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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H02J
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H02J
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  H02J
管理番号 1361447
異議申立番号 異議2019-700006  
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-05-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-01-09 
確定日 2020-02-21 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6364567号発明「発電制御装置及びそれを用いた発電制御システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6364567号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、〔2-5〕、6について訂正することを認める。 特許第6364567号の請求項2ないし6に係る特許を維持する。 特許第6364567号の請求項1に係る特許についての本件特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6364567号の請求項1ないし6に係る特許についての出願は、平成30年3月9日に出願され、同年7月6日にその特許権の設定登録がされ、同年7月25日に特許掲載公報が発行された。そして、本件特許異議の申立てとその後の手続きの経緯は、次のとおりである。

平成31年1月9日 :特許異議申立人▲高▼山 嘉成による請求項
1ないし6に係る特許に対する特許異議の申
立て
平成31年4月15日付け:取消理由通知書
令和1年6月17日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和1年6月28日付け :手続補正指令書(訂正請求書に係る手続)
令和1年8月21日 :特許権者による上申書の提出
令和1年8月27日付け :手続却下の決定(訂正請求書に係る手続)
令和1年10月29日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和1年12月6日 :特許権者との面接(特許発明の技術説明)
令和1年12月20日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出

第2 訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
令和1年12月20日提出の訂正請求書による訂正請求について、その訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下の(1)ないし(3)のとおりである。(下線は訂正箇所を示す。)
なお、令和1年6月17日提出の訂正請求書に係る手続きは、令和1年8月27日付けの手続却下の決定によって却下された。

(1)請求項1ないし5からなる一群の請求項に係る訂正
ア.訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。

イ.訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に
「前記関数は、一次関数であることを特徴とする請求項1記載の発電制御システム。」とあるのを、
「 太陽電池の発電電力を制御するパワーコンディショナと、負荷に接続された受変電部と、
前記負荷の消費電力を取得すると共に前記パワーコンディショナの出力を制御する発電制御装置と、を備え、
前記発電制御装置は、前記発電電力の上限値を、前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が前記消費電力の一次関数となるよう設定して出力指令値を算出し、
前記出力指令値に基づいて前記パワーコンディショナは前記発電電力が前記上限値以下となるよう制御することで逆潮流を回避する
ことを特徴とする発電制御システム。」に訂正する。
また、請求項2の記載を引用する請求項3ないし5も同様に訂正する。

ウ.別の訂正単位とする求め
訂正後の請求項2ないし5については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求める。

(2)請求項6に係る訂正
ア.訂正事項3
特許請求の範囲の請求項6に
「前記発電電力の上限値を、前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が前記消費電力の関数となるよう設定してパワーコンディショナの出力指令値を算出し、」とあるのを、
「前記発電電力の上限値を、前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が前記消費電力の一次関数となるよう設定してパワーコンディショナの出力指令値を算出し、」に訂正する。

2.訂正の適否についての判断
(1)請求項1ないし5からなる一群の請求項に係る訂正について
ア.一群の請求項について
訂正前の請求項1ないし5において、請求項2ないし5は、訂正する請求項1を引用しているものであるから、請求項1ないし5は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

イ.訂正事項1について
(ア)訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項1を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
訂正事項1は訂正前の請求項1を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるか否かについて
訂正事項1は訂正前の請求項1を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

ウ.訂正事項2について
(ア)訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項2の記載が請求項1を引用する記載であったのを、請求項1を引用しない独立請求項形式へと書き替える訂正(以下、「訂正事項2a」という。)と、「パワーコンデショナ」という記載を「パワーコンディショナ」という記載に書き替える訂正(以下、「訂正事項2b」という。)を含むものである。
そして、上記訂正事項2aは、請求項1と請求項2との間の引用関係を解消するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
また、上記訂正事項2bは、訂正前の請求項2において「パワーコンデショナ」及び「パワーコンディショナ」のように用語が不統一であったのを、「パワーコンディショナ」という記載に統一するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
上記(ア)で示したとおり、訂正事項2aは請求項間の引用関係を解消するだけのものであり、また、訂正事項2bは用語の統一を図るだけのものであるから、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるか否かについて
上記(ア)で示したとおり、訂正事項2aは請求項間の引用関係を解消するだけのものであり、また、訂正事項2bは用語の統一を図るだけのものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

(2)請求項6に係る訂正について
ア.訂正事項3について
(ア)訂正の目的について
訂正事項3は、訂正前の請求項6の発明特定事項である「消費電力の関数」における「関数」について、「一次関数」であることを特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
「消費電力の関数」における「関数」が「一次関数」であることは、明細書の段落【0027】、【0034】、【0047】等に記載されている。
したがって、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるか否かについて
上記(ア)に示したとおり、訂正事項3は特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

3.まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号、及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、並びに、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。なお、訂正前の全ての請求項に対して特許異議の申立てがなされているので、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
また、請求項2ないし5についての訂正(訂正事項2)は訂正要件に適合するから、訂正後の請求項2ないし5は請求項1とは別の訂正単位とする。
よって、訂正後の請求項1、〔2?5〕、6について訂正を認める。

第3 訂正後の本件発明
本件訂正により訂正された請求項2ないし6に係る発明(以下「本件発明2ないし6」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項2ないし6に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
(削除)
【請求項2】
太陽電池の発電電力を制御するパワーコンディショナと、負荷に接続された受変電部と、
前記負荷の消費電力を取得すると共に前記パワーコンディショナの出力を制御する発電制御装置と、を備え、
前記発電制御装置は、前記発電電力の上限値を、前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が前記消費電力の一次関数となるよう設定して出力指令値を算出し、
前記出力指令値に基づいて前記パワーコンディショナは前記発電電力が前記上限値以下となるよう制御することで逆潮流を回避する
ことを特徴とする発電制御システム。
【請求項3】
前記発電制御システムは、
さらに蓄電池を備えることを特徴とする
請求項2記載の発電制御システム。
【請求項4】
前記出力指令値を算出する前記消費電力についての一次関数の0次係数は、前記蓄電池の蓄電可能量に依存することを特徴とする
請求項3記載の発電制御システム。
【請求項5】
前記出力指令値を算出する前記消費電力についての一次関数の一次係数と0次係数は、
時間に依存することを特徴とする
請求項2乃至4のいずれか1項記載の発電制御システム。
【請求項6】
太陽電池の発電電力及び負荷の消費電力を取得すると共に、
前記発電電力の上限値を、前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が前記消費電力の一次関数となるよう設定してパワーコンディショナの出力指令値を算出し、
前記パワーコンディショナは前記発電電力が前記上限値以下となるよう制御することで逆潮流を回避する発電制御装置。」

第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
1.取消理由の概要
訂正前の請求項1及び6に係る特許に対して、当審が令和1年10月29日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。

特許請求の範囲の請求項1及び6の「消費電力の関数」という記載は、当該「関数」が「一次関数」であることが特定されていないから、本件の請求項1及び6に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。したがって、本件の請求項1及び6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

2.当審の判断
ア.請求項1について
本件訂正により請求項1は削除されたから、本件の請求項1に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるということはできない。

イ.請求項6(本件発明6)について
訂正前の「消費電力の関数」という記載が、本件訂正によって「消費電力の一次関数」という記載に訂正されたことにより、本件発明6は、発明の詳細な説明に記載されたものとなった。したがって、本件の請求項6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたもので特許出願に対してなされたものであるということはできない。

ウ.まとめ
以上のとおりであるから、訂正前の請求項1及び6に係る特許に対して、当審が特許権者に通知した取消理由は、本件訂正によって全て解消した。

第5 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
1.特許異議の申立ての概要
特許異議申立人が特許異議申立書において主張する理由の概要は、次のとおりである。
(1)理由1(特許法第36条第6項第1号)
請求項1及び6には「消費電力の関数」と記載されているが、一般に、「関数」には、一次関数だけでなく、二次関数、三次関数など、変数の次数が2以上の関数も含まれる。一方、本件特許明細書には、「関数」として二次関数以上の次数を有する関数については、何ら記載されておらず、「関数」という記載にまで一般化ないし抽象化できる旨の記載も存在しない。
したがって、請求項1及び6に係る発明は発明の詳細な説明に記載されたものではないから、請求項1及び6に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。
また、請求項1を引用する請求項2ないし5に係る発明(特許)についても同様である。

(2)理由2(特許法第36条第4項第1号)
上記(1)のとおり、請求項1及び6に記載の「関数」には、一次関数だけでなく、二次関数、三次関数など、変数の次数が2以上の関数も含まれるが、二次関数以上の次数を有する関数を用いた場合について、発明の詳細な説明には当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていない。
したがって、請求項1ないし6に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。

(3)理由3(特許法第36条第6項第2号)
請求項1及び6の「消費電力の関数」には、消費電力に比例する場合も含まれる。また、請求項2には「関数は、一次関数である」と特定されているだけであるから、消費電力に比例する場合も含まれる。一方、発明の詳細な説明の【0032】ないし【0033】には、消費電力に比例する場合は好ましくないと記載されているから、請求項1ないし6の記載と矛盾し、その結果、請求項1ないし6に係る発明の「消費電力の関数」に消費電力に比例する関数が含まれるのかが否かが不明確である。
したがって、請求項1ないし6に係る発明は明確でないから、請求項1ないし6に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。

(4)理由4(特許法第29条第2項)
請求項1、2、及び6に係る発明は、下記の甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証ないし甲第4号証に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項3に係る発明は、下記の甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証ないし甲第5号証に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1ないし3及び6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

甲第1号証:特開平4-183228号公報
甲第2号証:特開2017-93127号公報
甲第3号証:特開2002-204531号公報
甲第4号証:特開平4-294411号公報
甲第5号証:国際公開第2017/109935号

2.当審の判断
(1)理由1(特許法第36条第6項第1号)について
特許異議申立人が本件訂正前の請求項1及び6に対して主張する内容は、取消理由通知(決定の予告)の内容(上記第4の1を参照。)と実質的に同じであり、請求項1については、本件訂正によって削除されたため、申立ての対象となる請求項は存在しなくなり、また、請求項6については、本件訂正によって消費電力の関数が「消費電力の一次関数」であることが特定されたから、特許異議申立人が主張するような二次関数、三次関数など、変数の次数が2以上の関数も含まれるものではなくなった。
一方、特許異議申立人は、請求項1を引用する請求項2ないし5に対しても、請求項1と同様の理由が存在すると主張しているが、本件訂正前の請求項2には「前記関数は、一次関数である」ことが特定されているから、請求項2及びその従属請求項である請求項3ないし5に対しての特許異議申立人の主張は失当であり、採用することはできない。
したがって、本件の請求項2ないし6に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるということはできない。

(2)理由2(特許法第36条第4項第1号)について
請求項1については、上記(1)で説示したとおり、本件訂正により請求項1は削除されたから、申立ての対象となる請求項は存在しない。
請求項6については、上記(1)で説示したとおり、消費電力の関数が「消費電力の一次関数」であることが特定されたことにより、特許異議申立人が主張するような二次関数、三次関数など、変数の次数が2以上の関数も含まれるものではなくなった。そして、発明の詳細な説明には関数が一次関数の場合については、当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されている。
一方、特許異議申立人は、請求項1を引用する請求項2ないし5に対しても、請求項1と同様の理由が存在すると主張しているが、本件訂正前の請求項2には「前記関数は、一次関数である」ことが特定されているから、請求項2及びその従属請求項である請求項3ないし5に対しての特許異議申立人の主張は失当であり、採用することはできない。
したがって、本件の請求項2ないし6に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるということはできない。

(3)理由3(特許法第36条第6項第2号)について
請求項2については、本件訂正前においても、本件訂正後においても、消費電力の関数が「一次関数」であることにかわりはないから、まず請求項2について検討する。
本件特許明細書の記載からみても、一般常識を鑑みても、請求項2の消費電力の「一次関数」には、消費電力に比例する関数が含まれることは明かである。
次に、本件特許明細書の発明の詳細な説明の【0032】ないし【0033】の記載についてみてみると、消費電力に比例する関数の場合である「発電電力の上限値を消費電力に比例した値に設定した場合(条件βと称す)」について、「一方、消費電力が多い時間帯(12時?14時)においては、条件βは、条件αと比較して太陽光発電電力が低くなり、発電電力が抑制されるため、発電効率が落ちてしまう。」(【0033】)と記載されているが、当該記載は、条件βは時間帯によっては発電効率が落ちることがあるということを単に示しているだけであって、条件βが(無条件で)好ましくないとは記載されていない。
また、本件特許明細書には、特許文献1(特開2017-093127号公報)及び特許文献2(特開2012-175858号公報)に記載のシステムを背景技術として説明した上で(【0002】参照。)、発明が解決しようとする課題として、「しかしながら、いずれのシステムにおいても、消費電力に対する発電電力の差分値と閾値とを比較判定し、太陽電池の発電電力を制御するものであった。このようなシステムでは、過剰に発電電力を抑制する結果、太陽電池の発電可能な電力を十分に活用できない。」(【0004】)ということが挙げられている。これに対して、上記【0033】には、「図2に示される例においては、特許文献1、2に記載されているような条件αでは、消費電力量が少ない時間帯(6時?10時)において、条件βと比較して太陽光発電量が低くなり、発電を抑制されるため、発電効率が落ちてしまうことが分かる。」(【0033】)とも記載されており、時間帯によっては、特許文献1、2に記載されているような条件αよりも条件βの発電効率は上回るから、条件βは上記課題を解決し得るものであるということができる。
したがって、消費電力に比例する関数(条件β)が好ましいものでないということはできないから、請求項2の消費電力の「一次関数」に、消費電力に比例する関数が含まれるからといって、請求項2に係る発明が明確でないということはできない。
また、請求項2を引用する請求項3ないし5に係る発明についても、同様の理由で明確でないということはできない。
さらに、請求項6については、本件訂正前の「消費電力の関数」及び本件訂正後の「消費電力の一次関数」のいずれにおいても、消費電力に比例する関数が含まれることは明かであるが、上述したとおり、消費電力に比例する関数が含まれるからといって、請求項6に係る発明が明確でないということはできない。
したがって、本件の請求項2ないし6に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるということはできない。
そして、上記(1)で説示したとおり、請求項1については、本件訂正により請求項1は削除されたから、申立ての対象となる請求項は存在しない。

(4)理由4(特許法第29条第2項)について
ア.甲第1号証の記載事項等
特許異議申立人が提出した甲第1号証(特開平4-183228号公報)には、「双方向電力変換装置の逆流防止方法」に関して、図面とともに、次の事項が記載されている。(下線は当審で付与した。)

(ア)「(ハ)発明が解決しようとする課題
本発明が解決しようとする課題は、商用電源系統に連系された電力変換装置の安全かつ安定した連系運転のために、的確に逆潮流の発生を防止することである。
(ニ)問題点を解決するための手段
本発明は、商用電源と、太陽電池と、前記商用電源に接続された交流負荷と、前記商用電源の交流電力を直流に変換するとともに前記太陽電池の直流電力を交流に変換することが可能な双方向変換手段と、前記太陽電池の直流電力を入力するとともに前記双方向変換手段を介して前記商用電源の交流電力を入力する直流負荷と、前記太陽電池を最適動作点で動作させ得るように前記双方向変換手段の入出力を調整する制御手段と、よりなる双方向電力変換装置において、前記商用電源の有効電力を検知する有効電力検出手段を設け、該検出手段の検出値が正の値である間は前記制御手段の前記双方向電力変換手段の太陽電池側入力に対する電流指令値を調整して前記太陽電池を最適動作点で駆動せしめるとともに、前記検出値が負になった時には前記最適動作点の電流指令値から該検出値に対応する有効電力に比例した値を差し引いて前記双方向電力変換手段に電流指令値を供給するものである。
(ホ)作用
商用電源の有効電力を検知して、その値が負になったときに双方向電力変換手段へはその電流指令値からその有効電力に比例した値を差し引いた電流指令値を供給し、前記有効電力が正になるように制御する。」(第2頁右上欄第5行?同頁第左下欄第15行)

(イ)「(ヘ)実施例
以下本発明を図面の一実施例について詳細に説明する。
第1図は双方向電力変換装置を示すブロック回路図である。同図において、1は商用電源、2は該商用電源1の交流の出力によって駆動される交流負荷、3は太陽電池、4は該太陽電池3の直流の出力によって駆動されるインバータ回路内蔵の直流負荷である。5は潮流を可能にした整流器によって構成される双方向電力変換手段であり、一方の入出力側を前記商用電源1に接続してその交流出力を直流に変換して前記直流負荷4に補助的に供給するとともに、他方の入出力側を前記太陽電池3に接続してその直流の余剰電力を交流に変換する役割を担うものである。6は前記双方向電力変換手段5の出力電流を検出する第1電流検出器、7は前記太陽電池3の出力電流を検出する第2電流検出器、8は前記商用電源1の出力電流と電圧とを検出する検出器81及び82によってその有効電力を検知する有効電力検出器、9は前記有効電力検出器8、前記両電流検出器6、7の検出値及び後述する商用電源1の電圧と太陽電池3の電圧により前記双方向電力変換手段5の太陽電池側入力電流値を調整する電流指令値を発生する制御手段である。
前記制御手段9は、前記第2電流検出器7及び電圧検出器10の検出値によって太陽電池3が最大電力で動作しているかどうかをチェックし必要なゲインを計算して出力する中央処理装置91と、該中央処理装置91のデジタル出力をアナログ信号に変換するD/A変換器92と、前記商用電源1の電圧の基本波成分を検出するバンドパスフィルタ93と、前記有効電力検出器8の検出出力を入力とし、後述する関数による出力を発生する関数発生器94と、基準となる三角波を発生する三角波発生器95と、前記D/A変換器92とバンドパスフィルタ93との出力によって商用電源1の電圧基本波成分とゲインとを乗算して前記双方向変換手段5の電流指令値を計算する乗算器96と、前記D/A変換器92、関数発生器94、及び乗算器96の出力により前記電流指令値から第1電流検出器6を通じて得られる双方向電力変換手段の出力電流と有効電力による補正信号を差し引いた信号を得る加算器97と、該加算器97の出力と前記三角波発生器95の出力とを比較し前記双方向電力変換手段5にスイッチングパルスを出力する比較器98とによって構成される。
前記関数発生器94は第2図に示すように前記有効電力の検出値に応じてその検出値が正の値のときに0V、負の値のときにはその値に比例した正の電圧出力を発生するものである。同図において横軸は前記有効電力検出器8の検出値(入力)、縦軸は関数発生器94の出力であり入力が負のときにのみこれに比例して出力が上昇する特性を有する。
上記の構成を有する双方向電力変換装置において、通常は商用電源1の出力により有効電力は正の値であるから、前記関数発生器94は有効電力が正の値となる範囲では出力が0Vであり、この間は前記中央処理装置91によって前記太陽電池3が最適動作点を維持するように制御手段9を介しての制御がなされる。
一方、太陽電池3の出力が増大して商用電源1側への潮流が生じるような値になり、有効電力が減少して負の値を取るようになると、その減少幅に比例した値が前記加算器97によって前記電流指令値から差し引かれ、この差し引かれた電流指令値が前記双方向電力変換手段5に入力され、商用電源1の有効電力を正の状態に維持するように制御される。よって太陽電池3側から商用電源1側への逆潮流が結果的に抑制される。」(第2頁左下欄第16行ないし第3頁左下欄第6行)

(ウ)「(ト)発明の効果
本発明は以上の説明の如く商用電源の有効電力を検知する有効電力検出手段を設け、該検出手段の検出値が正の値である間は前記制御手段の前記双方向電力変換手段の太陽電池側入力に対する電流指令値を調整して前記太陽電池を最適動作点で駆動せしめるとともに、前記検出値が負になった時には前記最適動作点の電流指令値から該検出値に対応する有効電力に比例した値を差し引いて前記双方向電力変換手段に電流指令値を供給する物であるから、有効電力を検知して双方向変換手段から商用電源に向かう供給電流にリミッタをかけることができ、的確に逆潮流の発生を防止でき、商用電源に連係された太陽電池及び双方向電力変換手段の安全且つ安定した連系運転が可能となる。」(第3頁左下欄第7行ないし同頁右下欄第2行)

したがって、上記(ア)ないし(ウ)の事項と図面の記載を総合勘案すると、甲第1号証には、次の発明が記載されている。(以下、「甲1発明」という。)

「 商用電源1と、太陽電池3と、前記商用電源1に接続された交流負荷2と、前記太陽電池3に接続された直流負荷4と、前記商用電源1の交流電力を直流に変換するとともに前記太陽電池3の直流電力を交流に変換することが可能な双方向変換手段5と、前記太陽電池3を最適動作点で動作させ得るように前記双方向変換手段5の入出力を調整する制御手段9と、よりなる双方向電力変換装置において、
前記商用電源1の有効電力を検知する有効電力検出器8を設け、
前記制御手段9は、前記有効電力検出器8の検出値が正の値である間は前記制御手段9の前記双方向電力変換手段5の太陽電池側入力に対する電流指令値を調整して前記太陽電池を最適動作点で駆動せしめるとともに、前記検出値が負になった時には前記最適動作点の電流指令値から前記検出値に比例した値を差し引いて前記双方向電力変換手段に電流指令値を供給し、前記検出値が正になるように制御するものである、
双方向電力変換装置。」

イ.請求項2(本件発明2)について
(ア)対比
本件発明2と甲1発明とを対比する。
(a)甲1発明の「太陽電池3」は、本件発明2の「太陽電池」に相当する。
(b)甲1発明の「商用電源1に接続された交流負荷2」は、本件発明2の「負荷」に相当する。
ただし、本件発明2の「負荷」には「受変電部」が接続されているのに対して、甲1発明においては、その旨の特定はなされていない点で相違する。
(c)甲1発明の「双方向電力変換手段5」は、太陽電池3の直流電力を交流に変換するものであって、その入出力は太陽電池3を最適動作点で動作させ得るように制御手段9によって調整されるものであるから、本件発明2の「太陽電池の発電電力を制御するパワーコンディショナ」に相当する。また、甲1発明の「制御手段9」は、前記双方向電力変換手段5の入出力を調整するものであるから、本件発明2の「パワーコンディショナの出力を制御する発電制御装置」に相当する。
ただし、本件発明2の「発電制御装置」は「負荷の消費電力を取得する」のに対して、甲1発明の「制御手段9」は負荷(交流負荷2)の消費電力を取得していない点で相違する。
(d)甲1発明の「双方向電力変換装置」は、上記(c)で説示したように、双方向電力変換手段5及び制御手段9によって太陽電池3を最適動作点で動作させるものであるから、「発電制御システム」ということができる。
(e)本件発明2の「出力指令値」と甲1発明の「電流指令値」は、発電制御装置(制御手段9)からパワーコンディショナ(双方向電力変換手段5)に供給されるものである点で共通するが、それらの算出方法やそれらを用いた制御内容は異なっている。
すなわち、本件発明2においては、「前記発電制御装置は、前記発電電力の上限値を、前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が前記消費電力の一次関数となるよう設定して出力指令値を算出し、前記出力指令値に基づいて前記パワーコンディショナは前記発電電力が前記上限値以下となるよう制御することで逆潮流を回避する」のに対して、甲1発明においては、「前記制御手段9は、前記有効電力検出器8の検出値が正の値である間は前記制御手段9の前記双方向電力変換手段5の太陽電池側入力に対する電流指令値を調整して前記太陽電池を最適動作点で駆動せしめるとともに、前記検出値が負になった時には前記最適動作点の電流指令値から前記検出値に比例した値を差し引いて前記双方向電力変換手段に電流指令値を供給し、前記検出値が正になるように制御するものである」点で相違する。

以上を総合すると、本件発明2と甲1発明は、
「 太陽電池の発電電力を制御するパワーコンディショナと、
前記パワーコンディショナの出力を制御する発電制御装置と、
を備えた発電制御システム。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
本件発明2は「負荷に接続された受変電部」を備えているのに対して、甲1発明においてはその旨の特定はなされていない点で相違する。
<相違点2>
発電制御装置が、本件発明2においては「前記負荷の消費電力を取得する」のに対して、甲1発明においてはその旨の特定はなされていない点で相違する。
<相違点3>
本件発明2においては「前記発電制御装置は、前記発電電力の上限値を、前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が前記消費電力の一次関数となるよう設定して出力指令値を算出し、前記出力指令値に基づいて前記パワーコンディショナは前記発電電力が前記上限値以下となるよう制御することで逆潮流を回避する」のに対して、甲1発明においては、「前記制御手段9は、前記有効電力検出器8の検出値が正の値である間は前記制御手段9の前記双方向電力変換手段5の太陽電池側入力に対する電流指令値を調整して前記太陽電池を最適動作点で駆動せしめるとともに、前記検出値が負になった時には前記最適動作点の電流指令値から前記検出値に比例した値を差し引いて前記双方向電力変換手段に電流指令値を供給し、前記検出値が正になるように制御するものである」点で相違する。

なお、特許異議申立人は、「したがって、甲1発明における『商用電源(1)の有効電力』は、『発電電力の上限値と負荷の消費電力との差分』であり、本件特許発明1の『発電電力の上限値と消費電力との差分』に相当する。」と主張する(特許異議申立書第40頁第22行ないし第24行)が、甲1発明において、有効電力検出器8が検知する商用電源1の有効電力は、「発電電力と消費電力との差分」に相当するものであって、「発電電力の上限値と消費電力との差分」に相当するものではない。
また、そもそも、甲1発明においては、「発電電力の上限値」に相当する値は存在しない。すなわち、甲1発明の制御手段9は、有効電力検出器8の検出値が負になった時には、その値が正になるように制御するものであって、実際に検出値が負になることがある(つまり、逆潮流が発生することがある)ものであるから、検出値が負にならないような(つまり、逆潮流が発生しないような)上限値を設定しているものではない。
したがって、特許異議申立人の上記主張を採用することはできない。

(イ)判断
事案に鑑み、上記相違点3から検討する。
特許異議申立人が周知技術を示すための文献として提出した甲第2号証(特開2017-93127号公報)の【0006】ないし【0009】、【0012】ないし【0014】、【0017】、【0019】ないし【0028】、【0032】ないし【0034】、図1、図2には、
「 系統電力網2に接続され、負荷14a,14b,14cと、太陽光発電装置20a?20gと、発電制御ユニット10と、計測ユニット12と、を備えた電力システム1において、
前記負荷14a,14b,14cによって消費される消費電力量を計測するための計測用CTセンサ16と、
前記太陽光発電装置20a?20gにおける発電電力量を計測するための計測用CTセンサ18と、が設けられ、
前記太陽光発電装置20a?20gは、太陽光パネル201a?201gと、パワーコンディショナ202a?202gと、を備え、
前記計測ユニット12は、前記計測用CTセンサ16から取得した前記消費電力量及び前記計測用CTセンサ18から取得した前記発電電力量を前記発電制御ユニット10に出力し、
前記発電制御ユニット10は、前記太陽光発電装置20a?20gにおいて発電される発電量を制御するユニットであって、前記消費電力量に対する前記発電電力量の差分値を演算し、当該差分値が設定閾値以下となった場合に、前記太陽光発電装置20a?20gから管轄内電力線に供給される電力量を所定値まで低減させること。」
という事項が記載されている。
また、特許異議申立人が周知技術を示すための文献として提出した甲第3号証(特開2002-204531号公報)の【0006】、【0022】ないし【0026】、図1には、
「 商用電力系統2と太陽電池3からの交流電力とを合せて負荷4に供給する交流連系装置1において、
前記商用電力系統2の電圧値と、前記負荷4の電流値とから、負荷電力PLを算出し、
前記負荷電力PLとインバータ14の出力電力Piの差が、あらかじめ決められた一定値(例えば「0」)を下回るかどうかを調べ、下回った場合には、太陽電池3に接続されたインバータ14の出力電流を一定量下げること。」
という事項が記載されている。
さらに、特許異議申立人が周知技術を示すための文献として提出した甲第4号証(特開平4-294411号公報)の【請求項1】、【0025】ないし【0035】、図1には、
「 太陽電池を含む光発電アレイ1と、前記光発電アレイから出力される直流電力を交流電力に変換する電力変換回路3と、前記電力変換回路3に並列接続されて前記電力変換回路3と共に一般負荷17に電力供給を行う電力系統4とを備えた太陽光発電用電力変換装置において、
前記電力系統4からの電力系統供給電力P_(G)(前記一般負荷17への受電電力)を電力検出器18で計測し、
前記電力系統4への逆潮流を招く可能性を生じる最小規定値をP_(G)minとしたとき、
前記電力変換回路3からの出力電力P_(I)が大きくなって前記電力系統供給電力P_(G)が減少し、P_(G)≦P_(G)minになると補正電圧Vcを出力することにより、前記電力変換回路3からの前記出力電力P_(I)を減少させること。」
という事項が記載されている。
しかしながら、上記甲第2号証ないし甲第4号証のいずれにも、本件発明2の「前記発電制御装置は、前記発電電力の上限値を、前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が前記消費電力の一次関数となるよう設定して出力指令値を算出し、前記出力指令値に基づいて前記パワーコンディショナは前記発電電力が前記上限値以下となるよう制御することで逆潮流を回避する」という発明特定事項については記載も示唆もされていない。
すなわち、甲第2号証ないし甲第4号証には、特許異議申立人が主張するように「発電電力と消費電力との差分に所定の閾値を設けて、その閾値を下回るほど、太陽電池による発電量が増えた場合に、逆潮流を回避するために、発電量を制御するという技術」(特許異議申立書第44頁第1行ないし第4行)は記載されており(なお、甲第2号証に記載の「設定閾値」、甲第3号証に記載の「あらかじめ決められた一定値」、甲第4号証の「P_(G)min」)が、当該「所定の閾値」に相当する。)、当該技術は周知技術であるということができるが、甲第2号証ないし甲第4号証のいずれにも「前記発電電力の上限値を、前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が前記消費電力の一次関数となるよう設定」することは、記載も示唆もされていない。
したがって、甲1発明に対して、甲第2号証ないし甲第4号証に記載の技術事項を組合わせたとしても、上記相違点3に係る本件発明2の発明特定事項を導き出すことはできない。
よって、上記相違点1及び相違点2について検討するまでもなく、請求項2に係る発明(本件発明2)は、甲第1号証に記載された発明(甲1発明)及び甲第2号証ないし甲第4号証に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

ウ.請求項3(本件発明3)について
本件発明3は、本件発明2の発明特定事項を全て含み、さらに「蓄電池」を備えるものである。
そして、特許異議申立人が周知技術を示すための文献として提出した甲第5号証(国際公開第2017/109935号)の【0016】ないし【0026】、【0032】、図1には、
「ホームシステム1において、太陽光発電システムである発電設備10に加えて、機器20として蓄電池を設けること。」
は記載されているが、甲第2号証ないし甲第4号証と同様に、「前記発電電力の上限値を、前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が前記消費電力の一次関数となるよう設定」することは、記載も示唆もされていない。
よって、本件発明2に対して上記イ(イ)で説示したのと同様の理由で、請求項3に係る発明(本件発明3)は、甲第1号証に記載された発明(甲1発明)及び甲第2号証ないし甲第5号証に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

エ.請求項6(本件発明6)について
本件発明2は発電制御システムの発明であって、パワーコンディショナと受変電部と発電制御装置とを備えるものであるが、本件発明6はそれらのうちの発電制御装置についての発明であって、上記イ(ア)で検討した相違点2及び相違点3に係る本件発明2の発明特定事項と実質的に同じ発明特定事項を備えるものである。
したがって、本件発明2に対して上記イ(イ)で説示したのと同様の理由で、請求項6に係る発明(本件発明6)は、甲第1号証に記載された発明(甲1発明)及び甲第2号証ないし甲第4号証に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

オ.請求項1について
上記(1)で説示したとおり、請求項1については、本件訂正により請求項1は削除されたから、申立ての対象となる請求項は存在しない。

カ.まとめ
以上のとおりであるから、請求項2、3、及び6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるということはできない。
また、請求項1については、申立の対象となる請求項は存在しない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項2ないし6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項2ないし6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件訂正により請求項1は削除されたから、請求項1についての本件特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】削除
【請求項2】
太陽電池の発電電力を制御するパワーコンディショナと、負荷に接続された受変電部と、
前記負荷の消費電力を取得すると共に前記パワーコンディショナの出力を制御する発電制御装置と、を備え、
前記発電制御装置は、前記発電電力の上限値を、前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が前記消費電力の一次関数となるよう設定して出力指令値を算出し、
前記出力指令値に基づいて前記パワーコンディショナは前記発電電力が前記上限値以下となるよう制御することで逆潮流を回避する
ことを特徴とする発電制御システム。
【請求項3】
前記発電制御システムは、
さらに蓄電池を備えることを特徴とする
請求項2記載の発電制御システム。
【請求項4】
前記出力指令値を算出する前記消費電力についての一次関数の0次係数は、
前記蓄電池の蓄電可能量に依存することを特徴とする
請求項3記載の発電制御システム。
【請求項5】
前記出力指令値を算出する前記消費電力についての一次関数の一次係数と0次係数は、
時間に依存することを特徴とする
請求項2乃至4のいずれか1項記載の発電制御システム。
【請求項6】
太陽電池の発電電力及び負荷の消費電力を取得すると共に、
前記発電電力の上限値を、前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が前記消費電力の一次関数となるよう設定してパワーコンディショナの出力指令値を算出し、
前記パワーコンディショナは前記発電電力が前記上限値以下となるよう制御することで逆潮流を回避する発電制御装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-02-12 
出願番号 特願2018-42951(P2018-42951)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (H02J)
P 1 651・ 537- YAA (H02J)
P 1 651・ 536- YAA (H02J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 小池 堂夫  
特許庁審判長 井上 信一
特許庁審判官 山澤 宏
國分 直樹
登録日 2018-07-06 
登録番号 特許第6364567号(P6364567)
権利者 株式会社ラプラス・システム
発明の名称 発電制御装置及びそれを用いた発電制御システム  
代理人 特許業務法人森脇特許事務所  
代理人 特許業務法人森脇特許事務所  

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