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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G08B
管理番号 1361403
審判番号 不服2018-7832  
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-06-06 
確定日 2020-04-09 
事件の表示 特願2014- 40964「無線通信機器」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 9月24日出願公開、特開2015-166926〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年 3月 3日に出願された特願2014-40964号であり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
平成29年12月 6日付け:拒絶理由の通知
平成30年 2月13日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年 3月 1日付け:拒絶査定
平成30年 6月 6日 :拒絶査定不服審判の請求
平成31年 3月12日付け:当審による拒絶理由の通知
令和 元年 5月20日 :意見書、手続補正書の提出
令和 元年 9月 2日付け:当審による拒絶理由の通知
令和 元年11月 5日 :意見書、手続補正書の提出(以下、この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。)

第2 本願発明
本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「 【請求項1】
周期的に第1の割り込み信号を出力するタイマと、
制御部の起動時に前記制御部から出力される受信設定を記憶している記憶部を有し、前記第1の割り込み信号が入力されると前記記憶部に記憶されている前記受信設定を用いて無線信号を受信するように、前記第1の割り込み信号の入力タイミングに合わせて間欠受信する通信部と
を備え、
前記記憶部は、揮発性の記憶装置で構成されている無線通信機器。」

第3 拒絶の理由
令和 元年 9月 2日付けで当審が通知した拒絶理由のうちの理由2の概要は、この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開2008-186245号公報
引用文献2:特開2004-64293号公報

第4 引用文献及び引用発明、ならびに周知技術
1 引用文献1(特開2008-186245号公報)の記載及び引用発明
(1)引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付与。以下同じ。)。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、間欠受信動作を行う受信装置およびその受信装置における受信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機等の携帯端末装置では、待ち受け時(間欠受信時)において、報知情報信号を受信しない時には、各半導体メーカーが提供するLSIのスタンバイモードまたはシャットダウンモードを使い、さらにそのLSIの仕様の機能を使ってシステムの省電力化を図ってきた(例えば、特許文献1参照)。また、システム制御にからむ制御用データを保持する部品に関しては、電源を落とした状態にせずに、常に電力を供給する状態にして使用し、データを保持しなくても良い部品のみ、電力供給を停止することによって省電力化を図ることも行われている。また、携帯電話機の送受信部に用いられるRFIC(Radio Frequency Integrated Circuit)についても、待ち受け時における報知情報信号を受信しない時には、制御用データを内部に保持しないタイプのRFICを用いる場合のみ、RFICへの電力供給を停止することも行われている。なお、前記RFICは、携帯電話機の送受信部に用いられる各種のRF制御部品(IC部品)を総称したものである。
【特許文献1】特開2006-211439号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、制御用データを内部に保持するタイプのRFICを用いる場合においては、RFICへの電力供給を停止する処理は行っていない。このようなタイプのRFICについても、システム上は、電力供給を停止して、できるだけ省電力化を図ることが望ましいが、消費電力を減らすためにRFICの電力供給を停止すると、全ての制御用データが消滅してしまい、待ち受け時における報知情報信号の受信時に、RFICに再び電力を供給したときに、制御用データを電力供給の停止前の状態に復帰できなくなるという問題がある。」

(2)引用発明
上記記載より、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「 間欠受信を行う携帯電話機等の携帯端末装置で、
携帯電話機の送受信部に用いられるRFIC(Radio Frequency Integrated Circuit)について、システム制御にからむ制御用データを内部に保持するタイプのRFICを用い、
システム制御にからむ制御用データを内部に保持するタイプのRFICは、電力供給を停止すると、全ての制御用データが消失することから、RFICへの電力供給を停止する処理を行わない、携帯電話機等の携帯端末装置。」

2 周知技術
(1)周知技術1
a 引用文献2(特開2004-64293号公報)には、次の事項が記載されている。
(a)「【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施の形態におけるデジタル携帯電話装置を示すブロック図である。図1において、1は基地局からの電波を受信するアンテナ、2はアンテナ1を介して受信したデータをデジタル処理するデータ受信・処理部で、無線受信された高周波信号(RF)を中間周波信号(IF)、低周波信号に変換し復調する無線部3と、無線部3の出力にTDMA処理などのデジタル信号処理を施す受信部4からなる。7はデータ受信・処理部を通して得られた受信データを解析し、送信端末から呼び出しを受けているか否かを判定するデータ解析部である。
【0013】
5は待ち受け受信開始後に設定時間(非受信間隔)経過すると割り込み信号を出力する間欠受信タイマ、8は間欠受信タイマ5からの割り込み信号を受けて、データ受信・処理部2およびデータ解析部7を作動させた状態で呼び出しを受けた場合に、マイクロプロセッサ(CPU)6の制御下で通話処理を行わせ、呼び出しを受けなかった場合には、データ受信・処理部2およびデータ解析部7の動作を停止する受信制御部である。
【0014】
図2は本実施形態のデジタル携帯電話装置の動作を示すフローチャートである。デジタル携帯電話が待ち受け受信を開始する場合、待ち受け受信時の消費電力を削減するために、CPU6の制御により受信制御部8に待ち受け受信開始が指示されると(ステップS1)、受信制御部7は、データ受信・処理部2の動作を停止する。具体的には受信部4およびデータ解析部7の動作が停止し、無線部3の電源がオフとなる(ステップS2)。さらに、間欠受信間隔を間欠受信タイマ5にセットして(ステップS3)、間欠受信タイマ5を起動した後、CPU6を停止し(ステップS4)、待ち受け受信を開始する。
【0015】
待ち受け受信が開始された後、間欠受信タイマ5が設定された時間になると(ステップS5)、間欠受信タイマ5は割り込み信号を出力し(ステップS6)、受信制御部8は無線部3の電源を自動的にオンにし、受信部4およびデータ解析部7の動作を自動的に開始させる(ステップS7)。このとき、CPU6は起動されない。
【0016】
アンテナ1で受信された高周波の受信データは、無線部3で中間周波信号、低周波信号に順次変換された後復調され、さらに、受信部4に送られて増幅およびTDMA処理などのデジタル信号処理が行われる。また、受信部4で処理された受信データはデータ解析部7に送られる。データ解析部7は受信データとCPU6で間欠受信開始前に設定されたデータを比較して、自端末が呼び出されているか否かを解析する(ステップS8)。
【0017】
解析の結果、自端末が呼び出されていた場合には、このとき初めてCPU6を起動して(ステップS9)、通話処理に移行する(ステップS10)。これに対して、自端末が呼び出されていない場合には、CPU6を起動することなく、受信制御部8の制御により、受信部4およびデータ解析部7の動作を停止させ、無線部3の電源をオフにする。さらに、間欠受信タイマ5に待ち受け受信間隔をセットして、間欠受信タイマ5を起動した後、CPU6自身の動作を停止し、再度待ち受け受信の状態に戻る。
【0018】
このように、待ち受け状態での間欠受信時に、自端末が呼び出されていない時には、CPUを起動させないようにすることで、待ち受け受信時の消費電力を削減することができる。」

(b)「図1、図2」




上記【0017】の記載より、「間欠受信タイマ5」は、「待ち受け受信間隔をセットして」、「再度待ち受け受信の状態に戻る」ことから、割り込み信号は間欠受信タイマから周期的に出力されるといえる。
そうすると、引用文献2には、「周期的に割り込み信号を出力する間欠受信タイマからの割り込み信号を受けて、携帯電話装置のデータ受信・処理部は間欠受信すること」(以下、「周知技術1」という。)が記載されていると認められる。

(2)周知技術2
a 特開平9-130838号公報には、以下の事項が記載されている。
(a)「【0012】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の一実施の形態である受信装置100の構成を示すブロック図である。受信装置100は、無線部101、データ復調部104、制御部105、メモリ部106、表示部107、電源部108、操作部109および報知部110を備える。無線部101は内部に局部発振回路102を備え、さらに、局部発振回路102は内部にPLL部103を備える。また、制御部105は、内部にタイマー部111を備える。
【0013】受信装置100は、ハードウェアとして、RF(radio frequency)ブロック201、デコーダ202、マイコン203、EEPROM204、SRAM205、マスクROM206、LCD(liquid crystal display)ドライバ207、LCDモジュール208、キーマトリクス209、LED(light emitting diode)210、バイブレータ211およびブザー212を備える。
【0014】以下では、図2、図3および図4を用いて、図1に示した無線部101およびデータ復調部104の具体的構成およびその機能について説明する。図2は、ダイレクト検波方式によるRFブロック201のより詳細なハードウェア構成を示すブロック図である。なお、図2に示す波形式において、±の符号を同時に示しているが、上段の符号をとる場合はすべて上段の符号をとり、下段の符号をとる場合はすべて下段の符号をとる。また、RFブロック201の構成は従来と同様であるので、図2および図3については、簡単に説明する。
【0015】無線部101およびデータ復調部104は、ワンチップのICで構成されるRFブロック201に内蔵されている。RFブロック201は、局部発振回路102、アンテナ301、RFアンプ302、π/2移相器303、混合器304、ローパスフィルタ305、リミティングアンプ306、混合器307、ローパスフィルタ308、リミティングアンプ309およびDフリップフロップ310を備える。」

(b)「【0026】局部発振回路102は、PLL部103、基準周波数発振器502、分周器503およびレジスタ508を備える。PLL部103は、位相比較器504、ローパスフィルタ505およびVCO506を備える。基準周波数発振器502は、水晶発振子501を備える。基準周波数発振器502は、水晶発振子501を用いて、周波数約12MHzの基準周波数信号を生成する。
【0027】分周器503は、生成された基準周波数信号を分周し、位相比較器504に出力する。位相比較器504は、分周器503の出力と、分周器(プログラマブルデバイダ)507の出力とを入力し、12.5KHzの周波数で、前記2入力の位相を比較する。位相比較器504の出力は、前記2入力の差分で表される。
【0028】ローパスフィルタ505は、位相比較器504の出力の高周波成分を遮断する。VCO506は、ローパスフィルタ505の出力波形の電圧値に応じた、280MHz程度の周波数の信号を発振し、分周器507に出力する。分周器507は、レジスタ508内のPLLデータが表している分周数だけ、VCO506の出力の周波数を分周し、分周した周波数の信号を位相比較器504に出力する。
【0029】レジスタ508は、前記PLLデータを記憶する。基準周波数信号の基準周波数と、位相比較器504における周波数とから、分周器503の分周数は1/1000程度が必要である。また、VCO506の出力周波数と、位相比較器504における周波数とから、分周器507の分周数は1/1000程度が必要である。このため、レジスタ508には、14ビット?15ビットのPLLデータが設定される。なお、分周器503の分周数は、局部発振信号の周波数に応じて変化するものではないので、固定されているものとしても良い。また、分周器503を、分周器507と同様にプログラマブルデバイダとし、それに対応するレジスタを備えて、別のPLLデータにより、分周数を設定するものとしても良い。」

(c)「【0044】マイコン203は、使用者が操作部109を操作することにより、電源部108から受信装置100に電源が投入されると、メモリ部106内のEEPROM204などに記憶されている初期データを読み出して、受信装置100の各部に初期設定を行う。例えば、メモリ部106から読み出したPLLデータを、レジスタ508に書き込む。また、メモリ部106から読み出した受信装置100のIDアドレスを、デコーダ202に設定する。さらに、メモリ部106から読み出した受信圏外判定用の計測時間(10分から30分程度)や、深夜におけるブザー212などの報知を停止する設定時刻などを、マイコン203内のタイマー部111に設定する。」

b 特開2004-201272号公報には、以下の事項が記載されている。
(a)「【0022】
図1は、図2に示したモード切替えが適用されるマルチモード無線端末の1例を示す構成図である。
マルチモード無線端末は、アンテナ10に接続されたフロントエンド部11と、該フロントエンド部11に接続された無線部12と、アナログ/ディジタル変換器(A/D)131とディジタル/アナログ変換器(D/A)132とを含む無線部インタフェース13と、変復調部141とディジタル信号プロセッサ(DSP)142とを含むベースバンド部14と、内部バス18を介して上記DSP16と接続された制御プロセッサ(CPU)16と、ユーザインタフェース15と、上記内部バス18に接続されたRAM17AおよびROM(またはフラッシュメモリ)17Bとからなる。端末の通信モードの切替えは、制御プロセッサ16がDSP142と協力して行う。
【0023】
無線部12は、後述するモード切替えの制御対象となる高周波半導体集積回路(RF-IC)30と、送信用パワー増幅器(PA)40とを含む。また、ユーザインタフェース15は、DSP142に接続されたアナログインタフェース15Aと、内部バス18および変復調部141に接続されたディジタル(データ)インタフェース15Bとからなる。上記アナログインタフェース15Aは、スピーカ20とマイク21に接続され、ディジタルインタフェース15Bには、表示部221とキーボード23とが接続されている。」

(b)「【0043】
図8と図9は、端末電源がオンとなった時、制御プロセッサ(CPU)16が実行する上記第1実施例と対応したモード切替え制御ルーチン500のフローチャートを示す。
モード切替え制御ルーチン500を実行中の制御プロセッサ16は、先ず、DSP142を介して、RF-IC30のパラメータ保持レジスタ402?404にモード1用のパラメータを設定する(ステップ501)。モード1、モード2用の各種のパラメータ値は、予めROM17Bに形成されたパラメータテーブルに記憶してある。
【0044】
従って、制御プロセッサ16が、上記ROMから読み出したモード1用のパラメータを書込み制御コマンドと共にDSP142に送信すると、DSP142が、これらのパラメータを書込制御回路401に対する制御コードと共に信号線L1に送信し、RF-IC30の書込制御回路401が、信号線L1から受信したパラメータを上記制御コードで特定されたレジスタ402?404に選択的に書き込む。上記ステップ501と同様に、制御プロセッサ16は、DSP142と協力して、RF-IC30のパラメータ保持レジスタ412?414にモード2用のパラメータを設定する(ステップ502)。」

上記a、bの記載事項より、「無線端末装置の電源がオンとなった時に、制御部が無線部であるRF-ICへパラメータを設定すること」は、周知な技術(以下、「周知技術2」という。)と認められる。

第5 対比
本願発明と引用発明を対比する。
1 引用発明において、「RFIC(Radio Frequency Integrated Circuit)」は、「携帯電話機の送受信部に用いられ」るものであり、「携帯電話機等の携帯端末装置」は「間欠受信を行う」ことから、引用発明の「RFIC(Radio Frequency Integrated Circuit)」は、本願発明の「間欠受信する通信部」に対応する。
2 引用発明の「システム制御にからむ制御用データ」は、「携帯電話機の送受信部に用いられるRFIC」が保持する制御用データであるから、携帯電話機が送受信するのに用いられる制御用データであり、本願発明の「無線信号を受信する」のに用いられる「受信設定」を含むものである。
また、引用発明の「RFIC」は「システム制御にからむ制御用データを内部に保持する」ことから、引用発明の「RFIC」が、「システム制御にからむ制御用データ」を「保持する」部を有することは明らかであり、「保持する」部を「記憶部」あるいは「記憶装置」と称することは任意である。
そして、引用発明の「RFIC」は、「システム制御にからむ制御用データを内部に保持するタイプのRFIC」は、「電力供給を停止すると、全ての制御用データが消滅」することから、「システム制御にからむ制御用データ」を「保持する」部である「記憶部」あるいは「記憶装置」は、「揮発性」といえる。
3 引用発明の「携帯電話機等の携帯端末装置」は、本願発明の「無線通信機器」に対応する。

したがって、本願発明と引用発明とは、次の点で一致ないし相違する。
一致点:
「 受信設定を記憶している記憶部を有し、前記記憶部に記憶されている前記受信設定を用いて無線信号を受信するように、間欠受信する通信部と
を備え、
前記記憶部は、揮発性の記憶装置で構成されている無線通信機器。」

相違点:
1.本願発明は、「周期的に第1の割り込み信号を出力するタイマ」を備え、「前記第1の割り込み信号が入力されると」、「前記第1の割り込み信号の入力タイミングに合わせて」間欠受信するのに対して、引用発明は、当該構成について、特に記載されていない点。
2.「受信設定を記憶している記憶部」について、本願発明は、「制御部の起動時に前記制御部から出力される」受信設定を記憶しているのに対して、引用発明は、当該構成が明記されていない点。

第6 判断
上記相違点について、判断する。
相違点1について、
上記周知技術1にあるように、「周期的に割り込み信号を出力する間欠受信タイマからの割り込み信号を受けて、携帯電話装置のデータ受信・処理部は間欠受信すること」は、周知である。
そして、引用発明の「間欠受信する通信部」で間欠受信を行うために、周知技術1を適用して、「周期的に第1の割り込み信号を出力するタイマ」を備え、「第1の割り込み信号が入力されると」、「第1の割り込み信号の入力タイミングに合わせて間欠受信」を行うことは、当業者が容易になし得る事項である。

相違点2について、
上記周知技術2である「無線端末装置の電源がオンとなった時に、制御部が無線部であるRF-ICへパラメータを設定すること」は、「制御部」が「無線部であるRF-IC」へパラメータを設定することから、「制御部」が起動していなければならないことは当然であり、「無線端末装置の電源がオンとな」ったことにより、「制御部」は起動することになるから、「無線端末装置の電源がオンとなった時」は、「制御部の起動時」と相違しない。
そうすると、引用発明に、上記周知技術2を適用して、引用発明が有する、「RFIC」が「システム制御にからむ制御用データ」を「保持する」部を、「制御部の起動時に制御部から出力される」システム制御にからむ制御用データを保持するものとすることは、当業者が容易になし得る事項である。

また、本願発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果、周知技術1及び2の奏する効果から当業者が予測することができた程度のことである。

第7 請求人の主張について
請求人は、令和 元年11月 5日に提出した意見書により、拒絶の理由の理由2(進歩性)について、「本願発明1では、無線通信機器の制御部の起動に際して制御部から出力される受信設定を記憶部に記憶しておくことで、間欠受信を行う毎に制御部が受信設定を通信部に書き込むことなく、受信設定を用いて通信部が間欠受信を実現でき、結果的に、電力消費を抑えることができます(段落〔0030〕)。
一方、引用文献1においては、段落〔0015〕に「図2において、RFIC部12に電力が供給されている状態では、SW2がONであり、SO(データ送出)信号線を介して、SPI制御部16からラッチ回路41およびEEPROM24に、制御用データが出力され」等と記載されているものの、制御部の起動時に制御部が出力する受信設定を記憶部に記憶することは、引用文献1には何ら記載がありません。したがって、制御部の起動に際して制御部から出力される受信設定を記憶部に記憶しておくことで、記憶部に記憶されている受信設定を用いて間欠受信できるようにする上記相違点に係る本願発明1の構成は、引用文献1の記載に触れただけの当業者が到底容易に想到し得るものではありません。」旨を、主張する。

しかしながら、上記第4の1(1)における引用文献1の「背景技術」は、送受信部(通信部)に制御用データを内部に保持するタイプのRFICを用い、制御用データが消失してしまわないように、電源供給を停止する処理を行わない携帯電話機等の携帯端末装置が記載されることから、携帯電話機等の携帯端末装置において、間欠受信を行う毎に制御用データを書き込む処理は行っていない。
そして、上記相違点2で判断したように、引用発明に、上記周知技術2を適用して、引用発明が有する、「RFIC」が「システム制御にからむ制御用データ」を「保持する」部を、「制御部の起動時に制御部から出力される」システム制御にからむ制御用データを保持するものとすることは、当業者が容易になし得る事項であるから、請求人の上記主張は、採用できない。

第8 むすび
以上のとおり、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明及び周知技術1及び2に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2020-02-10 
結審通知日 2020-02-12 
審決日 2020-02-27 
出願番号 特願2014-40964(P2014-40964)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G08B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松平 英  
特許庁審判長 北岡 浩
特許庁審判官 丸山 高政
衣鳩 文彦
発明の名称 無線通信機器  
代理人 特許業務法人北斗特許事務所  

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