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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1361395
審判番号 不服2019-4214  
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-04-01 
確定日 2020-04-16 
事件の表示 特願2014-174507号「プレーヤトラッキング装置、およびゲーミングマシン」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 4月11日出願公開、特開2016- 49135号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成26年8月28日の出願であって、平成30年5月30日付けで拒絶の理由が通知され、平成30年7月30日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成30年12月25日付け(送達日:平成31年1月8日)で拒絶査定がなされ、それに対して、平成31年4月1日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。


第2 平成31年4月1日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

本件補正を却下する。

[理由]

1.本件補正について
本件補正は、特許請求の範囲を補正する内容を含んでおり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
(補正前:平成30年7月30日付け手続補正)
「【請求項1】
ゲーミングマシンに一体化され、
互いに所定の間隔により配置される複数のマイクを備えるプレーヤトラッキング装置であって、
前記プレーヤトラッキング装置のコントローラは、以下の処理を実行する。
前記複数のマイクの相対的位置関係、前記複数のマイクにより入力された音声データ、及び前記ゲーミングマシンのプレーヤの位置に関する情報から、前記複数のマイクにより入力された音声の差に基づき、音声データ処理を実行する処理。」
から、
(補正後:本件補正である平成31年4月1日付け手続補正)
「【請求項1】
A ゲーミングマシンに一体化され、
互いに所定の間隔により配置される複数のマイクを備えるプレーヤトラッキング装置であって、
B 前記プレーヤトラッキング装置のコントローラは、
B1 前記複数のマイクの相対的位置関係、前記複数のマイクにより入力された音声データ、及び前記ゲーミングマシンのプレーヤの位置に関する情報から、前記複数のマイクにより入力された音声の差に基づき、音声データ処理を実行し、
B2 前記ゲーミングマシンのプレーヤの位置に関する情報は、所定の推定値に基づいて判定される
A プレーヤトラッキング装置。」
に補正された(下線は、補正箇所を明示するために当審で付した。また、符号A、B、B1及びB2は、当審にて分説して付した。)。

2.補正の適否
(1)本件補正
本件補正は、補正前の請求項1について、
(i)発明を特定するために必要な事項である「プレーヤトラッキング装置のコントローラ」が、「音声データ処理」を実行する際に用いる「ゲーミングマシンのプレーヤの位置に関する情報」について、「前記ゲーミングマシンのプレーヤの位置に関する情報は、所定の推定値に基づいて判定される」ものであるという限定を加え、
(ii)上記(i)の限定に伴い、「プレーヤトラッキング装置のコントローラ」について、「以下の処理を実行する。」という記載を省くとともに「音声データ処理を実行する処理。」を、「音声データ処理を実行し」と書き改めるものである。

(2)補正目的
上記(1)の補正事項(i)は、補正前の発明特定事項に限定を加えるものであって、補正後の請求項1に係る発明は、補正前の請求項1に係る発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。

(3)新規事項
本件補正は、願書に最初に添付した明細書の【0274】-【0280】の記載からみて新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。

3.本件補正発明の独立特許要件についての検討
上記2.(2)のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正を含むことから、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、本件補正である平成31年4月1日付け手続補正により補正された、上記第2の1.で示した特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである。

(2)引用文献1に記載された発明
原査定の拒絶理由において提示された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2006-334152号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審にて付した。)。

ア 記載事項
(ア)「【技術分野】
【0001】
この発明は、遊技場内での音声会話システムに関し、特に遊技者が利用するための遊技場会話システムに関する。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
・・・
【0009】
この発明は、遊技者が遊技機を離れずに簡単に他の遊技者や店員と音声会話することができる遊技場会話システムを提供することを目的とする。」

(イ)「【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1は、本発明の実施形態に係る遊技機の外観図である。本発明の実施形態に係る遊技機1(一例としてパチンコ機を示す。)は、盤面上部にスピーカ11を、盤面下部にマイク12を、盤面下部左側に遊技者が操作を入力する入力部13を、備えている。なお、スピーカ11、マイク12、および入力部13の位置は、図に示した位置に限定するものではなく、他の位置であってもよい。・・・
【0032】
マイク12は、図1に示すように盤面下部に設置されており、遊技者の会話音声を入力することができる。盤面下部に設置することで、遊技者の顔の位置に近くなり、遊技者が前かがみになって会話音声を発すると、明瞭に会話音声が入力されることとなる。なお、マイク12は、指向性マイクであってもよいし、無指向性マイクであってもよい。指向性マイクを用いる場合は、指向性を制御するようにしてもよい。指向性を制御することで、より明瞭に遊技者の会話音声を入力することができる。」

(ウ)「【0037】
サーバ3は、ネットワーク全体を管理する管理装置である。遊技者が遊技機1に隣接接続されているカードリーダ2に会員カードを挿入すると、遊技機1を経由して会員情報が管理装置であるサーバ3に送信される。会員情報は、会員番号等の情報である。
【0038】
遊技機1および店員端末4にはプライベートIPアドレスを割り当てており(図5参照)、サーバ3は、各遊技機1および各店員端末4のデータ送受信管理を行う。遊技機1の遊技者が入力部13を操作して、他の遊技機の番号または会員番号を入力すると、その番号がサーバ3に送信される。サーバ3は、これを受信し、該当する遊技機の番号または会員番号を有する遊技機を呼び出す。その後、呼び出した遊技機と番号を入力した遊技機とを接続する。・・・
【0040】
次に、遊技機1と店員端末4の構成について詳細に説明する。図3は、遊技機および店員端末の構成を示すブロック図である。同図(A)は遊技機の構成を示すブロック図であり、同図(B)は店員端末の構成を示すブロック図である。同図(A)に示すように、本実施形態の遊技機1は、音声を出力するスピーカ11、音声を入力するマイク12、遊技者が操作入力する入力部13、遊技機の制御を行う制御部14、サーバ3と接続してデータ送受信を行う通信部15、盤面に設置され、遊技機の演出等を表示するメイン表示部16、種々の情報を表示するサブ表示部である情報表示部17、および役物やハンドル等から構成される遊技ハードウェア18、を備えている。
【0041】
制御部14は、遊技機全体を制御するものであり、制御部14にはスピーカ11、マイク12、入力部13、通信部15、メイン表示部16、情報表示部17、遊技ハードウェア18、およびカードリーダ2が接続されている。・・・
【0043】
制御部14は、遊技者が入力部13を操作して入力したコードに応じて以下のような動作を行う。まず、入力されたコードを判別する。入力されるコードは、他遊技者呼び出しコード(これをコード03とする)、店内サービス呼び出しコード(これをコード02とする)、および店員の呼び出しコード(これをコード01とする)である。入力されたコードがコード03であれば、情報表示部17に他遊技者の番号入力を促すメッセージを表示する。その後、会員番号または遊技機番号が入力されれば、その遊技機の呼び出し要求を通信部15を介してサーバ3に送信する。
・・・
【0045】
遊技機1が他の遊技機と接続されると、遊技者は音声会話を行うことができる。遊技者がマイク12に音声を入力すると、制御部14は入力された音声をA/D変換した後、通信部15を介して他の遊技機に音声データとして送信する。また、制御部14は、通信部15を介して他の遊技機から入力された音声データをD/A変換した後スピーカ11に出力し、スピーカ11は会話音声を発音する。・・・」

(エ)「【0078】
なお、本実施形態は一例としてパチンコ機について示したが、これに限るものではなく、他の遊技機、例えばパチスロであってもよいし、メダルゲーム等の遊技機であってもよい。」

イ 引用発明
上記アを参照すると、引用文献1には、次の引用発明が記載されていると認められる。

引用発明
「遊技機1は、盤面下部に音声を入力するマイク12と、盤面下部左側に遊技者が操作入力する入力部13と、遊技機の制御を行う制御部14と、サーバ3と接続してデータ送受信を行う通信部15と、盤面に設置される情報表示部17とを備え、制御部14には、マイク12、入力部13、通信部15、情報表示部17及びカードリーダ2が接続され(【0027】、【0040】、【0041】)、
遊技機1に隣接接続されているカードリーダ2に会員カードを挿入すると、遊技機1を経由して会員情報が管理装置であるサーバ3に送信され(【0037】)、
制御部14は、遊技者が入力部13を操作して入力されたコードを判別し、入力されたコードが、他遊技者呼び出しコードであるコード03であれば、情報表示部17に他遊技者の番号入力を促すメッセージを表示した後、遊技者が入力部13を操作して、他の遊技機の番号または会員番号を入力すると、その番号が通信部15を介してサーバ3に送信され、サーバ3は、これを受信し、該当する遊技機の番号又は会員番号を有する遊技機を呼び出した後、呼び出した遊技機1と番号を入力した遊技機とを接続し(【0038】、【0043】)、
遊技機1が他の遊技機と接続されると、遊技者は音声会話を行うことができ、遊技者がマイク12に入力した音声は制御部14に入力され(【0045】)、
マイク12は指向性マイクを用い、指向性を制御することで、より明瞭に遊技者の会話音声を入力することができる(【0032】)、
遊技機1(【0027】、【0040】)。」

(3)引用文献2に記載の周知技術
原査定の拒絶理由において周知技術を示す文献として提示され、本願の出願前に頒布された刊行物である国際公開第2004/34734号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審にて付した。)。

ア 記載事項
(ア)「技術分野
本発明は複数のセンサを用いて信号を空間選択的に受信するアレイ装置に関し、特にセンサの最適配置技術に関する。
背景技術
一般にアレイ装置は、音声信号取得やソーナー、無線通信などの分野において、複数の信号源の中から目的の信号のみを受信するために使用される。センサとしては、音声信号取得の場合はマイクロホン、ソーナーの場合は超音波センサ、無線通信の場合にはアンテナが用いられる。以下、センサとしてマイクロホンを用いたマイクロホンアレイを例に説明する。
マイクロホンアレイは、複数のマイクロホンを空間的に異なる位置に設置し、伝搬経路の違いによる位相差など、空間的な情報を利用して、信号処理を施すことにより、信号分離や雑音除去などを実現する。信号処理の基本は、伝搬遅延時間の差を利用したビームフォーミング(指向性制御)である。
ビームフォーミングの基本原理を、2マイクロホンの場合を例に図38を参照して説明する。特性が全く等しい2個の全指向性マイクロホンを間隔dで配置し、これらに対して平面波が方向θから到来する状況を考える。この平面波は各マイクロホンにおいて、経路差d sinθの分だけ、伝搬遅延時間が異なる信号として受信される。ビームフォーミングを行う装置であるビームフォーマでは、或る方向θ_(0)から到来する信号に関する伝搬遅延を補償するように、δ= d sinθ_(0)/c ( c は音速)だけ、一方のマイクロホン信号を遅延させ、その出力信号を他方のマイクロホン信号と加算または減算する。
加算器の入力では、方向θ_(0)から到来する信号の位相が一致する。従って、加算器の出力において、方向θ_(0)から到来した信号は強調される。一方、θ_(0)以外の方向から到来した信号は、互いに位相が一致しないため、θ_(0)から到来した信号ほど強調されることはない。その結果、加算器出力を用いるビームフォーマは、θ_(0)にビーム(Beam:特に感度の高い方向)を有する指向性を形成する。対照的に、減算器では、方向θ_(0)から到来する信号が完全にキャンセルされる。従って、減算器出力を用いるビームフォーマは、θ_(0)にヌル(Nul1 :特に感度の低い方向)を有する指向性を形成する。
このように遅延と加算のみを行うビ一ムフォーマを、遅延和ビ一ムフォーマと呼ぶ。また、ビーム方向の制御をビ一ムステアリング、ヌル方向の制御をヌルステアリングという。ビームを目標信号方向にステアリングし、ヌルを不要信号方向にステアリングすることにより、目標信号を強調し、不要信号を抑圧することができる。
以上はマイクロホン2個と遅延器と加減算器のみによる最も簡単な構成のビームフォーマを例に説明してきたが、当然、マイクロホン数を増加し、遅延器だけでなく一般的なフィルタを用いた方が高性能になる。多数のマイクロホンによって、空間的な自由度が高まり、鋭い指向性を得易くなるからである。また、フィルタの採用により、周波数と指向性の関係を変化させることができるからである。ビームフォーミングにおけるこれまでの研究では、線形な信号処理に基づく手法が多い。線形処理を用いたビームフォーミングには、大きく分けて、固定型と適応型の2種類がある。前者は固定ビームフォーミング、後者は適応ビームフォ一ミングと呼ばれる。
固定ビームフォーミングは、信号到来方向など事前の知識のみから設計されるビームフォーミングで、比較的演算量が少なく、実現が容易である。信号到来方向が複数あり得る場合でも、フィルタ係数を信号到来方向に対応した数だけ用意しておき、切り換えるなど、制御も比較的容易である。空間分離能力を決定するビームの鋭さは、基本的には、アレイのサイズと波長の関係に支配される。この基本的な限界を超えるために、ビームだけでなく、ヌルの配置を工夫する超指向性(Super Directivity)と呼ばれる手法も提案されている。」(明細書第1頁第5行-第2頁第26行)

(イ)「以上の具体例では、折り畳み型携帯電話機に対して本発明を適用した例について説明したが、一体型の携帯電話機におけるマイクロホンアレイに対しても本発明は適用可能である。また、携帯電話機以外の携帯端末、例えば携帯型のコンビュ一夕におけるマイクロホンアレイに対しても本発明は適用可能である。電話のような通話だけでなく、音声認識や話者認識や音種識別などの入力のための収音用マイクロホンアレイに対しても本発明は適用可能である。雑音源として通話相手の音声を出力するスピーカのみを考慮したが、自動車内におけるカーステレオ等、他の雑音源を考慮したマイクロホン配置に適用することも可能である。更に、ソーナー、無線通信等におけるアレイ装置に対しても同様に適用可能である。」(明細書第18頁第29行-第19頁第8行)

イ 引用文献2に記載の技術
上記アを参照すると、引用文献2には、次の技術が記載されていると認められる。
「音声信号取得の分野において、複数の信号源の中から目的の信号のみを受信するために、特性が全く等しい2個の全指向性マイクロホンを間隔dで配置し、これらに対して平面波が方向θ_(0)から到来するとき、この平面波は各マイクロホンにおいて、経路差d sinθの分だけ、伝搬遅延時間が異なる信号として受信され、
ビームフォーマでは、或る方向θ_(0)から到来する信号に関する伝搬遅延を補償するように、δ= d sinθ_(0)/c ( c は音速)だけ、一方のマイクロホン信号を遅延させ、その出力信号を他方のマイクロホン信号と加算するように加算器に入力すると、方向θ_(0)から到来する信号の位相が一致するので、加算器の出力において、方向θ_(0)から到来した信号が強調され、θ_(0)に特に感度の高い方向を有する指向性を形成し、
信号到来方向を事前の知識のみから設計する固定ビームフォーミングにより音声信号取得を行う技術。」(以下、「引用文献2に記載の技術」という。)

(4)対比
引用発明と本件補正発明とを対比する。
ア 発明特定事項A及び発明特定事項Bについて
(ア)引用発明の「遊技機1」は、本件補正発明の「ゲーミングマシン」に相当する。

(イ)引用発明の「音声を入力するマイク12」と本件補正発明の「互いに所定の間隔により配置される複数のマイク」とは、「マイク」である点で共通する。

(ウ)本件補正発明の「プレーヤトラッキング装置」は、明細書の【0003】を参照すると、「ゲーミングマシンの各々に一体化された形態で設けられ、プレーヤトラッキングシステム(PTS)を実現する装置である。プレーヤトラッキングシステムは、ICカードにプレーヤ(ゲーミングマシンで遊技を行う者)固有の識別情報を記憶させておき、このICカードを当該プレーヤ固有のICカードとしてプレーヤが所持し利用することにより、このICカードを挿入した端末機において、プレーヤを識別、管理することができるシステム」である。
これに対して、引用発明は、「遊技機1に隣接接続されているカードリーダ2」に「会員カードを挿入する」と、「遊技機1を経由して会員情報が管理装置であるサーバ3に送信され」、「遊技者」が「音声会話を行う」際に、「サーバ3」が、「入力された」「会員番号を有する遊技機を呼び出」すために用いていることから、「カードリーダ2」に「挿入」された「会員カード」を介して、「サーバ3」が、「遊技者」と「遊技機」とを紐付けているから、「カードリーダ2が接続され」た「制御部14」と、「マイク12」を備える引用発明の「遊技機1」は、本件補正発明の「ゲーミングマシンに一体化され」た「プレーヤトラッキング装置」に相当する機能を担うといえ、さらに、引用発明の「制御部14」は、本件補正発明の「プレーヤトラッキング装置」の「コントローラ」に相当する。
よって、引用発明と本件補正発明の発明特定事項Aとは、「ゲーミングマシンに一体化され、マイクを備えるプレーヤトラッキング装置であ」る点で共通するとともに、引用発明と本件補正発明の発明特定事項Bとは、「前記プレーヤトラッキング装置のコントローラ」を備えるという点で共通する。

イ 発明特定事項B1について
本件補正発明の発明特定事項B1に対応する事項は、発明の詳細な説明の【0276】-【0283】に記載され、発明の詳細な説明の記載を参酌すると、その技術的な意義は、「指向性を制御するビームフォーミング技術」を用いて(【0279】)、「2つ」又は「3つ以上の指向性マイク」(【0283】)に「入力された音声の差に基づいて、音声データ処理を実行」することにより、「プレーヤからの音声をより効率的に集音する」(【0277】ことにあると認められる。
そして、上記アの対比を踏まえると、引用発明の「指向性マイクを用い」た「マイク12」と本件補正発明の「複数のマイク」とは、「マイク」である点で共通し、加えて、
引用発明の
「遊技者」、
「入力」された「音声」はそれぞれ、
本件補正発明の
「ゲーミングマシンのプレーヤ」、
「入力された音声データ」に相当する。
そして、本件補正発明において、「前記複数のマイクの相対的位置関係・・・から、前記複数のマイクにより入力された音声の差に基づき、音声データ処理を実行」することの意義は、発明の詳細な説明の【0279】を参照すると、「方向θから到来した音声信号が強調され、結果的に、プレーヤからの音声をより効率的に集音すること」にあって、他方、引用発明は、「指向性マイク」の「指向性を制御すること」により、「より明瞭に遊技者の会話音声を入力することができる」ものであるし、引用発明における「遊技者」と本件補正発明の「ゲーミングマシンのプレーヤ」とはいずれも音源であるから、引用発明と、本件補正発明の発明特定事項B1とは、ゲーミングマシンのプレーヤを音源として、マイクから入力された音声を適切に集音するという点で共通する。

(5)一致点及び相違点
上記(4)によれば、本件補正発明と引用発明は、
「A’ ゲーミングマシンに一体化され、
マイクを備えるプレーヤトラッキング装置であって、
B’ 前記プレーヤトラッキング装置のコントローラを備え、
B1’ ゲーミングマシンのプレーヤを音源として、マイクから入力された音声を適切に集音する、
A’ プレーヤトラッキング装置。」
の点で一致し、次の点で相違する。

[相違点]
ア 相違点1(発明特定事項A)
プレーヤトラッキング装置が備えるマイクについて、本件補正発明は、マイクが、「互いに所定の間隔により配置される複数」の「マイク」からなるのに対し、引用発明の「マイク12」の個数が不明であり、そのような構成を備えるとはいえない点。

イ 相違点2(発明特定事項B及び発明特定事項B1)
ゲーミングマシンのプレーヤを音源として、マイクから入力された音声を適切に集音する手段として、本件補正発明は、「前記プレーヤトラッキング装置のコントローラは、前記複数のマイクの相対的位置関係、前記複数のマイクにより入力された音声データ、及び前記ゲーミングマシンのプレーヤの位置に関する情報から、前記複数のマイクにより入力された音声の差に基づき、音声データ処理を実行し」ているのに対し、引用発明は、「マイク12は指向性マイクを用い、指向性を制御することで、より明瞭に遊技者の会話音声を入力する」点。

ウ 相違点3(発明特定事項B2)
本件補正発明は、「前記ゲーミングマシンのプレーヤの位置に関する情報は、所定の推定値に基づいて判定される」のに対し、引用発明は、そのような構成を備えていない点。

(6)当審の判断
ア 相違点1、相違点2及び相違点3について
相違点1、相違点2及び相違点3をまとめて検討する。
(ア)引用文献2記載の技術の、
「間隔dで配置」すること、
「2個」あること、
「全指向性マイクロホン」はそれぞれ、
本件補正発明の発明特定事項Aの、
「互いに所定の間隔により配置される」こと、
「複数」あること、
「マイク」にそれぞれ相当する。

(イ)引用文献2に記載の技術の、
「ビームフォーマ」、
「2個の全指向性マイクロホンを間隔dで配置」していること、
「一方のマイクロホン信号」及び「他方のマイクロホン信号」、
「一方のマイクロホン信号を遅延させ、その出力信号を他方のマイクロホン信号と加算するように加算器に入力する」ことで、「加算器の出力において、方向θ_(0)から到来した信号が強調され、θ_(0)に特に感度の高い方向を有する指向性を形成」することは、それぞれ、
本件補正発明の発明特定事項B及び発明特定事項B1の、
「コントローラ」、
「前記複数のマイクの相対的位置関係」、
「前記複数のマイクにより入力された音声データ」、
「前記複数のマイクにより入力された音声の差に基づき、音声データ処理を実行」することに相当し、さらに、
引用文献2に記載の技術の「信号到来方向」である「方向θ_(0)」は、音源の位置を表しているから、引用文献2に記載の技術の「信号到来方向」である「方向θ_(0)」と本件補正発明の発明特定事項B1の「ゲーミングマシンのプレーヤの位置に関する情報」とは、音源の位置に関する情報であるという点で共通する。

(ウ)本件補正発明の発明特定事項B2について、まず、「前記ゲーミングマシンのプレーヤの位置に関する情報は、所定の推定値に基づいて判定される」という事項の用語の意義の検討を行う。発明の詳細な説明の【0280】に、「プレーヤの位置に係る方向θは、例えば、固定的な推定値を用いたり、入力した音声データの周波数により判定したり、人体検出カメラ1713により判定したりするなど、様々な方法が考えられる。」と記載される。発明の詳細な説明には、「プレーヤの位置に係る方向θ」について、上記のとおり、「固定的な推定値を用いたり」すること、「入力した音声データの周波数により判定したり」すること、「人体検出カメラ1713により判定したりする」ことが列記されて記載されているが、「推定値」については、「用いたり」することが記載され、一方で、「判定」することについては、「入力した音声データの周波数」又は「人体検出カメラ1713」により「判定したり」することが記載されるのみで、本件補正発明の「プレーヤの位置に関する情報は、所定の推定値に基づいて判定される」(発明特定事項B2)ことに直接対応する記載は、発明の詳細な説明に存在しない。
そこで、本件補正発明の発明特定事項B2に関する説明として、審判請求書をみると、審判請求書には、
「3.補正の概要
・・・具体的には、「前記ゲーミングマシンのプレーヤの位置に関する情報は、所定の推定値に基づいて判定される」との記載を追加した。この記載は、段落[0280]等に基づくものである。
・・・
4.本願発明が特許されるべき理由
・・・
(3)拒絶理由(進歩性)について
a.請求項1
・・・
さらに、今回の手続補正書によって、上記のように「前記ゲーミングマシンのプレーヤの位置に関する情報は、所定の推定値に基づいて判定される」との構成が追加されたことにより、プレーヤの位置の特定方法が限定されることとなった。
すなわち、本願では、プレーヤは、椅子に座って遊技を行うゲーミングマシンのプレーヤとなるため、そのプレーヤの座る位置が概ね決まっているという特徴があり、また、平均的な姿勢や身長などから、プレーヤの位置を所定の推定値で特定することができる。・・・」と記載されている。
したがって、請求人の上記説明に基づいて、本件補正発明の「プレーヤの位置に関する情報は、所定の推定値に基づいて判定される」(発明特定事項B2)ことは、プレーヤの位置に係る方向θを、固定的な推定値で特定することであると解釈して、以下の検討を行う。
引用文献2に記載の技術の「信号到来方向」である「方向θ_(0)」と本件補正発明の「ゲーミングマシンのプレーヤの位置に関する情報」とは、音源の位置に関する情報であるという点で共通することは上記のとおりである。また、引用文献2に記載の技術において、「信号到来方向を事前の知識のみから設計する固定ビームフォーミングにより音声信号取得を行う」ことは、音源の位置を表す「信号到来方向」である「方向θ_(0)」を固定値として設計することにほかならないから、音源の「位置に係る方向θを、固定的な推定値で特定する」こと、すなわち、本件補正発明において、音源の「位置に関する情報」が「所定の推定値に基づいて判定される」ことに相当する。

(エ)上記(ア)?(ウ)より、
本件補正発明の「プレーヤの位置に関する情報は、所定の推定値に基づいて判定される」(発明特定事項B2)ことは、プレーヤの位置に係る方向θを、固定的な推定値で特定することであると解釈して、以下の検討を行う。 引用文献2に記載の技術の「間隔dで配置」された「2個」の「全指向性マイクロホン」を備えた「ビームフォーマ」は、
「2個の全指向性マイクロホンを間隔dで配置」していること、「一方のマイクロホン信号」及び「他方のマイクロホン信号」、及び音源の位置を表す「信号到来方向」である「方向θ_(0)」から、「一方のマイクロホン信号を遅延させ、その出力信号を他方のマイクロホン信号と加算するように加算器に入力する」ことで、「加算器の出力において、方向θ_(0)から到来した信号が強調され、θ_(0)に特に感度の高い方向を有する指向性を形成」し、
音源の位置を表す「信号到来方向」である「方向θ_(0)」を、「事前の知識のみから設計する固定ビームフォーミングにより音声信号取得を行う」技術、を示しているといえる(また、引用文献2に記載の技術が、周知技術であることにつき、後記(カ)に示す特開2007-147732号公報、国際公開第2006/25106号公報も参照。)。

(オ)引用発明と周知技術である引用文献2記載の技術はいずれも、マイクから入力された音声を適切に集音するという点で課題が共通する。さらに、遊技機の分野において、音源として、遊技機の前方に着席したときの平均的な体型の遊技者の口元の位置を特定する技術は従来周知の技術(以下、「音源の位置に関する周知技術」、後記(キ)を参照。)であることを参酌すると、引用発明における、音源である「遊技機1の遊技者」(本件補正発明の「ゲーミングマシンのプレーヤ」に相当。)について、上記音源の位置に関する周知技術を採用して、遊技機の前方に着席したときの平均的な体型の遊技者の口元の位置を音源として特定することを前提として、音源の位置を表す「信号到来方向」である「方向θ_(0)」を、「事前の知識のみから設計する固定ビームフォーミングにより音声信号取得を行う」という周知技術である引用文献2に記載の技術を適用することが可能である。
したがって、引用発明に周知技術である引用文献2に記載の技術を適用して、
引用発明の「指向性マイクを用い」た「マイク12」を、「間隔dで配置」された「2個」の「全指向性マイクロホン」とし、
引用発明における、音源である「遊技機1の遊技者」(本件補正発明の「ゲーミングマシンのプレーヤ」に相当。)について、上記音源の位置に関する周知技術を採用して、遊技機の前方に着席したときの平均的な体型の遊技者の口元の位置を音源として特定することを前提として、音源の位置を表す「信号到来方向」である「方向θ_(0)」を情報として用いるとともに、
引用発明において、マイクから入力された音声を適切に集音する手段として、「2個の全指向性マイクロホンを間隔dで配置」していること、「一方のマイクロホン信号」及び「他方のマイクロホン信号」、及び音源の位置を表す「信号到来方向」である「方向θ_(0)」から、「一方のマイクロホン信号を遅延させ、その出力信号を他方のマイクロホン信号と加算するように加算器に入力する」ことで、「加算器の出力において、方向θ_(0)から到来した信号が強調され、θ_(0)に特に感度の高い方向を有する指向性を形成」するものとし、
さらに、音源の位置を表す「信号到来方向」である「方向θ_(0)」を、「事前の知識のみから設計する固定ビームフォーミングにより音声信号取得を行う」ことにより、上記相違点1、相違点2及び相違点3に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(カ) 引用文献2に記載の技術が、周知技術であることについて、例えば、特開2007-147732号公報、国際公開第2006/25106号公報を参照。
特開2007-147732号公報(マイクロホンアレイ11と、較正器12と、固定ビームフォーマ(FBF)ユニット13を備えた車載用の音声認識システムにおいて、複数のマイクロホンから出力される目的音声信号の到来時刻のずれを当該複数のマイクロホンのうち基準チャネルとして予め定められたマイクロホンを基準に較正するために、
直線上に等間隔で配置された複数の無指向性マイクロホン111-1,111-2,…,111-M(Mは3以上の整数)からなるマイクロホンアレイ11に到来する目的音声の方向が、当該マイクロホン111-1?111-Mの配列方向に直交していない場合、目的音声がマイクロホン111-1に到達する時刻をt、目的音声が隣接するマイクロホンの各々に到達する時刻の差分をζとして、目的音声がマイクロホン111-1に到達する時刻tを基準とした場合、当該目的音声は、マイクロホン111-2?111-Mに、それぞれ時間差(到来時間差)ζ?(M-1)ζをもって到達するので、
マイクロホンアレイ11に対する目的音声の到来方向は予め分かっており、ζは既知であるものと仮定することにより、
マイクロホンアレイ11のマイクロホン111-1,111-2,…,111-Mからそれぞれ出力される観測信号x'1(t),x'2(t),…,x'M(t)が入力される較正器12が、信号x'1(t)を基準に、信号x'2(t)?x'M(t)に対して相対的にそれぞれ時間ζ?(M-1)ζだけプラス方向にシフトすることにより、信号x'1(t)?x'M(t)にそれぞれ含まれている目的音声信号の到来時刻を揃えて、FBF(固定ビームフォーマ)ユニット13に出力する技術、が記載されている(【0016】、【0018】-【0023】、【0026】、図1)。)、
国際公開第2006/25106号公報(ナビゲーション装置における音声認識システムは、車両1の発話者31A、31Bの音声入力を受け付ける少なくとも2個のマイクロホンで構成されるマイクロホン14(14A、14B)とナビゲーション装置10とを備え、
マイクロホン14は、ナビゲーション装置10と接続され、発話者31(31A,B)の音声入力を受け付けると、この音声情報をナビゲーション装置10へ出力し、
ナビゲーション装置10は、A/D変換装置16と、CPU17と、記憶装置21とを含んで構成され、A/D変換装置16は、マイクロホン14から入力された発話者31の音声コマンドを、アナログ波形からデジタル信号へ変換し、デジタル信号に変換した音声コマンドを、CPU17へ出力して、
CPU17は、音源位置特定部23と、音声認識部20と、プリセット情報検索部25と、ナビゲーション処理部22とに区分され、
音声認識部20は、マイクロホン14経由で音声の入力を受けると、発話者31のプリセット情報を参照して、この音声コマンドの指向性を設定した音声信号を作成し、入力された音声から発話者31の音声を分離するに際し、
記憶装置21は座席位置(運転席、助手席、右後部座席、左後部座席等)ごとの標準の音源位置の情報である標準のプリセット情報を記憶していて、プリセット情報検索部25は、発話者31の座席位置の選択入力を受けると、記憶装置21からその座席位置の標準のプリセット情報を読み出し、音声認識部20に受け渡して、音声認識部20は、その標準の音源位置に基づき発話者31の指向性の設定を行い、音声コマンドの音声分離および音声認識処理を行うことにより、標準の音源位置の情報に基づき、発話者31の音声認識処理を行う技術、が記載されている(【0008】【0009】【0012】?【0014】、【0017】、【0035】、【0037】)。

(キ)音源の位置に関する周知技術として、例えば、
特開2004-243036号公報(パチンコ機50の前面部にスペースを設け、情報出力装置1を装着し、情報出力装置1に、遊技者の音声を拾うためのマイクロフォン2、入力スイッチ3を介してマイクロフォン2と接続された音声処理装置4などから構成され、
マイクロフォン2は指向性が高く、平均的な身長の遊技者がパチンコ機50と対になる椅子に着席した際に概ねその遊技者の口元に向けられるような向きで設置されていることにより、着席した遊技者が発声した際には、主にその遊技者の声だけを選択的に拾うことができ、周囲の騒音の影響を受けにくくする技術、が記載されている(【0021】、【0040】、【0041】)。)、
特開2005-168886号公報(遊技者の発する操作音声を確実に入力するために、マイクユニット40に対して操作命令語を音声入力することで、対応するリールを停止させることができるマイクユニット40が取り付けられたスロットマシン1において、
マイクユニット40は、略水平方向に長い箱状のユニットケース41の前面に、その長手方向に沿って3個の小型のマイク42a,42b,42cがほぼ等間隔に配設され、ユニットケース41の底部にはマイク42a,42b,42cの信号ケーブル等を格納する、ユニットケース41の支持体としてのチューブ43が設けられ、
チューブ43は、剛性を有するパイプで形成され、一般的な体型の遊技者がスロットマシン1の前に座った際に、ちょうど口の前にマイク42a,42b,42cが位置するように予め曲げられて形成されているものとして、マイク42a,42b,42cが常に遊技者の口の前に位置するようにする技術、が記載されている(【0058】、【0060】、【0066】、図3、図4)。)が挙げられる。

(ク)また、本件補正発明の効果は、引用発明、周知技術である引用文献2に記載の技術及び音源の位置に関する周知技術から予測し得るものであって格別顕著なものということはできない。

(ケ)請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、
「(3)拒絶理由(進歩性)について
a.請求項1
・・・
すなわち、本願では、プレーヤは、椅子に座って遊技を行うゲーミングマシンのプレーヤとなるため、そのプレーヤの座る位置が概ね決まっているという特徴があり、また、平均的な姿勢や身長などから、プレーヤの位置を所定の推定値で特定することができる。・・・」と主張している。
しかし、遊技機の分野において、音源として、遊技機の前方に着席したときの平均的な体型の遊技者の口元の位置を特定する技術は従来周知の技術(「音源の位置に関する周知技術」)であって、本件補正発明が想到容易であるという判断は、上記(オ)に示したとおりであるから、請求人の主張を採用することはできない。

(7)小括
したがって、本件補正発明は、引用発明、周知技術である引用文献2に記載の技術及び音源の位置に関する周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4.むすび
上記3.において検討したことからみて、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について

1.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成30年7月30日付け手続補正書により補正された、上記第2の1.で示した特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである。

2.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、概略、次のとおりのものである。

(進歩性)本願発明は、その出願前に日本国内において、頒布された次の引用文献1-2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
1.特開2006-334152号公報
2.国際公開第2004/034734号(周知技術を示すもの)

3.引用文献に記載の事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1?2の記載事項は、上記第2の3.(2)?(3)に記載したとおりである。

4.対比・判断
本願発明は、上記「第2の2.(1)本件補正」において検討したとおり、本件補正発明において、
(i)発明を特定するために必要な事項である「プレーヤトラッキング装置のコントローラ」が、「音声データ処理」を実行する際に用いる「ゲーミングマシンのプレーヤの位置に関する情報」について、「前記ゲーミングマシンのプレーヤの位置に関する情報は、所定の推定値に基づいて判定される」ものであるという限定を省き、
(ii)「プレーヤトラッキング装置のコントローラ」について、「以下の処理を実行する。」という記載を加えるとともに、「音声データ処理を実行し」という記載を、「音声データ処理を実行する処理」を実行すると書き改めるものである。

そうすると、本願発明と引用発明とは、上記(i)に対応して相違点3がなくなるので、上記「第2の3.(5)一致点及び相違点」において検討した、相違点1及び相違点2の点で異なるものである。
そして、上記相違点1及び相違点2については、前記「第2の3.(6)当審の判断 ア」において検討したように、引用発明、周知技術である引用文献2に記載の技術及び音源の位置に関する周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、周知技術である引用文献2に記載の技術及び音源の位置に関する周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項を検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2020-02-06 
結審通知日 2020-02-12 
審決日 2020-03-02 
出願番号 特願2014-174507(P2014-174507)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安藤 達哉  
特許庁審判長 長崎 洋一
特許庁審判官 島田 英昭
▲吉▼川 康史
発明の名称 プレーヤトラッキング装置、およびゲーミングマシン  
代理人 特許業務法人タス・マイスター  

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