• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A44B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A44B
管理番号 1361401
審判番号 不服2017-19482  
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-12-28 
確定日 2020-04-07 
事件の表示 特願2014-530771「機械的締結具、締結装置、及び使い捨て吸収性物品」拒絶査定不服審判事件〔平成25年3月21日国際公開、WO2013/040156、平成26年10月6日国内公表、特表2014-526341〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年9月13日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年9月16日 アメリカ合衆国、2012年6月1日 アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は次のとおり。
平成27年9月14日 手続補正書及び上申書提出
平成28年9月9日付け 拒絶理由通知
平成29年3月13日 意見書提出
平成29年8月4日付け 拒絶査定
平成29年12月28日 本件審判請求、同時に手続補正書提出

第2 平成29年12月28日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年12月28日にされた手続補正を却下する。
[理由]
1. 本件補正の内容
上記平成29年12月28日付け手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)は、平成27年9月14日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲をさらに補正するものであって、特許請求の範囲の請求項1についての補正を含むところ、本件補正前後の請求項1の記載は、補正箇所に下線を付して示すと、以下のとおりである。
(1)本件補正前
「【請求項1】
機械的締結具であって、
熱可塑性裏材と、
前記熱可塑性裏材に取り付けられる近位端と、柱の断面積よりも広い面積のキャップを含む遠位端を備える柱と、を有する、複数の直立締結要素と、を含み、
前記複数の直立締結要素は、最大300マイクロメートルの高さを有し、前記機械的締結具の坪量は、1平方メートル当たり25グラム?1平方メートル当たり75グラムの範囲である、機械的締結具。」

(2)本件補正後
「【請求項1】
機械的締結具であって、
熱可塑性裏材と、
前記熱可塑性裏材に取り付けられる近位端と、柱の断面積よりも広い面積のキャップを含む遠位端を備える柱と、を有する、複数の直立締結要素と、を含み、
前記熱可塑性裏材は、20マイクロメートル?80マイクロメートルの範囲の厚さを有し、
前記複数の直立締結要素は、40マイクロメートル?300マイクロメートルの範囲の高さを有し、
前記機械的締結具の坪量は、1平方メートル当たり25グラム?1平方メートル当たり75グラムの範囲である、機械的締結具。」

2. 補正の適否
本件補正のうち、請求項1についてするものは、本件補正前の請求項1に記載した「熱可塑性裏材」の「厚さ」について、「20マイクロメートル?80マイクロメートルの範囲の厚さを有し、」と限定する補正事項(以下「補正事項1」という。)と、本件補正前の請求項1に記載した「直立締結要素」の「高さ」について、「40マイクロメートル?300マイクロメートルの範囲」とし、下限値を付加して、限定する補正事項(以下「補正事項2」という。)からなるものである。ここで、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であることは明らかであるから、補正事項1及び2は、いずれも特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下「補正発明」という。)が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)否かについて、次に検討する。

(1) 刊行物に記載された事項及び発明
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平11-155612号公報(以下「引用文献」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
ア.「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、メカニカルホックのオス側シート材に関し、詳しくは、接着面の全ての方向における高い係合力を発揮しうると共に、剥離に対する方向性を付与できるメカニカルホックのオス側シート材に関する。」

イ.「【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明のメカニカルホックのオス側シート材について、添付図面を参照して説明する。図1は本発明のメカニカルホックのオス側シート材の一実施形態を示す拡大斜視図でオス型係合部一個のみを示しており、図2(a)及び(b)は、それぞれ図1に示すオス型係合部の第二横方向及び第一横方向視拡大側面図、図3は図1に示すオス型係合部の基材シート上における配列状態の一部を基材シートを省略して示す拡大平面図である。
【0008】図1及び図2に示すメカニカルホックのオス側シート材1は、基材シート2上にオス型係合部3が高密度に配されてなるものである。このような構成は、従来公知のメカニカルホックのオス側シート材と同様である。
【0009】而して、本実施形態においては、上記オス型係合部3は、上記基材シート2から突出する幹部4と、該幹部4の上端に該幹部4を覆って形成された平のし屋根形状のヘッド5とからなり、上記ヘッド5は、その上面が上記基材シート2と略平行であり、上記平のし屋根形状のヘッド5における軒状部分6の下面と上記基材シート2に対する鉛直線とのなす角度が鋭角となるように形成されており、上記ヘッド5の第一横方向の長さ及びそれに直角な第二横方向の長さが、それぞれ、該第一横方向と平行な上記幹部4の第一横方向の長さ及びそれに直角な第二横方向の長さより長く、上記幹部4の第一横方向の長さと第二横方向の長さとは異なっており、また、上記ヘッド5の第一横方向の長さと第二横方向の長さとは異なっている。
【0010】更に詳述すると、上記幹部4は、その横断面は長方形状で、その軸線は上記基材シート2に対する鉛直線と平行となっている。また、上記ヘッド5は平面視において長方形状である。
【0011】上記平のし屋根形状のヘッド5における軒状部分6の下面と上記基材シート2に対する鉛直線とのなす角度(θ)は、好ましくは90゜未満であり、更に好ましくは30?90゜未満である。該角度(θ)がこの範囲内にあれば、オス型係合部3は接着相手材のループ状メス型係合部を十分に引掛け外れないようにすることができる。該角度(θ)が30゜未満では、係合力が急増大するが、着脱時のバリバリ感を払拭し難く、また接着相手材のループ状メス型係合部を破損し易く、繰り返し脱着性に劣る。また該角度(θ)が90°以上であると、係合力が大幅に低下する。
【0012】上記ヘッド5の第一横方向及び第二横方向の長さ(W、C)は、それぞれ、上記幹部4の第1横方向及び第2横方向の長さ(D、B)より好ましくは0.01?1mm長く、更に好ましくは0.02?0.6mm長い。この長さの違いが0.01mm未満では接着相手材のループ状メス型係合部が該ヘッド5から外れ易くなり、また1.0mmを越えると、反対に、接着相手材のループ状メス型係合部が係合過剰になり外れ難く、一つの該ヘッド5の占めるスペースが過大で該オス型係合部3の数の不足ともなる。
【0013】上記幹部4の第一横方向及び第二横方向の長さ(D、B)は、好ましくは0.05?0.8mmであり、更に好ましくは0.1?0.5mmである。それぞれの長さ(D、B)がこの範囲内にある幹部4は、剥離方向に対し十分な厚みを有するため倒れにくく、メカニカルホックに高い係合力を与えられる。該幹部4は、それぞれの長さ(D、B)が0.05mm未満だと脆弱で、また0.8mmより長いとゴツイものとなり易い。
【0014】また、上記幹部の第一横方向の長さ(D)は第二横方向の長さ(B)より好ましくは0.01?0.5mm長く、更に好ましくは0.02?0.3mm長い。この長さの違いが0.01mm未満であると、剥離に対する十分な方向性を付与し難く、0.5mmを越えると、第一横方向への剥離のとき、第二横方向に倒れ易くなり、十分な係合力が得られない。
【0015】上記ヘッドの第一横方向及び第二横方向の長さ(W、C)は、自ずと規定されることだが、それぞれ好ましくは0.1?1.8mmであり、更に好ましくは0.1?1.1mmである。また、上記ヘッドの第一横方向の長さ(W)は第二横方向の長さ(C)より好ましくは0.01?0.5mm長く、更に好ましくは0.02?0.3mm長い。この長さの違いが0.01mm未満であると、剥離に対する十分な方向性を付与し難く、0.5mmを越えると、第一横方向への剥離のとき、第二横方向に倒れ易くなり、ループ状メス型係合部がはずれ易くなり、十分な係合力が得られない。
【0016】上記オス型係合部3の高さ(H_(1))は、好ましくは0.1?1.5mmであり、更に好ましくは0.2?1.2mmである。また、上記幹部4の高さ(H_(2))は、好ましくは0.05?1.2mmであり、更に好ましくは0.1?1mmである。該高さ(H_(1))が、1.5mmを越えると、薄くてきめ細やかで表面滑らかなオス側シート材を得難い。該高さ(H_(2))が、0.05mmより低いと、接着相手材のループ状メス型係合部への該オス型係合部3の挿入性が悪くなる。該高さ(H_(1))と該高さ(H_(2))との差、即ち上記ヘッド5の中央部の厚さは、好ましくは0.01mm以上、更に好ましくは0.02mm以上である。該厚さが0.01mm未満であると、該ヘッド5の中央部が薄くなり過ぎて、該オス型係合部3は薄弱になり係合力に不足し易い。
【0017】上記オス型係合部3,3・・は、図3に示すように、上記基材シート2上に碁盤目状態に均一に分散しており、その密度は、好ましくは60個/cm^(2)以上であり、更に好ましくは80?800個/cm^(2)である。該密度が60個/cm^(2)未満では高い係合力を得難く、表面滑らかなオス側シート材を得難い。また該密度が800個/cm^(2)を越えると接着相手材のループ状メス型係合部が侵入する上記オス型係合部3間のスペースが不足してやはり高い係合力を得難い。」

ウ.「【0019】ここで、上記オス側シート材1を構成する材料は、特に制限されず、従来公知のものを適宜用いることができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン類、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル類、ナイロン、ポリウレタン、また、スチレン系、オレフィン系、ウレタン系、エステル系、ポリアミド系等の各種の熱可塑性エラストマーなどを単独若しくは混合して用いられる。」

エ.「【0020】また、上記オス側シート材1の製造方法は、特に制限されないが、例えば、上記基材シート2上に上記幹部4を押し出し成形により形成し、該幹部4とは別体に成形された上記ヘッド5を、適当な手段で該幹部4の上端に融着させて該オス側シート材1を形成する方法等が挙げられる。」

オ.「【0021】また、上記基材シート2の厚みは、0.01?0.5mmであることが好ましく、0.02?0.4mmであることが更に好ましい。該厚みが0.01mm未満だと、上記オス側シート材1は、オス側シート材としての基材物性を満たし難く、成形性も悪くなる。また、該厚みが0.5mmを超えると、該オス側シート材1の屈曲性が悪くなる。
【0022】本実施形態のメカニカルホックのオス側シート材1によれば、上記オス型係合部3の上記ヘッド5が角を有し、且つ該ヘッド5の軒状部分6の下面と上記基材シート2に対する鉛直線とのなす角度が鋭角なため、該オス型係合部3が接着相手材のループ状メス型係合部と良く係合し、高い係合力を得ることができる。また、上記ヘッド5が上記幹部4から上記基材シート2に平行な全方向(接着面に平行でもある)に張り出しているので、上記オス型係合部3は方向性なく接着相手材のループ状メス型係合部と係合し、接着面の全ての方向における高い係合力を得られると共に、上記オス型係合部3の第一横方向及び第二横方向の長さが異なるため剥離に対する方向性を得ることができる。更に、本実施形態のオス側シート材1は、上記オス型係合部3が微細で高密度に上記基材シート2上に配されており、且つ、上記ヘッド5上面が平坦なため、きめ細かな外観・風合、及び心地よい手触り・肌触を有する。また更に、本実施形態のオス側シート材1は、極薄手で屈曲性に優れ、縫製やウェルダー等による取り付け加工性にも優れている。」

カ.「【0024】尚、本発明のメカニカルホックのオス側シート材と接着される接着相手材としては、通常、ループ状メス型係合部を有するメス側シート材が用いられるが、本発明のオス型係合部を有するオス側シート材を接着相手材として用いることができる。また、本発明のメカニカルホックのオス側シート材は、使い捨てオムツの止着具等に特に好適である。

キ.第1図?第3図




ク.「幹部4」は、基材シート2上に押し出し成形等の方法により形成され得るものである(上記エ.の段落【0020】を参照)から、前記「幹部4」は、「基材シート2」に「取り付けられる」ものであるといえる。また、前記「幹部4」の「基材シート2」側の端部は、当該「基材シート2」に近い側の端部、すなわち、「近位端」といえるものであり、また、前記「幹部4」の「近位端」とは反対側の端部は、前記「基材シート2」に遠い側の端部、すなわち、「遠位端」といえるものである。そして、「幹部4」についての図2の図示と、上記イ.の「上記ヘッド5の第一横方向及び第二横方向の長さ(W、C)は、それぞれ、上記幹部4の第1横方向及び第2横方向の長さ(D、B)より好ましくは0.01?1mm長く、更に好ましくは0.02?0.6mm長い。」(段落【0012】)との摘記から、「ヘッド5」の面積は、「幹部4の断面積」よりも広いといえる。したがって、引用文献には、近位端と、幹部4の断面積よりも広い面積のヘッド5を含む遠位端を備える幹部4が、基材シート2に取り付けられたものが記載されているといえる。

上記(1)に示した記載事項ア.?オ.、【図1】?【図3】の図示、並びに、認定事項キ.及びク.から、引用文献には、以下の引用発明が記載されている。
「オス側シート材1であって、
ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン類、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル類等を材料とする基材シート2と
前記基材シート2に取り付けられる近位端と、幹部4の断面積よりも広い面積のヘッド5を含む遠位端を備える幹部4と、を有する、複数のオス型係合部3と、を含み、
前記基材シート2は、0.02?0.4mmの範囲の厚さのものであり、
前記複数のオス型係合部3の高さは、0.2?1.2mmの範囲のものである、
オス型シート材1。」

(2)対比
補正発明と引用発明とを対比すると、その機能及び構造からみて、引用発明の「オス側シート材1」は、補正発明の「機械的締結具」に相当する。
引用発明の「幹部4」、「ヘッド5」、「オス型係合部3」は、補正発明の「柱」、「キャップ」、「直立締結要素」に、それぞれ相当する。
ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートは、いずれも熱可塑性の樹脂であるから、引用発明の「ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン類、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル類等を材料とする基材シート2」は、補正発明の「熱可塑性裏材」に相当する。
引用発明の「ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン類、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル類等を材料とする基材シート2」と、補正発明の「熱可塑性裏材」とは、「直立締結要素」がその「柱」の「近位端」にて取り付けられる「材」である限りにおいて、一致する。
そうすると、補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
ア.一致点
「機械的締結具であって、
熱可塑性裏材と、
前記熱可塑性裏材に取り付けられる近位端と、柱の断面積よりも広い面積のキャップを含む遠位端を備える柱と、を有する、複数の直立締結要素と、を含み、
前記熱可塑性裏材は、厚さを有し、
前記複数の直立締結要素は、高さを有するものであり、
前記機械的締結具は、坪量を有するものである、
機械的締結具。」

イ.相違点
<相違点1>
補正発明の「熱可塑性裏材」は、その厚さが「20マイクロメートル?80マイクロメートルの範囲」のものであるのに対し、引用発明の「基材シート2」の厚さは、「0.02?0.4mmの範囲」である点。

<相違点2>
補正発明の「直立締結要素」は、その高さが「40マイクロメートル?300マイクロメートルの範囲」のものであるのに対し、引用発明の「オス型係合部3」の高さは、「0.2?1.2mmの範囲」のものである点。

<相違点3>
補正発明の「機械的締結具」は、その坪量が「1平方メートル当たり25グラム?1平方メートル当たり75グラムの範囲」であるのに対し、引用発明の「オス型シート材1」の坪量について、引用文献に記載されていない点。

(3)判断
ア.相違点1及び相違点2について
引用文献には、「上記オス型係合部3の高さ(H_(1))は、好ましくは0.1?1.5mmであり、更に好ましくは0.2?1.2mmである。・・・該高さ(H_(1))が、1.5mmを越えると、薄くてきめ細やかで表面滑らかなオス側シート材を得難い。」(段落【0016】)及び「本実施形態のオス側シート材1は、上記オス型係合部3が微細で高密度に上記基材シート2上に配されており、且つ、上記ヘッド5上面が平坦なため、きめ細かな外観・風合、及び心地よい手触り・肌触を有する。また更に、本実施形態のオス側シート材1は、極薄手で屈曲性に優れ、縫製やウェルダー等による取り付け加工性にも優れている。」(段落【0022】)という記載がある。そうすると、引用発明には、オス側シート材1の厚さを薄くすることの動機付けがあるといえるから、引用発明の「基材シート2」の厚さが、「0.02?0.4mm」、すなわち、20マイクロメートル?400マイクロメートルの範囲の厚さのものであるところ、当該厚さを、補正発明に特定された「20マイクロメートル?80マイクロメートルの範囲」のものとすることは、上記動機付けにしたがって、引用発明における上記数値範囲において、小さい方の数値範囲を選択したに過ぎず、格別の困難性は認められない。
また、引用発明の「オス型係合部3」の高さが「0.2?1.2mm」、すなわち200マイクロメートル?1200マイクロメートルの範囲のものであるところ、当該高さを、補正発明に特定された「40マイクロメートル?300マイクロメートルの範囲」のものとすることは、上記動機付けにしたがって、引用発明の記数値範囲において、小さな数値範囲を選択したに過ぎず、格別の困難性は認められない。
以上のとおりであるから、引用発明について、上記相違点1及び2における補正発明に係る構成を備えたものとすることは、当業者が容易になし得た事項である。

イ.相違点3について
仮に、引用発明が基材シート2にオス側係合部3が取り付けられたオス側シート材1の坪量が、75g/m^(2)を超えるものであったとしても、上記ア.に示したように、引用発明には、オス側シート材1の厚さを薄くすることの動機付けがあるといえるから、シート材1の坪量を40g/m^(2)?75g/m^(2)の範囲内のものとすることに格別の困難性は認められない。

ウ.作用・効果について
本願明細書の段落【0098】の【表3】を見ると、比較例1及び2の「坪量gsm」が、100以上であるのに対し、実施例は、坪量が70以下である。そして、これらの実施例及び比較例について、表7に示された「剥離強度」をみると、比較例1及び2よりも大きな値を示す実施例や小さな値を示す実施例がある。そうすると、実施例と比較例との間には、「剥離強度」について、顕著な相違があるとはいえないし、上記ウ.に示したように、そもそも坪量を、補正発明に特定されたとおりのものとすることに格別な困難性は認められない。
そうすると、補正発明が奏する作用・効果は当業者が容易に予測し得る以上のものであるとは認められない。

(4)小括
上記(3)に示したとおり、補正発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3. 本件補正の適否についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定により読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

第3 本願発明
1. 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1?6に係る発明は、平成27年9月14日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の1.(1)に示したとおりのものである。

2.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の概要は、本願発明は、本願優先日前に頒布された刊行物である米国特許出願公開第2003/0192152号明細書あるいは特開平11-155612号公報に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

3. 刊行物の記載及び発明
上記2.に示した刊行物のうち、特開平11-155612号公報に記載された事項及び発明は、上記第2.の2.(1)に示したとおりのものである。

4. 対比・検討
本願発明は、補正発明の発明特定事項から、上記第2の2.に示した補正事項1及び2に係る構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項の全てを包含し、さらに補正事項1及び2に係る構成を付加したものに相当する補正発明が、上記第2.の2.(3)に示したとおり、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 まとめ
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-11-15 
結審通知日 2018-11-20 
審決日 2018-12-03 
出願番号 特願2014-530771(P2014-530771)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A44B)
P 1 8・ 121- Z (A44B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 米村 耕一  
特許庁審判長 門前 浩一
特許庁審判官 渡邊 豊英
久保 克彦
発明の名称 機械的締結具、締結装置、及び使い捨て吸収性物品  
代理人 赤澤 太朗  
代理人 吉野 亮平  
代理人 佃 誠玄  
代理人 野村 和歌子  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ