で回転してカム面を変位させ」、「枢動可能に取り付けられ」ており、当該「枢軸14」が「一体につながっている」「操作レバーなどの操作部材」を有すること。

エ 上記(1f)の図6には、摘示(1d)の「支持ヨーク3」について、摘示(1d)の「旋回ロック板30」に対して軸受を介して上方に位置することが示されているところ、上記アも踏まえると、摘示(1d)の「支持ヨーク3」について、次の事項が認定できる。
「支持ヨーク3」が、「旋回ロック板30」の上方において「固定プレート2aを貫通するステム20に旋回自在に取り付けられ」ていること。

オ 上記(1f)の図10には、「旋回ロック板30」が円形であることが示されており、摘示(1e)【0033】の「【実施例3】・・・(中略)・・・1つの旋回ロック機構および制動機構は前記実施例2と同様であるので、同一構成には同一符号を付して説明を省略する。」との記載、【0036】の「・・・この実施例では、前記実施例2の旋回ロック用バネ材50を主たる旋回ロック部材として用いてる。この旋回ロック用バネ材50は、本実施例の場合、後述の第2旋回ロック部材500と重ならずに並列に並べて使用するため、図9および図11に示すように切欠穴部55が形成されている。」との記載を踏まえると、摘示(1d)の「旋回ロック板30」について、次の事項が認定できる。
「円形である旋回ロック板30。」

(2)引用文献1に記載された発明
上記「1(1)」及び(1)を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「車輪5と、
下方に車輪5を軸支する支持ヨーク3と、
中途個所で支持ヨーク3に枢着P3されているロック部材60と、
ロック部材60が下面に有する押圧用のパッド90と、
上部でロック部材60に連動可能に連結されているブレーキ板70と
ロック部材60の上方に位置するカム40の枢軸14が、ステム20内で所定の角度で回転してカム面を変位させ、枢動可能に取り付けられており、当該枢軸14が一体につながっている操作レバーなどの操作部材と、
枢軸14が、操作レバーなどの操作部材と一体につながっているカム40と、
ステム20と、
ステム20の下端に固定されている円形である旋回ロック板30と、
支持ヨーク3に設けられている前記連動軸100を避けた位置で上記ロック部材60の枢動により、他方端が上方へ変位して復帰可能に押し上げられる割りピンを開いたような形状のバネ材からなるものであって、上下一対の片51、52の間に前記ロック部材60の先細り形状の後部62が嵌め込まれ、下方の片52の先端は前記ロック部材60の下部の中途位置に掛け止められており、上方の片51は前記ロック部材60の後部62の上方部分に接しており、前記ロック部材60が第3ピンP3を支点にして傾動することで下方の片52と上方の片51の間を拡縮して、前記上方の片51を傾斜姿勢から略水平姿勢へと押し上げて変位しうるようになっている旋回ロック用バネ材50と、
該旋回ロック用バネ材50の上方の片51に設けた係合突部54と、を備え、
支持ヨーク3が、旋回ロック板30の上方において固定プレート2aを貫通するステム20に旋回自在に取り付けられ、
カム40の変位を昇降動に変換する連動軸100の下端103によって押し下げられたロック部材60の下端に形成されたパッド90が車輪5のトレッド面5aを押圧し、車輪5を制動することができ、
前記ロック部材60が制動方向に変位するとブレーキ板70は第2スプリングS2の付勢力に抗して長孔70cの長さの範囲で下方に押し上げられ、ブレーキ板70の係合部80aが係合受部80bに没入する第2制動位置に変位し、
ロック部材60による車輪5のトレッド面での制動と、車輪5の側面に形成された係止受部80bと係合部80aの係合による制動で二重にロックすることができ、
該旋回ロック用バネ材50は、上方の片51に設けた係合突部54が前記旋回ロック板30の受部31に突入し、旋回ロック板30と支持ヨーク3の動きが規制され、旋回をロックする、
二重ロック式キャスタ1。」

3 対比・判断
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「車輪5」は、本願発明1の「車輪」に相当する。

イ 引用発明は「二重ロック式キャスタ1」であるところ、「車輪5」は「支持ヨーク3」に回転自在に軸支されることは技術的に明らかである。そうすると、引用発明の「下方に車輪5を軸支する支持ヨーク3」は、本願発明1の「前記車輪を回転自在に軸支するフォーク」に相当する。

ウ 引用発明の「ロック部材60の上方に位置するカム40の枢軸14が、ステム20内で所定の角度で回転してカム面を変位させ、枢動可能に取り付けられており、当該枢軸14が一体につながっている操作レバーなどの操作部材」と本願発明1の「前記ブレーキ板の上部で前記フォークに上下方向に回動自在に軸支される操作手段」とは、「上下方向に回動自在に軸支される操作手段」であることにおいて共通する。

エ 引用発明の「枢軸14が、操作レバーなどの操作部材と一体につながっているカム40」は、「操作部材」の基端に「カム40」が設けられているといえるから、本願発明1の「操作手段の基端に設けたカム部」に相当する。

オ 引用発明の「ステム20」は本願発明1の「縦軸」に相当する。

カ 引用発明の「ステム20の下端に固定されている円形である旋回ロック板30」は本願発明1の「前記縦軸の下端に固定される円形取付板」に相当する。

キ 上記イを踏まえると、引用発明の「支持ヨーク3に設けられている前記連動軸100を避けた位置で上記ロック部材60の枢動により、他方端が上方へ変位して復帰可能に押し上げられる割りピンを開いたような形状のバネ材からなるものであって、上下一対の片51、52の間に前記ロック部材60の先細り形状の後部62が嵌め込まれ、下方の片52の先端は前記ロック部材60の下部の中途位置に掛け止められており、上方の片51は前記ロック部材60の後部62の上方部分に接しており、前記ロック部材60が第3ピンP3を支点にして傾動することで下方の片52と上方の片51の間を拡縮して、前記上方の片51を傾斜姿勢から略水平姿勢へと押し上げて変位しうるようになっている旋回ロック用バネ材50」と、本願発明1の「前記フォークに上下方向に回動自在に軸支される旋回規制部材」とは、「前記フォークに上下方向に移動自在に軸支される旋回規制部材」であることにおいて共通する。

ク 上記キを踏まえると、引用発明の「該旋回ロック用バネ材50の上方の片51に設けた係合突部54」と本願発明1の「前記旋回規制部材に形成された旋回規制用円弧部」とは、「前記旋回規制部材に形成された旋回規制用部位」であることにおいて共通する。

ケ 上記イ及びカを踏まえると、引用発明の「支持ヨーク3が、旋回ロック板30の上方において固定プレート2aを貫通するステム20に旋回自在に取り付けられ」ることと、本願発明1の「前記フォークは前記円形取付板の下側に回動自在に軸支され」ることとは、「前記フォークは前記円形取付板の一側に回動自在に軸支され」ることにおいて共通する。

したがって、本願発明1と引用発明とは、
「車輪と、
前記車輪を回転自在に軸支するフォークと、
上下方向に回動自在に軸支される操作手段と、
前記操作手段の基端に設けたカム部と、
縦軸と、
前記縦軸の下端に固定される円形取付板と、
前記フォークに上下方向に移動自在に軸支される旋回規制部材と、
前記旋回規制部材に形成された旋回規制用部位とを備え、
前記フォークは前記円形取付板の一側に回動自在に軸支されるキャスター。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
本願発明1は、
「前記フォークに上下方向に回動自在に軸支されるブレーキ板と、
前記ブレーキ板の一方に設けられ、前記車輪の外周面に押圧可能な外周制動部と、
前記ブレーキ板の他方に設けられ、前記車輪のホイールに当接可能な側面制動部と」を備え(以下「構成A」ということもある。)、
「旋回規制用部位」が「旋回規制用円弧部」であり(以下「構成B」ということもある。)、
「前記操作手段を操作して前記カム部を回転させて、回転する前記カム部によって、前記外周制動部を押し下げて前記車輪の外周面に押圧させるとともに、前記外周制動部の下降に対して前記側面制動部を相対的に上昇させて前記ホイールに当接させ、さらに、前記旋回規制部材の前記旋回規制用円弧部が前記円形取付板の外周面に押し付けられる」もの(以下「構成C」ということもある。)であるのに対して、引用発明は、
「中途個所で支持ヨーク3に枢着P3されているロック部材60と、
ロック部材60が下面に有する押圧用のパッド90と、
上部でロック部材60に連動可能に連結されているブレーキ板70と」を備え、
「該旋回ロック用バネ材50の上方の片51に設けた係合突部54」を備えるものであり、
「カム40の変位を昇降動に変換する連動軸100の下端103によって押し下げられたロック部材60の下端に形成されたパッド90が車輪5のトレッド面5aを押圧し、車輪5を制動することができ、
前記ロック部材60が制動方向に変位するとブレーキ板70は第2スプリングS2の付勢力に抗して長孔70cの長さの範囲で下方に押し上げられ、ブレーキ板70の係合部80aが係合受部80bに没入する第2制動位置に変位し、
ロック部材60による車輪5のトレッド面での制動と、車輪5の側面に形成された係止受部80bと係合部80aの係合による制動で二重にロックすることができ、
該旋回ロック用バネ材50は、上方の片51に設けた係合突部54が前記旋回ロック板30の受部31に突入し、旋回ロック板30と支持ヨーク3の動きが規制され、旋回をロックする」ものである点。

<相違点2>
本願発明1は、「操作手段」が、「前記ブレーキ板の上部で前記フォークに」軸支されているのに対して、引用発明は、「ロック部材60の上方に位置するカム40の枢軸14が、ステム20内で所定の角度で回転してカム面を変位させ、枢動可能に取り付けられており、当該枢軸14が一体につながっている操作レバーなどの操作部材」を備えるものである点。

<相違点3>
本願発明1は、「旋回規制部材」が「回動自在に軸支される」ものであるのに対して、引用発明は、「支持ヨーク3に設けられている前記連動軸100を避けた位置で上記ロック部材60の枢動により、他方端が上方へ変位して復帰可能に押し上げられる割りピンを開いたような形状のバネ材からなるものであって、上下一対の片51、52の間に前記ロック部材60の先細り形状の後部62が嵌め込まれ、下方の片52の先端は前記ロック部材60の下部の中途位置に掛け止められており、上方の片51は前記ロック部材60の後部62の上方部分に接しており、前記ロック部材60が第3ピンP3を支点にして傾動することで下方の片52と上方の片51の間を拡縮して、前記上方の片51を傾斜姿勢から略水平姿勢へと押し上げて変位しうるようになっている旋回ロック用バネ材50」を備えるものである点。

<相違点4>
本願発明1は、「前記フォーク」は「前記円形取付板の下側」に軸支されるのに対して、引用発明は、「支持ヨーク3が、旋回ロック板30の上方において固定プレート2aを貫通するステム20に旋回自在に取り付けられ」るものである点。

(2)判断
事案に鑑み上記相違点1について検討する。

ア 相違点1に係る本願発明1の構成A?Cについて
(ア)引用発明について
a 相違点1に係る本願発明1の構成Aに関して
引用発明の「パッド90」は「車輪5のトレッド面5aを押圧」するものであるところ、上記(1)の対比を踏まえると本願発明1の「前記車輪の外周面に押圧可能な外周制動部」に対応する構成といえる。
また、引用発明の「車輪5の側面に形成された係止受部80b」に「没入する」「係合部80a」を有する「ブレーキ板70」は、上記(1)の対比を踏まえると本願発明1の「前記車輪のホイールに当接可能な側面制動部」に対応する構成といえる。
そして、引用発明において「パッド90」は「ロック部材60が下面に有する」ものであり、「ブレーキ板70」は「上部でロック部材60に連動可能に連結されている」ものであるところ、引用発明の「中途個所で支持ヨーク3に枢着P3されているロック部材60」は、本願発明1の「前記車輪の外周面に押圧可能な外周制動部と」、「前記車輪のホイールに当接可能な側面制動部と」を有し、「上記フォークに上下方向に回動自在に軸支される」ことと対応する構成を具備したものといえる。
しかしながら、引用発明の実施態様である実施例2について図示した上記「1(1)(1f)」の図4に「パッド90」及び「ブレーキ板70」が「ロック部材60」の片方の端部である「一方」に設けられていることが示されており、引用文献1の明細書に、「パッド90」及び「ブレーキ板70」をそれぞれ「ロック部材60」の「一方」及び「他方」に設けることは記載されていないから、引用発明の「ロック部材60」は、本願発明1の「外周制動部」に相当する「パッド90」を「一方に設けられ」るよう配置し、本願発明1の「側面制動部」に相当する「ブレーキ板70」を「他方に設けられ」るよう配置したものとはいえない。
そうすると、引用発明は、相違点1に係る本願発明1の構成Aに関し、「外周制動部」が「前記ブレーキ板の一方に設けられ」、「側面制動部」が「前記ブレーキ板の他方に設けられ」ることに相当する構成を具備したものとはいえない。

b 相違点1に係る本願発明1の構成B及びCに関して
構成Bに関し、引用発明の「該旋回ロック用バネ材50の上方の片51に設けた係合突部54」は、円弧部であるともいえない。
また、構成Cに関し、引用発明は「カム40の変位を昇降動に変換する連動軸100の下端103によって押し下げられたロック部材60の下端に形成されたパッド90が車輪5のトレッド面5aを押圧し、車輪5を制動することができ、前記ロック部材60が制動方向に変位するとブレーキ板70は第2スプリングS2の付勢力に抗して長孔70cの長さの範囲で下方に押し上げられ、ブレーキ板70の係合部80aが係合受部80bに没入する第2制動位置に変位」するものであるから、本願発明1の「外周制動部」に対応する「パッド90」の下降に対して本願発明1の「側面制動部」に対応する「ブレーキ板70」の「係合部80a」が「車輪5の側面に形成された」「係合受部80bに没入する」動作は、本願発明1の「相対的に上昇させる」ことに相当するものとはいえない。
さらに、引用発明は「係合突部54が前記旋回ロック板30の受部31に突入し、旋回ロック板30と支持ヨーク3の動きが規制され、旋回をロックする」ものであるところ、「係合突部54」が「前記旋回ロック板30の受部31」に対して外周面に押し付けられることが特定されたものでもない。

そうすると、相違点1に係る本願発明1の構成Bに関し、引用発明は、「旋回規制用部位」を「旋回規制用円弧部」とすることに相当する構成を具備していない。
また、相違点1に係る本願発明1の構成Cに関し、「前記外周制動部の下降に対して前記側面制動部を相対的に上昇させて前記ホイールに当接させ、さらに、前記旋回規制部材の前記旋回規制用円弧部が前記円形取付板の外周面に押し付けられる」ことに相当する構成を具備したものとはいえない。

(イ)引用文献1に記載された技術的事項について
a 引用文献1に記載された実施例1に係る技術的事項について
(a)引用文献1には、上記「1(1)」の摘記(1c)に示すとおり、実施例1の「二重ロック式キャスタ1」について、以下の技術的事項が記載されている(以下「引1技術事項1」ということもある。)。
「二重ロック式キャスタ1において、
支持ヨーク3の後方寄りに第1ブレーキとなるブレーキシュー6の後部6bが枢着P1され、
ブレーキシュー6の底面には、制動時に車輪5のトレッド面5aにくい込む爪部9が形成され、
連動片11は、ブレーキシュー6に固着されており、ブレーキシュー6と共に支持ヨーク3に枢着P1され、
前記支持ヨーク3の側面の内側には、支持ヨーク3に沿って摺動自在に第2ブレーキとなるブレーキ板7が取り付けられ、
前記カム4の変位により、リンク部材10を介して、前記ブレーキシュー6を、爪部9が車輪5のトレッド面5aにくい込む第1制動位置と、トレッド面5aから離間する第1制動解除位置とに変位することができ、
前記ブレーキシュー6が制動方向に変位すると、連動片11が後方へ変位して下端が上昇してブレーキ板7から離れる方向へ変位し、
ブレーキ板7は第2スプリングS2の付勢力で上向きに付勢されて長孔7cの長さの範囲で上方に押し上げられ、ブレーキ板7の係合部8aが車輪5に形成されている係合受部8bに没入する第2制動位置に変位する、技術。」

(b)相違点1に係る本願発明1の構成Aに関して
引1技術事項1の「制動時に車輪5のトレッド面5aにくい込む爪部9」は、本願発明1の「前記車輪の外周面に押圧可能な外周制動部」と対応する構成といえる。
また、引1技術事項1の「ブレーキ板7」の「係合部8a」は、「車輪5に形成されている係合受部8bに没入する」ものであるから、相違点1に係る本願発明1の構成Aの「前記車輪のホイールに当接可能な側面制動部」と対応する構成といえる。
そして、引1技術事項1の「支持ヨーク3」は本願発明1の「フォーク」に相当し、引1技術事項1の「支持ヨーク3の後方寄りに第1ブレーキとなるブレーキシュー6の後部6bが枢着P1され」、「制動時に車輪5のトレッド面5aにくい込む爪部9が形成され」る「ブレーキシュー6」は、相違点1に係る本願発明1の構成Aの「前記車輪の外周面に押圧可能な外周制動部」を有し、「上記フォークに上下方向に回動自在に軸支される」ことと対応する構成を具備したものといえる。

しかしながら、引1技術事項1の「爪部9」は、上記「1(1)(1f)」に示す引用文献1の図1から見ても明らかなように、「ブレーキシュー6」の中央付近に設けられ、「一方」や「他方」に設けられたものとはいえない。
また、引1技術事項1の「ブレーキ板7」の「係合部8a」は、「連動片11が後方へ変位して下端が上昇してブレーキ板7から離れる方向へ変位し」、その結果、「第2スプリングS2の付勢力で上向きに付勢されて長孔7cの長さの範囲で上方に押し上げられ」、「係合部8aが車輪5に形成されている係合受部8bに没入する第2制動位置に変位する」ものであって、そもそも「ブレーキシュー6」に設けられたものではない。
したがって、引1技術事項1は、相違点1に係る本願発明1の構成Aに関し、「外周制動部」が「前記ブレーキ板の一方に設けられ」、「側面制動部」が「前記ブレーキ板の他方に設けられ」ることに相当する構成を具備したものとはいえず、引1技術事項1の「爪部9」が本願発明1の「外周制動部」に相当するとまではいえず、引1技術事項1の「ブレーキ板7」の「係合部8a」が本願発明1の「側面制動部」に相当するとまではいえない。

(c)相違点1に係る本願発明1の構成B及びCに関して
引1技術事項1は、相違点1に係る本願発明1の構成Bに相当する構成を具備したものでなく、付随して、相違点1に係る本願発明1の構成Cに関し、「前記旋回規制部材の前記旋回規制用円弧部が前記円形取付板の外周面に押し付けられる」ことに相当する構成を具備したものともいえない。

また、構成Cに関し、引1技術事項1の上記「1(1)(1f)」に示す引用文献1の図1及び図2から、引1技術事項1の「前記ブレーキシュー6を、爪部9が車輪5のトレッド面5aにくい込む第1制動位置」「に変位すること」は、「爪部9」が下降することということができ、引1技術事項1の「ブレーキシュー6が制動方向に変位する」ことで「爪部9」が下降するといえるところ、引1技術事項1の「前記ブレーキシュー6が制動方向に変位すると、連動片11が後方へ変位して下端が上昇してブレーキ板7から離れる方向へ変位し、ブレーキ板7は第2スプリングS2の付勢力で上向きに付勢されて長孔7cの長さの範囲で上方に押し上げられ、ブレーキ板7の係合部8aが車輪5に形成されている係合受部8bに没入する第2制動位置に変位する」ことは、すなわち、「爪部9」が下降することに対して、「ブレーキ板7の係合部8aが車輪5に形成されている係合受部8bに没入する」ことといえる。また、引1技術事項1の「車輪5に形成されている係合受部8b」は本願発明1の「ホイール」に相当する。
しかしながら、上記(b)に示すとおり、引1技術事項1の「爪部9」が本願発明1の「外周制動部」に相当するとまではいえず、引1技術事項1の「ブレーキ板7」の「係合部8a」は本願発明1の「側面制動部」に相当するとまではいえないから、引1技術事項1は、相違点1に係る本願発明1の構成Cの「前記外周制動部の下降に対して前記側面制動部を相対的に上昇させて前記ホイールに当接させ」ることに相当する構成を具備したものとはいえない。

(d)引用発明への引1技術事項1の適用について
上記(b)及び(c)に示すとおり、本願発明1の「側面制動部」に相当する引1技術事項1の「ブレーキ板7」は、「連動片11が後方へ変位して下端が上昇してブレーキ板7から離れる方向へ変位し」、その結果、「第2スプリングS2の付勢力で上向きに付勢されて長孔7cの長さの範囲で上方に押し上げられ」、「係合部8aが車輪5に形成されている係合受部8bに没入する第2制動位置に変位する」ものであって、そもそも「ブレーキシュー6」に設けられたものではない。
そうすると、本願発明1の「側面制動部」に相当する構成が設けられていない引1技術事項1の「ブレーキシュー6」は、本願発明1の「側面制動部」に相当する「ブレーキ板70」が「上部でロック部材60に連動可能に連結されている」ものである引用発明の「ロック部材60」と、本願発明1の「側面制動部」に相当する構成の配置において異なり、その配置に付随して両者の本願発明1の「側面制動部」及び「外周制動部」に相当する構成それぞれの移動方向や機構メカニズムが大きく異なるから、引用発明への引1技術事項1の適用については動機付けがない。

また、引用発明、引1技術事項1の両者ともに、相違点1に係る本願発明1の構成Aに関し、「外周制動部」が「前記ブレーキ板の一方に設けられ」、「側面制動部」が「前記ブレーキ板の他方に設けられ」ることに相当する構成を具備しておらず、相違点1に係る本願発明1の構成Bに関し、「旋回規制用部位」を「旋回規制用円弧部」とすることに相当する構成を具備しておらず、相違点1に係る本願発明1の構成Cに関し、「前記外周制動部の下降に対して前記側面制動部を相対的に上昇させて前記ホイールに当接させ、さらに、前記旋回規制部材の前記旋回規制用円弧部が前記円形取付板の外周面に押し付けられる」ことに相当する構成を具備したものとはいえないから、仮に引用発明へ引1技術事項1を適用したとしても、上記相違点1に係る本願発明1の構成に至らない。

b 引用文献1に記載された他の技術的事項について
(a-1)引用文献1には、上記「1(1)」の摘記(1e)に示すとおり、実施例5の「二重ロック式キャスタ1」について、以下の技術的事項が記載されている(以下「引1技術事項2」ということもある。)。
「二重ロック式キャスタ1において、
連動軸100の下降によりロック方向に付勢されたロック部材600を支持ヨークとの枢着点P30を支点にして押し下げ、
上記ロック部材600は前記連動軸100の下降で時計方向に枢動し、ロック部材600に固着された第2旋回ロック片501の係合突部541が、側方から旋回ロック板30の受部31に突入し、
前記ロック部材600の旋回ロック方向の枢動により旋回ロック片50’が押し上げられ、これと連動して連動部材610が枢着点P50を支点にして付勢力に抗して枢動し前記係合突部541の受部31への突入に次いで係合突部54’を下方から旋回ロック板30の受部31に突入させるものであって、
前記ロック部材600の変位に連動するブレーキ板700が設けられており、その下端には係合部80a’が設けられ、
車輪5には、その内周に形成された環状の係合受部80b’が形成されており、ロック部材600のアーム620を介してロック部材の枢動に連動してブレーキ板700が下方に摺動し、係合部80a’が係合受部80b’に突入して制動ロックする、技術。」

(a-2)相違点1に係る本願発明1の構成Aに関して
引1技術事項2の「車輪5」「の内周に形成された環状の係合受部80b’に突入する」「係合部80a’」が設けられた「ブレーキ板700」は、相違点1に係る本願発明1の構成Aの「前記車輪のホイールに当接可能な側面制動部」に相当する構成といえる。
そして、引1技術事項2の「支持ヨーク」は本願発明1の「フォーク」に相当し、引1技術事項2の「支持ヨークとの枢着点P30」を有し、「車輪5」「の内周に形成された環状の係合受部80b’に突入する」「係合部80a’」が設けられた「ロック部材600」は、相違点1に係る本願発明1の構成Aの「前記車輪のホイールに当接可能な側面制動部」を有し、「上記フォークに上下方向に回動自在に軸支される」ことと共通する構成を具備したものといえる。

しかしながら、引1技術事項2の実施態様である実施例5について図示した図13において、「ロック部材600」の端部である「一方」に本願発明1の「側面制動部」に相当する引1技術事項2の「ブレーキ板700」が設けられることは示されているといえるものの、引1技術事項2の「ロック部材600」は、相違点1に係る本願発明1の構成Aの「外周制動部」に相当する構成を有するものではないから、引1技術事項2は、相違点1に係る本願発明1の構成Aに関し、「外周制動部」が「前記ブレーキ板の一方に設けられ」かつ「側面制動部」が「前記ブレーキ板の他方に設けられ」ることに相当する構成を具備したものとはいえない。

(a-3)相違点1に係る本願発明1の構成B及びCに相当する構成に関して
引1技術事項2の「旋回ロック板30」は本願発明1の「円形取付板」に相当し、引1技術事項2の「係合突部541」は「前記連動軸100の下降で時計方向に枢動」する「ロック部材600」「に固着された第2旋回ロック片501」のものであって「側方から旋回ロック板30の受部31に突入」するから、引1技術事項2と、相違点1に係る本願発明1の構成Cとは、「前記旋回規制部材の前記旋回規制用部材が前記円形取付板の外周面に押し付けられる」ことにおいて共通するといえる。
しかしながら、引1技術事項2の「係合突部541」は円弧部であることの特定がないから、引1技術事項2は相違点1に係る本願発明1の構成Bの「旋回規制用部位」が「旋回規制用円弧部」であることに相当する構成を具備したものとはいえず、付随して、相違点1に係る本願発明1の構成Cの「前記円形取付板の外周面に押し付けられる」部材が「前記旋回規制部材の前記旋回規制用円弧部」であることに相当する構成を具備したものとまではいえない。

また、引1技術事項2は相違点1に係る本願発明1の構成Aの「外周制動部」に相当する構成を有するものではなく、「ブレーキ板700が下方に摺動し、係合部80a’が係合受部80b’に突入して制動ロックする」ものであるから、引1技術事項2は、相違点1に係る本願発明1の構成Cの「前記外周制動部の下降に対して前記側面制動部を相対的に上昇させて前記ホイールに当接させ」ることに相当する構成を具備したものともいえない。

(a-4)引用発明への引1記載事項2の適用について
本願発明1の「外周制動部」に相当する構成が設けられていない引1技術事項2の「ブレーキ板700」は、本願発明1の「外周制動部」に相当する「パッド90」を「下面に有する」ものである引用発明の「ロック部材60」と、本願発明1の「外周制動部」に相当する構成の有無において異なり、その配置に付随して「側面制動部」を含む各構成の移動方向や機構メカニズムが大きく異なるから、引用発明への引1記載事項2の適用については動機付けがない。

また、引用発明、引1技術事項2の両者ともに、相違点1に係る本願発明1の構成Aに関し、「外周制動部」が「前記ブレーキ板の一方に設けられ」かつ「側面制動部」が「前記ブレーキ板の他方に設けられ」ることに相当する構成を具備しておらず、相違点1に係る本願発明1の構成Bの「旋回規制用部位」が「旋回規制用円弧部」であることに相当する構成を具備したものともいえず、相違点1に係る本願発明1の構成Cの「前記外周制動部の下降に対して前記側面制動部を相対的に上昇させて前記ホイールに当接させ」ることに相当する構成、及び、「前記円形取付板の外周面に押し付けられる」部材が「前記旋回規制部材の前記旋回規制用円弧部」であることに相当する構成を具備したものともいえないから、仮に引用発明へ引1技術事項2を適用したとしても、上記相違点1に係る本願発明1の構成に至らない。

(b)そして、相違点1に係る本願発明1の構成A?Cに相当する構成を具備させることは、引用文献1の上記引1技術事項1?2に係る記載を除いた明細書及び図面のいずれにおいても記載も示唆もない。

(ウ)引用文献2及び3に記載の技術的事項について
a 引用文献2及び3は、原査定において、「ブレーキ板の上部でフォークに上下方向に回動自在に軸支される操作手段と、操作手段の基端に設けたカム部とを備え、操作手段を操作してカム部を回転させて、回転するカム部により外周制動部を押し下げて車輪の外周面に押圧させる」こと、及び、「回転するカム部により、旋回規制部材を円形取付板に押し付ける」ことが周知技術であることを示すために引用されたものである。

b 上記「1(2)(2a)」に示す摘記事項から、引用文献2には「キャスタ」に関し、「支持ヨーク3の側壁部30の上方には制動解除方向に付勢されたバネ材からなる制動板12が中途位置でピンP1により枢支され、制動板12は一端に旋回ロック用の爪部13が形成されており、他端には車輪のトラッド面に押圧されるシュー部14が形成され、支持ヨーク3の頂壁部3aには操作レバー15が枢着され、操作レバー15を押し込むと、変位したカム面で上記シュー部14側の制動板12を押し下げてシュー部14を車輪に強く押し付けて車輪の回転を制動し、上記制動板12の爪部13側は押し上げられて取付軸2の小径軸部2aの下端に固着された皿状部材2bの下端面に環状に形成された凹凸状の歯部に係止し、支持ヨーク3側が取付軸2側に拘束されるので、旋回がロックされる」技術が記載されているといえる(以下「引2記載技術」ということもある。)。

引2記載技術の「車輪のトラッド面に押圧されるシュー部14」は本願発明1の「前記車輪の外周面に押圧可能な外周制動部」に相当し、「他端には車輪のトラッド面に押圧されるシュー部14が形成され」、「側壁部30の上方には制動解除方向に付勢されたバネ材からなる制動板12が中途位置でピンP1により枢支され」る「制動板12」を具備する引2記載技術は、相違点1に係る本願発明1の構成Aの「前記ブレーキ板の一方に設けられ、前記車輪の外周面に押圧可能な外周制動部」に相当する構成を備える一方、相違点1に係る本願発明1の構成Aの「前記ブレーキ板の他方に設けられ、前記車輪のホイールに当接可能な側面制動部」を備えるものではなく、該「側面制動部」を備えていないから、相違点1に係る本願発明1の構成Cの「前記外周制動部の下降に対して前記側面制動部を相対的に上昇させて前記ホイールに当接させ」ることに相当する構成も具備したものでない。

また、引2記載技術の「取付軸2の小径軸部2aの下端に固着された皿状部材2b」は本願発明1の「縦軸の下端に固定される円形取付板」に相当し、「支持ヨーク3側が取付軸2側に拘束されるので、旋回がロックされる」よう構成するものである引2記載技術の「皿状部材2bの下端面に環状に形成された凹凸状の歯部に係止」する「上記制動板12の爪部13」と、本願発明1の「旋回規制用円弧部」とは、「旋回規制用部材」であることにおいて共通する。
しかしながら、引2記載技術の「爪部13」は円弧部であることの特定がないから、引2記載技術は相違点1に係る本願発明1の構成Bに相当する構成を具備したものでなく、付随して、引2記載技術は相違点1に係る本願発明1の構成Cに関し、「円形取付板の外周面に押し付けられる」部材が「前記旋回規制部材の前記旋回規制用円弧部」であることに相当する構成を具備したものともいえない。

そして、相違点1に係る本願発明1の構成A?Cに係る構成を具備させることは引用文献2の明細書及び図面のいずれにも記載も示唆もない。

c 上記「1(3)(3b)」の図1には、「ストッパースプリング5」の端部である一方に「ストッパーレバー側部5c」が設けられることが示されることと、上記「1(3)(3a)」に示す摘記事項から、引用文献3には「キャスターA」に関し、「脚体2の脚側板部2bにスプリング支部5aにより枢支されているストッパースプリング5が回動自在に設けられ、当該ストッパースプリング5における取着部側部5bが、前記した取着部Bの支承体1における図示例では下部転動用受部1Bの凹溝1eに対して係止され、この結果脚体2は旋回不能のロック状態になるか、同上ストッパースプリング5の一方に設けられるストッパーレバー側部5cが車輪3に押当することで、当該車輪3が回転不能となるかの一方または双方のロック状態が得られるよう構成される、技術。」が記載されているといえる(以下「引3記載技術」ということもある。)。

引3記載技術の「車輪3に押当する」「ストッパーレバー側部5c」は本願発明1の「前記車輪の外周面に押圧可能な外周制動部」に相当し、「脚体2の脚側板部2bにスプリング支部5aにより枢支されている」「一方に設けられるストッパーレバー側部5c」を有する「ストッパースプリング5」を具備する引3記載技術は、相違点1に係る本願発明1の構成Aの「前記ブレーキ板の一方に設けられ、前記車輪の外周面に押圧可能な外周制動部」に相当する構成を備える一方、相違点1に係る本願発明1の構成Aの「前記ブレーキ板の他方に設けられ、前記車輪のホイールに当接可能な側面制動部」を備えるものではなく、該「側面制動部」を備えていないから、相違点1に係る本願発明1の構成Cの「前記外周制動部の下降に対して前記側面制動部を相対的に上昇させて前記ホイールに当接させ」ることに相当する構成も具備したものでない。

また、「脚体2は旋回不能のロック状態になる」よう構成するものである引3記載技術の「ストッパースプリング5における取着部側部5b」と、本願発明1の「旋回規制用円弧部」とは、「旋回規制用部材」であることにおいて共通する。
しかしながら、引3記載技術の「取着部側部5b」は円弧部であることの特定がないから、引3記載技術は相違点1に係る本願発明1の構成Bに相当する構成を具備したものでなく、「取着部側部5b」について「下部転動用受部1Bの凹溝1e」の外周面に押し付けることの特定もないから、引3記載技術は相違点1に係る本願発明1の構成Cに関し、「円形取付板の外周面に押し付けられる」部材が「前記旋回規制部材の前記旋回規制用円弧部」であることに相当する構成を具備したものともいえない。

そして、相違点1に係る本願発明1の構成A?Cに係る構成を具備させることは引用文献3の明細書及び図面のいずれにも記載も示唆もない。

(エ)まとめ
以上のとおり、相違点1に係る本願発明1の構成A?Cに係る構成を具備させることは、上記引用文献1?3に記載も示唆もないから、引用発明に引用文献1?3に記載の技術的事項を適用したとしても相違点1に係る本願発明1の構成A?Cに至らない。

イ 小括
上記アに示すとおり、相違点1に係る本願発明1の構成A?Cに係る構成を具備させることは、上記引用文献1?3に記載も示唆もないから、引用発明に引用文献1?3に記載の技術的事項を適用したとしても相違点1に係る本願発明1の構成A?Cに至らない。
したがって、相違点2?4について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明及び引用文献1?3に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に想到し得たものということはできないから、本願発明1は、引用文献1?3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。


第5 むすび
以上のとおりであるから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-04-07 
出願番号 特願2016-123905(P2016-123905)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B60B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 高島 壮基  
特許庁審判長 氏原 康宏
特許庁審判官 岡▲さき▼ 潤
島田 信一
発明の名称 キャスター  
代理人 牛木 護  

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