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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1361838 |
審判番号 | 不服2018-14119 |
総通号数 | 246 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-06-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-10-24 |
確定日 | 2020-04-23 |
事件の表示 | 特願2017-126506「通信端末、表示方法およびプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年10月 5日出願公開、特開2017-182841〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成20年12月26日に出願した特願2008-335025号の一部を平成23年10月18日に新たな特許出願とした特願2011-229182号の一部を平成26年4月25日に新たな特許出願とした特願2014-90931号の一部を平成28年2月12日に新たな特許出願とした特願2016-25211号の一部を平成29年6月28日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成30年 3月15日付け:拒絶理由通知書 平成30年 7月11日 :意見書、手続補正書の提出 平成30年 7月20日付け:拒絶査定 平成30年10月24日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 平成30年10月24日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成30年10月24日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.本件補正について(補正の内容) (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。) 「【請求項1】 ユーザによる情報の入力を受け付ける入力受付手段と、 他の端末のユーザが入力した情報と共に、他のユーザの端末であることを識別可能な識別情報を受信する受信手段と、 識別情報ごとに、他の端末のユーザが入力した情報を吹き出し内に表示する際の吹き出しの背景色を規定する背景色規定手段と、 受信した情報から送信元の識別情報を検出し、背景色規定手段によって規定された識別情報ごとの背景色をもとに、送信元の識別情報に対応する背景色を決定する背景色決定手段と、 決定された背景色を有する吹き出し内に、他の端末のユーザが入力した情報を表示する表示手段と、 キャラクタを表示するキャラクタ表示手段とを備え、 決定された背景色が、ユーザが入力した情報を表示する吹き出しの背景色とは異なり、 吹き出しが、キャラクタの近傍に表示されたものであり、 入力受付手段により入力を受け付ける情報が、ユーザが入力した手書き情報である、 通信端末。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の、平成30年7月11日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「【請求項1】 ユーザによる情報の入力を受け付ける入力受付手段と、 他の端末のユーザが入力した情報と共に、他のユーザの端末であることを識別可能な識別情報を受信する受信手段と、 識別情報ごとに、他の端末のユーザが入力した情報を吹き出し内に表示する際の吹き出しの背景色を規定する背景色規定手段と、 受信した情報から送信元の識別情報を検出し、背景色規定手段によって規定された識別情報ごとの背景色をもとに、送信元の識別情報に対応する背景色を決定する背景色決定手段と、 決定された背景色を有する吹き出し内に、他の端末のユーザが入力した情報を表示する表示手段と、 キャラクタを表示するキャラクタ表示手段とを備え、 決定された背景色が、ユーザが入力した情報を表示する吹き出しの背景色とは異なり、 吹き出しが、キャラクタの近傍に表示されたものである、 通信端末。」 2.補正の適否 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「入力受付手段」について、「入力受付手段により入力を受け付ける情報が、ユーザが入力した手書き情報である」との限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下、「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献の記載事項 ア.引用文献1、引用発明 原査定の拒絶の理由で引用された、特開平11-203227号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。 「【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明はインターネット等のネットワークを用いたコミュニケーション技術の一つであるテキストによるチャットの表現方法を拡張した技術に関する。 【0002】 【従来の技術】チャットシステムの一般的な構成を図1に示す。チャットシステムは、サーバ用コンピュータ100と、n個のクライアント用コンピュータ110-1n0とから構成されている。サーバ用コンピュータ上では、チャットサーバ部101が動作し、クライアント用コンピュータ110-1n1上では、チャットクライアント111-1n1が各々動作する。 【0003】チャットクライアント111は、メッセージ作成部112とメッセージ表示部113で構成される。サーバ用コンピュータ100は、チャットサーバ部101を含む。チャットクライアント1n1は、メッセージ作成部1n2とメッセージ表示部1n3で構成される。 【0004】チャットシステム内のメッセージ送受信は、つぎのように行われる。 【0005】チャットクライアント111は、メッセージ作成部112でメッセージを作成し、チャットサーバ部101に送信すると共にメッセージ表示部113に送る。チャットサーバ部101は、チャットサーバ部に接続されたチャットクライアントからのメッセージを集め、集めたメッセージをチャットクライアント1n1に配布する。その際に、メッセージが配付されるのは、チャットクライアントが管理しているチャットルームに接続されているチャットクライアントに鍵られる(当審註:「限られる」の誤記と認める。)。チャットクライアント111のメッセージ表示部113ならびに、チャットクライアント1n1のメッセージ表示部1n3は、送られたメッセージを、各々の画面上に表示する。」 「【0019】 【発明の実施の形態】本発明のチャットシステムの装置構成の概略は、従来の構成と同様である。ただし、本発明のシステムでは、従来システムのメッセージを拡張し、ユーザID、吹き出し形状番号を新たにメッセージ作成部で付加しており、これに対応してメッセージ表示部の動作も変更されている。さらに、チャットサーバーとチャットクライアントにおいては、チャットクライアントの背景表示のための機能が追加されている。チャットクライアントは、チャットサーバーに接続される際には、チャットサーバーが管理するチャットルームを選択するための情報をチャットサーバーに送信する。チャットサーバーは、これを受けて、そのチャットルームに対応する背景イメージデータを当該チャットクライアントに送信する。そのチャットクライアントは、この背景イメージデータをチャットクライアント画面の背景として使用する。 【0020】図6に、本システムでのチャットクライアントのメッセージ作成部の処理の流れを示す。 【0021】図6のステップC1において、チャットクライアントのメッセージ作成部は、発言者からの発言内容を受領する。メッセージ作成部は、ステップC2で、発言内容からメッセージを作成する。ステップC3において、メッセージ作成部は、発言者が選択した吹き出し形状に対応する番号を受領する。ステップC4では、この吹き出し形状に対応する番号を、ステップC2で作成したメッセージに付加する。 【0022】次に、メッセージ作成部は、ステップC5で、発言者のニックネームをメッセージに付加する。そして、ステップC6では、ニックネームが付加されたメッセージに、発言者を特定するための情報であるユーザIDを付加する。最後に、チャットクライアントのメッセージ作成部は、ステップC7において、サーバ、及び同一チャットクライアント内のメッセージ表示部へ、作成したメッセージを送信する。 【0023】図7に、本システムでのチャットクライアントのメッセージ表示部の処理の流れを示す。 【0024】図7のステップD1で、サーバからメッセージを受信したメッセージ表示部は、ステップD2で、メッセージを発言内容とニックネーム、ユーザID、吹き出し形状番号に分解する。ステップD3では、吹き出し形状番号と吹き出し形状の対応を示したテーブルを参照し、(当審註:「ステップD4で、」の脱字と認める。)吹き出し形状を決定する。 【0025】次にステップD5で、メッセージ表示部は、ユーザーIDから色テーブルを検索し、ステップD6で対応する色が色テーブルに格納されているか否かを判定する。なお、この色テーブルは、メッセージ表示部に内蔵されている。ユーザIDに対応する色が色テーブルに格納されていれば、後のステップD14で、その色と前述の吹き出し形状を用いて描画する。 【0026】もしステップD6において、検索が失敗したら、メッセージ表示部は、ステップD7色テーブルに、ユーザーIDと色の組みを追加登録する。後述するステップD14では、追加した色を吹き出し描画色として用いる。 【0027】次に、メッセージ表示部は、ステップD9で、発言を表示する位置(Y軸方向)を算出する。そして、ステップD10の判定で、算出した位置が画面のY座標の最大値より大きいと判定された場合、すなわち画面が既にメッセージで埋まっている場合は、メッセージ表示部は、ステップD11で、画面をスクロールし、新たな発言を表示できる領域を画面上に確保する。そして、発言内容の表示位置(Y座標)を、ステップD12で再度算出する。スクロールする必要がない場合は、後述するステップD14では、ステップD9で得たY座標を用いる。 【0028】更に、メッセージ表示部は、ステップD13で、発言内容を表示するX軸方向の描画位置をランダムに決定し、ステップD14で、上記の吹き出し形状、および色を用い、ニックネームならびに発言内容を描画する。 【0029】図8に、チャットクライアントのメッセージ表示部におけるメッセージを描画する際の、各データの関連図を示す。メッセージ210は、ニックネーム201、発言内容202、ユーザID203、吹き出し形状番号204で構成される。吹き出しの色は、ユーザーID203をキーに色テーブル301を検索し、一意に決まる。吹き出しの形状は、吹き出し形状番号204をキーに形状テーブル302を参照し、決定される。 【0030】クライアント画面には、上記で決定された吹き出し形状で、ニックネーム201ならびに発言内容202が描画される。また、描画の際に、発言の表示位置を、横方向にランダムに決定する。 【0031】このようにして表示されたチャット画面の例を図9に示す。 【0032】次に、本発明の他の実施例について図10を参照して説明する。この実施例では、図9のチャット画面のように入力した順序で上から下に表示されているのではなく、Y軸方向の表示位置も画面上にランダムに表示されている。また、吹き出しで画面が埋め尽くされないように、時間が経過するごとに、吹き出しの表示が薄くなって行き、一定時間経過した場合、画面から消えるようにすることもできる。 【0033】 【発明の効果】第1の効果は、チャットする画面の表現力を向上することができることにある。その理由は、背景にイメージ、メッセージに枠線を表示でき、かつ、メッセージの表示が左端でなくランダムに表示されるためである。 【0034】第2の効果は、ユーザがメッセージを強調することができることにある。その理由は、発言者が送るメッセージの枠線形状を発言者の意図にしたがって変更することができるためである。 【0035】第3の効果は、発言者をメッセージから容易に特定することができることにある。その理由は、発言者毎にメッセージの背景色を一意に決定しているからからである。」 上記記載からみて、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 〈引用発明〉 チャットシステムは、サーバ用コンピュータ100と、n個のクライアント用コンピュータ110-1n0とから構成され、 サーバ用コンピュータ上では、チャットサーバ部101が動作し、クライアント用コンピュータ上では、チャットクライアント111-1n1が各々動作し、 チャットクライアント111は、メッセージ作成部112とメッセージ表示部113で構成され、 チャットクライアント111は、メッセージ作成部112でメッセージを作成し、チャットサーバ部101に送信すると共にメッセージ表示部113に送り、 チャットクライアント111のメッセージ表示部113ならびに、チャットクライアント1n1のメッセージ表示部1n3は、送られたメッセージを、各々の画面上に表示する、 チャットシステムのクライアント用コンピュータであって、 チャットクライアントのメッセージ作成部の処理は、 発言者からの発言内容を受領し、 発言内容からメッセージを作成し、 発言者が選択した吹き出し形状に対応する番号を受領し、 この吹き出し形状に対応する番号を、メッセージに付加し、 次に、発言者のニックネームをメッセージに付加し、 そして、ニックネームが付加されたメッセージに、発言者を特定するための情報であるユーザIDを付加し、 最後に、サーバ、及び同一チャットクライアント内のメッセージ表示部へ、作成したメッセージを送信する、 処理であり、 チャットクライアントのメッセージ表示部の処理は、 サーバからメッセージを受信し、メッセージを発言内容とニックネーム、ユーザID、吹き出し形状番号に分解し、 吹き出し形状番号と吹き出し形状の対応を示したテーブルを参照し、吹き出し形状を決定し、 次に、ユーザーIDから色テーブルを検索し、対応する色が色テーブルに格納されているか否かを判定し、 ユーザIDに対応する色が色テーブルに格納されていれば、その色と前述の吹き出し形状を用いて描画し、 更に、上記の吹き出し形状、および色を用い、ニックネームならびに発言内容を描画する、 処理であり、 メッセージ210は、ニックネーム201、発言内容202、ユーザID203、吹き出し形状番号204で構成され、吹き出しの色は、ユーザーID203をキーに色テーブル301を検索し、一意に決まり、吹き出しの形状は、吹き出し形状番号204をキーに形状テーブル302を参照し、決定され、 クライアント画面には、上記で決定された吹き出し形状で、ニックネーム201ならびに発言内容202が描画され、 発言者毎にメッセージの背景色を一意に決定しているから、発言者をメッセージから容易に特定することができる、 チャットシステムのクライアント用コンピュータ。 イ.引用文献2 原査定において、周知技術を示す文献として引用された、特開2004-126786号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。 「【0028】 ゲーム装置100は、・・・(中略)・・・NIC(Network Interface Card)109と、を備える。(以下、略)」 「【0068】 (他の実施形態) 図7は、本発明の他の実施形態に係る通信装置の概要構成を示す模式図である。なお、図7においては、図3と同様の機能を果たす要素には、同じ符号を付してある。以下、本図を参照して説明する。なお、理解を容易にするため、上記実施形態と同様の機能を果たす要素については、適宜説明を省略する。 【0069】 本実施形態の通信装置301は、上記実施形態の各要素に加え、背景画像取得部701と、キャラクタ画像位置取得部702と、をさらに備える。ここで、送信部304は、当該ユーザに割り当てられたユーザ識別子を当該送信側メッセージにさらに指定して送信する。一方、受信部305により受信される受信側メッセージには、ユーザ識別子がさらに指定される。 【0070】 ユーザ識別子は、チャットをするユーザに重複なく割り当てられる数字や文字列であり、ネットワーク接続やチャット通信サービスを受ける際のユーザIDや、ネットワーク接続の際に割り当てられたIPアドレス、NIC 109に割り当てられているMAC(Media Access Control)アドレス等を適用することができる。 さらに、・・・(略)・・・ 【0071】 一方、表示画像生成部307は、取得された背景画像情報に重ねて、当該受信側メッセージに指定された文字列を当該取得されたフォント情報により描いた表示画像を生成する。また、キャラクタ画像位置取得部702は、当該受信側メッセージに指定されたユーザ識別子に対応付けられたキャラクタ画像およびキャラクタ表示位置を取得する。 ・・・(略)・・・・ 【0072】?【0073】(略) 【0074】 さらに、表示部308は、当該取得されたキャラクタ画像を、当該取得されたキャラクタ表示位置に、さらに表示する。この際に、文字列が背景画像情報の図形内にちょうど入るように、背景画像情報により表わされる図形を適宜拡大縮小することが望ましい。また、キャラクタ画像の近傍に表示画像を配置することが望ましい。 【0075】 図9、図10は、本実施形態の「キャラクタと吹き出し」によってチャットの過程を表示した場合の表示例を示す説明図である。図9の表示例では、チャットの相手方のキャラクタ(キャラクタ画像)と発言(表示画像)のほか、自身のキャラクタも表示されている。図10の表示例では、多数のユーザとチャットを行った場合の様子が示されている。 【0076】 図9(a)から図9(d)、図10では、それぞれの強度情報に応じた形状の吹き出し内にそれぞれの強度情報に応じたフォントの大きさで文字列が表示されている。本実施形態の技術を適用することにより、ユーザがどの程度興奮しているか、感情がたかぶっているか否か、強い意思をもってメッセージを伝達したいと考えているか否か、を知ることができ、より深いコミュニケーションに貢献することができる。」 上記記載からみて、引用文献2には、次の技術事項が記載されていると認められる。 (ア)「送信側メッセージおよび受信側メッセージに指定されるユーザ識別子は、チャットをするユーザに重複なく割り当てられる数字や文字列であり、ネットワーク接続やチャット通信サービスを受ける際のユーザIDや、ネットワーク接続の際に割り当てられたIPアドレス、NIC(Network Interface Card)に割り当てられているMAC(Media Access Control)アドレス等を適用することができること」 (イ)「受信側メッセージに指定されたユーザ識別子に対応付けられたキャラクタ画像およびキャラクタ表示位置を取得し、当該取得されたキャラクタ画像を、当該取得されたキャラクタ表示位置に表示し、キャラクタ画像の近傍に表示画像を配置する表示手段により、「キャラクタと吹き出し」によってチャットの過程を表示した場合、チャットの相手方のキャラクタ(キャラクタ画像)と発言(表示画像)のほか、自身のキャラクタも表示されていること」 ウ.引用文献3 同じく原査定において、周知技術を示す文献として引用された、特開2002-278691号公報(以下、「引用文献3」という。)には、次の記載がある。 「【0097】例えば、「オフラインであそぶ」を選択すると、パソコン30とゲームサーバ5とは、接続されない。この場合、CD-ROMによって提供された仮想ゲーム空間であるABCタウン内(図17参照)には、使用者(プレイヤ)のコントロールするPCキャラクタと、コンピュータがコントロールするNPC(非プレイヤ)キャラクタとでゲームが行われることになる。このモードでは、コンピュータ意外の相手(プレイヤ)を必要とするメールやチャットは使用できない。 【0098】?【0099】(略) 【0100】すなわち、ゲームサーバ5は、アクセスしている各PCキャラクタの存在場所、各PCキャラクタのフラグ状態等を把握している。例えば、各PCキャラクタは、各キャラクタの状態を示す1024の状態フラグを持っている。そして、ゲームサーバ5は、各プレイヤのパソコン30に、当該PCキャラクタの存在する仮想空間において近くにいる他のPCキャラクタのデータ(キャラクタ表示位置、フラグ情報、チャットデータなど)を送信し、そのパソコン画面に自己のPCキャラクタの周辺にいる他のプレイヤのPCキャラクタを表示させる。同様に、他のプレイヤのパソコン画面にもこのプレイヤのコントロールするPCキャラクタの周囲に存在する他のPCキャラクタを表示させる。それにより、各自のPCキャラクタを介してプレイヤ同士の交流が可能となる。このPCキャラクタをコントロールするために後述の絵本入力が使用される。ABCタウンにおけるゲーム展開については後述する。」 「【0136】従って、サーバに接続された各ゲーム装置1の仮想ゲーム空間には、図20に示すように、他のゲーム装置のプレイヤが発した他人のPCキャラクタのメッセージが「文字」、「手書きの絵」、あるいは音声で出力される(P24?P28)。なお、携帯電話モードのような秘話通信の場合には、絵・文字データは指定された特定人にのみ配信される。 【0137】図25は、上述した文字チャットの例を示している。この例では、文字チャットにより文字コードで送られたデータが該当キャラクタの上方で大きいフォントで表示されている。 【0138】図26は、上述した絵チャットの例を示している。絵本から絵チャットアイコンを選択し、図24に示した絵チャットウインドウを表示させる。プレイヤはタブレットとペンを使用し、絵チャットウインドウに文字を書き込んでいる。その結果、手書きの文字が吹き出し表示されている。 【0139】このようにして、各プレイヤが絵本入力措置10から入力した「文字」や「絵」は、自己のパソコンの仮想空間の該当するPCキャラクタの上部や近傍に吹き出し表示されると共に、サーバ装置5に送られて同エリアに存在する他のプレイヤのパソコンに配信され、当該パソコンの仮想空間の該当するPCキャラクタの上部や近傍に吹き出し表示される。」 上記記載からみて、引用文献3には、次の技術事項が記載されていると認められる。 (ア)「各プレイヤが入力措置から入力した「文字」や「絵」は、自己のパソコンの仮想空間の該当するPCキャラクタの上部や近傍に吹き出し表示されると共に、サーバ装置5に送られて同エリアに存在する他のプレイヤのパソコンに配信され、当該パソコンの仮想空間の該当するPCキャラクタの上部や近傍に吹き出し表示されること」 (イ)「プレイヤはタブレットとペンを使用し、チャットウインドウに文字を書き込み、その結果、手書きの文字が吹き出し表示されること」 (3)引用発明との対比 ア.本件補正発明と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明のチャットクライアントのメッセージ作成部は、「発言者からの発言内容を受領し」、「発言内容からメッセージを作成し」、「作成したメッセージを送信する」処理をするものであるところ、この処理がチャットシステムのクライアント用コンピュータ上で動作するチャットクライアントの動作であることに鑑みれば、「発信者からの発言内容を受領する」とは、発言者となるユーザの入力操作に応じて、チャットクライアントがユーザによる発言内容である情報の入力を受け付ける(受領する)ことを意味していると認められるから、当該チャットクライアントのメッセージ作成部は、ユーザによる情報の入力を受け付ける機能実現手段といえる。 そうしてみると、本件補正発明と引用発明とは、「ユーザによる情報の入力を受け付ける入力受付手段」を備える点で共通する。 (イ)引用発明のチャットクライアントのメッセージ表示部は、「サーバからメッセージを受信し、メッセージを発言内容とニックネーム、ユーザID、吹き出し形状番号に分解し」ているところ、サーバから受信したメッセージは、他のクライアント用コンピュータ上で動作するチャットクライアントのメッセージ作成部から送信されたものであるから、当該メッセージの「発言内容」は、他のクライアント用コンピュータのユーザが入力した情報であるといえる。 また、当該メッセージの「ユーザID」は、他のクライアント用コンピュータを操作して当該「発言内容」を入力した他のユーザである「発言者を特定するための情報」であるから、本件補正発明の「他のユーザの端末であることを識別可能な識別情報」と引用発明の「ユーザID」とは、「他の端末のユーザに関わる識別情報」で共通する。 そうしてみると、本件補正発明と引用発明とは、「他の端末のユーザが入力した情報と共に、他の端末のユーザに関わる識別情報を受信する受信手段」を備える点で共通する。 (ウ)引用発明のチャットクライアントのメッセージ表示部は、「吹き出し形状番号と吹き出し形状の対応を示したテーブルを参照し、吹き出し形状を決定し」、「次に、ユーザーIDから色テーブルを検索し、対応する色が色テーブルに格納されているか否かを判定し」、「ユーザIDに対応する色が色テーブルに格納されていれば、その色と前述の吹き出し形状を用いて描画し」、「更に、上記の吹き出し形状、および色を用い、ニックネームならびに発言内容を描画する」処理をすることで、「吹き出しの色は、ユーザーID203をキーに色テーブル301を検索し、一意に決まり」、「発言者毎にメッセージの背景色を一意に決定している」ものであるところ、引用発明の「色テーブル」は、本件補正発明の「識別情報ごとに、他の端末のユーザが入力した情報を吹き出し内に表示する際の吹き出しの背景色を規定する背景色規定手段」に対応するといえる。 また、引用発明の「ユーザーIDから色テーブルを検索し、対応する色が色テーブルに格納されているか否かを判定し、ユーザIDに対応する色が色テーブルに格納されていれば、その色と前述の吹き出し形状を用いて描画し、更に、上記の吹き出し形状、および色を用い、ニックネームならびに発言内容を描画する」処理は、本件補正発明の「受信した情報から送信元の識別情報を検出し、背景色規定手段によって規定された識別情報ごとの背景色をもとに、送信元の識別情報に対応する背景色を決定する」こと、「決定された背景色を有する吹き出し内に、他の端末のユーザが入力した情報を表示する」ことに対応するといえる。 そうしてみると、本件補正発明と引用発明とは、「識別情報ごとに、他の端末のユーザが入力した情報を吹き出し内に表示する際の吹き出しの背景色を規定する背景色規定手段」と、「受信した情報から送信元の識別情報を検出し、背景色規定手段によって規定された識別情報ごとの背景色をもとに、送信元の識別情報に対応する背景色を決定する背景色決定手段」と、「決定された背景色を有する吹き出し内に、他の端末のユーザが入力した情報を表示する表示手段」とを備える点で共通する。 (エ)引用発明において、「チャットクライアント111は、メッセージ作成部112でメッセージを作成し、チャットサーバ部101に送信すると共にメッセージ表示部113に送」るから、表示される発言内容には、ユーザー自身の発言も含まれることが明らかであって、「吹き出しの色は、ユーザーID203をキーに色テーブル301を検索し、一意に決まり」、「発言者毎にメッセージの背景色を一意に決定しているから、発言者をメッセージから容易に特定することができる」ことから、他のユーザの入力した情報を表示する吹き出しのために決定された背景色が、ユーザが入力した情報を表示する吹き出しの背景色とは異なるものと認められる。 そうしてみると、本件補正発明と引用発明とは、「決定された背景色が、ユーザが入力した情報を表示する吹き出しの背景色とは異なる」点で共通する。 (オ)引用発明の「クライアント用コンピュータ」で動作するチャットクライアントのメッセージ送信部は、サーバ用コンピュータで動作するチャットサーバ部に送信しているから、引用発明の「クライアント用コンピュータ」は通信機能を有したコンピュータ端末であり、本件補正発明の「通信端末」に対応する。 イ.以上のことから、本件補正発明と引用発明には、次の一致点及び相違点が認められる。 〈一致点〉 「ユーザによる情報の入力を受け付ける入力受付手段と、 他の端末のユーザが入力した情報と共に、他の端末のユーザに関わる識別情報を受信する受信手段と、 識別情報ごとに、他の端末のユーザが入力した情報を吹き出し内に表示する際の吹き出しの背景色を規定する背景色規定手段と、 受信した情報から送信元の識別情報を検出し、背景色規定手段によって規定された識別情報ごとの背景色をもとに、送信元の識別情報に対応する背景色を決定する背景色決定手段と、 決定された背景色を有する吹き出し内に、他の端末のユーザが入力した情報を表示する表示手段とを備え、 決定された背景色が、ユーザが入力した情報を表示する吹き出しの背景色とは異なる、 通信端末。」 〈相違点1〉 本件補正発明では、他の端末のユーザに関わる識別情報が、「他のユーザの端末であることを識別可能な識別情報」であるのに対し、引用発明では、他の端末のユーザに関わる識別情報が「発言者を特定するための情報であるユーザID」である点。 〈相違点2〉 本件補正発明では、キャラクタを表示するキャラクタ表示手段とを備え、吹き出しが、キャラクタの近傍に表示されたものであるのに対し、引用発明では、キャラクタを表示するキャラクタ表示手段が備えられていないため、吹き出しが、キャラクタの近傍に表示されるものではない点。 〈相違点3〉 本件補正発明では、入力受付手段により入力を受け付ける情報が、ユーザが入力した手書き情報であるのに対し、引用発明では、ユーザが入力した手書き情報であることが特定されていない点。 (4)判断 以下、相違点について検討する。 ア.相違点1について 上記(2)イ(ア)で示した引用文献2に記載された技術事項からみて、チャットシステムの「送信側メッセージおよび受信側メッセージに指定されるユーザ識別子」は、「チャットをするユーザに重複なく割り当てられる数字や文字列」であればよく、「ネットワーク接続やチャット通信サービスを受ける際のユーザID」、「ネットワーク接続の際に割り当てられたIPアドレス」、「NICに割り当てられているMACアドレス」等を適用することができること」は、本願出願時において周知技術と認められ、引用発明の「発言者を特定するための情報であるユーザID」に代えて、「ネットワーク接続の際に割り当てられたIPアドレス」や「NICに割り当てられているMACアドレス」等の他のユーザの端末であることを識別可能な情報を適用することは、当業者が容易に想到し得たものと認められる。 イ.相違点2、3について 上記(2)イ(イ)で示した引用文献2に記載された技術事項および上記(2)ウ(ア)で示した引用文献3に記載された技術事項からみて、ユーザ同士の交流を図るチャットシステムにおいて、キャラクタを表示する手段を備えるとともに、吹き出しをキャラクタの近傍に表示することは、本願出願時において周知技術と認められ、また、上記(2)ウ(イ)で示した引用文献3に記載された技術事項からみて、チャットシステムにおいて、タブレットとペンを使用して書き込んだ手書き文字が吹き出し表示されることも、本願出願時において周知技術と認められる。引用発明に当該周知技術を適用して、キャラクタを表示するキャラクタ表示手段を備えるとともに、吹き出しが、キャラクタの近傍に表示されたものであり、入力受付手段により入力を受け付ける情報が、ユーザが入力した手書き情報であるようにすることは、当業者が容易に想到し得たものと認められる。 ウ.そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する「吹き出しに表示される内容がどのプレイヤから発せられたかものかをより視認しやすくしつつ、手書き文字によって表現されるメッセージの微妙なニュアンスを、キャラクタが喋って伝えているように表示できる」という作用効果は、引用発明及び各周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 エ.したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3.本件補正についてのむすび よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1.本願発明 平成30年10月24日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成30年7月11日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 2.原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1ないし6に係る発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2ないし4に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用文献1:特開平11-203227号公報 引用文献2:特開2004-126786号公報(周知技術を示す文献) 引用文献3:特開2002-278691号公報(周知技術を示す文献) 引用文献4:特開平7-110845号公報(周知技術を示す文献) 3.引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1ないし3及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。 4.対比・判断 本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「入力受付手段」に係る、「入力受付手段により入力を受け付ける情報が、ユーザが入力した手書き情報である」との限定事項を削除したものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2020-02-19 |
結審通知日 | 2020-02-25 |
審決日 | 2020-03-09 |
出願番号 | 特願2017-126506(P2017-126506) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 岩橋 龍太郎、菊池 伸郎 |
特許庁審判長 |
稲葉 和生 |
特許庁審判官 |
▲吉▼田 耕一 岩田 玲彦 |
発明の名称 | 通信端末、表示方法およびプログラム |
代理人 | 特許業務法人ライトハウス国際特許事務所 |