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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1361344
審判番号 不服2018-13397  
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-10-05 
確定日 2020-04-08 
事件の表示 特願2015-542049「共有アセット及び個別化アセットからのストーリーボード指示ビデオ制作」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 5月22日国際公開、WO2014/078595、平成28年 1月18日国内公表、特表2016-501468〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2013年(平成25年)11月14日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2012年11月14日,米国)を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は,以下のとおりである。

平成27年 6月 2日 :翻訳文提出
平成28年11月10日 :審査請求書,手続補正書の提出
平成29年12月14日付け:拒絶理由通知書
平成30年 3月14日 :意見書,手続補正書の提出
同年 5月30日付け:拒絶査定
同年10月 5日 :審判請求

第2 本願発明
本願の請求項1?6に係る発明は,平成30年3月14日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されるものと認められるところ,その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,以下のとおりのものである。

なお,本願発明の各構成の符号(A)?(F)は,説明のために当審において付与したものであり,以下,構成A?構成Fと称する。

「 【請求項1】
(A)リッチストーリーボードに従って生成されるビデオ作品で使用される個別化アセットを取得するストーリーメーカーシステムであって,
(B)コンピュータ実施アセットコーチングサブシステムであって,
(B1)複数のビデオ作品に使用する制作仕様及びストーリービートシーケンスを定義するリッチストーリーボードに従って生成されるアセット取得仕様を受信することであって,
(B2)各ストーリービートは1組のストーリービートアセットを含み,
前記ストーリービートアセットの第1の部分は,共有アセットデータに関連付けられた共有ストーリービートアセットであり,
前記ストーリービートアセットの第2の部分は,アセット取得仕様及びアセット許容仕様に関連付けられた個別化ストーリービートアセットである,受信すること,及び
(B3)コンピュータ実施グラフィカルアセット取得インタフェースを介して,各アセット収集仕様に従って各個別化ストーリービートアセットの個別化アセットデータを取得すること,
(B)を行うように動作可能なコンピュータ実施アセットコーチングサブシステムと,
(C)前記アセットコーチングサブシステムと通信するコンピュータ実施アセット監査サブシステムであって,
前記個別化アセットデータを監査して,前記個別化アセットデータがアセット許容仕様に準拠するか否かを判断するように動作可能なコンピュータ実施アセット監査サブシステムと,
を備え,
(D)前記コンピュータ実施アセットコーチングサブシステムは,
(D1)前記個別化アセットデータが前記アセット許容仕様に準拠する場合,前記ストーリービートシーケンスに従ってビデオ作品をレンダリングすることができるよう,各個別化ストーリービートアセットの前記個別化アセットデータを通信するように更に動作可能であり,
(D2)各個別化ストーリービートアセットは,前記制作仕様及びそれに関連付けられた前記個別化アセットデータに従ってレンダリングされる,
システムであって,
(E)前記ストーリーメーカーシステムは,コンピュータ実施ストーリーバインレンダリングサブシステムと通信するものであり,
(F)前記コンピュータ実施ストーリーバインレンダリングサブシステムが,
(F1)前記コンピュータ実施アセットコーチングサブシステムから各個別化ストーリービートアセットの前記個別化アセットデータを受信することと,
(F2)前記ストーリービートシーケンスに従ってビデオ作品をレンダリングすることであって,
(F3)各共有ストーリービートアセットを前記制作仕様及びそれに関連付けられた前記共有アセットデータに従ってレンダリングすること,
(F4)及び各個別化ストーリービートアセットを前記制作仕様及びそれに関連付けられた個別化アセットデータに従ってレンダリングすることを含む,レンダリングすることと,
を行うように動作可能である,
(A)ストーリーメーカーシステム。」

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,この出願の請求項1?6に係る発明は,本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

引用文献1.特開2004-032277号公報
引用文献2.米国特許出願公開第2010/0153520号明細書

第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1の記載事項
引用文献1(特開2004-032277号公報)には,図面とともに,次の記載がある。下線は説明のために当審にて付したものである。

ア 「【0015】
【発明の実施の形態】
以下,本発明の実施の形態を説明する。実施の形態では,例えばパーソナルコンピュータ等の情報処理装置を用いてコンテンツ企画データを作成するための構成及び動作,及びコンテンツ企画データに基づいて撮像装置(ビデオカメラ)において撮像を行い,コンテンツを完成させるための構成及び動作を説明していく。
説明は以下に示す順序で行う。
1.コンテンツ製作手順
2.コンテンツ企画
2-1 装置構成
2-2 テンプレート及び素材データベース
2-3 コンテンツ企画手順
2-4 ディスクへの記録
3.シーン撮像
3-1 ビデオカメラの構成
3-2 シーン撮像手順
4.変形例
【0016】
1.コンテンツ製作手順
まず図1により本実施の形態におけるコンテンツ製作手順を概略的に説明する。
本例のコンテンツ製作手順は,基本的には図1に示すコンテンツ企画(S1),及びシーン撮像(S2)のみで完了する。即ちコンテンツ完成(S4)となる。
そして必要に応じて,或いは制作者の意志に基づいては,微修正(S3)が行われることもある。また撮像したシーン等を素材データベースに蓄積することも可能である(S5)。
【0017】
コンテンツ企画(S1)では,企画作業者が例えばパーソナルコンピュータなどの情報処理装置をコンテンツ企画作成装置として使用してコンテンツ企画を行う。パーソナルコンピュータにおいてコンテンツ企画作成プログラムを起動することで,パーソナルコンピュータをコンテンツ企画作成装置として使用できる。
そしてコンテンツ企画作成装置においては,映像コンテンツとしてのシーン構成や時間割,シーン内容などが或る程度ガイド的に設定されたテンプレートが用意されており,作業者はテンプレートを使用して任意の内容を入力したり選択することで,コンテンツ企画を進めていく。テンプレートの例については後述するが,シーン毎に設定画面が用意される。例えば5つのシーンで構成されるコンテンツのテンプレートの場合,各シーンについて,撮像すべき内容や時間割などを設定できる。
【0018】
シーン内容やシーンの撮像方法の指示などについては,作業者が意図するコンテンツ内容に従って,テンプレートに対して入力していくわけであるが,その際にはテンプレート上にテキストデータや簡易図形データを入力したり,コンピュータグラフィックにより作成した映像データをリンクさせたり,或いは素材データベース(S5)に保存されている静止画や動画の中から意図するイメージに合う静止画や動画,或いは定番カットなどを選択してリンクさせることなどが可能である。定番カットとは,例えば同一シリーズのコンテンツでのオープニング映像などのように,或る程度汎用的に使用できる映像内容である。
【0019】
また,テンプレート上での時系列にそってBGMやナレーションなどのオーディオ設定,或いはシーン内やシーンの切換部分での映像エフェクトなどの設定も可能とされる。
(中略)
【0024】
このように,基本的には,コンテンツ企画(S1)でコンテンツ企画データを生成し,シーン撮像(S2)でコンテンツ企画データに基づいてビデオカメラ1による撮像を行うことのみで,1つのコンテンツが完成する。
場合によっては,オーディオ設定や画像エフェクト,或いはシーン構成の追加/削除/入れ換えなどの微修正(S3)を行うこともできる。」

イ 「【0040】
いずれの形態にしても,コンテンツ企画作成プログラムが起動された際には,図3に示すように複数のテンプレートTP#1,TP#2・・・が利用可能なものとされる。
テンプレートは,例えば映像コンテンツとしての或る程度常套的なシーン構成,各シーンの時間割などが設定されているデータファイルである。例えばオープニングタイトルシーンから始まってエンディングシーンまでの各シーンが,コンテンツのストーリー構成にそってガイド的に設定されている。
企画作業者は用意された各シーンに具体的な映像内容を設定していくようにすればよい。もちろんシーンの構成数を任意に増減することもできる。
例えば1つのテンプレートTP#1には,図5に示すように,予め構成された各シーン#1?#nに対応してシーン設定プログラムが用意されており,各シーン設定プログラムによって表示される画面上で,シーン内容を設定していき,シーン設定データSC#1(P)?SC#n(P)を作成していく。
なお,このシーン設定プログラムとは,各シーンの内容設定を作業者の入力に従って進めるためのプログラムであり,ユーザーインターフェース画面表示及び入力対応処理を行うことで,画面上で任意のシーン内容の設定作業を実行させるためのプログラムである。
【0041】
またテンプレートには,BGMやナレーションなどのオーディオ設定を行うオーディオ設定プログラムも用意され,作業者は,コンテンツの時間軸或いはシーンに対応させてBGM等を設定し,オーディオ設定ファイルを作成する。
さらにテンプレートには,画像エフェクトやスーパーインポーズなどの設定を行う画像処理設定プログラムも用意され,作業者は,コンテンツの時間軸或いはシーンに対応させて画像エフェクト等を設定し,画像処理設定ファイルを作成する。
このオーディオ設定プログラム,画像処理設定プログラムも,各設定を作業者の入力に従って進めるためのプログラムであり,ユーザーインターフェース画面表示及び入力対応処理を行うことで,オーディオ設定作業,画像処理設定作業を実行させるためのプログラムである。
【0042】
そしてこのようなテンプレートに基づいて作成されたシーン設定データSC#1(P)?SC#n(P),オーディオ設定ファイル,画像処理設定ファイルの集合体が,コンテンツ企画において生成すべきコンテンツ企画データとなる。
【0043】
このようなテンプレートは,例えば作成しようとするコンテンツの時間長などに応じて或る程度汎用的にシーン構成が設定されるものであってもよいし,特定の業務で使用するコンテンツのために特化されたものが用意されていてもよい。例えば旅行代理店が観光案内用に作成する映像コンテンツのためのテンプレート,不動産業者が物件紹介用に作成する映像コンテンツのためのテンプレート,或る商品の宣伝用に作成する映像コンテンツのためのテンプレート・・・などというように,コンテンツの内容や目的に応じて用意されるとよい。
例えば「駅前商店街の宣伝紹介用のコンテンツのためのテンプレート」というものを考えると,そのテンプレートのシーン#1?#nの構成は,
シーン#1:オープニングタイトルシーン,
シーン#2:駅前風景のシーン
シーン#3:地図紹介シーン
シーン#4:町並み紹介シーン
シーン#5:エンディングシーン
などというように,或る程度特化された内容で,各シーン設定プログラムが用意される。また,各シーンの標準的な時間なども設定されている。
企画作業者は,各シーン設定プログラムで用意される標準的な内容をガイドとして見ながら,それらを企画方針に基づいて編集していけばよい。
【0044】
また,テンプレートを用いたコンテンツ企画の際には,素材データベースに用意されている各種データを使用できる。
素材データベースは,例えば図4のように,BGMデータベース,ナレーションデータベース,静止画データベース,動画データベースなどを有して成る。また,これら各データベースには,予め用意されているプリセットバンクとしてのデータや,ユーザーが登録したユーザーバンクとしてのデータがある。
【0045】
例えばBGMデータベースとしては,各種音楽データがプリセットバンクとして用意されているほか,ユーザーが好みの曲を音楽データとしてユーザーバンクに登録することができる。
そしてテンプレートのオーディオ設定プログラムに基づいてBGMを設定する際には,そのBGMとしての音楽データをBGMデータベースから選択することで設定することができる。
ナレーション音声の設定も同様である。特にナレーション音声は定例的なもの以外はコンテンツ内容に応じて製作しなければならないことが多いが,ナレーション音声を録音してユーザーバンクに登録しておくことで,コンテンツ企画の際に実際に完成品のコンテンツで使用するナレーションを選択することもできる。
(中略)
【0068】
例えば作業者がステップF105の段階でシーン#1を選択した場合,テンプレートに含まれるシーン#1設定プログラムに基づいて画面表示及び入力対応処理が行われる。
CPU41は,表示部47に図8(a)のようなタイトルシーンの設定画面を表示させる。この設定画面には,例えばシーン説明領域101でタイトルシーンであることが示され,また時間割領域102でシーンの時間長が示されている。
映像設定領域100にはタイトル映像の入力を求める表示が行われる。
【0069】
作業者はこのような設定画面に対して入力部45を操作して各種入力を行う。例えばタイトル文字を入力したり,背景画を選択したりする。背景画については素材データベースから静止画や動画を選択してもよいし,作業者が作成或いは入力した画像データを選択してもよい。
このような作業により,シーン#1について,図8(b)のようなシーン設定データSC#1(P)が形成される。
また撮像方法を設定したり,時間割を変更することもできる。
また,このようにタイトル文字や背景画を設定したタイトルシーンをそのまま完成品のコンテンツとして使用するのであれば,撮像法領域103に「撮像不要」などと入力してもよい。
CPU41は,テンプレートの設定画面に対しての入力/編集により作成されたシーン設定データSC#1(P)を保存する。

【図8】


(中略)
【0073】
シーン設定データSC#4(P)の例を図12に示す。
この場合,映像設定領域100には,テキストやシンボルによって映像イメージが表示される。例えば実際にビデオカメラ1によって撮像を行う撮像者に撮像してもらいたい情景を伝える内容とされている。
また撮像法領域103には,ズームアップやパンなどの撮像方法が記述される。
シーン説明領域101では,どのようなシーンであるかの説明が記述される。
時間割領域102では作業者が想定するシーンの時間長が示される。

【図12】



ウ 「【0099】
3-2 シーン撮像手順
ビデオカメラ1を用いて行われるシーン撮像の手順を図17に示す。図17は撮像者の操作に基づいてビデオカメラ1におけるシステムコントローラ11が実行する処理として示している。
【0100】
まずステップF200では,コンテンツ企画データを取得する。本例のように撮像時において,コンテンツ企画データが記録されたディスク90が装填される場合は,ディスク90にコンテンツ企画データが記録されていることが確認されればよい。
【0101】
ステップF201では,コンテンツ企画データに含まれる各シーンを表示させ,撮像者にシーン選択を求める。
例えばシステムコントローラ11は,各シーン設定データSC#1(P),SC#2(P)・・・としての代表画像を再生させ,液晶表示部29に表示させる。
図18(a)に,シーン選択画面を表示した例を示す。図示するように例えば各シーン設定データSC#1(P),SC#2(P)・・・における映像設定領域100の先頭映像などを画面分割してそれぞれ表示する。即ち上述した図8(b),図9(b),図10(b),図11(b)のように設定された映像である。この例では4つのシーンを表示しているが,5番目以降のシーン設定データの画像も,例えばページ送り操作に応じて表示させる。
【0102】
撮像者は,このようなシーン選択画面に対して選択操作を行う。するとシステムコントローラ11の処理はステップF202に進み,選択されたシーン#xについてシーン設定データSC#xの再生を行う。
シーン#4が選択されたとすると,システムコントローラ11はシーン設定データSC#4(P)をディスク90から再生させ,図18(b)に示すように液晶表示部29に表示させる。
このシーン設定データSC#4(P)の再生映像を見ることによって,撮像者はシーン#4として撮像すべき内容を確認できる。
即ちシーンの説明,映像イメージ,時間割,撮像方法を確認できる。
(中略)
【0116】
ステップF208の段階で,撮像者が必要な撮像を終えたと判断して所定の操作を行った場合は,その時点でコンテンツが完成するものとなる。
例えばコンテンツ企画データの段階で,シーン#2,#4について撮像が必要とされていた場合は,シーン#2,#4についてOKテイクが得られた時点で撮像を終えればよい。
この時点で上記のように再生シーケンスが「SC#1(P)→SC#2(R)Take1→SC#3(P)→SC#4(R)Take2→SC#5(P)」と管理されているとすると,ディスク90からコンテンツ全体を通して再生させると,図14(c)に示すような再生が行われる。即ち上述したコンテンツ企画データの例に合わせていえば,,
シーン#1・・・シーン設定データSC#1で設定されたタイトル映像
シーン#2・・・駅前風景の撮像映像データSC#2(R)Take1
シーン#3・・・シーン設定データSC#3で設定された地図映像
シーン#4・・・町並み風景の撮像映像データSC#4(R)Take2
シーン#5・・・シーン設定データSC#5で設定されたエンディング映像
が,順番に再生される。またBGMやナレーションはオーディオ設定ファイルに従って映像に同期して再生され,さらに画像処理設定ファイルに従って画像エフェクトやスーパーインポーズが行われる。
そしてこれは,完成品の映像コンテンツとなる。」

エ 「【0120】
4.変形例
上記実施の形態では,コンテンツ企画データをディスク90に記録し,このディスク90をビデオカメラ1においてもそのまま使用して撮像を行うようにした。つまりビデオカメラ1では,ディスク90をセットすることでコンテンツ企画データを取得できる例とした。このようにすれば,コンテンツ企画からシーン撮像を経てコンテンツを完成させるまでを,1つのメディアで完結でき,この点で効率の向上やコンテンツの取り扱いの容易性を得ることができる。
【0121】
しかしながら,例えば旅行案内コンテンツ製作などであって,コンテンツ企画を行うオフィス等とは,遠い場所で撮像を行う場合や,コンテンツ企画とシーン撮像のスケジュールなどの事情でディスク90に受け渡しが困難な場合も考えられる。
このため,コンテンツ企画データをネットワーク通信などによりビデオカメラ1に送信できるようにすることが考えられる。
即ち図2のコンテンツ企画作成装置が,通信処理部49,ネットワークインターフェース50を備え,またビデオカメラ1には図16に示したように通信部21を備えるようにしてデータ通信可能とし,コンテンツ企画作成装置からビデオカメラ1にコンテンツ企画データを送信する。
ビデオカメラ1では,受信されたコンテンツ企画データを,ディスク90に記録することで,上記実施の形態で説明したとおりのシーン撮像を実行できる。
このようにすれば,遠隔地での撮像にも対応でき,さらにはシーン撮像開始後において企画変更を行いたい場合に,コンテンツ企画データを送り直すと行ったことも容易に可能となるため,コンテンツ製作効率を向上できる。
(中略)
【0125】
また上記例ではビデオカメラ1において,シーン撮像時に撮像映像データをディスク90に記録するものとしたが,ディスク90に記録するほか,通信部21から送信出力するようにしてもよい。
例えばシーン撮像手順として図21に示すように実行する。
図21のステップF300,F301,F302,F303,及びステップF305は,図17のステップF200,F201,F202,F203,及びステップF208と同様である。
ステップF303から,或る選択されたシーン#xについて撮像を実行する際には,ステップF304において,撮像した撮像映像データを通信部21に供給し,所定の通信エンコードを行って,送信出力するようにする。
このとき,選択されているシーンの情報としてシーンナンバ(#x)やコンテンツ企画データ自体の識別情報なども送信する。
このような撮像及び送信を,必要なシーンを選択しながら実行し,必要なシーンについて撮像を終えた際に,ステップF305からF306に進んでシーン撮像作業を終える。
【0126】
なお,図21では撮像した撮像映像データを送信するのみとしたが,同時にディスク90に記録してもよいことは言うまでもない。
また,ステップF304での撮像処理は,撮像者のスタート操作から終了操作の間,継続されればよい。撮像者はシーン設定データの再生映像により,当該シーンの時間長を確認できるため,その時間に合わせて,多少し長めの時間で撮像を行うようにすればよい。
又は,シーン設定データにおいて設定されている時間割情報をシステムコントローラ11を検出して,システムコントローラ11が撮像時間を管理して自動終了させることもできる。
【0127】
このような撮像映像データ(及びシーンナンバ等)の送信先は,コンテンツ企画装置或いは他の情報処理装置であって,少なくともコンテンツ企画データを何らかの記録媒体に記録してある装置であればよい。
ビデオカメラ1から送信される撮像映像データは,受信した情報処理装置において,記憶されているコンテンツ企画データに組み込まれる。つまりその情報処理装置において,コンテンツ企画データに対応させて受信した撮像映像データをシーンナンバとともに記録する。
すると,情報処理装置側において,シーンナンバに基づいて,管理情報を書き換え,コンテンツ企画データに撮像映像データを組み込むことや,或るシーンについて複数のテイクの撮像映像データを情報処理装置側で格納し,選択したり,編集することができる。
つまり受信側の情報処理装置では,コンテンツ企画データを記憶し,撮像映像データがシーンナンバと共に送信されてくることで,図17でビデオカメラ1での処理として説明したステップF205,F207の処理を実行でき,当該情報処理装置側でコンテンツを完成させることができるものとなる。」

2 引用発明

ア 「ビデオカメラ1」について
上記1アの段落0015の記載から,引用文献1には,「コンテンツ企画データに基づいて撮像を行う撮像装置(ビデオカメラ)」が記載されている。
上記1エの段落0120に「変形例」と記載され,同段落0121に「コンテンツ企画データをネットワーク通信などによりビデオカメラ1に送信できるようにする」と記載があることから,引用文献1に記載の「ビデオカメラ1」を上記1ア?ウに記載された事項を備える「ビデオカメラ1」であって,当該変形例である上記1エ及びオに記載された事項を備える「ビデオカメラ1」として認定する。
そうすると,上記1エの段落0121の記載から,引用文献1には,
「(a)コンテンツ企画データに基づいて撮像を行うビデオカメラ1であって,通信部21を備え,受信されたコンテンツ企画データを,ディスク90に記録することで,シーン撮像を実行できるビデオカメラ1」
が記載されていると認められる。

イ 「コンテンツ製作手順」について
上記1アの段落0016の記載から,引用文献1には,「コンテンツ製作手順」が記載されている。

イ1 上記1アの段落0016の記載から,前記「コンテンツ製作手順」は,
「(b1)コンテンツ企画(S1),及びシーン撮像(S2)のみで完了し,即ちコンテンツ完成(S4)となり,そして必要に応じて,或いは制作者の意志に基づいては,微修正(S3)が行われ」ることが記載されている。

イ2 上記1ウの段落0017の記載から,前記「コンテンツ製作手順」は,
「(b2)コンテンツ企画(S1)では,企画作業者がコンテンツ企画を行い,映像コンテンツとしてのシーン構成や時間割,シーン内容などが或る程度ガイド的に設定されたテンプレートが用意されており,作業者はテンプレートを使用して任意の内容を入力したり選択することで,コンテンツ企画を進めていく」ことが記載されている。

イ3 上記1ウの段落0018の記載から,前記「コンテンツ製作手順」は,
「(b3)シーン内容やシーンの撮像方法の指示などについて,作業者が意図するコンテンツ内容に従って,テンプレートに対して入力していき,その際にはテンプレート上にテキストデータや簡易図形データを入力したり,コンピュータグラフィックにより作成した映像データをリンクさせたり,或いは素材データベース(S5)に保存されている静止画や動画の中から意図するイメージに合う静止画や動画,或いは定番カットなどを選択してリンクさせ」ることが記載されている。

イ4 上記1ウの段落0024の記載から,前記「コンテンツ製作手順」は,
「(b4)場合によっては,オーディオ設定や画像エフェクト,或いはシーン構成の追加/削除/入れ換えなどの微修正(S3)を行うこともでき」ることが記載されている。

ウ 「シーン撮像手順」について
上記1ウの段落0099の記載から,引用文献1に記載の「ビデオカメラ1」は,
「(c)前記ビデオカメラ1を用いて行われるシーン撮像の手順は,撮像者の操作に基づいてビデオカメラ1におけるシステムコントローラ11が実行する処理として実行」するものと認められる。
また,上記1エの段落0125の記載から,引用文献1に記載の「ビデオカメラ1を用いて行われるシーン撮像手順」は,「ステップF300,F301,F302,F303,及びステップF305」は,「ステップF200,F201,F202,F203,及びステップF208と同様であるとして認定する。

ウ1 上記1ウの段落0100?0102の記載から,前記「シーン撮像手順」は,
「(c1)前記コンテンツ企画データを取得するステップF300と,
(c2)前記コンテンツ企画データに含まれる各シーンを表示させ,撮像者にシーン選択を求めるステップF301と,
(c3)撮像者がシーン選択画面に対して選択操作を行うと,選択されたシーン#xについてシーン設定データSC#xの再生を行うステップF302と」を実行すると認められる。

ウ2 上記1エの段落0125及び0126の記載から,前記「シーン撮像手順」は,
「(c4)或る選択されたシーン#xについて撮像を実行する際には,撮像した撮像映像データを通信部21に供給し,同時にディスク90に記録し,所定の通信エンコードを行って,送信出力するようにし,このとき,選択されているシーンの情報としてシーンナンバ(#x)やコンテンツ企画データ自体の識別情報なども送信し,このような撮像及び送信を,必要なシーンを選択しながら実行するステップF304」を実行すると認められる。

ウ3 上記1エの段落0125の記載から,前記「シーン撮像手順」は,
「(c5)必要なシーンについて撮像を終えた際に,シーン撮像作業を終えるステップF306」を実行すると認められる。

ウ4 上記1ウの段落0116の記載から,前記「シーン撮像手順」は,
「(c6)撮像者が必要な撮像を終えたと判断して所定の操作を行った場合は,その時点でコンテンツが完成するものとなり,コンテンツ全体を通して再生させると,各シーンが順番に再生され,BGMやナレーションはオーディオ設定ファイルに従って映像に同期して再生され,さらに画像処理設定ファイルに従って画像エフェクトやスーパーインポーズが行われ,完成品の映像コンテンツとなる」を実行すると認められる。

エ 「コンテンツ企画装置」おける処理について
上記1エの段落0127の記載から,引用文献1に記載の「ビデオカメラ1」が送信出力する「撮像映像データ」及び「シーンナンバ(#x)やコンテンツ企画データ自体の識別情報など」の送信先は,コンテンツ企画装置であることが記載されている。そして,当該送信先を「コンテンツ企画装置」として,段落0127の記載を認定すると,引用文献1には,「(d)前記撮像映像データ及びシーンナンバ(#x)やコンテンツ企画データ自体の識別情報などの送信先は,コンテンツ企画装置であって,
前記コンテンツ企画装置において,
(d1)前記ビデオカメラ1から送信される撮像映像データは,記憶されているコンテンツ企画データに組み込まれ,コンテンツ企画データに対応させて受信した撮像映像データをシーンナンバとともに記録され,
(d2)前記シーンナンバに基づいて,管理情報を書き換え,コンテンツ企画データに撮像映像データを組み込むことや,或るシーンについて複数のテイクの撮像映像データを格納し,選択したり,編集することができ,
(d3)コンテンツ企画データを記憶し,撮像映像データがシーンナンバと共に送信されてくることで,当該コンテンツ企画装置側でコンテンツを完成させることができるものであ」ることが記載されている。

オ 「コンテンツ企画データ」について

オ1 上記1イの段落0042の記載から,引用文献1に記載の「コンテンツ企画データ」は,
「(e1)テンプレートに基づいて作成されたシーン設定データSC#1(P)?SC#n(P),オーディオ設定ファイル,画像処理設定ファイルの集合体」であることが記載されている。

オ2 上記1イの段落0040の記載から,前記「テンプレート」は,
「(e2)映像コンテンツとしての或る程度常套的なシーン構成,各シーンの時間割などが設定されているデータファイルであリ,例えばオープニングタイトルシーンから始まってエンディングシーンまでの各シーンが,コンテンツのストーリー構成にそってガイド的に設定されて」いることが記載されている。

オ3 上記1イの段落0040の記載から,前記「シーン設定データSC#1(P)?SC#n(P)」は,
「(e3)企画作業者が用意された各シーンに具体的な映像内容を設定していき,予め構成された各シーン#1?#nに対応して用意された各シーン設定プログラムによって表示される画面上で,シーン内容を設定することで作成され」ることが記載されている。

オ4 上記1イの段落0041の記載から,前記「オーディオ設定ファイル」は,
「(e4)BGMやナレーションなどのオーディオ設定を行うオーディオ設定プログラムも用意され,作業者がコンテンツの時間軸或いはシーンに対応させてBGM等を設定して作成」されることが記載されている。

オ5 上記1イの段落0041の記載から,前記「画像処理設定ファイル」は,
「(e5)作業者がコンテンツのシーンに対応させて画像エフェクトを設定して作成」されることが記載されている。

オ6 上記1イの段落0043の記載から,前記「テンプレート」は,
「(e6)特定の業務で使用するコンテンツのために特化されたものが用意されていてもよく,例えば旅行代理店が観光案内用に作成する映像コンテンツのためのテンプレート,不動産業者が物件紹介用に作成する映像コンテンツのためのテンプレート,或る商品の宣伝用に作成する映像コンテンツのためのテンプレートなどというように,コンテンツの内容や目的に応じて用意されるとよ」いことが記載されている。

オ7 上記1イの段落0044及び0045の記載から,前記「オーディオ設定プログラムに基づいてBGMを設定する際に」は,
「(e7)素材データベースに用意されている各種データを使用でき,前記素材データベースは,BGMデータベース,ナレーションデータベース,静止画データベース,動画データベースなどを有して成り,前記BGMとしての音楽データを前記BGMデータベースから選択することで設定することができ」ることが記載されている。

オ8 上記1イの段落0068及び0069の記載から,前記「シーン設定データSC#1(P)の例」は,
「(e8)シーン説明領域101でタイトルシーンであることが示され,また時間割領域102でシーンの時間長が示され,映像設定領域100にはタイトル文字や背景画を設定し,背景画については素材データベースから静止画や動画を選択してもよいし,作業者が作成或いは入力した画像データを選択してもよいし,このようにタイトル文字や背景画を設定したタイトルシーンをそのまま完成品のコンテンツとして使用するのであれば,撮像法領域103に「撮像不要」などと入力してもよい」ことが記載されている。

オ9 上記1イの段落0073の記載から,前記「シーン設定データSC#4(P)の例」は,
「(e9)映像設定領域100には,テキストやシンボルによって映像イメージが表示され,実際にビデオカメラ1によって撮像を行う撮像者に撮像してもらいたい情景を伝える内容とされ,撮像法領域103には,ズームアップやパンなどの撮像方法が記述され,シーン説明領域101では,どのようなシーンであるかの説明が記述され,時間割領域102では作業者が想定するシーンの時間長が示され」ることが記載されている。

上記ア?オによれば,引用文献1には,以下の発明が記載されているといえる。(以下,「引用発明」という。)
なお,引用発明の各構成の符号(a)?(e9)は,説明のために当審において付与したものであり,以下,構成a?構成e9と称する。

(引用発明)
(a)コンテンツ企画データに基づいて撮像を行うビデオカメラ1であって,通信部21を備え,受信されたコンテンツ企画データを,ディスク90に記録することで,シーン撮像を実行できるビデオカメラ1であって,
(b)コンテンツ製作手順は,
(b1)コンテンツ企画(S1),及びシーン撮像(S2)のみで完了し,即ちコンテンツ完成(S4)となり,そして必要に応じて,或いは制作者の意志に基づいては,微修正(S3)が行われ,
(b2)コンテンツ企画(S1)では,企画作業者がコンテンツ企画を行い,映像コンテンツとしてのシーン構成や時間割,シーン内容などが或る程度ガイド的に設定されたテンプレートが用意されており,作業者はテンプレートを使用して任意の内容を入力したり選択することで,コンテンツ企画を進めていき,
(b3)シーン内容やシーンの撮像方法の指示などについて,作業者が意図するコンテンツ内容に従って,テンプレートに対して入力していき,その際にはテンプレート上にテキストデータや簡易図形データを入力したり,コンピュータグラフィックにより作成した映像データをリンクさせたり,或いは素材データベース(S5)に保存されている静止画や動画の中から意図するイメージに合う静止画や動画,或いは定番カットなどを選択してリンクさせ,
(b4)場合によっては,オーディオ設定や画像エフェクト,或いはシーン構成の追加/削除/入れ換えなどの微修正(S3)を行うこともでき,
(c)前記ビデオカメラ1を用いて行われるシーン撮像の手順は,撮像者の操作に基づいてビデオカメラ1におけるシステムコントローラ11が実行する処理として実行し,
前記シーン撮像手順は,
(c1)前記コンテンツ企画データを取得するステップF300と,
(c2)前記コンテンツ企画データに含まれる各シーンを表示させ,撮像者にシーン選択を求めるステップF301と,
(c3)撮像者がシーン選択画面に対して選択操作を行うと,選択されたシーン#xについてシーン設定データSC#xの再生を行うステップF302と,
(c4)或る選択されたシーン#xについて撮像を実行する際には,撮像した撮像映像データを通信部21に供給し,同時にディスク90に記録し,所定の通信エンコードを行って,送信出力するようにし,このとき,選択されているシーンの情報としてシーンナンバ(#x)やコンテンツ企画データ自体の識別情報なども送信し,このような撮像及び送信を,必要なシーンを選択しながら実行するステップF304と,
(c5)必要なシーンについて撮像を終えた際に,シーン撮像作業を終えるステップF306を実行し,
(c6)撮像者が必要な撮像を終えたと判断して所定の操作を行った場合は,その時点でコンテンツが完成するものとなり,コンテンツ全体を通して再生させると,各シーンが順番に再生され,BGMやナレーションはオーディオ設定ファイルに従って映像に同期して再生され,さらに画像処理設定ファイルに従って画像エフェクトやスーパーインポーズが行われ,完成品の映像コンテンツとなり,
(d)前記撮像映像データ及びシーンナンバ(#x)やコンテンツ企画データ自体の識別情報などの送信先は,コンテンツ企画装置であって,
前記コンテンツ企画装置において,
(d1)前記ビデオカメラ1から送信される撮像映像データは,記憶されているコンテンツ企画データに組み込まれ,コンテンツ企画データに対応させて受信した撮像映像データをシーンナンバとともに記録され,
(d2)前記シーンナンバに基づいて,管理情報を書き換え,コンテンツ企画データに撮像映像データを組み込むことや,或るシーンについて複数のテイクの撮像映像データを格納し,選択したり,編集することができ,
(d3)コンテンツ企画データを記憶し,撮像映像データがシーンナンバと共に送信されてくることで,当該コンテンツ企画装置側でコンテンツを完成させることができるものであり,
(e)前記コンテンツ企画データは,
(e1)テンプレートに基づいて作成されたシーン設定データSC#1(P)?SC#n(P),オーディオ設定ファイル,画像処理設定ファイルの集合体であり,
(e2)前記テンプレートは,映像コンテンツとしての或る程度常套的なシーン構成,各シーンの時間割などが設定されているデータファイルであリ,例えばオープニングタイトルシーンから始まってエンディングシーンまでの各シーンが,コンテンツのストーリー構成にそってガイド的に設定されており,
(e3)前記シーン設定データSC#1(P)?SC#n(P)は,企画作業者が用意された各シーンに具体的な映像内容を設定していき,予め構成された各シーン#1?#nに対応して用意された各シーン設定プログラムによって表示される画面上で,シーン内容を設定することで作成され,
(e4)前記オーディオ設定ファイルは,BGMやナレーションなどのオーディオ設定を行うオーディオ設定プログラムも用意され,作業者がコンテンツの時間軸或いはシーンに対応させてBGM等を設定して作成され,
(e5)前記画像処理設定ファイルは,作業者がコンテンツのシーンに対応させて画像エフェクトを設定して作成され,
(e6)前記テンプレートは,特定の業務で使用するコンテンツのために特化されたものが用意されていてもよく,例えば旅行代理店が観光案内用に作成する映像コンテンツのためのテンプレート,不動産業者が物件紹介用に作成する映像コンテンツのためのテンプレート,或る商品の宣伝用に作成する映像コンテンツのためのテンプレートなどというように,コンテンツの内容や目的に応じて用意されるとよく,
(e7)前記オーディオ設定プログラムに基づいてBGMを設定する際には,素材データベースに用意されている各種データを使用でき,前記素材データベースは,BGMデータベース,ナレーションデータベース,静止画データベース,動画データベースなどを有して成り,前記BGMとしての音楽データを前記BGMデータベースから選択することで設定することができ,
(e8)前記シーン設定データSC#1(P)の例は,シーン説明領域101でタイトルシーンであることが示され,また時間割領域102でシーンの時間長が示され,映像設定領域100にはタイトル文字や背景画を設定し,背景画については素材データベースから静止画や動画を選択してもよいし,作業者が作成或いは入力した画像データを選択してもよいし,このようにタイトル文字や背景画を設定したタイトルシーンをそのまま完成品のコンテンツとして使用するのであれば,撮像法領域103に「撮像不要」などと入力してもよく,
(e9)前記シーン設定データSC#4(P)の例は,映像設定領域100には,テキストやシンボルによって映像イメージが表示され,実際にビデオカメラ1によって撮像を行う撮像者に撮像してもらいたい情景を伝える内容とされ,撮像法領域103には,ズームアップやパンなどの撮像方法が記述され,シーン説明領域101では,どのようなシーンであるかの説明が記述され,時間割領域102では作業者が想定するシーンの時間長が示される
(a)ビデオカメラ1。

3 引用文献2の記載事項
引用文献2(米国特許出願公開第2010/0153520号明細書)には,図面とともに,次の記載がある。

ア 「[0036] In accordance with the some embodiments, a media application (sometimes referred to herein as “the application”) for creating, producing, and distributing video templates and video clips is provided. The application may be used by a user (e.g., a video artist, a producer, or any other suitable user) to create one or more video templates.
[0037] Generally speaking, a video template is an interactive video template designed by a user with particular parameters and instructions to assist end users (e.g., clip buyers) create video clips by inserting end user-generated media content. These video templates may include storyboards that are, for example, funny, entertaining, romantic, enlightening, thought-provoking, interesting, emotional, etc. After creating one or more video templates, these video templates may be aggregated and stored in a video template database and/or published in a video template catalogue, where each video template may be used by end users (e.g., clip buyers) to create personalized and customized video clips.
(中略)
[0042] In addition to replacing a media block with an end user media block, the user may provide parameters that are associated with the video template (e.g., trim length, effects, playback options, position options, mask options, volume settings, etc.) and instructions that are associated with the user media block. The instructions provide an end user with directions for generating video content suitable for insertion into the end user media block and are displayed with the video template for the end user. For example, instructions may be displayed in response to selecting the video template, where a video artist may instruct the end user to use a video camera to record a particular scene and provide a script to be read while the scene is being recorded.」
(当審訳:[0036]いくつかの実施形態によれば,ビデオテンプレートおよびビデオクリップを作成し,生成し,配信するためのメディアアプリケーション(本明細書では時々「アプリケーション」と称することがある)が提供される。アプリケーションは,ユーザ(例えば,ビデオアーティスト,プロデューサ,または他の適切なユーザ)によって,一つまたは複数のビデオテンプレートを作成するために使用されてもよい。)
[0037]一般的に言えば,ビデオテンプレートは,特定のパラメータを有するユーザによって設計された対話式ビデオテンプレートであり,補助するエンドユーザ(例えば,クリップ購入者)への命令は,エンドユーザによって生成されたメディアコンテンツを挿入し,ビデオクリップを作成する。これらのビデオテンプレートは,例えば,滑稽な,愉快な,ロマンチックな,啓発的な,示唆に富む,興味を起こさせる,感動的な,等のストーリーボードを含むことができる。一つ以上のビデオテンプレートを作成した後,これらのビデオテンプレートは,集約され,ビデオテンプレートデータベース内に格納され,および/またはビデオテンプレートカタログ内に公開され,各ビデオテンプレートは,エンドユーザ(例えば,クリップ購入者)が,個人化されカスタマイズされたビデオクリップを作成するために使用することができる。
(中略)
[0042]メディアブロックをエンドユーザメディアブロックで置き換えることに加えて,ユーザは,ビデオテンプレートに関連するパラメータ(例えば,トリム長さ,効果,再生オプション,位置オプション,マスクオプション,音量設定等)およびユーザメディアブロックに関連する命令を提供することができる。この命令はエンドユーザがエンドユーザのビデオブロックへ挿入するのに適したビデオコンテンツを生成するための命令を提供し,エンドユーザのためのビデオテンプレートと共に表示される。例えば,命令は,ビデオテンプレートを選択することに応答して表示されてよく,ビデオアーティストは,特定のシーンを記録するためにビデオカメラを使用するようエンドユーザに命令し,シーンが記録されている間に読み取られるスクリプトを提供してもよい。)

イ 「[0095](略)The instructions may direct the end user to record a particular scene (e.g., two actors speaking with each other) with a script provided by the user in the instructions, particular actions being performed by the actors in the video clip, a particular sound being heard in the background (e.g., a whistling tea kettle), particular instructions for holding a camera, filming device, or any other suitable media capturing device (略).」
(当審訳:[0095](略)命令は,ユーザによって提供された命令内のスクリプトを使用して,特定のシーン(例えば,2人の俳優が互いに話している)を記録すること,ビデオクリップにおいて俳優が特定の動作を実行すること,背景において特定の音声(例えば,やかんの鳴る音)が聞こえること,カメラやフィルムデバイス,あるいは他の適切なメディアキャプチャ装置の状態を保つこと(略)をエンドユーザに命令することができる。)

ウ 「[0101] In some embodiments, the application may analyze the received end user-generated media content to ensure it complies with the instructions from the user. For example, the application may transmit the end user-generated media content to a voice recognition application that determines whether the end user provided the correct script and/or voiceovers to the media content. In response to determining that the end user has not complies with the instructions from the user that created the video template, the application may inhibit the end user from inserting the end user-generated media content. Alternatively, using the voice recognition application, the application may provide the end user with recommendations on how to produce media content that complies with the instructions. 」
(当審訳:[0101]いくつかの実施形態では,アプリケーションは,受信されたエンドユーザによって生成されたメディアコンテンツを分析して,それがユーザからの命令に従っていることを保証することができる。例えば,アプリケーションは,エンドユーザが正しいスクリプトおよび/またはナレーションをメディアコンテンツに提供したかどうかを判定する音声認識アプリケーションに,エンドユーザ生成メディアコンテンツを送信することができる。エンドユーザがビデオテンプレートを作成したユーザからの命令に従っていないと判断することに応答して,アプリケーションはエンドユーザが生成したメディアコンテンツをエンドユーザが挿入することを禁止することができる。或いは,アプリケーションは,音声認識アプリケーションを使用して,命令に従ったメディアコンテンツをどのように生成するかについての勧告をエンドユーザに提供することができる。」

エ 「[0121](略)Memory 3108 may also contain an application for creating, producing, and/or distributing video templates and video clips in accordance with some embodiments. In some embodiments, the application may be resident in the memory of workstation 2902 or server 2910 .」(当審訳:[0121](略)メモリ3108はまた,いくつかの実施形態に従って,ビデオテンプレートおよびビデオクリップを作成,生成,および/または配信するためのアプリケーションを含むことができる。いくつかの実施形態では,アプリケーションは,ワークステーション2902またはサーバ2910のメモリ内に常駐することができる。)

オ 「[0124](略)In another example, the media application may be locally installed on video cameras and other video capturing devices, portable photographic devices, standalone media kiosks, etc.」
(当審訳:[0124](略)別の例では,メディアアプリケーションは,ビデオカメラおよび他のビデオキャプチャデバイス,携帯型写真デバイス,スタンドアロンメディアキオスクなどにローカルにインストールされてもよい。)

カ 上記ア?オによれば,引用文献2には,以下の技術が記載されていると認められる。(以下,「引用文献2に記載された技術」という。)

(引用文献2に記載された技術)
ビデオテンプレートおよびビデオクリップを作成し,生成し,配信するためのメディアアプリケーションであって,前記メディアアプリケーションは,ワークステーションまたはサーバのメモリ内に常駐するものであり([0121]),
前記ビデオテンプレートは,ユーザ(例えば,ビデオアーティスト,プロデューサ)によって作成され([0036]),
前記ビデオテンプレートは,対話式ビデオテンプレートであり,補助するエンドユーザへの命令は,エンドユーザによって生成されたメディアコンテンツを挿入し,ビデオクリップを作成するものであり([0037]),
前記ビデオテンプレートに関連するパラメータ(例えば,トリム長さ,効果,再生オプション,マスクオプション,音量設定)およびユーザメディアブロックに関連する命令を提供することができ([0042]),
前記命令は,ユーザによって提供された命令内のスクリプトを使用して,特定のシーンを記録すること,ビデオクリップにおいて俳優が特定の動作を実行すること,背景において特定の音声が聞こえること,カメラやフィルムデバイス,あるいは他の適切なメディアキャプチャ装置の状態を保つことをエンドユーザに命令することができ([0095]),
前記メディアアプリケーションは,エンドユーザが正しいスクリプト(命令)をメディアコンテンツに提供したかどうかを判定し,エンドユーザがビデオテンプレートを作成したユーザからの命令に従っていないと判断することに応答して,エンドユーザが生成したメディアコンテンツをエンドユーザが挿入することを禁止することができ([0101]),
前記メディアアプリケーションは,ビデオカメラにローカルにインストールされてもよい([0124])技術。

第5 対比
本願発明と引用発明を対比する。

(1)構成Aについて

ア 構成d3の「コンテンツ」,構成c6の「映像コンテンツ」及び「コンテンツ」は,構成c4の「撮像した撮像映像データ」から「完成させることができる」から,本願発明の「ビデオ作品」に相当する。引用発明の「コンテンツ企画データ」は,ビデオカメラ1で「撮像映像データ」を撮影を行う際に従うものといえる点で,本願発明の「リッチストーリーボード」に相当するといえる。そして,引用発明の当該「コンテンツ」は,「コンテンツ企画データに基づいて撮像を行う」ことで生成されるといえるから,本願発明の「リッチストーリーボードに従って生成されるビデオ作品」に相当するといえる。

イ また,構成c4の「撮像した撮像映像データ」は,コンテンツ企画データに組み込んでコンテンツを完成させる(構成c)ことから,「コンテンツで使用される」といえ,さらに,「個別の撮像映像データ」といえることから,引用発明の「撮像映像データ」は,本願発明の「ビデオ作品で使用される個別化アセット」に相当する。

ウ そして,引用発明の「ビデオカメラ1」は,「コンテンツ企画データに従って」,「撮像映像データを取得するもの」といえるから,本願発明の「ストーリーメーカーシステム」に相当する。

エ 以上ア?ウによれば,引用発明の構成aは,本願発明の構成Aに相当する。

(2)構成Bについて

ア まず,本願発明の発明特定事項の「リッチストーリーボード」,「ストーリービート」,「ストーリービートシーケンス」,「ストーリービートアセット」,「個別化アセットデータ」,「個別化ストーリービートアセット」,「共有アセットデータ」,「共有ストーリービートアセット」,「制作仕様」,「アセット取得仕様」及び「アセット許容仕様」について検討する。
本願の請求項1には,上記発明特定事項のうち「リッチストーリーボード」を除いた発明特定事項の内容を説明する記載は存在しないので,当該発明特定事項の内容について本願明細書の記載を参酌して検討する。
本願明細書には以下の事項が記載されている。以下の摘記事項の末尾番号は本願明細書の段落番号である。

(ア)「リッチストーリーボード」は,幾つかのコンピュータ可読仕様としての,エージェンシー及び/又は他からの幾つかの規則,コンセプト,及び他の入力を表す。例えば,リッチストーリーボードは,制作仕様,アセット収集仕様,監査仕様等を含む。」【0015】
(イ)「リッチストーリーボードは幾つかの(例えば,シーケンスになった)「ストーリービート」も含み,各ストーリービートは,1組のストーリービートアセット及びレイアウト仕様(例えば,位置,サイズ,形状,透明度,遷移,レイヤ等)として,最終的なストーリーバインビデオ作品の部分(例えば,クリップ,セグメント,ビネット等)を表す。」【0015】
(ウ)「各ストーリービートでの「ストーリービートアセット」は,ビデオデータ,テキストデータ,オーディオデータ,及び/又は任意の他の適するデータを含むことができる。」【0015】
(エ)「リッチストーリーボードは,どのストーリービートアセットが個別化アセットであるかを定義し,各個別化アセットに1つ又は複数のアセット取得基準を関連付ける。個別化ストーリービートアセットデータは,アセット取得基準に従って「ストーリーメーカー」(エンドユーザ)から取得される。」【0015】
(オ)「他のストーリービートアセットは,同じリッチストーリーボードから生成される複数のストーリーバインビデオ作品にわたって使用されることが意図されるという点で,「共有ストーリービートアセット」である。例えば,共有ストーリービートアセットは,特に特定のリッチストーリーボード等と併用されるように生成される事前記憶アセットのプールから取得することができ」【0015】
(カ)「ポストプロダクション専門家(例えば,レンダリング及び編集専門家)は,コンセプト及びプレプロダクション専門家と協働して,ストーリービートをいかにレンダリングし,編集し,承認すべきか等の制作仕様を開発する。」【0016】
(キ)「例えば,個別化ストーリービートアセットに,
許容仕様(例えば,照明,画質,持続時間の閾値等),役割仕様(例えば,ビデオアセットをストーリーメーカーによって承認することができるか否か,又は特定の権限を有する誰かによって承認される必要があるか否か),制作仕様(例えば,ストーリーボード内のコンテキスト,シーケンス,フォアグラウンド,又はバックグラウンドレベル,透明度,遷移等を定義する属性), 取得仕様(例えば,プロンプト命令,コーチングページレイアウト命令等),データ階層内の位置(例えば,特定のエージェンシーの特定の部門の特定のエージェントの特定のビデオ等)等を関連付けることができる。」【0024】
(ク)「リッチストーリーボード115の実施形態は,コーチング仕様521,アセット収集仕様523,アセット承認仕様525,役割仕様527,制作仕様529,及び/又は任意の他の適する仕様を定義する。例えば,アセット収集仕様523は,アセットの取得,生成,及び使用の支援として,アセット及び任意の有用な属性を定義することを含め,何が共有され,何が個別化されるか,及び/又は他のストーリービートアセットデータ543が望まれるかを定義することができる。」【0047】

イ 本願発明の「ストーリービート」,「ストーリービートシーケンス」,「ストーリービートアセット」,「個別化アセットデータ」,「個別化ストーリービートアセット」,「共有アセットデータ」及び「共有ストーリービートアセット」について

(ア)引用発明の「シーン」は,ビデオ作品である「映像コンテンツ」を構成する部分であって,引用発明の「撮像映像データ」(構成c4,構成d)は,各シーンでのビデオデータとなるものである。また,引用発明のコンテンツ企画(S1)で設定する各シーン(シーン#x)の「シーン設定データSC#x」は,映像設定領域100,シーン説明領域101,時間割領域102,撮像法領域103のレイアウト仕様を備え,各シーンの「シーン内容」,「シーン構成や時間割」及び「シーンの撮像方法の指示」が設定されるものであり,「完成品のコンテンツ」の部分となる(構成e8,構成e9)ものである。そして,本願明細書には,上記ア(イ)及び(ウ)のとおり「ストーリービート」及び「ストーリービートアセット」について記載されているから,引用発明の「シーン設定データSC#x」,「シーン設定データSC#1(P)?SC#n(P)」及び「撮像映像データ」は,本願発明の「ストーリービート」,「ストーリービートシーケンス」及び「ストーリービートアセット」に相当する。

(イ)また,引用発明の「撮像映像データ」(構成c4,構成d)は,撮像者がビデオカメラ1でシーン撮像手順に従って記録処理を実行したものであって,本願明細書には上記ア(エ)のとおり記載されているから,本願発明の「個別化アセットデータ」に相当する。そして,引用発明のコンテンツ企画データに組み込まれた「撮像映像データ」(構成d)は,本願発明の「個別化ストーリービートアセット」に相当する。

(ウ)引用発明の「素材データベース(S5)に保存されている静止画や動画」,「定番カット」(構成b3),「BGMとしての音楽データ」(構成e7)及び「静止画や動画」(構成e8)は,これらを設定するための「素材データベース」が,事前に記憶され用意されており,「事前記憶アセットのプール」といえるものであって,本願明細書には上記ア(オ)のとおり記載されているから,本願発明の「共有アセットデータ」に相当する。そして,引用発明のコンテンツ企画データに組み込まれた「静止画や動画」,「定番カット」及び「BGMとしての音楽データ」は,本願発明の「共有ストーリービートアセット」に相当する。

ウ 本願発明の「制作仕様」,「アセット取得仕様」及び「アセット収集仕様」について

(ア)引用発明のコンテンツ企画(S1)で設定する各シーン(シーン#x)の「シーン内容」,「シーン構成や時間割」(構成b2)は,作業者が意図するコンテンツ内容に従って入力するものであって,各シーンのコンテキスト,シーケンス,フォアグラウンド又はバックグラウンドレベルを設定するものといえる。また,引用発明の「オーディオ設定」(構成c6,構成e)及び「画像処理設定」(構成c6,構成e)は,「撮像映像データ」の再生に同期してBGMやナレーションの再生と画像エフェクトやスーパーインポーズの画像エフェクトが行われるものであって,「撮像映像データ」を如何にレンダリングすべきかを定めるものといえる。
そして,本願明細書には,上記ア(カ)のとおり「制作仕様」について記載されているから,引用発明の「シーン内容」,「シーン構成や時間割」,「オーディオ設定」及び「画像処理設定」は,本願発明の「制作仕様」に相当する。

(イ)引用発明のコンテンツ企画(S1)で設定する各シーン(シーン#x)の「シーンの撮像方法の指示」(構成b3)及び「撮像法領域103」に記述される「ズームアップやパンなどの撮像方法」(構成e9)は,撮像者に撮像してもらいたい情景を伝える内容であって,本願明細書には上記ア(キ)のとおり記載されているから,本願発明の「アセット取得仕様」及び「アセット収集仕様」に相当する。

エ 構成B1について

引用発明の構成c1は,「コンテンツ企画データ」を取得するステップであり,上記(1)のとおり当該「コンテンツ企画データ」は本願発明の「リッチストーリーボード」に相当し,また,引用発明の構成c1で取得する「コンテンツ企画データ」は,上記ウのとおり本願発明の「制作仕様」に相当する「シーン内容」,「シーン構成や時間割」,「オーディオ設定」及び「画像処理設定」を含むものである。
よって,引用発明の構成c1と本願発明の構成B1は,
「ビデオ作品に使用する制作仕様及びストーリービートシーケンスを定義するリッチストーリーボードに従って生成されるアセット取得仕様を受信する」点で共通する。
しかしながら,「リッチストーリーボード」について,本願発明は「複数のビデオ作品に使用する」ものであるのに対し,引用発明はそのような特定がない点で相違する(以下,「相違点1」という。)。

オ 構成B2について

(ア)引用発明の構成c1で取得する「コンテンツ企画データ」に含まれる「シーン設定データSC#1(P)」の「タイトル文字や背景画を設定したタイトルシーン」(構成e8)は,上記イ(エ)のとおり「共有ストーリービートアセット」といえるから,本願発明の「ストーリービートアセットの第1の部分」に相当する。

(イ)引用発明の構成c1で取得する「コンテンツ企画データ」に含まれる「シーン設定データSC#4(P)」(構成e8)は,「シーンの撮像方法の指示」が設定され,当該「シーンの撮像方法の指示」で撮像者に撮像してもらう「撮像映像データ」を含むものである。
そして,上記イ(ア)及び(イ)のとおり,引用発明の「シーンの撮像方法の指示」及び「撮像映像データ」は本願発明の「アセット取得仕様」及び「アセット取得仕様に関連付けられた個別化ストーリービートアセット」といえるから,引用発明の「シーン設定データSC#4(P)」と本願発明の「ストーリービートアセットの第2の部分」とは,「アセット取得仕様に関連付けられた個別化ストーリービートアセットである」点で共通する。
しかしながら,「個別化ストーリービートアセット」について,本願発明は「アセット許容仕様に関連付けられ」たものであるが,引用発明は「アセット許容仕様に関連付けられ」てはいない点で相違する(以下,「相違点2」という。)。

(ウ)よって,上記相違点2を有している点を除き,引用発明の構成c1は本願発明の構成B2に相当する。

カ 構成B3について

引用発明の構成c1で取得する「コンテンツ企画データ」に含まれる「シーン設定データSC#4(P)」(構成e9)は,「映像設定領域100」を有しており,当該映像設定領域100には,「テキストやシンボルによって映像イメージが表示され,実際にビデオカメラ1によって撮像を行う撮像者に撮像してもらいたい情景を伝える内容」が設定されるものである。当該「テキストやシンボルによる映像イメージ」はコンピュータ実施グラフィカルの形態であり,撮像者が撮像するための取得インタフェースといえるから,本願発明の構成B3の「コンピュータ実施グラフィカルアセット取得インタフェース」に相当する。
そして,引用発明の「シーン設定データSC#4(P)」の当該インタフェースを介して,「シーンの撮像方法の指示」に従って撮像者が「撮像映像データ」を撮像するから,引用発明の構成c1は本願発明の構成B3に相当する。

キ 本願発明の「コンピュータ実施アセットコーチングサブシステム」について
引用発明のビデオカメラ1におけるシステムコントローラ11がシーン撮像の手順として実行する処理(構成c)は,撮像者が「撮像映像データ」を撮像する「シーン撮像」をコーチングするシステムといえるから,本願発明の構成Bの「コンピュータ実施アセットコーチングサブシステム」に相当する。

ク 以上ア?キによれば,引用発明と本願発明の構成Bは,相違点1及び相違点2の相違を有しており,その余の点で共通する。

(3)構成Cについて

本願発明は,「前記アセットコーチングサブシステムと通信するコンピュータ実施アセット監査サブシステムであって,前記個別化アセットデータを監査して,前記個別化アセットデータがアセット許容仕様に準拠するか否かを判断するように動作可能なコンピュータ実施アセット監査サブシステムと」を備えているのに対し,引用発明の「ビデオカメラ1」は,そのような構成を備えていない点で相違する(以下,「相違点3」という。)。

(4)構成Dについて

ア 引用発明の構成c4は,「シーン設定データSC#x」に従って「撮像した撮像映像データ」とシーンナンバ(#x)やコンテンツ企画データ自体の識別情報なども送信することで,「コンテンツ企画装置」においてコンテンツを完成させることができるもの(構成d)であるから,「ビデオ作品をレンダリングすることができるよう通信するように更に動作可能である」といえる。そして,上記(2)イ(イ)のとおり,引用発明の「撮像映像データ」は,本願発明の「個別化ストーリービートアセット」に相当する。
よって,引用発明の構成c4と本願発明の構成D1は,「前記ストーリービートシーケンスに従ってビデオ作品をレンダリングすることができるよう,各個別化ストーリービートアセットの前記個別化アセットデータを通信するように更に動作可能であ」る点で共通する。
しかしながら,「個別化アセットデータを通信する」場合について,本願発明は「前記個別化アセットデータが前記アセット許容仕様に準拠する場合」であるのに対し,引用発明は,そのような構成を備えていない点で相違する(以下,「相違点4」という。)。

イ 引用発明の構成c6は,各シーンが再生され,オーディオ設定さらに画像処理設定に従って「完成品の映像コンテンツ」となるから,本願発明の「制作仕様及びそれに関連付けられた個別化アセットデータに従ってレンダリングされる」に相当する。
よって,引用発明の構成c6は本願発明の構成D2に相当する。

ウ 以上ア及びイによれば,引用発明と本願発明の構成Dは,「個別化アセットデータを通信する」場合について,本願発明は「前記個別化アセットデータが前記アセット許容仕様に準拠する場合」であるのに対し,引用発明は,そのような構成を備えていない点で相違し(相違点4),その余の点で共通する。

(5)構成Eについて

引用発明の「コンテンツ企画装置」(構成d)は,「ビデオカメラ1から送信される撮像映像データ」を「コンテンツ企画データに組み込んでコンテンツを完成させ」るものであり,当該「撮像映像データ」をコンテンツ企画データに組み込んで「コンテンツを完成させる」ことは,「レンダリング」する装置といえるから,本願発明の「コンピュータ実施ストーリーバインレンダリングサブシステム」に相当する。
したがって,引用発明の構成dは,本願発明の構成Eに相当する。

(6)構成Fについて

ア 引用発明の構成d1は,「ビデオカメラ1から送信される撮像映像データ」を受信するものであって,上記(2)イ(イ)のとおり,引用発明の「撮像映像データ」は,本願発明の「個別化ストーリービートアセット」に相当するから,本願発明の構成F1に相当する。

イ 引用発明の構成d2及び構成d3の「コンテンツ企画データに撮像映像データを組み込むこと」,「或るシーン」について撮像映像データを「選択したり,編集する」こと及び「コンテンツを完成させること」は,上記(5)のとおり「レンダリング」することといえるから,引用発明の構成d2及び構成d3は,本願発明の構成F2に相当する。

ウ 上記(2)イ(エ)のとおり,引用発明の「素材データベースに保存されている静止画や動画」,「定番カット」(構成b3),「BGMとしての音楽データ」(構成e7)及び「静止画や動画」(構成e8)は,本願発明の「共有アセットデータ」に相当し,引用発明の「コンテンツ企画データ」に組み込まれた「静止画や動画」,「定番カット」及び「BGMとしての音楽データ」は,本願発明の「共有ストーリービートアセット」に相当する。
よって,上記イと同様に,引用発明の構成d2及び構成d3は,本願発明の構成F3に相当する。

エ 上記(2)イ(イ)のとおり,引用発明の「撮像映像データ」(構成c4,構成d)は,撮像者がビデオカメラ1でシーン撮像手順に従って本願発明の「個別化アセットデータ」に相当し,引用発明の「コンテンツ企画データ」に組み込まれた「撮像映像データ」(構成d)は,本願発明の「個別化ストーリービートアセット」に相当する。
よって,上記ウと同様に,引用発明の構成d2及び構成d3は,本願発明の構成F4に相当する。

オ 以上ア?エによれば,引用発明の構成dは,本願発明の構成Fに相当する。

(7)一致点,相違点
したがって,本願発明と引用発明とは,以下のとおりの一致点,相違点を有する。

(一致点)
(A)リッチストーリーボードに従って生成されるビデオ作品で使用される個別化アセットを取得するストーリーメーカーシステムであって,
(B)コンピュータ実施アセットコーチングサブシステムであって,
(B1’)制作仕様及びストーリービートシーケンスを定義するリッチストーリーボードに従って生成されるアセット取得仕様を受信することであって,
(B2’)各ストーリービートは1組のストーリービートアセットを含み,
前記ストーリービートアセットの第1の部分は,共有アセットデータに関連付けられた共有ストーリービートアセットであり,
前記ストーリービートアセットの第2の部分は,アセット取得仕様に関連付けられた個別化ストーリービートアセットである,受信すること,及び
(B3)コンピュータ実施グラフィカルアセット取得インタフェースを介して,各アセット収集仕様に従って各個別化ストーリービートアセットの個別化アセットデータを取得すること,
(B)を行うように動作可能なコンピュータ実施アセットコーチングサブシステム,
を備え,
(D)前記コンピュータ実施アセットコーチングサブシステムは,
(D1’)前記ストーリービートシーケンスに従ってビデオ作品をレンダリングすることができるよう,各個別化ストーリービートアセットの前記個別化アセットデータを通信するように更に動作可能であり,
(D2)各個別化ストーリービートアセットは,前記制作仕様及びそれに関連付けられた前記個別化アセットデータに従ってレンダリングされる,
システムであって,
(E)前記ストーリーメーカーシステムは,コンピュータ実施ストーリーバインレンダリングサブシステムと通信するものであり,
(F)前記コンピュータ実施ストーリーバインレンダリングサブシステムが,
(F1)前記コンピュータ実施アセットコーチングサブシステムから各個別化ストーリービートアセットの前記個別化アセットデータを受信することと,
(F2)前記ストーリービートシーケンスに従ってビデオ作品をレンダリングすることであって,
(F3)各共有ストーリービートアセットを前記制作仕様及びそれに関連付けられた前記共有アセットデータに従ってレンダリングすること,
(F4)及び各個別化ストーリービートアセットを前記制作仕様及びそれに関連付けられた個別化アセットデータに従ってレンダリングすることを含む,レンダリングすることと,
を行うように動作可能である,
(A)ストーリーメーカーシステム。

(相違点1)
「リッチストーリーボード」について,本願発明は「複数のビデオ作品に使用する」ものであるのに対し,引用発明はそのような特定がない点。

(相違点2)
「個別化ストーリービートアセット」について,本願発明は「アセット許容仕様に関連付けられ」たものであるが,引用発明は「アセット許容仕様に関連付けられ」てはいない点。

(相違点3)
本願発明の「ストーリーメーカーシステム」は,「前記アセットコーチングサブシステムと通信するコンピュータ実施アセット監査サブシステムであって,前記個別化アセットデータを監査して,前記個別化アセットデータがアセット許容仕様に準拠するか否かを判断するように動作可能なコンピュータ実施アセット監査サブシステム」を備えているのに対して,引用発明の「ビデオカメラ1」はそのような構成を備えていない点。

(相違点4)
「個別化アセットデータを通信する」場合について,本願発明は「前記個別化アセットデータが前記アセット許容仕様に準拠する場合」であるのに対し,引用発明は,そのような構成を備えていない点。

第6 判断

(1)相違点についての判断

ア 相違点1について
引用発明には,構成e6の「テンプレート」として,「旅行代理店が観光案内用に作成する映像コンテンツのためのテンプレート,不動産業者が物件紹介用に作成する映像コンテンツのためのテンプレート,或る商品の宣伝用に作成する映像コンテンツのためのテンプレート」などが例示されている。企画作業者が,「不動産業者が物件紹介用に作成する映像コンテンツのためのテンプレート」を用いてコンテンツ企画データを作成した場合に,作成したコンテンツ企画データを,複数の不動産物件の紹介に使用して,それぞれの物件毎にコンテンツを作成することは,普通に想定されることであるから,引用発明において,一つのコンテンツ企画データを複数のコンテンツに使用するように構成することは,当業者が容易に想到し得たことである。
よって,引用発明において,コンテンツ企画データを「複数のビデオ作品に使用する」ものとすることは当業者が容易に想到し得たことである。

イ 相違点2?相違点4について
(ア)上記第4の3キのとおり,引用文献2には引用文献2に記載された技術が記載されていると認められる。
引用文献2に記載された技術の「エンドユーザが生成したメディアコンテンツ」は,エンドユーザがビデオカメラにより記録した特定シーンのコンテンツであるから,本願発明の「個別化ストーリービートアセット」に相当する。また,引用文献2に記載された技術の「命令」は,エンドユーザにエンドユーザによって生成されたメディアコンテンツの内容やカメラや他の装置の状態を保つことを命令するものであって,当該「命令」に従っていないと判断することに応答して,エンドユーザが生成したメディアコンテンツをエンドユーザが挿入することを禁止することから,「個別化ストーリービートアセット」が許容されるか否かの仕様といえる。よって,引用文献2に記載された技術の「命令」は,本願発明の「アセット許容仕様」に相当する。

(イ)引用発明は,コンテンツ企画データに基づいて撮像を行うビデオカメラ1(構成a)であって,企画作業者がコンテンツ企画を行い(構成b),前記コンテンツ企画データに含まれるシーン設定データSC#xに従って撮像者がシーン撮像作業を実行する(構成c),ビデオカメラである。引用文献2に記載された技術は,対話式ビデオテンプレートであるビデオテンプレートは,ユーザ(例えば,ビデオアーティスト,プロデューサ)によって作成され,前記ビデオテンプレートに含まれる命令に従ってエンドユーザがビデオクリップを作成するメディアアプリケーションであり,当該メディアアプリケーションはビデオカメラにインストールされてもよい技術である。
両者を検討すると,両者は,企画作業者(ビデオアーティスト,プロデューサ)が作成したコンテンツ企画データ(ビデオテンプレート)に従って撮像者(エンドユーザ)がビデオクリップを作成するビデオカメラに関する技術という点で共通の技術分野に属するものである。
そして,引用発明と同じ技術分野に属する引用文献2に記載された技術を採用することは,当業者ならば容易に想到し得たものといえる。

(ウ)ここで,引用発明に引用文献2に記載された技術を適用してなし得た発明は,撮像者が「命令」を「撮像映像データ」に提供したかどうかを判定するために,当該「命令」をコンテンツ企画データに含む構成とし,「撮像映像データ」が当該「命令」に従っているかどうかを判定する構成とし,当該「命令」に従っていないと判断することに応答して,「撮像映像データ」をシーン設定データSC#xに組み込むことを禁止する構成を有するものといえる。
引用発明に引用文献2に記載された技術を適用してなし得た発明において,「命令」をコンテンツ企画データに含む構成とし,「撮像映像データ」が当該「命令」に従っているかどうかを判定する構成とすることは,「個別化ストーリービートアセット」が「アセット許容仕様に関連付けられた個別化ストーリービートアセットである」ことといえ,また,ビデオカメラにおいて,「前記個別化アセットデータがアセット許容仕様に準拠するか否かを判断するように動作可能」であるといえる。また,引用発明に引用文献2に記載された技術を適用してなし得た発明において,当該「命令」に従っていないと判断することに応答して,「撮像映像データ」をシーン設定データSC#xに組み込むことを禁止することは,「命令」に従っていると判断することに応答して,「撮像映像データ」をシーン設定データSC#xに組み込んで通信することであるから,「前記個別化アセットデータが前記アセット許容仕様に準拠する場合」に「個別化アセットデータを通信する」構成といえる。

(エ)上記(ウ)の引用発明に引用文献2に記載された技術を適用してなし得た発明の各構成は,相違点2?相違点4に相当する構成であるといえる。したがって,引用発明に引用文献2に記載された技術を適用して,引用発明において相違点2?相違点4に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

(オ)そして,これらの相違点を総合的に勘案しても,本願発明の奏する作用効果は,引用発明及び引用文献2に記載された技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。

(2)請求人の主張について
請求人は,審判請求書において,
「(A)まず,本件では,審査官殿によりなされた本願発明と引用発明との対比に看過できない錯誤があるのでその点を指摘する。
(中略)
上記内容をまとめると,参考図に示すような対比・認定をしていることになる。
(中略)
このように,本願発明と引用発明との対比に看過できない錯誤があり,前提となる引用文献の認定に不備があるので,審査官殿の判断は失当であると思料する。」

「(B)上述したように,本願請求項1に係る発明は,「ストーリーメーカーシステムが,コンピュータ実施ストーリーバインレンダリングサブシステムと通信する」ものである。
具体的には,本願の図1に示されているように,ストーリーメーカーシステム120と,ストーリーレンダリングサブシステム190を含むエージェンシーシステム105とはネットワーク140を介して接続されるものである。
そして,このような構成を採用することにより,「非プロフェッショナルに見えるビデオ作品が不十分であるか,又は望ましくなく,従来のプロフェッショナルなビデオ制作ワークフローを使用することに法外なコスト及び/又は時間がかかる(又は他の様式で非現実的であるか,又は望ましくない)状況に対処する」ことが可能となる(段落0012)。
しかるに,引用文献1,2にはこのような構成は記載も示唆もされていない。
また,仮に引用文献1,2を組み合わせることができたとしても,本願請求項1から把握されるようなネットワークで接続されるシステムの構成は導き出すことはできないものと思料する。」

上記(A)について検討すると,本願発明と引用発明の各構成の対応関係については,上記「第5 対比」において検討したとおりであるところ,当該対比における本願発明と引用発明の各構成の対応関係は,拒絶査定において説示された対応関係と同様のものであって,拒絶査定では,審判請求書の参考図で示されるような対比・認定がなされているとは認められないことから,この点についての請求人の主張は採用することができない。

次に,上記(B)について検討すると,引用文献1には,上記「第4 引用文献の記載及び引用発明」の「2 引用発明」において認定したとおりの発明が記載されており,当該引用発明は,「本願請求項1から把握されるようなネットワークで接続されるシステムの構成」であるから,この点についての請求人の主張も採用することができない。

(3)まとめ
以上のとおりであるから,本願発明は,引用発明及び引用文献2に記載された技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明及び引用文献2に記載された技術に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-09-27 
結審通知日 2019-10-01 
審決日 2019-11-25 
出願番号 特願2015-542049(P2015-542049)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 富樫 明  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 藤原 敬利
須田 勝巳
発明の名称 共有アセット及び個別化アセットからのストーリーボード指示ビデオ制作  
代理人 田嶋 亮介  
代理人 村井 康司  

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