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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01F
審判 査定不服 (159条1項、163条1項、174条1項で準用) 特許、登録しない。 H01F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01F
管理番号 1361393
審判番号 不服2019-2590  
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-02-26 
確定日 2020-04-16 
事件の表示 特願2015-195267「コイル部品及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 4月 6日出願公開、特開2017- 69460〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年9月30日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年 2月28日付け:拒絶理由通知
平成30年 5月 7日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年 9月 6日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知
平成30年11月12日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年11月21日付け:平成30年11月12日付けの手続補正についての補正の却下の決定、拒絶査定
平成31年 2月26日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 1年 5月16日 :上申書の提出

第2 平成31年2月26日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成31年2月26日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正
本件補正は、特許請求の範囲について、本件補正前に、
「【請求項1】
被膜付き導線を巻回し、内周面と外周面と巻芯軸方向における一方の端部の主面と他方の端部の主面とを有する周回部と、該被膜付き導線を該周回部から引き出すことで形成された一対の引出部からなる空芯コイルと、
該被膜付き導線の該引出部の先端に同一方向に向かって設けられた一対の端子電極と、
前記内周面の内側に配置される軸部と、前記外周面の少なくとも一部に配置される側壁部と、前記外周面の前記側壁部の配置されていない一面に前記一対の引出部が導出されるように配置され、前記一方の端部の主面との間に第1の間隙を形成するように配置され、前記軸部と前記側壁部をつなぐ接続部とを有し、金属磁性粒子を含む第1のコア部材と、
前記他方の端部の主面との間に第2の間隙を形成するように配置され、前記金属磁性粒子を含む第2のコア部材と、
を備えるコイル部品であって、
前記他方の端部の主面と前記端子電極が、前記外周面の前記側壁部の配置されていない一面側より、前記第2のコア部材の一部および前記第2の間隙の一部を、挟み込んでいることを特徴とするコイル部品。」
とあったところを、

「【請求項1】
被膜付き導線を巻回し、内周面と外周面と巻芯軸方向における一方の端部の主面と他方の端部の主面とを有する周回部と、該被膜付き導線を該周回部から引き出すことで形成された一対の引出部からなる空芯コイルと、
該被膜付き導線の該引出部の先端に同一方向に向かって設けられた一対の端子電極と、
前記内周面の内側に配置される軸部と、前記外周面の少なくとも一部に配置される側壁部と、前記外周面の前記側壁部の配置されていない一面に前記一対の引出部が導出されるように配置され、前記一方の端部の主面との間に第1の間隙を形成するように配置され、前記軸部と前記側壁部をつなぐ接続部とを有し、金属磁性粒子を含む第1のコア部材と、
前記他方の端部の主面との間に第2の間隙を形成するように配置され、前記金属磁性粒子を含む第2のコア部材と、
を備え、
前記端子電極は、前記引出部を用いて形成され、前記他方の端部の主面と少なくとも一部が平行となっており、
前記他方の端部の主面と前記端子電極が、前記外周面の前記側壁部の配置されていない一面側より、前記第2のコア部材の一部および前記第2の間隙の一部を、挟み込み、前記第2のコア部材と前記周回部の他方の端部の主面との間の第2の間隙を埋めるように形成された接着剤によって接着されていることを特徴とするコイル部品。」
とすることを含むものである(下線は補正箇所を示す。)。

本件補正における請求項1に係る発明について検討する。
請求項1について本件補正は、
(1)本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「端子電極」について、「前記端子電極は、前記引出部を用いて形成され、前記他方の端部の主面と少なくとも一部が平行となっており」と限定し、
(2)本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「第2のコア部材」と空芯コイルにおける「周回部の他方の端部の主面」について、「前記第2のコア部材と前記周回部の他方の端部の主面との間の第2の間隙を埋めるように形成された接着剤によって接着されている」と限定するものである。

上記(1)及び(2)に係る補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項を目的とするものである。

そこで、本件補正における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか)について以下に検討する。

2 引用文献及びその記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開平10-223450号公報(平成10年8月21日公開、以下「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。以下同様)。
「【0011】図1は、本発明のコイル部品の一実施の形態であるノイズフィルター101の斜視図であり、図2は、図1におけるY-Y矢視断面図であり、同図を用いて本実施の形態の構成を説明する。
【0012】図1に示すように、コイル102は、薄板状の平角線103を螺旋形状に巻き込んで成形されたコイルである。即ち、薄板形状の平角線103の幅方向が上記螺旋形状の軸方向と直交する様に巻き込まれているものである。又、平角線103は、絶縁皮膜によりコーティングされている。
【0013】又、その平角線103の一端部103a及び他端部103bは、後述するコア(磁心)105bの底面104側に折り曲げられ、所定の位置に固定されている端子である。これら端子の表面は、絶縁皮膜が剥離された上に半田の皮膜が形成されている。この端子の固定の構成については更に後述する。
【0014】コア105a,105bは、フェライト材料から形成された、断面がコの字形状で、中央部に円柱状に突き出た芯部105c,dが形成されたものである。又、コア105a,105bは、その内部にはコイル102が設けられたものである(図3参照)。即ち、コイル102は、その上下方向から同一形状の一対のコア105a,bにより挟み込まれ、且つ、芯部105c,dが、コイル102の中心軸に形成された空間に挿入された状態で保持されている。一対のコア105a,bは、後述する第1絶縁シート106aと共に、粘着面を有する耐熱テープ107によりその外周面を一周以上巻かれている。尚、図3は、コイル102の上面、下面に配設されている一対のコア105a、bの斜視図である。」

「【0016】又、第2絶縁シート106bは、コイル102の上面とコア105aとの間、及びコイル102の下面とコア105bとの間に配設された電気絶縁用の紙であり、外形が長方形状であり、且つ芯部105c,dが貫通する孔が中央部にそれぞれ明けられている。」

「【0018】図2に示す様に、粘着シート108は、コア105bの底面104側に施された耐熱テープ107の表面に接着されたものであり、その両面に粘着性を有する耐熱性の高いシートである。更に、平角線103の双方の端部103a,103bは、粘着シート108の下面(図2中、紙面上において粘着シート108の下側の面)に接着されている。即ち、双方の端部103a,103bは、粘着シート108の粘着性により耐熱テープ107の表面に対して固定されている。耐熱テープ107は、コア105a,105bに対して、接着により固定されていることは、上述した通りである。これにより平角線103が薄板状であっても、板状の基板部品を使用しなくても、その両端部103a,bがコア105bの下面104に対して、確実に位置決め出来、且つ固定出来る。尚、本発明のシート部材は、第1絶縁シート106a、耐熱テープ107、及び粘着シート108を含むものである。尚、図2、及び後述する図4では、第1絶縁シート106a、第2絶縁シート106b、耐熱テープ107、及び粘着シート108等の厚みは、実際よりも誇張して表されており、他の部品のサイズとの相対的な関係は無視されている。」

「【0029】又、本発明のコア部材は、上記実施の形態のフェライト材料により形成されたコアに限らず例えば、その他の電気導電性を有する材料により形成されていても良い。」


上記記載及び図面から、引用文献1には次の技術的事項が記載されている。
・コイル部品は、コイル102と、コア105aと、コア105bを備えている(図1)。
・コイル102は、絶縁皮膜によりコーティングされている薄板形状の平角線103の幅方向が、螺旋形状の軸方向と直交する様に巻き込まれている(【0012】)。
・【0016】には、コイル102に上面と下面があることが記載されているので、図1より、コイル102は、内周面と外周面と螺旋形状の軸方向におけるコイルの上面と下面を有する周回部と、平角線103を周回部から引き出すことで形成された一端部103a及び他端部103bを含む引出部からなっていることが見て取れる。
・平角線103の一端部103a及び他端部103bは、コア105bの底面104側に折り曲げられ、コア105bの下面104に対して固定されている端子である(【0013】、【0018】)。
・一端部103a及び他端部103bは、平角線103の引出部の先端に同一方向に向かって設けられている(図1)。
・一端部103a及び他端部103bは、コイルの下面と平行になっている(図2)。
・コア105a,105bは、フェライト材料から形成された、断面がコの字形状で、中央部に円柱状に突き出た芯部105c,dが形成されたものであり、コイル102は、その上下方向から同一形状の一対のコア105a,bにより挟み込まれ、且つ、芯部105c,dが、コイル102の中心軸に形成された空間に挿入された状態で保持されている(【0014】)。
・断面がコの字形状のコア105aは、両端部に側壁を有し、さらに、側壁と芯部105cをつなぐ接続部を有する(図3)。
・コア105aの側壁は、コイル102の外周面の一部に配置されている(図1)。
・コア105aの接続部は、側壁の配置されていない一面に、一端部103a及び他端部103bが導出されるように配置されている(図1)。
・第2絶縁シート106bを、コイル102の上面とコア105aとの間、及びコイル102の下面とコア105bとの間に配設している(【0016】)。
・コイルの下面と一端部103a及び他端部103が、コア105bの側壁の配置されていない面側より、コア105bの一部および第2絶縁シート106bを挟み込んでいる(図2)。

したがって、上記記載より引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「コイル102と、コア105aと、コア105bを備えたコイル部品であって、
コイル102は、絶縁皮膜によりコーティングされている薄板形状の平角線103の幅方向が、螺旋形状の軸方向と直交する様に巻き込まれるものであって、内周面と外周面と螺旋形状の軸方向におけるコイルの上面と下面を有する周回部と、平角線103を周回部から引き出すことで形成された一端部103a及び他端部103bを含む引出部からなり、
平角線103の一端部103a及び他端部103bは、コア105bの底面104側に折り曲げられ、コア105bの下面104に対して固定されている端子であり、
一端部103a及び他端部103bは、平角線103の引出部の先端に同一方向に向かって設けられ、コイルの下面と平行になっており、
コア105a,105bは、フェライト材料から形成された、断面がコの字形状で、中央部に円柱状に突き出た芯部105c,dが形成されたものであり、コイル102は、その上下方向から同一形状の一対のコア105a,bにより挟み込まれ、且つ、芯部105c,dが、コイル102の中心軸に形成された空間に挿入された状態で保持されており、
コア105aは、両端部に側壁を有し、さらに、側壁と芯部105cをつなぐ接続部を有し、
コア105aの側壁は、コイル102の外周面の一部に配置され、
コア105aの接続部は、側壁の配置されていない一面に、一端部103a及び他端部103bが導出されるように配置されており、
第2絶縁シート106bを、コイル102の上面とコア105aとの間、及びコイル102の下面とコア105bとの間に配設し、
コイルの下面と一端部103a及び他端部103が、コア105bの側壁の配置されていない面側より、コア105bの一部および第2絶縁シート106bを挟み込んでいるコイル部品。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2002-43131号公報(平成14年2月8日公開、以下「引用文献2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「【0017】インダクタンス素子10は、平面部を有する帯状の導体によって形成されたコイル状導体11及びコイル状導体11を収納する磁性コア12、13によって構成されている。」

「【0026】コイル状導体11は、巻回部11a、11dが有する環状部の中心部分に中心磁脚12aを配置し、巻回部11aの底面にヨーク12bを配置し、側磁脚12c、12dを中心磁脚12aをはさんで両側に配置した状態で、磁性コア12に取り付けられる。ここでの取り付けは、接着剤等を用い、コイル状導体11を磁性コア12に固定することによって行われ、この際、外部端子11b、11e及びダミー端子11cは、前述のように、磁性コア12のヨーク12b側面から底面にかけてL字形に折り返されて配置される。」

(3)本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2011-146530号公報(平成23年7月28日公開、以下「引用文献3」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「【0024】
図3(a)に示すように、エッジワイズコイル3は、基材である積層基板9と、積層基板9に両端部13、45(図4参照。)が固定されるコイル部材11と、を備え、コイル部材11は、積層基板9に載置される外部巻き線部11aと、積層基板9内に延在する内部巻き線部11bと、を有する。即ち、内部巻き線部11bは、積層基板9内に収納されている。外部巻き線部11aは、その断面が矩形状(長方形)である銅製の平角線材から構成され、平角線材の短辺が内径面及び外径面を形成し、巻回軸心X回りに長辺が放射方向に延在するように螺旋状に巻回されている。」

「【0047】
なお、本実施形態では、外部巻き線部11aの積層基板9と接触する、最下層巻き部の裏面(長辺面)を、接着剤により積層基板9に固定し、外部巻き線部11aの振動や衝撃に対する形状保持性を向上させている。また、本実施形態では、外部巻き線部11aは、隣接する長辺面同士が互いに接触し螺旋状に巻回する構造のコイル部材となっている。そのため、エッジワイズコイル及び当該エッジワイズコイルが組み付けられたインダクタの低背化を促進できる。」

3 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「平角線103」、「コイル102」、「コイルの上面」、「コイルの下面」、「コア105a」、「コア105b」は、それぞれ、本願補正発明の「被膜付き導線」、「空芯コイル」、「一方の端部の主面」、「他方の端部の主面」、「第1のコア部材」、「第2のコア部材」に相当する。

(2)引用発明の「絶縁皮膜によりコーティングされている薄板形状の平角線103の幅方向が、螺旋形状の軸方向と直交する様に巻き込まれ」、「内周面と外周面と螺旋形状の軸方向におけるコイルの上面と下面を有する周回部と、平角線103を周回部から引き出すことで形成された一端部103a及び他端部103bを含む引出部からな」る「コイル102」は、本願補正発明の「被膜付き導線を巻回し、内周面と外周面と巻芯軸方向における一方の端部の主面と他方の端部の主面とを有する周回部と、該被膜付き導線を該周回部から引き出すことで形成された一対の引出部からなる空芯コイル」に相当する。

(3)引用発明の「平角線103の引出部の先端に同一方向に向かって設けられ」ている「一端部103a及び他端部103b」は、「端子」であるから、本願補正発明の「該被膜付き導線の該引出部の先端に同一方向に向かって設けられた一対の端子電極」に相当する。

(4)引用発明の「コア105a,105b」は「断面がコの字形状で、中央部に円柱状に突き出た芯部105c,dが形成されたものであり」、「芯部105c,dが、コイル102の中心軸に形成された空間に挿入された状態で保持されて」いるから、引用発明の「コア105a」の「中央部に円柱状に突き出た芯部105c」は、本願補正発明の「前記内周面の内側に配置される軸部」に相当する。
そして、引用発明の「コイル102の外周面の一部に配置され」た「コア105a」の「側壁」は、本願補正発明の「前記外周面の少なくとも一部に配置される側壁部」に相当する。
さらに、引用発明の「側壁の配置されていない一面に、一端部103a及び他端部103bが導出されるように配置されて」いる「コア105a」の「側壁と芯部105cをつなぐ接続部」は、本願補正発明の「前記外周面の前記側壁部の配置されていない一面に前記一対の引出部が導出されるように配置され」た「前記軸部と前記側壁部をつなぐ接続部」に相当する。
また、引用発明は「第2絶縁シート106bを、コイル102の上面とコア105aとの間」「に配設し」ているので、「コイル102の上面」と「コア105a」の「側壁と芯部105cをつなぐ接続部」との間に間隙があることは明らかである。
よって、引用発明の「芯部105c」と、「側壁」と、「側壁と芯部105cをつなぐ接続部」とを有し、第2絶縁シート106bがコイル102の上面とコア105aとの間に配設されている「フェライト材料から形成された」「コア105a」は、本願補正発明の「前記内周面の内側に配置される軸部と、前記外周面の少なくとも一部に配置される側壁部と、前記外周面の前記側壁部の配置されていない一面に前記一対の引出部が導出されるように配置され、前記一方の端部の主面との間に第1の間隙を形成するように配置され、前記軸部と前記側壁部をつなぐ接続部とを有し、磁性材料を含む第1のコア部材」に相当する。
但し、磁性材料が、本願補正発明は「金属磁性粒子」であるのに対して、引用発明は「フェライト材料」である点で相違する。

(5)引用発明は「第2絶縁シート106bを、」「コイル102の下面とコア105bとの間に配設している」ので、「コイル102の下面」と「コア105b」との間に間隙があることは明らかである。
よって、引用発明の「フェライト材料から形成された」「コア105b」は、本願補正発明の「前記他方の端部の主面との間に第2の間隙を形成するように配置され、前記磁性材料を含む第2のコア部材」に相当する。
但し、磁性材料が、本願補正発明は「金属磁性粒子」であるのに対して、引用発明は「フェライト材料」である点で相違する。

(6)引用発明の「平角線103の一端部103a及び他端部103bは、コア105bの底面104側に折り曲げられ、コア105bの下面104に対して固定されている端子」及び「一端部103a及び他端部103bは、平角線103の引出部の先端に同一方向に向かって設けられ、コイルの下面と平行になって」いることは、本願補正発明の「前記端子電極は、前記引出部を用いて形成され、前記他方の端部の主面と少なくとも一部が平行となって」いることに相当する。

(7)引用発明の「コイルの下面と一端部103a及び他端部103bが、コア105bの側壁の配置されていない面側より、コア105bの一部および第2絶縁シート106bを挟み込んでいる」ことは、「コイル102の下面」と「コア105b」との間に間隙があることは明らかであるから、本願補正発明の「前記他方の端部の主面と前記端子電極が、前記外周面の前記側壁部の配置されていない一面側より、前記第2のコア部材の一部および前記第2の間隙の一部を、挟み込」むことに相当する。

すると本願補正発明と引用発明とは、次の(一致点)及び(相違点)を有する。
(一致点)
「被膜付き導線を巻回し、内周面と外周面と巻芯軸方向における一方の端部の主面と他方の端部の主面とを有する周回部と、該被膜付き導線を該周回部から引き出すことで形成された一対の引出部からなる空芯コイルと、
該被膜付き導線の該引出部の先端に同一方向に向かって設けられた一対の端子電極と、
前記内周面の内側に配置される軸部と、前記外周面の少なくとも一部に配置される側壁部と、前記外周面の前記側壁部の配置されていない一面に前記一対の引出部が導出されるように配置され、前記一方の端部の主面との間に第1の間隙を形成するように配置され、前記軸部と前記側壁部をつなぐ接続部とを有し、磁性材料を含む第1のコア部材と、
前記他方の端部の主面との間に第2の間隙を形成するように配置され、前記磁性材料を含む第2のコア部材と、
を備え、
前記端子電極は、前記引出部を用いて形成され、前記他方の端部の主面と少なくとも一部が平行となっており、
前記他方の端部の主面と前記端子電極が、前記外周面の前記側壁部の配置されていない一面側より、前記第2のコア部材の一部および前記第2の間隙の一部を、挟み込んでいるコイル部品。」

(相違点1)
第1のコア部材及び第2のコア部材の磁性材料が、本願補正発明は「金属磁性粒子」であるのに対して、引用発明は「フェライト材料」である点で相違する。
(相違点2)
本願補正発明は、第2のコア部材と空芯コイルにおける周回部の他方の端部の主面が、「前記第2のコア部材と前記周回部の他方の端部の主面との間の第2の間隙を埋めるように形成された接着剤によって接着されて」いるのに対して、引用発明は、「第2絶縁シート106bを、」「コイル102の下面とコア105bとの間に配設し」ているが、そのような特定がない点。

4 判断
上記相違点について検討する。
相違点1について
引用文献1には、コア部材の材料を、フェライトに換えて、その他の電気導電性を有する材料により形成してもよいことが示唆されている(【0029】)。
そして、コア部材を金属磁性粒子を含む材料で作成することは周知であるから(例えば、特開2014-220292号公報(【0020】)等参照。)、引用発明においても、上記示唆に従い、コア105a,105bを周知の金属磁性粒子を含む材料で作成し、上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

相違点2について
引用文献2に「平面部を有する帯状の導体によって形成されたコイル状導体11」(【0017】)及び「取り付けは、接着剤等を用い、コイル状導体11を磁性コア12に固定することによって行われ」(【0026】)、引用文献3に「外部巻き線部11aは、その断面が矩形状(長方形)である銅製の平角線材から構成され」(【0024】)及び「外部巻き線部11aの積層基板9と接触する、最下層巻き部の裏面(長辺面)を、接着剤により積層基板9に固定し、外部巻き線部11aの振動や衝撃に対する形状保持性を向上させている。」(【0047】)と記載されているように、平角線からなるコイルを用いるコイル部品において、コア部材とコイルを接着剤で固定することは周知技術である。
そうすると、平角線からなるコイルを用いる引用発明の「コイル部品」においても、上記周知技術を適用し、「第2絶縁シート106b」として接着剤を有する絶縁シートを用いて、上記相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

そして、上記相違点1及び2を総合的に判断しても、本願補正発明が奏する効果は引用発明及び周知技術から当業者が十分に予測できたものであって格別なものとはいえない。

よって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

5 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成30年5月7日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定されるものであるところ、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2 [理由] 1 本件補正」の本件補正前の「請求項1」として記載したとおりのものである。

2 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項及び引用発明は、上記「第2 [理由] 2 引用文献及びその記載事項」に記載したとおりである。

3 対比、判断
本願発明は、本願補正発明から、上記「第2 [理由] 1 本件補正」で検討した本件補正に係る、「端子電極」を「前記端子電極は、前記引出部を用いて形成され、前記他方の端部の主面と少なくとも一部が平行となっており」とする限定、及び、「第2のコア部材」と空芯コイルにおける「周回部の他方の端部の主面」を「前記第2のコア部材と前記周回部の他方の端部の主面との間の第2の間隙を埋めるように形成された接着剤によって接着されている」とする限定を削除するものである。
そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、更に他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が前記「第2 [理由] 4 判断」に示したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 上申書における主張について
審判請求人は、令和1年5月16日提出の上申書において、以下のとおり補正案を提示するとともに、「このように、『前記第2のコア部材より前記第1のコア部材の軸部の高さを長く』することで、第2のコア部材に対する空芯コイルの組み付けを容易に行うことができるといういずれの引用文献にも開示・示唆されていない顕著な技術的効果を得ることができます。」と述べ、補正案により、引用文献に記載された発明に対して進歩性が生じ、前置審査における拒絶理由は解消する旨の主張をしている。

しかしながら、上記「第2」で説示したとおり、本願補正発明は、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件補正は却下すべきものであり、かつ、本願発明は、上記「第3 2」及び「第3 3」で説示したとおり、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、補正の機会を再度与える合理的な理由を見出すことはできない。

第5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-02-14 
結審通知日 2020-02-18 
審決日 2020-03-03 
出願番号 特願2015-195267(P2015-195267)
審決分類 P 1 8・ 56- Z (H01F)
P 1 8・ 575- Z (H01F)
P 1 8・ 572- Z (H01F)
P 1 8・ 121- Z (H01F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小池 秀介堀 拓也  
特許庁審判長 酒井 朋広
特許庁審判官 須原 宏光
宮本 秀一
発明の名称 コイル部品及びその製造方法  
代理人 梶原 康稔  

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