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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) A45D
管理番号 1361510
判定請求番号 判定2019-600034  
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2020-05-29 
種別 判定 
判定請求日 2019-11-28 
確定日 2020-04-03 
事件の表示 上記当事者間の特許第5450325号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 甲号証に示す「金箔マスクの使用方法」は、特許第5450325号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 第1 請求の趣旨と手続の経緯

本件判定請求の趣旨は,令和元年11月28日付けの判定請求書によれば,判定請求書の「6.(5)イ号方法の説明」に示すイ号方法は,特許5450325号(以下,「本件特許」という。)の請求項1に係る特許発明(以下,「本件特許発明」という。)の技術的範囲に属する,との判定を求めるものである。

また,本件特許に係る出願(特願2010-199271号)は,平成18年5月26日に出願され,同年7月12日に登録された実用新案登録第3124098号に基づいて平成21年3月26日に特許出願された特願2009-75950号の一部を平成22年9月6日に新たな特許出願としたものであって,本件に係る手続の経緯は,次のとおりである。
平成22年 9月 6日 本件特許に係る特許出願(遡及日:平成1
8年5月26日)
平成24年10月 9日付け 拒絶理由通知
平成24年11月27日 意見書,手続補正書の提出
平成24年12月25日付け 拒絶査定
平成25年 3月22日 拒絶査定不服審判請求,手続補正書の提出
平成25年 9月10日付け 拒絶理由通知
平成25年 9月20日 手続補正書の提出
平成25年11月25日付け 審決
平成26年 1月10日 本件特許登録
平成31年 2月 8日付け 一次判定請求(判定2019-60000
6号)
平成31年 4月17日付け 判定請求答弁書,証拠説明書
令和 元年 5月15日付け 審尋(請求人及び被請求人に対して)
令和 元年 6月12日付け 判定事件回答書(被請求人)
令和 元年 6月14日付け 判定事件回答書,証拠説明書(請求人)
令和 元年 7月31日付け 上申書(請求人)
令和 元年 8月 2日付け 上申書(被請求人)
令和 元年 8月22日付け 一次判定判定書
令和 元年11月28日付け 本件判定請求
令和 2年 2月 5日付け 判定請求答弁書

第2 本件特許発明

本件特許発明は,本件特許明細書及び図面の記載からみて,特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであり,これを符号を付して構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,分説した構成要件を「構成要件A」などという。)。
「A.顔の輪郭に合わせた楕円形とし,かつ目及び口の対応部に窓孔を形成し,鼻部に切り込みを形成した金箔と,金箔の下面に補強シートを備え,
B.補強シートは前記金箔と対応した目及び口の窓孔と前記金箔と対応した鼻部の切り込みとが形成され,補強シートは前記金箔から剥離可能で前記金箔より一回り大きい紙製でその周囲の摘み片が設けられ,
C.この摘み片を摘み,顔面に前記金箔を当て,前記補強シートを介して前記金箔が顔の全面に密着すべく押さえ,密着が得られたら前記補強シートを前記金箔から剥離させてから適宜時間経過後,前記金箔を顔から落とす
D.ことを特徴とする金箔による化粧方法。」

第3 当事者の主張

1.請求人の主張の概要
請求人は,判定請求書において,おおむね次の理由により,イ号方法は,本件特許発明の技術的範囲に属する旨を主張している。
(1)イ号について(判定請求書「6.(5)」)
イ号方法は,本件特許発明に即して説明すると,次のとおりのものである。
「ア.顔に当てられる大きさを有し,かつ目及び口の対応部に窓孔を形成し,鼻部に切り込みを形成した金箔と,金箔の下面に補強シートを備え,
イ.補強シートは前記金箔と対応した目及び口の窓孔と前記金箔と対応した鼻部の切り込みとが形成され,補強シートは前記金箔から剥離可能で前記金箔より一回り大きい紙製でその周囲の摘み片が設けられ,
ウ.この摘み片を摘み,顔面に前記金箔を当て,前記補強シートを介して前記金箔が顔の全面に密着すべく押さえ,密着が得られたら前記補強シートを前記金箔から剥離させてから適宜時間経過後,前記金箔を顔から落とす,
金箔による化粧方法」
(2)本件特許発明の各構成要件の充足について(判定請求書「6.(6)」)
一次判定では,本件特許発明とイ号方法は,1.本件特許発明は「顔の輪郭に合わせた楕円形状にし」ているのに対して,イ号方法は「顔に当てられる大きさを有し」ている点と,2.本件特許発明は「補強シートは前記金箔から剥離可能で前記金箔より一回り大きい紙製で」あるのに対して,イ号方法は「転写シートはレーヨン繊維ビニロン繊維等を混合して形成した不織布と,ポリエチレンフィルムで構成されたポリエチレン層からなる二重構造の積層フィルム」である点で相違するとされた。
ア.「顔の輪郭に合わせた楕円形」について(判定請求書「6.(6)(6-2)」)
本件特許発明とイ号方法は,顔に置く程度の大きさである点では同じであり,金箔では顔の大きさ程度のものを一律の大きさに作ることは困難であることからすれば,両者は,実質的に同じ内容である。
すなわち,本件特許発明の「顔の輪郭に合わせた楕円形状にし」ているとは,金箔で顔を覆うために,顔の輪郭に合わせた金箔の形状の説明として「楕円形」と説明したものであり,「楕円形」には,平面的な楕円形状のみならず立体形状の楕円状も含まれる。本件特許発明は,「顔の輪郭に合わせた」楕円形としているものであって,単なる平面の「楕円形」ではなく,「顔の輪郭に合わせた楕円形」としている「立体的な楕円形」である。
イ号方法の金箔は,イ号方法により顔に載せて押さえ付けると,完全な楕円ではないとしても,顔の輪郭に沿って立体的な楕円形を認識し得る状態になる。
イ.「補強シートは・・・紙製」について(判定請求書「6.(6)(6-3)?(6-4)」)
本件特許発明の補強シートとイ号方法の補強シートは同じ作用効果を生じる。
紙製の概念は多義的であって,合成樹脂製フィルムや不織布を含まないとは言えない。
イ号方法の補強シートが,一次判定において被請求人が主張したように「レーヨン繊維やビニロン繊維などで構成される不織布と,ポリエチレンフィルムで構成されたポリエチレン層から成る,二層構造の積層フィルム」であるとしても,JIS P 0001:1998による紙及び合成紙の定義からすれば,不織布及びポリエチレンフィルムは,いわゆる「広義の紙」の定義に包含される。また,前記JIS P 0001:1998の紙の定義の参考1からすれば,二層構造であるとしても,紙製の定義に含まれる。
被請求人の製品の補強シートの顕微鏡写真は,衛生管理用マスクに使用されている一般的な不織布よりも(一般的な)普通紙の顕微鏡写真サンプルと類似する特徴が見られ,被請求人の製品の補強シートに使用されているのは,被請求人が主張する不織布ではないのではないかという疑問が生じる。
一次判定における被請求人の主張である,レーヨン繊維やビニロン繊維などで構成される不織布と,ポリエチレンフィルムで構成されたポリエチレン層から成る「二層構造の積層フィルム」について,本件特許の特許明細書には「そして、和紙を補強シートに用いれば装着用金箔との相性が良く、クッション材を不織布とすれば、どのような形状にも無理なく対応可能で、補強シートにも良好である。」(段落0011),「クッション材5は適度の厚みを有する合成樹脂、不織布、紙やコットンなどの可撓性のものが考えられ、その中でも不織布が最も好ましい。」(段落0018)と記載されている。
(3)間接侵害について(判定請求書「6.(7)」)
被請求人の製品は,特許法第101条第4号及び第5号の規定に該当し,本件特許発明の間接侵害を構成する。

2.被請求人の主張の概要
被請求人は,判定請求答弁書において,おおむね次の理由により,イ号製品又はイ号製品の使用は,本件特許発明の技術的範囲に属しない旨を主張している。
(1)イ号について(判定請求答弁書「7.ア」 )
被請求人は,甲第1号証に示すイ号製品(製品名「24K GOLD MASK」(判定請求答弁書に記載された「GOKLD」は,「GOLD」の誤記と認められる。))を製造販売し,本件特許の「化粧方法」は実施しない。
したがって,イ号製品は本件特許発明の技術的範囲に属さないとの判定が示されるべきである。
(2)請求人の主張について
ア.「楕円形」に関する主張について(判定請求答弁書「7.イ.イ-1」)
請求項には,「顔に貼り付けた際に,立体的に見て楕円形となる形状」という特定などされていない。
「顔の輪郭に合わせた楕円形」とは,「顔の輪郭に合うようにした楕円形」という意味であることは明らかであり,イ号製品は四角形の形状というべきであるから請求人の主張は理由がない。
請求人は甲第4号証の7と同8を見ればイ号製品が立体的な楕円形状であることが認識できると主張しているが,どう見ても四角形のままであるようにしか見えない。
イ.「紙製」について(判定請求答弁書「7.イ.イ-2」)
紙とは,正しくは「主に植物性の繊維を材料として,アルカリ液を加えて煮沸し,さらにつき砕いて軟塊とし,樹脂または糊などを加えて漉いて製した薄片」(広辞苑第6版)のことを意味するのであり,レーヨン繊維やビニロン繊維等を混合して成形したイ号製品の不織布を紙などとする者はいない。
本件特許発明における「補強シート」は,請求項で「補強シートは前記金箔から剥離可能」とされているように,金箔が直接貼り付けられて金箔の形状を維持するための構成要素である。イ号製品の転写シートは,不織布層とポリエチレンフィルムから成る二層構造の積層フィルムであるが,金箔が貼り付けられるのはポリエチレンフィルムである。本件特許発明の補強シートは,イ号製品におけるポリエチレンフィルムに相当し,ポリエチレンフィルムを紙と認識することは有り得ない。

第4 イ号

1.甲号証に記載された事項等
イ号に関し,請求人は,証拠方法として,判定請求書とともに,以下の証拠を提出した。
甲第1号証 被請求人の製品とその説明
甲第2号証 特許第545024号の特許原簿
甲第3号証の1 被請求人の製品の包装状態
甲第3号証の2 被請求人の製品の取り扱い説明
甲第4号証の1?10 イ号方法
YOUTUBE(https://www.youtube.com/watc
h?v=kabd53nxOpg)でのイ号方法の使用
甲第5号証の1 被請求人の製品の試験成績
甲第5号証の2 被請求人の製品の試験成績の写真
甲第5号証の3 被請求人の製品の試験成績の拡大写真
甲第5号証の4 被請求人の製品であることを証明する書
甲第6号証の1 衛生管理用マスクに使用されている不織布の試験成績
甲第6号証の2 衛生管理用マスクに使用されている不織布の試験成績の
写真
甲第6号証の3 衛生管理用マスクに使用されている不織布の試験成績の
拡大写真
甲第6号証の4 衛生管理用マスクに使用されている不織布であることを
証明する書
甲第7号証 (一般的な)普通紙の顕微鏡写真サンプル
甲第8号証 「広辞苑」の紙の説明
甲第9号証 デジタル大辞林の紙の説明;
https://kotobank.jp/word/紙-46604
甲第10号証 フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)の
紙の説明
甲第11号証の1 JIS L 0222:2001
(JIS L 0222:2001の内容を示すUR
L)
https://kikakurui.com/l/L0222-2001-01.html
甲第11号証の2 JIS K 6922-1:1977
(JIS K 6922-1:1977の内容を示す
URL)
https://kikakurui.com/k6/K6922-1-1997-01.html
甲第11号証の3 JIS P 0001:1998
(JIS P 0001:1998の内容を示すUR
L)
https://kikakurui.com/p/P0001-1998-01.html
(1)甲第1号証及び甲第3号証の1から,甲第3号証の1及び甲第3号証の2に係る包装は甲第1号証に係る製品(以下,「製品A」という。)の包装であることが理解できるから,甲第3号証の2から,製品Aの金色の薄片は金箔であることが理解できる。これを踏まえた上で,甲第1号証から以下の事項が看取できる。
ア.製品Aは,金箔と,当該金箔の一面に付着するシートとを備える。
イ.前記金箔は,上半部に2つの孔が,中央部に1つの切り込みが,下半部に1つの孔が形成されている。
ウ.前記金箔は,その外縁が,上辺,下辺,左辺及び右辺と,上辺と左辺との間,左辺と下辺との間,下辺と右辺との間及び右辺と上辺との間の接続部とを有する。
エ.前記シートは,略円形であって,前記金箔よりも大きく,前記金箔の周囲に前記シートの余白部が存在する。
更に,金箔の加工性や加工方法を考慮すれば,甲第1号証から以下の事項も理解できる。
オ.前記シートは,前記金箔に形成された前記孔と対応した,上半部の2つの孔と下半部の1つの孔と,前記金箔に形成された前記切り込みと対応した,中央部の切り込みと,が形成されている。
(2)甲第3号証の1及び甲第3号証の2から,以下の事項が看取又は理解できる。
カ.製品Aの包装には製品Aの使用方法の説明及び使用上の注意が表示されている。
なお,甲第3号証の1からは,製品Aの包装には甲第3号証の2から看取できる表示以外の表示もされていることが看取できるが,当該表示の内容は看取することはできない。
キ.製品Aの包装には製品Aの使用方法の説明の標題として「24K GOLD MASK 使用説明」との表示がある。
ク.前記金箔は,前記金箔の上半部の2つの孔及びそれらと対応した前記シートの上半部の2つの孔が目に,前記金箔の中央部の1つの切り込み及びそれと対応した前記シートの中央部の1つの切り込みが鼻に,前記金箔の下半部の1つの孔及びそれと対応した前記シートの下半部の1つの孔が口に,それぞれ位置合わせされた状態で顔に貼り付けられる。
ケ.製品Aは,前記金箔側を顔に向けて前記金箔を前記シートとともに顔に当て,前記シートを介して顔全体に前記金箔をおさえて貼り付け,前記シートを前記金箔から剥がし,10?20分経過後前記金箔を顔からとる方法で使用される。
コ.製品Aは,前記金箔を顔からとるまでは,前記金箔に手を触れないように使用される。
サ.製品Aの包装には「■エステ用金箔で美の追究を」「本商品はシートタイプで扱いやすく、お肌に簡単“キレイ”に貼れる、「ゴールドエステ用」金箔です。」との表示がある。
(3)甲第4号証の1ないし甲第4号証の10から,以下の事項が看取又は理解できる。
シ.甲第4号証の1には「HAKUICHI COSMETICS」との表示がある。
ス.甲第4号証の4及び甲第4号証の5には「エステ用金箔を用意します。」及び「PREPARE FOR THE KINKA 24K GOLD MASK」との上下二段の表示がある。
前記スから,甲第4号証の1ないし甲第4号証の10に係る製品(以下,「製品B」という。)の金色の薄片が金箔であることが理解でき,これを踏まえた上で,甲第4号証の5から以下の事項が看取できる。
セ.製品Bは,金箔と,当該金箔の一面に付着するシートとを備える。
ソ.前記金箔は,上半部に2つの孔が,中央部に1つの切り込みが,下半部に1つの孔が形成されている。
タ.前記金箔は,その外縁が,上辺,下辺,左辺及び右辺と,上辺と左辺との間,左辺と下辺との間,下辺と右辺との間及び右辺と上辺との間の接続部とを有する。
チ.前記シートは,前記金箔よりも大きく,前記金箔の周囲に前記シートの余白部が存在する。
ツ.使用者は,前記シートの外周部を把持して製品Bを取り扱っている。
更に,甲第4号証の6ないし甲第4号証の10から以下の事項が看取できる。
テ.前記金箔は,前記シートに前記金箔に形成された前記孔と対応した,上半部の2つの孔と下半部の1つの孔と前記金箔に形成された前記切り込みと対応した中央部の切り込みとが形成された状態で,前記金箔の上半部の2つの孔及びそれらと対応した前記シートの上半部の2つの孔が目に,前記金箔の中央部の1つの切り込み及びそれと対応した前記シートの中央部の1つの切り込みが鼻に,前記金箔の下半部の1つの孔及びそれと対応した前記シートの下半部の1つの孔が口に,それぞれ位置合わせされた状態で顔に貼り付けられる。
ト.製品Bは,前記金箔側を顔に向けて前記金箔を前記シートとともに顔に当て,前記シートを介して顔全体に前記金箔をおさえて貼り付け,前記シートを前記金箔から剥がし,10?20分経過後前記金箔をすり込む方法で使用される。
(4)甲第5号証の1ないし甲第6号証の4から以下の事項が看取又は理解できる。
ナ.甲第5号証の2及び甲第5号証の3の「ゴールドマスク(シート)」の写真と,甲第6号証の2及び甲第6号証の3の「不織布(マスク)」の写真は,同一の試験機器により同一の試験条件の下で撮影されたものである。
ニ.甲第6号証の2及び甲第6号証の3から看取される「不織布(マスク)」の裏面の構成は,甲第5号証の2及び甲第5号証の3から看取される「ゴールドマスク(シート)」の裏面の構成と,異なる特徴を有する。

2.イ号
請求人は,前記「第3 1.(1)」に記載したとおりのイ号方法を主張し,当該イ号方法について判定を求めている。
一方,被請求人は,前記「第3 2.(1)」に記載したとおり,甲第1号証に示すイ号製品について判定を求めているが,判定請求答弁書の「6.答弁の趣旨」の「被請求人が製造販売する甲第1号証(被請求人の製品)に示すイ号製品(製品名「24K GOKLD MASK」)の使用は,特許第5450325号の技術的範囲に属さない,との判定を求める。」との記載(「GOKLD」は,「GOLD」の誤記と認められる。)から,当該イ号製品の使用について判定が行われることに同意していると解することができる。
また,甲第3号証の2から看取又は理解できる製品Aの使用方法と,甲第4号証の1ないし甲第4号証の10から看取又は理解できる製品Bの使用方法は,前記事項ケ及びト(前記「1.(2)」及び「1.(3)」参照)からみて,少なくとも,前者が,前記シートを前記金箔から剥がし,10?20分経過後前記金箔を顔からとるのに対し,後者が,前記シートを前記金箔から剥がし,10?20分経過後前記金箔をすり込む点で相違する。
一方,例えば判定請求答弁書の「7.理由」の「ア.本件判定請求に関して」における「被請求人が製造販売する甲第1号証に示すイ号製品(製品名「24K GOKLD MASK」)」の記載(「GOKLD」は,「GOLD」の誤記と認められる。)及び「被請求人箔一株式会社は確かにイ号製品を製造販売しておりその構成については知悉している」の記載からみて,前記「第3 2.(1)」にも記載したとおり,製品Aについては被請求人が自らが製造販売する製品であることを明示的に認めている。
以上を踏まえて,当審では本件判定の対象となるイ号を,甲第1号証,甲第3号証の1及び甲第3号証の2に基いて,以下のとおり認定する。
「a.外縁が上辺,下辺,左辺及び右辺と,上辺と左辺との間,左辺と下辺との間,下辺と右辺との間及び右辺と上辺との間の接続部とを有し,かつ顔への貼付時に目に位置合わせされる2つの孔と口に位置合わせされる1つの孔とを形成し,及び顔への貼付時に鼻に位置合わせされる1つの切り込みを形成した金箔と,当該金箔の一面に付着するシートとを備え,
b.前記シートは,前記金箔に形成された前記2つの孔と対応し,顔への貼付時に目に位置合わせされる2つの孔及び前記金箔に形成された前記1つの孔と対応し,顔への貼付時に口に位置合わせされる1つの孔と,前記金箔に形成された前記切り込みに対応し,顔への貼付時に鼻に位置合わせされる切り込みとが形成され,前記シートは,前記金箔から剥離可能で,前記金箔よりも大きく前記金箔の周囲に余白部が存在する略円形であり,
c.前記金箔側を顔に向けて,前記金箔を前記シートとともに顔に当て,前記シートを介して顔全体に前記金箔をおさえて貼り付け,前記シートを剥がし,10?20分経過後前記金箔を顔からとる,
d.金箔マスクの使用方法。」(以下,「イ号方法」という。)
なお,甲第3号証の2に表示された製品Aの使用方法の説明には「台紙」との用語も用いられているが,これはシートの形態が紙と同様の薄片であって,金箔の土台となっていることが理解されるにとどまり,この記載のみをもって,シートの材質が紙であるということはできず,甲第1号証ないし甲第3号証の2からは,シートが紙製であるとは認定できない。

第5 対比・判断

イ号方法が本件特許発明の各構成要件を充足するか否かについて,以下に検討する。

1.構成要件A
本件特許発明の「補強シート」に関し,本件特許明細書の段落0007には「装着用金箔は下面に当てた補強シートに吸着状態となることにより、装着用金箔が自着することを防ぎ、装着用金箔の伸張を維持する効果を有し、また後述の目的の顔面などへの押し当てに対しても補強材としての効果も発揮するのである。」と記載されている。更に,本件特許明細書には,本件特許発明の実施の形態に関連して,段落0016に「補強シート4は紙、布が好ましく、特に紙は箔打ちに用いた紙を介そう(介装)した状態で利用でき、特に和紙は金箔との相性も良く好適で好都合である。金箔3の伸張を維持し顔面などへの押し当てに対しても補強材としての作用をなすものであるから金箔3との一体性が望まれ、」と記載され,段落0019に「斯かる積層体1を例えば顔パックとして使用するには、先ず上面の剥離シート2を剥がして取り去り、下層のクッション材5を両手(大きさや貼り付け部位により片手)で下から支えて持ち上げ顔面に金箔3を当て、金箔3が顔の全面に密着すべくクッション材5と共に撫でるように押さえ、密着が得られたらクッション材5及び補強シート4を剥がし、」と記載されている。
そうすると,構成要件Aの「補強シート」は,金箔を顔の全面に密着させる際に当該金箔を補強するものであって,更に前記金箔の下面に当てられている状況においては,前記金箔が自着することを防ぎ,前記金箔の伸張を維持する機能を有するものである。
イ号方法の「シート」は,前記事項ケ(前記「第4 1.(2)」参照)からみて,金箔を顔に貼り付けるにあたり,当該金箔側を顔に向けて前記金箔とともに顔に当てられ,おさえられ,その後前記金箔から剥離される。一般に金箔は非常に薄く破断しやすいことを考慮すれば,イ号方法の「シート」も,金箔を顔に貼り付けるにあたり,金箔を補強しているといえる。
更に,イ号方法の金箔マスクは,構成aのとおり,金箔の一面にシートが付着した状態で販売されており,当該シートが,金箔が自着することを防ぎ,金箔の伸張を維持する機能を有していることは明らかである。
そうすると,イ号方法の「シート」は,本件特許発明の「補強シート」に相当する。
一方で,イ号方法の「金箔」は,構成aのとおり,その外縁が上辺,下辺,左辺及び右辺と,上辺と左辺との間,左辺と下辺との間,下辺と右辺との間及び右辺と上辺との間の接続部とを有し,楕円形ではない。
この点に関し,請求人は,本件特許発明は,「顔の輪郭に合わせた」楕円形としているものであって,単なる平面の「楕円形」ではなく,「顔の輪郭に合わせた楕円形」としている「立体的な楕円形」であり,イ号方法の金箔は,顔に載せて押さえ付けると,顔の輪郭に沿って立体的な楕円形を認識し得る状態になる旨主張している(前記「第3 1.(2)ア」参照)。
しかしながら,特許請求の範囲の請求項1の「顔の輪郭に合わせた楕円形とし・・・た金箔」との記載は,当該請求項の記載全体からみて,「摘み片を摘み,顔面に前記金箔を当て,前記補強シートを介して前記金箔が顔の全面に密着すべく押さえ」る前の段階における前記金箔の状態を特定しているものであって,「顔の全面に密着すべく押さえ」られた後の前記金箔の状態を特定するものではない。
更に,「顔の輪郭に合わせた楕円形」について,本件特許明細書には「図4は顔パック占用(専用)に用いた実施の形態を示すもので、金箔3を顔の輪郭に合わせた楕円形とし」(段落0021)の記載がある。そして,図4は,「顔パック用の実施の形態を示す剥離紙を外した平面図」(段落0012)である。
以上を踏まえれば,構成要件Aの「顔の輪郭に合わせた楕円形」を「立体的な楕円形」と解する余地はないから,請求人の前記主張は,採用できない。
そして,本件特許明細書及び図面を参照しても,構成要件Aの「楕円形」が楕円形以外の形をも包含する意味であると解すべき記載はない。
してみると,イ号方法は,構成要件Aを充足しない。

2.構成要件B
本件特許明細書には,本件特許発明の実施の形態に関連して,段落0014に「剥離シート2は合成樹脂フィルム、紙、布など適宜材質のシート状のものを選ぶことになる。」と記載されている。すなわち,本件特許明細書においては,合成樹脂フィルム,紙及び布は,材質として,互いに異なるものとして扱われている。更に,段落0018には「クッション材5は適度の厚みを有する合成樹脂、不織布、紙やコットンなどの可撓性のものが考えられ、その中でも不織布が最も好ましい。」と記載されているから,本件特許明細書においては,合成樹脂,不織布,紙及びコットンは,材質として,互いに異なるものとして扱われている。そして,本件特許明細書には,これも本件特許発明の実施の形態に関する直接の記載ではないが,段落0016に「補強シート4は紙、布が好ましく、」と記載され,段落0014の前記記載と比較してみれば,補強シート4の材質として好ましいものに合成樹脂フィルムは含まれていない。
そうすると,本件特許発明の「補強シートは」「紙製で」あることに関し,補強シートが不織布を含む布製や合成樹脂フィルム製といった,紙製以外のものは含まれないと解される。
そして,前記「第4 2」で検討したとおり,甲第1号証,甲第3号証の1及び甲第3号証の2からは,イ号方法のシートが紙製であることは認定できない。
請求人は,甲第5号証の1ないし甲第7号証を提出し,請求人が石川県工業試験場「工試 第5-954号」の試験及び同「工試 第5-1189号」の試験について石川県工業試験場に提出した試料は,それぞれ,被請求人の製品及び株式会社ティー・エイチ・ティーが輸入販売した「不織布ガードマスク」である旨主張した上で(甲第5号証の4,甲第6号証の4),被請求人の製品の補強シートの顕微鏡写真(甲第5号証の2,甲第5号証の3)は,衛生管理用マスクに使用されている一般的な不織布の顕微鏡写真(甲第6号証の2,甲第6号証の3)よりも,請求人によるところの(一般的な)普通紙の顕微鏡写真サンプルであるもの(甲第7号証)と類似する特徴が見られる旨主張する(前記「第3 1.(2)イ」参照)。しかしながら,例えばJIS L0222:2001(甲第11号証の1)の不織布の定義に「交絡,及び/又は融着,及び/又は接着によって繊維間が結合されたもの」とあるように,不織布といっても,その繊維組織の態様は一様ではない。そうすると,甲第5号証の2及び甲第5号証の3の顕微鏡写真と,甲第6号証の2及び甲第6号証の3の顕微鏡写真及び甲第7号証の顕微鏡写真サンプルとの類似,非類似のみでは,被請求人の製品の補強シートが紙製,不織布製のいずれであるとも断ずることができない。
更に,請求人は,(ア)紙製の概念は多義的であって,合成樹脂製フィルムや不織布を含まないとは言えない,(イ)イ号方法の補強シートが,被請求人が主張するように「レーヨン繊維やビニロン繊維などで構成される不織布と,ポリエチレンフィルムで構成されたポリエチレン層から成る,二層構造の積層フィルム」であるとしても,JIS P 0001:1998からすれば,紙製の定義に含まれる,(ウ)被請求人が主張する,レーヨン繊維やビニロン繊維などで構成される不織布と,ポリエチレンフィルムで構成されたポリエチレン層から成る「二層構造の積層フィルム」について,本件特許明細書には「そして、和紙を補強シートに用いれば装着用金箔との相性が良く、クッション材を不織布とすれば、どのような形状にも無理なく対応可能で、補強シートにも良好である。」(段落0011),「クッション材5は適度の厚みを有する合成樹脂、不織布、紙やコットンなどの可撓性のものが考えられ、その中でも不織布が最も好ましい。」(段落0018)と記載されている旨主張している(前記「第3 1.(2)イ」参照)。
請求人の前記主張について検討すると,JIS P0001:1998(甲第11号証の3)の紙の定義によれば,「紙」には,広義には,合成高分子物質を用いて製造した合成紙も含まれることは,請求人が主張するとおりである。しかしながら,本件特許明細書の記載を参酌すれば,本件特許発明において,「紙製」に不織布を含む布製や合成樹脂フィルム製が含まれると解することはできないことは,先に検討したとおりである。
そうすると,「レーヨン繊維やビニロン繊維などで構成される不織布」や「ポリエチレンフィルムで構成されたポリエチレン層」は,いずれも,本件特許発明の「紙製」に包含されるとは解されないから,イ号方法の補強シートが「レーヨン繊維やビニロン繊維などで構成される不織布と,ポリエチレンフィルムで構成されたポリエチレン層から成る,二層構造の積層フィルム」であるとすれば,請求人が指摘する本件特許明細書の記載を参酌しても,イ号方法が構成要件Bを充足するとはいえない。
したがって,請求人の前記主張は,いずれも採用できない。
してみると,イ号方法が構成要件Bを充足するとはいえない。

3.構成要件C
イ号方法は,「前記金箔側を顔に向けて,前記金箔を前記シートとともに顔に当て」るから,「顔面に前記金箔を当て」るといえる。
次いで,イ号方法は,「前記シートを介して顔全体に前記金箔をおさえて貼り付け」る。金箔を顔におさえて貼り付ければ,当然,当該金箔は顔に密着することになり,更に,イ号方法の「シート」は,前記「1」で検討したとおり,本件特許発明の「補強シート」に相当するといえるから,イ号方法が「前記シートを介して顔全体に前記金箔をおさえて貼り付け」ることは,「前記補強シートを介して前記金箔が顔の全面に密着すべく押さえ」ることに相当する。
更に,イ号方法は,前記金箔が顔全体に貼り付けられたら,「前記シートを剥がし,10?20分経過後前記金箔を顔からとる」から,「密着が得られたら前記補強シートを前記金箔から剥離させてから適宜時間経過後,前記金箔を顔から落とす」といえる。
そして,イ号方法において,前記金箔側を顔に向けて前記金箔を前記シートとともに顔に当てる際にどこを把持するのかは直ちに明らかではないが,前記金箔を顔からとるまでは前記金箔に手を触れないようにすべきであることを考慮すれば(前記「第4 1.(2)事項コ」参照),当然,前記「シート」の「余白部」を摘むといえ,当該「余白部」は,本件特許発明の「摘み片」に相当する。
したがって,イ号方法は,構成要件Cを充足する。

4.構成要件D
イ号方法の金箔は,顔に貼って用いられるものであるから(前記「第4 1.(2)事項サ」参照),イ号方法の「金箔マスクの使用方法」は,「金箔による化粧方法」であるといえる。
したがって,イ号方法は,構成要件Dを充足する。

第6 間接侵害

間接侵害に関しては,本件判定の対象外であるので,判断しない。

第7 むすび

以上のとおりであるから,イ号方法は,本件特許発明の技術的範囲に属しない。
よって,結論のとおり判定する。

 
判定日 2020-03-26 
出願番号 特願2010-199271(P2010-199271)
審決分類 P 1 2・ 1- ZB (A45D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 近藤 裕之  
特許庁審判長 佐々木 芳枝
特許庁審判官 久保 竜一
長馬 望
登録日 2014-01-10 
登録番号 特許第5450325号(P5450325)
発明の名称 金箔による化粧方法  
代理人 小菅 一弘  
代理人 木森 有平  
代理人 芝 哲央  
代理人 正林 真之  
代理人 齋藤 拓也  
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