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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01K
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A01K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A01K
管理番号 1361409
審判番号 不服2018-16578  
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-12-12 
確定日 2020-04-09 
事件の表示 特願2016-572226「爆発物及びその他の特殊目的物の発見方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月19日国際公開、WO2015/174888、平成29年 5月25日国内公表、特表2017-512490〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)3月23日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2014年(平成26年)5月13日 ロシア)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年 3月 8日 :翻訳文提出
平成29年 8月 7日付け:拒絶理由通知
平成29年11月15日 :意見書・手続補正書提出
平成30年 1月16日付け:拒絶理由通知(最後)
平成30年 8月29日付け:拒絶査定
平成30年12月12日 :審判請求書・手続補正書提出


第2 平成30年12月12日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年12月12日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。


[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のとおり補正された。(下線は補正箇所を示す。)
「探知犬を使用した爆発物及びその他の特定目的物の発見方法であって、
呼吸センサー、ECGセンサー、EEGセンサー、センサー接続用アダプター、ポリグラフ増幅器、および、WiFi無線ネットワークを備えた、探知犬の精神生理学的指標を記録するためのシステムを探知犬に設置し、探知犬の近くかつ、WiFi無線ネットワークが有効な領域内に、WiFi無線ネットワークに接続可能な設定がなされた移動式コンピューターを配置するステップ、
検査対象物のにおいのサンプルを用いずに、精神生理学的指標を記録するためのシステムを使用して、通常の精神生理学状態にある探知犬の複合的な精神生理学的反応を検知、記憶するステップ、
検査対象物の探知検査を行う前に、嗅覚測定器により爆発物又は他の特定目的物の臭いの濃度が与えられ、探知犬が与えられた濃度のにおいのサンプルのそばに連れてこられ、探知犬の行動の変化によって、探知犬が臭いの感知について下した決定を判別し、同時に与えられた濃度の臭いを探知した探知犬の複合的な精神生理学的反応が前記移動式コンピューターの記憶装置に判別及び記憶されるステップ、
検査対象物の探知検査中に、探知犬に付き添うハンドラーによって、探知犬の行動が視覚的に観察され、与えられた濃度の臭いを探知した探知犬の現在の複合的な精神生理学的反応が前記移動式コンピューターの記憶装置に判別及び記憶されるステップ、
探知犬の現在の複合的な精神生理学的反応を、以前にコンピューターの記憶装置に記憶していたものと比較し、反応を比較した結果により、探知犬が爆発物及び/又はその他の特定目的物を発見したか否かの結論を下すステップ、を含む発見方法。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成29年11月15日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「探知犬を使用した爆発物及びその他の特定目的物の発見方法であって、その際に前記探知犬による探知検査がハンドラーに付き添われて遂行されるものであり、前記探知犬の行動の変化が視覚的に追跡されるものであり、また前記探知犬の行動が変化した際に爆発物及びその他の特定目的物の存在が判定されるものであって、
対象物の探知検査を行う前に前記探知犬の爆発物及びその他の特定目的物の一定の濃度の臭いの感知に対する複合的な精神生理学的反応を判定し、
対象物の探知検査中に前記探知犬の行動が変化した際に、前記探知犬の複合的な精神生理学的反応を判定し、前記精神生理学的反応を、前もって判定された臭いを感知した際のものと比較し、及びその比較結果により前記探知犬が爆発物及び特定目的物を発見したか否かの結論を下す方法であって、
前記精神生理学的反応の判定が、受動型の呼吸センサー、ECGセンサーにより、呼吸、心電図を測定し、能動型のEEGセンサーにより脳波を測定することで行われること特徴とした発見方法。」

2 補正の適否
(1)補正の目的について
上記1の請求項1に係る本件補正の目的について検討する。
ア まず、本件補正前と本件補正後の請求項1の記載について比較すると、本件補正前の「その際に前記探知犬による探知検査がハンドラーに付き添われて遂行されるものであり」は、本件補正後の「検査対象物の探知検査中に、探知犬に付き添うハンドラーによって」と、表現が相違するものの、実質的に同じであって、以下同様に、
「前記探知犬の行動の変化が視覚的に追跡されるものであり」は、「探知犬の行動が視覚的に観察され」と、
「前記探知犬の行動が変化した際に爆発物及びその他の特定目的物の存在が判定されるものであって」は、「探知犬に付き添うハンドラーによって、探知犬の行動が視覚的に観察され、」「探知犬が爆発物及び/又はその他の特定目的物を発見したか否かの結論を下す」ことと、表現が相違するものの、実質的に同じである。
また、本件補正前の「受動型の呼吸センサー、ECGセンサー」と、「能動型のEEGセンサー」は、それぞれ、本件補正後の「呼吸センサー、ECGセンサー」と、「EEGセンサー」と実質的に同じものであって、「呼吸センサー、ECGセンサー」と「EEGセンサー」で測定されたものは、「精神生理学的反応」であるから、本件補正前の「前記精神生理学的反応の判定が、受動型の呼吸センサー、ECGセンサーにより、呼吸、心電図を測定し、能動型のEEGセンサーにより脳波を測定することで行われること」は、本件補正後の「探知犬の現在の複合的な精神生理学的反応を、以前にコンピューターの記憶装置に記憶していたものと比較し、反応を比較した結果により、探知犬が爆発物及び/又はその他の特定目的物を発見したか否かの結論を下す」ことと、表現が相違するものの、実質的に同じである。

イ また、補正後の請求項1に係る発明は、補正前の請求項1に係る発明について、以下(ア)?(エ)の限定を加えている。
(ア)「呼吸センサー、ECGセンサー、EEGセンサー、センサー接続用アダプター、ポリグラフ増幅器、および、WiFi無線ネットワークを備えた、探知犬の精神生理学的指標を記録するためのシステムを探知犬に設置し、探知犬の近くかつ、WiFi無線ネットワークが有効な領域内に、WiFi無線ネットワークに接続可能な設定がなされた移動式コンピューターを配置するステップ」を加える。
(イ)「検査対象物のにおいのサンプルを用いずに、精神生理学的指標を記録するためのシステムを使用して、通常の精神生理学状態にある探知犬の複合的な精神生理学的反応を検知、記憶するステップ」を加える。
(ウ)「対象物の探知検査を行う前に前記探知犬の爆発物及びその他の特定目的物の一定の濃度の臭いの感知に対する複合的な精神生理学的反応を判定し」を、「検査対象物の探知検査を行う前に、嗅覚測定器により爆発物又は他の特定目的物の臭いの濃度が与えられ、探知犬が与えられた濃度のにおいのサンプルのそばに連れてこられ、探知犬の行動の変化によって、探知犬が臭いの感知について下した決定を判別し、同時に与えられた濃度の臭いを探知した探知犬の現在の複合的な精神生理学的反応が前記移動式コンピューターの記憶装置に判別及び記憶される」と、表現を変えた上で、そのうち、「探知犬の行動の変化によって、探知犬が臭いの感知について下した決定を判別し」との限定を加え、さらに、該「判別及び記憶される」ことについても、「探知犬の行動の変化によ」るものとの限定を加える。
(エ)「対象物の探知検査中に前記探知犬の行動が変化した際に、前記探知犬の複合的な精神生理学的反応を判定し、前記精神生理学的反応を、前もって判定された臭いを感知した際のものと比較し、及びその比較結果により前記探知犬が爆発物及び特定目的物を発見したか否かの結論を下す」ことを、「検査対象物の探知検査中に、探知犬に付き添うハンドラーによって、探知犬の行動が視覚的に観察され、与えられた濃度の臭いを探知した探知犬の現在の複合的な精神生理学的反応が前記移動式コンピューターの記憶装置に判別及び記憶され」「、探知犬の現在の複合的な精神生理学的反応を、以前にコンピューターの記憶装置に記憶していたものと比較し、反応を比較した結果により、探知犬が爆発物及び/又はその他の特定目的物を発見したか否かの結論を下す」ことと、表現を変えた上で、そのうち、比較される「対象物の探知検査中に前記探知犬の行動が変化した際に、前記探知犬の複合的な精神生理学的反応」について、上記(イ)で記憶した精神生理学的反応を追加して限定する。

ウ 上記アの比較した記載事項、及び上記イの限定事項からみて、表現が相違する点において、明瞭でない記載の釈明を目的とする補正事項があるとしても、補正後の請求項1に係る発明は、補正前の請求項1に係る発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、構成を付加限定する補正を行うものであって、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、上記請求項1に係る本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とする補正事項を含むものである。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。

(2)補正発明
補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(3)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である、米国特許出願公開第2008/0163671号明細書(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(下線は審決で付した。以下同様。また、以下の翻訳文は当審で作成した。)。
(ア)段落[0001]
「1.Field of the Invention」
(翻訳文:1.発明の分野)

(イ)段落[0002]
「The present invention pertains to the art of detection systems and, more particularly, to a detection system that employs trained/in training animals electronically linked to a handler/analyzer.」
(翻訳文:この発明は探知システム、特に、ハンドラー/分析器と電子的に連結された訓練された/訓練中の動物を用いる探知システムに関する。)

(ウ)段落[0003]
「2.Discussion of the Prior Art」
(翻訳文:2.従来の技術)

(エ)段落[0004]
「The ability to rapidly and effectively detect target substances is a foundational effort of law enforcement and commercial efforts around the world. Trafficking of narcotics, other banned substances and even people is on the rise. Drugs, weapons, currency, banned foodstuffs, chemicals and/or illegal aliens are transported across national borders on a daily basis. In addition to cross border trafficking, many illegal substances are produced/grown within national borders.・・・」
(翻訳文:迅速かつ効果的に標的物質を探知する能力は、法律の施行の基本的な取り組みや、世界中の商業的取り組みである。麻薬、その他の禁止物質、人の違法な売買は、増加している。薬、武器、通貨、禁止された食料、化学物質そして/あるいは不法在留外国人が、毎日、国境を超えてやって来る。国境を越えた違法取引に加えて、多くの非合法の物質が国境内で生産され/増加している。)

(オ)段落[0005]
「・・・The method used in common by all these agencies and organizations is the use of detector dogs or canines trained to identify target odors associated with banned substances, other illegal activity or substances of interest.」
(翻訳文:これらのすべての政府機関や団体において一般的に使用される方法は、禁止物質、その他の違法行為、重大な物質に関連した対象臭を識別するために訓練された探知犬または犬を使用することである。)

(カ)段落[0007]
「Equally as important, all dogs are trained by humans to perform their conditioned response to odor stimulus. Training, especially initial training, is conducted on leash, with the trainer observing the dog carefully so as to time reinforcement or reward simultaneously with the initial change in behavior by the dog. When those initial changes are not observed or are misinterpreted, the reinforcement given to the dog is inaccurate or untimely. Either result creates confusion or erroneous training for the dog, increasing the time required to train the dog, creating the opportunity for spontaneous recovery of inaccurate training and in some case causing the dog to become a training failure.」
(翻訳文:同様に重要なことは、すべての犬はにおいの刺激に条件反射を行なうことができるように人によって訓練される。トレーニング、特に最初のトレーニングは、犬の行動の最初の変化と同時に褒美を与えて反応を促すように、トレーナーが慎重に注意深く犬を観察しながら、ひもに繋いで訓練される。これらの最初の変化が気付かれないか、あるいは誤解されるならば、犬の反応を促すことは、不正確か、時期尚早であった。結果的に、犬に混乱と誤った訓練を与え、犬を訓練するのに必要な時間を増大させ、誤った訓練を自発的に回復する機会を増やし、場合によっては、訓練の失敗を引き起こす。)

(キ)段落[0008]
「Based on the above, there exists a need for improvements in using canines, or other animals, as detection systems. More specifically, there exists a need for a detection system that aides a handler's/trainer's understanding and interpretation of response signals exhibited by the trained canine or other animal.」
(翻訳文:上記に基づいて、犬、あるいは他の動物を、探知システムとして用いることにおいて改良が必要である。もっと特定すると、訓練された犬あるいは他の動物がみせる反応の合図に対して、ハンドラーやトレーナーの理解や判断を助ける探知システムが必要である。)

(ク)[0009]
「The present invention is directed to a detection system which uses the biological responses of conditioned animals, most preferably canines. In accordance with a simple form of the invention, the detection system includes a mobile unit in the form of a trained/in training canine carrying a portable electronics package. The canine is trained to search for target odors that originate from various substances such as drugs, weapons, chemicals, people and the like. Once a target odor is detected, data generated from the canine is either stored in the portable electronics package for later review or forwarded to a remote unit for immediate evaluation. In this manner, an additional level of analysis is performed to aide in evaluating the canine's response.
(翻訳文:本発明は、訓練された動物、より好ましくは、犬の生物学的な反応を用いた探知システムに関する。発明の簡単な形態によれば、検知システムは、訓練された/訓練中の犬が持ち運ぶ携帯電子装置パッケージの形式のモバイルユニットを含む。犬は薬剤、武器、化学物質、人等のような種々の物質から生じる対象臭を捜すように訓練される。対象臭が探知されると、犬から生み出されたデータは、後の検討用に携帯電子機器パッケージに保存されるか、即時の評価のために、リモートユニットに転送される。このようにして、犬の反応を評価することを支援するために、付加的なレベルの解析が実行される。)

(ケ)段落[0010]
「The portable electronics package is linked to the remote unit through a wireless interface. Preferably, the portable electronics package includes a position indication unit, a communications unit and a sensor unit. The position indicating unit is most preferably a GPS, which, in accordance with one aspect of the invention, is supplemented with an Inertial Navigation System or INS unit for increased accuracy. Alternative position indicating systems, such as RF triangulation, can also be used. The communications unit includes both a local portion for communicating with the trained/in training canine and a remote portion for communicating with the remote unit. The sensor unit preferably includes a biometric sensor that receives input from the canine. In addition, the sensor unit may also include a body position sensor. Most preferably, the sensor unit includes both the biometric sensor and body position sensor. In addition to the above, the sensor unit may also be provided with additional sensor feeds, such as video signals. In any event, the body position sensor identifies changes in the canines posture, such as sitting, laying or formation, which are indicative of a trained/in-training response to target odor. The biometric sensor identifies respiratory patterns, temperature variations and the like, which would be indicative of both trained/in-training and natural responses to target odors. The data is either stored in memory or passed to the remote unit for analysis.」
(翻訳文:携帯電子機器パッケージは無線インターフェースを介してリモートユニットに接続されている。好ましくは、携帯電子機器パッケージは、位置表示ユニット、通信ユニットとセンサーユニットを含む。この位置表示ユニットは、本発明の一態様によれば、より精度を上げるために、慣性誘導システムまたは慣性誘導システムユニットが追加されたGPSが最も好ましい。RF(高周波)三角測量のような代わりの位置表示システムもまた用いることができる。通信ユニットは、訓練された/訓練中の犬と通信するローカル部と、リモートユニットと通信する遠隔部の両方を含む。センサーユニットは、好ましくは、犬からの入力を受信する生体センサーを含む。また、センサーユニットは身体位置センサーを含むこともできる。最も好ましくは、センサーユニットは生体センサーと身体位置センサーの両方を備える。上記に加えて、センサーユニットは、ビデオ信号を送信する追加のセンサーを備えてもよい。いずれにしても、身体位置センサーは、対象臭に対する訓練された/訓練中の反応を示す、座る、横たわる等の犬の姿勢の変化を識別する。生体センサーは、対象臭に対する訓練された/訓練中及び天然の反応を表すような、呼吸パターンや体温変化などを識別します。データはメモリに記憶されるか、分析のためにリモートユニットに送られる。)

(コ)段落[0011]
「・・・The remote unit enables a system user, such as a handler, to effectively interpret data received from the trained/in training canine for an indication of the presence of a target odor. The data obtained from the sensor unit is compared against the detection algorithms to determine whether the trained/in-training canine has sensed a target odor. ・・・
The remote unit can also be linked to a central database to download, upgrade and refine the detection algorithms and/or seek additional experience/expertise interpreting signals received from the canine.」
(翻訳文:リモートユニットは、ハンドラーなどのシステムユーザーに、対象臭の存在を示すための、訓練された/訓練中の犬から受け取ったデータを、効果的に解析することができるようにする。センサーユニットから得られたデータは、訓練された/訓練中の犬が対象臭を感じたかどうか決定するために検知アルゴリズムを基準にして比較される。・・・
また、リモートユニットは、検知アルゴリズムをダウンロード、アップグレード及び洗練するために、及び/又は、犬から受信した信号を解釈する追加の経験/知識を得るために、中央データベースに接続することができる。)

(サ)段落[0016]
「With initial reference to FIG. 1 , a detection system constructed in accordance with the present invention is generally indicated at 2 . Detection system 2 includes a mobile detection unit 4 in the form of one or more trained/in training canines illustrated at 5 and 6 carrying respective portable electronics packages 8 and 9 . Portable electronics packages 8 and 9 are correspondingly constructed but for the means of attachment to canines 5 and 6 . That is, electronics package 8 is attached to a collar 12 on canine 5 , while electronics package 9 is attached to a body harness 14 mounted to canine 6 . ・・・
In any case, each electronics package 8 , 9 is linked to a remote unit 16 . More specifically, each electronic package 8 , 9 is linked to remote unit 16 through various known wireless communication protocols, with remote unit 16 receiving signals through an antenna 24 . ・・・」
(翻訳文:まず、図1を参照すると、本発明に従って構成された探知システムは、一般的に2で示される。探知システム2は、携帯電子機器パッケージ8、9をそれぞれ持ち運ぶ、5、6で示される1又は複数の訓練された/訓練中のイヌの形態となる携帯検知ユニット4を含む。携帯電子機器パッケージ8、9は、同様に、イヌ5、6への取付手段が構成されている。すなわち、電子機器パッケージ8は、犬5の首輪12に取り付けられ、他方、電子機器パッケージ9は、イヌ6のハーネス14に取り付けられている。・・・
いずれの場合も、各電子機器パッケージ8、9がリモートユニット16に接続されている。具体的には、各電子機器パッケージ8、9は、様々な既知の無線通信プロトコルを介して、リモートユニット16に接続され、アンテナ24を通して信号を受信するリモートユニット16を備える。)

(シ)段落[0017]
「At this point, a detailed description will be made of portable electronics package 8 provided on canine 5 as depicted in FIG. 2 with an understanding that electronics package 9 is correspondingly constructed. As shown, electronics package 8 includes a controller or CPU 26 is having a memory 27 and which is linked to a Global Positioning System (GPS) 29 . GPS 29 is linked to an inertial navigation system (INS) 31 that is provided to supplement GPS signals. In addition, controller 26 is linked to a communications unit 35 having both a local communication element 38 and a remote communication element 41 . Finally, controller 26 is also linked to a sensor unit 48 having a first or body position sensor 50 and a second or biometric sensor 54 . Sensor unit 48 could also be provided with additional sensors, such as a video feed (not shown). Body position sensor 50 signals remote unit 16 whether canine 5 is standing, sitting or laying down as well as other body postures, while biometric sensor 54 provides input regarding biometric signals from canine 5 , such as respiratory patterns, temperature variations and the like. As will be discussed more fully below, data received from sensors 50 and 54 is sent to remote unit 16 which employs various detection algorithms to analyze the signals received from sensor 50 and 54 . The analyzed data is then reviewed by a trained handler 70 (see FIG. 3 ) to determine whether canine 5 actually senses the presence of a target odor or has simply made an erroneous indication. Canine 5 can be trained to detect explosives, lost people, molds, pesticides or evidence of a crime such as accelerants used to commit arson. Of course, canine 5 could be trained to detect numerous other target odors depending upon various perceived needs. Alternatively, or in addition, the data is simply stored in memory 27 and retrieved for later review. The data stored in memory 27 can also be transmitted to a central depository where the detection algorithms can be continually refined/updated. As stated above in referring to FIG. 1 , electronic package 8 is connected through a wireless link to remote unit 16 . Towards that end, remote unit 16 is provided with a CPU 80 that is connected to a GPS/INS analysis portion 84 , a data analysis portion 88 , a communication portion 92 and a user interface 96 . User interface 96 includes a display 98 and a keyboard 100 . In the preferred form of the invention, remote unit 16 is constituted by a handheld device, such as a PDA, Blackberry^(TM) or the like. However, it should be readily understood that remote unit 16 could take on various other forms, such as, for example, a personal computer.」
(翻訳文:ここで、図2に図示されているように、犬5に備えられた携帯電子機器パッケージ8が詳細に説明され、電子機器パッケージ8が同様に構成されることが理解できる。図示のように、電子機器パッケージ8はコントローラー又はCPU26を含んでおり、CPU26はメモリ27を備え、GPS29に接続される。GPS29は、GPS信号を補うために設けられるINS31に接続される。加えて、コントローラー26は、ローカル通信部38と遠隔通信部41の両方を持つ通信ユニット35に接続される。最終的に、コントローラー26は、第1に身体位置センサー50を、第2に生体センサー54を有するセンサーユニット48に連結される。センサーユニット48もまた、(図示されていない)ビデオ放送のような追加のセンサーを備える。身体位置センサー50は、犬5が立っていること、座っていること、横になっていることと同様のその他の姿勢の変化の信号をリモートユニット16に送り、生体センサー54は、呼吸パターンや体温変化等の犬5からの生体信号を与える。以下で十分に説明したように、センサー50及び54から受け取ったデータは、センサー50及び54から受け取った信号を解析する種々の検知アルゴリズムを利用するリモートユニット16に送られる。分析されたデータは、犬5が実際に対象臭の存在を感知するか、あるいは単に間違えたのかを決定するために、訓練されたハンドラーによって再検討される(図3参照)。爆発物、失踪人、カビ、殺虫剤、放火を犯すために使われる燃焼促進剤のような犯罪の証拠、を発見するために、犬5は訓練することができる。もちろん、犬5は、種々の認識された必要性に応じて、多数の他の対象臭を検出するように訓練することができる。あるいは、加えて、データは、単にメモリ27に保存されて、そして後の検討のために検索されます。メモリ27に保存されたデータは、中央の保管所に伝送され、そこで、検知アルゴリズムが頻繁に改良/更新される。図1を参照して上述したように、電子パッケージ8は無線リンクを通してリモートユニット16に接続している。リモートユニット16は、GPS/INS分析部分84、データ分析部88、通信部92及びユーザインタフェース96に接続されたCPU80を備えている。ユーザインタフェース96がディスプレイ98とキーボード100を含んでいる。発明の好ましい形態において、リモートユニット16は、PDA、ブラックベリー等の携帯端末で構成される。しかしながら、リモートユニット16が、例えば、パーソナル・コンピュータのような、種々の他の形態をとることができることは容易に理解される。)

(ス)段落[0019]
「・・・For example, when in the presence of a target odor, canine 5 may become extremely active or signal through some other manner, that a target odor is present. However, on occasion, handler 70 may misinterpret signals exhibited by canine 5 , or in the event that line-of-sight is lost, simply not see the signals. Therefore, body position sensor 50 can signal whether canine 5 has sat or laid down or otherwise indicated through a change in posture or behavior the presence of a target odor. Biometric sensors may provide other indicators of the presence of target odor. On other occasions, canine 5 might provide a false indication of a target odor in order to receive a treat from handler 70 . Therefore, confirmatory information to increase the overall efficacy of detection system 2 is also conveyed through signals received from position sensor 50 , biometric sensor 54 , or other sensor inputs.」
(翻訳文:例えば、対象臭が存在するとき、犬5は非常に活発になるか、あるいは、何らかの態度を通して、対象臭が存在しているというシグナルを出すかもしれない。しかしながら、時々、ハンドラー70が犬5によって示されたシグナルを誤解するか、あるいは目をそらした際、ただシグナルを見ていないかもしれない。そのために、身体位置センサー50は、犬5が座ったのか、横になったのか、あるいは姿勢や行動の変更を通して、対象臭の存在を示しているのかを、合図することができる。生体センサーが対象臭の存在の他の指標を提供するかもしれない。他の場合において、犬5がハンドラー70からほうびを受け取るために、対象臭の偽の兆候を与えるかもしれない。そのために、検知システム2の総合的な効果を増大させる確認の情報が、位置センサー50、生体センサー54、あるいは他のセンサーから入力する信号を通して、ポジションから受け取られたシグナルを通して、同じく伝達される。)

(セ)段落[0020]
「Remote unit 16 receives and stores data from sensors 50 and 54 . The data is processed by pre-stored software or detection algorithms to determine whether canine 5 has had a physical or behavioral reaction to a target odor. The processed data is then reviewed by user/handler 70 to confirm signals exhibited by canine 5 . Having the ability to sense and analyze the responses of canine 5 through body movement, breathing patterns and/or temperature changes, increases the overall accuracy of detection system 2 . Thus, in addition to determining the posture of canine 5 through body position sensor 50 , biometric sensor 54 is employed to sense respiratory or sniffing patterns, heart rate, body temperature and the like. In this manner, if handler 70 has any doubt whether canine 5 has sensed a target odor, a quick glance at remote unit 16 can provide a reliable confirmation, thereby increasing the handler's confidence that a target odor is indicated. ・・・」
(翻訳文:リモートユニット16は、センサー50及び54からのデータを受信して格納する。データは、犬5が対象臭への身体的または行動的な反応を有していたかどうかを決定するために、予め格納されたソフトウエアまたは検知アルゴリズムによって処理される。処理されたデータは、犬5によって示された信号を確認するために、ユーザー/ハンドラー70によって再検討される。体の動き、呼吸パターンそして/あるいは体温変化を通して、犬5の反応を感じ、そして分析する能力を持っていることは、検知システム2の全体的な精度を高める。それで、身体位置センサー50を通して犬5の姿勢を決定することに加えて、生体センサー54が呼吸または鼻で吸うパターン、心拍数、体温等を感じるために利用される。この方法で、もし犬5が対象臭を感知したかどうかハンドラー70が疑うようなら、リモートユニット16を一瞥しただけで、信頼できる確認が得られ、対象臭を知らせているというハンドラーの信頼を高めることとなる。

(ソ)段落[0021]
「At this point it should be realized that experienced dog handlers listen to their dogs for characteristic patterns of sniffing that indicate the presence of a target odor. Sniff patterns are established with the dog's active search for target odors and these patterns change based on the dog's proximity to a target odor. Trained/in training canines exhibit respiratory and distinct sniffing patterns when in the proximity of a target odor. Both a temperature differential of expired and inhaled air and a sound of sniffing are employed to interpretive sniffing patterns under various conditions.・・・」
(翻訳文:この点で、経験豊かな犬のハンドラーが、対象臭の存在を示す鼻で吸う特有のパターンとして、犬に耳を傾けるようになることが達成される。鼻で吸うパターンが対象臭の犬の積極的な捜索で確立され、そしてこれらのパターンは、対象臭に犬が近づくことに基づいて変化する。訓練された/訓練中の犬は、対象臭に接近したとき、呼吸や明確な鼻で吸うパターンをみせる。呼気及び吸気された空気の温度差、及び鼻で吸う音が、種々の条件の下で、鼻で吸うパターンの検出に利用される。・・・)

(タ)上記(ア)ないし(ソ)からみて、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認める。
「爆発物、薬剤、武器、化学物質、人等のような種々の物質から生じる対象臭を捜すように訓練された犬の生物学的な反応を用いた探知方法であって、
探知システム2は、携帯電子機器パッケージ8、9を持ち運ぶ、訓練された/訓練中の犬5、6の形態となる携帯検知ユニット4を含み、
携帯電子機器パッケージ8は、犬5の首輪12に取り付けられ、他方、電子機器パッケージ9は、犬6のハーネス14に取り付けられ、いずれの場合も、各電子機器パッケージ8、9は、無線通信プロトコルを介して、リモートユニット16に接続されており、
電子機器パッケージ8はコントローラー又はCPU26を含んでおり、コントローラー26は、身体位置センサー50、生体センサー54を有するセンサーユニット48に連結され、
身体位置センサー50は、犬5が立っていること、座っていること、横になっていることと同様のその他の姿勢の変化の信号をリモートユニット16に送り、
生体センサー54は、呼吸パターンや体温変化等の犬5からの生体信号を与えるものであって、
リモートユニット16は、PDA、ブラックベリー等の携帯端末で構成されており、
リモートユニット16において、センサー50及び54からのデータを受信して格納され、
データは、犬5が対象臭への身体的または行動的な反応を有していたかどうかを決定するために、予め格納され、頻繁に改良/更新されるソフトウエアまたは検知アルゴリズムによって処理され、検知アルゴリズムを基準にして比較され、それで、身体位置センサー50を通して犬5の姿勢を決定することに加えて、生体センサー54が呼吸または鼻で吸うパターン、心拍数、体温等を感じるために利用され、
対象臭が存在するとき、犬5は非常に活発になるか、あるいは、何らかの態度を通して、対象臭が存在しているというシグナルを出すかもしれないが、時々、ハンドラー70が犬5によって示されたシグナルを誤解するか、あるいは目をそらした際、ただシグナルを見ていないかもしれないので、身体位置センサー50は、犬5が座ったのか、横になったのか、あるいは姿勢や行動の変更を通して、対象臭の存在を示しているのかを、合図することができ、生体センサーが対象臭の存在の他の指標を提供するかもしれず、また、犬5が対象臭の偽の兆候を与えるかもしれないことから、リモートユニット16を一瞥しただけで、信頼できる確認が得られ、対象臭を知らせているというハンドラーの信頼を高めることとなる、
探知方法。」

イ 引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開2008-272163号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。
(ア)「【0025】
実施の形態1.
図1は実施の形態1に係る生体情報モニターシステムの構成図である。図1において、本実施の形態1に係る生体情報モニターシステムは、少なくとも1つ以上の生体情報送信端末10と、生体情報計測装置20とにより構成される。生体情報送信端末10は、人又は動物(以下「被験体1」という。)に装着され、例えば、被験体1の健康管理、トレーニング解析、リハビリなどの為に被験体1の生体情報を取得して当該生体情報を送信するものである。生体情報計測装置20は、生体情報送信端末10と無線通信を行い、受信した生体情報を取得して、情報の蓄積・処理を行い、各種生体信号又は体動信号の数値データ又は図形データとしてモニタ(後述)等に表示する。また、生体情報送信端末10を被験体1に複数装着する場合は、複数の生体情報送信端末10と生体情報計測装置20とが、例えば、時分割多重接続(Time Division Multiple Access:以下「TDMA」ともいう。)などの多元接続方式を用いて無線通信を行う。
【0026】
図2は実施の形態1に係る生体情報送信端末の構成図である。図2において、生体情報送信端末10は、当該生体情報送信端末10が装着された被験体1の例えば、筋電図、心電図、呼吸波形、脳波などをモニターするための生体信号又は被験体1の体動状態をモニターするための加速度データなどの体動信号の少なくとも1種類以上を検出するセンサ部11と、生体情報を記憶するメモリ121(記憶部)を有し、センサ部11で検出された信号をデジタル情報に変換した後、逐次又は所定のタイミングでデータ送信する電子回路(マイクロプロセッサ)などで構成される端末制御部12と、端末制御部12から入力された送信データを無線信号に変調し、アンテナ14を介して送信する端末無線部13と、当該生体情報送信端末10の各構成部に電力を供給する電池15(例えば、ボタン電池)とを備えている。」

(イ)「【0067】
尚、上記実施の形態1及び2においては、被験体1として動物(馬、犬)の場合を例示したが、本発明はこれに限らず、例えばバスやタクシー運転手の走行位置の情報と生体情報を遠隔地の指令センター等で収集することができる。さらに、留守番中のペットの生体情報を遠隔地でモニタすることも可能である。その他、本発明は上記実施の形態に示したものに限定されるものではなく、この発明思想内における種々の変形をも含むことはいうまでもない。」

ウ 引用文献3
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開2008-131862号公報には、次の記載がある。
(ア)「【0022】
ここで、ペットとは、犬や猫はもとより、哺乳類、鳥類又は爬虫類などの飼い主の身近においてかわいがることを目的に飼う動物をいう。また、ペットに関する情報とは、ペットについて飼い主が把握している情報、又はペットの状態を測定若しくは観察して得られる情報であり、例えば、ペットの種類、品種、性別、体長、体高、体重、年齢、生年月日、原産地、生息地、出生地、病歴、既往歴、家族歴、体温、血圧値、脈拍数、心拍数、呼吸数、脳波、心電位、筋電位、体脂肪率、血液成分、排泄物成分、唾液成分、発汗成分、排気成分、臭い、食事量、排泄量、水分補給量、発汗量、排気量、歩数、運動量、行動範囲、位置、動作、性格、習性、睡眠時間、食事時間、水分補給時間、就寝時間又は起床時間などが挙げられる。
【0023】
検出手段20は、ペットに接触してこのペットの状態(例えば、体長、体高、体重、体温、血圧値、脈拍数、心拍数、呼吸数、脳波、心電位、筋電位、体脂肪率若しくは歩数など)を検出する手段、ペットを撮像してこのペットの状態(例えば、動作、位置、運動量若しくは行動範囲など)を検出する手段、ペットが滞在する空間に設置してこのペットの状態(例えば、位置、行動範囲など)を検出する手段、ペットから採取した採取物からこのペットの状態(例えば、血液成分、排泄物成分、唾液成分、発汗成分、排気成分若しくは臭いなど)を検出する手段、又はペットが摂取した摂取量(例えば、食事量若しくは水分補給量など)若しくは排出した排出量(例えば、排泄量、発汗量若しくは排気量など)からこのペットの状態を検出する手段である。」

(イ)「【0026】
心理状態識別手段33は、検出手段20から出力される状態データ及び種別特徴抽出手段32から出力される種別特徴データに基づき、ペットの心理状態を識別する。なお、検出手段20から出力される状態データは、例えば、ペットの体温、血圧値、脈拍数、心拍数、呼吸数、脳波、心電位、筋電位又は動作などを示すデータであり、種別特徴データのうちの正常な状態データと比較して差異が生じているのであれば、ペットの心理状態に何らかの異常が発生しており、差異が生じている状態項目及び程度によって心理状態を識別する。特に、ペットの脳波を測定することで、他の周波数成分に比べてアルファ波の占める割合が高いのであれば、安静時の脳波であり、ペットがリラックスした心理状態であると識別する。」

(ウ)「【0034】
図4において、ペット300に接触する検出手段20は、ペット300の体温、血圧値、脈拍数、心拍数、呼吸数、筋電位、心電位、脳波、歩数又は位置を、リアルタイムに検出するためのセンサであり、ペット300に装着した首環21aに内蔵している。なお、ペット300に接触する検出手段20は、足環若しくは装身具に内蔵、又はペットの体内に埋設してもよいが、ペット300に違和感を与えない検出手段20を用いることが好ましい。また、ペット300に装着した首環21aは図示しない送信機を内蔵しており、センサで検出したデータをペット施設200に配置した受信機21bに送信する。
【0035】
また、ペット300を撮像する検出手段20は、ペット施設200に配置した撮像装置22などであって、ペット300の動画像を撮像することで、ペットの動作、運動量、位置、行動範囲、習性又は性格を検出する。
【0036】
受信機21bで受信したペット300の状態データ、撮像装置22で撮像したペット300の状態データを、インターネット網60を介して管理サーバー30に送信される。なお、図1において、管理サーバー30は、種別特徴格納手段31、種別特徴抽出手段32、心理状態識別手段33、生理状態識別手段34、個別特徴判別手段35、処方格納手段36及び処方判別手段37に相当し、入力手段10は、管理者端末装置70の図示しないキーボード又はマウスに相当する。」

エ 引用文献4
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開2008-173220号公報には、次の記載がある。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、食物、麻薬、危険物、テロ爆発物や人等の目標探索対象を、犬等の動物の嗅覚に基づく脳波を利用して探索するようにした探索装置に関する。」

(イ)「【0017】
図1は、本発明に係る探索装置の一実施形態を示している。この探索装置は、携帯可能なユニットとして構成されており、当該探索装置は、脳波センサ10を備えている。この脳波センサ10は、探索用の犬のように養成されていない普通の犬Dの頭部Dhの外表面に着脱可能に装着されて用いられる。なお、本実施形態では、犬Dは、例えば、5歳のオスの雑種犬であるものとする。」
【0018】
当該脳波センサ10は、センサ基板(図示しない)と、このセンサ基板の裏面から延出する複数の体表面電極(図示しない)とを有している。従って、脳波センサ10は、上記各体表面電極を犬Dの頭部Dhの外表面に当てるようにして、上記センサ基板にて、犬Dの頭部Dhに装着される。これにより、当該脳波センサ10は、その複数の体表面電極でもって、犬Dの嗅脳の脳波を検出し、検出脳波信号を発生する。
【0019】
また、当該探索装置は、図1にて示すごとく、マイクロコンピュータ20、駆動回路30及びディスプレイ40を備えている。
【0020】
マイクロコンピュータ20は、図2にて示すフローチャートに従い、探索プログラムを実行し、この実行中において、脳波センサ10の検出脳波信号に基づき、脳波解析処理、β波含有量作成処理、作成β波含有量と基準β波含有量との比較判定処理、表示データの作成処理及び出力処理等を行う。なお、上記探索プログラムは、マイクロコンピュータ20のROM(図示しない)に予め当該マイクロコンピュータにより読み出し可能に記憶されている。
【0021】
ディスプレイ40は、マイクロコンピュータ20の出力に基づき駆動回路30により駆動されて表示データを表示する。なお、本実施形態では、マイクロコンピュータ20、駆動回路30及びディスプレイ40が、携帯用ノート型パーソナルコンピュータでもって構成されている。従って、脳波センサ10のマイクロコンピュータ20に対する接続端子は、マイクロコンピュータ20のUSBポートに接続される。
【0022】
以上のように構成した本実施形態において、マイクロコンピュータ20が、図2のフローチャートに従い探索プログラムの実行を開始する。ここで、脳波センサ10が、図1にて示すごとく、犬Dの頭部Dhに装着されているものとする。このような状態で、探索者が、目標探索対象Mを探索するために、犬Dを連れて行動するものとする。本実施形態では、目標探索対象Mはドッグフードであるものとする。
【0023】
このような行動の過程においては、犬Dによりその嗅覚でもって感知される臭いが、順次、犬Dの嗅細胞から当該犬Dの嗅脳に信号として伝達され、外部へ伝搬可能な脳波となる。これに伴い、犬Dの脳波の全体が脳波センサ10により検出されて検出脳波信号として発生される。
【0024】
しかして、上記探索プログラムがステップ50に達すると、脳波センサ10からマイクロコンピュータ20に検出脳波信号が入力される。すると、ステップ51において、脳波解析処理がなされる。ここでは、脳波解析がステップ50で入力済みの検出脳波信号に基づき周波数解析でもってなされる。具体的には、図3にて示すような周波数成分と脳波周波数との関係が得られるものとする。本実施形態では、図3にて示すような周波数成分と脳波周波数との関係は、ドッグフードの臭いを特定するものである。なお、図3の縦軸の単位において、V2は、電圧の2乗を表す。
【0025】
ついで、ステップ52において、脳波解析データ作成処理がなされる。ここでは、脳波解析データが、ステップ51にてなされた脳波解析の結果に基づき作成される。具体的には、上述の周波数成分と脳波周波数との関係(図3参照)に基づきβ波含有量が算出される(図5にて棒グラフ1参照)。このことは、上述の周波数成分と脳波周波数との関係(図3参照)に基づきβ波含有量が作成されることを意味する。
【0026】
然る後、次のステップ53において、上述の作成β波含有量が基準β波含有量よりも大きいか否かが判定される。本実施形態において、上記基準β波含有量は次のようにして作成されている。
【0027】
まず、何ら訓練をしていない複数のオスの雑種犬(5歳)を利用して、これらの雑種犬の周囲に感知すべき対象物がないときの当該各雑種犬の脳波を計測し周波数解析を行った。なお、脳波の計測は、日本光電株式会社製AB-611J型高感度増幅器を用い、100(Hz)のサンプリング周期にて4回行った。そして、この計測脳波を、キッセイコムテック株式会社製波形データ収録プログラム(Vital Recorder 2)により取り込んで、キッセイコムテック株式会社製生体情報解析プログラム(BIMUSTAS II)でもって周波数解析による波形解析を行った。これにより、図4にて示すような周波数成分と脳波周波数との関係が得られた。そして、このような周波数成分と脳波周波数との関係に基づき基準β波含有量(図5にて棒グラフ2参照)を求め、当該マイクロコンピュータ20のROMに予め記憶した。
【0028】
しかして、上述の作成β波含有量が基準β波含有量よりも大きければ、ステップ53においてYESと判定される。これに伴い、ステップ54において、目標探索物の臭い有りとの決定処理がなされる。この決定処理に基づき、目標探索物Mの臭い有りと決定される。このことは、目標探索対象Mがドッグフードであることを意味する。
【0029】
すると、ステップ55において、目標探索対象Mであることを表す表示データの作成処理がなされる。この作成処理では、目標探索対象M、即ちドッグフードであることを表す表示データが作成される。これに伴い、ステップ56において、ステップ55で作成した表示データが第1出力信号として発生され、駆動回路30に出力される。
【0030】
このように第1出力信号が駆動回路30に出力されると、ディスプレイ40は、駆動回路30により駆動されて、上記第1出力信号の内容、即ち、目標探索対象Mであるドッグフードを表示する。これにより、探索者は、探索対象Mをドッグフードとして視認し得る。
【0031】
一方、上述のステップ53において、上述の作成β波含有量が基準β波含有量よりも大きくなければ、NOと判定される。これに伴い、ステップ57において、目標探索対象Mの臭い無しとの決定処理がなされる。このことは、上述した行動の過程では、目標探索物Mであるドッグフードが無いことを意味する。
【0032】
ついで、ステップ58において、目標探索対象M無しを表す表示データの作成処理がなされる。ここでは、探索対象Mであるドッグフードが無いことを表す表示データが作成される。これに伴い、ステップ59において、ステップ58で作成した表示データが第2出力信号として発生され、駆動回路30に出力される。
【0033】
このように第2出力信号が駆動回路30に出力されると、ディスプレイ40は、駆動回路30により駆動されて、上記第2出力信号の内容、即ち、探索対象Mであるドッグフードが無いことを表示する。これにより、探索者は、探索対象Mであるドッグフードが無い旨視認し得る。」

(4)引用発明1との対比
補正発明と引用発明1とを対比する。(下線は、審決で付した。)
ア 引用発明1の「対象臭を探すように訓練された犬」、「爆発物」、「薬剤、武器、化学物質、人」、「呼吸パターン」である「犬からの生体信号を与える」「生体センサー54」、「PDA、ブラックベリー等の携帯端末で構成され」た「リモートユニット16」は、それらの構成及び機能からみて、補正発明の「探知犬」、「爆発物」、「その他の特定目的物」、「呼吸センサ-」、「移動式コンピューター」にそれぞれ相当する。
引用発明1の「無線通信プロトコル」と、補正発明の「WiFi無線ネットワーク」とは、「無線ネットワーク」で共通する。
引用発明1の「爆発物、薬剤、武器、化学物質、人等のような種々の物質から生じる対象臭」は、対象臭を探すように訓練する時には、その臭いがどの程度であるのかを理解していないと、犬の反応との関連性が検討できないから、その濃度を測定しておくことは、当業者に自明な事項である。よって、引用発明1の「爆発物、薬剤、武器、化学物質、人等のような種々の物質から生じる対象臭」は、対象臭を探すように訓練する時、つまり「検査対象物の探知検査を行う前に」おいては、補正発明の「嗅覚測定器により爆発物又は他の特定目的物の臭いの濃度が与えられ」ることに相当する。

イ 引用発明1の「爆発物、薬剤、武器、化学物質、人等のような種々の物質から生じる対象臭を捜すように訓練された犬の生物学的な反応を用いた探知方法」は、補正発明の「探知犬を使用した爆発物及びその他の特定目的物の発見方法」に相当する。

ウ 補正発明の「精神生理学的指標」についてみると、本件特許明細書には、「【0011】同様に、2003年8月27日公開、特許文献9、特許文献10「人の精神生理学的指標の測定機器」より、心収縮数計と呼吸数形、心電図(以降、ECGと称する)と脳波図(以降、EEGと称する)のセンサーが入力接続された電子式汎用計算機を含んだ人の精神生理学的指標測定システムが知られている。」と記載されているので、引用発明1の「生体センサー54」が与える「犬5からの生体信号」である「呼吸パターンや体温変化等」は、補正発明の「精神生理学的指標」に相当する。
そして、引用発明1において、「リモートユニット16において、センサー50及び54からのデータを受信して格納され」ており、「データは、」「予め格納され、頻繁に改良/更新されるソフトウエアまたは検知アルゴリズムによって処理され」ることから、「リモートユニット16」には、「呼吸パターンや体温変化等」を記録する要素を備えていることは明らかである。
また、引用発明1において、「ハンドラー70が犬5によって示されたシグナルを誤解するか、あるいは目をそらした際、ただシグナルを見ていないかもしれない」こと、及び、「リモートユニット16を一瞥しただけで、信頼できる確認が得られ」ることからみて、ハンドラー70は犬5の近くに居り、かつ、ハンドラー70は携帯端末で構成されたリモートユニット16を持ち運んでいるといえるから、リモートユニット16は、犬5の近くにあるともいえる。
さらに、引用発明1の「携帯電子機器パッケージ8、9は、無線通信プロトコルを介して、リモートユニット16に接続されて」いることは、「携帯電子機器パッケージ8、9」と「リモートユニット16」とは、無線通信プロトコルの有効な領域内にあって、無線通信プロトコルで接続可能な設定がなされているといえる。
よって、引用発明1の、「無線通信プロトコルを介して、リモートユニット16に接続されており、」「コントローラー又はCPU26を含んでおり、コントローラー26は、生体センサー54を有するセンサーユニット48に連結され、」「生体センサー54は、呼吸パターンや体温変化等の犬5からの生体信号を与えるものであ」る「携帯電子機器パッケージ8は、犬5の首輪12に取り付けられ」ていることと、補正発明の「呼吸センサー、ECGセンサー、EEGセンサー、センサー接続用アダプター、ポリグラフ増幅器、および、WiFi無線ネットワークを備えた、探知犬の精神生理学的指標を記録するためのシステムを探知犬に設置し、探知犬の近くかつ、WiFi無線ネットワークが有効な領域内に、WiFi無線ネットワークに接続可能な設定がなされた移動式コンピューターを配置する」こととは、「呼吸センサーおよび無線ネットワークを備えた、探知犬の精神生理学的指標を記録するためのシステムを探知犬に設置し、探知犬の近くかつ、無線ネットワークが有効な領域内に、無線ネットワークに接続可能な設定がなされた移動式コンピューターを配置する」点で共通する。

エ 引用発明1において、「探知犬」が対象臭を探すように訓練する時は、「検査対象物の探知検査を行う前」といえ、また、引用発明1において、「対象臭を捜すように訓練され」ることは、対象臭のそばに連れてこられることといえる。
よって、引用発明1の「探知犬」が、「爆発物、薬剤、武器、化学物質、人等のような種々の物質から生じる対象臭を捜すように訓練され」ることは、補正発明の「検査対象物の探知検査を行う前に、嗅覚測定機により爆発物又は他の特定目的物の臭いの濃度が与えられ、探知犬が与えられた濃度のにおいのサンプルのそばに連れてこられ」ることに相当する。
また、引用発明1において、「探知犬」が、「対象臭が存在するとき、犬5は非常に活発になるか、あるいは、何らかの態度を通して、対象臭が存在しているというシグナルを出すかもしれないが、時々、ハンドラー70が犬5によって示されたシグナルを誤解するか、あるいは目をそらした際、ただシグナルを見ていないかもしれないので、身体位置センサー50は、犬5が座ったのか、横になったのか、あるいは姿勢や行動の変更を通して、対象臭の存在を示しているのかを、合図することができ」ることは、補正発明における「検査対象物の探知検査を行う前」での「探知犬の行動の変化によって、探知犬が臭いの感知について下した決定を判別」することに相当し、さらに、引用発明1の「リモートユニット16において、センサー50及び54からのデータを受信して格納され、データは、犬5が対象臭への身体的または行動的な反応を有していたかどうかを決定するために、予め格納され、頻繁に改良/更新されるソフトウエアまたは検知アルゴリズムによって処理され、検知アルゴリズムを基準にして比較され」ることは、補正発明の「同時に与えられた濃度の臭いを探知した探知犬の複合的な精神生理学的反応が前記移動式コンピューターの記憶装置に判別及び記憶される」ことに相当する。

オ 引用発明1において、「探知犬」による探知は、補正発明の「検査対象物の探知検査中」といえる。
引用発明1において、「探知犬」が、「対象臭が存在するとき、犬5は非常に活発になるか、あるいは、何らかの態度を通して、対象臭が存在しているというシグナルを出すかもしれないが、時々、ハンドラー70が犬5によって示されたシグナルを誤解するか、あるいは目をそらした際、ただシグナルを見ていないかもしれない」ことは、補正発明の「検査対象物の探知検査中に、探知犬に付き添うハンドラーによって、探知犬の行動が視覚的に観察され」ることに相当し、引用発明1の「リモートユニット16において、センサー50及び54からのデータを受信して格納され、データは、犬5が対象臭への身体的または行動的な反応を有していたかどうかを決定するために、予め格納され、頻繁に改良/更新されるソフトウエアまたは検知アルゴリズムによって処理され、検知アルゴリズムを基準にして比較され」ることは、補正発明の「与えられた濃度の臭いを探知した探知犬の現在の複合的な精神生理学的反応が前記移動式コンピューターの記憶装置に判別及び記憶される」ことに相当する。

カ 引用発明1の「リモートユニット16において、センサー50及び54からのデータを受信して格納され、データは、犬5が対象臭への身体的または行動的な反応を有していたかどうかを決定するために、予め格納され、頻繁に改良/更新されるソフトウエアまたは検知アルゴリズムによって処理され、検知アルゴリズムを基準にして比較され」ることは、補正発明の「探知犬の現在の複合的な精神生理学的反応を、以前にコンピューターの記憶装置に記憶していたものと比較し、反応を比較した結果により、探知犬が爆発物及び/又はその他の特定目的物を発見したか否かの結論を下す」ことに相当する。

キ 上記アないしカからみて、補正発明と引用発明1とは、以下の点で一致している。

〔一致点〕
探知犬を使用した爆発物及びその他の特定目的物の発見方法であって、
呼吸センサー、および、無線ネットワークを備えた、探知犬の精神生理学的指標を記録するためのシステムを探知犬に設置し、探知犬の近くかつ、無線ネットワークが有効な領域内に、無線ネットワークに接続可能な設定がなされた移動式コンピューターを配置するステップ、
検査対象物の探知検査を行う前に、嗅覚測定器により爆発物又は他の特定目的物の臭いの濃度が与えられ、探知犬が与えられた濃度のにおいのサンプルのそばに連れてこられ、探知犬の行動の変化によって、探知犬が臭いの感知について下した決定を判別し、同時に与えられた濃度の臭いを探知した探知犬の複合的な精神生理学的反応が前記移動式コンピューターの記憶装置に判別及び記憶されるステップ、
検査対象物の探知検査中に、探知犬に付き添うハンドラーによって、探知犬の行動が視覚的に観察され、与えられた濃度の臭いを探知した探知犬の現在の複合的な精神生理学的反応が前記移動式コンピューターの記憶装置に判別及び記憶されるステップ、
探知犬の現在の複合的な精神生理学的反応を、以前にコンピューターの記憶装置に記憶していたものと比較し、反応を比較した結果により、探知犬が爆発物及び/又はその他の特定目的物を発見したか否かの結論を下すステップ、を含む発見方法。」

また、補正発明と引用発明1とは、次の3点で相違している。
〔相違点1〕
補正発明は、ECGセンサー、EEGセンサー、センサー接続用アダプター、ポリグラフ増幅器、を備えているのに対し、引用発明1は、それらを備えているかどうか特定がない点。
〔相違点2〕
無線ネットワークが、補正発明では、WiFi無線ネットワークであって、移動式コンピューターが、WiFi無線ネットワークが有効な領域内に、WiFi無線ネットワークに接続可能な設定がなされているのに対し、引用発明1では、WiFi無線ネットワークであるか特定されておらず、そして、移動式コンピューターが、有効な領域がWiFi無線ネットワーク内かどうか不明であり、接続可能な設定がなされているものがWiFi無線ネットワークかどうか不明な点。
〔相違点3〕
補正発明は、「検査対象物のにおいのサンプルを用いずに、精神生理学的指標を記録するためのシステムを使用して、通常の精神生理学状態にある探知犬の複合的な精神生理学的反応を検知、記憶するステップ」を含んでいるのに対し、引用発明1は、そのようなステップを含んでおらず、それに伴い、引用発明1は、「探知犬の現在の複合的な精神生理学的反応を、以前にコンピューターの記憶装置に記憶していたものと比較し、反応を比較した結果により、探知犬が爆発物及び/又はその他の特定目的物を発見したか否かの結論を下すステップ」において、引用発明1が含んでいない上記ステップで検知、記憶した精神生理学的反応を比較していない点。

(5)判断
上記相違点1?相違点3について検討する。
ア 相違点1
引用文献2または3に記載されているように、生態情報を得る手段として、ECGセンサーやEEGセンサーを用いることは、本願出願前に周知の技術である。
加えて、引用文献4には、爆発物等を犬の臭覚に基づく脳波を利用して探索する探索装置において、脳波センサーを用いることが記載されている。
また、センサーを用いた電気通信機器の分野において、センサーを接続するためのアダプターやセンサーの信号の増幅器を備えることは、例示するまでもなく、本件出願前に慣用的に用いられていた手段に過ぎない。
よって、引用発明1において、上記周知技術及び慣用手段を適用することにより、相違点1に係る補正発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得たことに過ぎない。

イ 相違点2
無線通信手段として、WiFi無線ネットワークを用いることは、例示するまでもなく、本件出願前に慣用的に用いられた手段に過ぎない。そして、該慣用手段であるWiFi無線ネットワークを用いることによって、移動式コンピューターの有効な領域が、WiFi無線ネットワーク内となり、移動式コンピューターに接続可能な設定であるものはWiFi無線ネットワークとなることは、必然的に採用されるべきことである。
したがって、引用発明1において、上記慣用手段を用いることにより、相違点2に係る補正発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得たことに過ぎない。

ウ 相違点3
引用文献4には、爆発物等を犬の臭覚に基づく脳波を利用して探索する探索装置において、脳波センサーを用いることが記載されているところ、感知すべき対象物がないときの犬の脳波センサーから検出される検出脳波信号を解析して得られた基準β波含有量と、目標探索対象を探索するために、犬を連れて行動し、犬の脳波センサーから検出される検出脳波信号を解析して得られた作成β波含有量とを対比することが記載されている。
引用発明1及び引用文献4に記載の探索装置とは、犬が爆発物等の臭いの存在を知覚した際の生体センサーからの信号を解析するものであり、引用発明1においても、犬が対象臭の偽の兆候、例えば、対象物がないにもかかわらず、探知したような行動を示すかもしれないことから、犬が検査対象物を探知した場合と探知していない場合を区別することが必要であることは明らかであるから、引用発明1の生体センサー54からの信号の解析処理において、引用文献4に記載された生体センサーの一種である脳波センサーからの信号の解析処理のように、感知すべき対象物がないときの解析データを事前に得ておくこと、及び、目標探索対象を探索した際のものと感知すべき対象物がないときの解析データとを比較して、目標探索対象を発見したかどうかを判定することを適用して、相違点3に係る補正発明とすることは、当業者が容易になし得たことである。

エ 請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、
「本願の請求項1の発明と引用文献1を比較すると、本願補正後の請求項1の発明は、検査対象物のにおいのサンプルを与えられていない、通常の精神生理学状態にある探知犬の精神生理学的反応を検知、記録するステップが含まれており、探知犬が特定目的物を発見したかどうかの判定は、探知犬の、探索時の精神生理学的反応、通常の状態での精神生理学的反応、検査対象物のにおいのサンプルを与えられたときの精神生理学的反応の3つを比較することで行われます。
一方で、引用文献1は、探知犬の、探索時の精神生理学的反応と、前もって判定された検査対象物のにおいを感知した際の精神生理学的反応との、2つを比較することで、探知犬が特定目的物を発見したかどうかの判定を行うものであり、本願発明のような、探知犬の通常の状態での精神生理学的反応を判定、記録するステップ、およびそれを探索時の精神生理学的反応と比較するステップは明記されていません。
引用文献2?4にも、特定目的物の探索において、探知犬の、探索時の精神生理学的反応、通常の状態での精神生理学的反応、検査対象物のにおいのサンプルを与えられたときの精神生理学的反応の3つを比較するという方法についての記載はありません。」(6頁下から4行?7頁12行)と主張している。
しかしながら、引用文献1?4に記載されていないと請求人が主張する「探知犬の通常の状態での精神生理学的反応を判定、記録するステップ、およびそれを探索時の精神生理学的反応と比較するステップ」に相当する構成は、上記ウのとおり、引用文献4に記載されており、かつ、引用発明1と上記引用文献4に記載の構成とは、同一技術分野のものであって、上記請求人が記載がないとする構成については、上記ウで検討したとおり、当業者が容易になし得たことであるから、請求人の主張は採用できない。

オ 小括
以上のとおり、補正発明は、引用発明1及び引用文献2?4に記載の事項や周知慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 補正の却下の決定のむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明
1 本願発明
平成30年12月12日にされた手続補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成29年11月15日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、上記第2の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、
「1.(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である引用文献1?4に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものである。
なお、引用文献1?4は、上記第2の[理由]2に記載した引用文献1?4と同じである。

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1?4の記載事項は、上記第2の[理由]2(3)ア?エに記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明の発明特定事項を実質的に全て含み、さらに構成を付加した補正発明が、前記第2の[理由]2(4)?(5)で検討したとおり、引用発明1及び引用文献2?4に記載の事項や周知慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明1及び引用文献2?4に記載の事項や周知慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び引用文献2?4に記載の事項や周知慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、よって、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-10-30 
結審通知日 2019-11-05 
審決日 2019-11-19 
出願番号 特願2016-572226(P2016-572226)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A01K)
P 1 8・ 572- Z (A01K)
P 1 8・ 121- Z (A01K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 洋介  
特許庁審判長 秋田 将行
特許庁審判官 住田 秀弘
西田 秀彦
発明の名称 爆発物及びその他の特殊目的物の発見方法  
代理人 ▲吉▼川 俊雄  

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