• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N
管理番号 1361341
審判番号 不服2018-9972  
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-07-20 
確定日 2020-04-08 
事件の表示 特願2017-541007「画像センサ及び画素情報出力方法、位相差オートフォーカス方法、結像装置及び端末」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 6月22日国際公開、WO2017/101572、平成30年 3月29日国内公表、特表2018-509061〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2016年10月10日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2015年12月18日、中国)を国際出願日とする出願であって、平成29年8月3日付けで手続補正がされ、平成30年1月25日付けで拒絶理由が通知され、平成30年3月16日付けで手続補正がされ、平成30年5月14日付けで拒絶査定がされ、これを不服として平成30年7月20日に本件審判請求がされ、同時に手続補正がされ、その後、当審により、令和1年7月16日付けで拒絶理由が通知され、令和1年10月7日付けで手続補正がされたものである。

第2 本願発明
本願発明は、令和1年10月7日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項6に係る発明(以下、「本願発明」という)は次のとおりである。なお、本願発明の各構成について符号を付し、以下、構成A、構成B1?構成B7、構成C1?構成C、構成Dと称する。

[本願発明]
(A)画像センサの結像方法であって、
(B1)前記画像センサは、感光ユニットアレイと、フィルタユニットアレイと、マイクロレンズアレイと、を含み、
(B2)前記フィルタユニットアレイは、前記感光ユニットアレイと前記マイクロレンズアレイとの間に設けられ、
(B3)前記感光ユニットアレイは、複数の感光画素を含み、
(B4)前記フィルタユニットアレイは、複数のフィルタユニットを含み、
(B5)前記マイクロレンズアレイは、複数のマイクロレンズを含み、
(B6)各マイクロレンズは一つのフィルタユニット及び感光ユニットをカバーし、
(B7)各感光ユニットは2*2個の感光画素を含み、
(A)前記結像方法は、
(C1)前記感光ユニットアレイの出力を読み出し、
(C2)前記出力モードが結像の敏感度及び信号雑音比を高めるための第1出力モードである場合、同一の感光ユニットにおける複数の感光画素の画素情報を合併して出力するように制御し、または、
(C3)前記出力モードが位相差オートフォーカス及び被写界深度情報をテストするための第2出力モードである場合、同一の前記感光ユニットにおける複数の感光画素の画素情報をそれぞれ個別に出力するステップと、
(D)合併して出力した前記感光ユニットの画素値を取得し、合併画像を生成するステップと、
(A)を含むことを特徴とする画像センサの結像方法。

第3 当審により通知した拒絶理由の概要
当審が通知した拒絶理由のうちの理由2の概要は、次のとおりのものである。

「この出願の請求項1-10に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


1.特開2014-157338号公報」

第4 引用文献、引用発明
1.引用文献1の記載事項
当審により通知した拒絶理由で引用された特開2014-157338号公報(以下、「引用文献1」という)には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線は、当審により付与したものである。

「【0001】
本発明は、CMOSイメージセンサー等の撮像素子を用いた撮像装置に適用可能な測距装置に関し、特に、位相差方式による測距機能を備えた測距装置および撮像装置に関する。」

「【0004】
以下に、情報取得と画像取得の双方に使用することのできる複合画素構造の撮像素子の使用例を挙げる。
【0005】
図22は、単位セル内を瞳分割した画素、いわゆる、複合画素により構成された撮像素子の概念図(上面図)である。同図において、1は撮像素子の単位セルを示しており、1a乃至1dは、各々、光電変換素子を含んだ周知の撮像画素構造を備えた画素である。各画素は各々個別に出力できる構成である。また、1a乃至1dの上面には、周知の同色のカラーフィルタが配設されている。各画素2は周知のマイクロレンズである。
【0006】
上述した構成の撮像素子は、情報取得(測距動作)時に、各単位セル内を分割した状態の各々もしくは複数画素の出力を列方向で(もしくは行方向で)測定・比較し、相関演算結果により位相差を求める、周知の位相差測距を行う。一方、画像取得時には、単位セル毎(本例ではマイクロレンズ下の同色画素4個)の出力を使用し、画像を作成する。」

「【実施例1】
【0020】
図1は、本発明の第1の実施例に係わる測距装置を有する電子カメラ等の撮像装置の構成を示すブロック図である。
【0021】
図において、110は撮像素子114上に光学像を形成する光学系を構成するレンズ、111はレンズ110の制御を行なうレンズ制御部である。112はCMOSセンサー等であるところの撮像素子114の露光量を制御するシャッター(SH)である。114は光学像を電気信号に変換するCMOSセンサーなどの撮像素子である。なお、撮像素子114は、所定数の複数の画素を1マイクロレンズ単位の単位画素セル内に分離して配置した構成を有し、単位画素セルから、2画素毎に瞳分割された像の異なる画像信号を出力することが可能に構成されている。これにより、測距動作用の像分離された出力(像分離データ)を得ることができるなお、詳細は、図2乃至図4を用いて後述する。
【0022】
116は、撮像素子114から出力されるアナログ信号に対して、オプティカルブラックのレベルを基準レベルに合わせる為のOBクランプ等の処理を行う出力信号処理部である。また、本出力信号処理部は、デジタル信号に変換するアナログ・フロント・エンド(AFE)や、各画素のデジタル出力を受けて各種補正処理や並び替え等をデジタル処理するデジタルフロントエンド(DFE)を含む。
【0023】
117は、制御信号を供給するタイミング発生回路(TG)である。118は後段の測距演算、画像処理を行なう為に、出力信号処理部116の出力を一時保存する為のメモリである。
【0024】
119は、出力信号処理部116でデジタル処理された撮像素子114からの出力信号に基づいて測距処理を行なう為の測距演算部である。本測距演算部119は、撮像素子114が像分離して出力した方向に対してのデフォーカス量(像ズレ量)から被写体の距離を求め、後述するシステム制御部150へ情報を転送する。測距演算を行なう為の画素毎の垂直方向もしくは水平方向の合成処理も測距演算部119で行う。測距演算部119とシステム制御部150は、本実施例に係る測距装置を構成する。
【0025】
120は画像処理部であり、出力信号処理部116を介してデジタル処理された画像出力からのデータに対して、所定の色変換等の画像処理を行う。なお、画像処理部120は、撮像素子114の単位画素セル内の像分離された各画素の出力をすべて合成することで単位画素セル毎日一つ(当審注;“単位画素セル毎に一つ”の誤記と認められる。以下、修正して記載する。)の画素信号を出力して画像を生成する処理も行う。
【0026】
122はメモリ制御部であり、画像処理部120が生成した画像データを後述のメモリ130に転送する等の制御を行う。128はTFT方式のLCDからなる画像表示部である。
【0027】
130は撮影された静止画像や動画像を格納するためのメモリである。150は画像処理装置全体を制御するシステム制御部であり、周知のCPUなどを内蔵して、図示しないメモリに記憶されている制御プログラムを実行することで撮像装置の各部の動作を制御する。例えば、本発明に係る測距装置の動作に係る制御および光学系および撮像装置の駆動を制御する撮像制御を行う。なお、実際の撮像装置には測光手段、電源制御手段、スイッチ操作部等も含まれるものが一般的であるが、本発明に係る主要な要素ではないため、ここでの説明は割愛する。
【0028】
図2乃至図3に、本実施例に係る撮像装置が有する撮像素子114における単位画素セルの概略構造および単位画素セルの回路構成を示す。
【0029】
図2は、本実施例に係る撮像装置で使用される撮像素子の単位画素セルの概略図(上面図)である。図2(a)において、200は瞳分割手段としての配列マイクロレンズであり、このマイクロレンズ200の下に各々フォトダイオード(光電変換素子)を備えた画素201乃至204(本実施例では4分割画素)が配置されている。
【0030】
画素201乃至204は、適宜適切な駆動方法を用いることで、各画素の信号を合成された信号として出力することが可能であり、図2(b)は画素201および202と、画素203と204の出力を各々合成して出力することを示す概念図である。このような組み合わせによる出力を行うことで、単位画素セル内の信号から、左右(水平方向)に像分割された2つの信号を取得することができる。
【0031】
同様に、図2(c)は、画素201および203と、画素202と204の出力を各々合成して出力することを示した概念図である。図示するような組み合わせによる出力を行うことで、単位画素セル内の信号から、上下(垂直方向)に像分割された2つの信号を取得することができる。
【0032】
また、図2(d)は、画素201乃至204の出力をすべて合成して出力することを示した概念図であり、このような組み合わせによる出力を行うことで、単位画素セル内の信号がすべて加算された1つの画素の信号を取得することができる。図2(d)の合成処理は、図2(a)の各画素の個別出力の4画素を加算する処理としても、図2(b)または図2(c)の像分割した2つの出力をさらに加算して合成信号を生成する処理であってもよい。」

「【0049】
なお、上述したように、本実施例に係る撮像装置で使用する撮像素子は、単位画素セル毎に水平方向に2つ・垂直方向に2つの画素(画素201乃至204)を配する構成になっている。本実施例では、4つの光電変換部に蓄積された電荷は、それぞれ読み出されて、後段の出力信号処理部116を介してメモリ118に保存される。測距演算部119は、メモリ118に保存された出力を使用して測距演算を行うが、その際、必要な画素加算処理を行なった上で、測距演算を行う。
【0050】
また、画像処理回路120は、メモリ118に保存された出力を使用して、単位画素セルの4つの画素の出力を合成処理して得られる出力を画素信号とする画像を生成する処理を行う。」

「【0053】
図8は、本実施例に係る撮像装置における測距動作のフローチャートを示す図である。
本動作は不図示の撮影開始スイッチ・電源スイッチ等により、動画等の連続する撮像動作が指示されることで開始される。なお、実際には図6で説明した撮像動作は繰り返し行なわれ、メモリ118には順次、撮影されたデータが送り出さている状況で本動作が開始されるが、途中での割り込みや並行処理等がある場合の動作に関しては、説明が煩雑になる為割愛する。また、本動作と並行して画像処理回路120は、画像生成のための全画素加算処理等を行なっているが、本発明の測距動作とは直接関係がない為、ここでの詳細な説明は割愛する。
【0054】
ステップS800では、システム制御部150が不図示のカウンタFCをリセットし、撮像動作の1フレーム目か否かを判断する。ステップS801では、測距演算部119がカウンタFCのカウント値を確認し、偶数だった場合はステップS802へ、奇数だった場合はステップS803へ移行する。
【0055】
ステップS802では、測距演算部119が、メモリ118に記憶されている各画素データの中で、単位画素セル毎に、垂直方向に並んでいる画素(画素201および202、画素203および204)の出力を加算する。これにより、測距用のA像(画素201+202)、B像(画素203+204)としての演算データを取得する(図2(b)を参照)。
【0056】
ステップS803では、メモリ118に記憶されている各画素データの中で、単位画素毎に、水平方向に並んでいる画素(画素201および203、画素202および204)の出力を加算する。これにより、測距用のA像(画素201+203)、B像(画素202+204)としての演算データを取得する(図2(c)を参照)。
【0057】
ステップS804では、ステップS802またはステップS803で取得した演算データ(A像・B像)を使用して、相関演算等による周知の測距演算を行う。測距演算の詳細例については、図9および図10を用いて後述する。
【0058】
ステップS805では、ステップS804で求めた測距の演算結果をシステム制御部150へ転送する。システム制御部150は、測距演算結果に基づいて、レンズ制御部111を介してレンズ110のフォーカス駆動等を行なってピント調節を行う。このように、測距演算結果はシステムのフィードバック作業にも用いられる。なお、フォーカス駆動等に関して、ステップS802の垂直方向加算(左右像分離)と、ステップS802の水平方向加算(上下像分離)のデータの組み合わせで目標フォーカス量を決定し、レンズ駆動を行うことが理想的である。
【0059】
ステップS806では、システム制御部150は、1フレームの測距データ転送を終了した時点で、不図示の撮影開始スイッチ・電源スイッチ等により、撮影動作の終了が指示されたか否かを判定する。その結果、終了操作が行なわれていなければステップS807へ移行し、ステップS800でカウントを開始した不図示のカウンタFCのカウントアップ(FC=FC+1)を行ない、ステップS801へ戻る。なお、ステップS806にて、終了操作が行なわれていれば、本測距動作シーケンスを終了する。」

「【0073】
以上、説明したとおり、本実施例では、垂直方向の画素加算に基づく測距動作(水平像分離測距)と、水平方向の画素加算に基づく測距動作(垂直像分離測距)を、撮影フレームに応じて(具体的には、交互に)行なっている。これにより、従来の測距動作が不得手とする被写体が存在している場合でも、より確度の高い測距を行うことができる。
【0074】
なお、本実施例では、フレーム毎に垂直加算と水平加算とを切り換えているが、これに限るものではなく、例えば、60フレームに1回だけ水平加算を行う等の少なくとも2以上の複数フレーム周期で適宜切り換える構成にしても何ら問題ない。」

2.引用発明
(1)引用文献1には、【0020】の記載によれば、「電子カメラ等の撮像装置」が記載されており、この撮像装置は、【0021】?【0027】の記載によれば、
「撮像素子114上に光学像を形成する光学系を構成するレンズ110」、
「レンズ110の制御を行なうレンズ制御部111」、
「撮像素子114の露光量を制御するシャッター(SH)112」、
「光学像を電気信号に変換するCMOSセンサーなどの撮像素子114」、
「撮像素子114から出力されるアナログ信号に対して、オプティカルブラックのレベルを基準レベルに合わせる為のOBクランプ等の処理を行う出力信号処理部116」、
「後段の測距演算、画像処理を行なう為に、出力信号処理部116の出力を一時保存する為のメモリ118」、
「出力信号処理部116でデジタル処理された撮像素子114からの出力信号に基づいて測距処理を行なう為の測距演算部119」、
「出力信号処理部116を介してデジタル処理された画像出力からのデータに対して、所定の色変換等の画像処理を行い、撮像素子114の単位画素セル内の像分離された各画素の出力をすべて合成することで単位画素セル毎に一つの画素信号を出力して画像を生成する処理も行う画像処理部120」、
「画像処理部120が生成した画像データをメモリ130に転送する制御を行うメモリ制御部122」、
「撮影された静止画像や動画像を格納するためのメモリ130」、
「制御プログラムを実行することで撮像装置の各部の動作を制御するシステム制御部150」
を有するものである。

(2)引用文献1に記載された撮像装置は、【0029】の記載によれば、「撮像装置で使用される撮像素子の単位画素セルにおいて、瞳分割手段としての配列マイクロレンズ200の下に各々光電変換素子を備えた4分割画素201乃至204が配置されて」いるものである。
また、引用文献1の上記撮像装置の前提となる背景技術である【0005】の記載によれば、画素1a乃至1dの上面には、同色のカラーフィルタが配設されているから、同様の構成と考えられる上記単位画素セルにおける4分割画素201乃至204の上面にも、同色のカラーフィルタが配設されているといえる。
したがって、引用文献1には、「撮像装置で使用される撮像素子の単位画素セルにおいて、瞳分割手段としての配列マイクロレンズ200の下に各々光電変換素子を備えた4分割画素201乃至204が配置されており、4分割画素201乃至204の上面には、同色のカラーフィルタが配設されている」ことが記載されている。

(3)引用文献1に記載された撮像装置は、【0055】?【0057】の記載によれば、「測距演算部119は、相関演算等による周知の測距演算を行う」ものであり、また、背景技術の【0006】には、上記相関演算等による周知の測距演算として、「各単位セル内を分割した状態の各々もしくは複数画素の出力を列方向で(もしくは行方向で)測定・比較し、相関演算結果により位相差を求める位相差測距」が記載されている。
したがって、引用文献1には、「測距演算部119は、相関演算等による周知の測距演算を行い、相関演算等による周知の測距演算は、各単位セル内を分割した状態の各々もしくは複数画素の出力を列方向で(もしくは行方向で)測定・比較し、相関演算結果により位相差を求める位相差測距」であることが記載されている。

(4)引用文献1に記載された撮像装置は、【0058】の記載によれば、「求めた測距の演算結果をシステム制御部150へ転送し、システム制御部150は、測距演算結果に基づいて、レンズ制御部111を介してレンズ110のフォーカス駆動等を行なってピント調節を行う」ものである。

(5)引用文献1に記載された電子カメラ等の撮像装置は、【0024】、【0025】の記載によれば、撮像素子114の出力信号に対して、測距処理や画像処理などの処理を行なうものであって、この処理の内容は出力信号の処理方法として捉えることができるから、引用文献1には、「電子カメラ等の撮像装置の撮像素子114の出力信号の処理方法」が記載されているといえる。

(6)以上のことをまとめると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、引用発明の各構成について符号を付し、以下、構成ア?構成ソと称する。

[引用発明]
(ア)撮像素子114上に光学像を形成する光学系を構成するレンズ110、
(イ)レンズ110の制御を行なうレンズ制御部111、
(ウ)撮像素子114の露光量を制御するシャッター(SH)112、
(エ)光学像を電気信号に変換するCMOSセンサーなどの撮像素子114、
(オ)撮像素子114から出力されるアナログ信号に対して、オプティカルブラックのレベルを基準レベルに合わせる為のOBクランプ等の処理を行う出力信号処理部116、
(カ)後段の測距演算、画像処理を行なう為に、出力信号処理部116の出力を一時保存する為のメモリ118、
(キ)出力信号処理部116でデジタル処理された撮像素子114からの出力信号に基づいて測距処理を行なう為の測距演算部119、
(ク)出力信号処理部116を介してデジタル処理された画像出力からのデータに対して、所定の色変換等の画像処理を行い、撮像素子114の単位画素セル内の像分離された各画素の出力をすべて合成することで単位画素セル毎に一つの画素信号を出力して画像を生成する処理も行う画像処理部120、
(ケ)画像処理部120が生成した画像データをメモリ130に転送する制御を行うメモリ制御部122、
(コ)撮影された静止画像や動画像を格納するためのメモリ130、
(サ)制御プログラムを実行することで撮像装置の各部の動作を制御するシステム制御部150、
を有し、
(シ)撮像装置で使用される撮像素子の単位画素セルにおいて、瞳分割手段としての配列マイクロレンズ200の下に各々光電変換素子を備えた4分割画素201乃至204が配置されており、4分割画素201乃至204の上面には、同色のカラーフィルタが配設されており、
(ス)測距演算部119は、相関演算等による周知の測距演算を行い、相関演算等による周知の測距演算は、各単位セル内を分割した状態の各々もしくは複数画素の出力を列方向で(もしくは行方向で)測定・比較し、相関演算結果により位相差を求める位相差測距であり、
(セ)求めた測距の演算結果をシステム制御部150へ転送し、システム制御部150は、測距演算結果に基づいて、レンズ制御部111を介してレンズ110のフォーカス駆動等を行なってピント調節を行う、
(ソ)電子カメラ等の撮像装置の撮像素子114の出力信号の処理方法。

第5 本願発明と引用発明との対比
1.本願発明の構成Aについて
構成エの「撮像素子114」は、構成Aの「画像センサ」に相当する。
構成Aの「結像方法」は、本願明細書の【0074】?【0076】、【図11】の記載によれば、感光ユニットアレイの出力を読み出し、同一感光ユニットにおける感光画素の出力を加算して当該感光ユニットの画素値を取得し、合併画像を生成することを実施例とするものである。
構成ソの「撮像素子114の出力信号の処理方法」は、構成クによれば、撮像素子114の単位画素セル内の像分離された各画素の出力をすべて合成することで単位画素セル毎に一つの画素信号を出力して画像を生成する処理も行うものである。
したがって、構成ソの「撮像素子114の出力信号の処理方法」は、構成Aの「画像センサの結像方法」に相当する。
よって、本願発明と引用発明とは、構成Aの点で一致する。

2.本願発明の構成B1?B7について
構成エ、シの撮像素子は、換言すれば、単位画素セルにおいて、「光電変換素子を備えた4分割画素201乃至204」、「カラーフィルタ」、「マイクロレンズ200」が、同じ位置に下からこの順に配置されたものであり、それぞれ、構成B1?B7の「感光ユニット」、「フィルタユニット」、「マイクロレンズ」に相当する。
また、撮像素子は、複数の単位画素セルを含んでいるから、撮像素子は、複数の「光電変換素子を備えた4分割画素201乃至204」、複数の「カラーフィルタ」、複数の「マイクロレンズ200」を含んでいるといえる。
これらの「複数の、光電変換素子を備えた4分割画素201乃至204」、「複数のカラーフィルタ」、「複数のマイクロレンズ200」は、それぞれ、構成B1?B7の「感光ユニットアレイ」、「フィルタユニットアレイ」、「マイクロレンズアレイ」に相当するものである。
さらに、構成シの「4分割画素201乃至204」は、構成B7の「2*2個の感光画素」に相当する。
よって、本願発明と引用発明とは、構成B1?B7の点で一致する。

3.本願発明の構成C1について
構成オにおける、撮像素子114からアナログ信号が出力されることは、CMOSセンサーなどの撮像素子114の複数の4分割画素から信号が出力されることであるから、構成C1の「前記感光ユニットアレイの出力を読み出」すことに相当する。
よって、本願発明と引用発明とは、構成C1の点で一致する。

4.本願発明の構成C2、C3について
(1)構成クの「画像処理部120」の処理は、「撮像素子114の単位画素セル内の像分離された各画素の出力をすべて合成することで単位画素セル毎に一つの画素信号を出力」する処理を行うものであるから、構成C2の「同一の感光ユニットにおける複数の感光画素の画素情報を合併して出力するように制御」することに相当する。

(2)構成キ、スの「測距演算部119」の処理は、「撮像素子114からの出力信号に基づいて測距処理を行なう為の」ものであり、「各単位セル内を分割した状態の各々もしくは複数画素の出力を列方向で(もしくは行方向で)測定・比較し、相関演算結果により位相差を求める位相差測距」を行うものであり、そのような位相差測距を行うためには、撮像素子114からの複数画素の値を測距演算部119へそれぞれ個別に出力する必要があるのは明らかである。
したがって、引用発明における、位相差測距を行うために撮像素子114から複数画素の値を測距演算部119へ出力することは、構成C3の「同一の前記感光ユニットにおける複数の感光画素の画素情報をそれぞれ個別に出力する」ことに相当する。

(3)引用文献1の【0006】によれば、引用発明の電子カメラ等の撮像装置の撮像素子の出力信号の処理方法の背景技術として、測距動作時に位相差測距を行い、画像取得時には画像を作成する技術が記載されており、引用発明は、上記背景技術を踏襲したものであって、上記(2)の「測距演算部119」による位相差測距の処理は、背景技術でいう測距動作時に行われ、上記(1)の「画像処理部120」による合成出力する処理は、背景技術でいう画像取得時に行われるものであると理解できる。

(4)そうすると、引用発明は、測距動作時に、「測距演算部119」による位相差測距の処理を行い、画像処理時に、「画像処理部120」による画像を作成する処理を行うものであると認められる。
上記「測距動作時」は、構成C3の「前記出力モードが第2出力モードである場合、」に相当する。
また、上記「画像処理時」は、構成C2の「前記出力モードが第1出力モードである場合、」に相当する。

(5)上記(4)の「画像処理時」に行われる、構成クの「画像処理部120」の処理は、「撮像素子114の単位画素セル内の像分離された各画素の出力をすべて合成することで単位画素セル毎に一つの画素信号を出力して画像を生成する処理」であり、複数の画素の出力を合成して一つの画素信号として出力することにより、結像の敏感度及び信号雑音比を高めることとなるのは当業者によく知られた技術常識である(例えば、特許第5468177号公報には、次のように記載されている。なお、下線は当審により付したものである。
「【0072】
なお、デジタルカメラ10に、「通常撮影」モードと、「画素加算撮影」モードとが設けられていてもよい。「通常撮影」モードは、全画素の出力信号の個々から被写体の高精細画像を生成する。「画素加算撮影」モードは、全画素の出力信号を2画素加算或いは4画素加算など複数画素の信号を加算することで解像度を低解像度とする代わりに高感度撮影を行なう。どちらの撮影を行なうかは、タイミングジェネレータ32が固体撮像素子(CMOS)24に供給する駆動パルスの切り替えで行なう。4画素加算した結果、被写体画像の解像度は固体撮像素子の画素数に対して1/4となるが、露光量は4倍となる。このため、暗いシーンでも高S/Nの画像を得ることが可能となる。」)。
したがって、上記(4)の「画像処理時」は、構成C2の「前記出力モードが結像の敏感度及び信号雑音比を高めるための第1出力モードである場合、」に相当するといえる。

(6)上記(4)の「測距動作時」に行われる、構成キ、スの「測距演算部119」の処理は、相関演算結果により位相差を求める位相差測距であり、構成セによれば、測距演算結果に基づいて、レンズ110のフォーカス駆動等を行なってピント調節を行うための処理、すなわち、「位相差オートフォーカス」をするための処理といえる。
したがって、上記(4)の「測距動作時」と、構成C3の「前記出力モードが位相差オートフォーカス及び被写界深度情報をテストするための第2出力モードである場合、」とは、「前記出力モードが位相差オートフォーカスをするための第2出力モードである場合、」といえる点で共通する。
しかしながら、「第2出力モード」が、本願発明は、「位相差オートフォーカス及び被写界深度情報をテストするための」ものであるのに対し、引用発明は、「被写界深度情報をテストするための」ものではない点で、両者は相違する。

5.本願発明の構成Dについて
構成クの「画像処理部120」の処理は、「撮像素子114の単位画素セル内の像分離された各画素の出力をすべて合成することで単位画素セル毎に一つの画素信号を出力して画像を生成する処理も行う」ものであるから、構成Dの「合併して出力した前記感光ユニットの画素値を取得し、合併画像を生成するステップ」に相当する。
よって、本願発明と引用発明とは、構成Dの点で一致する。

6.一致点、相違点
以上によれば、本願発明と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

[一致点]
(A)画像センサの結像方法であって、
(B1)前記画像センサは、感光ユニットアレイと、フィルタユニットアレイと、マイクロレンズアレイと、を含み、
(B2)前記フィルタユニットアレイは、前記感光ユニットアレイと前記マイクロレンズアレイとの間に設けられ、
(B3)前記感光ユニットアレイは、複数の感光画素を含み、
(B4)前記フィルタユニットアレイは、複数のフィルタユニットを含み、
(B5)前記マイクロレンズアレイは、複数のマイクロレンズを含み、
(B6)各マイクロレンズは一つのフィルタユニット及び感光ユニットをカバーし、
(B7)各感光ユニットは2*2個の感光画素を含み、
(A)前記結像方法は、
(C1)前記感光ユニットアレイの出力を読み出し、
(C2)前記出力モードが結像の敏感度及び信号雑音比を高めるための第1出力モードである場合、同一の感光ユニットにおける複数の感光画素の画素情報を合併して出力するように制御し、または、
(C3)前記出力モードが位相差オートフォーカスをするための第2出力モードである場合、同一の前記感光ユニットにおける複数の感光画素の画素情報をそれぞれ個別に出力するステップと、
(D)合併して出力した前記感光ユニットの画素値を取得し、合併画像を生成するステップと、
(A)を含むことを特徴とする画像センサの結像方法。

[相違点]
「第2出力モード」が、本願発明は、「位相差オートフォーカス及び被写界深度情報をテストするための」ものであるのに対し、引用発明は、「位相差オートフォーカスをするための」ものとはいえるものの、「被写界深度情報をテストするための」ものではない点。

第6 判断
上記相違点について検討する。
上述したように(上記第5 4.(6))、引用発明の構成キ、スの「測距演算部119」の位相差測距の処理は、測距の演算結果を「フォーカス駆動等を行なってピント調節」(本願発明でいう「位相差オートフォーカス」)を行うために用いるものである。
一方、電子カメラ等において、目視により被写界深度の確認を行う際に正確に判断することができないという課題を解決するために、測距の演算結果を、被写体が被写界深度内にあるか否かを表示するために用いることは周知の技術である(例えば、特開平5-232371号公報には、次のように記載されている。なお、下線は当審により付したものである。
「【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、カメラの被写界深度表示装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来カメラにおいては、一眼レフレックスカメラでは被写界深度の確認は実際に撮影する絞り値までレンズの絞りを絞り込み、ファインダの視野中において目視によって行っていた。又コンパクトカメラについては確認方法がなかった。
【0003】
しかし、従来の一眼レフレックスカメラにおいてレンズの絞りを絞り込むと、光量が減少しそのためにファインダ内が暗くなり、被写界深度の範囲を正確に判断することができなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の問題点に鑑み、開放絞りの状態で被写界深度を確認することが可能な被写界深度表示装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するため、所定の測距領域について被写体距離を測距する測距手段を有するカメラにおいて、一の被写体の合焦距離並びに撮影レンズの焦点距離及び絞り値から被写界深度を演算する演算手段と、該測距手段により測距された他の被写体の被写体距離が、該合焦距離と比較して該演算手段により演算された被写界深度の範囲内にあるか否かを判断する判断手段と、該判断手段によって該測距領域にある被写体が被写界深度の範囲内にあるか否かが判断されたとき判断結果を表示する表示手段と、該判断表示手段を制御する制御手段とを具備する焦点深度表示装置を構成した。」)

電子カメラ等の撮像装置の撮像素子の出力信号の処理方法である引用発明において、上記課題が存在することは当業者には明らかであるから、引用発明において、上記課題を解決するために、測距の演算結果を、オートフォーカスを行う以外に、被写体が被写界深度内にあるか否かを表示するため(本願発明でいう「被写界深度をテストするため」)にも用いる構成とすることは当業者が容易に想到し得ることであり、そのような構成としたことにより奏する効果は当業者が予測し得るものである。

よって、本願発明は、引用発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項6に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-11-08 
結審通知日 2019-11-12 
審決日 2019-11-25 
出願番号 特願2017-541007(P2017-541007)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉川 康男  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 千葉 輝久
渡辺 努
発明の名称 画像センサ及び画素情報出力方法、位相差オートフォーカス方法、結像装置及び端末  
代理人 竹内 邦彦  
代理人 上田 邦生  
代理人 柳 順一郎  
代理人 小栗 眞由美  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ