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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B65D
管理番号 1361809
審判番号 不服2019-12734  
総通号数 246 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-09-25 
確定日 2020-05-15 
事件の表示 特願2017-182802「包装食品の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成31年4月11日出願公開、特開2019-55810、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1.手続の経緯
この出願(以下「本願」という。)は、平成29年9月22日の出願であって、その主な手続は以下のとおりである。

平成30年12月5日付け
拒絶理由通知
平成31年1月31日
意見書及び手続補正書の提出
令和元年年6月28日付け
拒絶査定(以下「原査定」という。)
同年9月25日
拒絶査定不服審判の請求及び同時に手続補正書の提出


第2.原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由の概要は次のとおりである。

平成31年1月31日に提出された手続補正書で補正された請求項1?6に係る発明は、平成30年12月5日付けの拒絶理由通知の理由2、すなわち、以下の引用文献1?2に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開平7-203925号公報
2.米国特許出願公開第2008/0317912号明細書


第3.審判請求時の手続補正
審判請求時の手続補正は、特許法第17条の2第3項から第5項までの要件に違反しているものとはいえない。
そして、以下に示すように、補正後の請求項1?5に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明5」という。)は、特許法第17条の2第6項において準用する特許法第126条第7項の規定、いわゆる独立特許要件を満たすものである。

1.本願発明
本願発明1?5は、審判請求時、すなわち令和元年9月25日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
穿孔により形成された未封止の小孔を有する容器内に食品を封止する仮封止工程と、
前記容器内に収容された食品を加熱蒸気で殺菌する殺菌工程と、
前記小孔を塞いで前記食品を完全に封止する封止工程と、を備え、
前記殺菌工程は、減圧により前記小孔を介して前記容器内の空気を排出する脱気工程と、前記小孔を介して前記容器内に加熱蒸気を供給して前記食品を加熱蒸気で殺菌する蒸気殺菌工程と、を備える
ことを特徴とする包装食品の製造方法。
【請求項2】
前記仮封止工程は、
食品を容器に収容し、該容器を密封する密封工程と、
前記容器に小孔をあける穿孔工程と、を備えることを特徴とする請求項1記載の包装食品の製造方法。
【請求項3】
前記仮封止工程は、
食品を上面開口部が設けられた容器本体に収容し、該容器本体を蓋体により密封する密封工程と、
前記容器本体の上面開口部の面積に対する小孔の合計面積の比率である開口率が0.01%?2%となるよう、前記蓋体に小孔を形成する小孔形成工程と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の包装食品の製造方法。
【請求項4】
前記蒸気殺菌工程と前記封止工程との間に、前記容器内の蒸気を排出し、前記容器内を真空状態とすることで容器内に収容された食品を冷却する真空冷却工程をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の包装食品の製造方法。
【請求項5】
前記真空冷却工程の後、前記容器内に除菌されたガスを充填するガス置換工程を備えたことを特徴とする請求項4記載の包装食品の製造方法。」

2.引用文献、引用発明等
(1)引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開平7-203925号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア.「【請求項2】 少なくとも一部分が通気性の高い材質で形成された耐熱包装材の中に食品を入れて包装し、この包装体に加圧加熱殺菌処理を施した後、真空冷却を行ない、さらにこの包装体をガスバリヤー性の高い材質からなる包装材の中に入れて包装することを特徴とする食品の滅菌保存方法。
【請求項3】 前記包装体をガスバリヤー性の高い材質からなる包装材の中に入れて包装する際に、該包装材の内部を不活性ガスで置換することを特徴とする請求項2記載の食品の滅菌保存方法。」

イ.「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、食品の滅菌保存方法に関するものであり、詳しくはその食品特有の食感を損なうことなく常温での滅菌保存を可能とする方法に関するものである。」

ウ.「【0009】本発明に使用する耐熱包装材は図1に示すように全体が袋状に形成されており、一方の面2は通気性の高い材質、たとえば多孔質フィルム又は滅菌紙等からなり、他方の面3は耐熱性材料からなり、上部5及び下部6並びに側部4の周縁をヒートシールした4方シール袋である。この袋の中に食品7、例えば焼き芋を出来たての状態で入れて包装する事により包装体1が出来上がる。
・・・
【0011】また、上記多孔質フィルムとしては、たとえばポリプロピレン系微多孔質フィルム等を用いることができる。
【0012】また、上記滅菌紙としては、たとえばポリプロピレン繊維混抄紙等を用いることができる。
【0013】なお、本発明に使用する上記耐熱包装材は少なくとも一部分が上記多孔質フィルム又は滅菌紙等の通気性の高い材質で形成されていればよく、収納した食品から発生する水蒸気を包装材外へ放出する効果を損なわない限り、通気性の高い材質で形成された部分の大きさ、位置などは特に限定されない。
【0014】また、上記耐熱包装材の形状も、図示のような袋状に限らず、例えばトレー状に成形した耐熱性材料の開口部を滅菌紙等で封止した形状としてもよい。
【0015】本発明は、上記包装体1を加圧加熱殺菌処理を施した後、真空冷却を行うことを特徴としている。この加圧加熱殺菌処理は、一般にいわゆるレトルト殺菌処理と呼ばれているものであるが、該殺菌処理によって食品の長期保存が可能となる。本発明においては、特に蒸気を用いて加熱をする蒸気式加圧加熱殺菌処理を行うことにより、中の食品が加熱調理済みの状態になるので、後で電子レンジ等で再加熱するだけで食することができる。
【0016】また、上記加圧加熱殺菌処理の際に上記耐熱包装材の中で発生する水蒸気は、続く真空冷却を施すことにより、耐熱包装材の通気性の高い材質でできた表面2を介して包装体1の外へ放出される。たとえば、焼き芋の場合、上記加圧加熱殺菌処理の際に焼き芋から発生する水蒸気が真空冷却によって包装体1の外へ放出されるので、焼き芋が結露水によってベチャベチャと水っぽくなってしまうことがなく、ホクホクとした焼き芋独特の食感を維持でき、商品価値の非常に高いものが得られる。また、食品自体の菌汚染も防止される。」

エ.「【0019】また、このようにして、加圧加熱殺菌処理を施した後、真空冷却を行った包装体1をさらに図2に示すようにガスバリヤー性の高い材質からなる包装材8の中に入れて包装することは、常温にて非常に長期の保存が可能となるので好ましい態様である。更に、この包装体1を包装材8の中に入れて包装する際に、該包装材8の内部を窒素ガスのような不活性ガスで置換する事が、食品の酸化変色を防止し、食品の品質保持効果を向上させるのでより好ましい。」

オ.「【0027】次に、このようにして出来た焼き芋入りの包装体を図3に示す装置を用いて、加圧加熱殺菌処理及び真空冷却を行なった。図4はその工程を順に示した図である。
【0028】まず、図4(a)に示すように、上記包装体1を載置用トレー10の上に載せて処理槽9内に装填した。
【0029】次いで、同図(b)に示すように、弁11及び12を開いて、処理槽9内へスチームを供給し、処理槽9内の空気を追い出し蒸気と置換した。この操作を5分以上行ったところ、処理槽9内の温度は100℃となった。
【0030】次に、同図(c)に示す如く、上記弁12を閉じ、さらにスチームの供給を調節しながら処理槽9内を所定の殺菌温度120℃に保持した。
【0031】このようにして30分間加熱殺菌を行った後、同図(d)に示すように、弁11を閉じてから弁13を開いて大気開放した。この際、包装体1が破袋しないように弁13をゆっくりと開くようにした。なお、大気開放時は、滅菌フィルターを通して外気を導入することが望ましい。」

カ.上記ア.?オ.によれば、食品の滅菌保存方法は、以下のようなものである。
(ア)トレー状に成形した耐熱性材料の中に食品を入れ、通気性の高い材質からなる部分で封止して、包装体とする。通気性の高い材質からなる部分は、多孔質フィルム又は滅菌紙等からなるものである。
(イ)包装体に蒸気式加圧加熱殺菌処理を施す。蒸気式加圧加熱殺菌処理は、処理槽9内へスチームを供給し、処理槽9内の空気を追い出し蒸気と置換し、スチームの供給を調節しながら処理槽9内を所定の殺菌温度120℃に保持することで行われる。
(ウ)包装体をガスバリヤー性の高い材質からなる包装材の中に入れて包装する。

上記ア.?カ.によれば、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。
「トレー状に成形した耐熱性材料の中に食品を入れ、耐熱性材料の開口部を多孔質フィルム又は滅菌紙等の通気性の高い材質からなる部分で封止して、包装体とし、
包装体に蒸気式加圧加熱殺菌処理を施し、
包装体をガスバリヤー性の高い材質からなる包装材の中に入れて包装する食品の滅菌保存方法であって、
蒸気式加圧加熱殺菌処理は、処理槽9内へスチームを供給し、処理槽9内の空気を追い出し蒸気と置換し、スチームの供給を調節しながら処理槽9内を所定の殺菌温度120℃に保持することで行われる、
食品の滅菌保存方法。」

(2)引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(米国特許出願公開第2008/0317912号明細書)には、図面とともに次の事項が記載されている。
なお、[]内は当審で付した仮訳である。

ア.「1. A method for stabilizing foodstuffs in which the foodstuffs are in a moist state inside a container, having a wall, suitable as a shipping and retail package, the packing having avent opening, said method comprising the steps of: heating the foodstuffs with microwaves for a limited period of time, but at least until hot steam has formed in the container and escapes through the vent opening; and injecting agas into the container for at least partial compensation of the pressure drop in the container after the end of the step of heating the foodstuffs.」(特許請求の範囲の請求項1)
[1.輸送と通気孔口を有した小売り包装に適した壁を有する容器の中で湿っぽい状態にある食料品を安定させるための方法であって、以下のステップを含む方法;少なくとも、熱い蒸気が容器内で形成され、通気口を通って抜けるまで、食料品を限られた時間マイクロ波で加熱し、;食料品の加熱ステップの終了後、容器内の圧力の低下の少なくとも部分的な埋め合わせのために容器内へガスを注入する。]

イ.「8.The method according to claim 1 , wherein said step of injecting the gas comprises using a cannula to inject the gas.」(特許請求の範囲の請求項8)
[8.ガスを注入する前記ステップは、カニューレを用いてガスを注入することを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。]

ウ.「9. The method according to claim 8 , wherein said step of injecting the gas comprises puncturing the wall of the container with the cannula to form a puncture hole.」(特許請求の範囲の請求項9)
[9. ガスを注入する前記ステップは、カニューレを有する容器の壁を穿刺する穿刺孔を形成することを含むことを特徴とする、請求項8に記載の方法。]

エ.「



オ.「



3.対比・判断
(1)本願発明1
本願発明1と引用発明1を対比すると、引用発明1の「食品の滅菌保存方法」は、本願発明1の「包装食品の製造方法」に相当する。

引用発明1の「トレー状に成形した耐熱性材料」と、耐熱性材料の開口部を封止する「多孔質フィルム又は滅菌紙等の通気性の高い材質からなる部分」で構成される「包装体」は、「未封止の小孔を有する容器」の限りにおいて、本願発明1の「穿孔により形成された未封止の小孔を有する容器」に相当する。そうすると、引用発明1の「トレー状に成形した耐熱性材料の中に食品を入れ、耐熱性材料の開口部を多孔質フィルム又は滅菌紙等の通気性の高い材質からなる部分で封止して、包装体」とすることは、「未封止の小孔を有する容器内に食品を封止する仮封止工程」の限りにおいて、本願発明1の「穿孔により形成された未封止の小孔を有する容器内に食品を封止する仮封止工程」に一致する。

引用発明1の「包装体に蒸気式加圧加熱殺菌処理を施」すことは、本願発明1の「前記容器内に収容された食品を加熱蒸気で殺菌する殺菌工程」に相当する。

引用発明1の「包装体をガスバリヤー性の高い材質からなる包装材の中に入れて包装する」ことは、ガスバリヤー性の高い材質によって外気から食品を遮断するものであるから、「食品を完全に封止する封止工程」の限りにおいて、本願発明1の「前記小孔を塞いで前記食品を完全に封止する封止工程」に相当する。

引用発明1の「蒸気式加圧加熱殺菌処理」について、処理槽9内へスチームを供給し、処理槽9内の空気を追い出し蒸気と置換しているのだから、包装体の中の空気も、多孔質フィルム又は滅菌紙等の通気性の高い材質を介して追い出されることで蒸気と置換していることは明らかである。
そうすると、引用発明1の「処理槽9内へスチームを供給し、処理槽9内の空気を追い出し蒸気と置換」することは、「前記小孔を介して前記容器内の空気を排出する脱気工程」の限りにおいて、本願発明1の「減圧により前記小孔を介して前記容器内の空気を排出する脱気工程」に一致する。
そして、引用発明1の「スチームの供給を調節しながら処理槽9内を所定の殺菌温度120℃に保持すること」ことは、本願発明1の「前記小孔を介して前記容器内に加熱蒸気を供給して前記食品を加熱蒸気で殺菌する蒸気殺菌工程」に相当する。

よって、本願発明1と引用発明1は以下の点で一致する。
「未封止の小孔を有する容器内に食品を封止する仮封止工程と、
前記容器内に収容された食品を加熱蒸気で殺菌する殺菌工程と、
前記食品を完全に封止する封止工程と、を備え、
前記殺菌工程は、前記小孔を介して前記容器内の空気を排出する脱気工程と、前記小孔を介して前記容器内に加熱蒸気を供給して前記食品を加熱蒸気で殺菌する蒸気殺菌工程と、を備える
包装食品の製造方法。」

そして、本願発明1と引用発明1は、以下の点で相違している。
<相違点1>
小孔について、本願発明1は、「穿孔により形成された」ものであるのに対して、引用発明1は、多孔質フィルム又は滅菌紙等の通気性の高い材質からなる部分である点。

<相違点2>
封止工程について、本願発明1は、「前記小孔を塞いで」封止するのに対して、引用発明1は、包装体をガスバリヤー性の高い材質からなる包装材の中に入れる点。

<相違点3>
脱気工程について、本願発明1は、「減圧により前記小孔を介して前記容器内の空気を排出する」ものであるのに対して、引用発明1は、処理槽9内へスチームを供給し、処理槽9内の空気を追い出し蒸気と置換する点。

<相違点1>について検討する。
引用発明1は、通気性のよい材質を採用しているのだから、さらに穿孔によって小孔を形成する必要性がない。
また、引用文献2(上記2.(2))に記載された穿刺孔(puncture hole)は、カニューレ(cannula)を通じてガスを導入するためのものであって、穿刺孔を介して容器内外の気体の流通を行うものではないから、本願発明1の小孔とは異なるものである。
そうすると、引用発明1には、引用文献2記載事項の穿刺孔を適用する動機付けはないし、仮に、引用発明1に引用文献2記載事項の穿刺孔を適用したとしても、カニューレによってガスを導入するための小孔であって、穿刺孔を介して気体の流通を行うものではないから、<相違点1>に係る本願発明1の構成とはならない。

<相違点2>について検討する。
前記適用にあたり、前記穿刺孔を塞いだとしても、引用発明1は、多孔質フィルム又は滅菌紙等の通気性の高い材質からなる部分の通気を遮断することにはならないから、<相違点2>に係る本願発明1の構成とはならない。

よって、<相違点3>について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明1、及び引用文献2記載事項に基いて、当業者が容易に発明できたものではないから、独立特許要件を満たすものである。

(2)本願発明2?5について
本願発明2?5は、いずれも、本願発明1の上記相違点に係る構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、本願発明2?5は、引用発明1、及び引用文献2記載事項に基いて、当業者が容易に発明できたものではないから、独立特許要件を満たすものである。


第4.原査定について
上記のとおり、審判請求時の手続補正は適法であるから、本願発明1?5は、上記第3.1.に示したとおりのものである。
そして、本願発明1?5は、上記第3.3.で述べたとおり、原査定の理由により、引用発明1、及び引用文献2記載事項に基いて、当業者が容易に発明できたものとすることはできない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。


第5.むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2020-04-22 
出願番号 特願2017-182802(P2017-182802)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B65D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 二ッ谷 裕子  
特許庁審判長 石井 孝明
特許庁審判官 横溝 顕範
井上 茂夫
発明の名称 包装食品の製造方法  
代理人 藤本 昇  
代理人 中谷 寛昭  

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