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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F21S
管理番号 1361358
審判番号 不服2017-9010  
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-06-20 
確定日 2020-04-06 
事件の表示 特願2014-534925号「光源システムおよびレーザ光源」拒絶査定不服審判事件〔平成25年4月18日国際公開、WO2013/053264、平成27年1月15日国内公表、特表2015-501508号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012年(平成24年)8月10日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2011年10月11日 (CN)中華人民共和国)を国際出願日とする出願であって、平成28年5月20日付けで拒絶理由が通知され、同年10月21日に意見書及び手続補正書が提出され、平成29年2月17日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対して、同年6月20日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出され、その後、当審において平成30年11月27日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成31年4月26日に意見書及び手続補正書が提出され、令和1年8月7日付けで審尋が通知され、同年8月30日に回答書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?25に係る発明は、平成31年4月26日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?25に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項20に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「 【請求項20】
2つのレーザ群であってこのうち少なくとも1つのレーザ群が少なくとも2つのレーザを含み且つこの2つのレーザによって発生された各光束が同一方向であってかつ平行する、2つのレーザ群を含み、
前記2つのレーザ群の、それぞれの出射光からなる光束に垂直な1つの断面への、各レーザのベースの第1の投影の2つの投影群の、第1の方向に垂直な断面への第2の投影は、部分的に重なっており、前記第2の投影は線分であり、前記第1の方向は、1つのレーザ群内の少なくとも2つのレーザのベースの中心を結ぶ線の方向であり、
前記2つのレーザ群のそれぞれの第1の投影が、レーザ群内のレーザのベースの中心を通る直線であるそれぞれのラインに沿ってそれらの方向である第1の方向に互いにオフセットし、且つ、2つの隣接するレーザのそれぞれの第1投影は互いに接触し、又は互いに分離しており、
前記2つのレーザ群内の群間のレーザによって発生される間隔を有した状態で隣り合う光束が反射鏡によって反射された後に形成された光スポットは、第2の方向で間隔がゼロで隣接しており、前記第2の方向は、当該反射鏡の入射光束の断面と出射光束の断面の両方に平行する方向である
ことを特徴とするレーザ光源。」

第3 当審拒絶理由
当審拒絶理由は、以下の理由を含むものであり、その概要は、以下のとおりである。
[理由]
この出願の請求項1?25に係る発明は、その優先日前日本国内又は外国において頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1:特開2007-17925号公報
2:特表2011-505593号公報
3:特開平2-61611号公報
以下、それぞれ「引用文献1ないし3」という。

第4 引用文献
1 引用文献1について
(1)引用文献1に記載された事項
引用文献1には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審が付した。以下、同様である。)。
(1a)
「【0010】
なお、上記の半導体レーザが列設された構成においては、高輝度化のために、半導体レーザ同士およびコリメートレンズ同士の間隔を極力小さくして高密度に配置することが有効である。しかし、あまりに高密度に配置すると、半導体レーザやコリメートレンズを実装するための空間を十分にとれず、構成部品や調整にとって大きな制約となり、部品コストや調整装置、調整工数にとって不利となり、コストアップにつながる。
・・・
【0014】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、低コストで高輝度の合波レーザ光源を提供することを目的とする。」
(1b)
「【0042】
半導体レーザLD1、LD2、LD3、LD4は全て、発振波長が405nm、出力50mWであり、発光素子が個別に気密封止されたφ5.6mmのcan型のパッケージ構造を有する。このパッケージ構造は、図4に示すように、頂部に出射窓1が設けられた略円筒型のキャップ2により台座3上に固定された発光素子であるチップ4が被包され、キャップ2のフランジ部5がステム6とハーメチックシールされることにより気密封止されたものである。
・・・
【0045】
3つの半導体レーザLD1、LD2、LD3は、集光レンズ20の光軸から所定距離離れた位置にビームの出射方向がx方向に平行になるように、z方向に10mmの間隔をもって配置され、そのy方向の高さはそれぞれビームスポットS1、S2、S3の中心の高さと同じである。
【0046】
本実施形態においては、3つの半導体レーザLD1、LD2、LD3のz方向の間隔は10mmであるが、これに限定するものではなく、半導体レーザおよびコリメートレンズの実装および調整作業が十分な値となるように間隔を決めることが望ましい。
・・・
【0055】
本実施形態の合波レーザ光源によれば、φ5.6mmのパッケージに実装された半導体レーザLD1、LD2、LD3、LD4およびコリメートレンズC1、C2、C3、C4は容易に実装、調整できる間隔を保つとともに、半導体レーザLD1、LD2、LD3、LD4からのビームを近接して集光レンズ20に入射させており、低コストで高輝度化を実現したものとなっている。
・・・
【0063】
実際に上記光源を作製する際の調整工程では、各部材を配置した後、半導体レーザのcan型パッケージをビームの光軸の周りに回転させてビームスポットの長軸方向を決定した後、各コリメートレンズをそれぞれビームの光軸方向に調整して平行光化し、ビームが偏向部材の有効範囲に入り、且つビームが遮光されることがないことを確認し、集光レンズ20の面上で所定のビームパターンBP1が形成され、最終的には4つのビームが集光レンズで1点に集まるように、各軸の方向を合わせるべくコリメートレンズxy位置を調整して固定する。この調整は偏向部材を調整することによって行ってもよい。」
(1c)
「【0083】
次に、本発明の第4の実施形態による合波レーザ光源について説明する。図12、図13(A)、図13(B)はそれぞれ、本実施形態による合波レーザ光源の斜視図、平面図、側面図である。ただし、図13(B)においては、半導体レーザとコリメートレンズの図示を省略している。なお、図12、図13(A)、図13(B)および以下の説明では、集光レンズ20の光軸方向をz方向として、z方向に垂直な2つの方向をx方向およびy方向とし、図13(A)をy方向に垂直な面内の図、図13(B)をx方向に垂直な面内の図としている。
【0084】
本実施形態における合波レーザ光源は、8個の半導体レーザLD1、LD2、LD3、LD4、LD5、LD6、LD7、LD8と、各半導体レーザLD1、LD2、LD3、LD4、LD5、LD6、LD7、LD8に対してそれぞれの出射端近傍に配設されたコリメートレンズC1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8と、各半導体LD1、LD2、LD3、LD4、LD5、LD6、LD7、LD8からのビームを偏向するために各半導体に対してそれぞれ設けられた偏向部材P41、P42、P43、P44、P45、P46、P47、P48と、1つの集光レンズ20と、集光されたビームが入射するファイバ30とから構成される。
【0085】
本実施形態では、上記8つの半導体レーザLD1、LD2、LD3、LD4、LD5、LD6、LD7、LD8それぞれから出射されたビームに対応する8つのビームスポットにより、図12に示すように、集光レンズ20の光軸に垂直な面内で2×4の行列状のビームパターンBP4が形成されている。各ビームスポットは略楕円形状を有し、その長軸方向は行方向であるx方向とほぼ平行であり、隣接して配列されている。
【0086】
なお、図12においては、集光レンズ20の形状は概念的に示してあり、各コリメートレンズから集光レンズ20までの光路の光軸を一点鎖線で示し、上記ビームスポットからファイバ30までのビームの一部を実線および破線で示している。また、図12および図13(B)では、各偏向部材の面上におけるビームスポットの形状を模式的に示している。
【0087】
上記ビームパターンを形成するために、半導体レーザLD1、LD2、LD3、LD4、LD5、LD6、LD7、LD8は活性層がy方向に平行になるように図14に示すように出射ビームの光軸周りの角度を調整されている。なお、図14は代表的に半導体レーザLD1とコリメートレンズC1を示し、図12(A)と同じくy方向に垂直な面内の図であり、内部を示すためキャップ2を切開した状態を示す図である。
【0088】
半導体レーザLD1、LD2、LD3、LD4、LD5、LD6、LD7、LD8は、その出射方向がx方向となるように集光レンズ20の光軸の一側に調整可能な間隔をもって並列配置され、その発光点のy方向の高さは集光レンズ20の光軸に垂直な面内に投影される各ビームスポットの中心位置に合わせた高さとなるように配置されている。
【0089】
4つの半導体レーザLD1、LD3、LD5、LD7は第1の半導体レーザ組を構成し、4つの半導体レーザLD2、LD4、LD6、LD8は第2の半導体レーザ組を構成する。第2の半導体レーザ組は、第1の半導体レーザ組からy方向およびz方向に偏位した位置に配置された第1の半導体レーザ組と同数の半導体レーザからなるものと考えられる。このように構成して、第1の半導体レーザ組と同じものをユニットとして複数作製しておき、このユニットを所定位置およびそれから偏位させた位置に配置すれば、実装が容易になる。
【0090】
偏向部材P41、P42、P43、P44、P45、P46、P47、P48は第1の実施形態の偏向部材P2、P3と同様の機能を果たすものであり、これらと同様に45度の傾斜角を有する直角プリズムからなり、傾斜面に誘電体HRコートが施されて反射面が形成され、45度先端はナイフエッジ加工されているが、その反射面内に反射するビームのビームスポットが入る大きさとなっている。
【0091】
第1の実施形態の偏向部材P1、P2、P3と同様に、本実施形態の偏向部材P41、P42、P43、P44、P45、P46、P47、P48も光路をx方向からz方向に90度折り曲げて所定のビームパターンを形成すべく、半導体レーザLD1、LD2、LD3、LD4、LD5、LD6、LD7、LD8から出射されたビームと集光レンズ20の有効径を通りz方向に平行な直線との交点に配置され、半導体レーザLD1、LD2、LD3、LD4、LD5、LD6、LD7、LD8から出射されたビームを集光レンズ20に入射させるようにその反射面はz方向と45度の角度をなす。また、偏向部材P41、P42、P43、P44、P45、P46、P47、P48は、反射するビームが有効範囲に入り、且つ後方から進行するビームを遮らないような形状、大きさ、配置となっている。」
(1d)
図4及び図12?14は、以下のとおりである。


(2)引用文献1に記載された発明
摘記(1c)から、以下の構成が認められる。

上記(1)の摘記において、「半導体レーザLD1、LD2、LD3、LD4、LD5、LD6、LD7、LD8」等に対して用いられている「8個」という記載は、同様に用いられている「8つ」という記載との混同を避けるため、以下、「8つ」と読み替えて記載する。また、同様の理由により、「各半導体」という記載も、「各半導体レーザ」に読み替えて記載する。
「8つの半導体レーザLD1、LD2、LD3、LD4、LD5、LD6、LD7、LD8と、各半導体レーザLD1、LD2、LD3、LD4、LD5、LD6、LD7、LD8に対してそれぞれの出射端近傍に配設されたコリメートレンズC1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8と、各半導体レーザLD1、LD2、LD3、LD4、LD5、LD6、LD7、LD8からのビームを偏向するために各半導体レーザに対してそれぞれ設けられた偏向部材P41、P42、P43、P44、P45、P46、P47、P48と、1つの集光レンズ20と、集光されたビームが入射するファイバ30とから構成される」、「合波レーザ光源」(段落【0084】)

「4つの半導体レーザLD1、LD3、LD5、LD7」で「構成」される「第1の半導体レーザ組」及び「4つの半導体レーザLD2、LD4、LD6、LD8」で「構成」される「第2の半導体レーザ組」(段落【0089】)

8つの「半導体レーザLD1、LD2、LD3、LD4、LD5、LD6、LD7、LD8は、その出射方向がx方向となるように集光レンズ20の光軸の一側に調整可能な間隔をもって並列配置され、その発光点のy方向の高さは集光レンズ20の光軸に垂直な面内に投影される各ビームスポットの中心位置に合わせた高さとなるように配置され」る(段落【0088】)

「第2の半導体レーザ組は、第1の半導体レーザ組からy方向およびz方向に偏位した位置に配置された第1の半導体レーザ組と同数の半導体レーザからなる」(段落【0089】)構成が認められるところ、図13(A)及び(B)を併せて参照すると、当該構成は、 実質的に、「第2の半導体レーザ組は、第1の半導体レーザ組からx方向、y方向およびz方向に偏位した位置に配置された第1の半導体レーザ組と同数の半導体レーザからなる」構成であると認められる。

「偏向部材P41、P42、P43、P44、P45、P46、P47、P48は」、それぞれ「45度の傾斜角を有する直角プリズムからなり」、各「傾斜面に」「反射面が形成され」、「その反射面内に反射するビームのビームスポットが入る大きさとなっている」(段落【0090】)

「光路をx方向からz方向に90度折り曲げて所定のビームパターンを形成すべく」、8つの「半導体レーザLD1、LD2、LD3、LD4、LD5、LD6、LD7、LD8から出射された各ビームを集光レンズ20に入射させるようにその反射面はz方向と45度の角度をなす」(段落【0091】)

「偏向部材P41、P42、P43、P44、P45、P46、P47、P48は、反射するビームが有効範囲に入り、且つ後方から進行するビームを遮らないような形状、大きさ、配置となっている」(段落【0091】)

さらに、摘記(1a)?(1c)及び図4、12?14(摘記(1d)を参照)から、以下の構成が認められる。

摘記(1c)の段落【0091】及び図12、13(A)(B)から、4つの半導体レーザLD1、LD3、LD5、LD7に対応してそれぞれ反射面が形成された4つの偏向部材P41、P43、P45、P47及び4つの半導体レーザLD2、LD4、LD6、LD8に対応してそれぞれ反射面が形成された偏向部材P42、P44、P46、P48の構成が認められる。

摘記(1c)の段落【0083】、【0085】及び図12、図13(A)(B)を参照して、集光レンズ20の光軸方向をz方向とし、z方向に垂直な方向であり、かつ、集光レンズ20に形成される略楕円形状のビームスポットの長軸方向とほぼ平行な行方向(すなわち図13(A)の図面の上下方向)をx方向とし、z方向及びx方向に垂直な方向(すなわち図13(B)の図面の上下方向)をy方向として定義する。
なお、各方向は、軸方向を意味しているが、摘記(1c)の段落【0083】?【0091】の各方向の記載に併せて、軸は省略した。

摘記(1b)の段落【0042】には、「略円筒画型のキャップ2」と記載されており、併せ図4を参照すると、「ステム6」は、当該「略円筒画型のキャップ2」と同心円状に配置されていることが明らかであるから、「ステム6」は、円形状であるといえる。
そして、さらに、摘記(1b)の段落【0042】及び図4、12?14を参照すると、8つの半導体レーザLD1、LD2、LD3、LD4、LD5、LD6、LD7、LD8のそれぞれに設けられている円形状のステム6のx方向に垂直な面への投影は、対応する8つのコリメートレンズC1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8のx方向に垂直な面への投影、すなわち、対応する8つの半導体レーザLD1、LD2、LD3、LD4、LD5、LD6、LD7、LD8のそれぞれから出射されたビームのx方向に垂直な面への略楕円形状の投影を、中央に含むことができる大きさの円形状の投影であり、その円形状の直径は前記略楕円状の長軸の長さより大きいものである構成が認められる。

段落【0089】及び図13(A)(B)を参照すると、第1の半導体レーザ組の4つの半導体レーザLD1、LD3、LD5、LD7は、x方向とy方向の位置が同じであり、第2の半導体レーザ組の4つの半導体レーザLD2、LD4、LD6、LD8は、x方向とy方向の位置が同じである構成が認められる。

摘記(1c)の段落【0085】及び図12、13(A)(B)を参照しつつ、「8つの半導体レーザLD1、LD2、LD3、LD4、LD5、LD6、LD7、LD8それぞれから出射された各ビーム」及び「2×4の行列状のビームパターンBP4」に着目すると、上記8つの半導体レーザLD1、LD2、LD3、LD4、LD5、LD6、LD7、LD8それぞれから出射された各ビームは互いに間隔をおいて隔たり(図13(A))、これらの各ビームに対応する偏向部材P41、P42、P43、P44、P45、P46、P47、P48の各反射面で反射されたビームが投影された8つのビームスポットにより(図12)、集光レンズ20の光軸に垂直な面内で2×4の行列状のビームパターンBP4(段落【0085】)すなわちy方向の下側の行となる偏向部材P41、P43、P45、P47の各反射面で反射されたビームが投影された4つのビームスポット及びy方向の上側の行となる偏向部材P42、P44、P46、P48の各反射面で反射されたビームが投影された4つのビームスポットの2×4の行列状のビームパターンBP4が形成され(図12)、各ビームスポットは略楕円形状を有し、その長軸方向は行方向であるx方向とほぼ平行であり、その短軸方向は列方向であるy方向とほぼ平行であり、各ビームスポットはx方向とy方向とで接するように隣接して配列される(段落【0085】及び図12)構成が認められる。
補足すると、段落【0085】には、「隣接して配列される」と記載されており、これに併せて、図12の各ビームスポットの配列を参照すると、各ビームスポットはx方向とy方向とで接するような態様で、すなわち接するように、隣接して配列されることが明らかである。

上記ク、ケ、シ(偏向部材P41、P42、P43、P44、P45、P46、P47、P48に係る構成、x方向、y方向及びz方向の定義等)と、図12、図13(特に図13(A))とを併せて参照すると、偏向部材P41、P42、P43、P44、P45、P46、P47、P48の反射面部(図12)のy方向に垂直な断面における断面形状は、45度の傾斜角を有する傾斜面である反射面の前記断面における辺を長辺とする、二等辺直角三角形であり、その二等辺直角三角形のz方向に延びる辺の長さは、半導体レーザLD1、LD2、LD3、LD4、LD5、LD6、LD7、LD8から出射されたビームのx方向に垂直な面への投影のz方向の長さとほぼ等しいものと認められる。


上記ア?ス、摘記(1a)?(1c)及び図4、12?14(摘記(1d参照)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
なお、本願発明との対比・判断等での説明を補足するために、引用発明をA?Hに分説し(以下「構成A」?「構成H」ということもある。)、【 】内は、上記ア?スの符号を記載した。

[引用発明]
「A:
8つの半導体レーザLD1、LD2、LD3、LD4、LD5、LD6、LD7、LD8と、各半導体レーザLD1、LD2、LD3、LD4、LD5、LD6、LD7、LD8に対してそれぞれの出射端近傍に配設されたコリメートレンズC1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8と、各半導体レーザLD1、LD2、LD3、LD4、LD5、LD6、LD7、LD8からのビームを偏向するために各半導体レーザに対してそれぞれ設けられた偏向部材P41、P42、P43、P44、P45、P46、P47、P48と、1つの集光レンズ20と、集光されたビームが入射するファイバ30とから構成される、合波レーザ光源であって【ア】、
B:
4つの半導体レーザLD1、LD3、LD5、LD7で構成される第1の半導体レーザ組及び4つの半導体レーザLD2、LD4、LD6、LD8で構成される第2の半導体レーザ組と【イ】、
4つの半導体レーザLD1、LD3、LD5、LD7に対応してそれぞれ反射面が形成された4つの偏向部材P41、P43、P45、P47及び4つの半導体レーザLD2、LD4、LD6、LD8に対応してそれぞれ反射面が形成された偏向部材P42、P44、P46、P48と【ク】、
を含み、
C:
集光レンズ20の光軸方向をz方向とし、z方向に垂直な方向であり、かつ、集光レンズ20に形成される略楕円形状のビームスポットの長軸方向とほぼ平行な行方向をx方向とし、z方向及びx方向に垂直な方向をy方向として定義すると【ケ】、
D:
第2の半導体レーザ組は、第1の半導体レーザ組からx方向、y方向およびz方向に偏位した位置に配置された第1の半導体レーザ組と同数の半導体レーザからなり【エ】、
第1の半導体レーザ組の4つの半導体レーザLD1、LD3、LD5、LD7は、x方向とy方向の位置が同じであり、第2の半導体レーザ組の4つの半導体レーザLD2、LD4、LD6、LD8は、x方向とy方向の位置が同じであり【サ】、
8つの半導体レーザLD1、LD2、LD3、LD4、LD5、LD6、LD7、LD8は、その出射方向がx方向となるように集光レンズ20の光軸の一側に調整可能な間隔をもって並列配置され、その発光点のy方向の高さは集光レンズ20の光軸に垂直な面内に投影される各ビームスポットの中心位置に合わせた高さとなるように配置され【ウ】、
E:
8つの半導体レーザLD1、LD2、LD3、LD4、LD5、LD6、LD7、LD8のそれぞれに設けられている円形状のステム6のx方向に垂直な面への投影は、対応する8つのコリメートレンズC1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8のx方向に垂直な面への投影、すなわち、対応する8つの半導体レーザLD1、LD2、LD3、LD4、LD5、LD6、LD7、LD8のそれぞれから出射されたビームのx方向に垂直な面への略楕円形状の投影を、中央に含むことができる大きさの円形状の投影であり、その円形状の直径は前記略楕円形状の長軸の長さより大きいものであり【コ】、
F:
上記8つの半導体レーザLD1、LD2、LD3、LD4、LD5、LD6、LD7、LD8それぞれから出射された各ビームは互いに間隔をおいて隔たり、これらの各ビームに対応する偏向部材P41、P42、P43、P44、P45、P46、P47、P48の各反射面で反射されたビームが投影された8つのビームスポットにより、集光レンズ20の光軸に垂直な面内で2×4の行列状のビームパターンBP4すなわちy方向の下側の行となる偏向部材P41、P43、P45、P47の各反射面で反射されたビームが投影された4つのビームスポット及びy方向の上側の行となる偏向部材P42、P44、P46、P48の各反射面で反射されたビームが投影された4つのビームスポットの2×4の行列状のビームパターンBP4が形成され、各ビームスポットは略楕円形状を有し、その長軸方向は行方向であるx方向とほぼ平行であり、その短軸方向は列方向であるy方向とほぼ平行であり、各ビームスポットはx方向とy方向とで接するように隣接して配列され【シ】、
G:
偏向部材P41、P42、P43、P44、P45、P46、P47、P48は、それぞれ45度の傾斜角を有する直角プリズムからなり、各傾斜面に反射面が形成され、その反射面内に反射するビームのビームスポットが入り【オ】、光路をx方向からz方向に90度折り曲げて所定のビームパターンを形成すべく、8つの半導体レーザLD1、LD2、LD3、LD4、LD5、LD6、LD7、LD8から出射された各ビームを集光レンズ20に入射させるように各反射面はz方向と45度の角度をなし【カ】、
偏向部材P41、P42、P43、P44、P45、P46、P47、P48の反射面部のy方向に垂直な断面における断面形状は、45度の傾斜角を有する傾斜面である反射面の前記断面における辺を長辺とする、二等辺直角三角形であり、その二等辺直角三角形のz方向に延びる辺の長さは、8つの半導体レーザLD1、LD2、LD3、LD4、LD5、LD6、LD7、LD8から出射されたビームのx方向に垂直な面への投影のz方向の長さとほぼ等しく【ス】、
偏向部材P41、P42、P43、P44、P45、P46、P47、P48は、その反射面内に反射するビームのビームスポットが入る大きさとなっており、反射するビームが有効範囲に入り、且つ後方から進行するビームを遮らないような形状、大きさ、配置となっている【オ、キ】、
H:
合波レーザ光源。」

第5 対比
1 対比
本願発明と引用発明とを対比する。

(1)本願発明の「レーザ群」について

引用発明の構成Bの「4つの半導体レーザLD1、LD3、LD5、LD7」及び「4つの半導体レーザLD2、LD4、LD6、LD8」は、いずれも、本願発明の「少なくとも2つのレーザ」に相当する。

引用発明の構成Dの「8つの半導体レーザLD1、LD2、LD3、LD4、LD5、LD6、LD7、LD8は、その出射方向がx方向となるように」「並列配置され」ている構成は、「並列配置され」ている「8つの半導体レーザLD1、LD2、LD3、LD4、LD5、LD6、LD7、LD8」によって発生された各光束がx方向という同一方向となることから(例えば、2つの「半導体レーザLD1、LD3」によって発生された各光束がx方向という同一方向となることから)、引用発明のDの前記構成は、本願発明の「2つのレーザによって発生された各光束が同一方向であってかつ平行する」という構成に相当する。

引用発明の構成Bの「4つの半導体レーザLD1、LD3、LD5、LD7で構成される第1の半導体レーザ組」及び「4つの半導体レーザLD2、LD4、LD6、LD8で構成される第2の半導体レーザ組」は、いずれも、本願発明の1つの「レーザ群」に相当する。
そして、引用発明の構成Bの「4つの半導体レーザLD1、LD3、LD5、LD7で構成される第1の半導体レーザ組」及び「4つの半導体レーザLD2、LD4、LD6、LD8で構成される第2の半導体レーザ組」の両者は、本願発明の「2つのレーザ群」に相当する。

上記ア?ウを踏まえると、引用発明の構成Dの「8つの半導体レーザLD1、LD2、LD3、LD4、LD5、LD6、LD7、LD8は、その出射方向がx方向となるように」「並列配置され」る、構成Bの「4つの半導体レーザLD1、LD3、LD5、LD7で構成される第1の半導体レーザ組及び4つの半導体レーザLD2、LD4、LD6、LD8で構成される第2の半導体レーザ組」は、本願発明の「2つのレーザ群であってこのうち少なくとも1つのレーザ群が少なくとも2つのレーザを含み且つこの2つのレーザによって発生された各光束が同一方向であってかつ平行するようにする、2つのレーザ群」に相当する。

(2)本願発明の「第2の投影」について

引用発明の構成Dにおいて、「第1の半導体レーザ組の4つの半導体レーザLD1、LD3、LD5、LD7は、x方向とy方向の位置が同じであり、第2の半導体レーザ組の4つの半導体レーザLD2、LD4、LD6、LD8は、x方向とy方向の位置が同じであ」ることから、「第1の半導体レーザ組の4つの半導体レーザLD1、LD3、LD5、LD7」及び「第2の半導体レーザ組の4つの半導体レーザLD2、LD4、LD6、LD8」は、それぞれの組における各半導体レーザが、z方向の直線上に位置しているといえる。
このことと、引用発明の構成Dの「8つの半導体レーザLD1、LD2、LD3、LD4、LD5、LD6、LD7、LD8は」、「その発光点のy方向の高さは集光レンズ20の光軸に垂直な面内に投影される各ビームスポットの中心位置に合わせた高さとなるように配置され」る構成、及び、構成Fの「y方向の下側の行となる偏向部材P41、P43、P45、P47の各反射面で反射されたビームが投影された4つのビームスポット及びy方向の上側の行となる偏向部材P42、P44、P46、P48の各反射面で反射されたビームが投影された4つのビームスポットの2×4の行列状のビームパターンBP4が形成され、各ビームスポットは略楕円形状を有し、その長軸方向は行方向であるx方向とほぼ平行であ」る構成(図12及び13も参照)を踏まえると、引用発明の「4つの半導体レーザLD1、LD3、LD5、LD7」の発光点を結ぶ線の方向すなわちそれら各半導体レーザの「円形状のステム6」の中心を結ぶ線の方向、及び、「4つの半導体レーザLD2、LD4、LD6、LD8」の発光点を結ぶ線の方向すなわちそれら各半導体レーザの「円形状のステム6」の中心を結ぶ線の方向は、いずれも、引用発明の「z方向」と一致していることが、明らかである(図13及び後述するウも参照。)。
そして、引用発明の「円形状のステム6」は、本願発明の「レーザの円形のベース」に相当する(令和1年8月30日付けの回答書も参照。)。
したがって、引用発明の「z方向」は、「4つの半導体レーザLD2、LD4、LD6、LD8」の各「円形状のステム6」(レーザの円形のベース)の中心を結ぶ線の方向であり、「4つの半導体レーザLD2、LD4、LD6、LD8」の各「円形状のステム6」(レーザの円形のベース)の中心を結ぶ線の方向であり、1つのレーザ群内の少なくとも2つのレーザのベースの中心を結ぶ線の方向であるといえるから、引用発明の「z方向」は、本願発明の「1つのレーザ群内の少なくとも2つのレーザのベースの中心を結ぶ線の方向であ」る、「第1の方向」に相当する。

引用発明の構成Dの「8つの半導体レーザLD1、LD2、LD3、LD4、LD5、LD6、LD7、LD8は、その出射方向がx方向となる」という構成から、引用発明の「x方向」は、出射光からなる光束の方向であることが明らかであり、引用発明の構成Eの「x方向に垂直な面」は、本願発明の「出射光からなる光束に垂直な1つの断面」に相当する。
そして、引用発明の「円形状のステム6」は、本願発明の「レーザの円形のベース」に相当するから(上記ア)、引用発明の構成Eの「円形状のステム6のx方向に垂直な面への投影」は、本願発明の「出射光からなる光束に垂直な1つの断面への」「レーザのベースの第1の投影」に相当する。
このことに併せて、引用発明の構成Bの「4つの半導体レーザLD1、LD3、LD5、LD7で構成される第1の半導体レーザ組」及び「4つの半導体レーザLD2、LD4、LD6、LD8で構成される第2の半導体レーザ組」の両者は、本願発明の「2つのレーザ群」に相当すること(上記(1)ウ)を踏まえると、引用発明の構成Eの「8つの半導体レーザLD1、LD2、LD3、LD4、LD5、LD6、LD7、LD8のそれぞれに設けられている円形状のステム6のx方向に垂直な面への投影」、すなわち、「4つの半導体レーザLD1、LD3、LD5、LD7」の「それぞれに設けられている円形状のステム6のx方向に垂直な面への投影」及び「4つの半導体レーザLD2、LD4、LD6、LD8」の「それぞれに設けられている円形状のステム6のx方向に垂直な面への投影」は、本願発明の「前記2つのレーザ群の、それぞれの出射光からなる光束に垂直な1つの断面への、各レーザのベースの第1の投影の2つの投影群」に相当する。

引用発明の構成Eの「4つの半導体レーザLD1、LD3、LD5、LD7」の「それぞれに設けられているステム6のx方向に垂直な面への投影」を、「z方向」に垂直な面に投影したものは、それぞれy方向の長さを有する線分となり、同様に、引用発明の構成Eの「4つの半導体レーザLD2、LD4、LD6、LD8」の「それぞれに設けられているステム6のx方向に垂直な面への投影」を、「z方向」に垂直な面に投影した投影したものは、それぞれy方向の長さを有する線分となる。
したがって、上記ア及びイを踏まえると、引用発明の構成Eの「4つの半導体レーザLD1、LD3、LD5、LD7」の「それぞれに設けられているステム6のx方向に垂直な面への投影」を「z方向」に垂直な面に投影した各y方向の長さを有する線分、及び、構成Eの「4つの半導体レーザLD2、LD4、LD6、LD8」の「それぞれに設けられているステム6のx方向に垂直な面への投影」を「z方向」に垂直な面に投影した各y方向の長さを有する線分の構成と、本願発明の「前記2つのレーザ群の、それぞれの出射光からなる光束に垂直な1つの断面への、各レーザのベースの第1の投影の2つの投影群の、第1の方向に垂直な断面への第2の投影は、部分的に重なっており、前記第2の投影は線分であり、前記第1の方向は、1つのレーザ群内の少なくとも2つのレーザのベースの中心を結ぶ線の方向であ」る構成とは、「前記2つのレーザ群の、それぞれの出射光からなる光束に垂直な1つの断面への、各レーザのベースの第1の投影の2つの投影群の、第1の方向に垂直な断面への第2の投影は線分であり、前記第1の方向は、1つのレーザ群内の少なくとも2つのレーザのベースの中心を結ぶ線の方向であ」る構成の限りで共通している。

(3)本願発明の「オフセット」について

引用発明の構成Eの「4つの半導体レーザLD1、LD3、LD5、LD7」の「それぞれに設けられている円形状のステム6のx方向に垂直な面への投影」及び「4つの半導体レーザLD2、LD4、LD6、LD8」の「それぞれに設けられている円形状のステム6のx方向に垂直な面への投影」は、それぞれ、本願発明の「前記2つのレーザ群のそれぞれの第1投影」に相当する(上記(2)イ。)。

引用発明の「4つの半導体レーザLD1、LD3、LD5、LD7」の発光点を結ぶ線すなわちそれら各半導体レーザの「円形状のステム6」の中心を結ぶ線、及び、「4つの半導体レーザLD2、LD4、LD6、LD8」の発光点を結ぶ線すなわちそれら各半導体レーザの「円形状のステム6」の中心を結ぶ線は、本願発明の「レーザ群内のレーザのベースの中心を通る直線であるそれぞれのライン」に相当する。
そして、引用発明の上記の各線の方向は、「z方向」すなわち本願発明の「第1の方向」である(上記(2)ア。)。

引用発明の構成Eの「4つの半導体レーザLD1、LD3、LD5、LD7」の「それぞれに設けられている円形状のステム6のx方向に垂直な面への投影」及び「4つの半導体レーザLD2、LD4、LD6、LD8」の「それぞれに設けられている円形状のステム6のx方向に垂直な面への投影」(上記ア)は、それぞれ、「z方向」の「4つの半導体レーザLD1、LD3、LD5、LD7」の発光点を結ぶ線すなわちそれら各半導体レーザの「円形状のステム6」の中心を結ぶ線、及び、「z方向」の「4つの半導体レーザLD2、LD4、LD6、LD8」の発光点を結ぶ線すなわちそれら各半導体レーザの「円形状のステム6」の中心を結ぶ線(上記イ)に沿っていることが明らかである(図13(B)も参照)。
また、引用発明の構成Dの「第2の半導体レーザ組は、第1の半導体レーザ組からx方向、y方向およびz方向に偏位した位置に配置された第1の半導体レーザ組と同数の半導体レーザからな」る構成を踏まえると、上記アの構成Eの「4つの半導体レーザLD1、LD3、LD5、LD7」の「それぞれに設けられている円形状のステム6のx方向に垂直な面への投影」と、構成Eの「4つの半導体レーザLD2、LD4、LD6、LD8」の「それぞれに設けられている円形状のステム6のx方向に垂直な面への投影」との関係も、同様に、y方向およびz方向に偏位した位置となることが明らかである。

そうすると、引用発明の構成Eの「4つの半導体レーザLD1、LD3、LD5、LD7」の「それぞれに設けられている円形状のステム6のx方向に垂直な面への投影」及び「4つの半導体レーザLD2、LD4、LD6、LD8」の「それぞれに設けられている円形状のステム6のx方向に垂直な面への投影」(上記ア)は、対応する「投影」同士の位置関係(例えば、「半導体レーザLD1」の「円形状のステム6のx方向に垂直な面への投影」と、「半導体レーザLD2」の「円形状のステム6のx方向に垂直な面への投影」との位置関係)が、y方向にもz方向にも偏位した位置関係となっており、「4つの半導体レーザLD1、LD3、LD5、LD7」の発光点を結ぶ線すなわちそれら各半導体レーザの「円形状のステム6」の中心を結ぶ線、及び、「4つの半導体レーザLD2、LD4、LD6、LD8」の発光点を結ぶ線、すなわちそれら各半導体レーザの「円形状のステム6」の中心を結ぶ線に沿ってそれらの方向であるz方向に偏位した位置関係となっている(上記ウ)。
要するに、引用発明の構成Eの「4つの半導体レーザLD1、LD3、LD5、LD7」の「それぞれに設けられている円形状のステム6のx方向に垂直な面への投影」及び「4つの半導体レーザLD2、LD4、LD6、LD8」の「それぞれに設けられている円形状のステム6のx方向に垂直な面への投影」(上記ア)は、対応する「投影」同士の関係が、レーザ群内のレーザのベースの中心を通る直線であるそれぞれのラインに沿ってそれらの方向である第1の方向(上記(2)ア参照)に互いにオフセットして配置されているといえる。

したがって、引用発明の構成Dの「第2の半導体レーザ組は、第1の半導体レーザ組からx方向、y方向およびz方向に偏位した位置に配置された第1の半導体レーザ組と同数の半導体レーザからな」る構成を前提とする、構成Eの「4つの半導体レーザLD1、LD3、LD5、LD7」の「それぞれに設けられている円形状のステム6のx方向に垂直な面への投影」及び「4つの半導体レーザLD2、LD4、LD6、LD8」の「それぞれに設けられている円形状のステム6のx方向に垂直な面への投影」の構成と、本願発明の「前記2つのレーザ群のそれぞれの第1の投影が、レーザ群内のレーザのベースの中心を通る直線であるそれぞれのラインに沿ってそれらの方向である第1の方向に互いにオフセットし、且つ、2つの隣接するレーザのそれぞれの第1投影は互いに接触し、又は互いに分離して」いる構成とは、「前記2つのレーザ群のそれぞれの第1の投影が、レーザ群内のレーザのベースの中心を通る直線であるそれぞれのラインに沿ってそれらの方向である第1の方向に互いにオフセットし」ている構成の限りで共通している。

(4)本願発明の「光スポット」について

引用発明は、構成Dにおいて「8つの半導体レーザLD1、LD2、LD3、LD4、LD5、LD6、LD7、LD8は、その出射方向がx方向となる」ものであり、構成Gにおいて「偏向部材P41、P42、P43、P44、P45、P46、P47、P48は、それぞれ45度の傾斜角を有する直角プリズムからなり、各傾斜面に反射面が形成され、その反射面内に反射するビームのビームスポットが入り、光路をx方向からz方向に90度折り曲げて所定のビームパターンを形成すべく、8つの半導体レーザLD1、LD2、LD3、LD4、LD5、LD6、LD7、LD8から出射された各ビームを集光レンズ20に入射させるように各反射面はz方向と45度の角度をな」すことから、「各反射面」に入射する「各ビーム」は、入射方向が「x方向」となっており、その「各ビーム」が、「光路をx方向からz方向に90度折り曲げて」、「各反射面」から出射する「各ビーム」は、出射方向が「z方向」となっているといえる。
引用発明の「ビーム」は、本願発明の「光束」に相当する。
そうすると、引用発明の入射方向が「x方向」となっている「各反射面」に入射する「各ビーム」に垂直な断面、及び、出射方向が「z方向」となっているは「各反射面」から出射する「各ビーム」に垂直な断面は、それぞれ、本願発明の「反射鏡」への「入射光束の断面」及び「反射鏡」からの「出射光束の断面」に相当する。

引用発明は、構成Cにおいて「集光レンズ20の光軸方向をz方向とし、z方向に垂直な方向であり、かつ、集光レンズ20に形成される略楕円形状のビームスポットの長軸方向とほぼ平行な行方向をx方向とし、z方向及びx方向に垂直な方向をy方向として定義する」ことから、引用発明の「x方向」に垂直な断面及び「z方向」に垂直な断面の両方に平行する方向は、「y方向」となる。
そして、上記アを踏まえると、引用発明の「x方向」に垂直な断面及び「z方向」に垂直な断面の両方に平行する方向である「y方向」は、本願発明の「反射鏡の入射光束の断面と出射光束の断面の両方に平行する方向である」「第2の方向」に相当する。

引用発明において、2つのレーザ群内の群間のレーザである「半導体レーザLD1」と「半導体レーザLD2」とが(上記(1)ウ)、隣り合っていることは明らかであり(図12及び13も参照)、同様のことは、「半導体レーザLD3、LD5、LD7」のそれぞれと、「半導体レーザLD4、LD6、LD8」のそれぞれとについてもいえることから、引用発明の構成Fの「上記8つの半導体レーザLD1、LD2、LD3、LD4、LD5、LD6、LD7、LD8それぞれから出射された各ビームは互いに間隔をおいて隔た」る構成の「上記8つの半導体レーザLD1、LD2、LD3、LD4、LD5、LD6、LD7、LD8それぞれから出射された」「互いに間隔をおいて隔た」る「各ビーム」は、本願発明の「前記2つのレーザ群内の群間のレーザによって発生される間隔を有した状態で隣り合う光束」に相当する。
そうすると、引用発明の構成Fの「上記8つの半導体レーザLD1、LD2、LD3、LD4、LD5、LD6、LD7、LD8それぞれから出射された各ビームは互いに間隔をおいて隔たり、これらの各ビームに対応する偏向部材P41、P42、P43、P44、P45、P46、P47、P48の各反射面で反射されたビームが投影された」、「y方向の下側の行となる偏向部材P41、P43、P45、P47の各反射面で反射されたビームが投影された4つのビームスポット」及び「y方向の上側の行となる偏向部材P42、P44、P46、P48の各反射面で反射されたビームが投影された4つのビームスポット」は、本願発明の「前記2つのレーザ群内の群間のレーザによって発生される間隔を有した状態で隣り合う光束が反射鏡によって反射された後に形成された光スポット」に相当する。

引用発明の構成Fにおいて「各ビームスポットはx方向とy方向とで接するように隣接して配列され」ていることから、「y方向の下側の行となる偏向部材P41、P43、P45、P47の各反射面で反射されたビームが投影された4つのビームスポット」のそれぞれと、「y方向の上側の行となる偏向部材P42、P44、P46、P48の各反射面で反射されたビームが投影された4つのビームスポット」のそれぞれとは、y方向で隣接している。
このことと、引用発明の「y方向」が本願発明の「第2の方向」であり(上記イ)、引用発明の「下側」及び「上側」それぞれの「4つのビームスポット」が、本願発明の「反射された後に形成された光スポット」であること(上記ウ)を踏まえると、引用発明の構成Fの「上記8つの半導体レーザLD1、LD2、LD3、LD4、LD5、LD6、LD7、LD8それぞれから出射された各ビームは互いに間隔をおいて隔たり、これらの各ビームに対応する偏向部材P41、P42、P43、P44、P45、P46、P47、P48の各反射面で反射されたビームが投影された8つのビームスポットにより、集光レンズ20の光軸に垂直な面内で2×4の行列状のビームパターンBP4すなわちy方向の下側の行となる偏向部材P41、P43、P45、P47の各反射面で反射されたビームが投影された4つのビームスポット及びy方向の上側の行となる偏向部材P42、P44、P46、P48の各反射面で反射されたビームが投影された4つのビームスポットの2×4の行列状のビームパターンBP4が形成され、各ビームスポットは略楕円形状を有し、その長軸方向は行方向であるx方向とほぼ平行であり、その短軸方向は列方向であるy方向とほぼ平行であり、各ビームスポットはx方向とy方向とで接するように隣接して配列され」る構成と、本願発明の「前記2つのレーザ群内の群間のレーザによって発生される間隔を有した状態で隣り合う光束が反射鏡によって反射された後に形成された光スポットは、第2の方向で間隔がゼロで隣接しており、前記第2の方向は、当該反射鏡の入射光束の断面と出射光束の断面の両方に平行する方向である」構成とは、「前記2つのレーザ群内の群間のレーザによって発生される間隔を有した状態で隣り合う光束が反射鏡によって反射された後に形成された光スポットは、第2の方向で隣接しており、前記第2の方向は、当該反射鏡の入射光束の断面と出射光束の断面の両方に平行する方向である」の構成の限りで共通している。

(5)本願発明の「レーザ光源」について
引用発明の構成Aの「8つの半導体レーザLD1、LD2、LD3、LD4、LD5、LD6、LD7、LD8と、各半導体レーザLD1、LD2、LD3、LD4、LD5、LD6、LD7、LD8に対してそれぞれの出射端近傍に配設されたコリメートレンズC1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8と、各半導体レーザLD1、LD2、LD3、LD4、LD5、LD6、LD7、LD8からのビームを偏向するために各半導体レーザに対してそれぞれ設けられた偏向部材P41、P42、P43、P44、P45、P46、P47、P48と、1つの集光レンズ20と、集光されたビームが入射するファイバ30とから構成される、合波レーザ光源」は、本願発明の「レーザ光源」に相当する。

2 一致点及び相違点
上記1から、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「2つのレーザ群であってこのうち少なくとも1つのレーザ群が少なくとも2つのレーザを含み且つこの2つのレーザによって発生された各光束が同一方向であってかつ平行する、2つのレーザ群を含み、
前記2つのレーザ群の、それぞれの出射光からなる光束に垂直な1つの断面への、各レーザのベースの第1の投影の2つの投影群の、第1の方向に垂直な断面への第2の投影は線分であり、前記第1の方向は、1つのレーザ群内の少なくとも2つのレーザのベースの中心を結ぶ線の方向であり、
前記2つのレーザ群のそれぞれの第1の投影が、レーザ群内のレーザのベースの中心を通る直線であるそれぞれのラインに沿ってそれらの方向である第1の方向に互いにオフセットしており、
前記2つのレーザ群内の群間のレーザによって発生される間隔を有した状態で隣り合う光束が反射鏡によって反射された後に形成された光スポットは、第2の方向で隣接しており、前記第2の方向は、当該反射鏡の入射光束の断面と出射光束の断面の両方に平行する方向である
レーザ光源。」
<相違点1>
第2の投影及び光スポットに関して、
本願発明は、2つのレーザ群の、それぞれの出射光からなる光束に垂直な1つの断面への、各レーザのベースの第1の投影の2つの投影群の、第1の方向に垂直な断面への第2の投影は、「部分的に重なって」いる構成、及び、2つのレーザ群内の群間のレーザによって発生される間隔を有した状態で隣り合う光束が反射鏡によって反射された後に形成された光スポットは、第2の方向で「間隔がゼロで」隣接している構成を備えるのに対して、
引用発明は、構成Eの「4つの半導体レーザLD1、LD3、LD5、LD7」の「それぞれに設けられているステム6のx方向に垂直な面への投影」と「4つの半導体レーザLD2、LD4、LD6、LD8」の「それぞれに設けられているステム6のx方向に垂直な面への投影」との構成、及び、構成Fの「上記8つの半導体レーザLD1、LD2、LD3、LD4、LD5、LD6、LD7、LD8それぞれから出射された各ビームは互いに間隔をおいて隔たり、これらの各ビームに対応する偏向部材P41、P42、P43、P44、P45、P46、P47、P48の各反射面で反射されたビームが投影された8つのビームスポットにより、集光レンズ20の光軸に垂直な面内で2×4の行列状のビームパターンBP4すなわちy方向の下側の行となる偏向部材P41、P43、P45、P47の各反射面で反射されたビームが投影された4つのビームスポット及びy方向の上側の行となる偏向部材P42、P44、P46、P48の各反射面で反射されたビームが投影された4つのビームスポットの2×4の行列状のビームパターンBP4が形成され、各ビームスポットは略楕円形状を有し、その長軸方向は行方向であるx方向とほぼ平行であり、その短軸方向は列方向であるy方向とほぼ平行であり、各ビームスポットはx方向とy方向とで接するように隣接して配列され」る構成を備える点。
<相違点2>
本願発明は、「2つの隣接するレーザのそれぞれの第1投影は互いに接触し、又は互いに分離して」いる構成を備えるのに対して、
引用発明は、構成Dの「第2の半導体レーザ組は、第1の半導体レーザ組からx方向、y方向およびz方向に偏位した位置に配置された第1の半導体レーザ組と同数の半導体レーザからな」る構成を前提とする、構成Eの「4つの半導体レーザLD1、LD3、LD5、LD7」の「それぞれに設けられている円形状のステム6のx方向に垂直な面への投影」及び「4つの半導体レーザLD2、LD4、LD6、LD8」の「それぞれに設けられている円形状のステム6のx方向に垂直な面への投影」の構成を備える点。

第6 判断
1 相違点についての検討
以下、相違点について検討する。
(1)相違点1について

引用発明は、構成Dの「8つの半導体レーザLD1、LD2、LD3、LD4、LD5、LD6、LD7、LD8は、その出射方向がx方向となるように集光レンズ20の光軸の一側に」「並列配置され」、「その発光点のy方向の高さは集光レンズ20の光軸に垂直な面内に投影される各ビームスポットの中心位置に合わせた高さとなるように配置され」る構成、及び、構成Gの「偏向部材P41、P42、P43、P44、P45、P46、P47、P48は、それぞれ45度の傾斜角を有する直角プリズムからなり、傾斜面に反射面が形成され、その反射面内に反射するビームのビームスポットが入り、光路をx方向からz方向に90度折り曲げて所定のビームパターンを形成すべく、8つの半導体レーザLD1、LD2、LD3、LD4、LD5、LD6、LD7、LD8から出射された各ビームを集光レンズ20に入射させるようにその反射面はz方向と45度の角度をな」す構成を備えていることから、引用発明の構成Eの「8つの半導体レーザLD1、LD2、LD3、LD4、LD5、LD6、LD7、LD8のそれぞれから出射されたビームのx方向に垂直な面への略楕円形状の投影」の各「略楕円形状の投影」と、「光路をx方向からz方向に90度折り曲げ」た結果得られるz方向に垂直な面への各略楕円形状の投影と、構成Fの「略楕円形状を有」する「各ビームスポット」とは、大きさ及び形状が実質的に同一であるといえる。

引用発明の構成Fに関して、「2×4の行列状のビームパターンBP4」は、「各ビームスポットはx方向とy方向とで接するように隣接して配列され」ていることから、「y方向の下側の行となる」「4つのビームスポット」と、「y方向の上側の行となる」「4つのビームスポット」とは、それぞれのビームスポットがy方向で接するように隣接しているといえる。
そして、接することは間隔がゼロと理解することができるから、引用発明の「接するように隣接している」構成は、本願発明の「間隔がゼロで」隣接している構成ということもできる。
そうすると、引用発明の構成Fは、実質的に、上記相違点1に係る本願発明の、2つのレーザ群内の群間のレーザによって発生される間隔を有した状態で隣り合う光束が反射鏡によって反射された後に形成された光スポットは、第2の方向で「間隔がゼロで」隣接している構成となっているということもできる。

引用発明の構成Eにおいて、「8つの半導体レーザLD1、LD2、LD3、LD4、LD5、LD6、LD7、LD8のそれぞれに設けられている円形状のステム6のx方向に垂直な面への投影は、対応する8つのコリメートレンズC1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8のx方向に垂直な面への投影、すなわち、対応する8つの半導体レーザLD1、LD2、LD3、LD4、LD5、LD6、LD7、LD8のそれぞれから出射されたビームのx方向に垂直な面への略楕円形状の投影を、中央に含むことができる大きさの円形状の投影であり、その円形状の直径は前記略楕円形状の長軸の長さより大きいものであ」ることから、引用発明の構成Eの「8つの半導体レーザLD1、LD2、LD3、LD4、LD5、LD6、LD7、LD8のそれぞれに設けられている円形状のステム6のx方向に垂直な面への投影」の各y方向の長さは、「8つの半導体レーザLD1、LD2、LD3、LD4、LD5、LD6、LD7、LD8のそれぞれから出射されたビームのx方向に垂直な面への略楕円形状の投影」の各y方向の長さを、当該長さ方向の中央に含む、長さであるといえる。

上記ウに併せ、引用発明の構成Eの「4つの半導体レーザLD1、LD3、LD5、LD7」の「それぞれに設けられているステム6のx方向に垂直な面への投影」を、「z方向」に垂直な面に投影したものは、それぞれy方向の長さを有する線分となり、同様に、引用発明の構成Eの「4つの半導体レーザLD2、LD4、LD6、LD8」の「それぞれに設けられているステム6のx方向に垂直な面への投影」を、「z方向」に垂直な面に投影した投影したものは、それぞれy方向の長さを有する線分となること、及び、引用発明の構成Eの「8つの半導体レーザLD1、LD2、LD3、LD4、LD5、LD6、LD7、LD8のそれぞれから出射されたビームのx方向に垂直な面への略楕円形状の投影」の各「略楕円形状の投影」と、構成Fの「略楕円形状を有」する「各ビームスポット」とは、大きさ及び形状が実質的に同一であるといえること(上記ア)を踏まえると、引用発明の「4つの半導体レーザLD1、LD3、LD5、LD7」の「それぞれに設けられているステム6のx方向に垂直な面への投影」を「z方向」に垂直な面に投影した各y方向の長さを有する線分は、それらの線分に対応する「各ビームスポット」のy方向の長さを中央に含む長さとなっており、同様に、「4つの半導体レーザLD2、LD4、LD6、LD8」の「それぞれに設けられているステム6のx方向に垂直な面への投影」を「z方向」に垂直な面に投影した各y方向の長さを有する線分も、それらの線分に対応する「上側」の「各ビームスポット」のy方向の長さを中央に含む長さとなっているといえる。

そして、上記エで述べた、「ステム6のx方向に垂直な面への投影」を「z方向」に垂直な面に投影したy方向の長さを有する線分が、ビームスポットのy方向の長さを中央に含む関係において(すなわち、ビームスポットのy方向の長さよりも、ステム6を投影した線分のy方向の長さが、上下ともに長い状態において)、「下側」の「各ビームスポット」と「上側」の「各ビームスポット」とは、y方向で間隔がゼロであるといえることから(上記イ)、引用発明の構成Eにおいて、「4つの半導体レーザLD1、LD3、LD5、LD7」の「それぞれに設けられているステム6のx方向に垂直な面への投影」を、「z方向」に垂直な面に投影した、y方向の長さを有する線分と、「4つの半導体レーザLD2、LD4、LD6、LD8」の「それぞれに設けられているステム6のx方向に垂直な面への投影」を、「z方向」に垂直な面に投影した投影した、y方向の長さを有する線分とは、部分的に重なっており、引用発明は、上記相違点1に係る本願発明の、2つのレーザ群の、それぞれの出射光からなる光束に垂直な1つの断面への、各レーザのベースの第1の投影の2つの投影群の、第1の方向に垂直な断面への第2の投影は、「部分的に重なって」いる構成を備えているといえる。

上記イ及びオのとおりであるから、上記相違点1は相違点とはいえない。

仮に、上記相違点1が実質的な相違点であるとしても、引用文献1の段落【0055】には、「・・・半導体レーザLD1、LD2、LD3、LD4およびコリメートレンズC1、C2、C3、C4は容易に実装、調整できる間隔を保つとともに、半導体レーザLD1、LD2、LD3、LD4からのビームを近接して集光レンズ20に入射させており、低コストで高輝度化を実現したものとなっている。」と記載され、段落【0063】には、「実際に上記光源を作製する際の調整工程では、各部材を配置した後、半導体レーザのcan型パッケージをビームの光軸の周りに回転させてビームスポットの長軸方向を決定した後、各コリメートレンズをそれぞれビームの光軸方向に調整して平行光化し、ビームが偏向部材の有効範囲に入り、且つビームが遮光されることがないことを確認し、集光レンズ20の面上で所定のビームパターンBP1が形成され、最終的には4つのビームが集光レンズで1点に集まるように、各軸の方向を合わせるべくコリメートレンズxy位置を調整して固定する。この調整は偏向部材を調整することによって行ってもよい。」と記載されているとおり、引用発明は、高輝度化を実現するために、偏向部材等を調整することで、ビームを近接させることができるから、引用発明において、一層の高輝度化を実現できるように、各ビームスポットを集中させ、各ビームスポットはx方向とy方向とで間隔がゼロで接するように隣接して配列されるようにすることで、上記オの関係を満たし、上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者であれば適宜になし得たといえる。

(2)相違点2について

引用文献1の段落【0042】には、「半導体レーザLD1、LD2、LD3、LD4は全て、・・・発光素子が個別に気密封止されたφ5.6mmのcan型のパッケージ構造を有する。このパッケージ構造は、・・・キャップ2のフランジ部5がステム6とハーメチックシールされることにより気密封止されたものである。」と記載されていることから、引用発明の「4つの半導体レーザLD1、LD3、LD5、LD7」及び「4つの半導体レーザLD2、LD4、LD6、LD8」も、それらの各直径となる各「円形状のステム6」の直径が、φ5.6mm程度のものを採用できることが示唆されているといえる。

また、引用文献1の【0045】には、「3つの半導体レーザLD1、LD2、LD3は、集光レンズ20の光軸から所定距離離れた位置にビームの出射方向がx方向に平行になるように、z方向に10mmの間隔をもって配置され、そのy方向の高さはそれぞれビームスポットS1、S2、S3の中心の高さと同じである。」と記載されていることから、引用発明の「4つの半導体レーザLD1、LD3、LD5、LD7」及び「4つの半導体レーザLD2、LD4、LD6、LD8」も、それぞれ、z方向に10mm程度の間隔をもって配置できることが示唆されているといえる。

さらに、引用文献1の段落【0046】には、「本実施形態においては、3つの半導体レーザLD1、LD2、LD3のz方向の間隔は10mmであるが、これに限定するものではなく、半導体レーザおよびコリメートレンズの実装および調整作業が十分な値となるように間隔を決めることが望ましい。」と記載されている。

上記ア?ウ(特に、上記ウ)を踏まえることで、引用発明の構成Dの「第2の半導体レーザ組は、第1の半導体レーザ組からx方向、y方向およびz方向に偏位した位置に配置された第1の半導体レーザ組と同数の半導体レーザからな」る構成を前提とする、構成Eの「4つの半導体レーザLD1、LD3、LD5、LD7」の「それぞれに設けられている円形状のステム6のx方向に垂直な面への投影」及び「4つの半導体レーザLD2、LD4、LD6、LD8」の「それぞれに設けられている円形状のステム6のx方向に垂直な面への投影」の構成(すなわち、本願発明の「前記2つのレーザ群のそれぞれの第1の投影が、レーザ群内のレーザのベースの中心を通る直線であるそれぞれのラインに沿ってそれらの方向である第1の方向に互いにオフセットし」ている構成(上記第5 1(3)オを参照)において、各半導体レーザのy方向およびz方向に偏位した位置を調整することで、引用発明の構成Eの「4つの半導体レーザLD1、LD3、LD5、LD7」の「それぞれに設けられている円形状のステム6のx方向に垂直な面への投影」と、「4つの半導体レーザLD2、LD4、LD6、LD8」の「それぞれに設けられている円形状のステム6のx方向に垂直な面への投影」とが、互いに接触し、又は互いに分離しているように構成すること、すなわち、上記相違点2に係る本願発明の「2つの隣接するレーザのそれぞれの第1投影は互いに接触し、又は互いに分離して」いる構成を想到することは、当業者が容易になし得たといえる。

2 審判請求人の主張について
(1)審判請求人の主張
審判請求人は、当審拒絶理由に対する平成31年4月26付けの意見書の「【意見の内容】」「2.本願発明が特許されるべき理由」「[2]進歩性欠如の拒絶理由について」において、以下のとおり主張している。

「引用文献1の図12、13に示す構成において、集光レンズ20に8個の楕円形状のビームスポットからなる4(x方向)×2(y方向)のパターンBP4が形成されているように見えるが、本願発明の「2つのレーザ群の、それぞれの出射光からなる光束に垂直な1つの断面への、各レーザのベースの第1の投影の2つの投影群の、第1の方向に垂直な断面への第2の投影は、部分的に重なっている」ことについて、引用文献1には、一切記載されていません。」(以下「主張1」という。)及び、
「引用文献1明細書段落[0087]には、さらに『上記ビームパターンを形成するために、半導体レーザLD1、LD2、LD3、LD4、LD5、LD6、LD7、LD8は活性層がy方向に平行になるように図14に示すように出射ビームの光軸周りの角度を調整されている』と記載されています。この記載からもわかるように、引用文献1に係る発明では、引用文献1の図12に示すビームスポットの行列状のパターンは、出射ビームの光軸周りの角度(即ち、半導体レーザ又は台座3などを回転させて、台座3の光軸周りの角度)を調整することにより、形成されたものです(また、引用文献1の他の図面に示す実施例では、同様に、各図面に示す集光レンズ上におけるビームパターンを形成するために、出射ビームの光軸周りの角度を調整することが記載されているので、同時にご参照ください)。」(以下「主張2」という。)

(2)検討
ア 主張1について
引用発明は、ビームスポットのy方向の長さよりも、ステム6を投影した線分のy方向の長さが、上下ともに長い状態において(上記1(1)オ)、上記1(1)イのとおり、各楕円形状のビームスポットが「間隔ゼロで」接しているから、本願発明の、2つのレーザ群の、それぞれの出射光からなる光束に垂直な1つの断面への、各レーザのベースの第1の投影の2つの投影群の、第1の方向に垂直な断面への第2の投影は、「部分的に重なって」いる構成を備えているといえるし(上記1(1)オ)、仮にそうではないとしても、引用発明において、各楕円形状のビームスポットが「間隔ゼロで」接する構成を想到して、上記の「部分的に重なって」いる構成とすることは、当業者が適宜になし得たといえる(上記1(1)カ)。
したがって、上記の主張1は、採用できない。

イ 主張2について
審判請求人は、「引用文献1の図12に示すビームスポットの行列状のパターンは、出射ビームの光軸周りの角度(即ち、半導体レーザ又は台座3などを回転させて、台座3の光軸周りの角度)を調整することにより、形成されたものです」と主張しており、この主張のとおり、引用文献1の図12に示すビームスポットの行列状のパターンは、既に出射ビームの光軸周りの角度が調整された1つの実施態様を示しているといえるから、引用文献1の図12のビームスポットの構成に関しては、引用発明において認定したとおりであり、既に調整がされた上記の角度を、さらに調整したり変化させたりすることはないといえる。
したがって、上記の主張2は、引用発明の認定や対比・判断に影響するものではない。

3 まとめ
以上から、本願発明は、引用発明及び引用文献1に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-11-05 
結審通知日 2019-11-06 
審決日 2019-11-25 
出願番号 特願2014-534925(P2014-534925)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F21S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 當間 庸裕  
特許庁審判長 氏原 康宏
特許庁審判官 藤井 昇
出口 昌哉
発明の名称 光源システムおよびレーザ光源  
代理人 西内 盛二  

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