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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G02B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G02B
管理番号 1361476
異議申立番号 異議2019-700309  
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-05-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-04-19 
確定日 2020-03-12 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6413615号発明「カラーフィルタおよび液晶表示装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6413615号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?3〕について訂正することを認める。 特許第6413615号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許6413615号の請求項1?3に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成26年10月21日に出願され、平成30年10月12日にその特許権の設定登録がされ、平成30年10月31日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
平成31年 4月19日 :特許異議申立人日向ヨシ子(以下、「特許 異議申立人」という。)による請求項1? 3に係る特許に対する特許異議の申立て
令和 元年 6月27日付け:取消理由通知書
令和 元年 8月27日 :特許権者による意見書及び訂正請求書
令和 元年11月20日付け:取消理由通知書
令和 元年12月 3日 :特許権者による意見書及び訂正請求書(こ の訂正請求書による訂正の請求を、以下、 「本件訂正請求」という。)の提出
なお、令和元年8月27日になされた訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。

第2 本件訂正請求について
1 請求の趣旨
本件訂正請求の趣旨は、「特許第6413615号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?3について訂正を求める」というものである。

2 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、次のとおりである(下線は、当合議体が付したものであり、訂正箇所を示す。)。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記緑色画素にアルミニウムフタロシアニン顔料とピグメントグリーン58、ピグメントイエロー138を含有する」と記載されているのを、「前記緑色画素にアルミニウムフタロシアニン顔料とピグメントグリーン58、ピグメントイエロー138を、アルミニウムフタロシアニン顔料を1質量部としたとき、ピグメントグリーン58が12/17質量部、ピグメントイエロー138が800/357?50/7質量部となる割合で含有する」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2、3も同様に訂正する)。

(2) 一群の請求項について
本件訂正請求は、一群の請求項である請求項〔1?3〕に対して請求されたものである。

3 訂正について
特許請求の範囲の請求項1についての訂正事項1は、本件特許の願書に添付した明細書の【0080】(特に、「緑色顔料分散体組成物PG-1」の組成)、【0081】(特に、「緑色顔料分散体組成物PG-2」の組成)、【0083】(特に、「黄色顔料分散体組成物PY-1」の組成)、【0086】【表1】(特に、「緑色感光性樹脂組成物」である「GR-1」、「GR-2」及び「GR-3」それぞれにおける「PG-1」、「PG-2」及び「PY-1」の「顔料比」)及び【0089】【表2】(「実施例1」?「実施例3」)の記載に基づいて、「緑色画素」に「含有」される「アルミニウムフタロシアニン顔料」、「ピグメントグリーン58」及び「ピグメントイエロー138」について、その割合が、「アルミニウムフタロシアニン顔料を1質量部としたとき、ピグメントグリーン58が12/17質量部、ピグメントイエロー138が800/357?50/7質量部」であるものに限定する訂正である。
そうしてみると、請求項1についての訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、訂正事項1による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
請求項2、3についても、同様のことがいえる。

4 小括
上記のとおり、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?3〕について訂正することを認める。

第3 本件特許発明
上記「第2」で述べたとおり、本件訂正請求による訂正は認められることとなった。そうしてみると、本件特許の請求項1?3に係る発明(以下、それぞれを、「本件特許発明1」、「本件特許発明2」等といい、総称して「本件特許発明」という。)は、本件訂正請求による訂正後の特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項によって特定されるとおりの、以下のものである。
「【請求項1】
430nmから470nm、520nmから530nm、610nmから670nmのそれぞれの波長範囲内に発光強度のピーク波長を有した、青色LEDと赤色発光蛍光体および緑色発光蛍光体とを組み合わせた白色LED装置を備えたバックライトを具備する液晶表示装置に用いられる、透明基板上に緑色画素を含む複数色の着色画素を備えるカラーフィルタであって、前記緑色画素にアルミニウムフタロシアニン顔料とピグメントグリーン58、ピグメントイエロー138を、アルミニウムフタロシアニン顔料を1質量部としたとき、ピグメントグリーン58が12/17質量部、ピグメントイエロー138が800/357?50/7質量部となる割合で含有することを特徴とするカラーフィルタ。」
「【請求項2】
前記白色LED素子を光源とするバックライトで測色した表示色度がXYZ表色系でx=0.210±0.010、y=0.710±0.010の範囲で、明度が42.5以上である緑色画素を具備することを特徴とする請求項1に記載のカラーフィルタ。」
「【請求項3】
請求項1または2に記載のカラーフィルタを具備することを特徴とする液晶表示装置。」

第4 取消しの理由の概要
本件訂正請求による訂正前の請求項1?3に係る特許に対して、令和元年6月27日付けの取消理由通知書において特許権者に通知した取消しの理由の要旨、令和元年8月27日付けでした訂正後の請求項1?3に係る特許に対して、同年11月20日付けの取消理由通知書において特許権者に通知した取消の理由の要旨は、それぞれ次のとおりである。

1 令和元年6月27日付けで特許権者に通知した取消しの理由の要旨
理由1(新規性)
本件特許の請求項1?3に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された刊行物である下記の引用文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当し、本件特許は特許法第29条の規定に違反してされたものである。
理由2(進歩性)
本件特許の請求項1?3に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された刊行物である下記の引用文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は特許法第29条の規定に違反してされたものである。
(引用文献等一覧)
引用文献1:国際公開第2009/101916号(甲第1号証)
引用文献2:国際公開第2011/105227号(甲第2号証)
引用文献3:特開2012-247588号公報(甲第3号証)
引用文献4:特開2011-157478号公報(甲第4号証)
引用文献5:特開2007-312374号公報(甲第5号証)
引用文献6:KDDI株式会社ホームページ、「NTSC/用語集/KDDI株式会社」、「NTSC」、「NTSCの概要」、平成31年4月1日検索、インターネット(URL:https://www.kddi.com/yogo/%E3%83%9E%E3%83%AB%E3%83%81%E3%83%A1%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%A2/NTSC.html)(甲第6号証)
引用文献7:特開2013-95870号公報(周知技術を示すために特許異議申立人が挙げた文献)
引用文献8:特開2013-24934号公報(周知技術を示すために特許異議申立人が挙げた文献)
(当合議体注:引用文献1?4、7及び8のそれぞれが主引用例である。)

2 令和元年11月20日付けで特許権者に通知した取消しの理由の要旨
理由1(明確性)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備(特許請求の範囲の請求項1に記載された各顔料の割合に軽微な誤記が存在する。)なため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

第5 当審の判断
1 令和元年11月20日付けで通知した取消しの理由「理由1(明確性)」について
令和元年11月20日付けで特許権者に通知した取消しの理由「理由1(明確性)」については、本件訂正請求による訂正によって、請求項1に記載の「アルミニウムフタロシアニン顔料」、「ピグメントグリーン58」及び「ピグメントイエロー138」の各顔料の割合についての誤記が解消されたため、当該取消しの理由は解消した。

2 令和元年6月27日付けで通知した取消しの理由「理由1(新規性)」及び「理由2(進歩性)」について
(1) 引用文献1を主引用例とする「理由2(進歩性)」について
ア 引用文献の記載及び引用発明
(ア) 引用文献1
取消理由通知において引用した、本件特許の出願前に、日本国内又は外国において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1(国際公開第2009/101916号)には以下の事項が記載されている(合議体注:下線は、合議体が付したものである。以下、同様である。)。
a 「技術分野
[0001] 本発明は、臭素化亜鉛フタロシアニン緑色顔料を含有する緑色画素を有するカラーフィルタ、およびこれを用いた液晶表示装置に関する。
背景技術
[0002] 近年、液晶表示装置は、テレビ画像表示装置、コンピュータ端末表示装置、モバイル用途である携帯端末液晶表示装置や車載用途の液晶表示装置など数多くの用途で急速に普及してきており、年々製造コスト面や、表示画質面での競争が激化してきている。
[0003] テレビはもちろん、コンピュータ端末やモバイル端末でもテレビ画像が配信されるようになったこと、また、地上デジタル放送開始などの影響に伴い、全てのアプリケーションで従来のテレビ規格と同等またはそれ以上の画質への要求が多く、あらゆる液晶表示装置において高コントラスト性、高速応答性、高色再現性、高輝度性などが求められている。
[0004] 中でも高色再現性や高輝度性は、液晶表示装置に具備されているバックライト光源やカラーフィルタに依存する特性であり、バックライトについては、従来の光源である冷陰極蛍光管(CCFL:Cold Cathode Fluorescent Lamp)では、蛍光体が示す発光スペクトル曲線のサブピークに起因して色純度低下が起こるという問題があった。これに対し、高色再現性を実現するため、サブピークのない発光スペクトル特性を示す赤・緑・青3色のLED(発光ダイオード)を組み合わせてバックライトとして用いる手法がとられている。
[0005] LEDはCCFLに比較し、応答性に優れ、消費電力が低く、水銀フリーであるため対環境性に優れるといったメリットも有している。
[0006] カラーフィルタにおいては、日本特開2004-163902号公報及び日本特開2006-47975号公報に開示されるように、緑色画素の着色剤として臭素化銅フタロシアニン緑色顔料であるC.I.(Color Index)ピグメントグリーン36を用いることが知られているが、透過率が高いものが得られておらず、赤色LED、緑色LED、青色LEDを組み合わせて発光色を混色させた白色LED装置を光源として用いた場合においても輝度を向上するため、透過率の高いものが望まれている。
[0007] また、色再現性を向上させるためには、顔料濃度を上げ、高色純度のカラーフィルタを使用する方法が最も有力な方法として提案されているが、色純度が上がるほどカラーフィルタを通過する光の量が減少して輝度が低くなるという問題があり、高色再現性と高輝度性を両立させることが困難であった。
[0008] 本発明の目的は、バックライトに白色LED装置を用いた場合に、液晶表示装置の色再現性を高く保ちながら輝度を向上させることのできるカラーフィルタ、および、これを用いた液晶表示装置を提供することにある。
発明の開示
[0009] 本発明の第1の態様によると、少なくとも青色LEDを有する白色を発光するバックライトを備える液晶表示装置に用いられるカラーフィルタであって、該カラーフィルタは、少なくとも赤色画素、緑色画素、及び青色画素を含み、該緑色画素は、臭素化亜鉛フタロシアニン緑色顔料を含有することを特徴とするカラーフィルタが提供される。
・・・略・・・
図面の簡単な説明
・・・略・・・
[図4] 青色LEDと赤・緑発光蛍光体を組み合わせて発光色を混色させた白色LED装置の発光特性を示す特性図である。」

b 「発明を実施するため最良の形態
[0012] 以下に、本発明の種々の実施形態に係るカラーフィルタおよび液晶表示装置について、詳細に説明する。
・・・略・・・
[0019] 本発明の第3の実施形態に係るカラーフィルタは、バックライトとして青色LEDと赤・緑発光蛍光体を組み合わせて発光色を混色させた白色LED装置を備える液晶表示装置に用いる。この白色LED装置の一例は図4に示すような発光特性を有しており、図2に示す従来の液晶表示装置に用いられていた冷陰極蛍光管(CCFL)の一例の発光スペクトル特性とは異なる。
[0020] 図2のような発光特性をもつCCFLは、青色・緑色の境界490nm付近および赤色・緑色の境界580nm付近にサブピークが存在するため色純度を低下させており、高色再現化のためには、純度の高い蛍光体を変更、もしくは組み合わせるカラーフィルタの分光特性の半値幅を狭める必要があるが、どちらの方法でも大きく輝度を低下させなければ実現できないといった問題があった。
[0021] これに対し、図4のような発光特性を持つ青色LEDと赤・緑発光蛍光体を組み合わせて発光色を混色させた白色LED装置の発光ピークは、サブピークのない3波長光源となるため色再現性を向上させることが可能であった。
[0022] そこで本発明の第3の実施形態では、液晶表示装置において、バックライトに青色LEDと赤・緑発光蛍光体を組み合わせて発光色を混色させた白色LED装置を用い、緑色画素に臭素化亜鉛フタロシアニン緑色顔料、例えばC.I.ピグメントグリーン58を含有するカラーフィルタを備えることで、色再現性を高く保ちながら輝度を向上させることを実現した。
[0023] 以上説明した本発明の第1?第3の実施形態において、緑色画素には、調色用としてC.I.ピグメントイエロー150またはC.I.ピグメントイエロー138を含有させてもよい。
[0024] 図5に示すように、臭素化亜鉛フタロシアニン緑色顔料、例えばC.I.ピグメントグリーン58は、490nm?630nmの透過率が臭素化銅フタロシアニン緑色顔料であるC.I.ピグメントグリーン36より高く、色相が黄味であることから、調色に用いる黄色顔料の配合比率を少なくすることができる。これにより、C.I.ピグメントグリーン36を用いた場合に比べて濁りの少ない、色純度に優れ、且つ明るいカラーフィルタとすることができる。
・・・略・・・
[0026] また、緑色画素が、C.I.ピグメントグリーン58とC.I.ピグメントイエロー138を含有する場合、その重量百分率比は、第1及び第2の実施形態に係る液晶表示装置に用いる場合、〔92?17〕:〔8?83〕であり、第3の実施形態に係る液晶表示装置に用いる場合、〔94?17〕:〔6?83〕であることが望ましい。
[0027] 第1?第3の実施形態に係るカラーフィルタは、少なくとも透明基板上に色画素(当合議体注:「色画素」は、「赤色画素」の誤記である。)、緑色画素、青色画素を備えるカラーフィルタであって、これらの各色画素は、有機顔料と透明樹脂を主成分としたものである。また各色画素には、更にイエロー、マゼンタ、シアン、オレンジなどを同一平面に配列したものでも適応可能である。
・・・略・・・
[0055] バックライトとしてLED、およびカラーフィルタを備えた液晶表示装置の構成の一例について説明する。
[0056] 図6は本発明の第1?第3の実施形態に係る液晶表示装置の概略断面図である。図6の液晶表示装置は薄膜トランジスタ(TFT)駆動型液晶表示装置の典型例であり、対向して配置された透明基板11、21を備え、それらの間には、液晶(LC)が封入されている。
・・・略・・・
[0058] 他方、第2の透明基板21の内面には、本発明のカラーフィルタ22が形成されている。カラーフィルタ22を構成する赤色、緑色および青色画素は、ブラックマトリックス(図示せず)により分離されている。カラーフィルタ22を覆って、必要に応じて透明保護膜(図示せず)が形成され、さらにその上に、例えばITOからなる透明電極層23が形成され、透明電極層23を覆って配向層24が設けられている。また、透明基板21の外面には、偏光板25が形成されている。なお、偏光板15の下方には、本発明のバックライトユニット30が設けられる。
実施例
[0059] 以下、上述した本発明の第1?第3の実施形態に対応する試験例1?3を示す。
[0060] 試験例1
本試験例は、本発明の第1の実施形態に対応する、バックライトに赤色LED、緑色LED、青色LEDを組み合わせて発光色を混色させた白色LED装置を用いた場合の、カラーフィルタの緑色画素に臭素化亜鉛フタリシアニン緑色顔料を用いることの効果を示すものである。
[0061] (アクリル樹脂の合成例)
反応容器にシクロヘキサノン70部を収容し、この容器に窒素ガスを注入しながら80℃に加熱して、同温度でベンジルメタクリレート12.3部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート4.6部、メタクリル酸5.3部、パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート(東亜合成株式会社製「アロニックスM110」)7.4部、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.4部の混合物を2時間かけて滴下して重合反応を行った。
[0062] 滴下終了後、さらに80℃で3時間反応させた後、アゾビスイソブチロニトリル0.2部をシクロヘキサノン10部に溶解させたものを添加し、さらに80℃で1時間反応を続けて、アクリル樹脂共重合体溶液を得た。室温まで冷却した後、アクリル樹脂溶液約2gをサンプリングして180℃、20分加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に合成したアクリル樹脂溶液に不揮発分が20重量%になるようにシクロヘキサノンを添加して、アクリル樹脂溶液を調製した。得られたアクリル樹脂の重量平均分子量Mwは、20000であった。
[0063] (顔料分散ペーストの調製)
顔料分散ペーストは、下記表1に示すように顔料、アクリル樹脂、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、PGMEAとする)を均一に攪拌混合し、直径1.0mmのジルコニアビーズを用いて、サンドミルにて3時間分散した後、5μmのフィルタで濾過することにより調製した。なお、組成比は全て重量比である。また、用いたアクリル樹脂は、上述の合成例で合成したものである。
[表1]
表1

・・・略・・・
[0095] 試験例3
本試験例は、本発明の第3の実施形態に対応する、バックライトとして青色LEDと赤・緑発光蛍光体を組み合わせて発光色を混色させた白色LED装置を用いた場合の、カラーフィルタの緑色画素に臭素化亜鉛フタロシアニン緑色顔料を用いることの効果を示すものである。
[0096] (アクリル樹脂の合成例)
上記試験例1と同様にして、重量平均分子量Mwが20000のアクリル樹脂を含むアクリル樹脂溶液を調製した。
[0097] (顔料分散ペーストの調製)
上記試験例1と同様にして、上記表1に示すような顔料分散ペーストを調製した。
[0098] (感光性着色組成物の調製)
各成分を下記表22?25に示す割合で調合し、スターラーにて各成分が完全に溶解するまで攪拌混合し、1μmのフィルタで濾過することにより、下記表22?25に示すように、感光性着色組成物R-3、G-41?G60、B-3を調製した。
・・・略・・・
[表23]
表23

・・・略・・・
[0100] また、緑色画素の形成に用いる緑色感光性着色組成物は、下記表27、28に示すような顔料比率(重量百分率)の緑色感光性着色組成物G-41?G-60である。
[表27]
表27

・・・略・・・
[0102] 上記顔料比率の感光性着色組成物について、CIE1931XYZ表色系の色度座標xyで赤色画素はx=0.640、緑色画素はy=0.600、青色画素はy=0.600(当合議体注:[00110][表30]の「Blue」の「y」値等からみて、「0.600」は「0.060」の誤記である。)になるよう調整し、下記実施例および比較例で示す組み合わせで3色カラーフィルタを作製した。調整色度値は放送規格であるEBU規格値に基づいたものであるが、この範囲に限定されるものではない。
[0103] 赤色感光性着色組成物は上記表22(表26)に示すR-3を、青色感光性着色組成物は上記表25(表29)に示すB-3を、緑色感光性着色組成物は上記表22、23(表17)に示すG-41?G-50を用い、上記指定色度ねらいにて3色カラーフィルタを作製した。
[0104] これらのカラーフィルタと、青色LED及び赤・緑発光蛍光体を組み合わせて発光色を混色させた白色LED装置を具備するバックライトとの組み合わせを実施例21?30とした。
・・・略・・・
[0106] これらのカラーフィルタと、青色LED及び赤・緑発光蛍光体を組み合わせて発光色を混色させた白色LED装置を具備するバックライトとの組み合わせを比較例21?30とした。
[0107] 〔評価項目〕
(明度)
緑色画素の明度(G-Y)、およびカラーフィルタとしての白表示における明度(W-Y)を、C.I.ピグメントグリーン58(PG58)とC.I.ピグメントグリーン36(PG36)を用いた場合で比較し、明度の高い方を〇、低い方を×とした。
[0108] この比較法において、C.I.ピグメントグリーン58を用いた実施例に係るカラーフィルタと、C.I.ピグメントグリーン36を用いた比較例に係るカラーフィルタとを、CIE1931 XYZ表示系におけるxy色度の値を同一に調色して作成し、しかる後、xy色度の値を同一に調色した実施例と比較例の番号を揃え(例えば実施例1と比較例1が対応する)、それぞれの(G-Y)と(W-Y)の値を比較して判定した。
[0109] 〔評価結果〕
実施例21?30の評価結果を下記表30に、比較例21?30の結果を下記表31にそれぞれ示す。
[0110] なお、下記表30,31中の色度値は、CIE1931 XYZ表色系におけるxy色度およびY(明度)である。
[表30]
表30

・・・略・・・
[0111] 上記表30、31の結果から、以下のことが明らかである。即ち、緑色画素の明度(G-Y)、およびカラーフィルタとしての白表示における明度(W-Y)を、緑色顔料としてC.I.ピグメントグリーン58(PG58)を用いた場合(実施例21?30)と、C.I.ピグメントグリーン36(PG36)を用いた場合(比較例21?30)とを、同じ番号21?30同士で比較した結果、何れの色度値においても、C.I.ピグメントグリーン58(PG58)を用いた場合(実施例21?30)に高くなり、高輝度を実現していることが分かる。」

c 「請求の範囲
[1] 少なくとも青色LEDを有する白色を発光するバックライトを備える液晶表示装置に用いられるカラーフィルタであって、該カラーフィルタは、少なくとも赤色画素、緑色画素、及び青色画素を含み、該緑色画素は、臭素化亜鉛フタロシアニン緑色顔料を含有することを特徴とするカラーフィルタ。
・・・略・・・
[10] 前記バックライトが、青色LEDと赤・緑発光蛍光体を組み合わせて発光色を混色させた白色LED装置であることを特徴とする請求項1に記載のカラーフィルタ。
・・・略・・・
[13] 前記緑色画素はC.I.ピグメントグリーン58とC.I.ピグメントイエロー138を含有することを特徴とする請求項10に記載のカラーフィルタ。
[14] 前記C.I.ピグメントグリーン58とC.I.ピグメントイエロー138の重量百分率比が、〔94?17〕:〔6?83〕であることを特徴とする請求項13に記載のカラーフィルタ。
・・・略・・・
[16] 少なくとも青色LEDを有する白色を発光するバックライトと、少なくとも赤色画素、緑色画素、及び青色画素を含み、該緑色画素は、臭素化亜鉛フタロシアニン緑色顔料を含有するカラーフィルタとを備えることを特徴とする液晶表示装置。」

d 「[図4]



(イ) 引用発明1
a 引用文献1の[0019]によれば、引用文献1における「本発明の第3の実施形態に係るカラーフィルタは、バックライトとして青色LEDと赤・緑発光蛍光体を組み合わせて発光色を混色させた白色LED装置を備える液晶表示装置に用い」られる。また、「この白色LED装置」「は図4に示すような発光特性を有」する。

b 引用文献1の[0027]によれば、「第3の実施形態に係るカラーフィルタは」、「透明基板上に赤色画素、緑色画素、青色画素を備えるカラーフィルタであ」る。

c 引用文献1の[0095]によれば、引用文献1における「実施例」の「試験例3」は、引用文献1における「本発明の第3の実施形態に対応する」。

d 引用文献1の[0100]によれば、「試験例3」において、「緑色画素の形成に用いる緑色感光性着色組成物は、下記表27、28に示すような顔料比率(重量百分率)の緑色感光性着色組成物G-41?G-60である」。
ここで、「表27」によれば、「緑色感光性着色組成物」「G-50」について、「顔料比率」「%」が、「PG58」が「17」「%」、「PY138」が「83」「%」であることが把握できる。
また、引用文献1の[0063][表1]によれば、「PG58」は「顔料」「C.I.Pigment Green58」に対応し、「PY138」が「顔料」「C.I.Pigment Yellow 138」に対応していることが把握できる。

e 引用文献1の[0104]及び[0107]によれば、「試験例3」においては、「カラーフィルタと、青色LED及び赤・緑発光蛍光体を組み合わせて発光色を混色させた白色LED装置を具備するバックライトとの組み合わせを実施例21?30とし」、「緑色画素の明度(G-Y)、およびカラーフィルタとしての白表示における明度(W-Y)を、C.I.ピグメントグリーン58(PG58)とC.I.ピグメントグリーン36(PG36)を用いた場合で比較し、明度の高い方を〇、低い方を×とし」て、「明度」の評価を行っている。
引用文献1の[0109]によれば、「実施例21?30の評価結果」は「表30に」示されているところ、[0110]の[表30]によれば、「G-50」を用いた「実施例30」の「緑色画素」の「CIE1931 XYZ表色系におけるxy色度およびY(明度)」が、それぞれ「0.351」、「0.600」及び「56.22」であることが把握できる。また、「実施例30」の「緑色画素」の「G-Y」が「○」であるから、「Y(明度)」が高いことも把握できる。

f 上記a?eより、引用文献1には、「第3の実施形態に対応する」「試験例3」において、「緑色画素の形成に用いる緑色感光性着色組成物」として「G-50」を用いた「カラーフィルタ」の発明として、以下の発明が記載されているものと認められる(以下、「引用発明1」という。)。

「バックライトとして青色LEDと赤・緑発光蛍光体を組み合わせて発光色を混色させた、以下の[図4]に示すような発光特性を有する白色LED装置を備える液晶表示装置に用いられる、透明基板上に赤色画素、緑色画素、青色画素を備えるカラーフィルタであって、緑色画素の形成に用いる緑色感光性着色組成物(G-50)は、顔料比率(%)が、PG58(C.I.Pigment Green58)が17%、PY138(C.I.Pigment Yellow 138)が83%であり、前記白色LED装置を具備するバックライトと組み合わせたときの緑色画素のCIE1931 XYZ表色系におけるxy色度およびY(明度)が、それぞれ0.351、0.600及び56.22であり、Y(明度)が高い、カラーフィルタ。
[図4]



イ 判断
(ア) 本件特許発明1について
a 対比
本件特許発明1と引用発明1とを対比する。
(a) 引用発明1の「カラーフィルタ」は、「透明基板上に赤色画素、緑色画素、青色画素を備える」。
引用発明1の「緑色画素」及び「透明基板」は、それぞれ本件特許発明1の「緑色画素」及び「透明基板」に相当する。
また、引用発明1の「赤色画素」、「緑色画素」及び「青色画素」は、いずれも着色画素ということができる。
そうすると、引用発明1の「カラーフィルタ」は、本件特許発明1の「カラーフィルタ」に相当し、引用発明1の「カラーフィルタ」は、本件特許発明1の「カラーフィルタ」の「透明基板上に緑色画素を含む複数色の着色画素を備える」との要件を具備する。

(b) 引用発明1の「緑色画素」は、「顔料比率(%)が、PG58(C.I.Pigment Green58)が17%、PY138(C.I.Pigment Yellow 138)が83%」の「緑色感光性着色組成物(G-50)」から形成される。
そうすると、引用発明1の「緑色画素」は、「顔料」として、「PG58(C.I.Pigment Green58)」(「17%」)と「PY138(C.I.Pigment Yellow 138)」(「83%」)を含有する。
引用発明1の「PG58(C.I.Pigment Green58)」及び「PY138(C.I.Pigment Yellow 138)」は、それぞれ本件特許発明1の「ピグメントグリーン58」及び「ピグメントイエロー138」に対応する。
そうしてみると、上記(a)より、引用発明1と、本件特許発明1は、「前記緑色画素に」「ピグメントグリーン58」、「ピグメントイエロー138を」「含有する」点において共通する。

(c) 引用発明1の「白色LED装置」は、「青色LEDと赤・緑発光蛍光体を組み合わせて発光色を混色させた」ものである。
そうすると、引用発明1の「白色LED装置」は、「青色LED」と「赤」「発光蛍光体」と「緑発光蛍光体」とを「組み合わせ」たものである。
技術的にみて、引用発明1の「青色LED」、「赤」「発光蛍光体」及び「緑発光蛍光体」は、それぞれ本件特許発明1の「青色LED」、「赤色発光蛍光体」及び「緑色発光蛍光体」に相当する。

(d) 引用発明1の「白色LED装置」の「発光特性」は、横軸が「波長(nm)」、縦軸が「発光強度」である[図4]に示されている。
[図4]から、引用発明1の「白色LED装置」は、450nmと460nmとの間に「発光強度」のピーク波長が存在することが把握できる。また、610nmと640nmの間に発光強度のピーク波長が存在することが把握できる。
引用発明1の「白色LED装置」は、本件特許発明1の「白色LED装置」に相当し、引用発明1の「白色LED装置」と、本件特許発明1の「白色LED装置」は、「430nm?470nm」、「610nm?670nmのそれぞれの波長範囲内に発光強度のピーク波長を有し」ている点で共通する。
また、上記(c)より、引用発明1の「白色LED装置」は、本件特許発明1の「白色LED装置」における「青色LEDと赤色発光蛍光体および緑色発光蛍光体とを組み合わせた」との要件を具備する。

(e) 引用発明1は、「バックライトとして」「白色LED装置を備える液晶表示装置に用いられる」ものである。
そうすると、引用発明1の「カラーフィルタ」は、「白色LED装置を備え」た「バックライト」を具備する「液晶表示装置に用いられる」ものということができる。
引用発明1の「バックライト」及び「液晶表示装置」は、それぞれ本件特許発明1の「バックライト」及び「液晶表示装置」に対応する。
そうしてみると、引用発明1の「カラーフィルタ」と、本件特許発明1の「カラーフィルタ」は、「430nm?470nm」、「610nm?670nmのそれぞれの波長範囲内に発光強度のピーク波長を有し」た、「青色LEDと赤色発光蛍光体および緑色発光蛍光体とを組み合わせた白色LED装置を備えたバックライトを具備する液晶表示装置に用いられる」ものである点において共通する。

(f) 以上の対比結果を踏まえると、本件特許発明1と引用発明1とは、
「430nmから470nm、610nmから670nmのそれぞれの波長範囲内に発光強度のピーク波長を有した、青色LEDと赤色発光蛍光体および緑色発光蛍光体とを組み合わせた白色LED装置を備えたバックライトを具備する液晶表示装置に用いられる、透明基板上に緑色画素を含む複数色の着色画素を備えるカラーフィルタであって、前記緑色画素にピグメントグリーン58、ピグメントイエロー138を含有する、
カラーフィルタ。」である点で一致し、以下の相違点で相違する、あるいは一応相違する。
(相違点1-1-1)
本件特許発明1の「白色LED装置」は、「520nmから530nm」「の波長範囲内に発光強度のピーク波長を有し」ているのに対して、
引用発明1の白色LED装置は、図4の特性図に示された発光特性を持つ点。

(相違点1-1-2)
「緑色画素」が、
本件特許発明1は、「アルミニウムフタロシアニン顔料」を「含有」し、「アルミニウムフタロシアニン顔料を1質量部としたとき、ピグメントグリーン58が12/17質量部、ピグメントイエロー138が800/357?50/7質量部となる割合で含有する」のに対して、
引用発明1は、「アルミニウムフタロシアニン顔料」を含有していない点。

b 判断
事案に鑑み、まず上記相違点1-1-2について検討する。
(a) 引用文献1における発明の第3の実施形態に係る引用発明1の「カラーフィルタ」、「緑色画素」、「緑色画素」が「顔料」として含有する「PG58(C.I.Pigment Green58)」や「PY138(C.I.Pigment Yellow 138)」に関連して、引用文献1には以下の記載がある。
「[0008] 本発明の目的は、バックライトに白色LED装置を用いた場合に、液晶表示装置の色再現性を高く保ちながら輝度を向上させることのできるカラーフィルタ、および、これを用いた液晶表示装置を提供することにある。」
「[0009] 本発明の第1の態様によると、少なくとも青色LEDを有する白色を発光するバックライトを備える液晶表示装置に用いられるカラーフィルタであって、該カラーフィルタは、少なくとも赤色画素、緑色画素、及び青色画素を含み、該緑色画素は、臭素化亜鉛フタロシアニン緑色顔料を含有することを特徴とするカラーフィルタが提供される。」
「[0022] そこで本発明の第3の実施形態では、液晶表示装置において、バックライトに青色LEDと赤・緑発光蛍光体を組み合わせて発光色を混色させた白色LED装置を用い、緑色画素に臭素化亜鉛フタロシアニン緑色顔料、例えばC.I.ピグメントグリーン58を含有するカラーフィルタを備えることで、色再現性を高く保ちながら輝度を向上させることを実現した。」
「[0023] 以上説明した本発明の第1?第3の実施形態において、緑色画素には、調色用として・・・略・・・C.I.ピグメントイエロー138を含有させてもよい。」
「[0024] 図5に示すように、臭素化亜鉛フタロシアニン緑色顔料、例えばC.I.ピグメントグリーン58は、490nm?630nmの透過率が臭素化銅フタロシアニン緑色顔料であるC.I.ピグメントグリーン36より高く、色相が黄味であることから、調色に用いる黄色顔料の配合比率を少なくすることができる。これにより、C.I.ピグメントグリーン36を用いた場合に比べて濁りの少ない、色純度に優れ、且つ明るいカラーフィルタとすることができる。」
「[0026] また、緑色画素が、C.I.ピグメントグリーン58とC.I.ピグメントイエロー138を含有する場合、その重量百分率比は、・・・略・・・第3の実施形態に係る液晶表示装置に用いる場合、〔94?17〕:〔6?83〕であることが望ましい。」
そうしてみると、引用文献1には、「緑色画素」に顔料として含有される「ピグメントグリーン58」と「ピグメントイエロー138」に関して、「ピグメントグリーン58」は、490nm?630nmの透過率が高く、色相が黄味であることから、調色に用いる黄色顔料の配合比率を少なくでき、これにより、「ピグメントグリーン36」を用いた場合に比べて濁りの少ない、色純度に優れ、且つ明るいカラーフィルタとすることができることや、「ピグメントグリーン58」と「ピグメントイエロー138」の重量比を94:6?17:83とすることについては記載されているものと認められる。
しかしながら、引用文献1には、「緑色画素」に「ピグメントグリーン58」と「ピグメントイエロー138」に加えて、更に「アルミニウムフタロシアニン顔料」を含有させ、「アルミニウムフタロシアニン顔料」と「ピグメントグリーン58」、「ピグメントイエロー138」を、「アルミニウムフタロシアニン顔料を1質量部としたとき、ピグメントグリーン58が12/17質量部、ピグメントイエロー138が800/357?50/7質量部となる割合」とすることは記載も示唆もされていない。
加えて、引用文献1には、430nmから470nm、520nmから530nm、610nmから670nmのそれぞれの波長範囲内に発光強度のピーク波長を有した、青色LEDと赤色発光蛍光体および緑色発光蛍光体とを組み合わせた白色LED装置を備えたバックライトとの組み合わせを前提とするカラーフィルタの緑色画素において、高色再現性及び明るい緑色表示(高明度化)が得られるように(本件特許の明細書【0012】、【0014】、【0015】、【0018】)、ピグメントグリーン58と比較して500nm付近の透過率が高く、470nm以下の透過率が低い青味のグリーンである「アルミニウムフタロシアニン顔料」の着色力の強さに着目して(本件特許の明細書【0027】)、緑色画素に、「アルミニウムフタロシアニン顔料」と「ピグメントグリーン58」、「ピグメントイエロー138」を、「アルミニウムフタロシアニン顔料を1質量部としたとき、ピグメントグリーン58が12/17質量部、ピグメントイエロー138が800/357?50/7質量部となる割合」(以下、「特定比」という。)で含有させる(本件特許の明細書【0080】、【0081】、【0083】、【0086】【表1】、【0089】【表2】)といった技術思想は記載も示唆もされていない。また、このような技術事項が本件出願前の当業者における周知技術や技術常識であったと認めることもできない。
そうすると、引用発明1において、緑色画素に、アルミニウムフタロシアニン顔料をさらに含有させ、アルミニウムフタロシアニン顔料と、ピグメントグリーン58、ピグメントイエロー138を上記特定比となる割合で含有させる構成とすることには動機付けがない。

(b) 特許異議申立人が甲第3号証として提出した引用文献3(特開2012-247588号公報)には、カラーフィルタの緑色フィルタセグメントに関して、優れた分散性、分散安定性を有し、コントラスト比の経時的な低下を引き起こさないカラーフィルタ用着色組成物を提供するために、特定の構造を有する「アルミニウムフタロシアニン顔料」と、「ピグメントグリーン58」等の酸性基量が100?600μmol/gの顔料とからなるカラーフィルタ用着色組成物の構成とすること(【0014】、【0015】、【0017】)、酸性基量が100?600μmol/gの顔料としては、明度及び分散性の観点から、「ピグメントグリーン58」が好ましいこと、(【0067】)、「アルミニウムフタロシアニン顔料」に対し、酸性基量が100?600μmol/gの顔料の重量比が5/95以上であることが分散安定性の観点から好ましいこと(【0068】)、色度の調整のために黄色色素・黄色顔料を含有させてもよく、黄色顔料としては、耐熱性、耐光性及び明度の観点から「ピグメントイエロー138」が好ましいこと(【0077】)、黄色色素を併用する場合には、黄色色素/「アルミニウムフタロシアニン顔料」の重量比を40/60?85/15の範囲とすることで、明度に優れ、色度範囲の広い緑色フィルタセグメントの形成が可能となること(【0079】)が記載されている。
また、引用文献3には、「実施例19」の、アルミニウムフタロシアニン顔料:ピグメントグリーン58:ピグメントイエロー138の質量比が1:0.25:1.5の緑色の「感光性着色組成物2」を用いて、y=0.600となるように実際に緑色フィルタセグメントを形成することや、「実施例32」の緑色の「感光性着色組成物15」として、アルミニウムフタロシアニン顔料:ピグメントグリーン58:ピグメントイエロー138の質量比を1:0.25:約1.67としたものが記載されている。
そうしてみると、引用文献3には、緑色フィルタセグメントに関して、分散性、分散安定性、明度等の観点から、「アルミニウムフタロシアニン顔料」1質量部に対して、「ピグメントグリーン58」を5/95(0.0526・・・)質量部以上含有させること、色度調整、明度等の観点から、「アルミニウムフタロシアニン顔料」1質量部に対して、「ピグメントイエロー138」を40/60(0.666・・・)?85/15(5.666・・・)質量部含有させることが記載・示唆されているということはできる。
しかしながら、引用発明1において、引用文献3に記載された上記の記載・示唆を参考にしたとしても、CIE1931 XYZ表色系におけるxy色度が「0.351、0.600」であって高明度な緑色画素を、「アルミニウムフタロシアニン顔料を1質量部としたとき、ピグメントグリーン58が12/17質量部、ピグメントイエロー138が800/357?50/7質量部となる割合」で含有する構成には到らない。すなわち、引用文献3のy=0.600の緑色画素を得ることができる実施例19のアルミニウムフタロシアニン顔料:ピグメントグリーン58:ピグメントイエロー138の1:0.25:1.5の割合、あるいは実施例32の1:0.25:約1.67の割合を参考にしたとしても、これら2つの含有割合は上記の特定比と大きく異なる。

(c) また、特許異議申立人が甲第2号証、甲第5号証として提出した引用文献2、5等に記載されているように、430nmから470nm、520nmから530nm、610nmから670nmのそれぞれの波長範囲内に発光強度のピーク波長を有した、青色LEDと赤色発光蛍光体および緑色発光蛍光体とを組み合わせた白色LED装置を備えたバックライトとカラーフィルタを組み合わることは、本件特許の出願前に周知の事項である。
さらに、特許異議申立人が甲第5号証、甲第6号証として提出した引用文献5、6や特開2013-113973号公報等に記載されているように、カラー液晶表示装置の色再現性に関し、3原色のXYZ表色系における色度(x,y)座標を、赤(0.67、0.33)、緑(0.21、0.71)、青(0.14、0.08)の3点とするNTSC規格は、本件特許の出願前に周知の事項である。
しかしながら、上記の引用文献3の記載・示唆に加えて、上記の本件特許の出願前に周知の各事項を参考にしたとしても、上記の引用文献3に記載・示唆される「アルミニウムフタロシアニン顔料」に対する「ピグメントグリーン58」の割合(範囲)及び「アルミニウムフタロシアニン顔料」に対する「ピグメントイエロー138」の割合(範囲)から、白色LED装置と組み合わせて用いられるカラーフィルタにおいて、高明度な緑(0.21、0.71)が得られる顔料割合として、「アルミニウムフタロシアニン顔料を1質量部としたとき、ピグメントグリーン58が12/17質量部、ピグメントイエロー138が800/357?50/7質量部」とする特定の割合とすることは、当業者にとって容易になし得たことということはできない。

(d) また、特許異議申立人が甲第4号証として提出した引用文献4(特開2011-157478号公報)には、白色LED光源を用いたカラー表示装置においても、高い明度と広い色再現領域が可能なカラーフィルタの形成に用いられる緑色着色剤に関し(【0001】、【0018】、【0027】)、緑色着色組成物に、アルミニウムフタロシアニン顔料および黄色顔料を含有させること(【0047】)、黄色顔料としては、明度の観点からピグメントイエロー138等が好ましいこと(【0048】)、黄色顔料/アルミニウムフタロシアニン顔料の重量比を、30/70(0.428・・・)?80/20(4)の範囲とすること、カラーフィルタの色特性に優れること(【0049】)、緑色着色組成物には、ピグメントグリーン58等の緑顔料を併用することができること(【0050】)、緑色顔料/アルミニウムフタロシアニン顔料の重量比が、0/100(0)?20/80(0.25)が好ましいこと(【0051】)、白色LEDとしては、青色LEDが放射する青色光の一部が蛍光体層を透過し残りは黄色蛍光体に吸収され黄色の光に変換される2波長LED(分光特性は図2に示される)、青色LEDが放射する青色光の一部が蛍光体層を透過し残りは緑色蛍光体と赤色蛍光体に吸収され、それぞれ緑色と赤色の光に変換される3波長LED(分光特性が図3に示される)などいずれも用いることができることが記載されている。
そうしてみると、引用文献4には、白色LED装置と組み合わせて用いられるカラーフィルタにおいて、緑色画素において、(ピグメントグリーン58等の)緑色顔料/アルミニウムフタロシアニン顔料の重量比を0/100(0)?20/80(0.25)とすること、(ピグメントイエロー138等の)黄色顔料/アルミニウムフタロシアニン顔料の重量比を30/70(0.428・・・)?80/20(4)とすることが記載・示唆されているということができる。
しかしながら、上記の引用文献4の一般的な記載・示唆を参考にしたとしても、引用発明1において、「アルミニウムフタロシアニン顔料を1質量部としたとき、ピグメントグリーン58が12/17質量部、ピグメントイエロー138が800/357?50/7質量部となる割合」を得ることはできない(「アルミニウムフタロシアニン顔料を1質量部としたとき」の「ピグメントグリーン58」の質量部に関し、引用文献4の記載・示唆は、最大でも0.25(質量部)に留まる。)。

(e) さらに、特許許異議申立人が周知技術を示すために例示した引用文献7(特開2013-95870号公報)、引用文献8(特開2013-24934号公報)のいずれにも、上記相違点1-1-2に係る本件特許発明1の構成は記載も示唆もされていない。

(f) 以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、引用発明1、引用文献3、4に記載された技術、引用文献2、5に記載された周知の技術及び引用文献7、8等に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

c 小括
本件特許発明1は、引用発明1、引用文献3、4に記載された技術、引用文献2、5に記載された周知の技術及び引用文献7、8等に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

(イ) 本件特許発明2、3について
a 本件特許の特許請求の範囲の請求項2、3は、いずれも、請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものであって、本件特許発明2、3は、本件特許発明1の構成を全て具備し、これに限定を加えたものである。

b そうすると、上記(ア)のとおり、本件特許発明1は、当業者が,引用発明1、引用文献3、4に記載された技術、引用文献2、5に記載された周知の技術及び引用文献7、8等に記載された周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるといえない以上、本件特許発明2、3も、当業者が引用発明1、引用文献3、4に記載された技術、引用文献2、5に記載された周知の技術及び引用文献7、8等に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

(2) 引用文献2を主引用例とする「理由2(進歩性)」について
ア 本件特許発明1について
(ア) 引用文献2の記載から把握される発明及び対比
本件特許発明1と、引用文献2の[請求項1]、[請求項2]、[請求項6]、[請求項7]、段落[0006]、[0010]、[0012]、[0027]?[0031]、[0078]?[0081]、[0088]、[0089]及び[図2](青色LEDと赤色発光蛍光体と緑色発光蛍光体からの発光の混色により白色光を生成する白色LEDの発光特性の一例を示す図)の記載(特に、請求項2の「緑色画素がC.I.ピグメントグリーン58を含有する」との記載、[0030]の「緑色画素は、・・・C.I.ピグメントイエロー138・・・よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することが好まし」いとの記載を参照。)から把握される、[図2]に示された発光スペクトルを持つ、青色LEDと赤色発光蛍光体と緑色発光蛍光体を組み合わせてなる白色LEDからなるバックライトを具備する液晶表示装置に用いられる、「カラーフィルタ」の発明(以下、「引用発明2」という。)とを対比すると、両者は、以下の点で相違し、その余の点で一致する。
(相違点2-1-1)
「緑色画素」に、
本件特許発明1は、「アルミニウムフタロシアニン顔料」を「含有」し、「アルミニウムフタロシアニン顔料を1質量部としたとき、ピグメントグリーン58が12/17質量部、ピグメントイエロー138が800/357?50/7質量部となる割合で含有する」のに対して、
引用発明2は、「アルミニウムフタロシアニン顔料」を含有していない点。

(イ) 判断
上記相違点2-1-1について検討する。上記相違点2-1-1は、上記(1)イ(ア)bにおいて検討済みの相違点1-1-2と同じであり、上記相違点2-1-1についての判断は、以下のとおりである。
a 引用文献2には、「緑色画素」に「ピグメントグリーン58」と「ピグメントイエロー138」に加えて、「アルミニウムフタロシアニン顔料」を含有させ、「ピグメントイエロー138」を、「アルミニウムフタロシアニン顔料を1質量部としたとき、ピグメントグリーン58が12/17質量部、ピグメントイエロー138が800/357?50/7質量部となる割合」とすることや、白色LED装置を備えたバックライトとの組み合わせを前提とするカラーフィルタの緑色画素において、高色再現性及び明るい緑色表示(高明度化)が得られるように(本件特許の明細書【0012】、【0014】、【0015】、【0018】)、ピグメントグリーン58と比較して500nm付近の透過率が高く、470nm以下の透過率が低い青味のグリーンである「アルミニウムフタロシアニン顔料」の着色力の強さに着目して(本件特許の明細書【0027】)、緑色画素に「アルミニウムフタロシアニン顔料」と「ピグメントグリーン58」、「ピグメントイエロー138」を上記特定比で含有させる(本件特許の明細書【0080】、【0081】、【0083】、【0086】【表1】、【0089】【表2】)といった技術思想は記載も示唆もされていない。また、このような技術事項が本件出願前の当業者における周知技術や技術常識であったと認めることもできない。
そうすると、引用発明2において、緑色画素に、アルミニウムフタロシアニン顔料をさらに含有させ、アルミニウムフタロシアニン顔料と、ピグメントグリーン58、ピグメントイエロー138を上記特定比となる割合で含有させる構成とすることには動機付けがない。

b また、本件特許の出願前に周知のNTSC規格、あるいは、これに加えて引用文献3及び引用文献4に記載・示唆された、アルミニウムフタロシアニン顔料とピグメントグリーン58との割合(範囲)やアルミニウムフタロシアニン顔料とピグメントイエロー138との割合(範囲)を参考にしたとしても、引用発明2において、上記相違点2-1-1に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者にとって容易になし得たものということはできない(上記(1)イ(ア)b(b)?(d)参照。)。

c さらに、引用文献1、5?8のいずれにも、上記相違点2-1-1に係る本件特許発明1の構成は記載も示唆もされていない。

d 以上のとおりであるから、本件特許発明1は、引用発明2、引用文献3、4に記載された技術、引用文献2、5に記載された周知の技術及び引用文献7、8等に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

(ウ) 小括
本件特許発明1は、引用発明2、引用文献3、4に記載された技術、引用文献2、5に記載された周知の技術及び引用文献7、8等に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

イ 本件特許発明2、3について
本件特許発明2、3は、いずれも、本件特許発明1の構成を全て具備し、これに限定を加えたものである。そうすると、本件特許発明2、3も、当業者が引用発明2、引用文献3、4に記載された技術、引用文献2、5に記載された周知の技術及び引用文献7、8等に記載された周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものということはできない。

(3) 引用文献3を主引用例とする「理由1(新規性)」及び「理由2(進歩性)」について
ア 本件特許発明1について
(ア) 引用文献3の記載から把握される発明及び対比
本件特許発明1と、引用文献3の【0192】?【0194】、【0203】【表1】(「アルミニウムフタロシアニン顔料」「青色着色剤(PB-2)」について)、【0217】(「黄色着色組成物1」が「黄色着色剤1(C.I.ピグメントイエロー138)」を含む点)、【0205】【表2】(「着色剤(P-1)」「C.I.ピグメントグリーン58」について)、【0220】、【0227】【表5】(「実施例2」の「着色組成物2」が、「着色剤1」として、「青色着色剤」「PB-2」を、「着色剤2」として「着色剤」「P-1」を含む点)、【0237】、【0238】【表7】(「実施例19」の「感光性着色組成物2」が「着色組成物2」、「黄色着色組成物1」を含む点)、【0248】?【0253】(「カラーフィルタの作製」について)の記載から把握される、「感光性着色組成物2を用いてy=0.600になるように」「緑色フィルタセグメント」「を形成し」た「カラーフィルタ」の発明(以下、「引用発明3」という。)とを対比すると、やはり、次の相違点が見いだされる。
(相違点3-1-1)
「緑色画素」に、
本件特許発明1は、「アルミニウムフタロシアニン顔料を1質量部としたとき、ピグメントグリーン58が12/17質量部、ピグメントイエロー138が800/357?50/7質量部となる割合で含有」しているのに対して、
引用発明3は、そのような割合で含有していない点。

(イ) 新規性及び進歩性についての判断
a 上記相違点3-1-1は、実質的な相違点を構成する。
してみると、本件特許発明1は、引用文献3に記載された引用発明3であるということはできない。

b 上記相違点3-1-1-について検討する。
(a) 引用文献3の【0064】、【0067】?【0069】、【0076】、【0077】、【0079】の記載からみて、引用文献3には、引用発明3の「緑色フィルタセグメント」を形成する「着色組成物2」におけるアルミニウムフタロシアニン顔料、ピグメントグリーン58及びピグメントイエロー138の割合に関して、アルミニウムフタロシアニン顔料に対し、ピグメントグリーン58等の「酸性基量が100?600μmol/g」の顔料の重量比を5/95(0.0526・・・)以上とすること、(ピグメントイエロー138等の)黄色色素(黄色顔料)/アルミニウムフタロシアニン顔料の重量比を40/60(0.666・・・)?85/15(5.666・・・)とすることが記載・示唆されているものと認められる。
しかしながら、引用発明3において、引用文献3の上記記載・示唆を参考にしたとしても、y=0.600の緑色フィルタセグメントを、「アルミニウムフタロシアニン顔料を1質量部としたとき、ピグメントグリーン58が12/17質量部、ピグメントイエロー138が800/357?50/7質量部となる割合」で含有する構成とすることは、当業者にとって容易になし得たものということはできない。

(b) また、引用文献1、2、4?8のいずれにも、上記相違点3-1-1に係る本件特許発明1の構成は記載も示唆もされていないことも既に述べたとおりである。

(c) 以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、引用発明3、引用文献4に記載された技術、引用文献2、5に記載された周知の技術及び引用文献7、8等に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

(ウ) 小括
本件特許発明1は、引用文献3に記載された引用発明3であるということはできない。
本件特許発明1は、引用発明3、引用文献4に記載された技術、引用文献2、5に記載された周知の技術及び引用文献7、8等に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

イ 本件特許発明2,3について
本件特許発明2、3は、いずれも、本件特許発明1の構成を全て具備し、これに限定を加えたものである。そうすると、本件特許発明2、3も、引用発明3、引用文献4に記載された技術、引用文献2、5に記載された周知の技術及び引用文献7、8等に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

(4) 引用文献4を主引用例とする「理由1(新規性)」及び「理由2(進歩性)」について
ア 本件特許発明1について
(ア) 引用文献4の記載から把握される発明及び対比
本件特許発明1と、引用文献4の請求項1,4?8、段落【0013】?【0015】、【0047】、【0048】、【0050】、【0112】等の記載から把握される、3波長白色LED光源を有する液晶表示装置に用いられるカラーフィルタの発明(以下、「引用発明4」という。)とを対比すると、やはり、次の相違点が見いだされる。
(相違点4-1-1)
「緑色画素」に、
本件特許発明1は、「アルミニウムフタロシアニン顔料を1質量部としたとき、ピグメントグリーン58が12/17質量部、ピグメントイエロー138が800/357?50/7質量部となる割合で含有」しているのに対して、
引用発明4は、その含有割合が不明である点。

(イ) 新規性及び進歩性についての判断
a 上記相違点4-1-1は、実質的な相違点を構成する。
してみると、本件特許発明1は、引用文献4に記載された引用発明4であるということはできない。

b 上記相違点4-1-1について検討する。
(a) 引用文献4の【0049】、【0051】の記載からみて、引用文献4には、カラーフィルタの緑画画素において、明度、色特性の観点から、ピグメントイエロー138等の黄色顔料/アルミニウムフタロシアニン顔料の重量比を30/70?80/20とすること、色度調整を容易にするとともに、厚膜化しないように、ピグメントグリーン58等の緑色顔料/アルミニウムフタロシアニン顔料の重量比を0/100?20/80とすることが記載・示唆されている。
しかしながら、引用文献4の上記の記載・示唆に基づき、緑色画素の顔料割合を変更することを考えたとしても、引用発明4において、「アルミニウムフタロシアニン顔料を1質量部としたとき、ピグメントグリーン58が12/17質量部、ピグメントイエロー138が800/357?50/7質量部となる割合で含有」する構成とすることは、当業者が容易になし得たものということはできない(「アルミニウムフタロシアニン顔料を1質量部としたとき」の「ピグメントグリーン58」の質量部に関し、引用文献4の記載・示唆は、最大でも0.25(質量部)に留まる。)。

(b) また、引用文献1、2、3、5?8のいずれにも、上記相違点4-1-1に係る本件特許発明1の構成は記載も示唆もされていない。

(c) 以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、引用発明4、引用文献3に記載された技術、引用文献2、5に記載された周知の技術及び引用文献7、8等に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

(ウ) 小括
本件特許発明1は、引用文献4に記載された引用発明4であるということはできない。
本件特許発明1は、引用発明4、引用文献3に記載された技術、引用文献2、5に記載された周知の技術及び引用文献7、8等に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

イ 本件特許発明2,3について
本件特許発明2、3は、いずれも、本件特許発明1の構成を全て具備し、これに限定を加えたものである。そうすると、本件特許発明2、3も、引用発明4、引用文献3に記載された技術、引用文献2、5に記載された周知の技術及び引用文献7、8等に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

(5) 引用文献8を主引用例とする「理由1(新規性)」及び「理由2(進歩性)」について
ア 本件特許発明1について
(ア) 引用文献の記載から把握される発明及び対比
本件特許発明1と、引用文献8の請求項1,5、段落【0001】、【0043】、【0046】?【0049】等の記載から把握される、カラーフィルタの発明(以下、「引用発明8」という。)とを対比すると、やはり、次の相違点が見いだされる。
(相違点8-1-1)
「緑色画素」に、
本件特許発明1は、「アルミニウムフタロシアニン顔料を1質量部としたとき、ピグメントグリーン58が12/17質量部、ピグメントイエロー138が800/357?50/7質量部となる割合で含有」しているのに対して、
引用発明8は、その含有割合が不明である点。

(イ) 新規性及び進歩性についての判断
a 上記相違点8-1-1は、実質的な相違点を構成する。
してみると、本件特許発明1は、引用文献8に記載された引用発明8であるということはできない。

b 上記相違点8-1-1について検討する。
(a) 引用文献8には、高明度を有する緑色フィルタセグメントを形成するために、併用可能な青色着色剤であるアルミニウムフタロシアニン顔料の含有量について記載されていない。
そうしてみると、引用発明8において、緑色フィルタセグメントの明度を考慮して、ピグメントイエロー138、ピグメントグリーン58、アルミニウムフタロシアニン顔料の割合を調整することを考えたとしても、引用発明8おいて、「アルミニウムフタロシアニン顔料を1質量部としたとき、ピグメントグリーン58が12/17質量部、ピグメントイエロー138が800/357?50/7質量部となる割合で含有」する構成とすることは、当業者が容易になし得たものということはできない。

(b) また、引用文献1?7いずれにも、上記相違点8-1-1に係る本件特許発明1の構成は記載も示唆もされていない。

(c) 以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、引用発明8、引用文献3、4、7に記載された技術、引用文献2、5に記載された周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

(ウ) 小括
本件特許発明1は、引用文献8に記載された引用発明8であるということはできない。
本件特許発明1は、引用発明8、引用文献3、4、7に記載された技術、引用文献2、5に記載された周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

イ 本件特許発明2,3について
本件特許発明2、3は、いずれも、本件特許発明1の構成を全て具備し、これに限定を加えたものである。そうすると、本件特許発明2、3も、引用発明8、引用文献3、4、7に記載された技術、引用文献2、5に記載された周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

(5) 引用文献7を主引用例とする「理由1(新規性)」及び「理由2(進歩性)」について
ア 本件特許発明1について
(ア) 引用文献の記載から把握される発明及び対比
本件特許発明1と、引用文献7の請求項1,4?7、段落【0001】、【0061】?【0065】等の記載から把握される、カラーフィルタの発明(以下、「引用発明7」という。)とを対比すると、やはり、次の相違点が見いだされる。
(相違点7-1-1)
「緑色画素」に、
本件特許発明1は、「アルミニウムフタロシアニン顔料を1質量部としたとき、ピグメントグリーン58が12/17質量部、ピグメントイエロー138が800/357?50/7質量部となる割合で含有」しているのに対して、
引用発明7は、その含有割合が不明である点。

(イ) 新規性及び進歩性についての判断
a 上記相違点7-1-1は、実質的な相違点を構成する。
してみると、本件特許発明1は、引用文献7に記載された引用発明7であるということはできない。

b 上記相違点7-1-1について検討する。
(a) 引用文献7には、緑色フィルタセグメントにおいて、明度の観点から含有される青色着色剤(青色顔料)であるアルミニウムフタロシアニン顔料の含有量について記載されていない。
そうしてみると、引用発明7において、緑色フィルタセグメントの明度を考慮して、ピグメントイエロー138、ピグメントグリーン58、アルミニウムフタロシアニン顔料の割合を調整することを考えたとしても、引用発明7おいて、「アルミニウムフタロシアニン顔料を1質量部としたとき、ピグメントグリーン58が12/17質量部、ピグメントイエロー138が800/357?50/7質量部となる割合で含有」する構成とすることは、当業者が容易になし得たものということはできない。

(b) また、引用文献1?6、8いずれにも、上記相違点7-1-1に係る本件特許発明1の構成は記載も示唆もされていない。

(c) 以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、引用発明7、引用文献3、4、8に記載された技術、引用文献2、5に記載された周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

(ウ) 小括
本件特許発明1は、引用文献7に記載された引用発明7であるということはできない。
本件特許発明1は、引用発明7、引用文献3、4、8に記載された技術、引用文献2、5に記載された周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

イ 本件特許発明2,3について
本件特許発明2、3は、いずれも、本件特許発明1の構成を全て具備し、これに限定を加えたものである。そうすると、本件特許発明2、3も、引用発明7、引用文献3、4、8に記載された技術、引用文献2、5に記載された周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消しの理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許を取り消すことはできない。
また、他に、本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
430nmから470nm、520nmから530nm、610nmから670nmのそれぞれの波長範囲内に発光強度のピーク波長を有した、青色LEDと赤色発光蛍光体および緑色発光蛍光体とを組み合わせた白色LED装置を備えたバックライトを具備する液晶表示装置に用いられる、透明基板上に緑色画素を含む複数色の着色画素を備えるカラーフィルタであって、前記緑色画素にアルミニウムフタロシアニン顔料とピグメントグリーン58、ピグメントイエロー138を、アルミニウムフタロシアニン顔料を1質量部としたとき、ピグメントグリーン58が12/17質量部、ピグメントイエロー138が800/357?50/7質量部となる割合で含有することを特徴とするカラーフィルタ。
【請求項2】
前記白色LED素子を光源とするバックライトで測色した表示色度がXYZ表色系でx=0.210±0.010、y=0.710±0.010の範囲で、明度が42.5以上である緑色画素を具備することを特徴とする請求項1に記載のカラーフィルタ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のカラーフィルタを具備することを特徴とする液晶表示装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-03-02 
出願番号 特願2014-214414(P2014-214414)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (G02B)
P 1 651・ 121- YAA (G02B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 中山 佳美  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 関根 洋之
河原 正
登録日 2018-10-12 
登録番号 特許第6413615号(P6413615)
権利者 凸版印刷株式会社
発明の名称 カラーフィルタおよび液晶表示装置  

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