• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H01L
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  H01L
審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01L
管理番号 1361450
異議申立番号 異議2019-700576  
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-05-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-07-23 
確定日 2020-03-02 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6456027号発明「封止シート、封止シートの製造方法及び電子部品パッケージの製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6456027号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4、7〕、〔5、6〕について」)訂正することを認める。 特許第6456027号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第6456027号の請求項1ないし7に係る特許についての出願は、平成26年2月7日(優先権主張 平成25年3月27日)に出願され、平成30年12月28日にその特許権の設定登録がされ、平成31年1月23日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、令和1年7月23日に特許異議申立人吉田秀平により特許異議の申立てがされ、当審は、同年9月24日に取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である同年11月28日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、その訂正の請求に対して、特許異議申立人吉田秀平は、令和2年1月16日に意見書を提出した。

第2 訂正の適否

1.訂正の内容

令和1年11月28日付けの訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は、以下の各訂正事項のとおりである。なお、下線は訂正部分を示す。

(1)訂正事項1

特許請求の範囲の請求項1に

「【請求項1】
エラストマーのドメインが分散しており、該ドメインの最大径が3μm以上20μm以下であり、
前記エラストマーがゴム成分を含み(ただし、シリコーン系ゴムを除く。)、
前記ゴム成分が、ブタジエン系ゴム、スチレン系ゴム及びアクリル系ゴムからなる群より選択される少なくとも1種である封止シート。」

とあるのを、

「【請求項1】
エラストマーのドメインが分散しており、該ドメインの最大径の平均値が3μm以上20μm以下であり、
前記エラストマーがゴム成分を含み(ただし、シリコーン系ゴムを除く。)、
前記ゴム成分が、ブタジエン系ゴム、スチレン系ゴム及びアクリル系ゴムからなる群より選択される少なくとも1種である封止シート。」

と訂正する(訂正後の請求項1を直接的または間接的に引用する請求項2?4、7も同時に訂正する。)。

(2)訂正事項2

特許請求の範囲の請求項5に

「【請求項5】
エラストマーを含む混練物を調製する混練工程、及び
前記混練物をシート状に成形して封止シートを得る成形工程
を含み、
前記混練工程において、前記封止シートのエラストマーがドメイン状に分散し、該ドメインの最大径が3μm以上20μm以下となるように混練し、
前記エラストマーがゴム成分を含み(ただし、シリコーン系ゴムを除く。)、
前記ゴム成分が、ブタジエン系ゴム、スチレン系ゴム及びアクリル系ゴムからなる群より選択される少なくとも1種である封止シートの製造方法。」

とあるのを、

「【請求項5】
エラストマーを含む混練物を調製する混練工程、及び
前記混練物をシート状に成形して封止シートを得る成形工程
を含み、
前記混練工程において、前記封止シートのエラストマーがドメイン状に分散し、該ドメインの最大径の平均値が3μm以上20μm以下となるように混練し、
前記エラストマーがゴム成分を含み(ただし、シリコーン系ゴムを除く。)、
前記ゴム成分が、ブタジエン系ゴム、スチレン系ゴム及びアクリル系ゴムからなる群より選択される少なくとも1種である封止シートの製造方法。」

と訂正する(訂正後の請求項5を引用する請求項6も同時に訂正する。)。

2.訂正の適否についての判断

(1)一群の請求項について

訂正前の請求項1ないし4及び7は、請求項2ないし4及び7が、訂正の対象である請求項1を直接又は間接的に引用する関係にあるから、一群の請求項であり、これら訂正前の請求項1ないし4及び7に対応する訂正後の請求項1ないし4及び7も一群の請求項である。
訂正前の請求項5及び6は、請求項6が、訂正の対象である請求項5を直接的に引用する関係にあるから、一群の請求項であり、これら訂正前の請求項5及び6に対応する訂正後の請求項5及び6も一群の請求項である。
したがって、本件訂正請求は、訂正事項1で訂正される一群の請求項1ないし4及び7、並びに、訂正事項2で訂正される一群の請求項5及び6ごとになされたものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

ア.訂正事項1について

訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明の「ドメインの最大径」について用語の意義が不明確であったところ、これを「ドメインの最大径の平均値」とすることで明確化するものである。したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。

そして、新規事項の有無に関し、訂正前の本件特許明細書の段落【0009】には、「ドメインの観察手順及び最大径の測定方法は実施例の記載による。」と記載され、【実施例】の記載として段落【0082】には、「図3に、実施例1の封止シートの切断面のSEM観察像を示す。SEM観察像において黒色で示される領域がエラストマーのドメインである。次いで、この黒色で示されるエラストマーのドメインをランダムに50点選び、それらの最大径を測定して平均値をとることでドメインの最大径とした。他の実施例2?5及び比較例1?2についても同様にSEM観察及び最大径の測定を行った。最大径測定の結果を表1に示す。」と記載されていることから、「ドメインの最大径」が最大径の平均値であることは願書に添付した明細書に記載されている。
また、「エラストマーのドメインをランダムに50点選び、それらの最大径を測定して平均値をとることでドメインの最大径とした」値が「エラストマードメインの最大径」として示された本件特許明細書の【表1】には、実施例4のエラストマードメインの最大径が「3μm」が示されている。
さらに、本件特許明細書の段落【0089】によれば「表1から分かるように、実施例1?5の封止シートは可撓性が良好であった。一方、比較例1?2ではヒビが生じ可撓性が劣っていた。また、実施例1?5では、エラストマーの微小ドメインを有する封止シートにより作製したSAWチップパッケージでは、封止シートの樹脂成分の中空部分への進入が抑制されており、高品質の電子部品パッケージを作製可能であることが分かる。比較例1?2では中空部分への樹脂進入量がいずれも20μmを超えていた。これは、エラストマーのドメインの最大径が20μmを超えており、樹脂流動規制作用が充分でなかったことに起因すると考えられる。」と記載されていることから、「エラストマーのドメインをランダムに50点選び、それらの最大径を測定して平均値をとることでドメインの最大径とした」値を20μm以下となるようにすることが記載されているといえる。
以上から、「該ドメインの最大径の平均値が3μm以上20μm以下」であることは、願書に添付した明細書に記載されているということができる。
したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるといえ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

また、訂正事項1は、上述のとおり明瞭でない記載を明確化するだけであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

イ.訂正事項2について

訂正事項2は、訂正前の請求項5に係る発明の「ドメインの最大径」について用語の意義が不明確であったところ、これを「ドメインの最大径の平均値」とすることで明確化するものである。したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。

そして、新規事項の有無に関し上記「ア.」と同様に、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるといえ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

また、訂正事項2は上述のとおり、明瞭でない記載を明確化するだけであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

3.訂正の適否についてのむすび

以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

よって、訂正後の請求項〔1-4、7〕、〔5、6〕について訂正することを認める。

第3 当審の判断

1.本件発明

本件訂正請求により訂正された請求項1ないし7に係る発明(以下「本件発明1ないし7」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。なお、下線は訂正された箇所を示す。

「【請求項1】
エラストマーのドメインが分散しており、該ドメインの最大径の平均値が3μm以上20μm以下であり、
前記エラストマーがゴム成分を含み(ただし、シリコーン系ゴムを除く。)、
前記ゴム成分が、ブタジエン系ゴム、スチレン系ゴム及びアクリル系ゴムからなる群より選択される少なくとも1種である封止シート。
【請求項2】
前記エラストマーの含有量が1.0重量%以上3.5重量%以下である請求項1に記載の封止シート。
【請求項3】
熱硬化性樹脂をさらに含む請求項1又は2に記載の封止シート。
【請求項4】
60℃における前記エラストマーの引張弾性率Eeの前記熱硬化性樹脂の引張弾性率Etに対する比Ee/Etが5×10^(-5)以上1×10^(-2)以下である請求項3に記載の封止シート。
【請求項5】
エラストマーを含む混練物を調製する混練工程、及び
前記混練物をシート状に成形して封止シートを得る成形工程
を含み、
前記混練工程において、前記封止シートのエラストマーがドメイン状に分散し、該ドメインの最大径の平均値が3μm以上20μm以下となるように混練し、
前記エラストマーがゴム成分を含み(ただし、シリコーン系ゴムを除く。)、
前記ゴム成分が、ブタジエン系ゴム、スチレン系ゴム及びアクリル系ゴムからなる群より選択される少なくとも1種である封止シートの製造方法。
【請求項6】
前記混練工程における混練回転数r(rpm)の混練処理量t(kg/hr)に対する比r/tが60以上である請求項5に記載の封止シートの製造方法。
【請求項7】
一又は複数の電子部品を覆うように請求項1?4のいずれか1項に記載の封止シートを該電子部品上に積層する積層工程、及び
前記封止シートを硬化させて封止体を形成する封止体形成工程
を含む電子部品パッケージの製造方法。」

2.令和1年9月24日付け取消理由通知による取消理由について

(1)取消理由の概要

当審が令和1年9月24日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は次のとおりである。

(1-1)特許法第29条第1項(新規性)について

本件請求項1、3、4、7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明又は甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件請求項1、3、4、7に係る特許は取り消されるべきものである。

(1-2)特許法第29条第2項(進歩性)について

本件請求項1、3、4、7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明又は甲第2号証に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1、3、4、7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

(1-3)特許法第36条第6項第2号(明確性)について

請求項1及び5に係る発明は、「ドメインの最大径」が、各々のドメインの最大径の値を示しているのか、ドメインの最大径の平均の値を示しているのか不明確であるため、請求項1及びその従属請求項2-4、7に係る発明、並びに、請求項5及びその従属請求項6に係る発明は明確でない。
よって、請求項1ないし7に係る特許は、特許請求の範囲に記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消されるべきものである。

[証拠]
甲第1号証:特開2009-91389号公報
甲第2号証:特開2011-219726号公報

(2)引用文献の記載

(2-1)甲第1号証について

甲第1号証には、「中空型デバイス封止用樹脂組成物シート」に関し、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与したものである。

ア.「【0014】
本発明の中空型デバイス封止用樹脂組成物シートは、硬化後において特定の引張弾性率を有するものであり、好ましくは、エポキシ樹脂(A成分)、フェノール樹脂(B成分)、エラストマー(C成分)、無機質充填剤(D成分)、硬化促進剤(E成分)を含有するエポキシ樹脂組成物をシート状に成型することにより得られるものである。」

イ.「【0019】
上記A成分およびB成分とともに用いられるエラストマー(C成分)は、エポキシ樹脂組成物に中空型デバイス封止用樹脂組成物として必要な柔軟性および可撓性を付与するものであり、このような作用を奏するものであれば特にその構造を限定するものではないが、例えば、つぎのようなゴム質重合体が挙げられる。すなわち、ポリアクリル酸エステル等の各種アクリル酸エステル系共重合体、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、エチレン-酢酸ビニルコポリマー(EVA)、イソプレンゴム、アクリロニトリルゴム等からなる重合体が挙げられる。中でも、上記エポキシ樹脂(A成分)へ分散させやすく、またエポキシ樹脂(A成分)との反応性も高いために、得られる樹脂組成物の耐熱性や強度を向上させることができるという観点から、アクリル酸エステル系共重合体を用いることが好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併せて用いてもよい。」

ウ.「【0027】
本発明の中空型デバイス封止用樹脂組成物シートは、例えばつぎのようにして製造することができる。まず、各配合成分を混合することによりエポキシ樹脂組成物を調製するが、各配合成分が均一に分散混合される方法であれば特に限定するものではない。そして、必要に応じて各配合成分を有機溶剤等に溶解または分散しワニス塗工により製膜する。あるいは、各配合成分を直接ニーダー等で混練することにより固形樹脂組成物を調製し、このようにして得られた固形樹脂組成物をシート状に押し出して製膜成形してもよい。中でも、簡便に均一な厚みのシートを得ることができるという点から、上記ワニス塗工法を好適に用いることができる。
【0028】
上記ワニス塗工法による本発明の中空型デバイス封止用樹脂組成物シートの作製について述べる。すなわち、上記A?E成分および必要に応じて他の添加剤を常法に準じて適宜混合し、有機溶剤に均一に溶解あるいは分散させ、ワニスを調製する。ついで、上記ワニスをポリエステル等の基材上に塗布し乾燥させることにより中空型デバイス封止用樹脂組成物シートを得ることができる。そして必要により、シート表面を保護するためにポリエステルフィルム等のフィルムを貼り合わせてもよい。これらポリエステル等の基材およびポリエステルフィルム等のフィルムは剥離シートとして機能する。その際は、樹脂封止時に剥離シートを剥離する。」

・上記アによれば、甲第1号証には、エポキシ樹脂(A成分)、フェノール樹脂(B成分)、エラストマー(C成分)、無機質充填剤(D成分)、硬化促進剤(E成分)を含有するエポキシ樹脂組成物をシート状に成型することにより得られる中空型デバイス封止用樹脂組成物シートが記載されている。
・上記イによれば、エラストマー(C成分)としてゴム質重合体が用いられ、該ゴム質重合体は、ポリアクリル酸エステル等の各種アクリル酸エステル系共重合体、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、エチレン-酢酸ビニルコポリマー(EVA)、イソプレンゴム、アクリロニトリルゴム等からなる重合体であることが記載されている。
・上記ウによれば、中空型デバイス封止用樹脂組成物シートは、前記A?E成分を有機溶剤に均一に溶解または分散し、ワニス塗工により製膜して得たものであることが記載されている。

以上の摘示事項及び図面を総合勘案すると、甲第1号証には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

「エポキシ樹脂(A成分)、フェノール樹脂(B成分)、エラストマー(C成分)、無機質充填剤(D成分)、硬化促進剤(E成分)を含有するエポキシ樹脂組成物をシート状に成型することにより得られる中空型デバイス封止用樹脂組成物シートであって、
前記エラストマー(C成分)としてゴム質重合体が用いられ、該ゴム質重合体は、ポリアクリル酸エステル等の各種アクリル酸エステル系共重合体、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、エチレン-酢酸ビニルコポリマー(EVA)、イソプレンゴム、アクリロニトリルゴム等からなる重合体であり、
前記中空型デバイス封止用樹脂組成物シートは、前記A?E成分を有機溶剤に均一に溶解または分散し、ワニス塗工により製膜して得たものである、
中空型デバイス封止用樹脂組成物シート。」

(2-2)甲第2号証について

甲第2号証には、「封止用エポキシ樹脂組成物シート」に関し、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与したものである。

ア.「【0013】
即ち、本発明の封止用エポキシ樹脂組成物シートは、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、無機充填材を必須成分とするエポキシ樹脂組成物であって、無機充填材の配合量が全エポキシ樹脂組成物中の70?90質量%であり、かつ平均粒子径が0.2?10μmである封止用エポキシ樹脂組成物を、半硬化状態のシート状樹脂層(A層)に成形したことを特徴とする。
【0014】
この封止用エポキシ樹脂組成物シートにおいて、エラストマー成分を含有した前記封止用エポキシ樹脂組成物を半硬化状態のシート状樹脂層(A層)に成形することが好ましい。」

イ.「【0016】
また、シート状樹脂層(A層)に配合するエラストマー成分が、重量平均分子量20000?1000000の範囲内の、ポリブタジエンゴム又はブタジエン系ランダム共重合ゴムであることが好ましく、さらに、エラストマー成分が、エポキシ樹脂組成物全量に対して0.1?0.5質量%配合するのが好ましい。」

ウ.「【0036】
本発明で用いられるエラストマー成分としては、ポリブタジエンゴム又はブタジエン系ランダム共重合ゴムを用いる。
【0037】
このブタジエン系ランダム共重合ゴムは特に制限されるものではないが、本発明においては、アクリロニトリルブタジエン共重合ゴム、ブタジエンアクリロニトリルメタクリル酸共重合ゴムを用いるのが好ましい。これは、アクリロニトリルブタジエン共重合ゴム、ブタジエンアクリロニトリルメタクリル酸共重合ゴムがエポキシ樹脂との相溶性が特によく、乾燥後のゴム相の分離状態が良好であることにより、高い強靱性を有する硬化物が得られるからである。」

エ.「【0043】
シート状樹脂層(A層)のみの封止用エポキシ樹脂組成物シートを製造する場合には、シート状樹脂層(A層)用のエポキシ樹脂組成物からなる樹脂ワニスを調整し、エポキシ樹脂組成物シート化し、封止用エポキシ樹脂組成物シートを得ることができる。
・・・(中略)・・・
【0045】
シート状樹脂層(A層)用の樹脂ワニスは、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、無機充填材、エラストマー成分、添加剤等を、有機溶剤と配合し、撹拌、溶解、混合、分散を行い、樹脂ワニスを調製する。
・・・(中略)・・・
【0048】
このようにして製造した樹脂ワニスを、キャリア材の片面あるいは両面に塗布した後、熱風吹き付け等によって加熱乾燥させ、半硬化状態のシート状樹脂層に成形することができる。」

・上記アによれば、甲第2号証には、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、無機充填材、及び、エラストマー成分を含有した封止用エポキシ樹脂組成物を、半硬化状態のシート状樹脂層に成形した封止用エポキシ樹脂組成物シートが記載されている。

・上記イ及びウによれば、エラストマー成分としてポリブタジエンゴム又はブタジエン系ランダム共重合ゴムが用いられる。

・上記エによれば、半硬化状態のシート状樹脂層は、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、無機充填材、エラストマー成分、添加剤等を有機溶剤と配合し、撹拌、溶解、混合、分散を行って樹脂ワニスを調製し、このようにして製造した樹脂ワニスをキャリア材の片面あるいは両面に塗布した後、加熱乾燥させ、半硬化状態のシート状樹脂層に成形したものである

以上の摘示事項及び図面を総合勘案すると、甲第2号証には次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。

「エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、無機充填材、及び、エラストマー成分を含有した封止用エポキシ樹脂組成物を、半硬化状態のシート状樹脂層に成形した封止用エポキシ樹脂組成物シートであって、
エラストマー成分としてポリブタジエンゴム又はブタジエン系ランダム共重合ゴムが用いられ、
前記半硬化状態のシート状樹脂層は、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、無機充填材、エラストマー成分、添加剤等を有機溶剤と配合し、撹拌、溶解、混合、分散を行って樹脂ワニスを調製し、このようにして製造した樹脂ワニスをキャリア材の片面あるいは両面に塗布した後、加熱乾燥させ、半硬化状態のシート状樹脂層に成形したものである、
封止用エポキシ樹脂組成物シート。」

(3)当審の判断

(3-1)特許法第29条第1項及び第2項について

ア.本件発明1について

(ア)甲第1号証を主引用文献とする場合

a.対比

本件発明1と甲1発明とを対比する。

(a)甲1発明の「中空型デバイス封止用樹脂組成物シート」は、本件発明1の「封止シート」に相当する。

(b)甲1発明の「中空型デバイス封止用樹脂組成物シート」が、「エポキシ樹脂(A成分)、フェノール樹脂(B成分)、エラストマー(C成分)、無機質充填剤(D成分)、硬化促進剤(E成分)を含有するエポキシ樹脂組成物をシート状に成型することにより得られる」点、及び「前記A?E成分を有機溶剤に均一に溶解または分散し、ワニス塗工により製膜して得たものである」点は、本件発明1の「封止シート」が、「エラストマー」「が分散」したものである点で一致する。
ただし、本件発明1ではエラストマーの「ドメイン」が分散しており、「該ドメインの最大径の平均値が3μm以上20μm以下」であるのに対し、甲1発明ではその旨特定されていない。

(c)甲1発明の「ゴム質重合体」、「ブタジエンゴム」、「スチレン-ブタジエンゴム(SBR)」及び「アクリル酸エステル系共重合体」が、それぞれ本件発明1の「ゴム成分」、「ブタジエン系ゴム」、「スチレン系ゴム」及び「アクリル系ゴム」に相当する。また、甲1発明の「スチレン-ブタジエンゴム(SBR)」及び「アクリル酸エステル系共重合体」がシリコーン系ゴムでないことは明らかである。
したがって、甲1発明の「前記エラストマー(C成分)としてゴム質重合体が用いられ、該ゴム質重合体は、ポリアクリル酸エステル等の各種アクリル酸エステル系共重合体、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、エチレン-酢酸ビニルコポリマー(EVA)、イソプレンゴム、アクリロニトリルゴム等からなる重合体」であることは、本件発明1の「前記エラストマーがゴム成分を含み(ただし、シリコーン系ゴムを除く。)、前記ゴム成分が、ブタジエン系ゴム、スチレン系ゴム及びアクリル系ゴムからなる群より選択される少なくとも1種である」ことに相当する。

以上の通りであるから、本件発明1と引用発明1とは、

「エラストマーが分散しており、
前記エラストマーがゴム成分を含み(ただし、シリコーン系ゴムを除く。)、
前記ゴム成分が、ブタジエン系ゴム、スチレン系ゴム及びアクリル系ゴムからなる群より選択される少なくとも1種である封止シート。」

である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
本件発明1では、エラストマーの「ドメイン」が分散しており、「該ドメインの最大径の平均値が3μm以上20μm以下」であるのに対し、甲1発明ではその旨特定されていない点。

以上のとおり、本件発明1と甲1発明との間には相違が認められ、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明でないから特許法第29条第1項第3号に該当するものとして取り消されるべきものではない。

b.相違点についての判断

本件特許明細書の段落【0009】及び【0020】によると、本件発明1は、相違点1のようにエラストマーのドメインの最大径の平均値を3μm以上とすることで優れた可撓性を発揮させ、同平均値を20μm以下とすることでミクロ領域に対してチキソトロピー性様の作用を付与し、封止時の加熱による他の成分の流動を規制するように作用することで、中空構造を有する電子部品の空隙への流入を抑制するものである。しかるところ、甲第1号証には、エラストマーのドメインの最大径の平均値について何ら記載されておらず、その値を制御することは当業者といえども容易に想到できたことではない。
よって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとして取り消されるべきものではない。

(イ)甲第2号証を主引用文献とする場合

a.対比

本件発明1と甲2発明とを対比する。

(a)甲2発明の「封止用エポキシ樹脂組成物シート」は、本件発明1の「封止シート」に相当する。

(b)甲2発明の「封止用エポキシ樹脂組成物シート」が、「エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、無機充填材、及び、エラストマー成分を含有した封止用エポキシ樹脂組成物を、半硬化状態のシート状樹脂層に成形した」ものであり、「前記半硬化状態のシート状樹脂層は、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、無機充填材、エラストマー成分、添加剤等を有機溶剤と配合し、撹拌、溶解、混合、分散を行って樹脂ワニスを調製し、このようにして製造した樹脂ワニスをキャリア材の片面あるいは両面に塗布した後、加熱乾燥させ、半硬化状態のシート状樹脂層に成形したものである」点は、本件発明1の「封止シート」が、「エラストマー」「が分散」したものである点で一致する。
ただし、本件発明1ではエラストマーの「ドメイン」が分散しており、「該ドメインの最大径の平均値が3μm以上20μm以下」であるのに対し、甲2発明ではその旨特定されていない。

(c)甲2発明の「ポリブタジエンゴム又はブタジエン系ランダム共重合ゴム」は、本件発明1の「ブタジエン系ゴム」に相当するとともに、「ゴム成分」にも相当する。また、甲2発明の「ポリブタジエンゴム又はブタジエン系ランダム共重合ゴム」がシリコーン系ゴムでないのは明らかである。
したがって、甲2発明の「封止用エポキシ樹脂組成物シート」に「エラストマー成分としてポリブタジエンゴム又はブタジエン系ランダム共重合ゴムが用いられ」ることは、本件発明1の「封止シート」に「前記エラストマーがゴム成分を含み(ただし、シリコーン系ゴムを除く。)、前記ゴム成分が、ブタジエン系ゴム」「である」点で一致する。

したがって、本件発明1と引用発明2とは、

「エラストマーが分散しており、
前記エラストマーがゴム成分を含み(ただし、シリコーン系ゴムを除く。)、
前記ゴム成分が、ブタジエン系ゴム、スチレン系ゴム及びアクリル系ゴムからなる群より選択される少なくとも1種である封止シート。」

である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点2]
本件発明1では、エラストマーの「ドメイン」が分散しており、「該ドメインの最大径の平均値が3μm以上20μm以下」であるのに対し、甲2発明ではその旨特定されていない点。

以上のとおり、本件発明1と甲2発明との間には相違が認められ、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明ではないから特許法第29条第1項第3号に該当するものとして取り消されるべきものではない。

b.相違点についての判断

本件特許明細書の段落【0009】及び【0020】によると、本件発明1は、相違点2のようにエラストマーのドメインの最大径の平均値を3μm以上とすることで優れた可撓性を発揮するとともに、同平均値を20μm以下とすることでミクロ領域に対してチキソトロピー性様の作用を付与し、封止時の加熱による他の成分の流動を規制するように作用することで、中空構造を有する電子部品の空隙への流入を抑制するものである。しかるところ、甲第2号証には、エラストマーのドメインの最大径の平均値について何ら記載されておらず、その値を制御することは当業者といえども容易に想到できたものではない。
よって、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとして取り消されるべきものではない。

(ウ)特許異議申立人の主張について

特許異議申立人は令和2年1月16日付け意見書において、本件特許明細書には、塗工法で本件発明1の「封止シート」を製造する際に「ドメインの最大径の平均値」を得るための溶媒、ミキサー形状、混合速度や混合時間等の製造条件についての記載がないことから、塗工法による場合にはこれらの条件は何ら設定せずとも、「ドメインの最大径の平均値が3μm以上20μm以下」になる旨主張し、これを根拠として、塗工法によってエラストマーが分散した封止シートである甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明においても「ドメインの最大径の平均値が3μm以上20μm以下」になっており、本件発明1と同一である旨主張している。
しかしながら、甲1発明において、エラストマー成分のドメインの最大径の平均値は、溶解または分散されるA?E成分の量や割合、分散時間、分散速度等の各種条件に左右されるものであるから、塗工法を用いたからといって、その平均値が必ずしも「3μm以上20μm」となるとは限らない。また、甲2発明においても同様のことがいえる。

さらに、特許異議申立人は同意見書において、「甲第1号証及び甲第2号証の実施例をみると、封止シートは表面弾性波素子下部の中空部分への樹脂の侵入が確認されないものである」から、「甲第1号証及び甲第2号証に記載の発明は」、本件発明1で特定されている「エラストマーのドメインサイズを満足していると認められる」とも主張している。
しかしながら、甲第1号証に記載された発明は、段落【0005】によれば、熱硬化後の25℃における樹脂組成物シートの引張弾性率を1×10^(7)?1×10^(9)Paに設定することによって中空部分への封止樹脂の侵入を抑制しているのであるから、中空部分への封止樹脂の浸入がないからといって、エラストマーのドメインの最大径が3μm以上20μm以下になっていると認めることはできない。また、甲第2号証に記載された発明は、段落【0032】によれば、無機充填材の平均粒子径を所定の範囲にすることで中空型デバイスの中空部分への樹脂の侵入を抑制するものであるから、中空部分への樹脂の浸入がないからといって、エラストマーのドメインの最大径が3μm以上20μm以下になっていると認めることはできない。

したがって、上記主張はいずれも採用できない。

イ.本件発明3、4、7について
本件発明3、4、7は、本件発明1の発明特定事項を全て含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、本件発明1が甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明でなく、さらに、当業者にとって容易に発明をすることができたものでない以上、本件発明3、4、7についても甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明でなく、さらに、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3-2)特許法第36条第6項第2号について

請求項1及び5に係る発明の「ドメインの最大径」は、それぞれ訂正事項1及び2により、「ドメインの最大径の平均値」と訂正され、各々のドメインの最大径の値ではなくドメインの最大径の平均値であることが明確となった。
したがって、当審による取消理由で指摘した不備な点は解消され、本件発明1ないし7は明確である。
よって、請求項1ないし7に係る特許は、特許請求の範囲に記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとして取り消されるべきものではない。

3.取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由等について

(1)特許法第29条第2項について

特許異議申立人は、特許異議申立書及び令和2年1月16日付け意見書において、請求項1ないし7に係る発明は、甲第3号証(特開昭62-197416号公報)に記載された発明及び周知の技術事項(甲第1号証、甲第2号証及び甲第4号証(特開2006-19714号公報)に記載された技術事項)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1ないし7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきものであると主張している。

そこで、以下に検討する。

(1-1)甲第3号証に記載された発明

甲第3号証には、「エポキシ樹脂組成物」に関し、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与したものである。

ア.「2.特許請求の範囲
(1) 粒子径が0.01?5.0ミクロンであるエポキシ変性ゴム粒子が、エポキシ樹脂硬化物中に実質的に凝集することなく分散していることを特徴とする海島構造を有するエポキシ樹脂組成物。
(2) エポキシ変性ゴムが、1分子当り平均0.5個以上のエポキシ基と平均0.1?1.0個のアクリロイル基を有するエポキシ化合物及びモノエチレン性グリシジルエステル又はエーテルから選ばれた少なくとも1種と、エチレン性単量体とでグラフト変性したものである特許請求の範囲第1項記載のエポキシ樹脂組成物。
(3) エポキシ化合物が、芳香族系エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応によつて得られるエポキシ(メタ)アクリレートである特許請求の範囲第1項記載のエポキシ樹脂組成物。」(第1ページ左欄第5行ないし第20行)

イ.「前記のエポキシ変性ゴムは、“海”部のエポキシ樹脂との相溶性が良好で、かつ、硬化剤を加えた配合物中でも当初のゴム粒径を維持して海島構造を形成し、グラフト層中のエポキシ基を介してゴム相とエポキシ樹脂相との界面に化学的結合が存在するので、このゴム相が硬化時の残留応力を効率的に緩和してエポキシ樹脂硬化物の欠点を改善する作用をする。したがつて、本発明のエポキシ樹脂組成物はゴム補強効果の効率が良く、可撓性が改良され、応力緩和能力を有する硬化物が得られ、電気・電子部品の絶縁封止や、通常の粉体塗料としての適性を有する。」(第2ページ右下欄第2行ないし第13行)

ウ.「本発明のエポキシ変性ゴムとは、乳化重合法で製造されるABS樹脂に用いられる、粒径0.01?5ミクロンで、ほぼ球形であるゴム粒子を、重合性エポキシ化合物と単官能性モノマーとでグラフトしたゴムである。そのゴム粒子としては、例えば1,3-ジエンと1種またはそれ以上の共重合性不飽和単量体(例えばスチレン、アルフアメチルスチレン、クロロスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アルキルメタクリレート)との共重合体等が挙げられる。」(第3ページ左上欄第16行ないし右上欄第5行)

エ.「〔実施例〕
1) 重合性エポキシ化合物(a)の合成法
特開昭57-105418号公報の参考例に記載の方法に準じて行なつた。ただし、エポキシ当量190であるビスフエノールA型エポキシ樹脂AER-331(旭化成工業(株)で販売中)を用いることにより、溶剤は使用せず、メタクリル酸によるエポキシ樹脂の変性率15%(当量比)のものを化合物(a)としてグラフト変性に供した。」(第5ページ左上欄第8行ないし第16行)

オ.「2) 重合性エポキシ化合物によるグラフト変性法
1lのタッピング管付き反応器を準備し、ポリブタジエンゴムラテックスUA-1001L(日本ゼオン(株)製、固形分51.5%、重量平均粒径3000Å、ゲル含量71%)194g、水127gを反応器に仕込み、十分に窒素置換した後、80℃に昇温し、重合性エポキシ化合物20g、ブチルアクリレート24.4g、メチルメタクリレート25g、n-ドデシルメルカプタン1.6gよりなるグラフトモノマータッピング液を2.5時間かけて添加する。一方、触媒系として通常のABS樹脂製造時に使用する過硫酸カリ0.04g、アニオン系乳化剤、例えばニユーコールF-60(花王アトラス社製)1.0gを水30gに溶解して4時間で滴下した。すなわち、グラフトモノマータッピング液を添加終了した後、さらに1.5時間添加して反応を終結させる。このようにして得られたグラフト変性ゴムラテツクスは重合時の凝固物が少なく、安定なエマルジヨンで、固形分は38.5%であった。これをABS樹脂製造時の常法により、例えば硫酸アルミニウムを添加して塩析した後、水洗、脱水、乾燥してエポキシ変性ゴムの白色粉末(試料-1)を得た。
また、原料ゴムの影響を検討するべく、ABS樹脂用原料ゴム製造の常法に従つて乳化重合によりスチレン10%含有のスチレン・ブタジエンゴム(仮称AK-10)(固形分50%、重量平均粒径1500Å、トルエン不溶のゲル含量80%)を用いて、前記と同様の方法によりグラフト変性し、同様の操作で試料-2を得た。」(第5ページ左上欄第17行ないし左下欄第5行)

カ.「4)電子部品封止材としての性能評価
エポキシ当量212のクレゾールノボラックエポキシ樹脂(旭化成工業(株)で販売、商品名AER-273)80部、エポキシ当量460の高純度高臭素化エポキシ樹脂(旭化成工業(株)で販売、商品名AER-755)20部、2-エチル-4-メチルイミダゾールを2部、三酸化アンチモンを6部、カルバナワックスを2部、カーボンブラックを1部、γ-グリシドオキシプロピルトリメトキシシランを1部、シリカ(龍森工業のRD-8)450部からなる組成物に、エポキシ樹脂100部に対して第1表に示すような重量部割合で、エポキシ変性ゴムやグラフト変性用原料ゴム、及び可撓性付与剤を添加配合し、ミキサーで混合した後、さらに加熱ロールで混錬、冷却粉砕してトランスフアー成形用エポキシ樹脂組成物を得た。
それぞれのエポキシ樹脂組成物を170℃、2分間の条件でトランスフアー成形法により、各試験素子を封止して、さらに170℃、12時間後硬化して、耐ヒートサイクル性及び耐湿性試験を行なつた。なお、表における各特性値は次の方法により測定して得た値である。」(第5ページ右下欄第14行ないし第6ページ左上欄第15行)

キ.「



・上記アによれば、甲第3号証には、粒子径が0.01?5.0ミクロンであるエポキシ変性ゴム粒子が、エポキシ樹脂硬化物中に実質的に凝集することなく分散している海島構造を有するエポキシ樹脂組成物が記載されている。
・上記イによれば、エポキシ樹脂組成物は、電気・電子部品の絶縁封止に用いられるものである。
・上記ウによれば、エポキシ変性ゴムは、ほぼ球形であるゴム粒子を重合性エポキシ化合物と単官能性モノマーとでグラフトしたものである。
・上記エ及びオによれば、グラフト変性される原料ゴムに、ポリブタジエンゴムラテックスまたはスチレン・ブタジエンゴムが用いられる。

上記摘示事項及び図面を総合勘案すると、甲第3号証には次の発明(以下「甲3-1発明」という。)が記載されていると認められる。

「粒子径が0.01?5.0ミクロンで、
ほぼ球形であるポリブタジエンゴムラテックスまたはスチレン・ブタジエンゴムの粒子を重合性エポキシ化合物と単官能性モノマーとでグラフトしたエポキシ変性ゴム粒子が、エポキシ樹脂硬化物中に実質的に凝集することなく分散している海島構造を有する、
電気・電子部品の絶縁封止用エポキシ樹脂組成物。」

また、上記カ及びキによれば、エポキシ樹脂組成物の製造方法として、エポキシ樹脂に対してエポキシ変性ゴムを混合した後、加熱ロールで混練することが記載されている。
これを、甲3-1発明で勘案した上記摘示事項と併せて勘案すれば、甲第3号証には次の発明(以下「甲3-2発明」という。)が記載されていると認められる。

「粒子径が0.01?5.0ミクロンで、
ほぼ球形であるポリブタジエンゴムラテックスまたはスチレン・ブタジエンゴムの粒子を重合性エポキシ化合物と単官能性モノマーとでグラフトしたエポキシ変性ゴム粒子が、エポキシ樹脂硬化物中に実質的に凝集することなく分散している海島構造を有する、
電気・電子部品の絶縁封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法であって、
エポキシ樹脂に対してエポキシ変性ゴムを混合した後、加熱ロールで混練する工程を有する製造方法。」

(1-2)対比・判断

ア.本件発明1について

本件発明1と甲3-1発明とを対比する。

(ア)甲3-1発明の「電気・電子部品の絶縁封止用エポキシ樹脂組成物」と本件発明1の「封止シート」とは、いずれも、封止用の組成物であることは明らかである。
ただし、封止用の組成物が、本件発明1では「シート」であるのに対し、甲3-1発明ではその旨特定されていない。

(イ)甲3-1発明の「エポキシ変性ゴム」は、高分子で弾性があるのは明らかであり、本件発明1の「エラストマー」に相当する。また、甲3-1発明の「海島構造」における「島」は、エポキシ樹脂硬化物中でエポキシ変性ゴム粒子が占める領域であると認められるから、本件発明1の「エラストマーのドメイン」に相当する。
したがって、甲3-1発明の「エポキシ変性ゴム粒子が、エポキシ樹脂硬化物中に実質的に凝集することなく分散している海島構造を有する」点は、本件発明1の「エラストマーのドメインが分散して」いることに相当する。

(ウ)甲3-1発明の「ポリブタジエンゴムラテックスまたはスチレン・ブタジエンゴムの粒子」が「ほぼ球形」であるから、これを「重合性エポキシ化合物と単官能性モノマーとでグラフトしたエポキシ変性ゴム粒子」も球形であると認められる。
しかるところ、球の粒子径は球の最大径であるから、「エポキシ変性ゴム粒子」の最大径は、粒子径と同様に「0.01?5.0ミクロン」であると認められる。
そうすると、甲3-1発明ではドメインの最大径が0.01?5.0ミクロンであるといえる。
しかしながら、甲3-1発明ではドメインの最大径の「平均値」については何ら特定されていない。
したがって、本件発明1と甲3-1発明とを比較すると、本件発明1では「該ドメインの最大径の平均値が3μm以上20μm以下」であるのに対し、甲3-1発明ではその旨特定されていない点で相違する。

(エ)甲3-1発明の「ポリブタジエンゴム」及び「スチレン・ブタジエンゴム」は、それぞれ本件発明1の「ブタジエン系ゴム」又は「スチレン系ゴム」に相当するとともに、「ゴム成分」にも相当する。また、甲3-1発明の「ポリブタジエンゴム」及び「スチレン・ブタジエンゴム」がシリコーン系ゴムでないのは明らかである。
したがって、甲3-1発明の「エポキシ変性ゴム粒子」が「ポリブタジエンゴムラテックスまたはスチレン・ブタジエンゴムの粒子を重合性エポキシ化合物と単官能性モノマーとでグラフトした」ものであることは、本件発明1の「前記エラストマーがゴム成分を含み(ただし、シリコーン系ゴムを除く。)、前記ゴム成分が、ブタジエン系ゴム、スチレン系ゴム」「からなる群より選択される少なくとも1種である」ことに相当する。

そうすると、本件発明1と甲3-1発明とは、

「エラストマーのドメインが分散しており、
前記エラストマーがゴム成分を含み(ただし、シリコーン系ゴムを除く。)、
前記ゴム成分が、ブタジエン系ゴム、スチレン系ゴム及びアクリル系ゴムからなる群より選択される少なくとも1種である封止用の組成物。」

である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点3-1]
ドメインの最大径の平均値が、本件発明1では「3μm以上20μm以下」であるのに対し、甲3-1発明ではその旨特定されていない点。

[相違点3-2]
封止用の組成物が、本件発明1では「シート」であるのに対し、甲3-1発明ではその旨特定されていない点。

そこで、相違点3-1について検討する。

本件特許明細書の段落【0009】及び【0020】によると、本件発明1は、相違点3-1のようにドメインの最大径の平均値を3μm以上とすることで優れた可撓性を発揮するとともに、同平均値を20μm以下とすることでミクロ領域に対してチキソトロピー性様の作用を付与し、封止時の加熱による他の成分の流動を規制するように作用することで、中空構造を有する電子部品の空隙への流入を抑制するものである。しかるところ、甲第3号証には、ドメインの最大径の平均値を3μm以上20μm以下とすることは記載されていないし、電子部品の空隙への流入を抑制することについても記載がない。また、甲第1号証、甲第2号証及び甲第4号証には、特許異議申立人が主張するとおりエポキシ樹脂及びエラストマーを含有する封止用エポキシ樹脂組成物をシート状の形状に成形して用いることは記載されているが、ドメインの最大径の平均値を3μm以上20μm以下とすることは記載されていない。
したがって、甲3-1発明において相違点3-1の構成とすることは当業者といえども容易に想到できたものではない。
よって、本件発明1は、相違点3-2について検討するまでもなく、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとして取り消されるべきものではない。

イ.本件発明5について

本件発明5と甲3-2発明とを対比する。

(ア)甲3-2発明の「エポキシ変性ゴム」は、高分子で弾性があるのは明らかであり、本件発明5の「エラストマー」に相当する。また、甲3-2発明において「エポキシ樹脂に対してエポキシ変性ゴムを混合」したものは、後に「加熱ロールで混練」されるから、本件発明5の「エラストマーを含む混練物」に相当する。そして、「混練」されることによって、「混練物」が混ぜられるのであるから「調整」されているのは明らかである。
したがって、甲3-2発明の「エポキシ樹脂に対してエポキシ変性ゴムを混合した後、加熱ロールで混練する工程」(以下「混練工程」という。)は、本件発明5の「エラストマーを含む混練物を調製する混練工程」に相当する。

(イ)甲3-2発明の「電気・電子部品の絶縁封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法」と本件発明5の「封止シートの製造方法」とは、いずれも、封止用の組成物の製造方法であることは明らかである。
ただし、封止用の組成物が、本件発明5では「シート」であり、本件発明5が「前記混練物をシート状に成形して封止シートを得る成形工程」を有するのに対し、甲3-2発明ではその旨特定されていない点で相違する。

(ウ)甲3-2発明の「海島構造」における「島」は、エポキシ樹脂硬化物中でエポキシ変性ゴム粒子が占める領域であると認められるから、本件発明5の「エラストマーが」分散した「ドメイン」に相当する。
そして、甲3-2発明の「エポキシ樹脂に対してエポキシ変性ゴムを混合した後、加熱ロールで混練する工程」において、「海島構造」が形成されるのは明らかである。
したがって、甲3-2発明の混練工程は、本件発明5の「混練工程」と同様に、「エラストマーがドメイン状に分散し」「混練し」ている点で一致する。

(エ)甲3-2発明の「ポリブタジエンゴムラテックスまたはスチレン・ブタジエンゴムの粒子」が「ほぼ球形」であるから、これを「重合性エポキシ化合物と単官能性モノマーとでグラフトしたエポキシ変性ゴム粒子」も球形であると認められる。しかるところ、球の粒子径は球の最大径であるから、「エポキシ変性ゴム粒子」の最大径は、粒子径と同様に「0.01?5.0ミクロン」であると認められる。
そうすると、甲3-2発明ではドメインの最大径が0.01?5.0ミクロンであるといえる。
しかしながら、甲3-2発明ではドメインの最大径の「平均値」については何ら特定されていない。
したがって、本件発明5と甲3-2発明とを比較すると、混練が、本件発明5では「該ドメインの最大径の平均値が3μm以上20μm以下となるように」なされているのに対し、甲3-2発明ではその旨特定されていない点で相違する。

(オ)甲3-2発明の「ポリブタジエンゴム」及び「スチレン・ブタジエンゴム」は、それぞれ本件発明5の「ブタジエン系ゴム」又は「スチレン系ゴム」に相当するとともに、「ゴム成分」にも相当する。そして、甲3-2発明の「ポリブタジエンゴム」及び「スチレン・ブタジエンゴム」がシリコーン系ゴムでないことは明らかである。
したがって、甲3-2発明の「エポキシ変性ゴム粒子」が「ポリブタジエンゴムラテックスまたはスチレン・ブタジエンゴムの粒子を重合性エポキシ化合物と単官能性モノマーとでグラフトした」ものであることは、本件発明5の「前記エラストマーがゴム成分を含み(ただし、シリコーン系ゴムを除く。)、前記ゴム成分が、ブタジエン系ゴム、スチレン系ゴム」「からなる群より選択される少なくとも1種である」ことに相当する。

そうすると、本件発明5と甲3-2発明とは、

「エラストマーを含む混練物を調製する混練工程を含み、
前記混練工程において、前記封止シートのエラストマーがドメイン状に分散し、混練し、
前記エラストマーがゴム成分を含み(ただし、シリコーン系ゴムを除く。)、
前記ゴム成分が、ブタジエン系ゴム、スチレン系ゴム及びアクリル系ゴムからなる群より選択される少なくとも1種である封止用の組成物の製造方法。」

である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点3-3]
混練が、本件発明5では「該ドメインの最大径の平均値が3μm以上20μm以下となるように」なされているのに対し、甲3-2発明ではその旨特定されていない点

[相違点3-4]
封止用の組成物が、本件発明5では「シート」であり、本件発明5が「前記混練物をシート状に成形して封止シートを得る成形工程」を有するのに対し、甲3-2発明ではその旨特定されていない点。

そこで、相違点3-3について検討するに、上記「(1-2) ア.」で検討した相違点3-1と同様のことがいえ、甲3-2発明において相違点3-3の構成とすることは当業者といえども容易に想到できたものではない。
よって、本件発明5は、相違点3-4について検討するまでもなく、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとして取り消されるべきものではない。

ウ.本件発明2?4、6、7について
本件発明2?4、7は、本件発明1の発明特定事項を全て含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、本件発明1が当業者にとって容易に発明をすることができたものでない以上、本件発明2?4、7についても当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件発明6は、本件発明5の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、本件発明5が当業者にとって容易に発明をすることができたものでない以上、本件発明6についても当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)特許法第36条第4項第1号について

ア.異議申立書における主張について
特許異議申立人は、特許異議申立書(第42ないし43ページの「カ 理由3」を参照)において、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、ドメインの最大径の平均値を所定の範囲とするための具体的条件が十分に開示されておらず、当業者に期待し得る程度を越える試行錯誤が必要となるため、特許法第36条第4項第1号に適合しておらず、本件特許は取り消されるべきである旨主張している。すなわち、本件特許明細書には、2軸混練機を用いてエポキシ樹脂等を含む樹脂中にエラストマー等を分散することが記載され、その際に設定される混練回転数及び混練処理量の具体的値が示されているものの、エラストマーの分散には、混練機の内径、スクリューのサイズ、スクリューの形状、混練温度、混練時間等の条件も寄与するから、それらの条件についても開示する必要があるとのことである。
しかしながら、本件特許明細書に係る混練は、エラストマーを含む樹脂をスクリューによってせん断しつつ混ぜるものであり、エラストマーのドメイン径はよく混ぜるほど小さくできると認められる。そして、化学反応のように反応条件が結果にどのような影響を及ぼすのか予測困難な場合と異なり、本件の混練工程において、混練機の内径、スクリューのサイズ、スクリューの形状、混練温度、混練時間等の各種条件がドメイン径をどのように左右するかは、当業者にとって予測可能である。
したがって、一般的に利用可能な混練機を用いることで本件発明1ないし7に規定されたエラストマーの最大径の平均値を得ることは可能であると認められるし、用いる混練機に応じて、混練回転数や混練処理量、混練温度、混練時間を好適化して所定のエラストマーの最大径の平均値を得ることは当業者に通常期待される創作行為の範疇のものである。
よって、上記主張は採用できない。

イ.意見書における主張について
特許異議申立人は令和2年1月16日付けの意見書において、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、塗工法について、エラストマーのドメインの最大径の平均値を3μm以上20μm以下とするための分散、撹拌手段の条件を開示していないから、その条件を適宜調整するために、当業者に期待を超える試行錯誤を負担させるものであり、特許法第36条第4項第1号に適合しておらず、本件特許は取り消されるべきである旨主張している。
しかしながら、塗工法においては分散、撹拌を進めるほどエラストマーのドメインの径は小さくできると認められる。また、化学反応のように反応条件が結果にどのような影響を及ぼすのか予測困難な場合と異なり、本件の分散、撹拌の各種条件がどのようにエラストマーのドメイン径の大きさを左右するかは、当業者であれば予測できるものである。
したがって、従来から行われている分散、撹拌時間等を適宜調整することで本件所定のエラストマーの最大径の平均値を得ることは当業者に通常期待される創作行為の範疇のものである。
よって、上記主張は採用できない。

(3)特許法第36条第6項第1号について

特許異議申立人は、特許異議申立書(第43ページの「キ 理由4」を参照。)において、本件特許の請求項4に係る発明は、その特定されるパラメータ値が実施例等において実際に測定されておらず、そのパラメータ値によって本願発明の課題(「可撓性に優れ、封止対象が中空構造を有していても信頼性の高い電子部品パッケージを作成可能な封止シート」を得ること)を解決できるか不明で、発明の詳細な説明に記載したものとはいえないから、本件特許の特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号の規定に適合せず、本件特許は取り消されるべきである旨主張している。
しかしながら、本願発明の「可撓性に優れ、封止対象が中空構造を有していても信頼性の高い電子部品パッケージを作成可能な封止シート」を得るという課題は、本件特許の請求項1に係る発明によって解決されるものであり、その従属請求項である請求項4に係る発明も上記課題を解決できるものと認められる。
したがって、上記主張は採用することができない。

第4 むすび

以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件の請求項1ないし7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件の請求項1ないし7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマーのドメインが分散しており、該ドメインの最大径の平均値が3μm以上20μm以下であり、
前記エラストマーがゴム成分を含み(ただし、シリコーン系ゴムを除く。)、
前記ゴム成分が、ブタジエン系ゴム、スチレン系ゴム及びアクリル系ゴムからなる群より選択される少なくとも1種である封止シート。
【請求項2】
前記エラストマーの含有量が1.0重量%以上3.5重量%以下である請求項1に記載の封止シート。
【請求項3】
熱硬化性樹脂をさらに含む請求項1又は2に記載の封止シート。
【請求項4】
60℃における前記エラストマーの引張弾性率Eeの前記熱硬化性樹脂の引張弾性率Etに対する比Ee/Etが5×10^(-5)以上1×10^(-2)以下である請求項3に記載の封止シート。
【請求項5】
エラストマーを含む混練物を調製する混練工程、及び
前記混練物をシート状に成形して封止シートを得る成形工程
を含み、
前記混練工程において、前記封止シートのエラストマーがドメイン状に分散し、該ドメインの最大径の平均値が3μm以上20μm以下となるように混練し、
前記エラストマーがゴム成分を含み(ただし、シリコーン系ゴムを除く。)、
前記ゴム成分が、ブタジエン系ゴム、スチレン系ゴム及びアクリル系ゴムからなる群より選択される少なくとも1種である封止シートの製造方法。
【請求項6】
前記混練工程における混練回転数r(rpm)の混練処理量t(kg/hr)に対する比r/tが60以上である請求項5に記載の封止シートの製造方法。
【請求項7】
一又は複数の電子部品を覆うように請求項1?4のいずれか1項に記載の封止シートを該電子部品上に積層する積層工程、及び
前記封止シートを硬化させて封止体を形成する封止体形成工程
を含む電子部品パッケージの製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-02-19 
出願番号 特願2014-22295(P2014-22295)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (H01L)
P 1 651・ 121- YAA (H01L)
P 1 651・ 536- YAA (H01L)
P 1 651・ 113- YAA (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 豊島 洋介  
特許庁審判長 井上 信一
特許庁審判官 須原 宏光
石坂 博明
登録日 2018-12-28 
登録番号 特許第6456027号(P6456027)
権利者 日東電工株式会社
発明の名称 封止シート、封止シートの製造方法及び電子部品パッケージの製造方法  
代理人 特許業務法人ユニアス国際特許事務所  
代理人 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ