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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1361361
審判番号 不服2018-12644  
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-09-21 
確定日 2020-04-07 
事件の表示 特願2015- 41333「相互に近接する地理的位置において発生する関連活動の識別」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 9月28日出願公開、特開2015-170362〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,平成27年3月3日(パリ条約による優先権主張2014年3月4日(以下,「優先日」という。),米国)を出願日とする出願であって,平成27年3月17日付けで翻訳文が提出され,平成29年3月15日付けで手続補正がされるとともに審査請求がなされ,平成29年10月17日付けの拒絶理由通知に対して平成30年1月19日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが,平成30年5月23日付けで拒絶査定がなされ,これに対して平成30年9月21日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がされたものである。


第2 平成30年9月21日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

平成30年9月21日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により,特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおり補正された。(下線部は,補正箇所である。)

「地理的アプリケーションにおいて商業コンテンツを効率的に提供することを提供するための方法であって、
複数のユーザの第1のサブセットによる,第1の地理的位置を有する第1のビジネス実体への第1の複数の訪問の指示を、1つ以上のコンピューティングデバイスによって受け取ることと、
前記複数のユーザの第2のサブセットによる、第2の地理的位置を有する第2のビジネス実体への第2の複数の訪問の指示を、前記1つ以上のコンピューティングデバイスによって受け取ることと、
前記第1のビジネス実体と前記第2のビジネス実体の間の距離を判定し、かつ前記複数の前記ユーザのうちの前記第1のサブセットおよび前記第2のサブセットの両方内に存在するユーザについて、前記ユーザが前記第1のビジネス実体および前記第2のビジネス実体を訪問したそれぞれの時間を比較することによって、前記第1の複数の訪問と前記第2の複数の訪問との間の相関を示す相関係数を、前記1つ以上のコンピューティングデバイスによって決定することと、
前記相関係数が、閾値を超えるかどうかを判定することと、
前記相関係数が閾値を超える場合、第1の物理的位置に位置するユーザデバイス上で表示するために、前記第2のビジネス実体に関する商業コンテンツを提供するための規則を、前記1つ以上のコンピューティングデバイスによって自動的に生成することと、
ユーザデバイスが前記第1の物理的位置に位置すると決定することに応答して、前記自動的に生成された規則に従って前記ユーザデバイスに前記第2のビジネス実体に関する商業コンテンツを、前記1つ以上のコンピューティングデバイスによって提供することと
を含む、方法。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の,平成30年1月19日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「地理的アプリケーションにおいて商業コンテンツを効率的に提供することを提供するための方法であって、
複数のユーザの第1のサブセットによる、第1の地理的位置を有する第1のビジネス実体への第1の複数の訪問の指示を、1つ以上のコンピューティングデバイスによって受け取ることと、
前記複数のユーザの第2のサブセットによる、第2の地理的位置を有する第2のビジネス実体への第2の複数の訪問の指示を、前記1つ以上のコンピューティングデバイスによって受け取ることと、
前記第1の複数の訪問と前記第2の複数の訪問との間の相関を示す相関係数を、前記1つ以上のコンピューティングデバイスによって決定することと、
前記相関係数が、閾値を超えるかどうかを判定することと、
前記相関係数が閾値を超える場合、第1の物理的位置に位置するユーザデバイス上で表示するために、前記第2のビジネス実体に関する商業コンテンツを提供するための規則を、前記1つ以上のコンピューティングデバイスによって自動的に生成することと、
ユーザデバイスが前記第1の物理的位置に位置すると決定することに応答して、前記自動的に生成された規則に従って前記ユーザデバイスに前記第2のビジネス実体に関する商業コンテンツを、前記1つ以上のコンピューティングデバイスによって提供することと
を含む、方法。」

2 補正の適否
本件補正は,本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「第1の複数の訪問と前記第2の複数の訪問との間の相関を示す相関係数を,前記1つ以上のコンピューティングデバイスによって決定すること」の内容について,上記のとおり限定を付加する事項を含むものであって,本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について,以下,検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は,上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項

ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である,特開2012-141746号公報(平成24年7月26日出願公開。以下「引用文献1」という。)には,図面とともに,次の記載がある。(下線は,当審で付した。以下,同様)

A 「【0001】
本発明は、スポット情報を配信可能な情報配信装置、情報配信システム、および情報配信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話、スマートフォン、PDA(Personal Digital Assistant)、PHS(Personal Handyphone System)、モバイルコンピュータ等に対し、ネットワークを介して道案内や観光案内等の情報を提供する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1では、渋谷駅周辺を散策したい場合、案内情報を提供するセンタにアクセスして渋谷駅周辺を2?3時間の予定で案内する案内用スクリプトを実行させ、センタが案内情報を音声や文字などで携帯電話へ送信することにより、時間と場所に応じた案内サービスを受けることができる。
・・・(中略)・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1で作成される案内用スクリプトは、一般的なスポットを案内するため、ユーザの意図とは異なる情報が提供される可能性がある。例えば、アウトドアショップの情報が欲しいユーザに対して雑貨店の情報を送っても有益な情報とはならず、ユーザの満足度を満たすことはできない。
【0005】
本発明の目的は、ユーザの満足度を満たすスポット情報を配信可能な情報配信装置、情報配信システム、および情報配信方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の情報配信装置は、複数のユーザ端末にネットワークを介して接続され、前記ユーザ端末に対してスポット情報を配信する情報配信装置であって、前記複数のユーザ端末から各ユーザが訪れたスポットを受信し、前記各ユーザが所定期間内に訪れた前記スポットをログデータとして収集するログ収集手段と、前記ログデータに含まれる各スポットに対する共起スポットをそれぞれ算出し、前記スポットと前記共起スポットとを関連付けて記憶手段に記憶させる共起スポット計算手段と、前記ユーザ端末から当該ユーザの現在位置を受信し、当該ユーザの現在位置に最も近いスポットに対する共起スポットを前記記憶手段から抽出する共起スポット抽出手段と、前記抽出された共起スポットを前記スポット情報として前記ユーザ端末に配信するスポット情報配信手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
この発明では、複数のユーザ端末からユーザが所定期間内に実際に訪れたスポットをログデータとして収集し、このログデータに基づいて各スポットに対する共起スポットを算出する。ここで、共起スポットについて説明する。スポットAを訪れたユーザがスポットBを訪れる確率が高い場合に、スポットBをスポットAの共起スポットとする。また、ユーザ端末からの要求または設定によりユーザ端末の現在位置を受信し、当該現在位置に最も近いスポットに対する共起スポットを記憶手段から抽出し、当該ユーザ端末に対してこの共起スポットをスポット情報として送信する。
これによれば、情報配信装置は、ユーザが実際に訪れたスポットをログデータとして収集するため、実データに基づいた適切な共起スポットを求めることができる。また、共起スポットを提示されたユーザは、他の人がどのようなスポットを訪れているかという情報に基づいて次の予定を立てることができるため、ユーザにとって有益な情報を配信することができる。特に、同じ趣味や嗜好を持っている人は同じスポットを訪れる確率も高いため、実データに基づいて求められた共起スポットをユーザに提示することで、ユーザにとって有益な情報を配信することができる。すなわち、ユーザの満足度を向上させることができる。
・・・(中略)・・・
【0014】
本発明の情報配信方法は、ユーザ端末に対してスポット情報を配信する情報配信方法であって、複数のユーザ端末から各ユーザが訪れたスポットを受信するステップと、前記各ユーザが所定期間内に訪れた前記スポットをログデータとして収集するステップと、前記ログデータに含まれる各スポットに対する共起スポットをそれぞれ算出し、前記スポットと前記共起スポットとを関連付けて記憶手段に記憶させるステップと、前記ユーザ端末から当該ユーザの現在位置を受信するステップと、当該ユーザの現在位置に最も近いスポットに対する共起スポットを前記記憶手段から抽出するステップと、前記抽出された共起スポットを前記スポット情報として前記ユーザ端末に配信するステップと、を備えたことを特徴とする。
【0015】
この発明では、ユーザが実際に訪れたスポットをログデータとして収集するため、実データに基づいた適切な共起スポットを求めることができる。また、共起スポットを提示されたユーザは、他の人がどのようなスポットを訪れているかという情報に基づいて次の予定を立てることができるため、ユーザにとって有益な情報を配信することができる。特に、同じ趣味や嗜好を持っている人は同じスポットを訪れる確率も高いため、実データに基づいて求められた共起スポットをユーザに提示することで、ユーザにとって有益な情報を配信することができる。すなわち、ユーザの満足度を向上させることができる。」

B 「【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
情報配信システム1は、図1に示すように、情報配信装置10と、ユーザ端末20と、がそれぞれインターネット2を介して接続された構成となっている。
【0018】
情報配信装置10には、予めユーザ端末20がユーザ登録され、各ユーザ端末20には、ユーザを識別するユーザIDが付与されている。ユーザ登録しているユーザ端末20のうち、情報配信装置10に対して位置情報の送信を許可しているユーザ端末20は、情報配信装置10に現在位置を送信する。情報配信装置10は、受信したユーザ端末20の現在位置をログデータとして記憶し、蓄積されたログデータに基づいて、各スポットに対する共起スポットを求める。
情報配信装置10は、ユーザ端末20の現在位置を取得し、この現在位置に該当するスポット、または最も近いスポットに対する共起スポットを、当該ユーザ端末20に対して送信する。
【0019】
以下、各構成について詳述する。
インターネット2はTCP/IPなどの汎用のプロトコルに基づくインターネットであるが、これに限られない。例えば、無線媒体により情報が送受信可能な複数の基地局がネットワークを構成する通信回線網などのネットワーク、など、データを送受信させるいずれの構成も利用できる。
【0020】
情報配信装置10は、ハードウェア構成として、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の記憶手段と、CPU(Central Processing Unit)等の制御手段と、を備えている。RAMはデータなどを一時的に記憶できる一時領域などを有しており、ROMはOS(Operating System:基本ソフトウェア)や各種サーバを制御するプログラム、各種アプリケーション、各種データ等が格納されている。CPUは、これらの記憶手段に格納されているプログラムを読み出し、このプログラムに従って各種処理を行う。
【0021】
情報配信装置10の記憶手段には、図1に示すように、ログデータベース101と、共起スポットデータベース102と、ユーザデータベース103と、スポットデータベース104と、が記憶されている。
ログデータベース101は、例えば、以下の表1に示すように、ユーザ端末20を識別するユーザIDと、ユーザ端末20が訪れたスポットを識別するスポットIDと、その時間と、が関連付けられて1つのレコードとして記憶されたテーブル構造となっている。ここで、ユーザIDは、情報配信装置10を利用するためにユーザ登録を行った際に、一意に識別可能に付与されてユーザデータベースに記憶されている。また、スポットIDは、スポットを一意に識別可能に付与され、予めスポットデータベースに記憶されている。なお、項目はここに列挙したものに限られず、ログデータとして利用可能であればその他の項目を適宜追加してもよい。
【0022】
【表1】


【0023】
共起スポットデータベース102は、例えば、以下の表2に示すように、スポットを識別するスポットIDと、このスポットに共起する2件のスポットIDと、が関連付けられて1つのレコードとして記憶されたテーブル構造となっている。なお、記憶される共起スポットの件数は特に限定されず、1件でもよいし、3件以上のスポットが記憶されていてもよい。
【0024】
【表2】


【0025】
ユーザデータベース103は、ユーザを識別するユーザIDと、ユーザの属性等の情報と、情報配信装置10に対する位置情報の送信の可否と、が関連付けられて記憶されている。
スポットデータベース104は、スポットを識別するスポットIDと、スポットの名称と、スポットの位置を示す緯度や経度の座標と、交通案内等の情報と、が関連付けられて記憶されている。
【0026】
また、情報配信装置10は、制御手段の機能構成として、共起スポットを設定する設定手段11と、スポット情報を配信する配信手段12と、を備えている。
設定手段11は、複数のユーザ端末20から受信した各ユーザが訪れたスポットをログデータとして記憶し、このログデータに基づいて各スポットに対する共起スポットを設定する。設定手段11は、第1の位置情報受信部111と、ログ作成部112と、共起スポット計算部113と、を備えている。ここで、第1の位置情報受信部111およびログ作成部112が、本発明のログ収集手段として機能する。
【0027】
第1の位置情報受信部111は、位置情報の送信を了承しているユーザ端末20から定期的に送信されてくる当該ユーザ端末20の位置情報を受信する。具体的には、ユーザ端末20においてGPS信号を受信することで算出された位置情報を受信する。位置情報には、ユーザ端末20の位置を示す緯度や経度の座標、およびその位置にいた時間等が含まれている。第1の位置情報受信部111で受信したユーザの位置情報は、ログデータを収集するために利用される。
ログ作成部112は、第1の位置情報受信部111で受信した位置情報に含まれる座標と、スポットデータベース104に記憶された各スポットの座標と、から当該座標の位置に存在するスポットを判定し、ユーザ端末20の所有者であるユーザを識別するユーザIDに、そのユーザがいたスポットを識別するスポットIDと、そのスポットにいた時間と、を関連付けてログデータとしてログデータベース101に記憶させる。
【0028】
共起スポット計算部113は、ログデータベース101に記憶されたログデータに基づいて、各スポットに対する共起スポットを算出する。具体的には、所定期間内にスポットSaに立ち寄った人数をP(Sa)、スポットSbに立ち寄った人数をP(Sb)、スポットSaとSbの両方に立ち寄った人数をP(Sa;Sb)とし、スポットSaとSbとの共起度C(Sa;Sb)を以下の式(1)で求める。ここで、所定期間は5時間、半日、1日など適宜設定することができる。
【0029】
C(Sa;Sb)=P(Sa;Sb)/P(Sa)×P(Sa;Sb)/P(Sb) ・・・(1)
【0030】
共起度C(Sa;Sb)が任意の閾値以上であれば共起性ありとし、任意の閾値に満たない場合は共起性なしと判定する。すなわち、共起度C(Sa;Sb)が任意の閾値以上の場合は、スポットSaはスポットSbの共起スポットであり、スポットSbはスポットSaの共起スポットであると言うことができる。なお、閾値は、任意に設定することができる。そして、スポットSaの共起スポットと判定されたスポットSbのスポットIDを、スポットSaのスポットIDと関連付けて、共起スポットデータベース102に記憶させる。このように、スポットSaに対する共起度を全てのスポットについてそれぞれ計算し、共起スポットを求める。
【0031】
配信手段12は、ユーザ端末20の現在位置に対する共起スポットを、スポット情報としてユーザ端末20に送信する。配信手段12は、第2の位置情報受信部121と、共起スポット抽出部122と、スポット情報配信部123と、を備えている。ここで、第2の位置情報受信部121および共起スポット抽出部122が、本発明の共起スポット抽出手段として機能する。
第2の位置情報受信部121は、ユーザ端末20からユーザの位置情報を取得する。具体的には、ユーザ端末20においてGPS信号を受信することで算出された位置情報を受信する。位置情報には、ユーザ端末20の位置を示す緯度や経度の座標等が含まれている。第2の位置情報受信部121で受信したユーザの位置情報は、当該ユーザに最適なスポット情報を配信するために利用される。
【0032】
共起スポット抽出部122は、ユーザ端末20の位置情報と、スポットデータベース104に記憶された各スポットの座標と、からユーザ端末20が位置するスポットを特定する。ユーザ端末20が位置する座標がいずれのスポットにも該当しない場合は、最も近いスポットを特定する。そして、特定されたスポットを識別するスポットIDに関連付けられた共起スポットを、共起スポットデータベース102から抽出する。
スポット情報配信部123は、抽出された共起スポットを識別するスポットIDに関連付けられたスポット情報を、スポットデータベース104から取得し、当該スポット情報を当該ユーザ端末20へ配信する。スポット情報としては、スポットの名称、場所、業種、交通案内等が含まれている。なお、ユーザ端末20の位置する座標がいずれのスポットにも該当しない場合は、共起スポット抽出部122で特定された最も近いスポットに関する情報も、共起スポットの情報とともに配信する。」

C 「【0034】
[情報配信装置10の動作]
次に、情報配信装置10の動作を、フローチャートに基づいて説明する。
情報配信システム1は、共起スポットを求めるステップと、ユーザ端末20に対してスポット情報を提供するステップと、が別々に動作する。
まず、共起スポットを求めるステップを図2に基づいて説明する。
情報配信システム1では、ユーザ端末20は予め情報配信装置10にユーザ登録され、一意に識別可能なユーザIDが付与されている。ユーザ登録時には、情報配信装置10に対して位置情報を送信することを了承するか否かを選択し、この情報がユーザデータベース103に記憶されている。なお、位置情報の送信を了承しているユーザ端末20には、定期的に情報配信装置10に対して位置情報を送信するプログラムが組み込まれている。
【0035】
第1の位置情報受信部111は、ユーザ端末20から送信されてくる位置情報を受信する(ステップS11)。
次に、ログ作成部112は、位置情報に含まれる緯度や経度の座標に基づいて、スポットデータベース104から該当するスポットを特定する。そして、当該位置情報を送信したユーザ端末20のユーザIDと、当該スポットのスポットIDと、位置情報に含まれる時間と、を関連付けてログデータベース101に記憶させる(ステップS12)。
【0036】
そして、共起スポット計算部113は、ログデータベース101に記憶されたログデータに基づいて、あるスポットに対するその他のスポットの共起度を上記(1)式を用いて算出し、共起度がある閾値以上、例えば60%以上となるスポットを当該スポットの共起スポットであるとして、当該スポットを識別するスポットIDに共起スポットと判定されたスポットを識別するスポットIDを関連付けて、共起スポットデータベース102に記憶させる(ステップS13)。
【0037】
例えば、アウトドアショップAを訪れたユーザは、その後にアウトドアショップBおよびアウトドアショップCを訪れる確率は高いが、宝石店Dに訪れる確率は低い。この確率が上述した共起度であり、この共起度が閾値以上であるアウトドアショップBおよびアウトドアショップCは、アウトドアショップAの共起スポットとなる。したがって、アウトドアショップAにアウトドアショップBおよびアウトドアショップCが関連付けられてそれぞれのスポットIDが共起スポットデータベース102に記憶される。
【0038】
次に、ユーザ端末20にスポット情報を提供するステップを図3に基づいて説明する。
ユーザは、スポット情報を取得したい場合に、ユーザ端末20から情報配信装置10にアクセスして、スポット情報の要求を送信する。このとき、ユーザ端末20の位置情報も同時に送信する。
第2の位置情報受信部121は、ユーザ端末20からの要求を位置情報とともに受信する(ステップS21)。
【0039】
次に、共起スポット抽出部122は、受信した位置情報に含まれる座標に基づいて、スポットデータベースから該当するスポットを特定する。該等するスポットがない場合は、最も近いスポットを特定する。そして、当該スポットの共起スポットを共起スポットデータベース102から抽出する(ステップS22)。
スポット情報配信部123は、抽出されたスポットに関する情報をスポットデータベース104から取得し、当該スポット情報を、スポット情報の要求をしたユーザ端末20に対して配信する。(ステップS23)。
【0040】
上述した例において、アウトドアショップBにいるユーザがユーザ端末20から情報配信装置10にアクセスしてスポット情報を要求すると、情報配信装置10は、アウトドアショップBの共起スポットとして共起スポットデータベース102に記憶されているアウトドアショップAおよびCのスポット情報をユーザ端末20に対して送信する。なお、共起スポットが複数ある場合、ユーザ端末20の表示画面には共起度の高い順に表示させるようにしてもよい。」

(イ)上記(ア)Aの【0014】の記載から,引用文献1には,「ユーザ端末に対してスポット情報を配信する情報配信方法であって、複数のユーザ端末から各ユーザが訪れたスポットを受信するステップと、前記各ユーザが所定期間内に訪れた前記スポットをログデータとして収集するステップと、前記ログデータに含まれる各スポットに対する共起スポットをそれぞれ算出し、前記スポットと前記共起スポットとを関連付けて記憶手段に記憶させるステップと、前記ユーザ端末から当該ユーザの現在位置を受信するステップと、当該ユーザの現在位置に最も近いスポットに対する共起スポットを前記記憶手段から抽出するステップと、前記抽出された共起スポットを前記スポット情報として前記ユーザ端末に配信するステップ」からなる方法が記載されていることが読み取れ,また同【0015】の記載から,「ユーザが実際に訪れたスポットをログデータとして収集するため、実データに基づいた適切な共起スポットを求めることができる。また、共起スポットを提示されたユーザは、他の人がどのようなスポットを訪れているかという情報に基づいて次の予定を立てることができるため、ユーザにとって有益な情報を配信することができる。特に、同じ趣味や嗜好を持っている人は同じスポットを訪れる確率も高いため、実データに基づいて求められた共起スポットをユーザに提示することで、ユーザにとって有益な情報を配信することができる。すなわち、ユーザの満足度を向上させることができる」を実現するものであることが読み取れ,さらに,上記「情報配信方法」に関し,上記(ア)Cの【0034】以降には,「情報配信装置10の動作」として上記「情報配信方法」の各「ステップ」に関する記載がなされていることから,上記「情報配信方法」は,「情報配信装置」において動作するものであることが読み取れる。
そして,上記「情報配信装置」は,上記(ア)Bの【0020】の記載によれば,「ハードウェア構成として」,「ROM(Read Only Memory)等の記憶手段と、CPU(Central Processing Unit)等の制御手段と、を備え」,「ROMはOS(Operating System:基本ソフトウェア)や各種サーバを制御するプログラム、各種アプリケーション、各種データ等が格納されて」,「CPUは、これらの記憶手段に格納されているプログラムを読み出し、このプログラムに従って各種処理を行う」ものであり,
また,同【0021】ないし【0025】の記載によれば,上記「記憶手段には」,「ログデータベース101と、共起スポットデータベース102と、ユーザデータベース103と、スポットデータベース104と、が記憶されて」おり,「ログデータベース101は」,「ユーザ端末20を識別するユーザIDと、ユーザ端末20が訪れたスポットを識別するスポットIDと、その時間と、が関連付けられて1つのレコードとして記憶されたテーブル構造となって」おり,「ここで、ユーザIDは、情報配信装置10を利用するためにユーザ登録を行った際に、一意に識別可能に付与されてユーザデータベースに記憶されている」ものであり,また,「共起スポットデータベース102は」,「スポットを識別するスポットIDと、このスポットに共起する2件のスポットIDと、が関連付けられて1つのレコードとして記憶されたテーブル構造となっている」ものであり,また,「ユーザデータベース103は、ユーザを識別するユーザIDと、ユーザの属性等の情報と、情報配信装置10に対する位置情報の送信の可否と、が関連付けられて記憶されている」ものであり,また,「スポットデータベース104は、スポットを識別するスポットIDと、スポットの名称と、スポットの位置を示す緯度や経度の座標と、交通案内等の情報と、が関連付けられて記憶されている」ものであることが読み取れ,また,上記「ログデータベース」に記憶されたデータについては,上記Bの【0022】【表1】から,各ユーザが複数のスポットを訪れたことを示すデータを含む,ことが読み取れる。
そして,上記「情報配信装置」は,上記Bの【0026】,【0031】の記載によれば,「制御手段の機能構成として、共起スポットを設定する設定手段11と、スポット情報を配信する配信手段12と、を備え」,そのうち,「設定手段11は、第1の位置情報受信部111と、ログ作成部112と、共起スポット計算部113と、を備え」,「配信手段12は、第2の位置情報受信部121と、共起スポット抽出部122と、スポット情報配信部123と、を備えている」ことが読み取れる。

(ウ)上記(ア)Cの【0034】以降に示された「情報配信装置10の動作」のうち,同【0035】?【0037】に「共起スポットを求める」ステップとして同【0035】に記載された「第1の位置情報受信部111は、ユーザ端末20から送信されてくる位置情報を受信する(ステップS11)」との動作内容では,受信した位置情報はユーザが訪れたスポットを特定するものであるから,上記(イ)で引用した「情報配信方法」の「複数のユーザ端末から各ユーザが訪れたスポットを受信するステップ」に関するものであることと認められ,
同様に,同【0035】に記載された,「次に、ログ作成部112は、位置情報に含まれる緯度や経度の座標に基づいて、スポットデータベース104から該当するスポットを特定する」,及び,「当該位置情報を送信したユーザ端末20のユーザIDと、当該スポットのスポットIDと、位置情報に含まれる時間と、を関連付けてログデータベース101に記憶させる(ステップS12)」との動作内容は,上記(イ)で引用した【0014】の「各ユーザが所定期間内に訪れた前記スポットをログデータとして収集するステップ」に関するものであることと認められ,
同様に,同【0036】に記載された,「共起スポット計算部113は、ログデータベース101に記憶されたログデータに基づいて、あるスポットに対するその他のスポットの共起度を上記(1)式を用いて算出し、共起度がある閾値以上、例えば60%以上となるスポットを当該スポットの共起スポットであるとして、当該スポットを識別するスポットIDに共起スポットと判定されたスポットを識別するスポットIDを関連付けて、共起スポットデータベース102に記憶させる(ステップS13)」との動作内容は,上記(イ)で引用した【0014】の「ログデータに含まれる各スポットに対する共起スポットをそれぞれ算出し、前記スポットと前記共起スポットとを関連付けて記憶手段に記憶させるステップ」に関するものであることと認められ,そして,上記「共起度」を求める「(1)式」は,上記Bの【0028】?【0029】の記載によれば,「所定期間内にスポットSaに立ち寄った人数をP(Sa)、スポットSbに立ち寄った人数をP(Sb)、スポットSaとSbの両方に立ち寄った人数をP(Sa;Sb)とし」て,「C(Sa;Sb)=P(Sa;Sb)/P(Sa)×P(Sa;Sb)/P(Sb)」との式になり,この式により上記「共起度」が求められることが読み取れる。
また,上記Cの【0034】以降に示された「情報配信装置10の動作」のうち,同【0038】?【0040】に「ユーザ端末20にスポット情報を提供するステップ」ステップとして同【0039】に記載された「共起スポット抽出部122は、受信した位置情報に含まれる座標に基づいて、スポットデータベースから該当するスポットを特定する。該等(当審注:「該当」の誤記と認められる。)するスポットがない場合は、最も近いスポットを特定する。そして、当該スポットの共起スポットを共起スポットデータベース102から抽出する(ステップS22)」との動作内容では,受信した位置情報はユーザが訪れたスポットを特定するものであるから,上記(イ)で引用した【0014】の「当該ユーザの現在位置に最も近いスポットに対する共起スポットを前記記憶手段から抽出するステップ」に関するものであることと認められ,
同様に,同【0039】に記載された,「スポット情報配信部123は、抽出されたスポットに関する情報をスポットデータベース104から取得し、当該スポット情報を、スポット情報の要求をしたユーザ端末20に対して配信する。(ステップS23)」との動作内容は,上記(イ)で引用した【0014】の「抽出された共起スポットを前記スポット情報として前記ユーザ端末に配信するステップ」に関するものであることと認められる。
そして,上記Cの【0040】の「例において、アウトドアショップBにいるユーザがユーザ端末20から情報配信装置10にアクセスしてスポット情報を要求すると、情報配信装置10は、アウトドアショップBの共起スポットとして共起スポットデータベース102に記憶されているアウトドアショップAおよびCのスポット情報をユーザ端末20に対して送信する」との記載から,「スポット情報」として「アウトドアショップBの共起スポット」である「アウトドアショップAおよびCのスポット情報」が含まれることが読み取れる。

(エ)上記(ア)ないし(ウ)から,引用文献1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「ユーザ端末に対してスポット情報を配信する情報配信方法であって,
複数のユーザ端末から各ユーザが訪れたスポットを受信するステップと,
前記各ユーザが所定期間内に訪れた前記スポットをログデータとして収集するステップと,
前記ログデータに含まれる各スポットに対する共起スポットをそれぞれ算出し,前記スポットと前記共起スポットとを関連付けて記憶手段に記憶させるステップと,
前記ユーザ端末から当該ユーザの現在位置を受信するステップと,
当該ユーザの現在位置に最も近いスポットに対する共起スポットを前記記憶手段から抽出するステップと,
前記抽出された共起スポットを前記スポット情報として前記ユーザ端末に配信するステップと,を備えることで,
ユーザが実際に訪れたスポットをログデータとして収集するため,実データに基づいた適切な共起スポットを求めることができ,また,共起スポットを提示されたユーザは,他の人がどのようなスポットを訪れているかという情報に基づいて次の予定を立てることができるため,ユーザにとって有益な情報を配信することができ,特に,同じ趣味や嗜好を持っている人は同じスポットを訪れる確率も高いため,実データに基づいて求められた共起スポットをユーザに提示することで,ユーザにとって有益な情報を配信することができ,すなわち,ユーザの満足度を向上させることができるものであり,
当該情報配信方法は,情報配信装置において動作するものであり,
上記情報配信装置は,ハードウェア構成として,ROM(Read Only Memory)等の記憶手段と,CPU(Central Processing Unit)等の制御手段と,を備え,ROMはOS(Operating System:基本ソフトウェア)や各種サーバを制御するプログラム,各種アプリケーション,各種データ等が格納され,CPUは,これらの記憶手段に格納されているプログラムを読み出し,このプログラムに従って各種処理を行うものであり,
上記記憶手段には,ログデータベースと,共起スポットデータベースと,ユーザデータベースと,スポットデータベースと,が記憶されており,上記ログデータベースは,ユーザ端末を識別するユーザIDと,ユーザ端末が訪れたスポットを識別するスポットIDと,その時間と,が関連付けられて1つのレコードとして記憶されたテーブル構造となっており,ここで,ユーザIDは,情報配信装置を利用するためにユーザ登録を行った際に,一意に識別可能に付与されてユーザデータベースに記憶されているものであり,また,上記共起スポットデータベースは,スポットを識別するスポットIDと,このスポットに共起する2件のスポットIDと,が関連付けられて1つのレコードとして記憶されたテーブル構造となっているものであり,また,上記ユーザデータベースは,ユーザを識別するユーザIDと,ユーザの属性等の情報と,情報配信装置に対する位置情報の送信の可否と,が関連付けられて記憶されているものあり,また,上記スポットデータベースは,スポットを識別するスポットIDと,スポットの名称と,スポットの位置を示す緯度や経度の座標と,交通案内等の情報と,が関連付けられて記憶されているものであり,上記ログデータベースに記憶されたデータは,各ユーザが複数のスポットを訪れたことを示すデータを含み,
上記情報配信装置は,制御手段の機能構成として,共起スポットを設定する設定手段と,スポット情報を配信する配信手段とを備え,そのうち,設定手段は,第1の位置情報受信部と,ログ作成部と,共起スポット計算部と,を備え,配信手段は,第2の位置情報受信部と,共起スポット抽出部と,スポット情報配信部と,を備えており,
上記複数のユーザ端末から各ユーザが訪れたスポットを受信するステップは,上記第1の位置情報受信部が,ユーザ端末から送信されてくる位置情報を受信することであり,
上記各ユーザが所定期間内に訪れた前記スポットをログデータとして収集するステップは,上記ログ作成部が,位置情報に含まれる緯度や経度の座標に基づいて,スポットデータベースから該当するスポットを特定し,当該位置情報を送信したユーザ端末のユーザIDと,当該スポットのスポットIDと,位置情報に含まれる時間と,を関連付けてログデータベースに記憶させることであり,
上記ログデータに含まれる各スポットに対する共起スポットをそれぞれ算出し,前記スポットと前記共起スポットとを関連付けて記憶手段に記憶させるステップは,上記共起スポット計算部が,ログデータベースに記憶されたログデータに基づいて,あるスポットに対するその他のスポットの共起度を算出し,共起度がある閾値以上,例えば60%以上となるスポットを当該スポットの共起スポットであるとして,当該スポットを識別するスポットIDに共起スポットと判定されたスポットを識別するスポットIDを関連付けて,共起スポットデータベースに記憶させることであって,上記共起度は,所定期間内にスポットSaに立ち寄った人数をP(Sa),スポットSbに立ち寄った人数をP(Sb),スポットSaとSbの両方に立ち寄った人数をP(Sa;Sb)として,C(Sa;Sb)=P(Sa;Sb)/P(Sa)×P(Sa;Sb)/P(Sb)の式により求められるものであり,
上記ユーザの現在位置に最も近いスポットに対する共起スポットを前記記憶手段から抽出するステップは,上記共起スポット抽出部が,受信した位置情報に含まれる座標に基づいて,スポットデータベースから該当するスポットを特定し,該当するスポットがない場合は,最も近いスポットを特定し,そして,当該スポットの共起スポットを共起スポットデータベースから抽出することであり,
上記抽出された共起スポットを前記スポット情報として前記ユーザ端末に配信するステップは,上記スポット情報配信部が,抽出されたスポットに関する情報をスポットデータベースから取得し,当該スポット情報を,スポット情報の要求をしたユーザ端末に対して配信することであり,
上記スポット情報としてアウトドアショップの共起スポットであるアウトドアショップのスポット情報が含まれる,
情報配信方法。」

イ 周知文献1
(ア)同じく原査定の拒絶の理由で周知文献として引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2012-256239号公報(以下「周知文献1」という。)には,次の記載がある。

D 「【0001】
本発明は、目的地予測装置及びプログラムに係り、特に、ユーザの文書データの閲覧履歴及び位置情報の履歴から、ユーザの目的地を予測する目的地予測装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、インターネット閲覧履歴からユーザの興味を推定するシステムが知られている(例えば、特許文献1)。また、閲覧履歴・移動履歴から行動パターンを生成・予測し、情報提供を行うシステムが知られている(特許文献2)。
・・・(中略)・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の特許文献1に記載のシステムは、あくまでユーザの興味の有りそうな箇所を列挙し推薦するシステムであり、目的地の予測を行うことができない、という問題がある。また、移動履歴データを使っておらずインターネット履歴のみを使っているため、推定精度が低い、という問題がある。
【0005】
また、上記の特許文献2に記載の技術は、移動距離に基づく地点間移動予測であり、定期的な移動における目的地しか予測できない、という問題がある。
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、定期的な移動でない場合であっても、目的地を精度良く予測することができる目的地予測装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために本発明に係る目的地予測装置は、複数のユーザについて、文書データの閲覧履歴及び位置情報の履歴を収集する履歴収集手段と、収集された閲覧履歴の各文書データについて、前記文書データ内のテキストに応じて、閲覧された前記文書データを分類する分類手段と、前記収集された位置情報の履歴に基づいて、ユーザ毎に、滞在地データを抽出する抽出手段と、ユーザ毎に、前記ユーザの前記閲覧履歴の各文書データと、前記位置情報の履歴から抽出された各滞在地データとを関連付けて、前記文書データと前記滞在地データとの組み合わせの各々に関する相関を算出する相関算出手段と、算出した前記相関に基づいて、予測対象ユーザについて、各滞在地データが示す場所へ行く確率を算出し、前記算出された確率に基づいて目的地を予測する目的地予測手段と、を含んで構成されている。
・・・(中略)・・・
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明の目的地予測装置及びプログラムによれば、ユーザ毎に、閲覧履歴の各文書データと、位置情報の履歴から抽出された各滞在地データとを関連付けて相関を算出し、算出された相関に基づいて、予測対象ユーザについて、各滞在地データが示す場所へ行く確率を算出することにより、定期的な移動でない場合であっても、目的地を精度良く予測することができる、という効果が得られる。」

E 「【0033】
コンピュータ42は、CPUと、RAMと、後述する相関学習処理ルーチン及び目的地予測処理ルーチンROMとを備え、機能的には次に示すように構成されている。コンピュータ42は、受信した閲覧データ及び移動データを収集するデータ収集部50と、収集した閲覧データ及び移動データを閲覧履歴及び移動履歴としてユーザ毎に記憶するログデータベース52と、ログデータベース52からユーザ毎に移動履歴を取得する移動データ取得部54と、取得した移動履歴に基づいて、滞在地を抽出する滞在地抽出部56と、ログデータベース52からユーザ毎に閲覧履歴を取得する閲覧データ取得部58と、取得した閲覧履歴の各閲覧データのHTMLテキストに基づいて、場所を抽出する内容抽出部60と、ユーザ毎に、閲覧データ及び移動データの各組み合わせについて、相関を算出する相関算出部62と、算出された相関に基づいて、ある場所が抽出されるWebサイトを閲覧したときに滞在地へ行く確率を示す事前確率を学習する事前確率学習部64と、算出された相関及び学習された事前確率を記憶する学習結果データベース66とを備えている。なお、内容抽出部60は、分類手段の一例であり、事前確率学習部64が、確率算出手段の一例である。」

F 「【0049】
相関算出部62は、図4に示すように、ユーザID毎に、閲覧履歴の閲覧データiの各々と、移動履歴から抽出された滞在地データjの各々とを組み合わせて関連付け、ユーザkにおける閲覧データiと滞在地データjとの相関w^(k)_(i,j)を、以下の(3)式に従って算出する。
【0050】
【数3】


ただし、α2は予め定められたパラメータであり、dは、閲覧データiに対して結び付けられた場所データと、滞在地データ(場所データ)との距離であり、Tは、滞在地データの時刻tjと閲覧データの閲覧時刻tiとの時間間隔(T=tj-ti)である。
【0051】
上記(3)式によれば、場所の距離dが近いほど、相関w^(k)_(i,j)が大きくなり、時間間隔Tが短いほど、相関w^(k)_(i,j)が大きくなる。また、閲覧データの閲覧時刻より滞在地データの時刻の方が早い場合には、相関が0となる。」

(イ)上記記載から,周知文献1には,次の技術が記載されていると認められる。
「ユーザ毎に,閲覧履歴の各文書データと,位置情報の履歴から抽出された各滞在地データとを関連付けて相関を算出し,算出された相関に基づいて,予測対象ユーザについて,各滞在地データが示す場所へ行く確率を算出することで,情報提供を行うシステムであって,
上記相関は,ユーザID毎に,閲覧履歴の閲覧データの各々と,移動履歴から抽出された滞在地データの各々とを組み合わせて関連付けたものであって,パラメータとして,閲覧データに対して結び付けられた場所データと滞在地データ(場所データ)との距離と,滞在地データの時刻と閲覧データの閲覧時刻との時間間隔,とを含み,場所の距離が近いほど相関が大きくなり,時間間隔が短いほど相関が大きくなり,また,閲覧データの閲覧時刻より滞在地データの時刻の方が早い場合には,相関が0となるものである,システム。」

ウ 周知文献2
(ア)本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2010-190683号公報(以下「周知文献2」という。)には,次の記載がある。

G 「【0001】
本発明は、地図上の複数の地点を複数のエリアに分類する関心エリア設定装置及び関心エリア設定方法に関する。また本発明は、地図上の複数の地点を経由する移動経路を推薦する推薦経路決定装置及び推薦経路決定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子データとしてサーバに記憶されている地図を閲覧しようとするユーザに対して、ユーザが関心を持ちそうな地点を特定の情報によって分類し、その分類結果に応じて決定された関心エリアを地図とともに表示する方法及びシステムが提案されている(例えば、特許文献1?3を参照)。
特許文献1に開示された方法は、検出対象のロケーションに対してタグ付けされた、ユーザによる記述タグの情報に基づいてクラスタリングを実行することにより、関心エリアを決定する。しかし、それぞれのロケーションに対して記述タグを作成することは、ユーザにとって手間の掛かることである。そのため、そのような記述タグ自体が作成されず、記述タグの情報に基づいてクラスタリングする方法は、適切な関心エリアを設定できないことがあった。
【0003】
また、特許文献2に開示されたシステムは、ユーザが設定した地図上の範囲内の各地点についての情報を記述した記述情報を取得する。そしてそのシステムは、取得した記述情報を形態素解析によって品詞に分解することで、各地点の特徴を表す特徴語及びその特徴の強さを求める。そのシステムは、得られた特徴語及び特徴の強さに基づいてクラスタリングを実行することにより、共通の特徴を持つ地点を包含する共通特徴エリアを決定する。そのため、このシステムは、特許文献1に開示された方法と同様に、適切な共通特徴エリアを設定するには、各地点について記述された情報を必要とする。
【0004】
一方、特許文献3に開示された装置は、撮影画像が取得された複数の撮影場所を、撮影場所間の距離または撮影日時によって分類する。そのため、この装置は、各地点ごとの記述情報を使用することなく、複数の地点を分類することができる。
・・・(中略)・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献3に開示された装置は、ユーザが関心を持つ事物とは無関係に複数の地点を分類する。例えば、互いに異なる関心対象に関連する二つの地点が近接していたり、その二つの地点での撮影日時が同じであれば、この装置は、それら二つの地点を同じグループに分類してしまう。そのため、この装置は、ユーザにとって意味があるように、対象となる地点を分類できないおそれがあった。
【0007】
そこで、本発明は、地図上の各地点について記述された情報を用いることなく、同一事物に関連する地点を含むエリアを設定可能な関心エリア設定装置及び関心エリア設定方法を提供することを目的とする。
【0008】
また本発明は、各地点について記述された情報を用いることなく、ユーザに対して適切な移動経路を推薦可能な移動経路決定装置及び移動経路決定方法を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の記載によれば、本発明の一つの形態として、指定された地図範囲に含まれる複数の地点を、少なくとも一つの関心エリアに分類する関心エリア設定装置が提供される。この関心エリア設定装置は、指定された地図範囲に含まれる複数の地点のうちの2以上の地点の位置情報と、それら2以上の地点のそれぞれに対応する時間情報とを含む行動データを少なくとも一つ記憶する記憶部(12)と、行動データごとに、指定された地図範囲に含まれる複数の地点を時間順に並べた配列表を作成する位置順序決定部(21)と、配列表において、複数の地点のうちの二つの地点が時間順に隣接した回数を、その二つの地点間の関連度として算出し、関連度が正の所定値以上となる地点間にリンクを設定する位置関連度算出部(22)と、上記の複数の地点に含まれる二つの地点間のリンクを、その二つの地点間の関連度が低い方から順に切断し、リンクによって接続された地点の集合ごとに別個のクラスタに分類することにより、1以上の所定数のクラスタを作成するクラスタリング部(23)と、所定数のクラスタのそれぞれについて、クラスタ内に含まれる地点の集合を関心エリアとして決定する関心エリア決定部(24)とを有する。
係る構成を有することにより、本発明に係る関心エリア設定装置は、各地点について記述された情報を用いることなく、同一事物に関連する地点を含むエリアを設定できる。なお、本明細書において、所定の地点について記述された情報とは、言葉によってその地点の何らかの特性を表す情報をいう。例えば、所定の地点について記述された情報には、その地点の名称、その地点を表す種別(例えば、道路、交差点、公園、レストラン等)、その地点に存在する店又は建物の名称、その地点において提供されるサービスの種類、あるいはユーザにより自由記述されたコメントが含まれる。」

H 「【0027】
ここで、一つの行動データは、ユーザ、車など、地図上の複数の地点間を、実際に、あるいは擬似的に移動可能な主体を識別する情報であるカテゴリIDと、地図上の複数の地点の位置情報(緯度、経度)と、地点ごとの時間情報を有する。なお、複数の地点間を擬似的に移動するとは、地図データ上の複数の地点にチェックマークを付することをいう。この場合、所定の地点にチェックマークを付した時刻が、その地点の時間情報となる。
行動データは、例えば、特定の人物あるいは車両などの移動物体が、ある地域を訪れたときに通った複数の地点を、その地点の位置情報とともに、その地点を通ったときの時刻を、携帯電話機、ナビゲーションシステムなどによって取得し、その人物、車、あるいは携帯電話機などを識別する識別情報と関連付けて電子データとして記録することにより作成される。あるいは、行動データは、ウェブサーバなどで公開されているブログなどに添付されている、写真データのヘッダ、文章などから、複数の地点の位置情報及びその地点に関連付けられている時刻を取得することにより作成される。
なお、行動データに含まれる各地点の位置情報は、一定の広がりを持つ範囲を代表する地点の位置情報であってもよい。例えば、南北方向及び東西方向にそれぞれ50mの幅を持つ領域を同一の地点とみなし、その領域内に含まれる地点は、行動データ上でその領域内の中心点により代表される。あるいは、同一の番地で表される地図上の範囲を同一の地点とみなし、その同一の番地で表される範囲内に含まれる地点は、行動データ上で、その範囲の中心点により代表されてもよい。
これら行動データは、予め収集された上、記憶部12に記憶される。あるいは、地図データ生成装置1は、通信ネットワーク2を介して他の装置から適宜それら行動データを収集してもよい。」

I 「【0032】
図3に、制御部13の機能ブロック図を示す。図3に示されるように、制御部13は、位置順序決定部21と、位置関連度算出部22と、クラスタリング部23と、関心エリア決定部24と、地図データ生成部25とを有する。制御部13が有するこれらの各部は、例えば、プロセッサユニット上で実行されるコンピュータプログラムによって実装される機能モジュールである。」

J 「【0038】
位置関連度算出部22は、位置順序決定部21から受け取った配列表に基づいて、地図設定範囲情報に示された範囲内の複数の地点間の関連度を算出する。ここで、配列表上で横方向に隣接する地点データに表される地点同士は、時間的に限られた期間内に、同一人物、同じ車などが通った地点、あるいは、同一人物が地図上で連続してチェックマークを付けた地点であり、何れの地点も、特定の事物との関連性が高いと考えられる。
そこで、位置関連度算出部22は、配列表上で横方向に隣接する任意の二つの地点データの組み合わせの数、すなわち、その二つの地点が時間順に並んだ数を計数する。そして位置関連度算出部22は、その合計値を、それら二つの地点データに表される二つの地点間の関連度とする。そして位置関連度算出部23は、関連度が正の所定値以上となる地点間に、それら地点間に何らかの関係があることを示すリンクを設定する。
なお、その正の所定値は、地図設定範囲情報に示された範囲の広さ、その範囲内に含まれる地点数、あるいは配列表作成に使用される行動データの数に応じて決定される。例えば、地図設定範囲情報に示された範囲の広さが広くなるほど、関連度を調べる地点間の数が増えるので、相対的に関連度の値は低くなる可能性が高い。そこで、地図設定範囲情報に示された範囲の広さが広くなるほど、その正の所定値を小さくする。同様に、地図設定範囲情報に示された範囲に含まれる地点数が増えるほど、その正の所定値を小さくする。逆に、配列表作成に使用される行動データの数が増えるほど、関連度の値は全体的に高くなる。そこで、その行動データの数が増えるほど、その正の所定値を大きくする。なお、本実施形態では、その正の所定値を1とした。」

K 「【0084】
また、上記の各実施形態における、制御部の位置関連度算出部及び移動頻度算出部は、各地点間の距離あるいは道のりを考慮して、2地点間の関連度及び移動頻度を算出してもよい。例えば、位置関連度算出部及び移動頻度算出部は、2地点間の距離あるいは道のりが近いほど大きくなる重みを設定し、それら2地点が配列表上で時間順に並んだとき、その重みを合計することにより、関連度及び移動頻度を算出してもよい。あるいは、各地点について記述された情報があれば、位置関連度算出部及び移動頻度算出部はその記述情報を考慮して、2地点間の関連度及び移動頻度を算出してもよい。例えば、位置関連度算出部及び移動頻度算出部は、配列表上で時間順に並んだ2地点の両方に同じ特性を表す記述情報が付されていれば、その2地点間の関連度及び移動頻度がそのような記述情報が付されていない場合よりも大きくなるように、関連度及び移動頻度を算出してもよい。」

(イ)上記記載から,周知文献2には,次の技術が記載されていると認められる。
「地図上の複数の地点を経由する移動経路を推薦する推薦経路決定装置であって,
指定された地図範囲に含まれる複数の地点のうちの2以上の地点の位置情報と,それら2以上の地点のそれぞれに対応する時間情報とを含む行動データを少なくとも一つ記憶する記憶部と,行動データごとに,配列表を作成する位置順序決定部と,配列表において二つの地点間の関連度を算出し,関連度が正の所定値以上となる地点間にリンクを設定する位置関連度算出部と,上記の複数の地点に含まれる二つの地点間のリンクを,1以上の所定数のクラスタを作成するクラスタリング部と,クラスタ内に含まれる地点の集合を関心エリアとして決定する関心エリア決定部を有し,
上記位置順序決定部,上記位置関連度算出部,上記クラスタリング部,上記関心エリア決定部,及び,地図データ生成部は,制御部が,プロセッサユニット上で実行されるコンピュータプログラムによって実装される機能モジュールとして有するものであり,
上記行動データは,例えば,特定の人物あるいは車両などの移動物体が,ある地域を訪れたときに通った複数の地点を,その地点の位置情報とともに,その地点を通ったときの時刻を取得して記録することにより作成され,上記位置関連度算出部は,配列表上で横方向に隣接する任意の二つの地点データが時間順に並んだ数の合計値を計数して二つの地点間の関連度とし,関連度が正の所定値以上となる地点間に,それら地点間に何らかの関係があることを示すリンクを設定するものであり,
位置関連度算出部及び移動頻度算出部は,各地点間の距離あるいは道のりを考慮して,2地点間の関連度及び移動頻度を算出してもよい,推薦経路決定装置。」

(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。

(ア)引用発明は「ユーザ端末に対してスポット情報を配信する情報配信方法」であり,この場合の「配信」される「スポット情報」とは,「スポットデータベースから取得し」たものであって,「スポットを識別するスポットIDと,スポットの名称と,スポットの位置を示す緯度や経度の座標と,交通案内等の情報」を含むことから地理的情報であり,かつ,「アウトドアショップの共起スポット」として提供されうるものであることから商業コンテンツであるといえ,このような情報を配信するために引用発明の「情報配信装置」は,「ROMはOS(Operating System:基本ソフトウェア)や各種サーバを制御するプログラム,各種アプリケーション,各種データ等が格納され,CPUは,これらの記憶手段に格納されているプログラムを読み出し,このプログラムに従って各種処理を行う」ものであるから,上記地理的情報の配信もプログラム又はアプリケーションで行っているのは明らかである。よって,本件補正発明の「地理的アプリケーション」と引用発明の「スポット情報」を提供するプログラム又はアプリケーションとは,“地理的情報を提供するアプリケーション”である点で共通するといえる。
また,引用発明は,「同じ趣味や嗜好を持っている人は同じスポットを訪れる確率も高いため,実データに基づいて求められた共起スポットをユーザに提示することで,ユーザにとって有益な情報を配信することができ」るものであって,「有益な情報」として配信すべき「共起スポット」を選定してユーザに提示しているから,「スポット情報」の効率的な提供を行っているということができる。
そうすると,本件補正発明である「地理的アプリケーションにおいて商業コンテンツを効率的に提供することを提供するための方法」と,引用発明である「ユーザ端末に対してスポット情報を配信する情報配信方法」とは,“地理的情報を提供するアプリケーションにおいて商業コンテンツを効率的に提供することを提供するための方法”である点で共通するといえる。

(イ)引用発明は「複数のユーザ端末から各ユーザが訪れたスポットを受信」して「前記各ユーザが所定期間内に訪れた前記スポットをログデータとして収集」することを「情報配信装置」で行うものであり,この場合の「情報配信装置」が,本件補正発明の「1つ以上のコンピューティングデバイス」に相当する。
また,引用発明の「スポット」は,「アウトドアショップ」を含み「スポットの位置を示す緯度や経度の座標」を有するから,本件補正発明の「地理的位置を有する」「ビジネス実体」に相当し,さらに,引用発明では,「同じ趣味や嗜好を持っている人は同じスポットを訪れる確率も高いため,実データに基づいて求められた共起スポットをユーザに提示」していることから,ログデータが収集される「同じスポット」を訪れる同じ趣味や嗜好を持っているような「ユーザ」は複数であることは明らかであって,「共起度」を算出する「あるスポット」とそれ「に対するその他のスポット」それぞれについても同様に,訪れる「ユーザ」は複数であるといえる。そうすると,引用発明の「あるスポット」,当該「あるスポットに対するその他のスポット」,上記「あるスポット」を訪れる複数の「ユーザ」,当該「あるスポットに対するその他のスポット」を訪れる複数の「ユーザ」はそれぞれ,本件補正発明の「第1の地理的位置を有する第1のビジネス実体」,「第2の地理的位置を有する第2のビジネス実体」,「複数のユーザの第1のサブセット」,「複数のユーザの第2のサブセット」に相当し,また,引用発明では「情報配信装置」の「第1の位置情報受信部が,ユーザ端末から送信されてくる位置情報を受信する」ことで「各ユーザが訪れたスポットを受信する」ことから,当該「スポット」を訪れたことの「位置情報」を「ユーザ端末」から送信することが,本件補正発明の「訪問の指示」に相当するといえる。

(ウ)上記(イ)から,引用発明の複数の「ユーザ」が「スポット」のうちの「あるスポット」を訪れることで,「情報配信装置」の「第1の位置情報受信部が,ユーザ端末から送信されてくる位置情報を受信する」こと,及び,複数の「ユーザ」が「スポット」のうちの上記「あるスポットに対するその他のスポット」を訪れることで,「情報配信装置」の「第1の位置情報受信部が,ユーザ端末から送信されてくる位置情報を受信する」ことはそれぞれ,本件補正発明の「複数のユーザの第1のサブセットによる、第1の地理的位置を有する第1のビジネス実体への第1の複数の訪問の指示を、1つ以上のコンピューティングデバイスによって受け取ること」,及び,「複数のユーザの第2のサブセットによる、第2の地理的位置を有する第2のビジネス実体への第2の複数の訪問の指示を、前記1つ以上のコンピューティングデバイスによって受け取ること」に相当する。

(エ)引用発明において算出する「あるスポットに対するその他のスポットの共起度」は,「所定期間内にスポットSaに立ち寄った人数をP(Sa),スポットSbに立ち寄った人数をP(Sb),スポットSaとSbの両方に立ち寄った人数をP(Sa;Sb)として,C(Sa;Sb)=P(Sa;Sb)/P(Sa)×P(Sa;Sb)/P(Sb)の式により求められるものであり」、「P(Sa)」で示される複数のユーザが「スポットSaに立ち寄」ること,「P(Sb)」で示される複数のユーザが「スポットSbに立ち寄」ることは,いずれも,「スポット」に対する複数の訪問といえる。
また,引用発明では,「ログデータベースに記憶されたデータは、各ユーザが複数のスポットを訪れたことを示すデータを含」むことから,「スポットSaとSbの両方に立ち寄」るユーザがあり,そして,「共起度」は「スポットSaとSbの両方に立ち寄った人数」を示す「P(Sa;Sb)」を含む式により求められることから,複数のユーザが「あるスポット」である「スポットSaに立ち寄」ることと複数のユーザが「あるスポットに対するその他のスポット」である「スポットSbに立ち寄」ることの相関を示す相関係数といえるものであって,当該「共起度」を算出することで相関関数を決定しているといえる。そうすると,後記する点で相違するものの,本件補正発明の「第1のビジネス実体と前記第2のビジネス実体の間の距離を判定し、かつ前記複数の前記ユーザのうちの前記第1のサブセットおよび前記第2のサブセットの両方内に存在するユーザについて、前記ユーザが前記第1のビジネス実体および前記第2のビジネス実体を訪問したそれぞれの時間を比較することによって、前記第1の複数の訪問と前記第2の複数の訪問との間の相関を示す相関係数を、前記1つ以上のコンピューティングデバイスによって決定すること」と,引用発明の「情報配信装置」の「共起スポット計算部」が,「あるスポットに対するその他のスポットの共起度」を算出することとは,“前記第1の複数の訪問と前記第2の複数の訪問との間の相関を示す相関係数を,前記1つ以上のコンピューティングデバイスによって決定すること”である点で共通する。

(オ)引用発明は「ユーザ端末から当該ユーザの現在位置を受信するステップ」を有するから,ユーザが有する「ユーザ端末」が物理的位置に位置していることは明らかであり,当該「ユーザ端末」は,本件補正発明の「第1の物理的位置に位置するユーザデバイス」に相当する。
また,引用発明は,「共起スポット計算部」が,算出された「共起度」をもとに「共起度がある閾値以上,例えば60%以上となるスポットを当該スポットの共起スポットであるとして,当該スポットを識別するスポットIDに共起スポットと判定されたスポットを識別するスポットIDを関連付けて,共起スポットデータベースに記憶させ」ており,当該「共起スポットデータベース」に記憶された情報は,「共起スポット抽出部が,受信した位置情報に含まれる座標に基づいて,スポットデータベースから該当するスポットを特定し,該当するスポットがない場合は,最も近いスポットを特定し,そして,当該スポットの共起スポット」を「抽出」し,「スポット情報配信部が,抽出されたスポットに関する情報」を「スポット情報の要求をしたユーザ端末に対して配信する」ために用いられるものである。この場合の「当該スポットの共起スポット」は,「あるスポットに対するその他のスポットの共起度」をもとに抽出された「その他のスポット」(本件補正発明の「第2のビジネス実体」に相当)であり,また,「当該スポットの共起スポット」の「抽出」及び「送信」は,「当該スポットを識別するスポットIDに共起スポットと判定されたスポットを識別するスポットIDを関連付けて,共起スポットデータベースに記憶」したものをもとに行われることから,当該「共起スポットデータベース」に記憶された情報は,「抽出」及び「送信」のための規則ということができ,そうすると,引用発明の「その他のスポット」を配信するために用いられる「共起スポットデータベース」に記憶された情報は,本件補正発明の「第2のビジネス実体に関する商業コンテンツを提供するための規則」に相当するといえる。
そして,引用発明の「共起スポット計算部」は,「共起度がある閾値以上」か否かの判定が行われれば,「当該スポットを識別するスポットIDに共起スポットと判定されたスポットを識別するスポットIDを関連付けて,共起スポットデータベースに記憶させ」ているので,「抽出」及び「送信」のための規則を自動的に生成しているということができ,そして,「送信」された「共起スポット」は,「ユーザ」に「提示され」るため「ユーザ端末」において表示されることは明らかである。
そうすると,引用発明の「情報配信装置」の「共起スポット計算部」が,算出された「共起度」をもとに「共起度がある閾値以上,例えば60%以上となるスポットを当該スポットの共起スポットであるとして,当該スポットを識別するスポットIDに共起スポットと判定されたスポットを識別するスポットIDを関連付けて,共起スポットデータベースに記憶させること」は,本件補正発明の「前記相関係数が、閾値を超えるかどうかを判定すること」,及び,「前記相関係数が閾値を超える場合、第1の物理的位置に位置するユーザデバイス上で表示するために、前記第2のビジネス実体に関する商業コンテンツを提供するための規則を、前記1つ以上のコンピューティングデバイスによって自動的に生成すること」に相当する。

(カ)上記(オ)の検討から,引用発明の「情報配信装置」の「共起スポット抽出部」が,「受信した位置情報に含まれる座標に基づいて,スポットデータベースから該当するスポットを特定し,該当するスポットがない場合は,最も近いスポットを特定し,そして,当該スポットの共起スポットを共起スポットデータベースから抽出」し,「スポット情報配信部」が,「抽出されたスポットに関する情報をスポットデータベースから取得し,当該スポット情報を,スポット情報の要求をしたユーザ端末に対して配信する」ことは,本件補正発明の「ユーザデバイスが前記第1の物理的位置に位置すると決定することに応答して、前記自動的に生成された規則に従って前記ユーザデバイスに前記第2のビジネス実体に関する商業コンテンツを、前記1つ以上のコンピューティングデバイスによって提供すること」に相当する。

イ 以上のことから,本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は,次のとおりである。
(一致点)
地理的情報を提供するアプリケーションにおいて商業コンテンツを効率的に提供することを提供するための方法であって,
複数のユーザの第1のサブセットによる,第1の地理的位置を有する第1のビジネス実体への第1の複数の訪問の指示を,1つ以上のコンピューティングデバイスによって受け取ることと,
前記複数のユーザの第2のサブセットによる,第2の地理的位置を有する第2のビジネス実体への第2の複数の訪問の指示を,前記1つ以上のコンピューティングデバイスによって受け取ることと,
前記第1の複数の訪問と前記第2の複数の訪問との間の相関を示す相関係数を,前記1つ以上のコンピューティングデバイスによって決定することと,
前記相関係数が,閾値を超えるかどうかを判定することと,
前記相関係数が閾値を超える場合,第1の物理的位置に位置するユーザデバイス上で表示するために,前記第2のビジネス実体に関する商業コンテンツを提供するための規則を,前記1つ以上のコンピューティングデバイスによって自動的に生成することと,
ユーザデバイスが前記第1の物理的位置に位置すると決定することに応答して,前記自動的に生成された規則に従って前記ユーザデバイスに前記第2のビジネス実体に関する商業コンテンツを,前記1つ以上のコンピューティングデバイスによって提供することと
を含む,方法。

(相違点1)
地理的情報を提供するアプリケーションについて,
本件補正発明は,「地理的アプリケーション」であるのに対し,
引用発明は,「地理的アプリケーション」であるとまでは特定されていない点。

(相違点2)
第1の複数の訪問と第2の複数の訪問との間の相関を示す相関係数の決定について,
本件補正発明は,「前記第1のビジネス実体と前記第2のビジネス実体の間の距離を判定し,かつ前記複数の前記ユーザのうちの前記第1のサブセットおよび前記第2のサブセットの両方内に存在するユーザについて,前記ユーザが前記第1のビジネス実体および前記第2のビジネス実体を訪問したそれぞれの時間を比較することによって」行うのに対し,
引用発明は,共起度を「所定期間内にスポット」に「立ち寄った人数」をもとに算出しているものの本件補正発明のような特定はなされていない点。

(4)判断
上記相違点について検討する。

ア 相違点1について
地図アプリケーションにおいて,ユーザに地点に関する情報を提供することは,例えば周知文献2(上記(3)のウ(イ))に記載のとおり,当該技術分野における周知の技術であり,引用発明と上記周知の技術とは,ユーザに対し地点に係る情報を提供する技術である点で共通するものであり,また,引用発明も,地理的情報として共起スポットに係るスポット情報をスポットデータベースから取得してユーザ端末に配信し,当該スポット情報には「交通案内等の情報」等の情報が含まれるから,情報の提供するアプリケーションを地理的アプリケーションとすることの阻害事由は認められず,してみると,引用発明に対し,上記周知の技術を適用することで,相違点1に係る構成とすることは,引用発明及び周知の技術から当業者であれば容易に想到し得たものといえる。

イ 相違点2について
二つの地点間におけるユーザアクセスの相関を用いてユーザへ地点に係る情報を提供するシステムにおいて,二つの地点間の上記相関を,当該地点間の距離,及び,当該二つの地点にユーザがアクセスした時間差を考慮して決定することは,例えば,周知文献1(上記(3)のイ(イ)),周知文献2(上記(3)のウ(イ))に記載のとおり,当該技術分野における周知の技術であり,そして,引用発明と上記周知の技術とは,二つの地点間におけるユーザアクセスの相関をもとにユーザに対し地点に係る情報を提供する技術である点で共通するものであり,また,引用発明は,「共起度」を,「所定期間内にスポット」に「立ち寄った人数」をもとに求めており,ユーザが「所定期間内にスポット」に「立ち寄った」ことを特定する上で「スポット」へ「立ち寄った」時間の特定も求められることからして,「共起度」算出において地点へのユーザのアクセス時間を考慮することを排除する格別な事情も認められず,さらに,地点間の距離やアクセス時間を考慮することで提供される地点に係る情報はアクセス先を知りたいユーザにとってより有益な情報となりうることから,引用発明に上記周知の技術を適用することの動機づけがあるといえる。
そうすると,引用発明に対し,上記周知の技術を適用し,「共起スポット」のための「共起度」を,「あるスポット」と「あるスポットに対するその他のスポット」の二つの地点間の距離,及び,当該二つの地点にユーザがアクセスした時間差を考慮して決定するよう構成することに格別困難性はなく,その際に,引用発明において,二つの地点にユーザがアクセスした時間差を考慮することとすれば,「あるスポット」と「あるスポットに対するその他のスポット」の二つの地点それぞれにアクセスする複数のユーザのうち,「あるスポット」と「あるスポットに対するその他のスポット」の二つの地点ともにアクセスしたユーザが「共起度」算出のための考慮の対象となって,これが,本件補正発明の「複数の前記ユーザのうちの前記第1のサブセットおよび前記第2のサブセットの両方内に存在するユーザ」に相当することとなり,さらに,「あるスポット」と「あるスポットに対するその他のスポット」の二つの地点ともにアクセスしたユーザの二つの地点に対するアクセス時間差を考慮するためには,二つの地点に対するアクセス時間を当然に比較することになる。
したがって,引用発明に対し,上記周知の技術を適用することで,「共起スポット」のための「共起度」の決定を,「前記第1のビジネス実体と前記第2のビジネス実体の間の距離を判定し,かつ前記複数の前記ユーザのうちの前記第1のサブセットおよび前記第2のサブセットの両方内に存在するユーザについて,前記ユーザが前記第1のビジネス実体および前記第2のビジネス実体を訪問したそれぞれの時間を比較することによって」行うこと,すなわち,相違点2に係る構成とすることは,引用発明及び周知の技術から当業者であれば容易に想到し得たものといえる。

ウ そして,本件補正発明の奏する作用効果は,引用発明及び周知の技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。

エ したがって,本件補正発明は,引用発明及び周知の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
よって,本件補正は,特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので,同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について

1 本願発明
平成30年9月21日にされた手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,平成30年1月19日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし20に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,その請求項1に記載された事項により特定される,前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由2は,この出願の請求項1ないし20に係る発明は,本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2ないし5に記載された技術に基づいて,その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

引用文献1:特開2012-141746号公報
引用文献2:米国特許出願公開第2007/0042770号明細書
引用文献3:特開2013-206409号公報
引用文献4:特開2012-256239号公報
引用文献5:特開2008-310620号公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用例のうち,引用文献1とその記載事項は,前記第2の[理由]2(2)アに記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は,前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から,実質的に,「第1の複数の訪問と前記第2の複数の訪問との間の相関を示す相関係数を,前記1つ以上のコンピューティングデバイスによって決定すること」に係る限定事項を削除したものである。
そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらに他の事項を付加したものに実質的に相当する本件補正発明が,前記第2の[理由]2(3),(4)に記載したとおり,引用発明及び周知の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も引用発明及び周知の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。


第4 むすび

以上のとおり,本願発明は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-11-06 
結審通知日 2019-11-11 
審決日 2019-11-25 
出願番号 特願2015-41333(P2015-41333)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 寺谷 大亮  
特許庁審判長 田中 秀人
特許庁審判官 仲間 晃
山崎 慎一
発明の名称 相互に近接する地理的位置において発生する関連活動の識別  
代理人 村山 靖彦  
代理人 実広 信哉  
代理人 阿部 達彦  

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